(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鉄心は、前記電機子の長手方向視において先端が欠落した扇形の互いに平行な2つの円環扇形面と、前記2つの円環扇形面に対して垂直な4つの側面とを有する立体形状をなし、
前記磁極ブロックは、前記鉄心における前記扇形の半径方向内側の側面以外の5つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されている、
請求項2に記載の直動電動機。
前記鉄心は、前記電機子の長手方向視において五角形の一辺が円弧状とされた形状の互いに平行な2つの主面と、前記2つの主面に対して垂直な5つの側面とを有する立体形状をなし、
前記磁極ブロックは、前記鉄心における前記円弧状の側面以外の6つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されている、
請求項2に記載の直動電動機。
前記鉄心は、互いに平行な菱形の2つの面と、前記2つの面に対して垂直な4つの面とを有する六面体が、前記菱形の一の対角線に平行な軸を中心に、他の対角線を円弧状に湾曲させた立体形状をなし、
前記磁極ブロックは、前記鉄心における半径方向内側の円弧面以外の5つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されている、
請求項2に記載の直動電動機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機において、体積当たりの推力を増加させるためには、次の2つの方法がある。
(1)推力発生面、即ち、磁極子と電機子との対向面の面積を増加させる。
(2)コイルを大型化することで、電機子から生じる磁束を増加させる。
しかしながら、特許文献1に開示された直動電動機では、推力発生面を大きくするために磁極子の半径を大きくすると、電機子のコイルを設ける空間(コイルスペース)が減少し、コイルが小型化してしまう。電機子のバックヨークを薄くすることでコイルスペースを増加させることはできるが、バックヨークで磁気飽和が生じ、推力特性が低下する。一方、ハルバッハ配列は磁路中の磁石量を増加させることで空隙中の磁束密度を増加させる手法であり、磁石量が多くなるため高コストとなる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる直動電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の直動電動機は、複数のコイルが周方向に並べて配置された柱状の電機子と、前記電機子を囲繞する磁極子とを備え、前記磁極子は、前記コイルと対向して配置される鉄心と、前記コイルとの対向面を開放して前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石とを具備する磁極ブロックを複数有し、前記磁極ブロックにおいて、前記複数の永久磁石が前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され
ており、複数の前記磁極ブロックのそれぞれは、異なる磁極が周方向に交互に並ぶように配置され、且つ異なる磁極が前記電機子の長手方向に交互に並ぶように配置され、一の前記磁極ブロックの開放された側の面から出た磁束が、前記周方向及び前記長手方向に分岐し、当該一の前記磁極ブロックと前記周方向及び前記長手方向で隣り合う他の前記磁極ブロックに進入する。
【0011】
また、上記態様において、隣り合う前記磁極ブロックは、永久磁石の一面を互いに密着させていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記鉄心は、前記電機子の長手方向視において先端が欠落した扇形の互いに平行な2つの円環扇形面と、前記2つの円環扇形面に対して垂直な4つの側面とを有する立体形状をなし、前記磁極ブロックは、前記鉄心における前記扇形の半径方向内側の側面以外の5つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されていてもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記鉄心は、前記電機子の長手方向視において台形状の互いに平行な2つの台形面と、前記2つの台形面に対して垂直な4つの側面とを有する多面体状をなし、前記磁極ブロックは、前記鉄心における前記台形の上底側の側面以外の5つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、前記鉄心は、前記電機子の長手方向視において五角形の一辺が円弧状とされた形状の互いに平行な2つの主面と、前記2つの主面に対して垂直な5つの側面とを有する立体形状をなし、前記磁極ブロックは、前記鉄心における前記円弧状の側面以外の6つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されていてもよい。
