特許第6826852号(P6826852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826852
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   A61M1/16 110
   A61M1/16 190
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-186173(P2016-186173)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47167(P2018-47167A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年7月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】河原林 理
(72)【発明者】
【氏名】松尾 純明
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−505209(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0190876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を体外循環可能な血液回路と、
前記血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、
血液浄化治療で必要とされる所定量の透析液を収容可能な収容手段と、
前記収容手段の透析液を前記血液浄化手段に導入しつつ当該血液浄化手段からの排液を前記収容手段に排出して透析液を循環させ得る透析液循環ラインと、
前記透析液循環ラインの透析液を浄化する透析液浄化手段と、
前記透析液循環ラインにて循環する透析液中の老廃物濃度を測定し得る老廃物濃度測定手段と、
を具備した血液浄化装置であって、
前記透析液循環ラインにて循環する透析液を前記透析液浄化手段を介さずに前記血液浄化手段に導入可能な治療状態と、前記透析液循環ラインの透析液を前記透析液浄化手段にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、前記治療状態開始後、前記老廃物濃度測定手段にて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したことを条件として、前記浄化状態に切り替えられるものとされ、且つ、前記収容手段は、透析液が所定量収容された第1収容手段及び第2収容手段から構成され、前記透析液循環ラインは、前記血液浄化手段を介して前記第1収容手段の透析液を循環させ得る第1循環流路系と、前記血液浄化手段を介して前記第2収容手段の透析液を循環させ得る第2循環流路系とから構成されるとともに、前記第1循環流路系及び第2循環流路系の何れか一方が前記治療状態のとき、他方が前記浄化状態とされることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記血液浄化治療中、前記治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われることを特徴とする請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記透析液浄化手段にて浄化された透析液が前記血液浄化手段に至るまでの間に当該透析液に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液を循環させつつ血液浄化治療可能な血液浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療を行うための血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成する動脈側血液回路及び静脈側血液回路と、血液回路にて体外循環する血液を浄化するための血液浄化器と、血液回路及び血液浄化器にて血液浄化治療させるための血液ポンプ等の種々の治療手段が配設された装置本体とを具備している。動脈側血液回路及び静脈側血液回路の先端には、それぞれバスキュラーアクセスカテーテル、或いは穿刺針(動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針)が取り付け可能とされる。
【0003】
そして、例えば動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者に穿刺した後、血液ポンプを駆動させることにより、患者の血液が動脈側血液回路及び静脈側血液回路を介して体外循環することとなり、その過程において血液浄化器にて血液浄化されるようになっている。また、透析治療においては、血液浄化器に透析液を導入するための透析液導入ラインと、血液浄化器から排液を排出するための透析液排出ラインとがそれぞれ血液浄化器に接続されている。
【0004】
