特許第6826647号(P6826647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6826647特定の植物組織におけるフィトエンシンターゼ遺伝子発現をサイレンシング(silencing)するためのDNAカセット構築体およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6826647
(24)【登録日】2021年1月19日
(45)【発行日】2021年2月3日
(54)【発明の名称】特定の植物組織におけるフィトエンシンターゼ遺伝子発現をサイレンシング(silencing)するためのDNAカセット構築体およびその方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20210121BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20210121BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20210121BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20210121BHJP
【FI】
   C12N15/63 ZZNA
   C12N15/113 Z
   C12N15/29
   A01H1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-184015(P2019-184015)
(22)【出願日】2019年10月4日
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】108132149
(32)【優先日】2019年9月6日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519360246
【氏名又は名称】葉 開▲オン▼
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葉 開▲オン▼
【審査官】 佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0241231(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0011469(US,A1)
【文献】 Biotechnol Lett (2008), Vol.30, pp.1861-1866
【文献】 Plant Cell Rep (2014), Vol.33, pp.1307-1321
【文献】 Planta (2010), Vol.232, pp.937-948
【文献】 Planta (2006), Vol.223, pp.521-531
【文献】 BMC Plant Biology (2014), Vol.14, 314/1-314/12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A01H
CAplus/REGISTRY/BIOSIS(STN)
DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンシジウムの花色を調節するDNAカセット構築体であって、幾つかのヌクレオチド配列から組み合わせられてなり、該DNAカセット構築体は、植物の特定組織において、フィトエンシンターゼ遺伝子を干渉するmRNAを含み、花色調節の目的を達成し、該DNAカセット構築体は、プロモーター及びヘアピン型干渉RNAを産生できるDNAヌクレオチド配列を含む、オンシジウムの花色を調節し、
前記プロモーターは、ヌクレオチド配列番号1のヌクレオチド配列を含み、且つ該プロモーターは、特定遺伝子を特定の組織で特異的に発現させ、花色を変える目的のみを達成するが、依然として植物の正常な生長の生理学的機能を維持し、
一部のヘアピン型干渉RNAヌクレオチド配列を生成できるDNAヌクレオチド配列は、前記プロモーターの駆動の下、特定組織においてヘアピン型干渉RNA配列を転写して生成し、フィトエンシンターゼ遺伝子のmRNAを干渉し、酵素にさらに変換することはできず、正方向PSYヌクレオチド配列、イントロンGUSヌクレオチド配列、逆方向PSYヌクレオチド配列、およびNOS遺伝子のターミネーター断片(T−NOSヌクレオチド配列)で組成され、ここで、該PSYヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、DNAカセット構築体
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列がベクターまたはシャトルベクターまたはプロトコーム様体で提供され、前記ベクターが移植によって植物細胞又はプロトコーム様体に導入できる、請求項1記載のDNAカセット構築体
【請求項3】
