【実施例】
【0039】
  以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
<感光性樹脂印刷原版の作製>
(1)感光性樹脂組成物の作製
感光性樹脂組成物A:
  水分散性の合成ゴム系重合体としてブタジエンラテックス(日本ゼオン製、LX111NF  固形分濃度55%)91質量部、光重合性不飽和単量体化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して、感光性樹脂組成物Aを得た。
【0041】
感光性樹脂組成物B:
  水分散性の合成ゴム系重合体としてブタジエンラテックス(日本ゼオン製、LX111NF  固形分濃度55%)56.4質量部、光重合性不飽和単量体化合物としてポリブタジエン末端ジアクリレート(大阪有機化学製、BAC−45)10質量部と、アクリルモノマー(1,9−ノナンジオールジメタクリレート)10質量部とを混合し、120℃に加熱した乾燥機で2時間水分を蒸発させて、混合物を得た。この混合物と、ブタジエンゴム(日本ゼオン製、ニポールBR1220)6質量部と、界面活性剤(日油製、ノニオンTA−405)7質量部(固形分として4質量部)と、可塑剤として液状ブタジエン10質量部とをニーダー中で45分間混練した。その後、ニーダー中に、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部と、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部とを投入し、5分間混練して、感光性樹脂組成物Bを得た。
【0042】
感光性樹脂組成物C:
  水分散性の合成ゴム系重合体としてカルボキシ変性メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(日本エイアンドエル製、MR174  固形分濃度  50%)100質量部、光重合性不飽和単量体化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して、感光性樹脂組成物Cを得た。
【0043】
  感光性樹脂組成物D:
  水分散性の合成ゴム系重合体として、スチレン−ブタジエンラテックス(日本ゼオン製、C4850  固形分濃度  70%)71質量部、光重合性不飽和単量体化合物としてオリゴブタジエンアクリレート(共栄社化学製ABU−3:分子量2700)15質量部、ラウリルメタクリレート10質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール1質量部、親水性重合体として共栄社化学製のPFT−3(ウレタンウレア構造を有する分子量約20,000の重合物、固形分濃度25%)20質量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、可塑剤として液状ブタジエン9質量部をトルエン5質量部とともに容器中で混合してから、加圧ニーダーを用いて105℃で混練りし、その後トルエンと水を減圧留去して、感光性樹脂組成物Dを得た。
【0044】
(2)保護層塗工液の調製
  低ケン化度ポリビニルアルコール(PVA405  (株)クラレ製)と可塑剤(サンフレックスSE270  三洋化成工業製  脂肪族多価アルコール系ポリエーテルポリオール  固形分濃度85%)とNBRラテックス(SX1503A  日本ゼオン(株)製  固形分濃度42%)を、固形分重量比で35/35/30になるように、水・イソプロピルアルコール混合液に溶解し、保護層塗工液を調製した。
【0045】
(3)感赤外線層塗工液の調製
  カーボンブラック分散液(AMBK−8  オリエント化学工業(株)製)と共重合ポリアミド(PA223  東洋紡績(株)製)を固形分重量比で63/37になるように、メタノール・エタノール・イソプロピルアルコール混合液に溶解し、感赤外線層塗工液を調製した。
【0046】
(4)積層フィルムの作製
  両面に離形処理を施した100μmのPETフィルム上に、(3)で調製した感赤外線層塗工液を適切な種類のバーコーターを用いて塗工し、120℃で5分間乾燥し、PETフィルム上に膜厚1.5μmの感赤外線層を積層した。この時の光学濃度は2.3であった。この光学濃度は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン製造(株))によって測定した。次いで、上記感赤外線層の上に、(2)で調製した保護層塗工液を適切な種類のバーコーターを用いて塗工し、120℃で5分間乾燥し、PETフィルム上に膜厚1.5μmの感赤外線層と膜厚0.5μmの保護層がこの順に積層されている積層フィルムを得た。
