(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属ケースの外側において、少なくとも、前記各ヒーターの前記電極と前記被覆電線との接続部分、及び前記金属ケースの前記孔部を気密的に覆うように設けられたカバーを更に備える請求項1に記載のハニカム型加熱装置。
前記被覆電線の導体が、Ni、Ni基合金及びステンレス鋼からなる群より選択された何れか一種の金属材料で構成されている請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
前記複数のヒーターが、電気的に直列又は並列に接続されており、200V以上の高電圧を通電できるような電気抵抗を有する請求項1〜7の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
前記ハニカム基材の長さ方向に直交する断面において、前記ハニカム基材の前記外周面上に配置されている前記各ヒーターの中心角が、180゜以下である請求項1〜9の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通電によりハニカム構造体自体を発熱させる方式では、振動等によりハニカム構造体に軽度のクラックが生じただけでも、ハニカム構造体内を流れる電流の経路が変化して、温度の低下や温度分布の変化が生じるため、耐久性が十分とは言えない。また、この方式において、ハニカム構造体は、その外周に断熱材(把持材)が巻き付けられ、筒状の金属ケース内に収納された状態で使用されるが、断熱材が水分を吸収(吸水)すると、ハニカム構造体に通電した際に、漏電や短絡が生じるおそれが有る。即ち、エンジン遮断後に排気系に残留する水蒸気は排気系で結露するため、排気系に断熱材のような吸水部材があると、結露により生じた水分が吸水部材(断熱材)に集まってくる傾向がある。そして、そのような水分を断熱材が吸水すると、断熱材の電気絶縁性が低下し、その結果、吸水した断熱材により漏電・短絡事故が生じ得る。
【0007】
一方、ハニカム構造体の外周壁を取り囲むように、筒状の抵抗加熱式ヒーターを配置する方式では、ハニカム構造体は、外部のヒーターによって加熱されるため、振動等によりハニカム構造体に軽度のクラックが生じても、ハニカム構造体の温度変化は少ない。しかし、筒状のヒーターは、熱応力による破損が生じ易い。そして、単一(一体構造)の抵抗加熱式ヒーターによる加熱では、そのヒーターが破損して通電できなくなると、ハニカム構造体全体が全く加熱されなくなる。
【0008】
このような問題を解決する手段として、ハニカム構造体の外周壁を取り囲むように、複数の抵抗加熱式ヒーターを配置することが考えられる。この場合、複数のヒーターに纏めて通電するため、それら複数のヒーター間を電気的に接続する接続体が必要になる。ここで、接続体に高剛性のものを用いると、接続体によってヒーター間が強く拘束されてしまう。このため、ハニカム構造体がヒーターにより加熱された際に、ハニカム構造体と、その周囲に配置され、接続体によって接続された複数のヒーターとの熱膨張差によって、それらの間に高い応力が発生する。そして、その結果、ハニカム構造体の破損やヒーターと接続体との接触不良が生じる。一方、接続体に被覆電線のような低剛性のものを用いると、接続体によるヒーター間の拘束力が弱まるため、前記のような応力を緩和できるものの、そのような低剛性の接続体は、通常、熱容量が小さいため、ヒーターの熱によって溶断し易い。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造体(ハニカム基材)の外周壁を取り囲む複数のヒーター間の接続に低剛性の接続体を用いても、接続体が溶断し難いハニカム型加熱装置とその使用方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム型加熱装置及びその使用方法が提供される。
【0011】
[1] 一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、前記隔壁を取り囲む外周壁とを有する柱状のハニカム基材、前記外周壁の外側表面である外周面の周方向に沿って当該外周面上に隣接配置された複数のヒーター、前記複数のヒーターを電気的に接続する被覆電線、及び前記ハニカム基材と前記複数のヒーターとを収納する金属ケースを備え、前記各ヒーターが、通電のための電極を有し、通電により発熱する抵抗加熱式ヒーターであり、前記金属ケースが、前記各ヒーターの前記電極を前記金属ケースの外部に突出させるための孔部を有し、前記被覆電線が、前記金属ケースの外部において、前記孔部から金属ケースの外部に突出した前記各ヒーターの前記電極を電気的に接続している、ハニカム型加熱装置
であって、前記ヒーターは、セラミック部材の内部に発熱抵抗体が埋設されたセラミックヒーターであり、前記発熱抵抗体上には、前記ヒーターに通電するための前記電極が立設されている、ハニカム型加熱装置。
【0012】
[2] 前記金属ケースの外側において、少なくとも、前記各ヒーターの前記電極と前記被覆電線との接続部分、及び前記金属ケースの前記孔部を気密的に覆うように設けられたカバーを更に備える[1]に記載のハニカム型加熱装置。
【0013】
[3] 前記被覆電線に、応力緩和部が設けられている[1]又は[2]に記載のハニカム型加熱装置。
【0014】
[4] 前記応力緩和部が、前記被覆電線の撓んだ部分である[3]に記載のハニカム型加熱装置。
【0015】
[5] 前記被覆電線の導体の溶融温度が、400℃以上である[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0016】
[6] 前記被覆電線の導体が、Ni、Ni基合金及びステンレス鋼からなる群より選択された何れか一種の金属材料で構成されている[1]〜[5]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0017】