前記配列番号3のヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド配列の51番目のヌクレオチドから150個のヌクレオチドの長さのヌクレオチド配列である、請求項に記載のDNAカセット構築体
【請求項4】
オンシジウムの花色を調節するDNAカセット構築体であって、幾つかのヌクレオチド配列から組み合わせられてなり、該DNAカセット構築体は、植物の特定組織において、フィトエンシンターゼ遺伝子を干渉するmRNAを含み、花色調節の目的を達成し、該DNAカセット構築体は、プロモーター及びヘアピン型干渉RNAを産生できるDNAヌクレオチド配列を含む、オンシジウムの花色を調節し、前記プロモーターは、ヌクレオチド配列番号1のヌクレオチド配列を含み、且つ該プロモーターは、特定遺伝子を特定の組織で特異的に発現させ、花色を変える目的のみを達成するが、依然として植物の正常な生長の生理学的機能を維持し、一部のヘアピン型干渉RNAヌクレオチド配列を生成できるDNAヌクレオチド配列は、前記プロモーターの駆動の下、特定組織においてヘアピン型干渉RNA配列を転写して生成し、フィトエンシンターゼ遺伝子のmRNAを干渉し、酵素にさらに変換することはできず、正方向PSYヌクレオチド配列、イントロンGUSヌクレオチド配列、逆方向PSYヌクレオチド配列、およびNOS遺伝子のターミネーター断片(T−NOSヌクレオチド配列)で組成され、ここで、該PSYヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、DNAカセット構築体を提供し、該DNAカセット構築体のヌクレオチド配列は、特定プロモーターとヘアピン型干渉RNA断片に転写可能な特定ヌクレオチド断片を含み、該ヌクレオチド配列を植物細胞に導入(又は移植)し、遺伝子組換え植物細胞を取得し、該遺伝子組換え植物細胞の再生を利用して植物に発育させ、植物の花色を変化させる目的を達成することを含む、オンジシウムの花色を調節するDNAカセット構築方法。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列は、遺伝子選択法式で得られる請求項に記載のオンシジウムの花色を調節するDNAカセット構築方法。
【請求項6】
前記遺伝子組換え植物細胞は、植物体内のカロテノイド色素を制御するフィトエンシンターゼ発現量を変化させることに用いられる請求項に記載のオンシジウムの花色を調節するDNAカセット構築方法。
【請求項7】
前記遺伝子組換え植物細胞の再生を用いて組換えされた植物を製造する請求項に記載のオンシジウムの花色を調節するDNAカセット構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィトエンシンターゼ(phytoene synthase, PSY)遺伝子の発現をサイレンシング(silencing)し、オンシジウムの分野を制御してPSY遺伝子の発現を調整するヌクレオチド断片組成物及び方法に関し、特に、DNAカセット構築体に遺伝子移植することで特定の組織においてRNA干渉断片を生成し、従って、植物の特定の組織でのPSY遺伝子の発現はダウンレギュレート(Downregulate)することに関する。
【背景技術】
【0002】
オンシジウム(Oncidium)は、台湾の主要な輸出切り花の1つであり、台湾のオンシジウムの切り花の生産は、85%が他の国に輸出されており、日本は、台湾のオンシジウムの切り花の主要な輸出市場であり、台湾のオンシジウムは、日本のオンシジウムの総輸入量の第一位でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、品種が単一であることが、現在オンシジウム産業の深刻な問題の1つであるので、本発明のビジョンは、多様化され、差異を有する品種を創造すること、例えば、多様化された花の色を開発し、異なる輸出国及び輸出市場の要求を満たすようにし、新たな広い市場を開拓することである。台湾のオンシジウムの切り花は、黄色の花を主とし、現在の主流品種は、何れもオンシデサ ガワーラムジー(Oncidesa Gower Ramsey)から組織培養で変異を得られている。しかし、オンシデサガワーラムジーは、遠縁交配(distant hybridization)によるものであって、遠縁交配で得られた第1ハイブリッド(hybrid)のゲノムに大きな変化を発生し、相同染色体は、ペアリングプロセス(Pairing process)中に不均衡更には部分的欠落(chromosome deletion)を発生し、オンシデサ ガワーラムジーが有性生殖を行えなくなり、何れも組織培養の形で苗木生産を行う必要があり、従来のハイブリダイゼーション(Hybridization)では多様化した新しい品種を生成することは困難であり、この現象を突破するために、本発明は、RNA干渉技術を利用し、遺伝子移植の方法により、異なる花の色の品種のオンシジウムを開発している。
【0004】
