特許第6826538号(P6826538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6826538一体式構造の基材を基礎とするパール光輝顔料、該パール光輝顔料の製造方法、及びそのようなパール光輝顔料の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826538
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】一体式構造の基材を基礎とするパール光輝顔料、該パール光輝顔料の製造方法、及びそのようなパール光輝顔料の使用
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/40 20060101AFI20210121BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C09C1/40
   C09C3/06
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-553424(P2017-553424)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公表番号】特表2018-514611(P2018-514611A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016000624
(87)【国際公開番号】WO2016165832
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】15001083.3
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516030812
【氏名又は名称】シュレンク メタリック ピグメンツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーバー アーデルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】シミズ カイマン
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/014484(WO,A1)
【文献】 特表2006−506518(JP,A)
【文献】 特開2014−218424(JP,A)
【文献】 特開2010−185073(JP,A)
【文献】 特表2007−511655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/40
C09C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明性のパール光輝顔料の製造方法であって、
1nm〜40nmの平均厚さを有し、かつ平均サイズ対平均厚さの比によって表される形状係数が少なくとも80である一体式構造の金属製基材薄片を準備する工程と、
該金属製基材薄片を、屈折率が1.8未満の少なくとも1種の低屈折率の金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物から構成される、入射可視光の少なくとも70%を透過する包囲被膜Aで被覆する工程と、
こうして被覆された金属製基材薄片を、屈折率が少なくとも1.8の少なくとも1種の高屈折率の金属酸化物から構成される被膜Bの形の少なくとも1層の干渉層で被覆する工程と、
ここで、上記被覆工程は、1種若しくは複数種の有機金属化合物の加水分解によって、及び/又は1種若しくは複数種の溶解された金属塩の析出によって行われ、
引き続き、こうして被覆された基材薄片を、550℃〜1200℃で、4時間〜12時間にわたって焼成することで、該金属製基材薄片を対応する金属酸化物へと変換する工程と、
を含み、
前記金属製基材薄片はアルミニウムのみからなり、該アルミニウムが、次いで焼成の過程において酸化アルミニウムへと完全に変換される、製造方法。
【請求項2】
焼成工程の前に、被覆された基材薄片を構成する化合物に含まれる酸素とアルミニウムとの物質量の比αは、少なくとも3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被膜Bは、実質的に、酸化鉄(III)、酸化コバルト(II)、酸化クロム(III)、酸化ニッケル(II)、酸化銅(I/II)、酸化バナジウム(V)、酸化チタン(III)、二酸化チタン、酸化アンチモン(III)、酸化亜鉛(II)及び/又は二酸化ジルコニウムの少なくとも1種から選択される高屈折率の金属酸化物から構成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記被膜Aは、(二)酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化セリウム、酸化スズ及びそれらの混合物から選択される少なくとも1層の被膜から構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
使用される前記金属製基材薄片は、25nm以下の平均厚さを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属製基材薄片は、5μm〜100μmの平均サイズd50を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被膜Aの平均厚さは、5nm〜50nm又は50nm超である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記被膜Bの平均厚さは、1nm〜250nmである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
金属酸化物、金属酸化物水和物及び/又は有機シラン化合物から選択される、前記被膜B上に更なる被膜Cを設ける工程を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透明のパール光輝顔料、該パール光輝顔料の製造方法、及びこの種類のパール光輝顔料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光沢顔料、特にメタリック光沢顔料又はメタリック効果顔料(effect pigments:エフェクト顔料)は、多数の技術分野で幅広く使用されている。上記顔料は、例えば塗料、印刷インキ、液体インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧用調製物の着色のために使用される。特に経済上重要なのは、自動車の仕上げにおけるメタリック光沢顔料の使用である。それらの模造不可能な光学的効果のため、上記顔料は、偽造防止の有価証券及び証書、例えば紙幣、小切手、バンクカード、クレジットカード、入国カード及びチケットの製造においても使用される。上記顔料は、特にその魅力的な角度依存性の色彩印象(角度彩色性(goniochromaticity))及びその金属様光沢を特徴としている。
【0003】