[7] 前記ハニカム基材が、熱伝導率が20W/m・K以上のセラミック材料で構成されている[1]〜[6]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0018】
[8] 前記複数のヒーターが、電気的に直列又は並列に接続されており、200V以上の高電圧を通電できるような電気抵抗を有する[1]〜[7]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0019】
[9] 前記各ヒーターが、前記各ヒーターから前記ハニカム基材へ電流が流れるのを防止するための絶縁機能を有する[1]〜[8]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0020】
[10] 前記ハニカム基材の長さ方向に直交する断面において、前記ハニカム基材の前記外周面上に配置されている前記各ヒーターの中心角が、180゜以下である[1]〜[9]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0021】
[11] 前記外周壁の厚さが、前記隔壁の厚さよりも厚い[1]〜[10]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0022】
[12] 前記ハニカム基材に、ストレスレリーフが形成されている[1]〜[11]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0023】
[13]
前記各ヒーターのそれぞれが、前記電極として陽極側の電極及び陰極側の電極を有し、通電により個々に独立して発熱する抵抗加熱式ヒーターであり、前記金属ケースが、前記各ヒーターの前記陽極側の電極及び前記陰極側の電極のそれぞれを前記金属ケースの外部に突出させるための前記孔部を有し、前記被覆電線が、前記金属ケースの外部において、前記孔部から金属ケースの外部に突出した前記陽極側の電極及び前記陰極側の電極を電気的に接続している[1]〜[12]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
[14] 前記ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させた[1]〜[
13]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0024】
[
15] [1]〜[
14]の何れかに記載のハニカム型加熱装置を、前記被覆電線の温度が600℃以下となる温度条件で使用する、ハニカム型加熱装置の使用方法(第一の使用方法)。
【0025】
[
16] [
14]に記載のハニカム型加熱装置を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置し、前記エンジンの始動前に前記各ヒーターへの通電を開始することにより前記各ヒーターを発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させた前記ハニカム基材を、前記触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させるハニカム型加熱装置の使用方法(第二の使用方法)。
【発明の効果】
【0026】
本発明のハニカム型加熱装置においては、ハニカム基材の外周面上に隣接配置された複数のヒーター間の接続を、金属ケースの内部に比べて温度の低い、金属ケースの外部において行っている。このため、当該接続を行うための接続体として、熱容量が小さい被覆電線を用いていても、ヒーターの熱による被覆電線(接続体)の溶断が生じ難い。また、被覆電線は低剛性であることから、被覆電線によるヒーター間の拘束力が弱い。このため、ハニカム基材がヒーターにより加熱された際に、ハニカム基材と、被覆電線(接続体)によって接続された複数のヒーターとの熱膨張差によって、それらの間に生じる応力を緩和できる。そして、その結果、当該応力に起因するハニカム基材の破損やヒーターと接続体との接触不良を防止できる。
【0027】
また、本発明のハニカム型加熱装置の使用方法(第一の使用方法)によれば、本発明のハニカム型加熱装置を、被覆電線の温度が600℃以下となる温度条件で使用するため、被覆電線の溶断が生じ難い。
【0028】
また、本発明のハニカム型加熱装置の使用方法(第二の使用方法)によれば、エンジン始動前に各ヒーターへの通電を開始することにより各ヒーターを発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム基材を、触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させることができる。そして、その結果、エンジン始動直後から、活性化した触媒により、排ガス中に含まれる有害成分を効率良く浄化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、それらの実施形態に限定されて解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等を加え得るものである。
【0031】
(1)ハニカム型加熱装置:
図1は、本発明のハニカム型加熱装置の実施形態の一例を示す概略側面図であり、
図2は、
図1のA−A’断面図である。これら
図1及び
図2に示すように、本発明のハニカム型加熱装置1は、ハニカム基材2と、複数のヒーター9と、被覆電線11と、金属ケース15とを備える。
【0032】
