特許第6826512号(P6826512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826512
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20210121BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20210121BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20210121BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   F04C29/02 311K
   F04C29/02 351D
   F04C29/04 B
   F16J15/40 Z
   F16J15/447
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-171004(P2017-171004)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-44737(P2019-44737A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】田島 正博
(72)【発明者】
【氏名】増田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】落合 圭太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 久則
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩史
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−299584(JP,A)
【文献】 特開平10−252901(JP,A)
【文献】 特開昭56−088986(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/129083(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/041680(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
F04C 29/04
F16J 15/40
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシング内のロータ室に収容されて回転することによりガスを圧縮するロータと、前記ケーシング内に設けられて前記ロータが回転可能となるように当該ロータのロータ軸を支持する軸受と、前記ケーシング内において前記ロータ室と前記軸受との間に並んで設けられ、前記ロータ軸の周りをシールする第1軸封部及び第2軸封部と、を有する圧縮機と、
前記ロータ室へインジェクション油を供給する第1供給ラインと、
前記第1供給ラインに対して独立して設けられ、前記軸受へ潤滑油を供給する第2供給ラインと、
前記第1軸封部へシールガスを供給する第3供給ラインと、
前記第2軸封部へシールに用いられるシール油を供給する第4供給ラインと、を備え
前記軸受は、前記圧縮機の吐出側に設けられ、その圧縮機の吐出側において前記第1軸封部と前記第2軸封部とが前記軸受と前記ロータ室との間に並んで設けられている、圧縮装置。
【請求項2】
前記第2軸封部は、前記ケーシング内において前記第1軸封部と前記ロータとの間に配置される、請求項1に記載の圧縮装置。
【請求項3】
前記第4供給ラインは、前記第1供給ラインから分岐して前記第2軸封部に繋がり、前記第1供給ラインを流れるインジェクション油の一部を前記シール油として前記第2軸封部へ供給する、請求項1又は2に記載の圧縮装置。
【請求項4】
前記第2軸封部のシールに用いられたインジェクション油を前記ロータ室の吸込側へ供給する戻しラインをさらに備える、請求項3に記載の圧縮装置。
【請求項5】
前記ロータによって圧縮された圧縮ガスが前記ロータ室から吐出される吐出ラインと、
前記吐出ラインに接続されて圧縮ガスから油を分離する分離器と、をさらに備え、
前記第1供給ラインは、前記分離器に繋がり、前記分離器で分離された油を前記ロータ室へインジェクション油として供給する、請求項3又は4に記載の圧縮装置。
【請求項6】
前記圧縮機は、前記第2軸封部の圧力よりも高い圧力で圧縮ガスを前記吐出ラインに吐出する、請求項5に記載の圧縮装置。
【請求項7】
前記第1供給ラインに接続されてインジェクション油を前記ロータ室へ送るポンプをさらに備え、
前記第4供給ラインは、前記第1供給ラインにおける前記ポンプと前記ロータ室との間の位置から分岐する、請求項5又は6に記載の圧縮装置。
【請求項8】
前記第4供給ラインの分岐点よりも上流側の位置で前記第1供給ラインに設けられた開度調整弁と、
前記第1供給ラインにおけるインジェクション油の圧力が、前記第1供給ラインに接続される前記ロータ室の油入口における圧力、及び、前記ロータ軸の前記ロータ側の端部における圧力であるロータ端部圧よりも大きくなるように前記開度調整弁の開度を制御する制御部と、をさらに備える、請求項3〜7のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項9】
前記第4供給ライン上に設けられた他の開度調整弁と、
前記第2軸封部に供給されるインジェクション油の圧力が、前記ロータ軸の前記ロータ側の端部における圧力であるロータ端部圧よりも大きくなるように前記他の開度調整弁の開度を制御する他の制御部と、をさらに備える、請求項3〜8のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項10】
前記分離器で分離された油の圧力を略一定に維持した状態で前記油を前記第2軸封部に供給する、請求項6に記載の圧縮装置。
【請求項11】
前記第2軸封部は、ネジ溝が形成されたラビリンスシールを有し、
前記ネジ溝は、前記ロータ軸の回転に伴って前記ラビリンスシールから前記ロータ室側へ油を送る螺旋形状をなす、請求項1〜10のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項12】