従来の顔料では、色彩印象は、特定波長の入射光の吸収及び散乱反射によって単に生じているにすぎない。通常のメタリック効果顔料は、入射光を高度に反射して明暗フロップ性を引き起こすが、色彩印象は一切もたらさない。しかしながら、特定のパール光輝顔料の場合には、光学干渉効果とは、色彩印象が生ずることを意味する。一般的に少なくとも1重被覆された薄片形状の基材を基礎とするこの種のパール光輝(真珠光沢)顔料は、様々に屈折及び反射された光線の重ね合わせの結果として干渉効果を示す。被覆された基材の平坦な表面に入射した白色光は、その被膜の外側表面で部分的に反射される。その他の部分は屈折され、そして例えば被膜と基材表面との界面で反射され、そして再び屈折される。したがって、光線の異なる位相での重ね合わせが存在する。反射光の干渉は、色彩印象を生ずる。位相差の入射角/観測角への依存性のゆえに、色彩印象も同様に角度依存性である。この異なる反射角の間での色の変化の効果は、カラーフロップと呼ばれる。位相差に影響を及ぼす要因には、被膜(複数の場合もある)の厚さが含まれ、そのため、得られる色彩印象は、被膜厚さによって調節することが可能である。
【0004】
なかでも、最も長く知られた、パール光輝顔料とも呼ばれる干渉顔料は、天然パールエッセンスであるが、採収及びそれに関連した高い費用のため、パールエッセンスの果たす割合は大きくない。鉛を含む単結晶性のパール光輝顔料、例えば塩基性の炭酸鉛又はリン酸水素鉛の他に、特に無毒性のパール光輝顔料には高い関心が集まっている。これに関する例には、高い光沢及び良好な隠蔽力の点で優れたオキシ塩化ビスマスを基礎とする顔料が含まれ得る。しかしながら、オキシ塩化ビスマスは、その光安定性が低く、かつペースト形で提供され得る。更なる欠点は、低い機械的耐久性である。
【0005】
最も普及しているパール光輝顔料は、基材に適用された干渉層からなるパール光輝顔料である。干渉層は、例えば二酸化チタン又は酸化鉄のような金属酸化物からなる。適切な基材には、天然又は合成のマイカ、ガラスフレーク、酸化アルミニウムフレーク、二酸化ケイ素又は金属フレークが含まれる。
【0006】
マイカ、二酸化ケイ素又は酸化アルミニウムのような透明の薄片形状の基材を基礎とし、該基材がTiOからなる高屈折率被膜を備えている干渉顔料は、特許文献1に記載されている。その薄片形状の基材は、0.02μmから2μmの間の、好ましくは0.1μmから1μmの間の、より好ましくは0.2μmから0.8μmの間の平均厚さを有する。重なり合った角度依存性の色合いを有する強い色彩効果を得るために、個々の薄片の平均厚さは、15%未満の標準偏差の範囲内になければならない。
【0007】
特許文献2は、未被覆又は被覆された薄片形状の基材を基礎とし、該基材が金属酸化物含有の焼成された外側被膜を備える種々の金属酸化物を含む効果顔料を記載している。薄片形状の基材の寸法に関して、特許文献2は、特別な要求を課さずに、どのようにして通常の大きさの基材を使用することができるかを記載している。この外側被膜のため、これらの効果顔料は、引き続き相応の被膜がなくても高い安定性を有する。
【0008】
特許文献3は、0.5μm〜10μmの、好ましくは2μm〜8μmの平均粒度を有する薄いフレークを基礎とし、該フレークがまずは球状SiO粒子で被覆され、引き続き超微細TiO粒子で被覆されている顔料を記載している。なかでも、該顔料のソフトフォーカス効果のため、この種の顔料は、例えば化粧用製剤へのフィラーとして添加される。SiO粒子及びTiO粒子の球形構造によって、反射は実質的に無指向性であり、それにより化粧品用途では、肌に望ましくないホワイトニング効果を引き起こす。
【0009】
特許文献4に開示されるパール光輝顔料には、同等の用途が記載されている。これらのパール光輝顔料は、光学的作用のある被膜で包囲された十分に透明の薄片形状の合成基材を含み、ここで、該基材は、非常に小さい直径と、平均厚さが40nmから110nmまでの範囲にある薄い基材厚さとを有する。この小さい粒度、好ましくは3.0μmから5.0μmまでの範囲にある小さい粒度の結果として、望まれない光沢を防ぐことが可能である。しかしながら、低いアスペクト比(基材直径と厚さとの比)のため、パール光輝効果は、あまり顕著ではない。
【0010】
さらにまた、酸化鉄被膜を備えた薄片形状の金属製基材を基礎とするパール光輝顔料も存在する。その基材粒子のサイズは、5μm〜100μmであり、かつ厚さは、0.1μmから5μmの間である。しかしながら、コアが金属製であるため、これらの顔料は、例えば特定の溶剤を用いて、該顔料の爆発反応(テルミット反応)に関する感度を下げるために安定化させる必要がある。
【0011】
しかしながら、或る特定の観点では、従来技術から既知のパール光輝顔料は、かなりの不具合を抱えている。基本的には効力の理由から、例えば自動車産業において絶えず薄くなっている塗膜についての要求を満たすために、高い隠蔽力及び高い彩度を有するパール光輝顔料を提供することが望ましい。既知のパール光輝顔料の更なる欠点は、製造方法に関連した高い費用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1564261号公報
【特許文献2】国際公開第2011/095326号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1072651号公報
【特許文献4】国際公開第2011/045030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、環境適合性のパール光輝顔料を製造するための、柔軟な費用効果の高い方法を提供すること、そしてまた高い隠蔽力と、良好な安定性と、同時に優れた彩度(彩色性)とを有するべき相応するパール光輝顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、特許請求の範囲で特定される実施の形態によって解決される。
【0015】
特に、半透明性のパール光輝顔料の製造方法であって、
1nm〜40nmの平均厚さを有し、かつ平均サイズ対平均厚さの比によって表される形状係数が少なくとも80である一体式構造の金属製基材薄片を準備する工程と、
該金属製基材薄片を、屈折率が1.8未満の少なくとも1種の低屈折率の金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物から構成される実質的に透明の包囲被膜Aで被覆する工程と、
こうして被覆された金属製基材薄片を、屈折率が少なくとも1.8の少なくとも1種の高屈折率の金属酸化物から構成される被膜Bの形の少なくとも1層の干渉層で被覆する工程と、
ここで、上記被覆工程は、1種若しくは複数種の有機金属化合物の加水分解によって、及び/又は1種若しくは複数種の溶解された金属塩の析出によって行われ、
引き続き、こうして被覆された基材薄片を、550℃〜1200℃、好ましくは600℃〜1200℃で焼成することで、該金属製基材薄片を対応する金属酸化物へと変換する工程と、
を含む、製造方法が提供される。
【0016】
もう一つの実施の形態においては、本発明の方法は、以下の変更を加えた順序で行ってよい:
1nm〜40nmの平均厚さを有し、かつ平均サイズ対平均厚さの比によって表される形状係数が少なくとも80である一体式構造の金属製基材薄片を準備し、
該金属製基材薄片を、屈折率が1.8未満の少なくとも1種の低屈折率の金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物から構成される実質的に透明の包囲被膜Aで被覆し、