ハニカム基材2は、柱状で、一方の端面6から他方の端面7まで延びる複数のセル5を区画形成する隔壁4と、隔壁4を取り囲む外周壁3とを有する。セル5は、排ガス等の流体の流路となる。複数のヒーター9は、ハニカム基材2の外周壁3の外側表面(外部に露出している側の面)である外周面8の周方向に沿って、外周面8上に隣接配置されている。各ヒーター9は、通電のための電極21を有し、通電により発熱する抵抗加熱式ヒーターである。複数のヒーター9は、被覆電線11によって電気的に接続されている。本実施形態では、
図1に示すように、2本の被覆電線11a、11bが配設されている。これら2本の被覆電線の内、一方の被覆電線11aは、各ヒーター9の陽極側の電極21aに接続され、他方の被覆電線11bは、各ヒーター9の陰極側の電極21bに接続されている。これら2本の被覆電線11a、11bを通じて各ヒーター9に通電し、各ヒーター9を発熱させる。ハニカム基材2と複数のヒーター9とは、筒状の金属ケース15に収容されている。
【0033】
金属ケース15は、各ヒーター9の電極21を金属ケース15の外部に突出させるための孔部18を有する。各ヒーター9の電極21は、金属ケース15の孔部18を通じて、金属ケース15の外部に突出している。被覆電線11は、金属ケース15の外部において、金属ケース15の外部に突出している各ヒーター9の電極21と電気的に接続されている。
【0034】
本発明のハニカム型加熱装置1においては、このように、複数のヒーター9の電極21以外の部分(発熱部分)と、被覆電線11との間に、ある程度の熱容量を持った金属ケース15が存在している。このため、ヒーター9の発熱時において、金属ケース15の外部の温度を、ヒーター9の温度によりも200℃以上低くすることができる。よって、複数のヒーター9間の接続を金属ケース15の外部において行う本発明のハニカム型加熱装置1では、当該接続を行うための接続体として、熱容量が小さい被覆電線11を使用していても、ヒーター9の熱による被覆電線11の溶断が生じ難い。
【0035】
また、被覆電線11は低剛性であることから、被覆電線11によるヒーター9間の拘束力が弱い。このため、ハニカム基材2がヒーター9により加熱された際に、ハニカム基材2と、被覆電線(接続体)11によって接続された複数のヒーター9との熱膨張差によって、それらの間に生じる応力を緩和できる。そして、その結果、当該応力によるハニカム基材2の破損やヒーター9と被覆電線11との接触不良を効果的に防止できる。
【0036】
また、本発明のハニカム型加熱装置1においては、複数のヒーター9によってハニカム基材2を加熱するため、一部のヒーター9が破損して発熱しなくなったとしても、残りの発熱可能なヒーター9で、ハニカム基材2を加熱することができる。
【0037】
更に、本発明のハニカム型加熱装置1に使用される複数のヒーター9は、ハニカム基材2の外周面8の周方向において隣接しているものの、互いに分断された分割構造となっているため、個々のヒーター9には大きな熱応力が生じ難い。このため、これら複数のヒーター9は、特許文献2に開示されているような、筒状で単一のヒーターに比べ、熱応力による破損が起こり難く、耐久性に優れる。
【0038】
図3は、本発明のハニカム型加熱装置の実施形態の他の一例を示す概略側面図であり、
図4は、
図3のB−B’断面図である。これら
図3及び
図4に示す実施形態は、
図1及び
図2に示す前記実施形態に対して、カバー19を付加したものである。このカバー19は、金属ケース15の外側において、少なくとも、各ヒーター9の電極21と被覆電線11との接続部分、及び金属ケース15の孔部18を気密的に覆うように設けられている。このようなカバー19を設けることにより、各ヒーター9の電極21と被覆電線11との接続部分を保護できるとともに、金属ケース15の孔部18から漏れ出した排ガス等が、更にハニカム型加熱装置1の外部にまで漏れ出すのを防止できる。
【0039】
本発明のハニカム型加熱装置1に使用されるヒーター9の数は、複数であればよく、上限数は特に限定されないが、装置の組み立て易さ等を考慮すると、2〜8個程度とすることが好ましい。外周面が湾曲したハニカム基材(例えば円柱状のハニカム基材)を用いる場合には、
図2等に示すように、ヒーター9に、ハニカム基材2の外周面8と同程度に湾曲した凹円弧状の面10が形成されていることが好ましい。この凹円弧状の面10は、ハニカム基材2の外周面8と対向する面である。このような面10を形成することにより、ヒーター9をハニカム基材2の外周面8上に配置したときに、ヒーター9と外周面8との間に隙間が生じ難くなり、ヒーター9の熱がハニカム基材2に効率良く伝達される。
【0040】
また、本発明のハニカム型加熱装置1は、ハニカム基材2の周方向において、外周面8の50%以上がヒーター9により覆われている部分を有していることが好ましい。更に、本発明のハニカム型加熱装置1には、この「ハニカム基材2の周方向において、外周面8の50%以上がヒーター9により覆われている部分」が、ハニカム基材2の長さ方向において、ハニカム基材2の全長の60%以上の長さに渡って存在することが好ましい。ハニカム基材2の外周面8において、ヒーター9により覆われる領域を、このように設定することにより、ハニカム基材2を目標とする温度まで加熱し易くなる。
【0041】
通常、本発明のハニカム型加熱装置1を、自動車に搭載して使用する場合、ヒーター9の通電に、自動車の電気系統に使用される電源が共通で使用され、例えば200Vという高い電圧の電源が用いられる。このため、本発明のハニカム型加熱装置1においては、複数のヒーター9が、電気的に直列又は並列に接続されており、200V以上の高電圧を通電できるような電気抵抗を有することが好ましい。ここで、「200V以上の高電圧を通電できる」とは、具体的には、200V通電時に電流を25A程度とすることが可能であることを意味する。
【0042】