前記第3供給ラインに設けられ、前記第1軸封部に供給されるシールガスの圧力を前記第1軸封部と前記第2軸封部との間の圧力よりも高くする圧力調整弁をさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項13】
前記圧力調整弁は、前記第1軸封部と前記第2軸封部との間の圧力を用いて開度調整を行う差圧調整弁である、請求項12に記載の圧縮装置。
【請求項14】
前記第3供給ラインから前記第1軸封部に供給されるシールガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記第1軸封部と前記第2軸封部との間の圧力を直接的又は間接的に検出する他の圧力センサと、
前記圧力センサの検出圧力と前記他の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記圧力調整弁に前記シールガスの圧力を調整させる制御を行う制御部と、をさらに備える、請求項12に記載の圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリュロータへ供給するインジェクション油とスクリュロータの軸受の潤滑油とを共用する油冷式のスクリュ圧縮機が知られている。スクリュ圧縮機では、金属を腐食させる成分を含有する汚れたガスを圧縮する場合がある。この場合には、圧縮ガス中の腐食成分がインジェクション油を介して潤滑油に溶け込み、軸受の寿命が腐食成分によって低下する。また、圧縮ガス自体が潤滑油に溶け込むことによって潤滑油の粘度が低下する場合もある。この場合には、軸受の潤滑性が悪化して軸受の寿命が低下する。下記特許文献1〜3には、以上のような問題を解決するための工夫が施された圧縮装置が開示される。
【0003】
特許文献1〜3に開示された圧縮装置では、インジェクション油の供給系統と軸受への潤滑油の供給系統とが互いに独立して設けられる。このため、インジェクション油及び潤滑油の各供給系統において、潤滑油への腐食成分及び圧縮ガス自体の溶け込みが抑制される。
【0004】
さらに、特許文献1では、ロータが収容された圧縮室と軸受との間にメカニカルシールが設けられ、軸受に供給される潤滑油の一部をメカニカルシールに供給することにより圧縮室と軸受との間をシールする構造が示されている。また、特許文献1では、圧縮室と軸受との間にカーボンリングシールが設けられ、圧縮室から吐出された圧縮ガスの一部をカーボンリングシールに供給することにより圧縮室と軸受との間をシールする構造も示されている。これらの構造では、圧縮機内において、圧縮室から軸受側への圧縮ガスの漏出が低減し、潤滑油への腐食成分及び圧縮ガス自体の溶け込みが低減する。
【0005】
また、特許文献2では、圧縮室と軸受との間に設けられた密封装置によってシールする構造が示されている。この構造によっても、圧縮機内で圧縮室から軸受側への圧縮ガスの漏出が低減し、潤滑油への腐食成分及び圧縮ガス自体の溶け込みが低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−299584号公報
【特許文献2】国際公開第2006/013636号
【特許文献3】実開昭52−41480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、ガスを従来よりも高圧に圧縮する高圧用途において圧縮装置が使用される例があり、高圧の圧縮ガスの軸受側への漏出を防止する技術が求められる。
【0008】
上記特許文献1では、潤滑油が供給されるメカニカルシール又は圧縮ガスが供給されるカーボンリングシールによって圧縮室と軸受との間をシールするが、そのようなシール構造では、高圧用途の場合には圧縮室から軸受側への圧縮ガスの漏出を止めることは難しい。
【0009】
上記特許文献2においても、高圧用途の場合には、密封装置で圧縮室と軸受との間を完全にシールできず、圧縮室から軸受側へ圧縮ガスが漏出する虞がある。
【0010】
また、上記特許文献3では、圧縮室と軸受との間をシールする構造が設けられていないため、圧縮室から軸受側への圧縮ガスの漏出を防止できない。
【0011】
従って、上記特許文献1〜3のいずれにおいても、高圧用途では、圧縮室から圧縮ガスが漏出して圧縮機の性能が低下するとともに、軸受の潤滑油に圧縮ガス中の腐食成分及び圧縮ガス自体が溶け込んで軸受の寿命が低下する虞がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高圧用途における圧縮機の性能低下を防止するとともに軸受の寿命低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による圧縮装置は、ケーシングと、前記ケーシング内のロータ室に収容されて回転することによりガスを圧縮するロータと、前記ケーシング内に設けられて前記ロータが回転可能となるように当該ロータのロータ軸を支持する軸受と、前記ケーシング内において前記ロータ室と前記軸受との間に並んで設けられ、前記ロータ軸の周りをシールする第1軸封部及び第2軸封部と、を有する圧縮機と、前記ロータ室へインジェクション油を供給する第1供給ラインと、前記第1供給ラインに対して独立して設けられ、前記軸受へ潤滑油を供給する第2供給ラインと、前記第1軸封部へシールガスを供給する第3供給ラインと、前記第2軸封部へシールに用いられるシール油を供給する第4供給ラインと、を備え、前記軸受は、前記圧縮機の吐出側に設けられ、その圧縮機の吐出側において前記第1軸封部と前記第2軸封部とが前記軸受と前記ロータ室との間に並んで設けられている
【0014】
この構成では、ロータ室と軸受との間に、シールガスが供給される第1軸封部に加えて、シール油が供給される第2軸封部が設けられるため、ロータ室と軸受との間のシール性を高めることができる。このため、高圧用途において、ロータ室から軸受側への圧縮ガスの漏出を防ぐことができ、圧縮機の性能低下を防止できる。また、ロータ室と軸受との間のシール性が向上することにより、圧縮機内において潤滑油に腐食成分及び圧縮ガス自体が溶け込むことも防止できる。
【0015】
前記圧縮装置において、前記第2軸封部は、前記ケーシング内において前記第1軸封部と前記ロータとの間に配置されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1軸封部に供給されるシールガスにより、第2軸封部に供給されるシール油が軸受側へ流れるのを抑制できる。