ところで、例えば一般家庭で用いられる血液浄化装置として、従来、透析液を所定量収容可能な収容手段を具備し、その収容手段内の透析液を血液浄化器に導入しつつ当該血液浄化器からの排液を収容手段に戻して循環させる循環式のものが提案されている(特許文献1参照)。かかる従来の循環型の血液浄化装置は、透析液の循環ラインに吸着剤カートリッジ(透析液浄化手段)が接続されており、血液浄化器からの排液に含まれる老廃物を吸着して除去することにより、循環する透析液を浄化し得るよう構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014−500733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化装置においては、治療開始から治療終了までの間、吸着剤カートリッジを介して透析液が循環するので、以下の問題があった。
透析液に含まれる老廃物の濃度は治療開始時には高いものの、通常、治療経過時間とともに下がっていく。つまり、治療後半においては僅かな老廃物を除去するために吸着剤カートリッジによる吸着が行われることから、透析液の浄化効率が悪く、また透析治療に必要な電解質も吸着してしまうことから透析液中の電解質が不足してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透析液の浄化効率を向上させることができるとともに、透析液に含まれる治療に必要な電解質の低下を抑制することができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、患者の血液を体外循環可能な血液回路と、前記血液回路を流れる血液を浄化する血液浄化手段と、血液浄化治療で必要とされる所定量の透析液を収容可能な収容手段と、前記収容手段の透析液を前記血液浄化手段に導入しつつ当該血液浄化手段からの排液を前記収容手段に排出して透析液を循環させ得る透析液循環ラインと、前記透析液循環ラインの透析液を浄化する透析液浄化手段と、前記透析液循環ラインにて循環する透析液中の老廃物濃度を測定し得る老廃物濃度測定手段とを具備した血液浄化装置であって、前記透析液循環ラインにて循環する透析液を前記透析液浄化手段を介さずに前記血液浄化手段に導入可能な治療状態と、前記透析液循環ラインの透析液を前記透析液浄化手段にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、前記治療状態開始後、前記老廃物濃度測定手段にて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したことを条件として、前記浄化状態に切り替えられるものとされ、且つ、前記収容手段は、透析液が所定量収容された第1収容手段及び第2収容手段から構成され、前記透析液循環ラインは、前記血液浄化手段を介して前記第1収容手段の透析液を循環させ得る第1循環流路系と、前記血液浄化手段を介して前記第2収容手段の透析液を循環させ得る第2循環流路系とから構成されるとともに、前記第1循環流路系及び第2循環流路系の何れか一方が前記治療状態のとき、他方が前記浄化状態とされることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化装置において、前記血液浄化治療中、前記治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記透析液浄化手段にて浄化された透析液が前記血液浄化手段に至るまでの間に当該透析液に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、透析液循環ラインにて循環する透析液を透析液浄化手段を介さずに血液浄化手段に導入可能な治療状態と、透析液循環ラインの透析液を透析液浄化手段にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるので、透析液の浄化効率を向上させることができるとともに、透析液に含まれる治療に必要な電解質の低下を抑制することができる。
また、透析液循環ラインにて循環する透析液中の老廃物濃度を測定し得る老廃物濃度測定手段を具備するとともに、所定条件は、治療状態開始後に老廃物濃度測定手段にて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したことであるので、確実且つ円滑に治療状態から浄化状態に切り替えることができる。
さらに、第1循環流路系及び第2循環流路系の何れか一方が治療状態のとき、他方が浄化状態とされるので、血液浄化治療を連続して行わせつつ透析液の浄化を行わせることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、血液浄化治療中、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるので、定期的に、浄化された透析液にて血液浄化治療を行わせることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、透析液浄化手段にて浄化された透析液が血液浄化手段に至るまでの間に当該透析液に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段を具備したので、血液浄化治療時に透析液中の電解質が不足してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図2】同血液透析装置における治療状態を示す模式図
図3】同血液透析装置における浄化状態を示す模式図
図4】補充液供給手段を透析液循環ラインに供給する形態を示す模式図
図5】本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図6】同血液透析装置における治療状態を示す模式図