尚、金属製のヒーターは、電気抵抗が低いため、このような高い電圧の電源を用いた場合、過剰に電流が流れ、電源回路を損傷させることがある。よって、本発明のハニカム型加熱装置1においては、セラミック部材の内部に発熱抵抗体が埋設されたセラミックヒーターを用いることが好ましい。セラミック部材の構成材料としては、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ等が好適に使用できる。また、発熱抵抗体の構成材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ベリリウム(Be)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)等が好適に使用できる。また、発熱抵抗体の構成材料は、化合物であってもよく、この場合、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)の窒化物、炭化物、硼化物、珪化物等が好適に使用できる。
【0043】
図5は、本発明のハニカム型加熱装置に使用されるヒーターの一例を示す概略断面図である。このヒーター9は、セラミック部材23の内部に発熱抵抗体22が埋設されたセラミックヒーターである。発熱抵抗体22上には、ヒーター9(発熱抵抗体22)に通電するための電極21が立設されている。電極21は、発熱抵抗体22と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。電極21は、被覆電線11と電気的に接続される先端近傍部の除き、その外周が絶縁材料からなる筒状の絶縁カバー24で覆われていることが好ましい。このように、電極21の外周が絶縁カバー24で覆われていることにより、電極21と金属ケース15の孔部18の内周面との間の絶縁性を確保することが容易となる。絶縁カバー24は、内径が1mm以上で、外径が10mm以下であることが好ましい。発熱抵抗体22が埋設されたセラミック部材23が、絶縁性のセラミックスからなるものである場合、絶縁カバー24の材質は、セラミック部材23と同じ材質であることが好ましい。
【0044】
本発明のハニカム型加熱装置1に使用されるハニカム基材2が導電性材料から形成されている場合、各ヒーター9は、各ヒーター9からハニカム基材2へ電流が流れるのを防止するための絶縁機能を有することが好ましい。各ヒーター9が絶縁機能を有していると、ハニカム基材2が導電性材料から形成されている場合においても、各ヒーター9からハニカム基材へ電流が流れて、短絡(ショート)するのを防止することができる。各ヒーター9に絶縁機能を付与する方法の一例としては、例えば、各ヒーター9の、ハニカム基材2の外周面8と対向する面に、層状の絶縁材を配設する方法が挙げられる。絶縁材の材質としては、窒化珪素、アルミナ等が好適に使用できる。
【0045】
本発明のハニカム型加熱装置1では、ハニカム基材2の長さ方向(軸方向)に直
交する断面において、ハニカム基材2の外周面8上に配置されている各ヒーター9の中心角αが、180゜以下であることが好ましい。また、この中心角αは、10〜180゜であることがより好ましく、10〜100゜であることが更に好ましい。ここで、「各ヒーター9の中心角α」とは、
図8に示すように、ハニカム基材2の長さ方向に直交する断面において、各ヒーター9の両端とハニカム基材2の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角である。また、「ハニカム基材2の中心O」とは、
図8に示すように、ハニカム基材2の長さ方向に直交する断面の外周形状が円形である場合は、その円の中心を意味する。また、ハニカム基材2の長さ方向に直交する断面の外周形状が円形以外の形状である場合は、その断面に内包される最大の円の中心を意味する。各ヒーター9の中心角αが、180゜を超えると、ハニカム基材2とヒーター9との間に隙間が生じ易くなる。また、各ヒーター9の中心角αが、10゜未満では、1つのヒーター9で覆うことができる外周面8の範囲が狭くなり、ハニカム基材2を目標の温度まで加熱するために必要なヒーター9の数が多くなりすぎる場合がある。尚、
図8においては、ハニカム基材2の隔壁が省略されている。
【0046】
本発明のハニカム型加熱装置1においては、被覆電線11に、応力を緩和するための応力緩和部が設けられていることが好ましい。ここで言う「応力緩和部」とは、被覆電線によるヒーター間の拘束力を低下させ、ハニカム基材がヒーターにより加熱された際に、ハニカム基材と、被覆電線によって接続された複数のヒーターとの熱膨張差によって生じる応力を緩和する機能を有する部位である。
図6は、応力緩和部の一例を示す概略平面図である。この例では、被覆電線11の撓んだ部分が応力緩和部25となる。即ち、
図6に示すように、隣接するヒーター9の電極21間において、被覆電線11に撓みを設けておくと、ハニカム基材が熱膨張した際に、隣接するヒーター9間の間隔が広がって、前記応力が緩和される。
【0047】
本発明のハニカム型加熱装置1において、被覆電線11は、その導体部分の溶融温度が、400℃以上であることが好ましく、800℃以上であることがより好ましく、1000℃以上であることが特に好ましい。このように、導体部分の溶融温度が高い被覆電線11を用いることで、被覆電線11がより溶断し難くなる。被覆電線11の導体部分の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性が高く、低抵抗であることから、ニッケル(Ni)、Ni基合金及びステンレス鋼からなる群より選択された何れか一種の金属材料から構成されたものであることが好ましい。また、銅線がニッケルで被覆されたニッケル被覆銅線を、導体に用いることも好ましい。
【0048】
被覆電線11の導体部分の直径は、4.0〜8.0mmであることが好ましく、5.0〜7.0mmであることがより好ましく、6.0〜7.0m