引き続き、こうして被覆された基材薄片を550℃〜1200℃、好ましくは600℃〜1200℃で焼成することで、該金属製基材薄片を対応する金属酸化物へと変換し、そして
その後に、焼成された基材薄片を、屈折率が少なくとも1.8の少なくとも1種の高屈折率の金属酸化物から構成される被膜Bの形の少なくとも1層の干渉層で被覆し、
ここで、上記被覆工程は、1種若しくは複数種の有機金属化合物の加水分解によって、及び/又は1種若しくは複数種の溶解された金属塩の析出によって行われる。
【0017】
本発明の方法によって、高い隠蔽力と、良好な安定性と、同時に優れた彩度(彩色性)とを有する半透明のパール光輝顔料を柔軟に費用効果高く製造することが可能である。より具体的には、本発明の製造方法によって、高い光学品質を特徴とする半透明のパール光輝顔料を、再現的に多量に簡単かつ柔軟に製造することが可能である。
【0018】
本発明の目的のためには「半透明の」とは、1<ΔE<50のΔE値を指し、ここで、ΔEは、DIN55987に従って測定される。DIN55987によるΔEの測定は、本明細書では、本発明のパール光輝顔料を12重量%(乾燥重量)の質量分率で含む塗膜を、黒色表面及び白色表面のそれぞれに適用することによって達成される。乾燥塗膜の膜厚は、12μmである。その後に、黒色の下地及び白色の下地での塗膜の間の総色差ΔEが測定される。透明の被膜Bの場合(例えばTiOを使用する場合)に、厚さの薄い基材は、干渉角度(正反射から15度)で高い彩度をもたらす。
【0019】
本発明の方法によって製造された半透明のパール光輝顔料は、1nm〜40nmの平均厚さを有し、かつ平均サイズ対平均厚さの比によって表される形状係数(基材のアスペクト比)が少なくとも80である金属酸化物から構成される一体式構造の基材薄片を特徴とし、その際、該基材薄片は、屈折率が1.8未満の少なくとも1種の低屈折率の金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物から構成される、少なくとも1層の実質的に透明の被膜Aによって包囲されており、かつ該基材薄片は、該薄片を包囲するか又は該薄片上に配置されて、屈折率が少なくとも1.8の少なくとも1種の高屈折率の金属酸化物から構成される被膜Bの形の少なくとも1層の干渉層を有する。
【0020】
本発明のパール光輝顔料は、費用効果高く製造することができる。該パール光輝顔料は、非常に高い隠蔽力を有し、したがって該顔料の、例えば自動車産業及び乗り物産業における塗料としての使用のために様々な利点を提供する。さらに、従来のパール光輝顔料と比較して、本発明によるパール光輝顔料は、優れた彩色性の点で傑出している。
【0021】
基材薄片は、最大でも40nmの、好ましくは40nm未満の、より好ましくは最大でも25nmの、例えば最大でも20nmの平均厚さを有する。基材薄片の平均厚さは、少なくとも1nm、好ましくは少なくとも2.5nm、より好ましくは少なくとも5nm、例えば少なくとも10nmである。基材薄片の厚さに関して好ましい範囲は、2.5nm〜40nm、5nm〜40nm、10nm〜40nm、2.5nm〜30nm、5nm〜30nm、10nm〜30nm、2.5nm〜25nm、5nm〜25nm、10nm〜25nm、2.5nm〜20nm、5nm〜20nm及び10nm〜20nmである。好ましくは、各々の基材薄片は、極めて均一な厚さを有する。しかしながら、製造の結果として、1薄片内に厚さの変動が存在することがある。そのような変動は、対象となる薄片の平均厚さに対して、好ましくは±50%以下、より好ましくは最大でも±25%、非常に好ましくは最大でも±10%、特に好ましくは最大でも±5%であるべきである。本明細書での平均厚さとは、最大厚さと最小厚さとの数平均を指す。最小層厚及び最大層厚の測定は、(被覆された)基材薄片の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を基礎とする測定によって達成される(図1を参照)。被覆された基材薄片の色は層厚に依存するので、未被覆の基材薄片の厳密な均一に確立された厚さは、均一な色彩効果を保証する。
【0022】
層厚の変動及び(平均)層厚の測定に関しては、被膜A及び被膜B、そしてまた存在する場合には被膜Cの厚さについても、上記所見が同様に当てはまる。
【0023】
本明細書で、被膜又は基材薄片の「厚さ」に言及する場合に、対象となる厚さは、関連箇所で特に定義されていない限りは平均厚さであるとみなされる。
【0024】
基材薄片は、一体式構造を有する。この関連における一体式とは、割れ、層化又は内包を伴わずに単独の独立式の単位からなることを意味する。これには、金属製基材薄片及び焼成工程後の酸化された基材薄片の両方が当てはまる。酸化された基材薄片は、好ましくは均質な構造を有し、つまりは、薄片内部に濃度勾配が実質的に存在しないことを意味する。特に、酸化された基材薄片は、層状構造を有さず、該基材薄片中に分布した粒状物又は粒子を有さない。特に、該基材薄片は、シェルが、例えば基材薄片に適した1種の材料からなり、かつコアが、例えば酸化ケイ素のような別の材料からなるコア−シェル構造を有さない。それらの単純な構造の結果として、基材薄片は、費用効果高くかつ効率的に製造することができる。これに対して、基材薄片のその部分の構造がより複雑で一体式でなければ、より困難で、時間を費やし、費用のかかる製造作業が必要とされる。
【0025】
被覆された基材薄片の割合としての基材薄片の質量分率は、好ましくは最大でも25重量%、より好ましくは最大でも20重量%、例えば最大でも15重量%である。しかしながら、基材薄片の質量分率は、1重量%未満に減らすべきでなく、好ましくは2重量%又は3重量%未満に減らすべきではない。特に好ましくは、被覆された基材薄片の割合としての基材薄片の質量分率は、5重量%〜12重量%である。
【0026】
基材薄片の薄い厚さ及び/又は低い質量分率の結果として、本発明のパール光輝顔料は、特に高い隠蔽力及び高い彩度を示す。さらに、基材薄片の薄い厚さ/低い質量分率のため、高価かつ不足した材料、例えば特定の遷移金属を、基材薄片の材料として資源節約的にかつ経済的に使用することもできる。
【0027】
厚さの他に、未被覆の基材薄片のサイズは、平均サイズ対平均厚さの比によって表される形状係数(アスペクト比)が少なくとも80であり、好ましくは少なくとも200であり、より好ましくは少なくとも500であり、非常に好ましくは750より大きいことを特徴とする。本発明によれば、未被覆の基材薄片の平均サイズは、未被覆の基材薄片のd50であると理解される。本明細書におけるd50は、特に記載が無い限り、Quixel湿式分散器を備えたSympatec社のHelos装置を使用して測定される。この場合に試料調製のために、調査される試料はイソプロパノール中に3分間にわたって予備分散される。
【0028】