図7】同血液透析装置における治療状態(除水時)を示す模式図
図8】同血液透析装置における浄化状態を示す模式図
図9】本発明の第3の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図10】同血液透析装置における第1循環流路系が治療状態及び第2循環流路系が停止状態を示す模式図
図11】同血液透析装置における第1循環流路系が浄化状態及び第2循環流路系が治療状態を示す模式図
図12】同血液透析装置における第1循環流路系が治療状態及び第2循環流路系が浄化状態を示す模式図
図13】同血液透析装置における他の実施形態(複式ポンプを具備したもの)を示す模式図
図14】本発明の第4の実施形態に係る血液浄化装置を示す模式図
図15】同血液透析装置における治療状態を示す模式図
図16】同血液透析装置における浄化状態を示す模式図
図17】迂回ラインを透析液導入ラインに接続した形態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、血液透析装置に適用されるものであり、図1に示すように、血液浄化手段としてのダイアライザ1に動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3が接続された血液回路と、収容手段6と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を有する透析液循環ラインと、ポンプP1、P2と、老廃物濃度測定手段Sと、透析液浄化手段7と、補充液供給手段8と、制御手段10とを具備して構成されている。
【0024】
ダイアライザ1は、不図示の血液浄化膜(本実施形態においては中空糸型の血液透析膜であるが、平膜型の血液透析膜を含む)を内在し、血液を導入する血液導入口1a及び導入した血液を導出する血液導出口1bが形成されるとともに、透析液を導入する透析液導入口1c及び導入した透析液を排出する透析液排出口1dが形成されたもので、血液導入口1aから導入した血液に中空糸膜を介して透析液を接触させて血液を浄化するものである。
【0025】
動脈側血液回路2は、主に可撓性チューブから成り、一端がダイアライザ1の血液導入口1aに接続されて患者の血管から採取した血液をダイアライザ1の中空糸膜内に導くものである。かかる動脈側血液回路2の他端には、動脈側(脱血又は採血側)穿刺針aを取り付け得るコネクタが形成されているとともに、血液ポンプ4が配設されている。なお、血液ポンプ4は、しごき型のポンプ(正転させると可撓性チューブをしごいて血液を動脈側穿刺針a側からダイアライザ1の血液導入口1aの方向に流動させる構成のもの)である。
【0026】
静脈側血液回路3は、動脈側血液回路2と同様に主に可撓性チューブから成り、一端がダイアライザ1の血液導出口1bに接続されて中空糸膜内を通過した血液を導出させるものである。かかる静脈側血液回路3の他端には、静脈側(返血側)穿刺針bを取り付け得るコネクタが形成されているとともに、途中に除泡のための静脈側エアトラップチャンバ5が接続されている。すなわち、動脈側穿刺針aで採取された患者の血液は、動脈側血液回路2を介してダイアライザ1に至り、血液浄化がなされた後、静脈側血液回路3を流動し、静脈側穿刺針bを介して患者の体内に戻るようになっており、これによって体外循環がなされるよう構成されている。なお、本明細書においては、血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称しており、「動脈側」及び「静脈側」は、穿刺の対象となる血管が動脈及び静脈の何れかによって定義されるものではない。
【0027】
ダイアライザ1の透析液導入口1c及び透析液排出口1dには、それぞれ透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2の端部が接続されており、当該透析液導入ラインL1を介してダイアライザ1に導入された透析液が、中空糸膜の外側を通過して透析液排出ラインL2から排出され得るよう構成されている。このように、ダイアライザ1における中空糸膜(浄化膜)の内側は、血液が流動し得る血液流路を成すとともに、当該中空糸膜の外側は、透析液が流動し得る透析液流路を成すものとされている。
【0028】
さらに、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2は、血液浄化治療で必要とされる所定量の透析液を収容可能な収容手段6にそれぞれ接続されるとともに、透析液導入ラインL1にはポンプP1、透析液排出ラインL2にはポンプP2がそれぞれ取り付けられている。収容手段6は、所定量の透析液を収容可能な収容タンク又は収容袋等から成り、ポンプP1、P2を駆動させることにより、収容手段6内の透析液が透析液導入ラインL1を介してダイアライザ1に導入されるとともに、ダイアライザ1からの排液(老廃物を含む透析液)が収容手段6に排出されるよう構成されている。
【0029】
しかして、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2は、収容手段6の透析液をダイアライザ1に導入しつつ当該ダイアライザ1からの排液を収容手段6に排出して透析液を循環させ得る透析液循環ラインを構成している。そして、血液ポンプ4を駆動させて患者の血液を体外循環させつつ透析液循環ラインにて透析液を循環させることにより、血液浄化治療(透析治療)が行われるようになっている。なお、本実施形態においては、ポンプP2の流量をポンプP1の流量より大きく設定することにより、除水(血液流路を流動する血液中の水分を、中空糸膜を介して透析液流路に限外濾過して除去)し得るようになっている。