mであることが特に好ましい。被覆電線11の導体部分の直径が4.0mm未満であると、導体に加わる電力密度が高くなりすぎて、溶断し易くなる場合がある。一方、被覆電線11の導体部分の直径が8.0mmを超えると、被覆電線11の剛性が高くなりすぎて、応力緩和効果が十分に発現しない場合がある。
【0049】
被覆電線11の導体を被覆する被覆材の材質は、特に限定されるものではないが、絶縁性、耐熱性等の観点から、PFA、PTFE等のフッ素樹脂や、ガラス編組、シリグラス編組からなるものが好ましい。
【0050】
本発明のハニカム型加熱装置1に使用されるハニカム基材2は、熱伝導率が20W/m・K以上のセラミック材料で構成されていることが好ましく、熱伝導率が50W/m・K以上のセラミック材料で構成されていることがより好ましい。ハニカム基材2が、このような熱伝導率の高い材料で構成されていることにより、ヒーター9の熱をハニカム基材2に効率良く伝達することができるとともに、ハニカム基材2全体を均一に発熱させることができる。尚、本発明において、ハニカム基材の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法で測定した値である。
【0051】
ハニカム基材2の構成材料としては、熱伝導性、耐熱性、耐食性に優れたSiC(炭化珪素)を主成分とするものが好ましい。尚、ここで言う「主成分」とは、材料全体の50質量%以上であることを意味する。より具体的な構成材料としては、Si−SiC複合材、(Si+Al)−SiC複合材、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、SiC等が好適な材料として挙げられる。但し、ハニカム基材2の気孔率が高すぎる場合には、これらの材料を用いても、高い熱伝導率が得られないことがあるため、ハニカム基材2は緻密質(気孔率が0〜5%程度)であることが好ましい。Si−SiC複合材は、SiCに金属Siが含浸されることで緻密に形成され、高い熱伝導率や耐熱性を示すため、ハニカム基材2の構成材料として特に好ましい。
【0052】
ハニカム基材2の外周壁3の厚さは、隔壁4の厚さよりも厚いことが好ましい。このように、外周壁3の厚さを、隔壁4の厚さよりも厚くすることで、ハニカム基材2の強度を高めることができ、ハニカム基材2に必要な強度を確保し易くなる。
【0053】
ハニカム基材2の外周壁3の厚さは、特に制限はないが、0.15〜2.0mmとすることが好ましく、0.3〜1.0mmとすることが更に好ましい。外周壁3の厚さを0.15mm以上とすることにより、ハニカム基材2の機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によってハニカム基材2が破損するのを防止することができる。また、外周壁3の厚さを2.0mm以下とすることにより、ヒーター9の熱を外周壁3を介して隔壁4まで効率良く伝達できる。
【0054】
ハニカム基材2の隔壁4の厚さも、特に制限はないが、0.1〜1mmとすることが好ましく、0.2〜0.5mmとすることが更に好ましい。隔壁4の厚さを0.1mm以上とすることにより、ハニカム基材2の機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によってハニカム基材2が破損するのを防止することができる。また、隔壁4の厚さを1mm以下とすることにより、流体がセル5内を流れる際の圧力損失が大きくなるのを防止することができる。
【0055】
ハニカム基材2のセル密度(単位断面積当たりのセルの数)については、特に制限はないが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm
2)の範囲であることが好ましい。セル密度を25セル/平方インチ(4セル/cm
2)以上とすることにより、隔壁4の強度、ひいてはハニカム基材2自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、セル密度を2000セル/平方インチ(320セル/cm
2)以下とすることにより、流体がセル5内を流れる際の圧力損失が大きくなるのを防止することができる。
【0056】
ハニカム基材2の気孔率は、0〜5%程度であることが好ましい。ハニカム基材2の気孔率をこのような範囲とすることにより、ハニカム基材2に必要な強度を確保し易くなるとともに、熱伝導率を向上させることができる。尚、ここで言う「気孔率」は、アルキメデス法により測定した値である。
【0057】
ハニカム基材2の形状(外形)は、柱状であること以外は特に限定されず、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状等の形状とすることができる。また、セル5のハニカム基材2の長さ方向に対して垂直な断面における形状(以下、「セル形状」という。)も特に限定されないが、四角形、六角形、八角形等の多角形あるいはそれらを組み合わせたもの、例えば四角形と八角形を組み合わせたもの等が好ましい。
【0058】
ハニカム基材2の長さ方向に垂直な断面の直径(当該断面が円形以外の形状である場合は、当該断面に外接する円の直径)は、特に限定されるものではないが、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。ハニカム基材2の長さ方向に垂直な断面の直径を、このような範囲とすることにより、ヒーター9の熱を、ハニカム基材2の内部の隔壁4まで、効率良く伝達することができる。
【0059】
ハニカム基材2には、ストレスレリーフ(stress relief)が形成されていることが好ましい。ストレスレリーフを形成することにより、ハニカム基材2内での応力緩和が可能となる。ストレスレリーフの代表的なものとしては、例えば、