【0015】
また、上記態様において、前記鉄心は、互いに平行な菱形の2つの面と、前記2つの面に対して垂直な4つの面とを有する六面体が、前記菱形の一の対角線に平行な軸を中心に、他の対角線を円弧状に湾曲させた立体形状をなし、前記磁極ブロックは、前記鉄心における半径方向内側の円弧面以外の5つの面のそれぞれに前記永久磁石が取り付けられて構成されていてもよい。
【0016】
また、上記態様において、前記磁極子は、推力を伝達する対象物を取り付けるために一部が欠落した環状に構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コストを抑制しつつ、従来に比して直動電動機の推力特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、複数のコイルが周方向に並べて配置された円柱状の電機子と、電機子を囲繞する円環状の磁極子とを備える直動電動機について説明する。磁極子は、異なる磁極が周方向に交互に並ぶように複数の磁極ブロックが円環状に配置されて構成される。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る直動電動機の構成を示す斜視図である。直動電動機100は、円柱状の電機子110と、円環状の磁極子120とを備える。電機子110と磁極子120とは同心円状に配置され、磁極子120が電機子110を囲繞する。直動電動機100が駆動されると、電機子110と磁極子120とが相対的に直線移動する。ここで、磁極子120を可動子とし、電機子110を固定子とする構成としてもよいし、電機子110を可動子とし、磁極子120を固定子とする構成としてもよい。本実施の形態では、磁極子120を可動子とし、電機子110を固定子とする構成について説明する。なお、以下の説明では、電機子110の中心軸101の長手方向を「可動方向」、中心軸101を中心とする円周方向を「周方向」、中心軸101に直交する方向を「半径方向」という。
【0022】
図2を参照して、電機子110の構成について説明する。
図2は電機子の構成を示す平面断面図である。電機子110は、電機子コイル111と、ティース部112と、ヨーク部113とを有する。ヨーク部113は円筒状をなしており、その外側面からは平面視においてT字状のティース部112が周方向に等間隔に並ぶように半径方向外側に突出している。ティース部112は、軸方向にもヨーク部113から並べて設けられている。
【0023】
ヨーク部113とティース部112とは電機子部材115として一体的に形成されている。かかる電機子部材115は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。また、各ティース部112には導線が巻回され電機子コイル111が形成される。電機子コイル111は、周方向に10個設けられている。
【0024】
次に、磁極子120の構成について説明する。
図1に示すように、磁極子120は、円環状をなしており、電機子110の半径方向外側に配置される。
図3は、磁極子120の構成を示す斜視図である。かかる磁極子120は、複数の磁極ブロック121を有しており、これらの磁極ブロック121が周方向に並べられた構造となっている。
【0025】
図4は、磁極ブロック121の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック121は、軟磁性体の鉄心122と、5つの板状の永久磁石123a〜123eとを有している。鉄心122は、軸方向視において先端が円弧状に欠落した扇形(以下、「円環扇形」という)の互いに平行な2つの面(以下、「円環扇形面」という)と、これらの円環扇形面に対して垂直な4つの側面とを有する立体形状をなしている。永久磁石123a及び123bは、鉄心122の円環扇形面と同じ又は若干大きい円環扇形の主面を有しており、鉄心122の円環扇形面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石123c及び123dは、鉄心122の軸方向長さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心122の長方形の側面(つまり、半径方向と平行な側面)を隠すようにそれぞれに取り付けられる。また、永久磁石123eは、鉄心122の大きい方の円弧面、即ち外側円弧面と同一の外径の円弧板状をなしており、鉄心122の外側円弧面を隠すようにこれに取り付けられる。つまり、鉄心122には、内側円弧面を開放して囲繞するように永久磁石123a〜123eが取り付けられる。また、各永久磁石123a〜123eは、鉄心122に同一の磁極を向けて配置される。鉄心122の開放された内側円弧面は可動子磁極124となる。後述するように、可動子磁極124は、各永久磁石123a〜123eが鉄心122を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石123a〜123eの外側を向く面(鉄心122とは反対側の面)は可動子磁極124の反対磁極となる。