したがって、未被覆の基材薄片のサイズは重要ではなく、形状係数が少なくとも80である限りは、特定の意図される用途に合わせることができる。例えば、未被覆の基材薄片の平均サイズd50は、約2μm〜200μmである。好ましい一実施の形態によれば、未被覆の基材薄片の平均サイズd50は、5μm〜100μmであり、ここで、下限は、より好ましくは少なくとも8μmであり、非常に好ましくは少なくとも10μmである。上限は、特に好ましい一実施の形態によれば50μmであり、より具体的には30μmである。未被覆の基材薄片の平均サイズd50は、特に、2μmから50μmの間であり、より好ましくは5μmから30μmの間である。しかしながら、意図される用途に応じて、例えば工業用塗料では、未被覆の基材薄片の平均サイズd50は、例えば約70μmの値を有してよい。未被覆の基材薄片の平均サイズd50が約2μmである場合に、未被覆の基材薄片の平均厚さのために相応してより低い上限(本明細書では25nm)が選択されることは当業者には明らかである。同じことは、対応する好ましい下限にも当てはまる。
【0029】
被覆された基材薄片は、好ましくは、50nm〜800nmの、より好ましくは100nm〜700nmの、特に好ましくは130nm〜400nmの、例えば150nm〜350nmの全厚さを有する。基材薄片の薄い厚さのため、本発明のパール光輝顔料は、特に高い隠蔽力及び彩度を示す。被覆された基材薄片の薄い全厚さは、特に未被覆の基材薄片の薄い厚さによって達成されるが、それは、被膜A及び存在する場合は被膜Cの厚さを極めて薄い水準に定めることによっても達成される。被膜Bの厚さはパール光輝顔料によってもたらされる色彩印象を決定づけるので、これに関しては、所望の色彩効果が規定されている場合には変更の余地はない。
【0030】
今までは、本質的に不透明(オペーク)の材料、例えば金属のような材料が、高い隠蔽力を得るために基材薄片として適していると推定されていた。さらに、薄い層厚(200nm未満)を有する無機基材を製造することは技術的に不可能であった。また、割れの危険性(得られた光沢顔料の割れた部分にて隠蔽力の大幅な低下が起こる)を含む理由のため、下回ることができない或る特定の最小厚さが存在すると推定されていた。
【0031】
それにもかかわらず、最大でも40nmの、好ましくは最大でも25nmの層厚を有する(部分的に又は完全に透明の、すなわち半透明の)基材薄片を用いて、従来のメタリック光沢顔料よりも大幅に高い隠蔽力及び彩度を有するパール光輝顔料を製造することが可能であることを見出すことができた。これは恐らく、被覆された基材薄片の薄い全厚さのため、パール光輝顔料のより高い表面被覆率が得られることが理由である。被覆された基材薄片が薄いので、同じ分量の顔料でより広い表面積を覆うことができる。この有利な効果の結果として、薄く完全に又は部分的に透明の基材薄片のより高い透明性は過補償されるため、最終的には基材薄片が厚いパール光輝顔料と比較してより高い隠蔽力及び/又はより高い彩度がもたらされる。
【0032】
本発明によれば、金属製基材薄片が、半透明のパール光輝顔料の製造のために使用される。検討される金属には、本発明の焼成工程において対応する金属酸化物へと変換され得るあらゆる金属、半金属及び金属合金が含まれる。そのような金属には、(遷移)金属、例えば白金、亜鉛、クロム及びモリブデンのような金属、そしてまた例えばケイ素のような半金属、そしてまたそれらの合金も含まれる。好ましい金属は、アルミニウム、銅、亜鉛及びケイ素である。好ましい基材薄片は、アルミニウム薄片、銅薄片、及び真鍮薄片であり、ここで、アルミニウム薄片が特に好ましい。金属製基材薄片の酸化を焼成工程において促進するために、該金属薄片は、例えばドーピングのような適切な措置によって任意に処理されていてもよい。
【0033】
アルミニウム薄片の製造様式には、アルミニウム箔からの打ち抜き、又は通常の粉砕技法及び噴霧技法が含まれる。このように、例えばアルミニウム薄片は、Hall法、湿式粉砕法から得ることができる。その他の金属薄片、例えばブロンズの薄片は、Hametag法のような乾式粉砕法で得ることができる。
【0034】
アルミニウム薄片又は金属薄片は、様々な形状を有してよい。使用することができる基材薄片の例には、板状及びレンズ状の金属薄膜が含まれ、又は真空金属蒸着顔料(VMP)が含まれる。板状の金属薄膜は、不規則な構造のエッジ部を特徴とし、それらの外観により、「コーンフレーク」とも呼ばれる。レンズ状の金属薄片は、実質的に規則的な丸いエッジ部を有し、それらの外観により、「シルバーダラー」とも呼ばれる。それらの不規則な構造のため、板状の金属薄片を基礎とするメタリック光沢顔料は、レンズ状の金属薄片よりも大きな散乱光の割合を生ずるが、その一方でレンズ状の金属薄片では反射光の割合が優勢である。
【0035】
本発明によれば、VMPを使用することが好ましい。VMPは、アルミニウム金属蒸着薄膜を剥離することによって得ることができる。VMPは、1nmから40nmまでの範囲の特に薄い基材薄片厚さを特徴とし、かつ高められた反射性を伴う特に平滑な表面を特徴としている。
【0036】
本発明によれば、金属製基材薄片は、焼成工程において対応する金属酸化物へと実質的に完全に変換されるため、本発明のパール光輝顔料中の基材薄片は、一体式かつ均質な材料として存在する。このことは、本発明の製造方法を、焼成作業が外側層(複数の場合もある)の焼成しかもたらさない従来の方法から区別するものである。上述のように、本発明により得られたパール光輝顔料は、例えば不動態化の形の酸化物層が金属製のコア上に形成されているにすぎない基材薄片を有さない。
【0037】
本明細書での組成物の成分に適用される場合の用語「実質的に」は、該組成物が少なくとも95重量%の、好ましくは少なくとも99重量%の、特に好ましくは少なくとも99.5重量%の、例えば約100重量%の指定の成分から構成されることを意味する。
【0038】
本発明により、金属製基材薄片が対応する金属酸化物へと変換される理由は、特に基材薄片の薄い厚さにある。基材薄片の厚さが200nmより厚いのであれば、焼成工程内で金属製基材薄片の完全な酸化を得ることは困難である。金属製基材薄片が対応する金属酸化物への変換を受けたか否かの評価は、好ましくは透過型電子顕微鏡写真(TEM)をエネルギー分散型X線分析と併せて用いることによって決定することができる。
【0039】
本発明によれば、被覆された基材薄片は、高屈折率の金属酸化物から構成される被膜Bの形の少なくとも1層の干渉層によって包囲されている。被膜Bと基材表面との間に、被覆された基材薄片は、実質的に透明の包囲被膜Aを有する。該基材薄片は更なる被膜Cを有していてよいが、その被膜Cはその下にある層Bとは異なるものである。
【0040】
被膜A、被膜B及び被膜Cに適した材料には、基材薄片に対して膜状に耐久性をもって適用することができ、かつ層A及び層Bの場合には、必要な光学的特性を有する全ての物質が含まれる。これに関連して、用語「実質的に透明の」とは、被膜Aが、入射可視光の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%を透過することを意味する。
【0041】
被覆された基材薄片の表面の一部の被膜が、一般的に、パール光輝顔料を得るのに十分である。したがって、例えば該薄片の頂部側及び/又は底部側だけが被覆され、ここで、側面(複数の場合もある)が被覆されないままであってもよい。しかしながら、本発明によれば、側面を含む基材薄片の全表面が、被膜Bによって覆われている。したがって、基材薄片は、被膜Bによって完全に包囲されている。このことは、本発明の顔料の光学的特性を改善し、そして被覆された基材薄片の機械的かつ化学的な堅牢性を高める。上記のことは、層Aについても、また好ましくは存在する場合には層Cについても当てはまる。