図7に示すように、ハニカム基材2の外周面8から内部方向に切り込まれたスリット12が挙げられる。但し、ストレスレリーフは、このようなスリット12に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で公知のストレスレリーフを形成することができる。
【0060】
本発明のハニカム型加熱装置1を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置して使用する場合、ハニカム基材2の隔壁4に排ガス浄化用の触媒を担持させることが好ましい。このように隔壁4に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NO
x、HC等の有害物質を、触媒反応によって無害な物質にすることが可能になる。ここで、ハニカム基材2の隔壁4に担持させる触媒の種類は特に限定されないが、例えば、自動車排ガス浄化用途に用いる場合、貴金属を用いることが好ましい。貴金属としては、白金、ロジウム若しくはパラジウム、又はこれらを組み合わせたものが好ましい。これら貴金属の担持量は、ハニカム基材2の単位体積当たり、0.1〜5g/Lとすることが好ましい。
【0061】
貴金属等の触媒は、隔壁4に高分散状態で担持させるため、一旦、アルミナ等の比表面積の大きな耐熱性無機酸化物の粒子(担体微粒子)に担持させた後、その粒子とともにハニカム基材2の隔壁4に担持させることが好ましい。
【0062】
本発明のハニカム型加熱装置1において、金属ケース15やカバー19の材質は、例えば、ステンレス鋼であることが好ましく、クロム系、クロム・ニッケル系のステンレス鋼であることが特に好ましい。
【0063】
また、本発明のハニカム型加熱装置1においては、
図2や
図4に示すように、各ヒーター9と金属ケース15との間に断熱材17を配設することが好ましい。このように、断熱材17を配設することによって、ヒーター9の熱が外部に逃げ難くなり、ヒーター9の熱を、ハニカム基材2に効率良く伝達することができる。断熱材17の材質は特に限定されないが、ヒーター9を含めたハニカム基材2の外周に巻き付けることによって、各ヒーター9と金属ケース15との間に容易に配設でき、断熱性も高いことから、セラミック繊維マットを用いることが好ましい。尚、被覆電線11は、金属ケース15の外部において、各ヒーター9の電極21と電気的に接続されているため、金属ケース15内部の断熱材17が吸水して、断熱材17の電気絶縁性が低下したとしても、漏電や短絡による事故は生じ難い。
【0064】
本発明のハニカム型加熱装置1の用途や使用形態は、特に限定されるものではないが、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置して使用することが、その効果を有効に活用する観点から好ましい。そして、その場合、本発明のハニカム型加熱装置1は、エンジンの始動前に各ヒーター9への通電を開始することにより各ヒーター9を発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム基材2を、その触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させるために使用することが好ましい。本発明のハニカム型加熱装置1を、このように使用すると、エンジン始動直後から、活性化した触媒により、排ガス中に含まれる有害成分を効率良く浄化することができる。
【0065】
(2)ハニカム型加熱装置の製造方法:
本発明のハニカム型加熱装置の製造方法の一例を説明する。まず、ハニカム基材を作製するために、セラミック原料を含有する成形原料を作製する。セラミック原料には、先にハニカム基材の材料として例示したセラミックスを形成できるような粉末を好適に使用することができる。例えば、ハニカム基材の構成材料として、Si−SiC複合材を採用する場合には、SiC粉末をセラミック原料とすることが好ましい。成形原料は、このようなセラミック原料に、必要に応じて、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤等の添加剤を混合して調製することが好ましい。
【0066】
次に、成形原料を混練して柱状の坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法には、特に制限はない。好適な方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0067】
次いで、格子状のスリットが形成された口金を用いて、坏土から、隔壁と外周壁とを有するハニカム成形体を押出成形し、このハニカム成形体を乾燥する。乾燥方法は、特に限定されるものではない。好適な乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの内でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥、熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0068】
続いて、乾燥後のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を焼成して、ハニカム基材を作製する。尚、この焼成(本焼成)の前に、ハニカム成形体中に含まれているバインダ等を除去するため、仮焼(脱脂)を行うことが好ましい。仮焼の条件は、特に限定されるものではなく、ハニカム成形体中に含まれている有機物(有機バインダ等)を除去(燃焼)することができるような条件あればよい。ハニカム成形体を焼成(本焼成)する条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、Si−SiC複合材から構成されるハニカム基材を作製する場合は、SiC粉末を含むハニカム成形体上に、塊状の金属Siを載置して、減圧の不活性ガス又は真空中で焼成し、金属Siをハニカム成形体に含浸させる。この焼成により、SiC粒子の隙間に金属Siが充填された緻密質(低気孔率)のハニカム基材が得られる。尚、ハニカム基材には、必要に応じて、スリット等のストレスレリーフを形成してもよい。