【0026】
図3を参照する。磁極ブロック121のそれぞれは、長方形の側面同士を接して周方向に互いに接続される。周方向に隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極124が交互に並ぶように各磁極ブロック121が周方向に並べられる。このため、周方向について隣り合う磁極ブロック121の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック121が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック121を容易に周方向に並べて配置することができる。
【0027】
また、複数の磁極ブロック121が一列に並んだ円環状の構造体は軸方向に複数積層される。軸方向に隣接する磁極ブロック121のそれぞれは、円環扇面同士を接して互いに接続される。軸方向に隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極124が交互に並ぶように各磁極ブロック121が軸方向に並べられる。このため、軸方向について隣り合う磁極ブロック121の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック121が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック121を容易に軸方向に並べて配置することができる。
【0028】
さらに積層された円環状の構造体を囲繞するように円筒状の軟磁性体からなるバックヨーク125が外側に配置される。このため、各磁極ブロック121は可動子磁極124以外の磁極が外部に露出されず、バックヨーク125内に磁路が形成される。
【0029】
図5は磁極子120の磁路を説明するための部分拡大平面断面図であり、
図6は
図5のA−A線による断面図である。
図5及び
図6において、矢印は磁化方向を示しており、極性はS→Nとなっている。鉄心122は、その周囲を取り囲む永久磁石123a〜123eによって磁化される。S極が鉄心122に面する永久磁石123a〜123eから出た磁束が鉄心122内を進む。鉄心122には5面に永久磁石123a〜123eが取り付けられているため、これらの5つの永久磁石123a〜123eのそれぞれから出た磁束が鉄心122の内部を進み、それぞれの磁束が半径方向内向きに進行して可動子磁極124から内側の空間(電機子110とのギャップ)に出る。かかる磁束は放射状に周方向及び軸方向に分岐し、隣の磁極ブロック121のN極の可動子磁極124から鉄心122の内部に進入する。この鉄心122には、周方向及び軸方向のそれぞれに隣り合う4つの磁極ブロック121からの磁束が進入する。この鉄心122には永久磁石123a〜123eのN極が面しているため、磁束はさらにこの鉄心122の内部を進み、軸方向、周方向、及び半径方向外向きのそれぞれに分岐して永久磁石123a〜123eに入る。永久磁石123c及び123dからは周方向に隣接する永久磁石123c及び123dへと磁束が戻る。永久磁石123a及び123bからは軸方向に隣接する永久磁石123a及び123bへと磁束が戻る。また、永久磁石123eから出た磁束はバックヨーク125を周方向及び軸方向のそれぞれに分かれて進行し、周方向及び軸方向に隣接する磁極ブロック121の永久磁石123eに入る。
【0030】
可動子磁極124は、当該可動子磁極124を含む鉄心122に面した永久磁石123a〜123eの磁極と同一極性となる。つまり、鉄心122に永久磁石123a〜123eのS極が面している場合、当該鉄心122の可動子磁極124はS極となり、鉄心122に永久磁石123a〜123eのN極が面している場合、当該鉄心122の可動子磁極124はN極となる。
【0031】
上記のような構成の直動電動機100において、電機子コイル111に電流を流すと、電機子コイル111の周囲に磁界が発生する。
図7は、電機子コイル111から生じた磁路を示す部分拡大平面断面図である。各電機子コイル111の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部112の磁極子120との対向面が磁極(電機子磁極114)となる。
【0032】
電機子コイル111によって生じた磁束は、ギャップを通じて可動子磁極124から鉄心122に入り、永久磁石123a〜123dを通過する。永久磁石123c,123dを通過した磁束は、隣の磁極ブロック121の永久磁石123c,123dを介して鉄心122に入り、S極の可動子磁極124からギャップに出て、これに対向するN極の電機子磁極114に入る。図示しないが、永久磁石123a,123bを通過した磁束も同様にして、隣の磁極ブロック121の永久磁石123a,123bを介して鉄心122に入り、S極の可動子磁極124からギャップに出て、N極の電機子磁極114に入る。
【0033】