【0047】
(5)感光性樹脂組成物A,B,C,Dと積層フィルムからなる感光性樹脂印刷原版A,B,C,Dの作製
  共重合ポリエステル系接着剤を塗工した100μmのPETフィルム上に、(1)で作製した感光性樹脂組成物Aを配置し、その上から、(4)で作製した積層フィルムを重ね合わせた。ヒートプレス機を用いて100℃でラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層、感赤外線層および離型処理PET保護フィルム(カバーフィルム)からなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.14mmであった。感光性樹脂組成物AをB,C,又はDに変更した以外は、感光性樹脂印刷原版Aと同様にして、感光性樹脂印刷原版B〜Dを作製した。
【0048】
<フレキソ印刷原版を現像した後の使用済の水系現像液の調製>
  水道水中に、現像促進剤としてのオレイン酸ナトリウムを現像液全体の1質量%の量で溶解し、水系現像液を作成した。この水系現像液中で、カバーフィルムを剥離した上記フレキソ印刷原版を、直径200μmのナイロン製フィラメントを毛材としたブラシでこする方式の現像機で現像することで、フレキソ印刷原版を現像した後の使用済の水系現像液を調製した。このとき、水系現像液中の感光性樹脂組成物の濃度が5質量%となるようにした。
【0049】
<遠心分離機と現像液タンク、処理液タンクの接続方法>
  上記水系現像液50Lを溜める現像液タンク14とこのタンク内の現像液を循環させる循環ポンプ12、流量調整バルブ15、遠心分離機18、処理液タンク20を
図6のように接続した。
【0050】
<不揮発分を表すNV値の測定方法>
  遠心分離機と現像液タンク、処理液タンクを上記接続方法で接続して、上記使用済の水系現像液の作製方法の通りに調製した現像液を、遠心分離機で所定の向心加速度となる回転数で遠心分離して処理した。処理済の現像液は処理液タンクに溜まる。ここからサンプリングした液を処理後サンプルとし、処理前に現像液タンクからサンプリングした液を処理前サンプルとした。アルミホイル製カップに処理前サンプルと処理後サンプルをそれぞれ2グラム取り、真空乾燥機で80℃で2時間乾燥させて、不揮発分を表すNV値[%]を測定した。質量の測定は電子精密天秤で行った。計算式は以下の通りである。
NV値[%]=(乾燥後質量−アルミホイル製カップの質量)÷(乾燥前質量−アルミホイル製カップの質量)×100
【0051】
<樹脂凝集物除去率の評価>
  測定したNV値から樹脂濃度を理論計算して求めた。計算式は以下の通りである。
樹脂濃度[%]=NV値−オレイン酸ナトリウムの添加量(1質量%)
  処理前サンプルと処理後サンプルの樹脂濃度から樹脂凝集物除去率を計算した。計算式は以下の通りである。
樹脂凝集物除去率[%]=(処理前サンプルの樹脂濃度−処理後サンプルの樹脂濃度)÷(処理前サンプルの樹脂濃度)×100
【0052】
<流量評価>
  遠心分離機と現像液タンク、処理液タンクを上記接続方法で接続して、流量調整バルブを開き、遠心分離機の排出口から処理済の現像液を留出させた。留出する処理済の現像液を10秒間カップで受けて、メスシリンダーにてカップで受けた容量[L]を計測した。容量計測値の6倍を1分間当たりの流量[L/min]とした。
【0053】
実施例1
  感光性樹脂印刷原版Aを使用して、使用済の水系現像液の調製方法に従って使用済の水系現像液を調製した。
図7に示した遠心分離機〔円筒形の回転体の内部直径R=30cm、円筒形の回転体の高さH=20cm、底部密閉型〕の回転体の内部に、内壁を一周覆うように不織布(ポリエステル製、厚み20mm、目付380g/m
2)(
図1、
図2)を設けた。回転体の蓋状カバー状カバーと回転体の本体の間で、0.03mmの厚みのスペーサーを入れて回転体の蓋状カバーをねじ止めすることでスリットの開口面積の合計Aを調整した。この遠心分離機を前記接続方法で現像タンク、処理液タンクと接続し、流量を測定してから遠心分離機を運転して、回転体容量の2倍量の現像液を通液したところでオーバーフロー(
図5)が発生しない流量を最大処理量とした。この最大処理量で回転体容量の2倍量の現像液を通液したところで止めて、上記方法で樹脂凝集物除去率を評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
実施例2〜13および比較例1〜4