【0069】
また、ハニカム基材の隔壁に排ガス浄化用の触媒を担持させる場合には、例えば、予め、担体微粒子となるセラミックス粉末に、貴金属等の触媒成分を含む水溶液を含浸させた後、乾燥し、焼成することにより触媒コート微粒子を得る。こうして得られた触媒コート微粒子に、分散媒(水等)、その他の添加剤を加えてコーティング液(スラリー)を調製する。そして、このスラリーを、吸引法等の従来公知のコーティング方法を用いて、ハニカム基材の隔壁にコーティングした後、乾燥し、焼成することによって、ハニカム基材の隔壁に触媒を担持させる。
【0070】
次に、ヒーターを作製する。尚、以下に説明する作製方法は、抵抗加熱式ヒーターの一種であるセラミックヒーターを作製する方法の一例である。まず、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ等のセラミック原料に、適宜、焼結助剤、バインダ等を添加してヒーター用成形原料を得る。このヒーター用成形原料からハニカム基材の外周面と同程度に湾曲したプレート成形体を作製し、それを焼成することで、セラミックプレートを作製する。このセラミックプレートの表面に、発熱抵抗体を印刷した後に再度焼成する。発熱抵抗体としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ベリリウム(Be)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)等からなるものが好適に使用できる。また、発熱抵抗体は、化合物からなるものであってもよく、この場合、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)の窒化物、炭化物、硼化物、珪化物等からなるものが好適に使用できる。
【0071】
次いで、発熱抵抗体上に、発熱抵抗体と電気的に接続するように、棒状の電極を立設する。続いて、前記セラミックプレートと同様の方法で作製したセラミックプレートに、電極挿通用の孔部を設け、それを、発熱抵抗体が印刷された前記セラミックプレートに重ね合わせて接着する。更に、必要に応じて、筒状の絶縁カバーを作製し、それを、電極挿通用の孔部が設けられた前記セラミックプレート上に、電極の周囲を取り囲むように配置して、接着する。このようにして、ハニカム基材の外周面と同程度に湾曲した凹円弧状の面を有するセラミックヒーターが得られる。
【0072】
こうして得られた複数のセラミックヒーターを、ハニカム基材の外周面の周方向に沿って、外周面を取り囲むように隣接配置し、各セラミックヒーターの凹円弧状の面をハニカム基材の外周面に接触させる。次いで、ヒーターを含むハニカム基材の外周に、セラミック繊維マット(断熱材)を巻き付け、ヒーターの電極を外部に突出させるための孔部を有する金属ケース内に収納する。次に、金属ケースの外部において、金属ケースの前記孔部から金属ケースの外部に突出した各ヒーターの電極を、被覆電線で電気的に接続する。更に、必要に応じ、金属ケースの外側において、少なくとも、各ヒーターの電極と被覆電線との接続部分、及び金属ケースの前記孔部を気密的に覆うようなカバーを設ける。
【0073】
以上により、エンジンから排出される排ガスの排気経路等に設置可能な、本発明のハニカム型加熱装置が得られる。
【0074】
(3)ハニカム型加熱装置の使用方法(第一の使用方法):
本発明のハニカム型加熱装置の使用方法(第一の使用方法)において使用されるハニカム型加熱装置は、上述の本発明のハニカム型加熱装置1である。この使用方法においては、本発明のハニカム型加熱装置1を、被覆電線11の温度が600℃以下となる温度条件で使用する。このような温度条件は、例えば、ヒーターの温度、金属ケースの熱容量、断熱材の厚さ等を調整することにより、実現することができる。このように、本発明のハニカム型加熱装置1を被覆電線11の温度が600℃以下となる温度条件で使用することにより、被覆電線11の溶断が生じ難くなる。尚、この使用方法においては、本発明のハニカム型加熱装置1を被覆電線11の温度が500℃以下となる温度条件で使用することが好ましく、400℃以下となる温度条件で使用することがより好ましい。
【0075】
(4)ハニカム型加熱装置の使用方法(第二の使用方法):
本発明のハニカム型加熱装置の使用方法(第二の使用方法)において使用されるハニカム型加熱装置は、上述の本発明のハニカム型加熱装置1であって、ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させたものである。この使用方法においては、ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム型加熱装置1を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置する。そして、エンジンの始動前に各ヒーター9への通電を開始することにより各ヒーター9を発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム基材2を、触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させる。この使用方法によれば、エンジン始動直後から、活性化した触媒により、排ガス中に含まれる有害成分を効率良く浄化することが可能となる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