【0030】
さらに、透析液排出ラインL2には、透析液循環ラインにて循環する透析液中の老廃物濃度を測定し得る老廃物濃度測定手段Sが取り付けられている。かかる老廃物濃度測定手段Sは、例えば透析液排出ラインL2に取り付けられた排液濃度センサから成り、血液浄化に伴ってダイアライザ1から排出された排液の濃度(老廃物濃度)を検出して血液浄化効率を監視し得るものである。本実施形態に係る老廃物濃度測定手段Sは、循環する透析液に光を照射しつつその透過光を受光し得るものとされ、受光強度に応じて生じる電圧によって老廃物濃度を測定し得るものとされている。なお、老廃物濃度を測定し得るものであれば、他の形態の老廃物濃度測定手段としてもよい。
【0031】
透析液浄化手段7は、所謂カラムと称される透析液中の老廃物を吸着可能なもので、透析液循環ラインで循環する透析液を浄化し得るよう構成されている。かかる透析液浄化手段7は、例えば上下方向に亘って内部が複数層に形成された容器を有し、透析液中の老廃物(有機代謝産物)を吸着するための活性炭が収容された層の他、貴金属、酸化物及び微粒子を吸着する浄化層、尿層を分解する分解層、透析液中のMg2+、K、NH、Ca2+を吸着してH及びNaを放出する燐酸ジルコニウムを収容した層、透析液中の燐、フッ素を吸収してアセテートを放出する酸化ジルコニウムを収容した層などを有して構成されている。
【0032】
また、透析液浄化手段7は、内部の各層に透析液を導入する導入口と、内部の各層を流れた透析液を導出する導出口とが形成されており、導入口と収容手段6との間には、当該収容手段6の透析液を透析液浄化手段7に導く流路L3が接続されるとともに、導出口と収容手段6との間には、透析液浄化手段7で浄化された透析液を収容手段6に導く流路L4が接続されている。また、流路L3には、ポンプPaが取り付けられており、当該ポンプPaを駆動させることにより、収容手段6内の透析液を透析液浄化手段7に導入するとともに、透析液浄化手段7にて老廃物が吸着されて浄化された透析液を収容手段6に戻して循環させ得るようになっている。
【0033】
補充液供給手段8は、補充液供給ラインL5を介して流路L4に接続されるとともに、当該補充液供給ラインL5にはポンプPbが取り付けられている。かかる補充液供給手段8は、血液浄化治療(透析治療)にて必要とされる電解質(Mg2+、K、Ca2+等)が含まれる補充液を所定量収容し、ポンプPbを駆動させることにより、その補充液を流路L4を介して収容手段6に供給可能とされている。この補充液供給手段8(他の実施形態も同様)は、透析液浄化手段7にて浄化された透析液がダイアライザ1(血液浄化手段)に至るまでの間に当該透析液に対し、補充液を供給可能なものであれば足りる。なお、本実施形態においては、収容手段6に収容された透析液の量を計測し得る重量計9が配設されており、補充液供給手段8にて供給される補充液の量を計測し得るようになっている。
【0034】
制御手段10は、例えば装置本体内に配設されたマイコン等から成るもので、血液ポンプ4、ポンプP1、P2やポンプPa、Pb等のアクチュエータを任意に駆動又は停止させ得るとともに、重量計9及び老廃物濃度測定手段S等のセンサ類と電気的に接続されている。そして、制御手段10による制御によって、血液浄化治療が行われるようになっている。
【0035】
ここで、本実施形態においては、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液を透析液浄化手段7を介さずにダイアライザ1に導入可能な治療状態(図2参照)と、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環した透析液を透析液浄化手段7にて浄化可能な浄化状態(図3参照)とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるよう構成されている。
【0036】
治療状態においては、図2に示すように、ポンプP1、P2を駆動させ、ポンプPa、Pbを停止させることにより、収容手段6内の透析液を透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を介して循環させてダイアライザ1による血液浄化治療を行わせるようになっている。浄化状態においては、図3に示すように、ポンプP1、P2を停止させ、ポンプPaを駆動させることにより、収容手段6内の透析液を流路L3、L4を介して循環させて透析液浄化手段7による透析液の浄化を行わせるようになっている。
【0037】
また、浄化状態においては、ポンプPbを駆動させ、所定の補充液が収容手段6に供給されたことが重量計9にて検知された時点で当該ポンプPbを停止させるようになっている。これにより、浄化状態で透析液浄化手段7によって吸着された電解質を循環させる透析液に補充することができ、良好な血液浄化治療を継続して行わせることができる。
【0038】
