(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性粉末を構成する金属種が、ニッケル、白金、パラジウム、銀、銅およびアルミニウムからなる群から選択されるいずれか1種または2種以上の元素を含む、請求項1〜6の何れか一つに記載の導電性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
<導電性組成物>
ここで開示される導電性組成物は、典型的には、焼成することにより電極を形成することができる導電性組成物である。この導電性組成物は、導電性粉末と、セルロース系樹脂と、ブチラール系樹脂と、分散媒とを含んでいる。以下、これらの各構成要素について説明する。
【0020】
<セルロース系樹脂>
ここに開示される導電性組成物は、セルロース系樹脂を含んでいる。ここでセルロース系樹脂とは、セルロースおよび各種のセルロース誘導体(変性物等)を包含する概念である。セルロース誘導体としては、セルロースの構成単位であるグルコース残基のヒドロキシ(OH)基をエーテル化あるいはエステル化した誘導体が挙げられる。セルロースエーテルとしては、エチルセルロース(EC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース;等が例示される。カルボキシルメチルセルロースナトリウム塩のような塩類を用いてもよい。セルロースエステルとしては、酢酸フタル酸セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸−プロピオン酸セルロース、酢酸−酪酸セルロース等が例示される。中でも、良好な印刷を行い得る粘度特性を実現する観点から、本発明にとり特に好ましいセルロース系樹脂としてECが例示される。上記セルロース系樹脂は、有機バインダおよび粘度(流動性)調整剤として好適に機能し得る。
【0021】
セルロース系樹脂の数平均分子量M
xは、55000≦M
xである。セルロース系樹脂の数平均分子量M
xを55000以上にすることによって、電極の細線化と断線等の欠陥を抑制する効果とがより高レベルで両立され得る。セルロース系樹脂の数平均分子量M
xは、細線状の電極を欠陥なく得る観点から、好ましくは60000以上、より好ましくは65000以上、さらに好ましくは70000以上である。好ましい一態様において、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xは、75000以上であってもよく、例えば80000以上であってもよい。また、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xは、典型的には200000以下、好ましくは150000以下、より好ましくは120000以下、さらに好ましくは100000以下である。ここで開示される技術は、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xが55000≦M
x≦100000である態様で好ましく実施され得る。なお、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xとしては、クロマトグラフィ法により求められる値が採用される。
【0022】
上記セルロース系樹脂の重量平均分子量Mw
xは、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xが前記範囲を満たす限りにおいて特に制限されないが、典型的には10×10
4以上である。セルロース系樹脂の重量平均分子量Mw
xは、良好な印刷を行い得る粘度特性を実現する観点から、好ましくは13×10
4以上、より好ましくは15×10
4以上、さらに好ましくは18×10
4以上である。また、セルロース系樹脂の重量平均分子量Mw
xは、好ましくは30×10
4以下、より好ましくは25×10
4以下、さらに好ましくは20×10
4以下である。
【0023】
上記セルロース系樹脂の数平均分子量M
xと重量平均分子量Mw
xとの関係は特に制限されないが、組成物の安定性等の観点から、例えば分子量分布(Mw
x/M
x)が4.0以下(例えば3.0以下)であるものを好ましく用いることができる。セルロース系樹脂のMw
x/M
xは、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.6以下、さらに好ましくは2.5以下(例えば2.4以下)である。なお、原理上、Mw
x/M
xは1.0以上である。原料の入手容易性や合成容易性の観点から、通常は、Mw
x/M
xが1.1以上(好ましくは1.5以上)のセルロース系樹脂を好ましく使用し得る。
【0024】
導電性組成物におけるセルロース系樹脂の含有量W
xは特に制限されず、例えば0.05質量%以上とすることができる。セルロース系樹脂を用いることによる効果をよりよく発揮させる観点から、好ましい含有量W
xは0.1質量%以上、例えば0.2質量%以上である。また、上記含有量W
xを5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下(例えば0.5質量%以下)とすることがより好ましい。
【0025】
<ブチラール系樹脂>
ここに開示される導電性組成物は、上述したセルロース系樹脂のほか、ブチラール系樹脂を含有する。ここでブチラール系樹脂とは、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとを酸性条件下で反応(アセタール化反応)させて得られるポリマーをいい、残存したヒドロキシ基を他の化合物と反応させて酸基等を導入したポリマーをも包含する概念である。上記ブチラール系樹脂は、上述したセルロース系樹脂とともに有機バインダおよび粘度(流動性)調整剤として機能し得る。