SiC粉末に、バインダ及び水を加えてハニカム基材用成形原料を作製し、それを真空土練機で混練して、円柱状の坏土を得た。この坏土から、押出成形により、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、その隔壁を取り囲む外周壁とを有する円柱状のハニカム成形体を得た。その後、このハニカム成形体をマイクロ波及び熱風で乾燥することにより、ハニカム乾燥体を得た。次いで、このハニカム乾燥体上に、塊状の金属Siを載置し、真空炉中で焼成し、Si−SiC複合材から構成されたハニカム基材を得た。こうして得られたハニカム基材は、直径が90mm、長さが75mmの円柱状で、外周面の面積は21195mm
2、外周壁の厚さは0.3mm、隔壁の厚さは0.15mm、セル形状は正方形、セル密度は400セル/cm
2であった。また、ハニカム基材の気孔率は、5%であった。
【0078】
次に、Si
3N
4粉末に、バインダ及び水を加えてヒーター用成形原料を作製した。このヒーター用成形原料からハニカム基材の外周面と同程度に湾曲したプレート成形体を作製し、それを焼成することで、セラミックプレートを作製した。このセラミックプレートの表面に、白金からなる発熱抵抗体を印刷した後に再度焼成した。次いで、発熱抵抗体上に、発熱抵抗体と電気的に接続するように、棒状の電極を立設した。続いて、前記セラミックプレートと同様の方法で作製したセラミックプレートに、電極挿通用の孔部を設け、それを、発熱抵抗体が印刷されたセラミックプレートに重ね合わせて接着した。更に、筒状の絶縁カバーを作製し、それを、電極挿通用の孔部が設けられたセラミックプレート上に、電極の周囲を取り囲むように配置して、接着した。このようにして、ハニカム基材の外周面と同程度に湾曲した凹円弧状の面を有するセラミックヒーターを得た。このヒーターの凹円弧状の面は、幅(円弧部分の長さ)が10mm、長さ(円弧部分に垂直な方向の長さ)が65mmであった。
【0079】
続いて、前記のようにして得られた8個のヒーターを、ハニカム基材の外周面の周方向に沿って、その外周面上に隣接配置し、各ヒーターの凹円弧状の面をハニカム基材の外周面に接触させた。このとき、ハニカム基材の外周面の周方向において、隣接するヒーター間の間隔が全て等しくなるようにヒーターの配置を調整した。次いで、ヒーターを含むハニカム基材の外周に、アルミナファイバーマット(断熱材)を巻き付け、ヒーターの電極を外部に突出させるための孔部を有する金属ケース内に収納した。次に、金属ケースの外部において、金属ケースの前記孔部から金属ケースの外部に突出した各ヒーターの電極を、被覆電線で電気的に接続した。使用した被覆電線は、導体部分の直径が7.0mmで、導体がニッケルからなり、被覆材がシリグラス編組からなるものである。更に、金属ケースの外側において、各ヒーターの電極と被覆電線との接続部分、及び金属ケースの前記孔部を気密的に覆うカバーを設け、実施例1のハニカム型加熱装置を得た。
【0080】
(評価)
上記のようにして得られた10個のハニカム型加熱装置に、それぞれ7.5Wの電力を40秒間にわたって印加するというサイクルを、10サイクル繰り返した。その後、ヒーターの通電不良が発生したハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0081】
(実施例2)
被覆電線の導体部分の直径を5.4mmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ヒーターの通電不良が発生したハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0082】
(実施例3)
被覆電線の導体の材質をニッケル被覆銅線とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ヒーターの通電不良が発生したハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0083】
(実施例4)
被覆電線の導体部分の直径を5.4mmとした以外は、実施例3と同様にして、実施例4のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ヒーターの通電不良が発生したハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0084】
(比較例)
図9に示すように、金属ケース15の内部において、各ヒーター9の電極21間を被覆電線11で電気的に接続したことと、金属ケース15の外側にカバーを設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例のハニカム型加熱装置100を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ヒーターの通電不良が発生したハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
(考察)
表1に示すとおり、金属ケースの外部において、各ヒーターの電極間を被覆電線で電気的に接続した実施例1〜4は、通電不良の発生したハニカム型加熱装置の個数が、10個中3個以下であった。一方、金属ケースの内部において、各ヒーターの電極間を被覆電線で電気的に接続した比較例は、通電不良の発生したハニカム型加熱装置の個数が、10個中9個であった。尚、通電不良の原因は、何れも被覆電線の導体の溶断であった。また、実施例1と実施例2との比較、及び実施例2と実施例3との比較からわかるように、被覆電線の導体の材質が同一である場合には、被覆電線の導体部分の直径が大きい方が、通電不良の発生数が少なかった。これは、被覆電線の導体部分の直径が大きい方が、熱容量が大きくなるとともに、被覆電線に加わる電力密度が低くなることから、被覆電線の温度上昇が抑制され、溶断し難くなるためであると考えられる。