【0017】
前記圧縮装置において、前記第4供給ラインは、前記第1供給ラインから分岐して前記第2軸封部に繋がり、前記第1供給ラインを流れるインジェクション油の一部を前記シール油として前記第2軸封部へ供給することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、圧縮機の周囲に形成された油の系統を簡素化することができる。
【0019】
前記第4供給ラインが前記第1供給ラインを流れるインジェクション油の一部をシール油として前記第2軸封部へ供給する構成において、圧縮装置は、前記第2軸封部のシールに用いられたインジェクション油を前記ロータ室の吸込側へ供給する戻しラインをさらに備えることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第2軸封部のシールに用いられたインジェクション油を戻しラインを通じてロータ室の吸込側へ供給し、ロータ室の潤滑等に再利用することができる。
【0021】
前記圧縮装置は、前記ロータによって圧縮された圧縮ガスが前記ロータ室から吐出される吐出ラインと、前記吐出ラインに接続されて圧縮ガスから油を分離する分離器と、をさらに備え、前記第1供給ラインは、前記分離器に繋がり、前記分離器で分離された油を前記ロータ室へインジェクション油として供給することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、インジェクション油をロータ室と分離器との間を循環させることができ、外部の供給源からロータ室へインジェクション油を供給することが不要となる。
【0023】
前記吐出ラインを備える圧縮装置において、前記圧縮機は、前記第2軸封部の圧力よりも高い圧力で圧縮ガスを前記吐出ラインに吐出することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、分離器で分離された油を、圧縮ガスの吐出圧と第2軸封部の圧力との差圧を利用して第1供給ラインから第4供給ラインを通じて第2軸封部へ供給できる。このため、簡略な構成で第2軸封部へ油を供給できる。
【0025】
前記第1供給ラインが前記分離器で分離された油を前記ロータ室へインジェクション油として供給し、前記第4供給ラインが前記第1供給ラインを流れるインジェクション油の一部をシール油として前記第2軸封部へ供給する構成において、圧縮装置は、前記第1供給ラインに接続されてインジェクション油を前記ロータ室へ送るポンプをさらに備え、前記第4供給ラインは、前記第1供給ラインにおける前記ポンプと前記ロータ室との間の位置から分岐することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、例えば圧縮機の起動時等に圧縮ガスの吐出圧が低下する場合であっても、ロータ室及び第2軸封部へ確実にインジェクション油を供給することができる。
【0027】
前記第4供給ラインが前記第1供給ラインから分岐して前記第2軸封部に繋がる構成において、圧縮装置は、前記第4供給ラインの分岐点よりも上流側の位置で前記第1供給ラインに設けられた開度調整弁と、前記第1供給ラインにおけるインジェクション油の圧力が、前記第1供給ラインに接続される前記ロータ室の油入口における圧力、及び、前記ロータ軸の前記ロータ側の端部における圧力であるロータ端部圧よりも大きくなるように前記開度調整弁の開度を制御する制御部と、をさらに備えることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、インジェクション油を確実に第2軸封部に供給することができる。
【0029】
前記第4供給ラインが前記第1供給ラインを流れるインジェクション油の一部をシール油として前記第2軸封部へ供給する構成において、圧縮装置は、前記第4供給ライン上に設けられた他の開度調整弁と、前記第2軸封部に供給されるインジェクション油の圧力が、前記ロータ軸の前記ロータ側の端部における圧力であるロータ端部圧よりも大きくなるように前記他の開度調整弁の開度を制御する他の制御部と、をさらに備えることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、インジェクション油を確実に第2軸封部に供給することができる。
【0031】
前記第1供給ラインが前記分離器で分離された油を前記ロータ室へインジェクション油として供給し、前記第4供給ラインが前記第1供給ラインを流れるインジェクション油の一部をシール油として前記第2軸封部へ供給する圧縮装置において、前記分離器で分離された油の圧力を略一定に維持した状態で前記油を前記第2軸封部に供給することが好ましい。
【0032】
この構成によれば、圧縮装置の構造を簡素化することができる。
【0033】
前記圧縮装置において、前記第2軸封部は、ネジ溝が形成されたラビリンスシールを有し、前記ネジ溝は、前記ロータ軸の回転に伴って前記ラビリンスシールから前記ロータ室側へ油を送る螺旋形状をなすことが好ましい。
【0034】
この構成によれば、ロータ軸の回転に伴ってインジェクション油に対しロータ室へと向かう力を作用させることができ、第2軸封部のシール性をより高めることができる。
【0035】
前記圧縮装置は、前記第3供給ラインに設けられ、前記第1軸封部に供給されるシールガスの圧力を前記第1軸封部と前記第2軸封部との間の圧力よりも高くする圧力調整弁をさらに備えることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、シールガスを確実に第1軸封部に供給することができる。
【0037】
この場合において、前記圧力調整弁は、前記第1軸封部と前記第2軸封部との間の圧力を用いて開度調整を行う差圧調整弁であることが好ましい。
【0038】
この構成によれば、容易にシールガスの圧力調整を行うことができる。
【0039】