【0026】
上記ブチラール系樹脂は、数平均分子量M
yが100000以下である。ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yを100000以下にすることによって、電極の細線化と断線等の欠陥を抑制する効果とがより高レベルで両立され得る。ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yは、好ましくは90000以下、より好ましくは70000以下である。好ましい一態様において、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yは、40000以下であってもよく、例えば20000以下であってもよい。また、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yは、典型的には5000以上、好ましくは8000以上、より好ましくは12000以上、さらに好ましくは15000以上である。ここで開示される技術は、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yが10000≦M
y≦100000である態様で好ましく実施され得る。なお、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yとしては、クロマトグラフィ法により求められる値が採用される。
【0027】
ここに開示される導電性組成物は、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xと、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yとの関係が次式:10000≦M
y<M
x≦100000; を満たすことが好ましい。ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yをセルロース系樹脂の数平均分子量M
xよりも小さくすることによって、電極の細線化と断線等の欠陥を抑制する効果とがより高レベルで両立され得る。
【0028】
好ましい一態様では、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xに対するブチラール系樹脂の数平均分子量M
yの比(M
y/M
x)が、概ねM
y/M
x≦1.2であり、好ましくはM
y/M
x<1.0、より好ましくはM
y/M
x≦0.9である。好ましい一態様において、M
y/M
x≦0.8であってもよく、例えばM
y/M
x≦0.7であってもよい。セルロース系樹脂とブチラール系樹脂とを特定の数平均分子量比となるように組み合わせて用いることにより、電極の細線化と断線等の欠陥を抑制する効果とがより高レベルで両立され得る。M
y/M
xの下限値は特に限定されないが、0.2≦M
y/M
xであることが好ましく、0.23≦M
y/M
xであることがより好ましい。
【0029】
ここに開示される導電性組成物の好適例として、セルロース系樹脂の数平均分子量M
xが55000≦M
x≦200000であり、かつ、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yが5000≦M
y≦100000であるもの;セルロース系樹脂の数平均分子量M
xが60000≦M
x≦150000であり、かつ、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yが10000≦M
y<60000であるもの;セルロース系樹脂の数平均分子量M
xが70000≦M
x≦100000であり、かつ、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yが15000≦M
y≦40000であるもの;セルロース系樹脂の数平均分子量M
xが80000≦M
x≦90000であり、かつ、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yが18000≦M
y≦22000であるもの;等が例示される。このようなセルロース系樹脂およびブチラール系樹脂の数平均分子量の範囲内であると、電極の細線化と断線を抑制する効果とがより高レベルで両立され得る。
【0030】
上記ブチラール系樹脂のブチラール化度は、ブチラール系樹脂の数平均分子量M
yが前記範囲を満たす限りにおいて特に制限されない。良好な印刷を行い得る粘度特性を実現する観点から、例えば60モル%以上であり、典型的には63モル%以上、例えば65モル%以上であってもよい。ここで開示される技術は、上記セルロース系樹脂のブチラール化度が、例えば60モル%以上80モル%以下(典型的には63モル%以上74モル%以下)である態様で好ましく実施され得る。なお、ブチラール化度とは、ブチラール単位を構成する構成単位とビニルアルコール単位とビニルエステル単位との合計モル数のうち、ブチラール単位を構成する構成単位が占めるモル数の割合をいう。
【0031】
導電性組成物におけるブチラール系樹脂の含有量W
yは特に制限されず、例えば0.01質量%以上とすることができる。ブチラール系樹脂を用いることによる効果をよりよく発揮させる観点から、好ましい含有量W
yは0.02質量%以上、例えば0.04質量%以上である。また、上記含有量W
xを3質量%以下とすることが好ましく、0.7質量%以下(例えば0.3質量%以下)とすることがより好ましい。