  遠心分離機の構造や遠心分離条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で実験を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例14〜16
  感光性樹脂印刷原版Aの代わりに感光性樹脂印刷原版B,C,又はDを使用した以外は、実施例1と同様の方法で遠心分離処理を行った。その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
  表1,2から、本発明の構成要件を満たす実施例1〜16はいずれも、高い樹脂凝集物除去率と高い最大処理量を両立していることがわかる。
  具体的には、実施例1、2は、スリット開口面積比率が特に好ましい範囲である例であり、樹脂凝集物回収率及び最大処理能力が良好になっている。
  実施例3は、実施例1と比べて円筒形回転体の直径が大きいため、処理液にかかる遠心力が大きくなり、樹脂凝集物除去率がさらに良好になっている。
  実施例4は、実施例3に比べてスリット開口面積比率が小さいため、樹脂凝集物除去率が下がるが、最大処理流量が増大している。
  実施例5から、スリット位置が円筒形回転体の上方ではなく中央部であっても、良好な遠心分離処理が可能であることが分かる。
  実施例6〜7から、実施例1と比べて向心加速度を増加又は減少させても、通常の遠心分離機の加速度領域内であれば十分な遠心分離が可能であることが分かる。
  実施例8は、不織布を使用していない例であるが、実施例1と同様に良好な結果であり、不織布を使用しなくとも(樹脂凝集物の取り出しの点では不便であるが)良好な遠心分離処理が可能であることが分かる。
  実施例9は、
図9に示すようにスリット開口部が円筒形回転体の下方にあるため、実施例1と比べて樹脂除去率が若干低下しているが、依然としてスリットにより良好な遠心分離が可能となっている。
  実施例10は、
図10に示すように円筒形の回転体の代わりに円錐台形の回転体を使用したものである。実施例1と比較すると樹脂凝集物除去率がわずかに低下するが、このような形状でも良好な結果である。
  実施例11は、
図11に示すようにスリットの断面を斜めとし、円筒形回転体本体の上部をすり鉢状としたものである。すり鉢の傾斜角度は、水平方向から30度になるようにした。このような形状でも、実施例1と変わらず良好な結果となっている。
  実施例12は、
図12に示すようにスリットが4カ所あるような構造である。実施例1などのようなスペーサーを入れることで円筒形回転体の蓋状カバーと円筒形回転体の本体の間に連続的な隙間を作る方法ではなく、スペーサーは入れないで、予め円筒形回転体の上部に深さ0.7mm幅10mmの溝を4カ所入れて、円筒形回転体の蓋状カバーとの間に開口部ができるような構造とした。このようにスリットの個数を変更しても、実施例1と比較して円筒形回転体の直径もスリット開口面積比率の値も変わらないため、同様の評価結果となっている。
  実施例13は、
図13に示すようにスリット開口部が18カ所あるような構造である。実施例12と同様の方法で開口部の数を異ならせた。具体的には、予め円筒形回転体の上部に深さ0.4mm幅4mmの溝を18カ所入れて、円筒形回転体蓋状カバーとの間に開口部ができるような構造とした。このようにスリットの個数を変更しても、実施例1と比較して円筒形回転体の直径もスリット開口面積比率の値も変わらないため、同様の評価結果となっている。
  さらに、表2に示されるように、感光性樹脂印刷原版(感光性樹脂層)の種類を変更した実施例14〜16においても、実施例1と同様に良好な処理結果であった。
【0059】
  一方、比較例1は、スリット開口面積比率が好ましい範囲よりも大きすぎるため、最大処理量が小さい。
  比較例2は、スリット開口面積比率が好ましい範囲よりも小さいため、樹脂除去率が小さい。
  比較例3は、
図14に示すようにインサイドディスク21を円筒形回転体の内側に設置して遠心分離を実施した。インサイドディスクは厚み0.3mmのポリプロピレン製の板で作成し、円筒形回転体の内側の
図14で示した位置に、上蓋と4つのボルトで固定した。この方式では、回転筒内の対流が発生するため、樹脂凝集物除去率が低く、分離効率に劣る。
  比較例4では、
図15に示すようにスペーサーを入れないことでスリットを全く設けずに遠心分離した。この場合、
図5に示すようなオーバーフローによって処理済の現像液を取り出すため、遠心力により浮上して内側に溜まった樹脂凝集物が処理済の現像液と一緒に流出してしまい、ほとんど樹脂凝集物が分離できていない。