さらにこの場合において、圧縮装置は、前記第3供給ラインから前記第1軸封部に供給されるシールガスの圧力を検出する圧力センサと、前記第1軸封部と前記第2軸封部との間の圧力を直接的又は間接的に検出する他の圧力センサと、前記圧力センサの検出圧力と前記他の圧力センサの検出圧力とに基づいて、前記圧力調整弁に前記シールガスの圧力を調整させる制御を行う制御部と、をさらに備えることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、シールガスを第1軸封部に確実に供給することができる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、高圧用途における圧縮機の性能低下を防止できるとともに、軸受の寿命低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1実施形態による圧縮装置の系統図である。
図2図1に示した圧縮機のオイルシール近傍の構造を部分的に示す拡大図である。
図3】本発明の第2実施形態による圧縮装置の系統図である。
図4】本発明の第3実施形態による圧縮装置の系統図である。
図5】第1実施形態の一変形例による圧縮装置の系統図である。
図6】第1実施形態の他の変形例による圧縮装置の系統図である。
図7】第1実施形態のさらに他の変形例による圧縮装置の系統図である。
図8】第1実施形態のさらに別の変形例による圧縮装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図1には、本発明の第1実施形態による圧縮装置1の構成が示される。第1実施形態による圧縮装置1は、圧縮機2と、吸込ライン4と、吐出ライン6と、分離器8と、駆動機28と、コントローラ46とを備える。圧縮装置1はさらにインジェクション油が流れる第1供給ライン10と、潤滑油が流れる第2供給ライン14と、シールガスが流れる第3供給ライン18と、第1供給ライン10から分岐した第4供給ライン12とを備える。
【0045】
圧縮機2はスクリュ圧縮機である。圧縮対象のガスとしては、多様な種類のガスを適用可能である。例えば、圧縮対象のガスは、石油化学や各種化学プロセスにおいて生じるガスや、各種排ガス等であって、金属を腐食させる成分を含有する汚れたガスでもよい。
【0046】
吸込ライン4は、圧縮機2の吸込口38aに接続される。吸込ライン4には、ガスの逆流を防止する逆止弁5が設けられる。吐出ライン6は、圧縮機2の吐出口38bに接続される。
【0047】
圧縮装置1では、駆動機28により圧縮機2が駆動されることにより吸込ライン4から圧縮機2にガスが吸入される。吸入されたガスはロータ部220の回転により圧縮され、圧縮ガスが吐出ライン6へと吐出される。圧縮ガスにはロータ室38内に導入されたインジェクション油が含まれている。
【0048】
分離器8は、吐出ライン6の下流側の端部に接続される。分離器8には、吐出ライン6から油を含有する圧縮ガスが導入される。分離器8内では、導入された圧縮ガスから油が分離される。分離した油は、分離器8内の下部に溜る。なお、吐出ライン6には逆止弁9が設けられており、分離器8から圧縮機2側への圧縮ガスの逆流が防止される。
【0049】
分離器8の上部には、ガス排出ライン11が接続される。分離器8内で油が分離された後の圧縮ガスは、ガス排出ライン11を通じて排出される。
【0050】
圧縮機2は、ケーシング20と、一対のロータ部220と、第1軸受24と、第2軸受26と、第1ガスシール30と、第2ガスシール32と、オイルシール34と、バランスピストン36とを有する。
【0051】
ケーシング20は、ロータ室38と、第1ガスシール室39aと、第1軸受室39bと、オイルシール室40aと、第2ガスシール室40bと、第2軸受室40cとを備える。ロータ室38、第1ガスシール室39a、第1軸受室39b、オイルシール室40a、第2ガスシール室40b及び第2軸受室40cは連通している。
【0052】
ロータ室38はケーシング20の略中央に位置する。ロータ室38の図1における左上の部位には吸込ライン4に繋がる吸込口38aが設けられる。ロータ室38の図1における右下の部位には、吐出ライン6に繋がる吐出口38bが設けられる。ロータ室38の中央近傍には、インジェクション油の導入口である油入口38cが形成される。以下の説明では、圧縮機2の図1における左側を「吸込側」といい、右側を「吐出側」という。
【0053】
第1ガスシール室39a及び第1軸受室39bはロータ室38よりも吸込側に位置する。ロータ室38から吸込側へ離れるにしたがって第1ガスシール室39a及び第1軸受室39bが順に並ぶ。第1ガスシール室39aには第1ガスシール30が配置される。第1軸受室39bには第1軸受24が配置される。
【0054】
オイルシール室40a、第2ガスシール室40b及び第2軸受室40cはケーシング20のロータ室38よりも吐出側に位置する。ロータ室38から吐出側へ離れるにしたがってオイルシール室40a、第2ガスシール室40b及び第2軸受室40cが順に並ぶ。すなわち、圧縮機2では、オイルシール室40aはロータ室38と第2ガスシール室40bとの間に位置する。オイルシール室40aには、オイルシール34が配置される。第2ガスシール室40bには、第2ガスシール32が配置される。第2軸受室40cには、第2軸受26が配置される。オイルシール室40aと第2ガスシール室40bとの間の空間(以下、「中間部70」という。)には、ロータ室38の吸込口38aに繋がる戻しライン13が接続される。戻しライン13には圧力センサ72が取り付けられる。圧力センサ72により戻しライン13の圧力が検出される。戻しライン13の圧力は中間部70の圧力に相当することから、圧力センサ72は間接的に中間部70の圧力を検出することとなる。
【0055】
ロータ部220は、スクリュであるロータ22と、第1ロータ軸22aと、第2ロータ軸22bとを備える。図1では、1つのロータ部220のみを示しているが、実際には図1の紙面に垂直方向の奥側にもう1つのロータ部220が配置されている。ロータ22、第1ロータ軸22a及び第2ロータ軸22bは一体に形成される。ロータ22はロータ室38に収容される。一対のロータ22の歯溝に圧縮対象のガスが導入される圧縮空間が形成される。
【0056】
第1ロータ軸22aはロータ22の吸込側の端面から延出し、第1ガスシール室39a及び第1軸受室39bに挿入される。第2ロータ軸22bはロータ22の吐出側の端面から延出し、オイルシール室40a、第2ガスシール室40b及び第2軸受室40cに挿入される。第2ロータ軸22bの先端部にはバランスピストン36が形成され、バランスピストン36により圧縮機2の駆動時に発生するスラスト力が低減される。第2ロータ軸22bは、図略の動力伝達部を介して駆動部28の駆動軸28aに接続される。圧縮機2では、第1軸受24と第2軸受26により第1ロータ軸22a及び第2ロータ軸22bが軸心回りに回転可能に支持される。