【0032】
セルロース系樹脂とブチラール系樹脂とを併用することによる効果をよりよく発揮させる観点から、セルロース系樹脂の含有量W
xに対するブチラール系樹脂の含有量W
yの比(W
y/W
x)は、0.2≦W
y/W
xであることが好ましい。セルロース系樹脂とブチラール系樹脂とを特定の含有量比となるように組み合わせて用いることにより、電極の細線化と断線等の欠陥抑制とがより高レベルで両立され得る。上記含有量比(W
y/W
x)は、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上である。W
y/W
xの上限値は特に限定されないが、W
y/W
x≦1.5であることが好ましく、W
y/W
x≦1.2であることがより好ましく、W
y/W
x≦1.0であることがさらに好ましい。ここに開示される技術は、例えば、W
xとW
yとの関係が、0.2≦W
y/W
x≦1.5(例えば0.5≦W
y/W
x≦1.0)である態様で好ましく実施され得る。
【0033】
導電性組成物全体を100質量%としたとき、セルロース系樹脂の含有量W
xとブチラール系樹脂の含有量W
yとの合計量(W
x+W
y)が、0.02質量%以上10質量%以下であることが好ましい。好ましい合計量(W
x+W
y)は0.05質量%以上、例えば0.1質量%以上である。また、上記合計量(W
x+W
y)を10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましく、1質量%以下とすることがさらに好ましく、0.5質量%以下とすることが特に好ましい。
【0034】
<導電性粉末>
ここに開示される導電性組成物は、上記セルロース系樹脂およびブチラール系樹脂のほかに導電性粉末を含む。導電性粉末は、導電性組成物の固形分の主体をなす成分である。導電性粉末としては、用途に応じた所望の導電性およびその他の物性等を備える各種の金属またはその合金等からなる粉末を考慮することができる。かかる導電性粉末を構成する材料の一例としては、金(Au),銀(Ag),銅(Cu),白金(Pt),パラジウム(Pd),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir),オスミウム(Os),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)等の金属およびそれらの合金、カーボンブラック等の炭素質材料、LaSrCoFeO
3系酸化物(例えばLaSrCoFeO
3)、LaMnO
3系酸化物(例えばLaSrGaMgO
3)、LaFeO
3系酸化物(例えばLaSrFeO
3)、LaCoO
3系酸化物(例えばLaSrCoO
3)等として表わされる遷移金属ペロブスカイト型酸化物に代表される導電性セラミックス等が例示される。なかでも、白金,パラジウム,銀等の貴金属の単体およびこれらの合金(Ag−Pd合金、Pt−Pd合金等)、およびニッケル,銅,アルミニウムならびにその合金等からなるものが、特に好ましい導電性粉末を構成する材料として挙げられる。なお、比較的コストが安く、電気伝導度が高い等の観点から、銀およびその合金からなる粉末(以下、単に「Ag粉末」ともいう。)が特に好ましく用いられる。以下、本願発明の導電性組成物について、導電性粉末としてAg粉末を用いる場合を例として、説明を行う。
【0035】
Ag粉末その他の導電性粉末の粒径については特に制限はなく、用途に応じた種々の粒径のものを用いることができる。典型的には、レーザ・散乱回折法に基づく平均粒子径が5μm以下のものが適当であり、平均粒子径が3μm以下(典型的には1〜3μm、例えば1〜2μm)のものが好ましく用いられる。
【0036】
導電性粉末を構成する粒子の形状は特に限定されない。典型的には、球状、麟片状(フレーク状)、円錐状、棒状のもの等を好適に使用することができる。充填性がよく緻密な受光面電極を形成しやすい等の理由から、球状もしくは鱗片状の粒子を用いることが好ましい。使用する導電性粉末としては、粒度分布のシャープな(狭い)ものが好ましい。例えば、粒子径10μm以上の粒子を実質的に含まないような粒度分布のシャープな導電性粉末が好ましく用いられる。この指標としてレーザ散乱回折法に基づく粒度分布における累積体積10%時の粒径(D10)と累積体積90%時の粒径(D90)との比(D10/D90)が採用できる。粉末を構成する粒径が全て等しい場合はD10/D90の値は1となり、逆に粒度分布が広くなる程このD10/D90の値は0に近づくことになる。D10/D90の値が0.2以上(例えば0.2以上0.5以下)であるような比較的狭い粒度分布の粉末の使用が好ましい。
このような平均粒子径及び粒子形状を有する導電性粉末を用いた導電性組成物は、導電性粉末の充填性がよく、緻密な電極を形成し得る。このことは、細かい電極パターンを形状精度よく形成するにあたって有利である。
【0037】
なお、Ag粉末等の導電性粉末は、その製造方法等により特に限定されない。例えば、周知の湿式還元法、気相反応法、ガス還元法等によって製造された導電性粉末(典型的にはAg粉末)を必要に応じて分級して用いることができる。かかる分級は、例えば、遠心分離法を利用した分級機器等を用いて実施することができる。
【0038】
導電性組成物中に占める導電性粉末の含有割合は、組成物全体を100質量%としたとき、およそ70質量%以上(典型的には70質量%〜95質量%)とすることが適当であり、より好ましくは85質量%〜95質量%程度、例えば90質量%程度とすることが好ましい。導電性粉末の含有割合を高くすることは、形状精度がよく緻密な電極のパターンを形成するという観点から好ましい。一方、この含有割合が高すぎると、ペーストの取扱性や、各種の印刷性に対する適性等が低下することがある。