色は、植物商品の重要な特徴の1つであり、高等植物の花色は主にベタレイン(betalains)、フラボノイド(flavonoids)、カロテノイド(carotenoids)などの色素によって生成される。オンシデサガワーラムジーの黄色いリップ(lip)部位は、カロテノイドで構成されており、主成分は、ビオラキサンチン(violaxanthin)、9−シス−ビオラキサンチン(9-cis-violaxanthin)、ネオキサンチン(neoxanthin)及び少量のルテイン(lutein)であり、花上方の赤褐色の斑点は、アントシアニン(anthocyanins)からなり、主要成分は、シアニジン(cyanidin)、デルフィニジン(delphinidin)、及び少量のペオニジン(peonidin)である。そのうち、植物のカロテノイド生合成メカニズムの中で、フィトエンシンターゼ(phytoene synthase, PSY)は、2つのゲラニルゲラニル二リン酸(geranylgeranyl diphosphate)を1つのフィトエン(phytoene)(オクタヒドロリコピン)に合成できる重要な律速酵素であり、カロテノイド生合成経路の最も上流の化合物であり、後続でフィトエン(phytoene)は、フィトエンデサチュラーゼ(phytoene desaturase)とζ−カロテンデサチュラーゼ(ζ-carotene desaturase)を介して不飽和化され、リコピン(lycopene)を形成し、下流酵素の更なる触媒化を経て、各種異なる生成物を形成する。従って、フィトエンシンターゼは、カロテノイド生成過程の重要な酵素の1つであり、フィトエンシンターゼ遺伝子(OgPSY)の発現を抑制することにより、関連するカロテノイドの生成を抑制し、花の色を調節できる。
【0005】
RNA干渉原理またはRNAiは、Fireらによって最初に発見され、彼等は二本鎖RNA(dsRNA)によってワーム(Caenorhabidites elegan)体内に注入され、ワーム体内の一部の遺伝子がブロックされていることを発見した。植物の場合、アンチセンス鎖RNAを使用して花の色素の生成径路を変更し、異なる糸の花を創造する事例があり、例えば、アンチセンス鎖RNAを使用してペチュニア ハイブリッド(Petunia hybrid)中のカルコンシンターゼ(chalcone synthase)(PhCHS)の遺伝子発現を抑制して白色ペチュニアを生成する;アンチセンス鎖RNAを使用してガーベラハイブリダ(Gerbera hybrida)のカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子の発現を抑制して橙色のガーベラを作り出す等である。これまでのところ、RNAi干渉技術を使用してカロテノイドを調整して花の色を変える事例は、遺伝子導入した菊花において、CCD4をノックダウン(knockdown)することで白い菊を鮮明な黄色の花色に転換した事例のみが出現している。さらに、カロテノイドは植物の成長の重要な要素であるため、重度に欠乏すると、光合作用などの多くの成長と発達の問題を引き起こすため、適切なプロモーターを選択してカロテノイド色素形成メカニズムの中の触媒化酵素の遺伝子を駆動調節し、例えば、フィトエンデサチュラーゼ(phytoene desaturase)、リコピンε−シクラーゼ(Lycopene ε-cyclase)、リコピンβ−シクラーゼ(Lycopene β-cyclase)などの酵素遺伝子により、特定の遺伝子を特定の組織で特異的に発現させることができ、花色を変える目的を達成するのみであるが、依然として植物の正常な生長の生理機能を維持し、これは技術の重要な鍵である。
【0006】
本発明の目的は、特定のプロモーターを使用して干渉RNAフラグメントを生成し、オンジシウムの花のフィトエンシンターゼ遺伝子の発現を減衰または抑制し、カロテノイドの形成を減らし、それによって花の色を変えるという目的を達成することであり、これらの観賞植物での干渉RNA技術の使用は、異なる遺伝子及び植物種を調節するために使用された前述の事例とはまったく異なる。
【0007】
本発明の好適実施例の主な目的は、オンシジウムの標的遺伝子フィトエンシンターゼの発現をサイレンシング(silencing)又は低減する方法を提供することであり、それは、オンシジウムのフィトエンシンターゼ遺伝子をサイレンシングできるDNAカセット構築体し、このDNAカセット構築体ヌクレオチド配列であり、該ヌクレオチド配列の転写されたRNA断片は、オンシジウムフィトエンシンターゼ遺伝子のメッセンジャーRNA(messenger RNA, mRNA)の含有量を調節することに用いることができ、従って、花の色、匂い、またはカロテノイド生成物を必要とする他の植物生理学的メカニズムの調節を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のヌクレオチド配列によって転写生成されるmRNAは、フィトエンシンターゼmRNAを相補結合のターゲットとし、フィトエンシンターゼと結合して二本鎖RNAとなった後、フィトエンシンターゼ遺伝子のmRNAを干渉し、酵素にさらに変換することはできず、カロテノイドの生合成反応が影響を受ける。該ヌクレオチド配列は、プロモーターと干渉RNA断片を転写できるDNAカセット構築体。該プロモーターは、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0009】