なお、電機子コイル111によって生じた磁束が永久磁石123eを通過してもよいし、通過しなくてもよい。当該磁束が永久磁石123eを通過するか否かは直動電動機100の構成による。例えば、鉄心122の半径方向寸法が小さく電機子磁極114と永久磁石123eとの距離が短ければ、電機子磁極114から生じた磁束が永久磁石123eを通過しやすく、鉄心122の半径方向寸法が大きく電機子磁極114と永久磁石123eとの距離が長ければ、電機子磁極114から生じた磁束が永久磁石123eを通過しにくい。本実施の形態に係る直動電動機100は、各鉄心122を永久磁石123a〜123eが取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の回転子に比べて、可動子磁極124に生じる磁束が増大される。したがって、直動電動機100における磁気効率が向上する。
【0034】
(実施の形態2)
本実施の形態では、複数のコイルが周方向に並べて配置された円柱状の電機子と、一部が欠落した円環状の磁極子とを備える直動電動機について説明する。
【0035】
図8は、本実施の形態に係る直動電動機の構成を示す平面図である。直動電動機200は、柱状の電機子210と、一部が欠落した円環状の磁極子220とを備える。電機子210と磁極子220とは同軸的に配置され、磁極子220が電機子210を囲繞する。直動電動機200が駆動されると、電機子210と磁極子220とが相対的に直線移動する。ここで、磁極子220を可動子とし、電機子210を固定子とする構成としてもよいし、電機子210を可動子とし、磁極子220を固定子とする構成としてもよい。本実施の形態では、磁極子220を可動子とし、電機子210を固定子とする構成について説明する。
【0036】
電機子210は、電機子コイル211と、ティース部212と、ヨーク部213とを有する。ヨーク部213は円柱状をなしている。ヨーク部213の円弧面からは外周の一部の範囲を除き、平面視においてT字状のティース部212が周方向に等間隔に並ぶように半径方向外側に突出している。ティース部212は、軸方向にもヨーク部213から並べて設けられている。即ち、本実施の形態に係る電機子部材215は、実施の形態1に係る電機子部材115から一部のティース部112が取り除かれた形状となっている。かかる電機子部材215は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。
【0037】
各ティース部212には導線が巻回され電機子コイル211が形成される。電機子コイル211は、周方向に8個設けられている。電機子部材215のティース部212が設けられていない部分は非コイル部216とされる。
【0038】
次に、磁極子220の構成について説明する。
図8に示すように、磁極子220は、一部が欠落した円環状、即ち平面視においてC字状をなしており、電機子210の半径方向外側に配置される。さらに詳細に説明すると、磁極子220の欠落部は、ヨーク部213の非コイル部216に周方向の位置を合わせて配置される。かかる磁極子220は、複数の磁極ブロック121を有しており、これらの磁極ブロック121が周方向に並べられた構造となっている。なお、磁極ブロック121の構成については、実施の形態1におけるものと同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
磁極ブロック121のそれぞれは、長方形の側面同士を接して周方向に互いに接続される。周方向に隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極124が交互に並ぶように各磁極ブロック121が周方向に並べられる。このため、周方向について隣り合う磁極ブロック121の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック121が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック121を容易に周方向に並べて配置することができる。
【0040】
また、複数の磁極ブロック121が一列に並んだ一部が欠落した円環状の構造体は軸方向に複数積層される(図示せず)。軸方向に隣接する磁極ブロック121のそれぞれは、円環扇面同士を接して互いに接続される。軸方向に隣接する2つの磁極ブロック121の可動子磁極124は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極124が交互に並ぶように各磁極ブロック121が軸方向に並べられる。このため、軸方向について隣り合う磁極ブロック121の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック121が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック121を容易に軸方向に並べて配置することができる。
【0041】