【0039】
<分散媒>
ここに開示される導電性組成物は、典型的には、上記セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂および導電性粉末のほかに分散媒を含む。分散媒として好ましいものは、沸点がおよそ200℃以上(典型的には約200〜260℃)の有機溶媒である。沸点が凡そ230℃以上(典型的にはほぼ230〜260℃)の有機溶媒がより好ましく用いられる。このような有機溶剤としては、ブチルセロソルブアセテート,ブチルカルビトールアセテート(BCA:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)等のエステル系溶剤、ブチルカルビトール(BC:ジエチレングリコールモノブチルエーテル)等のエーテル系溶剤、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン,キシレン,ミネラルスピリット,ターピネオール,メンタノール,テキサノール等の有機溶媒を好適に用いることができる。特に好ましい溶剤成分として、ブチルカルビトール(BC)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等が挙げられる。
【0040】
ここに開示される導電性組成物は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が70質量%〜99質量%であり、残部が分散媒(典型的には有機溶媒)である形態である形態で好ましく実施され得る。上記NVが90質量%〜95質量%である形態がより好ましい。
【0041】
<その他の成分>
ここに開示される導電性組成物は、本発明の目的から逸脱しない範囲において、上記以外の種々の無機添加剤及び/又は有機添加剤を含ませることができる。無機添加剤の好適例として、ガラスフリット、上記以外のセラミック粉末(ZnO
2、Al
2O
3等)、その他種々のフィラーが挙げられる。また有機添加剤の好適例として、例えば、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、分散剤、粘度調整剤等の添加剤が挙げられる。
【0042】
ガラスフリットは、上記導電性粉末の無機バインダとして機能し得る成分であり、導電性粉末を構成する導電性粒子同士や、導電性粒子と基板(電極が形成される対象)との結合性を高める働きをする。また、この導電性組成物が例えば太陽電池の受光面電極の形成に用いられる場合には、このガラスフリットの存在により、導電性組成物が下層としての反射防止膜を焼成中に貫通することが可能となり、基板との良好な接着および電気的コンタクトを実現することができる。
このようなガラスフリットは、導電性粉末と同等かそれ以下の大きさに調整されていることが好ましい。例えば、レーザ・散乱回折法に基づく平均粒子径が4μm以下であることが好ましく、好適には3μm以下、典型的には0.1μm以上2μm以下程度であることがより好ましい。
【0043】
ガラスフリットの組成については特に制限はなく、各種の組成のガラスを用いることができる。例えば、おおよそのガラス組成として、当業者が慣用的に表現している呼称である、いわゆる、鉛系ガラス、鉛リチウム系ガラス、亜鉛系ガラス、ボレート系ガラス、ホウケイ酸系ガラス、アルカリ系ガラス、無鉛系ガラス、テルル系ガラス、および、酸化バリウムや酸化ビスマス等を含有するガラス等であってよい。これらのガラスは、改めて言うまでもなく、上記呼称に現れる主たるガラス構成元素の他に、Si、Pb,Zn,Ba,Bi,B,Al,Li,Na,K,Rb,Te,Ag,Zr,Sn,Ti,W,Cs,Ge,Ga,In,Ni,Ca,Cu,Mg,Sr,Se,Mo,Y,As,La,Nd,Co,Pr,Gd,Sm,Dy,Eu,Ho,Yb,Lu,Ta,V,Fe,Hf,Cr,Cd,Sb,F,Mn,P,CeおよびNbからなる群から選択された1つまたは複数の元素を含んでいてもよい。このようなガラスフリットは、例えば、一般的な非晶質ガラスの他、一部に結晶を含む結晶化ガラスであってもよい。また、ガラスフリットは、1種の組成のガラスフリットを単独で用いてもよいし、2種以上の組成のガラスフリットを混合して用いてもよい。
【0044】
ガラスフリットを構成するガラスの軟化点は、特に限定されるものではないが、300〜600℃程度(例えば400〜500℃)であることが好ましい。このように軟化点が300℃以上600℃以下の範囲内に調整され得るガラスとしては、具体的には、例えば、以下に示す元素を組み合わせて含むガラスが挙げられる。B−Si−Al系ガラス,Pb−B−Si系ガラス,Si−Pb−Li系ガラス,Si−Al−Mg系ガラス,Ge−Zn−Li系ガラス,B−Si−Zn−Sn系ガラス,B−Si−Zn−Ta系ガラス,B−Si−Zn−Ta−Ce系ガラス,B−Zn−Pb系ガラス,B−Si−Zn−Pb系ガラス,B−Si−Zn−Pb−Cu系ガラス,B−Si−Zn−Al系ガラス,Pb−B−Si−Ti−Bi系ガラス,Pb−B−Si−Ti系ガラス,Pb−B−Si−Al−Zn−P系ガラス,Pb−Li−Bi−Te系ガラス,Pb−Si−Al−Li−Zn−Te系ガラス,Pb−B−Si−Al−Li−Ti−Zn系ガラス,Pb−B−Si−Al−Li−Ti−P−Te系ガラス,Pb−Si−Li−Bi−Te系ガラス,Pb−Si−Li−Bi−Te−W系ガラス,P−Pb−Zn系ガラス,P−Al−Zn系ガラス,P−Si−Al−Zn系ガラス,P−B−Al−Si−Pb−Li系ガラス,P−B−Al−Mg−F−K系ガラス,Te−Pb系ガラス,Te−Pb−Li系ガラス,V−P−Ba−Zn系ガラス,V−P−Na−Zn系ガラス,AgI−Ag