【0057】
分離器8の下部には、第1供給ライン10の一端が接続される。第1供給ライン10の他端は、ロータ室38の油入口38cに接続される。第1供給ライン10が分離器8で分離された油をインジェクション油として油入口38cを介してロータ室38へ供給する。インジェクション油は、ロータ室38において圧縮空間をシールするために用いられるとともに圧縮ガスの冷却に用いられる。圧縮装置1では、第1供給ライン10及び吐出ライン6により、ロータ室38と分離器8との間をインジェクション油が循環する循環系統(以下、「第1油系統」という。)が形成される。第1油系統が形成されることにより、外部の供給源からロータ室38にインジェクション油を供給することが不要となる。
【0058】
第1供給ライン10には、ポンプ42、第1開度調整弁44、第2開度調整弁45a、冷却器48及びオイルフィルタ50が設けられる。第1開度調整弁44は、第1供給ライン10において第4供給ライン12へと分岐する分岐点よりも上流側の位置にする。第1開度調整弁44及び第2開度調整弁45aの開度はコントローラ46により制御される。ポンプ42は、第4供給ライン12が第1供給ライン10から分岐する位置よりも上流側において、迂回ライン43を介して第1供給ライン10に接続されている。冷却器48は、第1供給ライン10を流れるインジェクション油を冷却する。オイルフィルタ50は、第1供給ライン10を流れるインジェクション油中の不純物を除去する。
【0059】
ロータ室38の油入口38cにおける圧力は、吐出ライン6における圧縮ガスの圧力と吸込ライン4におけるガスの圧力との間の中間程度である。圧縮ガスの吐出圧に等しい分離器8内のインジェクション油は、圧力差により第1供給ライン10を介して油入口38cからロータ室38内に供給される。
【0060】
ただし、圧縮機2の起動時など圧縮ガスの吐出圧が低下したときにはポンプ42が作動され、ロータ室38及びオイルシール34へ向けてインジェクション油が圧送される。これにより、圧縮ガスの吐出圧が低下したときであってもロータ室38及びオイルシール34へ確実にインジェクション油を供給することができる。
【0061】
第2供給ライン14は潤滑油が貯留されたタンク56に接続される。第2供給ライン14上にはポンプ58、冷却器60及びオイルフィルタ62が設けられる。ポンプ58はタンク56から潤滑油を送出する。冷却器60は、第2供給ライン14を流れる潤滑油を冷却する。オイルフィルタ62は、第2供給ライン14を流れる潤滑油中の不純物を除去する。タンク56内の潤滑油は、第2供給ライン14を介して第1軸受24、第2軸受26及びバランスピストン36に供給される。
【0062】
第1軸受24、第2軸受26及びバランスピストン36を潤滑した後の潤滑油は、第2供給ライン14の一部である潤滑油排出ライン16を介してタンク56へと戻される。なお、圧縮装置1には、タンク56と吸込ライン4とを接続するライン19が設けられ、タンク56に貯留された油の一部が逆止弁64を介して吸込ライン4へ供給される。
【0063】
このように、圧縮装置1では、第2供給ライン14によって、第1及び第2軸受24,26とタンク56との間を潤滑油が循環する循環系統(以下、「第2油系統」という。)が形成される。第2油系統は第1油系統から独立している。すなわち、ロータ室38へインジェクション油を供給する第1供給ライン10に対して、第1及び第2軸受24,26へ潤滑油を供給する第2供給ライン14が独立して設けられることにより、圧縮ガス中の成分が第2油系統内の潤滑油に混入してしまうことが防止される。その結果、第2軸受26の寿命低下を防止することができる。
【0064】
第3供給ライン18は第1ガスシール30及び第2ガスシール32にシールガスを供給する。本実施形態では、シールガスは、圧縮対象のガスと異なる種類のガスであり、外部から供給される。シールガスとしては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス、又は、圧縮ガスに混入しても影響を与えない各種ガスが用いられる。
【0065】
第3供給ライン18にはシールガスの圧力を調整する差圧式の圧力調整弁66、及び、圧力調整弁66の下流側に位置する吸込側ライン18a並びに吐出側ライン18bが設けられる。シールガスは圧力調整弁66を通過した後、吸込側ライン18aを介して第1ガスシール30に供給され、吐出側ライン18bを介して第2ガスシール32に供給される。これにより、第1ガスシール30にて第1ロータ軸22aの周りがシールされ、ロータ室38の吸込側の端部からのガスの漏出が防止される。同様に、第2ガスシール32にて第2ロータ軸22bの周りがシールされる。
【0066】
圧力調整弁66には戻しライン13から分岐した分岐ライン71が接続される。圧力調整弁66には、内部にシールガスが流れるガス流路、及び、ガス流路の開度を調節するダイヤフラムが設けられており、戻しライン13の圧力(すなわち、中間部70の圧力)に応じてダイヤフラムがガス流路の開度を調整する。例えば、戻しライン13の圧力が増大するとガス流路の開度が増大し、圧力調整弁66よりも下流側においてシールガスの圧力(または流量)が増大する。戻しラインの圧力が減少するとガス流路の開度が減少し、シールガスの圧力(または流量)が減少する。このように、圧力調整弁66が戻しライン13の圧力の変化に合わせてシールガスの圧力を調整することにより、シールガスの圧力が戻しライン13(及び中間部70)の圧力よりも高い状態が維持される。その結果、シールガスを確実に第1及び第2ガスシール30,32へ供給することができる。なお、第1ガスシール30の周囲の圧力は中間部70と同程度であるため、中間部70の圧力に応じて圧力調整弁66の開度が調整できればよい。圧縮装置1では、圧力調整弁66が戻しライン13の圧力(すなわち、中間部70の圧力)を用いることにより、容易にシールガスの圧力調整を行うことができる。
【0067】