本発明の好適実施例は、DNAカセット構築体を提示し、このカセットは、プロモーター(P)を含み、その後に3’末端に配列番号3のDNA断片を接続し、更に、GUS遺伝子を含むイントロン断片(intronGUSヌクレオチド配列)、及び一方向に反転した配列番号3のDNA断片を接続し、最後に、NOS遺伝子のターミネーター断片(T−NOS ヌクレオチド配列)を接続する。上記の組換え色素体またはベクターには、特定のプロモーター、イントロン、またはターミネーター断片、または本発明での使用に適した他の組換え色素体またはベクターが含まれるが、これらに限定されない。ここで、ヌクレオチド配列は、プロモーターPchrcの後に配置され、ヌクレオチド配列は、それぞれ約150個のヌクレオチドの配列番号3のヌクレオチド断片の2つの小さな片を含み、両者は、相反方向の配列を呈し、中間にGUS−イントロンヌクレオチド断片を挟み、このヌクレオチド配列断片は、プロモーターPchrcの駆動の下でヘアピン構造のRNA分子を転写生成できる。このRNA断片は、標的mRNA、例えばフィトエンシンターゼ遺伝子などのmRNAを有し、これはヌクレオチド配列に相補的であり、二本鎖RNA構造を形成する。
【0010】
配列番号3は、配列番号2の51番目のヌクレオチドから150個のヌクレオチドの長さのヌクレオチド配列である。
【0011】
本発明の好適実施例は、配列番号1、配列番号2、配列番号3を含むヌクレオチド配列、及び配列番号1、配列番号2、配列番号3の配列に相補的なヌクレオチド配列を提供する。
【0012】
本発明の好適実施例のヌクレオチド配列は、ベクターまたはシャトルベクター(shuttle vector)で提供される。
【0013】
本発明の好適実施例のヌクレオチド配列は、プロトコーム様体(Protocorm-like body, PLB)で提供される。
【0014】
本発明の好適実施例のベクターは、組換えにより植物細胞またはプロトコーム様体(Protocorm-like body,PLB)に導入することができる。
【0015】
本発明の好適実施例のヌクレオチド配列は、植物組織で提供される。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の好適実施例のオンシジウムのフィトエンシンターゼ遺伝子のダウンレギュレーション(down regulation)及びサイレンシング方法は、少なくとも1つのDNAカセット構築体を提供し、このDNAカセット構築体のヌクレオチド配列は、特定のプロモーター及びヘアピン型干渉RNA断片に転写可能な特定のヌクレオチド断片を含み、ヌクレオチド配列を植物細胞(またはPLB)に導入して、組換えた植物細胞(またはPLB)を取得し、組換えた植物細胞を使用して植物に再生し、植物の花色を変えるという目的を達成する。
【0017】
本発明の好適実施例のヌクレオチド配列は、遺伝子クローニング技術(gene cloning)により得られる。
【0018】
本発明の好適実施例の組換えた植物細胞は、植物体内のフィトエンシンターゼの表現量を減衰するために使用される。
【0019】
本発明の好適実施例は、組換えた植物細胞の再生を利用して組換えた植物細胞を製造する。
【0020】
本発明の好適実施例の植物細胞は、ラン科植物細胞から選択される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の特定の植物組織におけるフィトエンシンターゼ遺伝子発現をサイレンシングするためのDNA構築物およびその方法は、特定のプロモーターを使用して干渉RNAフラグメント(fragment)を生成し、オンジシウムの花のフィトエンシンターゼ遺伝子の発現を減衰または抑制し、カロテノイドの形成を減らし、それによって花の色を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】フィトエンシンターゼ遺伝子をサイレンシングするDNAカセット構築体構築の説明図である。
図2】フィトエンシンターゼ遺伝子をサイレンシングするDNAカセット構築体の構造図であり、LB/RB:T−DNAの左/右境界、P:プロモーターである。
図3】花の写真であり、左から右へそれぞれ野生型(WF)のオンシデサ ハニーエンジェル(Oncidesa Honey Angel)の花、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1(Oncidesa MF-1)、及び遺伝子組換え植物オンシデサMF−5(Oncidesa MF-5)を示した図である。