さらに積層された平面視C字状の構造体を囲繞するように平面視C字の筒状の軟磁性体からなるバックヨーク225が外側に配置される。このため、各磁極ブロック121は可動子磁極124以外の磁極が外部に露出されず、バックヨーク225内に磁路が形成される。なお、本実施の形態に係る磁極ブロック121に形成される磁路は、実施の形態1で説明した物と同様であるので、その説明を省略する。同様に、本実施の形態に係る電機子コイル211によって形成される磁路は、実施の形態1に係る電機子コイル111によって形成される磁路と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
上記の磁極子220における欠落部には、推力を伝達する対象物が取り付けられる。
図9は、本実施の形態に係る直動電動機を用いたラックアンドピニオン機構の構成を示す平面図であり、
図10はその側面図である。
図9及び
図10に示すように、推力伝達対象をラックアンドピニオン機構230におけるラックギア231とすることができる。本実施の形態に係る直動電動機200においては、磁極子210の一部が欠落しているため、この欠落部において磁気が発生せず、電機子210と磁極子220との間に生じる磁気吸引力が周方向で不均一となる。このため、欠落部の反対側において磁極子220が電機子210に引きつけられ、ラックギア231がピニオンギア232に押し付けられる。この結果、ラックギア231の歯の両面がピニオンギア232の2つの歯にそれぞれ接触した状態となり、バックラッシュが防止される。
【0043】
(実施の形態3)
本実施の形態では、周方向に同極が並び、軸方向に交互に異極が並ぶように配置した磁極子を備える直動電動機について説明する。
【0044】
図11は、本実施の形態に係る電機子の構成を示す斜視図であり、
図12は、本実施の形態に係る磁極子の構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る直動電動機は、円柱状の電機子310と、円環状の磁極子320とを備える。電機子310と磁極子320とは同心円状に配置され、磁極子320が電機子310を囲繞する。直動電動機が駆動されると、電機子310と磁極子320とが軸方向に相対的に直線移動する。ここで、磁極子320を可動子とし、電機子310を固定子とする構成としてもよいし、電機子310を可動子とし、磁極子320を固定子とする構成としてもよい。本実施の形態では、磁極子320を可動子とし、電機子310を固定子とする構成について説明する。
【0045】
図13及び
図14を参照して、電機子310の構成について説明する。
図13は電機子の構成を示す平面図であり、
図14は
図13のB−B線における矢視図、即ち、円筒状の電機子を平面的に展開したときの図である。電機子310は、電機子コイル311と、ティース部312と、ヨーク部313とを有する。ヨーク部313は円筒状をなしており、その外側面からは、周方向に概ね一周するように一部が欠落した環状のティース部312が半径方向外側に突出している。また、ヨーク部313には複数のティース部312が軸方向に並べて設けられている。
【0046】
ヨーク部313とティース部312とは電機子部材315として一体的に形成されている。かかる電機子部材315は、軟鉄、ソフトフェライト等の軟磁性体によって構成される。各ティース部312には導線が巻回され電機子コイル311が形成される。1つの電機子コイル311は、ヨーク部313の外周を概ね一周する。
【0047】
次に、磁極子320の構成について説明する。
図12に示すように、磁極子320は、円環状をなしており、電機子310の半径方向外側に配置される。かかる磁極子320は、複数の磁極ブロック321を有しており、これらの磁極ブロック321が周方向に並べられた構造となっている。
【0048】
図15は、磁極ブロック321の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック321は、軟磁性体の鉄心322と、5つの板状の永久磁石323a〜323eとを有している。鉄心322は、互いに平行な菱形の2つの面と、前記2つの面に対して垂直な4つの面とを有する六面体が、菱形の一の対角線に平行な軸を中心に、他の対角線を円弧状に湾曲させた立体形状をなしている。以下、周方向内側の菱形の円弧面を「内側菱形円弧面」、周方向外側の菱形の円弧面を「外側菱形円弧面」といい、内側菱形円弧面と外側菱形円弧面とを繋ぐ4つの面のそれぞれを「側面」という。
【0049】
永久磁石323a乃至323dは、鉄心322の側面と同じ又は若干大きい主面を有しており、鉄心322の側面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石323eは、鉄心322の外側菱形円弧面と同じ又は若干大きい主面を有した円弧板状をなしており、外側菱形円弧面を隠すように取り付けられる。つまり、鉄心322には、内側菱形円弧面を開放して囲繞するように永久磁石323a〜323eが取り付けられる。また、各永久磁石323a〜323eは、鉄心322に同一の磁極を向けて配置される。鉄心322の開放された内側菱形円弧面は可動子磁極324となる。可動子磁極324は、各永久磁石323a〜323eが鉄心322を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石323a〜323eの外側を向く面(鉄心322とは反対側の面)は可動子磁極324の反対磁極となる。