第4供給ライン12は、第1供給ライン10におけるポンプ42とロータ室38との間の位置から分岐し、オイルシール34に繋がる。圧縮ガスの吐出圧はオイルシール34内の圧力よりも高いため、圧縮ガスの吐出圧と同じ圧力であるインジェクション油が第4供給ライン12を介してオイルシール34に供給される。オイルシール34では、インジェクション油が第2ロータ軸22bの周りをシールするシール油としての役割を果たす。
【0068】
第4供給ライン12には第3開度調整弁45b及び圧力センサ52が設けられる。圧力センサ52は第3開度調整弁45よりも上流側に位置しており、第1供給ライン10及び第4供給ライン12(ただし、第3開度調整弁45よりも上流側の部位)におけるインジェクション油の圧力を検出する。圧力センサ52は、検出した圧力を示す信号をコントローラ46へ出力する。第3開度調整弁45bはコントローラ46により制御される。
【0069】
図2は、図1中のオイルシール34近傍の構造を部分的に示す拡大図である。以下、ロータ部220の延びる方向を単に「軸方向」という。図2に示されるように、オイルシール34は、第2ロータ軸22bの軸方向に間隔をあけて並ぶ2つのラビリンスシール34aを有する。各ラビリンスシール34aは、ケーシング20の内周面から内側へ突出し、第2ロータ軸22bの周りを囲む。各ラビリンスシール34aの内周面は、第2ロータ軸22bの外周面との間に微小な隙間を形成する状態で第2ロータ軸22bの外周面と対向する。各ラビリンスシール34aの内周面にはネジ溝34bが形成されている。
【0070】
オイルシール34と第2ロータ軸22bとの間には、第4供給ライン12から供給されたインジェクション油が満たされる。インジェクション油は第2ロータ軸22bのロータ22側の端部における圧力(以下、「ロータ端部圧」という。)よりも高いため、ロータ室38から第2ロータ軸22bへの圧縮ガスの流れが制限される。さらに、ネジ溝34bは、第2ロータ軸22bの回転に伴ってラビリンスシール34aからロータ室38側へ油を送る螺旋形状をなしており、ネジ溝34bと第2ロータ軸22bとの間の相対回転によりインジェクション油に対してロータ室38へと向かう力が作用する。これにより、ロータ室38から第2ロータ軸22bへと向かう圧縮ガスの流れをより確実に制限することができる。
【0071】
図1に示す圧縮機2では、オイルシール34から排出されたインジェクション油が中間部70に流入し、戻しライン13を通じて吸込口38aへ供給される。これにより、オイルシール34にて利用されたインジェクション油をロータ室38内における冷却やロータ22の潤滑等に再利用することができる。また、第2ガスシール32に供給された高圧のシールガスの一部も中間部70に流入し、戻しライン13を通じて吸込口38aへ供給される。
【0072】
圧縮機2では、中間部70が戻しライン13を介して吸込口38aに接続されることにより、シールガスがオイルシール室40aへ流れ込むこと、及び、インジェクション油が第2ガスシール室40bへ流れ込むことが防止される。その結果、オイルシール34及び第2ガスシール32のそれぞれの軸封性能が互いに阻害されてしまうことが防止される。
【0073】
次に、圧縮機2の駆動時におけるコントローラ46による第1、第2及び第3開度調整弁44,45a,45bの開度の制御について説明する。
【0074】
コントローラ46は、圧力センサ52の検出圧力が所定の値となるように第1開度調整弁44の開度を制御する。当該所定の値は少なくとも第2ロータ軸22bのロータ端部圧、及び、ロータ室38の油入口38cにおける圧力よりも高い値とされる。これにより、第1供給ライン10の第2開度調整弁45a及び第3開度調整弁45bよりも上流側の部位におけるインジェクション油の圧力(または流量)が決定される。
【0075】
次に、吐出ライン6(より正確には、吐出ライン6の逆止弁9よりも上流側の部位)上に設けられた図示省略の温度センサに基づき第2開度調整弁45aの開度が調整される。これにより、圧縮ガスの吐出圧が変動しても、圧縮ガスの温度が常に所定値以下に維持される。
【0076】
また、オイルシール34に供給されるインジェクション油の圧力が、第2ロータ軸22bのロータ端部圧、及び、圧力センサ72の圧力、すなわち、戻しライン13の圧力よりも大きくなるように第3開度調整弁45bの開度が制御される。第3開度調整弁45bが設けられることにより、第2ロータ軸22bのロータ端部圧、及び、戻しライン13の圧力が変動しても、オイルシール34におけるインジェクション油の圧力を第2ロータ軸22bのロータ端部圧、及び、戻しライン13の圧力よりも常に大きくすることができる。本実施形態では、第2ロータ軸22bのロータ端部圧は、ケーシング20に形成された図示省略の微小な空間に連通する圧力センサにより取得される。なお、ロータ端部圧は、圧縮ガスの吐出圧に基づき計算により求められてもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0077】
圧縮装置1では、第1開度調整弁44、第2開度調整弁45a及び第3開度調整弁45bの開度制御は必ずしもシーケンス制御である必要はなく、互いに独立して行われてもよい。以下の実施形態においても同様である。なお、コントローラ46は、圧縮機2の作動停止、すなわち駆動機28の作動停止に応じて、開度調整弁44の開度を0にする。これにより、分離器8内の圧縮ガス及びインジェクション油の逆流が防止される。
【0078】
以上、第1実施形態に係る圧縮装置1の構造について説明したが、ロータ室38と吐出側に位置する第2軸受26との間に、第2ロータ軸22bの周りをシールする第1の軸封部である第2ガスシール32と、第2の軸封部であるオイルシール34とが並んで設けられる。これにより、圧縮ガスが高圧となる場合であっても、ロータ室38と第2軸受26との間のシール性を高めることができる。その結果、圧縮機2の性能低下を防止できる。また、コントローラ46が第1及び第3開度調整弁44,45bの開度を制御することにより、インジェクション油を確実にオイルシール34に供給することができる。
【0079】
圧縮装置1では、第1供給ライン10を流れるインジェクション油の一部がオイルシール34のシール油に利用されるため、圧縮機2の周囲に形成される油の流路が複雑となることが防止される。第2ガスシール32がオイルシール34よりも吐出側に設けられるため、オイルシール34に供給されるインジェクション油が第2軸受26に流入することが防止される。
【0080】