2O−B−P系ガラス,Zn−B−Si−Li系ガラス,Si−Li−Zn−Bi−Mg−W−Te系ガラス,Si−Li−Zn−Bi−Mg−Mo−Te系ガラス,Si−Li−Zn−Bi−Mg−Cr−Te系ガラスなど。このような軟化点を有するガラスフリットを含有する導電性組成物は、例えば、太陽電池素子の受光面電極を形成する際に用いると、良好なファイヤースルー特性を発現して高性能な電極形成に寄与するために好ましい。
【0045】
有機添加剤の例としては、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂を含有することで、良好な印刷(例えばスクリーン印刷)を行い得る粘度特性をより良く実現することができる。シリコーン樹脂(単にシリコーン(silicone)とも呼ばれ得る)としては、ケイ素(Si)を含む有機化合物を特に制限なく使用することができ、例えば、シロキサン結合(Si−O−Si)による主骨格を有する有機化合物を好ましく使用することができる。例えば、主骨格における未結合手(側鎖、末端)にアルキル基またはフェニル基等を導入した直鎖型シリコーンであってもよい。また、ポリエーテル基、エポキシ基、アミン基、カルボキシル基、アラルキル基、水酸基等の他の置換基を側鎖、末端、または両者に導入した直鎖変性シリコーンであってもよいし、ポリエーテルをシリコーンと交互に結合させた直鎖状のブロック共重合体であってもよい。シリコーン樹脂としては、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサンおよび/またはポリエーテル変性シロキサンを好ましく用いることができる。
【0046】
このようなシリコーン樹脂は、重量平均分子量Mw
zが高くなるにつれて高アスペクト比の電極を形成できる傾向がある。高アスペクト比を実現する観点から、シリコーン樹脂の重量平均分子量Mw
zは、例えば1000以上とすることができ、3000以上であるのが好ましく、5000以上であるのがより好ましく、8000以上、例えば10000以上であるのが特に好ましい。また、Mw
zの上限は特に制限されないが、断線等の欠陥抑制および低抵抗の観点から、Mw
zは150000以下であるのが好ましく、120000以下であるのがより好ましく、100000以下であるのがさらに好ましく、80000以下であるのが特に好ましい。
【0047】
シリコーン樹脂の含有量W
zは特に制限されないが、シリコーン樹脂を除く導電性組成物全体を100質量%としたときに、例えば0.01質量%以上とすることができる。シリコーン樹脂を用いることによる効果をよりよく発揮させる観点から、好ましい含有量W
zは0.05質量%以上、例えば0.01質量%以上である。また、上記含有量W
zを3質量%以下とすることが好ましく、1質量%以下(例えば0.5質量%以下)とすることがより好ましい。
【0048】
<粘度>
ここで開示される導電性組成物は、せん断速度:0.1s
−1のときの粘度η
0.1が、η
0.1≦500Pa・s(例えば100Pa・s≦η
0.1≦500Pa・s)、好ましくはη
0.1<500Pa・s、より好ましくはη
0.1≦450Pa・s、さらに好ましくはη
0.1≦300Pa・s、特に好ましくはη
0.1≦250Pa・s(例えば200Pa・s≦η
0.1≦250Pa・s)であり得る。せん断速度:0.1s
−1における粘度η
0.1をη
0.1≦500Pa・sとした導電性組成物は、例えば太陽電池の受光面に印刷用のマスクを介して付与(供給)される際に、良好な流動性を示して当該マスクからの組成物の抜けがよい。このため、断線(即ち供給不良部位)等の欠陥発生を抑制することができる。
【0049】
また、ここで開示される導電性組成物は、せん断速度:10s
−1のときの粘度η
10が、50Pa・s≦η
10(例えば50Pa・s≦η
10≦100Pa・s)、好ましくは52Pa・s≦η
10≦80Pa・s、より好ましくは55Pa・s≦η
10≦70Pa・sであり得る。ここで開示される導電性組成物は、50Pa・s≦η
10であるような粘度特性を有することにより、前記マスクを介して所定のパターンで印刷された後(即ち受光面に塗布された後の状態)では、高い粘性(形状維持性能)を示してライン幅の好ましくない拡がりを抑制することができる。すなわち、焼成するまでの間に受光面に塗布された電極パターンの形状が滲みにくいので、細線状の電極パターンを形成することができる。従って、上記構成の導電性組成物によると、所望のライン幅(例えば45μm以下、好ましくは40μm以下)の細線状の電極を安定して形成することができる。
【0050】
ここで、本発明者の知見によれば、セルロース系樹脂およびブチラール系樹脂を含まない若しくはセルロース系樹脂およびブチラール系樹脂を含むが数平均分子量M
x、M
yが前記範囲を満たさないような従来の導電性組成物は、ライン幅の拡がりを抑制すべく樹脂の添加量を増やせば、高せん断速度域における粘度は上昇傾向になるものの、それあわせて低せん断速度域の粘度も上昇傾向になる。そのため、樹脂の添加量を単純に増やすだけでは、せん断速度:0.1s
−1のときの粘度が500Pa・sを上回り、印刷不良が生じる結果、細線状の電極を安定して形成できない場合があった。
これに対し、ここで開示される導電性組成物は、セルロース系樹脂とブチラール系樹脂とを特定の数平均分子量M
x、M
yとなるように組み合わせて用いることにより、樹脂の添加量に拘わらず、せん断速度:0.1s