【0042】
それぞれの場合に、複数の被膜A、被膜B及び/又は被膜Cが存在してよいが、被覆された基材薄片は、好ましくは、それぞれの場合にたった1層の被膜A、被膜B及び存在する場合は被膜Cを有する。しかしながら、更なる好ましい一実施の形態によれば、本発明のパール光輝顔料は、被膜Bの形の2層の干渉層、例えば酸化鉄(Fe)及びTiOの組合せのような干渉層を有してよい。被膜Bは、少なくとも1種の高屈折率の金属酸化物から構成されている。被膜Bは、好ましくは、少なくとも95重量%の、より好ましくは少なくとも99重量%の、例えば約100重量%の少なくとも1種の高屈折率の金属酸化物を含む。
【0043】
好ましい一実施の形態によれば、被膜Bの形の干渉層は、少なくとも1nmの、より具体的には5nmの、好ましくは20nmの、より好ましくは少なくとも40nmの、非常に好ましくは少なくとも50nmの厚さを有する。被膜Bの厚さは、好ましくは250nm以下であり、より好ましくは最大でも150nmである。この関連における干渉層の厚さとは、被膜Bの単独の層厚を意味し、したがってその層厚は、本発明のパール光輝顔料における包囲のため、二倍となる。
【0044】
被膜Bの厚さの、未被覆の基材薄片の厚さに対する比は、好ましくは少なくとも2であり、例えば4、8又は10である。原則的に、この比について上限を遵守する必要はないが、実践的な理由から、その比は、1000以下、好ましくは500以下であるべきである。被膜の平均厚さ又は基材薄片の平均厚さは、被膜/基材薄片の最大厚さと最小厚さとの算術平均から決定される。
【0045】
本明細書で「基材薄片」に言及される場合に、それらが被覆されているか否かにかかわらず、関連箇所で特に定義されない限りは、未被覆の基材薄片を指すものとみなされる。
【0046】
本発明によれば、基材薄片の表面と被膜Bとの間に、少なくとも1種の低屈折率の金属酸化物(水和物)から構成される更なる被膜Aが存在する。本発明によれば、被膜Aは、単独の被膜として存在してよい。しかしながら、被膜Bと基材薄片との間に配置された2層以上の実質的に透明の被膜Aが存在してもよい。被膜Aは、少なくとも1種の低屈折率の金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物から構成されている。被膜Aは、好ましくは、少なくとも95重量%の、より好ましくは少なくとも99重量%の、例えば約100重量%の低屈折率の金属酸化物(水和物)を含む。
【0047】
被膜A、被膜B及び被膜Cに使用することができる金属酸化物は、一定の割合の二次成分及び/又は不純物を有することもある。金属酸化物の典型的な二次成分には、特に金属水酸化物が含まれる。例えば、酸化鉄の被膜は、一定の割合の水酸化鉄を含んでよい。
【0048】
本明細書での用語「高屈折率」及び「低屈折率」のそれぞれは、高い屈折率又は低い屈折率を有する材料をそれぞれ示している。高屈折率材料は、少なくとも1.8の、好ましくは少なくとも2.0の、より好ましくは少なくとも2.4の屈折率を有する。低屈折率材料は、1.8未満の、好ましくは最大でも1.6の屈折率を有する。
【0049】
被膜Bに適した高屈折率の金属酸化物は、例えば酸化鉄(III)(α−及びγ−Fe、赤色)、酸化コバルト(II)(青色)、酸化クロム(III)(緑色)、酸化チタン(III)(青色、通常酸窒化チタン及び窒化チタンとの混合物中にある)、酸化ニッケル(II)(帯緑色)、酸化銅(I/II)(青色)及び酸化バナジウム(V)(橙色)、並びに更にはそれらの混合物等の選択的に光を吸収する(すなわち有色)金属酸化物であることが好ましいが、これらの例に限定されない。二酸化チタン、酸化アンチモン(III)、酸化亜鉛(II)及び/又は二酸化ジルコニウム等の無色の高屈折率の酸化物も適している。干渉層は、好ましくは実質的に二酸化チタンから成るか、又は有色の金属酸化物の場合には酸化鉄(III)から成る。
【0050】
さらに、干渉層については、無色の酸化物の場合には、相応のドーパントを含有することが好ましい。例えば、二酸化チタンの被膜Bがスズ、アルミニウム、リチウム、ジルコニウム、鉄及びセリウム、より具体的にはそれらの塩から選択されるドーパントを、好ましくは0.001重量%〜5重量%、より好ましくは0.01重量%〜1重量%含むことが好ましい。さらに、干渉層は、選択的な吸収性を示す色素を、好ましくは0.001重量%〜5重量%であり、より好ましくは0.01重量%〜1重量%含んでもよい。適しているのは、金属酸化物被膜中に安定的に導入され得る有機色素及び無機色素である。
【0051】
二酸化チタンのルチル化のためには、更に、二酸化チタン層の下に適用された二酸化スズ層が存在してよい。したがって、本発明のパール光輝顔料においては、被膜Aと干渉層との間にわずか数nm厚(10nm未満)の薄い二酸化スズ層が存在してよい。
【0052】
被膜Aに適している低屈折率の金属酸化物には、例えば(二)酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化セリウム、酸化スズ(SnO)及びそれらの混合物、好ましくは二酸化ケイ素が含まれる。被膜Aの厚さは、通常は1nm〜1000nmであり、好ましくは5nm〜300nmであり、より好ましくは10nm〜150nmである。好ましい一実施の形態によれば、被膜Aは、5nm〜50nmの、より好ましくは5nm〜40nmの、特に好ましくは10nm〜40nmの厚さを有する。
【0053】
以下でより明確に記載されるように、被膜Aの厚さ及び被膜Bの厚さは、本発明により様々にかつ厳密に調整することができる。
【0054】
被膜Aが5nm〜50nmの厚さを有する上記実施の形態においては、基材薄片の表面と被膜Bの内表面との間の間隔は、好ましくは最大でも100nmであり、より好ましくは最大でも50nmであり、特に好ましくは最大でも20nmである。被膜Aの厚さ/基材薄片の表面と被膜Bとの間の間隔が上記範囲内であることによって、本発明のパール光輝顔料の被覆された基材薄片が、有色の酸化物の場合に、高い隠蔽力を有し、そしてまた小さいΔEを有することを保証することが可能である。ΔEは、総色差であり、その色差は、本発明のパール光輝顔料の場合には、好ましくは最大でも25であり、より好ましくは最大でも20であり、より具体的には最大でも15であるが、それぞれの場合に常に1より大きい。
【0055】
更なる好ましい実施の形態によれば、被膜Aの厚さは、50nmより厚い。被膜Aの層厚が50nmより厚い場合に、本発明のパール光輝顔料において更なる干渉効果が生じ得る。被膜Aの厚さは、このために基材薄片及び更なる被膜の材料及び寸法に応じて様々にかつ厳密に調整することができ、ここで上述の値が、好ましい厚さの上限とみなされる。更なる干渉効果は、被膜Aの厚さに合わせた少なくとも1層の干渉層の使用によって更に支持することができ、これらの干渉層は2層以上存在してもよい。特に、被膜Aの層厚に関する80nmから200nmまでの範囲において、干渉層Bと組み合わせて、特定の色彩効果を得ることが可能である。
【0056】
本発明によれば、パール光輝顔料は、特定の表面特性を狙い通りに定めることを可能にする更なる被膜Cを有してもよい。好ましい一実施の形態によれば、この被膜Cは、下層の被膜Bとは異なる金属酸化物(水和物)から、又は有機シラン化合物から選択される。有機シランの例はプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランである。