【0050】
図12を参照する。磁極ブロック321のそれぞれは、側面同士を接して軸方向及び周方向に対して斜めの方向に互いに接続される。隣接する2つの磁極ブロック321の可動子磁極324は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極324が交互に並ぶように各磁極ブロック321が軸方向及び周方向に対して斜めの方向に並べられる。このため、隣り合う磁極ブロック321の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック321が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック321を容易に並べて配置することができる。
【0051】
図16は、本実施の形態に係る磁極子の内側面を平面に展開した状態を示す図である。1つの磁極ブロック321の軸方向の両側及び周方向の両側のそれぞれには、頂点を対向させるように磁極ブロック321が配置される。このようにして互いに頂点を対向させて配置される磁極ブロック321の可動子磁極324は同一磁極とされる。つまり、磁極ブロック321は、同一の可動子磁極324が周方向に並ぶように配置され、また、同一の可動子磁極324が軸方向に並ぶように配置される。
【0052】
以下の説明では、菱形円弧面の可動子磁極324が頂点を突き合わせるようにして周方向に一列に並んだ一群の磁極ブロック321を、磁極ブロック321の「列」という。1つの列に含まれる全ての可動子磁極324は同極とされる。また、隣り合う列は互いに異極とされる。
図16に示すように、1列目(最も軸方向の一方側の列)はS極とされ、2列目(軸方向一方側の2番目の列)はN極とされ、3列目はS極とされ、4列目はN極とされ、5列目はS極とされ、6列目はN極とされる。換言すれば、磁極子320において、前後方向に1列ずつ可動子磁極324が反転し、一列の周方向に同一の可動子磁極324が並ぶ。
【0053】
上記のようにして複数の磁極ブロック321が互いに接続されて構成された円環状の構造体を囲繞するように円筒状の軟磁性体からなるバックヨーク325が外側に配置される。このため、各磁極ブロック321は可動子磁極324以外の磁極が外部に露出されず、バックヨーク325内に磁路が形成される。
【0054】
上記のような構成の直動電動機において、電機子コイル311に電流を流すと、電機子コイル311の周囲に磁界が発生する。各電機子コイル311の断面の回りに環状の磁路が形成される。このとき、ティース部312の磁極子320との対向面が電機子磁極314(
図11参照)となる。
【0055】
電機子コイル311に電流が流れると、電機子磁極314と可動子磁極324とが磁力によって吸引又は反発される。電機子コイル311に流れる電流が制御されることで、電機子コイル311によって生じる磁界が変化し、これによって磁極子320が軸方向に移動する。円環状のS極の電機子磁極314からは放射状に磁束が出る。かかる磁束は円環状に配置されたN極の列の各可動子磁極324に入り、この可動子磁極324を有する鉄心322に接する全ての永久磁石323を通過する。永久磁石323を出た磁束は、隣のS極の列の各磁極ブロック321の永久磁石323に入り、円環状に配置されたS極の各可動子磁極324から出て円環状のN極の電機子磁極314に入る。つまり、本実施の形態に係る直動電動機では、電機子310によって生じた磁束が磁極ブロック321の全ての永久磁石323を通過する。磁極子320では、各鉄心322を永久磁石323が取り囲んでいるため、従来型の鉄心の2面にのみ永久磁石が取り付けられた構造の磁極子に比べて、可動子磁極324に生じる磁束が増大される。したがって、直動電動機における磁気効率が向上する。
【0056】
(実施の形態4)
本実施の形態では、軸方向視において台形状の互いに平行な2つの台形面と、2つの台形面に対して垂直な4つの側面とを有する多面体状の鉄心の5つの面に永久磁石が取り付けられた磁極ブロックにより構成された磁極子を有する直動電動機について説明する。
【0057】
本実施の形態に係る電機子の構成は、実施の形態1に係る電機子の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
本実施の形態に係る磁極子の構成について説明する。
図17は、本実施の形態に係る磁極子の構成を示す平面断面図である。磁極子420は、多角形環状をなしており、電機子110の半径方向外側に配置される。かかる磁極子420は、複数の磁極ブロック421を有しており、これらの磁極ブロック421が周方向に並べられた構造となっている。