−1付近における粘度を特異的に下げることができる。このような効果が得られる理由としては、特に限定的に解釈されるものではないが、前記数平均分子量M
xを有するセルロース系樹脂と前記数平均分子量M
yを有するブチラール系樹脂とは相溶性が高く、互いの凝集を緩和する役割を果たすためと考えられる。このことにより、せん断速度:0.1s
−1のときの粘度η
0.1がη
0.1≦500Pa・sであり、かつ、せん断速度:10s
−1のときの粘度η
10が50Pa・s≦η
10であるような粘度特性を有する導電性組成物をより良く実現でき、従来得ることができなかった電極の細線化と断線等の欠陥抑制の双方を満足する最適な導電性組成物とすることができる。
【0051】
ここで開示される導電性組成物は、上記のように印刷に適した粘度特性を有していることから、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷およびインクジェット印刷等に適用する印刷用組成物(ペースト、スラリーあるいはインク等という場合もある。)として好適である。そして、ファインライン化および断線等の欠陥抑制が求められる電極パターンの形成に際し、このような汎用の印刷手段を用いる場合に特に好ましく採用することができる。そこで、例えば、半導体素子の一例としての太陽電池素子を例にし、この受光面上により微細なフィンガー電極を含む櫛型電極パターンをスクリーン印刷により形成する例を示しながら、ここに開示される半導体素子としての太陽電池素子について説明を行う。なお、太陽電池素子に関し、本発明を特徴付ける受光面電極の構成以外については、従来の太陽電池と同様であってよく、従来と同様の構成および従来と同様の材料の使用に関する部分については本発明を特徴付けるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0052】
図1および
図2は、本発明の実施により好適に製造され得る太陽電池素子(セル)10の一例を模式的に図示したものであり、単結晶若しくは多結晶或いはアモルファス型のシリコン(Si)からなるウェハを半導体基板11として利用する、いわゆるシリコン型太陽電池素子10である。
図1に示すセル10は、一般的な片面受光タイプの太陽電池素子10である。具体的には、この種の太陽電池素子10は、シリコン基板(Siウエハ)11のp−Si層(p型結晶シリコン)18の受光面側にpn接合形成により形成されたn−Si層16を備え、その表面にはCVD等により形成された酸化チタンや窒化ケイ素から成る反射防止膜14と、Ag粉末等を主体として含む導電性組成物から形成される受光面電極12,13とを備える。
【0053】
一方、p−Si層18の裏面側には、受光面電極12と同様に所定の導電性組成物(典型的には導電性粉末がAg粉末である導体性ペースト)により形成される裏面側外部接続用電極22と、いわゆる裏面電界(BSF;Back Surface Field)効果を奏する裏面アルミニウム電極20とを備える。アルミニウム電極20は、アルミニウム粉末を主体とする導電性組成物を印刷・焼成することによって裏面の略全面に形成される。この焼成時に図示しないAl−Si合金層が形成され、アルミニウムがp−Si層18に拡散してp
+層24が形成される。かかるp
+層24、即ちBSF層が形成されることによって、光生成されたキャリアが裏面電極近傍で再結合することが防止され、例えば短絡電流や開放電圧(Voc)の向上が実現される。
【0054】
図2に示すように、太陽電池素子10のシリコン基板11の受光面11A側には、受光面電極12,13として、数本(例えば、1本〜3本程度)の相互に平行な直線状のバスバー(接続用)電極12と、該バスバー電極12と交差するように接続する相互に平行な多数の(例えば、60本〜90本程度)筋状のフィンガー(集電用)電極13とが形成されている。
フィンガー電極13は、受光により生成した光生成キャリア(正孔および電子)を収集するため多数本形成されている。バスバー電極12はフィンガー電極13により収集されたキャリアを集電するための接続用電極である。このような受光面電極12,13が形成された部分は、太陽電池素子の受光面11Aにおいて非受光部分(遮光部分)を形成する。従って、かかる受光面11A側に設けられるバスバー電極12とフィンガー電極13(特に数の多いフィンガー電極13)をできるだけファインライン化することにより、これに対応した分の非受光部分(遮光部分)が低減され、セル単位面積あたりの受光面積が拡大される。これは、極めてシンプルに太陽電池素子10の単位面積あたりの出力を向上させるものとなり得る。
【0055】
このとき、細線化された電極の一部にダレや凹みが発生すると、かかるダレや凹みの箇所は抵抗の増大を招き、集電にロースが生じてしまう。また、細線化された電極の一部にでも断線が生じると、かかる断線箇所を通じで発電電流を集電することは困難となる(高抵抗の基板を流れる電流として、集電ロースが発生した状態で集電することとなる)。したがって、太陽電池素子の受光面電極の形成には、電気的な特性が高いことはもちろんのこと、印刷による形状安定性に優れた導電性組成物が求められる。
【0056】
このような太陽電池素子10は、概略的には、次のようなプロセスを経て製造される。
即ち、適当なシリコンウェハを用意し、熱拡散法やイオンプランテーション等の一般的な技法により所定の不純物をドープして上記p−Si層18やn−Si層16を形成することにより、上記シリコン基板(半導体基板)11を作製する。次いで、例えばプラズマCVD等の技法により窒化ケイ素等からなる反射防止膜14を形成する。