圧縮装置1では、第1ないし第3開度調整弁44,45a,45bのそれぞれの開度制御を行う各制御部が1つのコントローラ46内に構成されるが、これらの制御部は複数のコントローラにより構成されてもよい。
【0081】
(第2実施形態)
図3には、本発明の第2実施形態による圧縮装置1の系統図が示される。図3を参照して、第2実施形態による圧縮装置1について説明する。
【0082】
第3供給ライン18上には電磁弁である圧力調整弁660、及び、シールガスの圧力を検出する圧力センサ68が設けられる。戻しライン13の分岐ライン71は省略される。圧力センサ68,72の検出値はコントローラ74に入力される。圧縮装置1の他の構成は第1実施形態と同様である。
【0083】
コントローラ74では、圧力センサ68の検出圧力が圧力センサ72の検出圧力、すなわち、戻しライン13の圧力よりも高くなるように圧力調整弁66の開度を調整する。これにより、シールガスの圧力を中間部70の圧力(すなわち、第2ガスシール32とオイルシール34との間の圧力)よりも高くすることができ、シールガスを第2ガスシール32に確実に供給することができる。
【0084】
第2実施形態では、コントローラ74が省略され、圧力調整弁66の開度制御を行う制御部がコントローラ46内に構成されてもよい。
【0085】
(第3実施形態)
図4には、本発明の第3実施形態による圧縮装置1の系統図が示される。なお、図4では、第2供給ライン及び第2供給ライン上に設けられる機器の図示を省略している。圧縮装置1は2段圧縮式であり、低圧段である低圧圧縮機2aと、高圧段である高圧圧縮機2bとを有する。低圧圧縮機2a及び高圧圧縮機2bの構造は図1の圧縮機2とほぼ同様である。
【0086】
低圧圧縮機2aにはロータ室38dよりも吐出側に位置するオイルシール34cと第2ガスシール32aとの間の中間部70と吸込口38aとを接続する戻しライン13aが設けられる。高圧圧縮機2bにはロータ室38eよりも吐出側に位置するオイルシール34dと第2ガスシール32bとの間の中間部70と吸込口38aとを接続する戻しライン13bが設けられる。
【0087】
低圧圧縮機2aの吐出口38fには、吐出ライン6aが接続される。図4では図示を省略しているが、吐出ライン6aは、高圧圧縮機2bの吸込ライン4aに繋がる。吸込ライン4aには、逆止弁5aが設けられる。高圧圧縮機2bの吐出口38hに接続される吐出ライン6は分離器8に繋がる。
【0088】
分離器8は、高圧圧縮機2bのロータ室38eの油入口38i及び低圧圧縮機2aのロータ室38dの油入口38gに第1供給ライン10を介して接続される。第1供給ライン10では、第4供給ライン12bが第1供給ライン10から分岐する位置よりも上流側に第1開度調整弁44が設けられる。また、第1供給ライン10のうち、低圧圧縮機2aの油入口38g及び高圧圧縮機2bの油入口38iのそれぞれの近傍に第2開度調整弁451a,451bが設けられる。
【0089】
圧縮装置1では、第1供給ライン10から分岐した第4供給ライン12b,12aが、高圧圧縮機2bのオイルシール34d及び低圧圧縮機2aのオイルシール34cに接続される。第4供給ライン12a,12bにはそれぞれ第3開度調整弁452a,452bが設けられる。第1開度調整弁44,第2開度調整弁451a,451b、および、第3開度調整弁452a,452bの開度はコントローラ46により制御される。
【0090】
第3供給ライン18は圧力調整弁66を備える。第3供給ライン18には圧力調整弁66よりも下流側にて低圧圧縮機2aの吸込側及び吐出側に設けられた第1及び第2ガスシール30a,32aに繋がるライン18a,18bが設けられる。さらに、高圧圧縮機2bの吸込側及び吐出側に設けられた第1及び第2ガスシール30b,32bに繋がるライン18c,18dが設けられる。
【0091】
圧力調整弁66には、高圧圧縮機2bに設けられた戻しライン13bの分岐ライン71が接続される。第1実施形態と同様に、圧力調整弁66により、シールガスの圧力が戻しライン13の圧力よりも高い状態が維持されることにより、戻しライン13(及び中間部70)の圧力が変動してもシールガスを確実に各ガスシール30a,30b,32a,32bへ供給することができる。
【0092】
圧縮装置1の駆動時には、コントローラ46が、第1供給ライン10上の第1開度調整弁44に対して、圧力センサ52の検出圧力が所定の値となるように開度を制御する。当該所定の値は少なくとも高圧圧縮機2bにおける第2ロータ軸222bのロータ端部圧の圧力、及び、ロータ室38eの油入口38iの圧力よりも高い値とされる。
【0093】
次に、高圧圧縮機2bの吐出ライン6上に設けられた図示省略の温度センサに基づき、
する第2開度調整弁451bの開度が調整される。これにより、油入口38cに流入するインジェクション油の量が調整され、吐出圧の変動に対して圧縮ガスの温度が所定値以下に維持される。さらに、オイルシール34dに供給されるインジェクション油の圧力が、第2ロータ軸221bのロータ端部圧、及び、戻しライン13bの圧力よりも大きくなるように第3開度調整弁452bの開度が制御される。
【0094】
高圧圧縮機2bと同様に、低圧圧縮機2aにおいても、低圧圧縮機2aの吐出ライン6a上に設けられた図示省略の温度センサに基づき、第2開度調整弁451aの開度が調整される。また、圧力センサ52の検出圧力が、戻しライン13aの圧力、及び、第2ロータ軸221bのロータ端部圧よりも大きくなるように第3開度調整弁452bの開度が制御される。
【0095】
第3実施形態においても、高圧圧縮機2b及び低圧圧縮機2aの両方において、ロータ室38d,38eと第2軸受26との間に、吐出側の第1の軸封部である第2ガスシール32a,32bと、第2の軸封部であるオイルシール34c,34dとが設けられるため、ロータ室38d,38eと第2軸受26との間のシール性を高めることができる。
【0096】
第3実施形態では、圧力調整弁66に代えて図3と同様にコントローラ74により開度を調整可能な電磁弁である圧力調整弁660が利用されてもよい。
【0097】
(第1変形例)
図5は第1実施形態に係る圧縮装置1の変形例を示す図である。ロータ室38よりも吸込側に第1オイルシール35が設けられる。以下、吐出側のオイルシール34を第1オイルシール35と区別するために「第2オイルシール34」という。
【0098】