図4】花組織のカロテノイド含有量の図であり、黒色は、野生型(WF)のオンシデサハニーエンジェル(Oncidesa Honey Angel)を示し、灰色は、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1を示し、白色は、遺伝子組換え植物オンシデサMF−を示す。横軸に表示される4種類のカロテノイドは、9−cis−ビオラキサンチン(9-cis-violaxanthin)、ネオキサンチン(neoxanthin)、ビオラキサンチン(violaxanthin)、およびβ−カロチン(β-carotene)である。
図5】半定量リアルタイムPCR(Semi-quantitative real-time PCR analysis)分析を利用して野生型(WF)オンシデサ ハニーエンジェル(a)、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1(b)、およびオンシデサMF−5(c)植物の各部位のフィトエンポリメラーゼを分析し、遺伝子(OgPSY)の発現量を調節する図である。それぞれは、花(F)、HPTII(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼII遺伝子)(hygromycin phosphotransferase II gene)である。
図6】ノーザンブロット分析(Northern blot analysis) を利用して各植物組織での小さなRNA分子(small RNA,siRNA)の発現量を分析し、左から右へそれぞれ各遺伝子組換え植物オンシデサMF−5花組織、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1花組織、遺伝子組換え植物オンシデサMF−5葉組織、および野生種(WF)オンシデサハニーエンジェル花組織である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を十分に理解するために、好適実施例を図面と併せて以下に例示し、且つそれは本発明を限定することを意図するものではない。
【0024】
本発明の好適実施例のオンシジウムのフィトエンシンターゼ遺伝子は、その遺伝子生成物(gene product)またはその番号のタンパク質を提供するのに適しているが、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、本発明の好適実施例のオンシジウムのフィトエンシンターゼ遺伝子及びその調節方法は、各種遺伝子工程による各種植物細胞またはプロトコーム様体への遺伝子の導入に適しているが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
例えば、本発明の好適実施例で使用されるオンシジウムは、黄色の花の品種(たとえば、オンシデサハニーエンジェル)であるが、本発明は、その他の各種オンシジウムの品種に適用され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
本発明の好適実施例のオンシジウムのフィトエンシンターゼ遺伝子をサイレンシングする技術は、干渉RNAを産生するDNAカセット構築体であり、その構造説明図は、図2に示すとおりであり、ヘアピンRNAを嵌合する転移DNA(T−DNA)カセットを転写可能に構築され、ベクター中に組み合わせられ、このDNAカセット構築体は、1つのプロモーターを含み、その3’末端に配列番号3の正方向に安置されたヌクレオチド配列、及びイントロンGUSを含むイントロン断片(intronGUSヌクレオチド配列)を接続し、更に配列番号3の逆ヌクレオチド配列を接続し、更に、NOS遺伝子のターミネーター断片のT−NOSヌクレオチド配列を接続する。上記の組換え色素体またはベクターには、特定のプロモーターまたはイントロン(intron)断片、または本発明に適した他の組換え色素体またはベクターを含むが、これらに限定するものではない。
【0027】
1.オンシデサハニーエンジェルからプロモーターを取得する。
この方法は、オンシデサハニーエンジェルの全RNAを、Oligotex mRNA Kit (Qiagen)を使用して、Poly(A)+RNAに精製する。Clontech製造業者が提供する操作方法に従って、高速増幅技術(Rapid Amplification of cDNA Ends, RACE)を利用し、cDNAの5’末端および3’末端から全長DNAを増幅し、オンシデサハニーエンジェルの色素体特異的カロテノイド結合タンパク質(chromoplast specific carotenoid associated protein, CHRC )遺伝子の完全長cDNAヌクレオチド配列を取得する。
本発明で使用されるプロモーター選択方法は、分子生物学的ゲノムウォーカー技術(GenomeWalker Universal Kit, Clontech)を使用して、CHRCcDNAからこの遺伝子プロモーター断片Pchrc、合計1704bpに増幅した(図1)。
【0028】
2.RNA干渉の標的遺伝子の選択。