【0057】
好適な金属酸化物(水和物)の例は(二)酸化ケイ素、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、酸化亜鉛、酸化スズ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄(III)、及び酸化クロム(III)である。二酸化ケイ素が好ましい。
【0058】
被膜Cは、好ましくは、1nm〜500nmの、より好ましくは10nm〜500nmの、非常に好ましくは50nm〜300nmの厚さを有する。
【0059】
被膜A、被膜B及び/又は被膜Cのそれぞれは、2種以上の金属酸化物/酸化物水和物の混合物から構成されていてよいが、それらの被膜のそれぞれは、1種の金属酸化物(水和物)から構成されていることが好ましい。
【0060】
アルミニウムが金属製基材薄片の材料として使用される場合に、アルミニウムに結合されていない酸素とアルミニウムとの間の物質量の比αは、焼成工程の前には、好ましくは少なくとも3であり、より好ましくは少なくとも4であり、特に好ましくは少なくとも5である。αが少なくとも3である場合に、被覆された基材薄片において、アルミニウムに結合されていない酸素とアルミニウムとの間の物質量の比が、3/2(モル/モル)の化学量論比にならないようにする。アルミニウム及び酸素化合物、特にFeの、物質量の比αが3/2の範囲にある混合物は、アルミニウム金属の高い親オキソ性のため、或る特定の環境では爆発性効果(アルミノテルミー、テルミット反応)を伴って激しい発熱反応を生じ得る。したがって、3/2の範囲のαを有する混合物は、安全性の危険があることがある。しかしながら、そのような混合物の反応性は、比αを3/2よりかなり高い水準又はそれよりかなり低い水準のいずれかに調節することによって低下させることができる。
【0061】
上記のように、本発明のパール光輝顔料の製造方法は、金属製基材薄片を、1種若しくは複数種の有機金属化合物の加水分解によって、及び/又は1種若しくは複数種の溶解された金属塩の析出によって被覆する工程を含む。
【0062】
被膜Aは、適切には、酸素原子を介して金属へと有機基が結合されている有機金属化合物(好ましくは、有機ケイ素化合物及び/又はアルミニウム化合物)を、金属製基材薄片と、該金属化合物が可溶である有機溶剤との存在下で加水分解に供することによって生成される。このためには多数の有機溶剤が適しており、ここでイソプロパノールが好ましい。
【0063】
有機金属化合物の好ましい例は、アセチルアセトネート及び特にアルコキシド、特にC〜Cアルコキシド、例えばアルミニウムトリイソプロポキシド及びテトラエトキシシラン(テトラエチルオルトシリケート、TEOS)である。
【0064】
加水分解は、好ましくは触媒として塩基又は酸の存在下で行われる。このために適した化学種の例には、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物の他に、特にアンモニア水溶液が含まれる。適切な酸性触媒の例は、リン酸及び有機酸、例えば酢酸及びシュウ酸である(ゾル−ゲル法とも呼ばれる)。
【0065】
水は、少なくとも加水分解のための化学量論によって必要とされる量で存在せねばならないが、その量は、好ましくは2倍量〜100倍量であり、より具体的には5倍量〜20倍量である。使用される水の量に対して、好ましくは3容量%〜40容量%、より好ましくは5容量%〜30容量%の25重量%濃度のアンモニア水溶液が添加される。
【0066】
温度管理のために、反応混合物を還流温度まで10時間〜48時間の間にわたって段階的に加熱することが有利であることが分かっている。イソプロパノールが溶剤として使用される場合に、例えば該混合物は、好ましくはまず40℃で4時間〜20時間にわたって撹拌され、次いで60℃で4時間〜20時間にわたって撹拌され、最後に80℃で2時間〜8時間にわたって撹拌される。
【0067】
プロセス工学的に、基材薄片の被膜Aでの被覆は、適切には以下の通り行われる:
基材薄片、有機溶剤、水及び触媒(酸又は好ましくは塩基、より具体的には例えばアンモニア水溶液)を、最初に導入し、その後に加水分解のための金属化合物を、純粋な物質として又は溶液で、例えば有機溶剤中30容量%〜70容量%、好ましくは40容量%〜60容量%濃度の溶液で添加する。金属化合物を一段階で添加する場合には、引き続きその懸濁液は、上記のように撹拌しながら加熱される。その代わりに、金属化合物を高められた温度で連続的に計量供給してもよく、その場合には、水及びアンモニアは、最初に導入することができ、又は同様に連続的に計量供給することができる。被覆の完了後に、反応混合物は室温に冷やされる。
【0068】
被覆手順の間の凝集を避けるために、その懸濁液を、激しい機械力への曝露、例えばポンピング、激しい撹拌又は超音波への曝露にかけることができる。
【0069】
被覆工程は任意に、1回又は複数回繰り返してもよい。母液が乳濁した外観となったら、更なる被覆の前に母液を交換することが勧められる。
【0070】
被膜Aで取り囲まれた金属製基材薄片は、濾過、有機溶剤での、好ましくは溶剤として使用されるアルコールでの洗浄、そして引き続いての乾燥(慣例的には20℃〜200℃で2時間〜24時間)によって簡単に単離することができる。しかしながら、本発明によれば、被膜Aで取り囲まれた金属製基材薄片を単離する必要はなく、更なる被覆工程のためにin situで使用することができる。
【0071】
金属酸化物層Bの適用のために、例えばα−酸化鉄層及び酸化クロム層を、鉄(III)塩、例えば塩化鉄(III)及び硫酸鉄(III)又は塩化クロム(III)の加水分解、そして引き続いての得られた水酸化物含有層の熱処理及び/又は焼成による酸化物層への変換によって適用することができる。同様に、例えばTiO層は、TiOClによって適用することができる。酸化チタン(III)被膜は、四塩化チタンの加水分解、そして引き続いての得られた二酸化チタンのガス状アンモニアによる還元によって達成することもできる。
【0072】
α−酸化鉄層が金属酸化物層Bとして意図される場合に、それに代えて、酸素の存在下での揮発性ペンタカルボニル鉄の気相分解(Fe(CO)の酸化的分解)によって、それを達成することができる。適切な方法の方式の場合に、その際、この具体的な実施の形態においては、酸化的分解が、基材薄片の焼成を引き起こすことが可能であり、言い換えると、例えばAl基材薄片のAl基材薄片への変換を引き起こすことが可能である。
【0073】
被膜Cが必要であれば、被膜Cを、被膜A及び被膜Bについて記載したのと同様に適用してよい。
【0074】
またゾル−ゲル法は、様々なサイズのタンク中で可能であるため、高い生成物多様性を低い費用で実現することができる。このことは、方法に応じてバッチサイズがより大きくなる従来のベルト式コーティングと比較して更なる利点である。
【0075】