【0059】
図18は、磁極ブロック421の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック421は、軟磁性体の鉄心422と、5つの板状の永久磁石423a〜423eとを有している。鉄心422は、軸方向視において台形の互いに平行な2つの面(以下、「台形面」という)と、これらの台形面に対して垂直な4つの側面とを有する多面体状をなしている。永久磁石423a及び423bは、鉄心422の台形面と同じ又は若干大きい台形の主面を有しており、鉄心422の台形面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石423c及び423dは、鉄心422の軸方向長さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心422の台形の脚側の側面(つまり、半径方向と平行な側面)を隠すようにそれぞれに取り付けられる。また、永久磁石423eは、鉄心422の軸方向長さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心422の台形の下底側の側面(つまり、半径方向外側を向く側面)を隠すようにこれに取り付けられる。つまり、鉄心422には、台形の上底側の側面(つまり、半径方向内側を向く側面)を開放して囲繞するように永久磁石423a〜423eが取り付けられる。また、各永久磁石423a〜423eは、鉄心422に同一の磁極を向けて配置される。鉄心422の開放された側面は可動子磁極424となる。可動子磁極424は、各永久磁石423a〜423eが鉄心422を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石423a〜423eの外側を向く面(鉄心422とは反対側の面)は可動子磁極424の反対磁極となる。
【0060】
図17を参照する。磁極ブロック421のそれぞれは、台形の脚側の側面同士を接して周方向に互いに接続される。周方向に隣接する2つの磁極ブロック421の可動子磁極424は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極424が交互に並ぶように各磁極ブロック421が周方向に並べられる。このため、周方向について隣り合う磁極ブロック421の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック421が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック421を容易に周方向に並べて配置することができる。
【0061】
また、複数の磁極ブロック421が一列に並んだ環状の構造体は軸方向に複数積層される。軸方向に隣接する磁極ブロック421のそれぞれは、台形面同士を接して互いに接続される。軸方向に隣接する2つの磁極ブロック421の可動子磁極424は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極424が交互に並ぶように各磁極ブロック421が軸方向に並べられる。このため、軸方向について隣り合う磁極ブロック421の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック421が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック421を容易に軸方向に並べて配置することができる。
【0062】
さらに積層された円環状の構造体を囲繞するように多角形筒状の軟磁性体からなるバックヨーク425が外側に配置される。このため、各磁極ブロック421は可動子磁極424以外の磁極が外部に露出されず、バックヨーク425内に磁路が形成される。バックヨーク425の外周面の頂点は、隣り合う2つの磁極ブロック421の接合位置の半径方向外側に設けられる。隣り合う2つの磁極ブロック421の接合位置の半径方向外側の部分は、一方の磁極ブロック421の永久磁石423eから出て他方の磁極ブロック421の永久磁石423eに入る磁束が通る箇所であり、磁束が集中する。このため、この部分に頂点を設けることによって、当該部分における半径方向に切断したときの断面積が大きくなり、磁気飽和を抑制することができる。
【0063】
(実施の形態5)
本実施の形態では、軸方向視において五角形の一辺が円弧状とされた平行な2つの主面と、2つの主面に対して垂直な5つの側面とを有する立体形状の鉄心の6つの面に永久磁石が取り付けられた磁極ブロックにより構成された磁極子を有する直動電動機について説明する。
【0064】
本実施の形態に係る電機子の構成は、実施の形態1に係る電機子の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
本実施の形態に係る磁極子の構成について説明する。