本実施形態においては、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件は、治療状態開始後に老廃物濃度測定手段Sにて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したこととされている。すなわち、治療状態開始後、老廃物濃度測定手段Sで測定された老廃物濃度が予め設定された所定濃度(透析液の浄化が必要とされる所定濃度)に達すると、浄化状態に切り替えられ、収容手段6内の透析液を透析液浄化手段7にて浄化させるのである。
【0039】
そして、浄化状態において、老廃物濃度測定手段Sで測定された老廃物濃度が予め設定された所定濃度(透析液が浄化された場合の所定濃度)に達すると、再び治療状態に切り替わり、収容手段6内の透析液を流路L3、L4を介して循環させて透析液浄化手段7による透析液の浄化を行わせるようになっている。このように、本実施形態においては、血液浄化治療中、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるようになっている。
【0040】
しかるに、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件は、上記のように老廃物濃度測定手段Sにて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したこととされるものに限らず、治療状態開始後に透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液中の老廃物濃度が所定濃度(透析液の浄化が必要とされる所定濃度)に到達すると推定される推定時間であってもよい。この場合、浄化状態において、透析液中の老廃物濃度が所定濃度(透析液が浄化された場合の所定濃度)に到達すると推定される推定時間が経過すると、治療状態に再び切り替わるよう構成するのが好ましい。
【0041】
第1の実施形態によれば、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液を透析液浄化手段7を介さずにダイアライザ1に導入可能な治療状態と、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環した透析液を透析液浄化手段7にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるので、透析液の浄化効率を向上させることができるとともに、透析液に含まれる治療に必要な電解質の低下を抑制することができる。さらに、本実施形態によれば、透析液浄化手段7によって吸着される電解質を補充するための補充液の使用量を抑制することができる。
【0042】
また、血液浄化治療中、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるので、定期的に、浄化された透析液にて血液浄化治療を行わせることができる。さらに、収容手段6に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段8を具備したので、血液浄化治療時に透析液中の電解質が不足してしまうのを防止することができる。
【0043】
またさらに、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液中の老廃物濃度を測定し得る老廃物濃度測定手段Sを具備するとともに、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件は、治療状態開始後に老廃物濃度測定手段Sにて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したことであるので、確実且つ円滑に治療状態から浄化状態に切り替えることができる。
【0044】
また、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件について、治療状態開始後に透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液中の老廃物濃度が所定濃度に到達すると推定される推定時間とすれば、簡易且つ容易に治療状態から浄化状態に切り替えることができる。なお、当該推定時間を所定条件とすれば、老廃物濃度測定手段Sを具備しない血液浄化装置においても、治療状態から浄化状態に切り替えることができる。
【0045】
しかるに、本実施形態においては、補充液供給ラインL5を流路L4に接続し、補充液供給手段8の補充液を当該流路L4を介して収容手段6に供給可能とされているが、例えば図4に示すように、補充液供給ラインL5を透析液排出ラインL2に接続し、補充液供給手段8の補充液を当該透析液排出ラインL2を介して収容手段6に供給するようにしてもよい。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、先の実施形態と同様、血液透析装置に適用されるものであり、図5に示すように、血液浄化手段としてのダイアライザ1に動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3が接続された血液回路と、収容手段6と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を有する透析液循環ラインと、複式ポンプPと、除水ポンプPcと、老廃物濃度測定手段Sと、透析液浄化手段7と、補充液供給手段8と、制御手段10とを具備して構成されている。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0047】