本発明によれば、金属製基材薄片は、焼成工程で対応する金属酸化物へと変換される。それは、550℃〜1200℃の、好ましくは600℃〜1200℃の、より好ましくは600℃〜800℃の温度で行われる。通常は、この手順において、基材薄片をまず約450℃の温度に、3℃/分から20℃/分までの範囲の、好ましくは5℃/分から10℃/分までの範囲の迅速な加熱速度で加熱する。その基材薄片を、引き続き約450℃から、550℃から1200℃までの範囲の実際の焼成温度に、0.75℃/分から3℃/分までの、好ましくは1℃/分から2℃/分までの範囲の加熱速度で加熱する。その焼成は、通常は、上記温度範囲において4時間〜12時間にわたって行われる。これらの条件下で、金属製基材薄片は完全に酸化され、こうして非常に高い隠蔽力(吸収性干渉層の場合に)及び彩度(彩色性)を有するパール光輝顔料が得られる。制御された焼成とともにまた上記のプロセス工程によって、改善された光学的特性を有する極めて薄い無機基材を提供することが可能である。
【0076】
その焼成工程は、酸素含有雰囲気中で行われるが、この雰囲気には特別な要求は課されない。例えば、使用される酸素含有雰囲気は、空気であってよい。さらに、焼成工程を、例えば少なくとも10容量%の酸素割合を有する雰囲気中で実施することが可能である。
【0077】
驚くべきことに、本発明のパール光輝顔料は、優れた彩度(彩色性)を有する。この理由は、恐らく、顔料の全重量に対する干渉層の割合が、実質的により厚い基材を有する従来の顔料の場合よりも非常に大幅に高いことにある。さらに、本発明によれば、上記の特性を有するパール光輝顔料を得ることが可能であり、その際、基材厚さは正確に調節可能であり、そしてまた更なる被膜を、その基材へと正確な厚さで適用することができる。
【0078】
パール光輝顔料の色特性を評価するために、以下でより詳細に記載されるように、角度依存性の明度測定値を使用することができる。45度の一定の入射角で、色データを観測角の関数として測定する。パール光輝顔料の色特性を測定するために、結合剤に対して6重量%又は12重量%の顔料濃度を有する塗料を作製し、それを黒色板上にドクターブレードによって12μmの膜厚で被覆する。色データは、Byk Additive und Instrumente社製のByk−macを使用して測定される。読み出される角度は、正反射から15度、25度、45度、75度及び110度である。
【0079】
上記のように、様々なプロセス工程によって、金属製基材薄片の厚さを正確に調節することが可能であり、それと関連して、同様に本発明のパール光輝顔料における非金属製基材薄片の厚さも調節することが可能である。さらに、基材に正確な厚さで更なる被膜を適用することで、真の光学的多層系を得ることができる。
【0080】
特に酸化アルミニウムも二酸化ケイ素も固有色を有さず、かつ本発明のプロセス工程は不純物の発生を最小限にすることから、より純粋な干渉効果を有するパール光輝顔料を得ることが可能である。これは、特にマイカを基礎とするパール光輝顔料に対する一つの利点である。
【0081】
本発明の製造方法によって、被覆された基材薄片を、第一に大量かつ簡単に再現的に製造することができる。第二に、非常に高い品質の個別の被膜で完全に包囲された(均質な、膜様)顔料粒子を得ることができる。
【0082】
さらに、本発明は、更なる一態様においては、上記のパール光輝顔料の、塗料、印刷インキ、液体インキ、プラスチック、ガラス、セラミック製品及び装飾化粧用調製物の着色のための使用に関する。
【0083】
本発明のパール光輝顔料は、有利には多くの用途のために、例えばプラスチック、ガラス、セラミック製品、装飾化粧用調製物並びに特に液体インキ、印刷インキ及び偽造防止印刷インキ並びに殊に塗料、例えば自動車産業用の塗料の着色に適している。
【0084】
これらの最終用途のために、本発明のパール光輝顔料は、有利には透明で隠蔽性の白色顔料、有彩顔料及び黒色顔料とのブレンドで、そしてまた金属酸化物で被覆されたマイカ顔料及び金属顔料を基礎とする従来の光輝顔料とのブレンドで、並びに薄片形状の酸化鉄とのブレンドで使用することもできる。
【0085】
本発明のパール光輝顔料は、費用効果高く製造することができる。該パール光輝顔料は、極めて高い隠蔽力及び優れた彩色性を有し、したがって該顔料の、例えば自動車産業及び乗り物産業における塗料としての使用のために様々な利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の被覆された酸化アルミニウム薄片(実施例2を参照)の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を示している。酸化アルミニウム薄片(1)は非常に均一な厚さを有し、かつSiO層(2)(被膜A、明色)によって、そして酸化鉄層(3)(被膜B、暗色)によって包囲されている。
図2】実施例4による本発明の被覆された酸化アルミニウム薄片の、エネルギー分散型X線分析(EDX、エネルギー分散型X線分光分析(EDS)とも呼ばれる)で拡張された種々のTEM顕微鏡写真を示している。アルミニウム、ケイ素、鉄及び酸素のスキャンが見られる(上から下へ)。アルミニウム層中にも酸素が存在することが明らかである。
図3】400℃の温度及び600℃の温度で処理された(Al−SiO−Fe)顔料の透過光顕微鏡写真を示している。より高温での処理が透明性を生ずることが明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下の実施例は、本発明を更に説明するものとして利用されるが、本発明はそれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0088】
実施例1 − SiO(50nm)及び酸化鉄被膜(110nm)を有するアルミニウム薄片
まず、10gのAl薄片(10nmから20nmの間の厚さ(t50)、d50=15μm)を、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を用いたゾル−ゲル法によって60gのSiOで被覆した。還流冷却器及び撹拌機を備えた丸底フラスコ中で、これらのAl薄片を500mlの脱イオン水と混合し、そして撹拌しながら75℃に加熱した。pHを、10%のNaOH溶液を添加することによって3.2の水準に調節した。その反応混合物を、700gの40%のFeCl溶液と混合したが、その際、10%のNaOH溶液を同時に添加することによってpHを実質的に一定に3.2に保った。FeCl溶液を完全に添加した後に、その混合物を、完全な析出を保証するために更に15分間にわたって撹拌した。次いでpHを、10%のNaOH溶液を30分間にわたって滴加することによって7.0の水準に高めた。更に30分間撹拌した後に、被覆された顔料を、濾過によって反応溶液上清から分離し、塩不含となるまで洗浄した。
【0089】
得られた被覆されたアルミニウム薄片を、290分間にわたって2℃/分の加熱速度で約600℃まで焼成し、篩い(メッシュサイズ32μm)で篩い分けした。得られた生成物を、その色特性に関して評価した。
【0090】
実施例2 − SiO(50nm)及び酸化鉄被膜(100nm)を有するアルミニウム薄片