その後、上記シリコン基板11の裏面11B側に、先ず、所定の導電性組成物(典型的には導電性粉末がAg粉末である導電性組成物)を用いて所定のパターンにスクリーン印刷し、乾燥することにより、焼成後に裏面側外部接続用電極22(
図1参照)となる裏面側導体塗布物を形成する。次いで、裏面側の全面に、アルミニウム粉末を導体成分とする導電性組成物をスクリーン印刷法等で塗布(供給)し、乾燥することによりアルミニウム膜を形成する。
【0057】
次いで、上記シリコン基板11の表面側に形成した反射防止膜14上に、典型的には、スクリーン印刷法に基づいて
図2に示すような配線パターンで本発明の導電性組成物を印刷(供給)する。印刷する線幅は特に限定しないが、本発明の導電性組成物を採用することによって、線幅が45μm程度若しくはそれ以下(好ましくは30μm〜45μm程度の範囲、より好ましくは30μm〜40μm程度、より好ましくは40μm未満)のフィンガー電極を備える電極パターンの塗膜(印刷体)を形成する。次いで、適当な温度域(典型的には100℃〜200℃、例えば120℃〜150℃程度)で基板を乾燥させる。好適なスクリーン印刷法の内容に関しては後述する。
【0058】
このように両面にそれぞれペースト塗布物(乾燥膜状の塗布物)が形成されたシリコン基板11を、大気雰囲気中で例えば近赤外線高速焼成炉のような焼成炉を用い、適切な焼成温度(例えば700〜900℃)で焼成する。
かかる焼成によって、受光面電極(典型的にはAg電極)12,13および裏面側外部接続用電極(典型的にはAg電極)22とともに、焼成アルミニウム電極20が形成され、また同時に、図示しないAl−Si合金層が形成されるとともにアルミニウムがp−Si層18に拡散して上述したp+層(BSF層)24が形成され、太陽電池素子10が作製される。
なお、上記のように同時焼成する代わりに、例えば受光面11A側の受光面電極(典型的にはAg電極)12,13を形成するための焼成と、裏面11B側のアルミニウム電極20および外部接続用電極22を形成するための焼成とを別々に実施してもよい。
【0059】
ここで開示される導電性組成物によると、例えば、スクリーン印刷により所望の電極パターンにて導電性組成物がシリコン基板11上に供給(印刷)され得る。かかる導電性組成物は、前記粘度特性を有するため、例えば、焼成後に得られる電極について、線幅が45μm以下(好ましくは40μm以下)のフィンガー電極13を、線の太りや断線の発生を大幅に低減した状態で、高品質に形成することができる。バスバー電極についは、例えば線幅1000〜3000μm程度のバスバー電極を高品質に形成することもできる。このように、電極線の細線化が実現されると、フィンガー電極13の幅と本数とを最適な組み合わせのものとして設計することで、光電変換効率の高い太陽電池素子が提供されることとなる。
【0060】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0061】
<導電性組成物>
以下に示す手順で電極形成用の導電性組成物を調製した。すなわち、セルロース系樹脂として数平均分子量M
xが異なる複数種類のエチルセルロース(EC)と、ブチラール系樹脂として数平均分子量M
yが異なる複数種類のポリビニルブチラール(PVB)とを用意した。これらのECおよびPVBと、導電性粉末としての銀粉末と、ガラスフリットとしてのPb系ガラスと、シリコーン樹脂としてのポリジメチルシロキサンと、分散媒としてのブチルジグリコールアセテートとを混合して、銀粉末90質量部、ガラスフリット2質量部、ECおよびPVBの合計量0.5質量部、分散媒7.5質量部を含む例1〜24の導電性組成物を調製した。各例に係る導電性組成物について、使用したPVBの数平均分子量M
y、ブチラール化度、ECの数平均分子量M
x、重合度、PVB/ECの含有量比、シリコーン樹脂の含有量(質量部)を表1に纏めて示す。なお、例17では、PVBに代えてポリビニルアルコール(PVA)を使用した。
【0062】
なお、各例のセルロース系樹脂およびブチラール系樹脂の数平均分子量M
x、M
yは、株式会社島津製作所製サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)装置を用いて下記の条件で求めたものである。
(1)セルロース系樹脂の数平均分子量M
x
カラム:GPC KF‐806L(昭和電工株式会社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
標準物質:PS(ポリスチレン)
(2)ブチラール系樹脂の数平均分子量M
y
カラム:GPC KF‐806L(昭和電工株式会社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1ml/分
カラム温度:40℃
標準物質:PS(ポリスチレン)
【0064】
<粘度>
例1〜5、11、16に係る導電性組成物の粘度を、市販されるThermo scientific社製、Haake Marsレオメータ粘度計を用い、液温25℃でせん断速度0.01s
−1〜100s
−1の範囲にて測定した。結果を表2に示す。
【0066】
表2に示すように、数平均分子量M
xが55000≦M
xのECと、数平均分子量M
yがM
y≦100000のPVBとを併用した例1〜3の導電性組成物は、例4、5、11、16に比べて高せん断速度域における粘度がより高く、50Pa・s≦η
10という極めて高い粘度を実現できた。また、例1〜3の導電性組成物は、例5、11、16に比べて低せん断速度域における粘度がより低く、η
0.1≦500Pa・s以下という極めて低い粘度を実現できた。
【0067】
<試験用太陽電池素子(受光面電極)の作製>