NCBIデータベース内の4つの単子葉植物種(イネ、小麦、トウモロコシ、胡蝶蘭)のフィトエンシンターゼヌクレオチド配列を対照し、相同性分析を行い、150bpのフィトエンシンターゼ調節遺伝子のcDNA領域(オープンリーディングフレーム(open reading frame)で51bp〜+200bp)が、22−bpの100%相同性の保守配列が対応した相補的DNA(cDNA)配列に含み、RNA干渉のターゲットヌクレオシド配列として選択される。
【0029】
3.遺伝子移植および培養方法。
本発明のDNAカセット構築体を含めてベクターに構築し、アグロバクテリウム法を利用してこのベクターを携帯してオンシデサハニーエンジェル(Onc. Honey Angel)のプロトコーム様体(Protocorm-like body, PLB)を感染させ、適切な濃度の抗生物質を含む培地を利用して移植後のプロトコーム様体をスクリーニングし、それから、シューティング(shooting)及びルーティング(rooting)の培地によって植物全体に誘導し、植物を鉢植えで2年、その花の色を観察した。上記の組換え法には、アグロバクテリウム媒体法、遺伝子組換えウイルス感染法、ジャンパーベクター導入法、遺伝子銃導入法、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション法、花粉管法、脂質体媒体導入法、超音波媒体導入法、炭化ケイ素繊維媒体導入法等の当業者によく知られたものを含むが、これらに限定するものではない。蘭の花の組織培養の方法も本発明の当業者によく知られているため、再度説明しない。
【0030】
≪実施例1:オンシジウムの花色の調節≫
図3に示すように、左から右に、それぞれ野生型(WF)オンシデサハニーエンジェルの花、本発明のDNAカセット構築体ヌクレオチド配列が遺伝子組換え植物オンシデサMF−1、および本発明のDNAカセット構築体ヌクレオチド配列が遺伝子組換え植物オンシデサMF−5を示し、MF−1が淡白色の花色であり、MF−5が雪白色の花色であることが分かる。
【0031】
製品の表現型の安定性を維持するために、本実施例では30ppmのハイグロマイシン(hygromycin)の半分の濃度(1/2)のムラシゲ&スクーグ(Murashige & Skoog (MS))を含む培地を使用して遺伝子組換え植物オンシデサMF−1及びオンシデサMF−5のP段階の微小な分裂組織の芽を培養する。プロトコーム様体の分裂及び植物の分岐生長作用を経て、2つの系統(line)で2年間の栽培後にそれぞれP苗を2000株生産して温室に植えた。苗の生長温度は30°C/25°C(昼/夜)であり、光合成光子束密度(PPFD)が約300μmol−2−1の環境で光強度が制御される。
【0032】
実施例2:オンシジウムの花のカロテノイド含有量
図4に示すように、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1及びオンシデサMF−5のカロテノイドは大幅に減少し、前述の両者の9−cis−ビオラキサンチン含有量は、いずれも野生型の40%であったが、オンシデサMF−1のネオキサンチン(neoxanthin)、ビオラキサンチン(violaxanthin)及びβ−カロチン(β-carotene)は、いずれも野生型の30%であった。純白色の花色を呈するオンシデサMF−5では、これら3つの色素の含有量は、何れも野生型の1〜3%のみであり、この結果は、組換え本発明のDNAカセットのヌクレオチド配列がカロテノイドの生成を有効に制御でき、花色を制御する効果を達成できることを示している。
【0033】
実施例3:オンシジウム組織中の遺伝子発現量
図5は、フィトエンシンターゼ遺伝子(OgPSY)の発現量を示しており、野生型のオンシジウムのOgPSY発現量が高く、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1及びオンシデサMF−5は、バンドが見られず、その発現量は明らかに低減し、野生型は、依然としてOgPSYを発現していることが分かる。また、図6から、遺伝子組換え植物オンシデサMF−1およびオンシデサMF−5のsiRNA(小さな分子の干渉RNA)が強く発現しており、遺伝子発現から結果を判断できることを示している。これは、本発明がOgPSYの発現の干渉に成功し、色素と花色を制御する目的を達成することを示している。
【要約】      (修正有)
【課題】特定の植物組織におけるフィトエンシンターゼ遺伝子発現をサイレンシングするためのDNA構築物およびその方法の提供。
【解決手段】オンシジウムの花色を調節するDNAカセット構築体であって、幾つかのヌクレオチド配列から組み合わせられてなり、該DNAカセットは、植物の特定組織において、フィトエンシンターゼ遺伝子を干渉するmRNAを含み、花色調節の目的を達成し、該DNAカセットは、プロモーター及びヘアピン型干渉RNAを産生できるDNAヌクレオチド配列を含む、オンシジウムの花色を調節するDNAカセット。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]