まず、10gのAl薄片(10nmから20nmの間の厚さ(t50)、d50=15μm)を、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を用いたゾル−ゲル法によって60gのSiOで被覆した。還流冷却器及び撹拌機を備えた丸底フラスコ中で、これらのAl薄片を500mlの脱イオン水と混合し、そして撹拌しながら75℃に加熱した。pHを、10%のNaOH溶液を添加することによって3.2の水準に調節した。その反応混合物を、650gの40%のFeCl溶液と混合したが、その際、10%のNaOH溶液を同時に添加することによってpHを実質的に一定に3.2に保った。FeCl溶液を完全に添加した後に、その混合物を、完全な析出を保証するために更に15分間にわたって撹拌した。次いでpHを、10%のNaOH溶液を30分間にわたって滴加することによって7.0の水準に高めた。更に30分間撹拌した後に、被覆された顔料を、濾過によって反応溶液上清から分離し、塩不含となるまで洗浄した。
【0091】
得られた被覆されたアルミニウム薄片を、290分間にわたって2℃/分の加熱速度で約600℃まで焼成し、篩い(メッシュサイズ32μm)で篩い分けした。得られた生成物を、その色特性に関して評価した。
【0092】
実施例3 − SiO(15nm)及び酸化鉄被膜(100nm)を有するアルミニウム薄片
まず、10gのAl薄片(20nmから30nmの間の厚さ(t50)、d50=20μm)を、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を用いたゾル−ゲル法によって10gのSiOで被覆した。還流冷却器及び撹拌機を備えた丸底フラスコ中で、これらのAl薄片を500mlの脱イオン水と混合し、そして撹拌しながら75℃に加熱した。pHを、10%のNaOH溶液を添加することによって3.2の水準に調節した。その反応混合物を、400gの40%のFeCl溶液と混合したが、その際、10%のNaOH溶液を同時に添加することによってpHを実質的に一定に3.2に保った。FeCl溶液を完全に添加した後に、その混合物を、完全な析出を保証するために更に15分間にわたって撹拌した。次いでpHを、10%のNaOH溶液を30分間にわたって滴加することによって7.0の水準に高めた。更に30分間撹拌した後に、被覆された顔料を、濾過によって反応溶液上清から分離し、塩不含となるまで洗浄した。
【0093】
得られた被覆されたアルミニウム薄片を、290分間にわたって2℃/分の加熱速度で約600℃まで焼成し、篩い(メッシュサイズ32μm)で篩い分けした。得られた生成物を、その色特性に関して評価した。
【0094】
実施例4 − SiO(25nm)及び酸化鉄被膜(110nm)を有するアルミニウム薄片
まず、10gのAl薄片(10nmから20nmの間の厚さ(t50)、d50=15μm)を、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を用いたゾル−ゲル法によって30gのSiOで被覆した。還流冷却器及び撹拌機を備えた丸底フラスコ中で、これらのAl薄片を500mlの脱イオン水と混合し、そして撹拌しながら75℃に加熱した。pHを、10%のNaOH溶液を添加することによって3.2の水準に調節した。その反応混合物を、750gの40%のFeCl溶液と混合したが、その際、10%のNaOH溶液を同時に添加することによってpHを実質的に一定に3.2に保った。FeCl溶液を完全に添加した後に、その混合物を、完全な析出を保証するために更に15分間にわたって撹拌した。次いでpHを、10%のNaOH溶液を30分間にわたって滴加することによって7.0の水準に高めた。更に30分間撹拌した後に、被覆された顔料を、濾過によって反応溶液上清から分離し、塩不含となるまで洗浄した。
【0095】
得られた被覆されたアルミニウム薄片を、290分間にわたって2℃/分の加熱速度で約600℃まで焼成し、篩い(メッシュサイズ32μm)で篩い分けした。得られた生成物を、その色特性に関して評価した。図3において、相応のTEM顕微鏡写真をEDX分析で拡張している。これは、金属製のAl基材薄片が完全に酸化されていることを裏付けている。
【0096】
実施例5 − 二酸化チタン被膜を有するアルミニウム薄片
まず、10gのAl薄片(14nmから18nmの間の厚さ、d50=14μm)を、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を用いたゾル−ゲル法によって60gのSiOで被覆した。
【0097】
引き続き、163gの二酸化チタンを、500mlの水中のTiOClによって撹拌しながらpH2.0及び75℃で適用した。その反応後にpHを5.5に高めた。こうして製造された被覆されたアルミニウムフレークを濾過し、念入りに洗浄し、そして120℃で乾燥させた。
【0098】
被覆されたアルミニウムフレークを、引き続き2℃/分で800℃に加熱した。冷却した後に、できあがった顔料を、更に25μmの篩いで篩い分けし、次いで彩色試験にかけた。
【0099】
実施例6 − 彩色調査
彩色試験のために、結合剤に対して、12重量%(実施例1及び実施例4によるマストーンのパール光輝顔料の場合、表1及び表2を参照)又は6重量%(実施例5による透明のパール光輝顔料の場合、表3を参照)の顔料濃度を有する塗料を、それぞれの場合に作製した。ドクターブレードによって、黒色板を、膜厚12μmで被覆した。色データを、Byk Additive und Instrumente社製のByk−macを使用して測定した。
【0100】
比較のために、マイカを基礎とする無機基材を有するパール顔料である、Merck社製の市販顔料(Iriodin(商標)502 Red−brown)及びBASF社製の市販顔料(Mearlin(商標)Exterior CFS Super Copper 3503Z)を使用した。
【0101】
パール光輝顔料の間でそれぞれほぼ同じ干渉色角度でもって比較を行い、それらの値を対比した(表1及び表2を参照)。干渉の彩度値(C)、そしてまたマストーンのパール光輝顔料の場合には、マストーン色の強さ及びΔEで表される隠蔽力が、これに関連して決定的に重要である。
【0102】
表1は、実施例1からの本発明によるパール光輝顔料を、BASF社製のMearlin(商標)Exterior CFS Super Copper 3503Zと比較することによる、マストーンのパール光輝顔料についての結果を示している。
【0103】
表2は、実施例4からの本発明によるパール光輝顔料を、Merck社製のIriodin(商標)502 Red−brown及びBASF社製のMearlin(商標)Exterior CFS Super Copper 3503Zと比較することによる、マストーンのパール光輝顔料についての結果を示している。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表1及び表2から、本発明によるパール光輝顔料は、市販顔料と比較して、同等の干渉色角で、より大幅に高い彩度値を示すことが明らかである。
【0107】
特に、実施例1のマストーン色の彩度(45度/45度)は、市販顔料Mearlin(商標)3503Zの相応の彩度よりも明らかに高い。同様に実施例1の干渉彩度(C 45度/15度)は、Mearlin(商標)3503Zと比較して改善されている。
【0108】
実施例4とIriodin(商標)502との比較から、マストーン色の彩度(45度/45度)だけでなく、干渉彩度(C 45度/15度)においても、明らかな改善が見られる。
【0109】
さらに、表1及び表2の値は、本発明によるパール光輝顔料がマストーンの顔料の場合に、特に低い色差ΔEを示し、したがって特に高い隠蔽力を示すことを裏付けている。
図1
図2
図3