ハウジング20には、第1オイルシール35が配置される第1オイルシール室39cがロータ室38の吸込側端面に隣接して設けられる。すなわち、第1オイルシール39cは第1ガスシール30とロータ22との間に配置される。
【0099】
第1オイルシール35には、第1供給ライン10から分岐した第4供給ライン12cが繋がり、第4供給ライン12cからインジェクション油がシール油として供給される。
【0100】
図5では、ロータ室38の吸込側及び吐出側の両方において、第1の軸封部である第1及び第2ガスシール30,32が設けられ、第2の軸封部である第1及び第2オイルシール34,35が設けられる。これにより、圧縮対象のガスがロータ室38から漏出してしまうことがより確実に防止される。図5に示した変形例の構成を他の実施形態に係る圧縮装置1に適用することも可能である。
【0101】
(第2変形例)
図6は第1実施形態に係る圧縮装置1の他の変形例を示す図である。第3供給ライン18は、ガス排出ライン11に接続される。第1ガスシール30及び第2ガスシール32には圧縮ガスの一部がシールガスとして供給される。この変形例によれば、シールガスを別途用意する必要がないので、コストを削減できる。図6の構成は他の実施形態の圧縮装置1に適用されてもよい。
【0102】
(第3変形例)
図7は第1実施形態に係る圧縮装置1のさらに他の変形例を示す図である。吐出ライン6上の圧縮ガスの温度変化及びオイルシール34近傍の圧力変動が過度に大きくない場合には、図1の第2及び第3開度調整弁45a,45bが省略されてもよい。この場合、コントローラ46は、第4供給ライン12上の圧力センサ52の検出圧力が、ロータ室38の油入口38cにおける圧力、第2ロータ軸22bのロータ端部圧、及び、戻しライン13の圧力よりも大きくなるように第1開度調整弁44の開度を調整する。これにより、インジェクション油をロータ室38及びオイルシール34に供給することができる。図7の圧縮装置1では、製造コストを低減することができる。図7の構成は他の実施形態の圧縮装置1に適用されてもよい。
【0103】
(第4変形例)
図8は第1実施形態に係る圧縮装置1のさらに他の変形例を示す図である。圧縮装置1では、図1の第1ないし第3開度調整弁44,45a,45b、及び、ポンプ42が省略される。すなわち、分離器8とオイルシール34及びロータ室38との間に圧力を調整する圧力調整部が設けられない。これにより、分離器8で分離されたインジェクション油の圧力が略一定に維持された状態(ただし、流路抵抗による圧力低下は除く)でロータ室38及びオイルシール34に供給される。図8では、圧縮装置1の機器が簡素化されることにより、製造コストをより削減することができる。図8の構成は他の実施形態に適用されてもよい。
【0104】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0105】
例えば、上記第1実施形態では、戻しライン13は吸込口38aに接続されていることから、第2ロータ軸22bのロータ端部圧よりも常に小さいため、第2ロータ軸22bのロータ端部圧のみに基づいて第3開度調整弁45bの開度が制御されてもよい。この場合、戻しライン13の圧力センサ72は省略されてもよい。戻しライン13はオイルシール34における圧力及び第2ガスシール32における圧力よりも低圧の空間に接続されるのであれば、必ずしも吸込口38aに接続される必要はない。例えば、戻しライン13は吸込ライン4に接続されてもよい。また、戻しライン13はケーシング20内部に形成されてもよい。他の実施形態においても同様である。
【0106】
上記実施形態では、第1油系統及び第2油系統から独立した供給源からオイルシール34,34c,34d,35にシール油が供給されてもよい。
【0107】
上記第1実施形態では、第2ガスシール32がロータ室38とオイルシール34との間に設けられてもよい。この場合、第2ガスシール32に供給されるシールガスの圧力は、第2ロータ軸22bのロータ端部圧、及び、第2ガスシール32とオイルシール34との間の中間部70の圧力よりも大きくされる。また、オイルシール34に供給されるインジェクション油の圧力は中間部70の圧力よりも大きくされる。他の実施形態においても、ガスシールがオイルシールよりもロータ室38側に配置されてもよい。
【0108】
上記実施形態では、オイルシール34,34c,34d,35のラビリンスシールに設けられるネジ溝は、ラビリンスシールの内周面と対向する吐出側ロータ軸の外周面に設けられてもよい。ラビリンスシールとしてネジ溝以外の形状(例えば、平行溝)のものが用いられてもよい。
【0109】
上記第1実施形態では、油入口38cへ供給されるインジェクション油の流量がオイルシール34へ供給されるインジェクション油の流量よりも著しく大きい場合には、第4供給ライン12の分岐点よりも下流側の位置で第1供給ライン10にオリフィスを設けて油入口38cへの流量を調整してもよい。他の実施形態においても同様である。
【0110】
図1ないし図6に示す圧縮装置1では、第1開度調整弁44が省略され、第2及び第3開度調整弁45a,45bにより、ロータ室38及びオイルシール34に供給されるインジェクション油の圧力(または流入量)が調整されてもよい。
【0111】
上記実施形態では、圧力センサ55が第1供給ライン10上に設けられてもよい。圧力センサ72に代えて中間部70の圧力を直接的に検出する圧力センサが設けられてもよい。第1及び第3実施形態では、分岐ライン71が省略され、中間部70と圧力調整弁66とを直接的に接続するラインが別途設けられてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 圧縮装置
6 吐出ライン
8 分離器
10 第1供給ライン
12 第4供給ライン
13 戻しライン
14 第2供給ライン
18 第3供給ライン
20 ケーシング
22 ロータ
22b 第2ロータ軸
26 第2軸受
32,32a,32b 第2ガスシール
30,30a,30b 第1ガスシール
34,34c,34d,35 オイルシール
34a ラビリンスシール
34b ネジ溝
38 ロータ室
42 ポンプ
44 開度調整弁
46,74 コントローラ
52 圧力センサ
66 圧力調整弁
68 圧力センサ
72 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8