上記で得られた例1〜24の導電性組成物を用いて受光面電極(即ち、フィンガー電極とバスバー電極からなる櫛型電極)を形成することで、例1〜24の太陽電池素子を作製した。
具体的には、まず、市販の156mm四方(6インチ角)の寸法の太陽電池用p型単結晶シリコン基板(板厚180μm)を用意し、その表面(受光面)をフッ酸および硝酸の混酸を用いてエッチングすることで、ダメージ層を除去するとともに凹凸のテクスチャ構造を形成した。次いで、上記テクスチャ構造面に対してリン含有溶液を塗布し、熱処理を施すことでこのシリコン基板の受光面に厚さ約0.5μmのn−Si層(n
+層)を形成した。次いで、このn−Si層上に、プラズマCVD(PECVD)法により厚みが約80nm程度の窒化ケイ素膜を製膜し、反射防止膜とした。
【0068】
次いで、シリコン基板の裏面側に、所定の銀電極形成用ペーストを用いて、後に裏面側外部接続用電極となるよう所定のパターンでスクリーン印刷し、乾燥させることにより、裏面側電極パターンを形成した。そして、裏面側の全面にアルミニウム電極形成用ペーストをスクリーン印刷し、乾燥することにより、アルミニウム膜を形成した。
【0069】
その後、各例の導電性組成物を用い、大気雰囲気中、室温条件下で、スクリーン印刷法によって、上記反射防止膜上に受光面電極(Ag電極)用の電極パターンを印刷し、120℃で乾燥させた。具体的には、
図2に示したように、3本の相互に平行な直線状バスバー電極と、このバスバー電極に直交するようにして相互に平行な90本のフィンガー電極とからなる電極パターンをスクリーン印刷にて形成した。
目標とするフィンガー電極パターンは、焼成後の寸法が、線幅35μm〜40μmとなる範囲である。また、バスバー電極は焼成後の線幅がおよそ1.5mmとなるように設定した。
そして、このように両面にそれぞれ電極パターンを印刷した基板を、大気雰囲気中、近赤外線高速焼成炉を用いて焼成温度700〜800℃で焼成することで、評価用の太陽電池を作製した。
【0070】
<線幅>
上記のように作製した太陽電池の受光面電極(フィンガー電極)について、次の手順で線幅を測定した。電極の線幅は、各例の太陽電池の受光面電極の任意の位置の線幅を、形状解析レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製)にて測定した。その結果を、30カ所について測定した値の平均値として、表1の該当欄に示す。ここでは、線幅が40μm未満のものを「◎」、40μm以上45μm未満のものを「○」、45μm以上のものを「×」と評価した。
【0071】
<断線>
また、太陽電池の受光面電極(フィンガー電極)について、断線数を測定した。断線数は、太陽電池エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence;EL)検査装置を用い、基板1枚あたりの電極の断線箇所を特定し、その数を測定した。具体的には、太陽電池にバイアスを印加し、電極の導通部分を発光させた。このとき、EL発光像において電極の否導通部分は遮光により黒く表示されるため、遮光部の数を断線箇所としてその数を計測した。その結果を表1の該当欄に示す。ここでは、断線数が10箇所未満のものを「○」、10箇所以上45箇所未満のものを「△」、45箇所以上のものを「×」と評価した。
【0072】
表1に示すように、例4、5は、ECの数平均分子量M
xが55000未満であり、かつ、PVBの数平均分子量M
yが100000以下である。また、例10は、ECの数平均分子量M
xが55000以上であり、かつ、PVBの数平均分子量M
yが100000以上である。これらの導電性組成物を用いて形成された電極は、例1〜3、6〜9に比べて線幅が有意に太くなることが確認された。すなわち、数平均分子量M
xが55000未満であるECを用いた導電性組成物および数平均分子量M
yが100000以上であるPVBを用いた導電性組成物の印刷体(塗膜)はダレてしまい、細線状の電極を形成し得ないことがわかった。
【0073】
また、数平均分子量M
xが55000以上であるECを単独で用いた例11は、例1〜3、6〜9に比べて線幅が有意に太くなるとともに、印刷時にマスクからの組成物の抜けが悪く、断線が多発した。また、数平均分子量M
yが100000以下であるPVBを単独で用いた例16は、線幅を細くすることはできたものの、印刷時にマスクからの組成物の抜けが悪く、断線が多発した。また、数平均分子量M
xが55000以上であるECとPVAとを併用した例17は、線幅を細くすることはできたものの、印刷時にマスクからの組成物の抜けが悪く、断線が多発した。
【0074】
これに対し、数平均分子量M
xが55000以上であるECと、数平均分子量M
yが100000以下であるPVBとを組み合わせて用いた例1〜3、6〜9の導電性組成物は、上記の例4、5、10および11よりも線幅が細い電極を形成することができた。すなわち、塗膜の好ましくない拡がりが抑制されて、細線状の電極を形成し得ることが確認できた。また、例1〜3、6〜9の導電性組成物は、上記の例11、16および17よりも断線数を低減することができた。すなわち、印刷時にマスクからの組成物の抜けを良好にして、断線等の欠陥の少ない電極を形成し得ることが確認できた。
【0075】
なお、ここで供試した導電性組成物の場合、PVB/ECの含有量比を0.5以上1.5以下とした例4、13〜15では、例12に比べるとより細線化した電極が得られた。また、シリコーン樹脂の含有量を0.1〜0.5質量部とした例22〜24では、例18〜21に比べるとより細線化した電極が得られた。
【0076】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。