図19は、本実施の形態に係る磁極子の構成を示す平面断面図である。磁極子520は、円環状をなしており、電機子110の半径方向外側に配置される。かかる磁極子520は、複数の磁極ブロック521を有しており、これらの磁極ブロック521が周方向に並べられた構造となっている。
【0066】
図20は、磁極ブロック521の構成を示す分解斜視図である。磁極ブロック521は、軟磁性体の鉄心522と、6つの板状の永久磁石523a〜523fとを有している。鉄心522は、軸方向視において、五角形の一辺が円弧となった平面形状の互いに平行な2つの主面と、これらの主面に対して垂直な5つの側面とを有する立体形状をなしている。永久磁石523a及び523bは、鉄心522の略五角形の主面と同じ又は若干大きい形状の主面を有しており、鉄心522の主面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。永久磁石523c乃至523fは、鉄心522の軸方向長さと同一又は若干大きい幅を有しており、鉄心522の円弧面以外の側面を隠すようにそれぞれに取り付けられる。つまり、鉄心522には、円弧面(つまり、半径方向内側を向く側面)を開放して囲繞するように永久磁石523a〜523fが取り付けられる。また、各永久磁石523a〜523fは、鉄心522に同一の磁極を向けて配置される。鉄心522の開放された円弧面は可動子磁極524となる。可動子磁極524は、各永久磁石523a〜523fが鉄心522を向く面の磁極と同一磁極となる。また、各永久磁石523a〜523fの外側を向く面(鉄心522とは反対側の面)は可動子磁極524の反対磁極となる。
【0067】
図19を参照する。磁極ブロック521のそれぞれは、円弧面に連なる側面(つまり、半径方向に平行な側面)同士を接して周方向に互いに接続される。周方向に隣接する2つの磁極ブロック521の可動子磁極524は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極524が交互に並ぶように各磁極ブロック521が周方向に並べられる。このため、周方向について隣り合う磁極ブロック521の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック521が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック521を容易に周方向に並べて配置することができる。
【0068】
また、複数の磁極ブロック521が一列に並んだ環状の構造体は軸方向に複数積層される。軸方向に隣接する磁極ブロック521のそれぞれは、概略五角形の主面同士を接して互いに接続される。軸方向に隣接する2つの磁極ブロック521の可動子磁極524は互いに異なる磁極とされる。つまり、異なる可動子磁極524が交互に並ぶように各磁極ブロック521が軸方向に並べられる。このため、軸方向について隣り合う磁極ブロック521の接合面は一方がS極となり他方がN極となる。したがって、隣り合う2つの磁極ブロック521が磁力によって互いに引きつけ合い、複数の磁極ブロック521を容易に軸方向に並べて配置することができる。
【0069】
さらに積層された円環状の構造体を囲繞するように円筒状の軟磁性体からなるバックヨーク525が外側に配置される。このため、各磁極ブロック521は可動子磁極524以外の磁極が外部に露出されず、バックヨーク525内に磁路が形成される。
【0070】
上記のように、本実施の形態に係る磁極ブロック521にあっては、半径方向外側において所定角度で互いに傾斜するように2つの永久磁石523e及び523fを設けているため、実施の形態4のような半径方向外側に1つの永久磁石423eを設けた構成に比べて、永久磁石の表面積を大きくすることができる。このため、磁極ブロック521が生じる磁束量を増大させ、磁気特性を向上させることができる。
【0071】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1乃至5においては、磁極ブロックのそれぞれが固有の永久磁石を有する構成について述べたが、これに限定されるものではない。隣り合う磁極ブロックが1つの永久磁石を共有する構成であってもよい。
図21は、磁極子の構成の変形例を示す平面断面図である。
図21に示すように、この例に示す磁極子620では、半径方向に延びる板状の永久磁石623が、周方向に隣り合う磁極ブロック621によって共有される。つまり、周方向に隣り合う2つの鉄心622の間には、1つの永久磁石623が配置される。この永久磁石623のS極の面は1つの鉄心622に接合されており、この鉄心622の可動子磁極624がS極とされる。他方、永久磁石623のN極の面はもう一つの鉄心622に接合されており、この鉄心622の可動子磁極624がN極とされる。
【0072】
また、上記の実施の形態3乃至5においては、磁極子を環状とする構成について述べたが、これに限定されるものではない。実施の形態2と同様に、磁極子を周方向の一部が欠落した環状とし、この欠落部にラックアンドピニオン機構等の推力伝達対象を取り付ける構成としてもよい。