複式ポンプPは、透析液導入ラインL1と透析液排出ラインL2とに跨って配設され、収容手段6内の透析液をダイアライザ1に導入させるとともに当該ダイアライザ1から透析後の透析液を収容手段6内に排出させるものである。また、透析液排出ラインL2における複式ポンプPより上流側(ダイアライザ1側)には、透析液を流動させ得る流路L6が接続されており、その流路L6には除水ポンプPcが取り付けられている。
【0048】
流路L6の先端部には、透析液を装置外部に排出するための透析液排出手段11が配設されており、除水ポンプPcを駆動させると、透析液排出ラインL2の透析液が流路L6を介して透析液排出手段11に至り、そこから装置外部に排出されるようになっている。しかして、除水ポンプPcを駆動させることにより、ダイアライザ1に導入される透析液の流量よりダイアライザ2から排出される透析液の流量が大きくなり、除水し得るようになっている。
【0049】
ここで、本実施形態においては、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液を透析液浄化手段7を介さずにダイアライザ1に導入可能な治療状態(図6、7参照)と、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環した透析液を透析液浄化手段7にて浄化可能な浄化状態(図8参照)とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるよう構成されている。
【0050】
治療状態においては、図6に示すように、複式ポンプPを駆動させ、ポンプPa、Pb及び除水ポンプPcを停止させることにより、収容手段6内の透析液を透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を介して循環させてダイアライザ1による血液浄化治療を行わせるようになっている。また、治療状態において、図7に示すように、除水ポンプPcを駆動させることにより除水することができる。
【0051】
浄化状態においては、図8に示すように、複式ポンプP及び除水ポンプPcを停止させ、ポンプPaを駆動させることにより、収容手段6内の透析液を流路L3、L4を介して循環させて透析液浄化手段7による透析液の浄化を行わせるようになっている。また、浄化状態においては、ポンプPbを駆動させ、所定の補充液が収容手段6に供給されたことが重量計9にて検知された時点で当該ポンプPbを停止させるようになっている。これにより、浄化状態で透析液浄化手段7によって吸着された電解質を循環させる透析液に補充することができ、良好な血液浄化治療を継続して行わせることができる。
【0052】
治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件は、先の実施形態と同様、治療状態開始後に老廃物濃度測定手段Sにて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したこととされている。すなわち、治療状態開始後、老廃物濃度測定手段Sで測定された老廃物濃度が予め設定された所定濃度(透析液の浄化が必要とされる所定濃度)に達すると、浄化状態に切り替えられ、収容手段6内の透析液を透析液浄化手段7にて浄化させるのである。
【0053】
そして、浄化状態において、老廃物濃度測定手段Sで測定された老廃物濃度が予め設定された所定濃度(透析液が浄化された場合の所定濃度)に達すると、再び治療状態に切り替わり、収容手段6内の透析液を流路L3、L4を介して循環させて透析液浄化手段7による透析液の浄化を行わせるようになっている。このように、本実施形態においては、血液浄化治療中、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるようになっている。
【0054】
しかるに、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件は、上記のように老廃物濃度測定手段Sにて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したこととされるものに限らず、治療状態開始後に透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液中の老廃物濃度が所定濃度(透析液の浄化が必要とされる所定濃度)に到達すると推定される推定時間であってもよい。この場合、浄化状態において、透析液中の老廃物濃度が所定濃度(透析液が浄化された場合の所定濃度)に到達すると推定される推定時間が経過すると、治療状態に再び切り替わるよう構成するのが好ましい。
【0055】
第2の実施形態によれば、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液を透析液浄化手段7を介さずにダイアライザ1に導入可能な治療状態と、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環した透析液を透析液浄化手段7にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるので、透析液の浄化効率を向上させることができるとともに、透析液に含まれる治療に必要な電解質の低下を抑制することができる。さらに、本実施形態によれば、透析液浄化手段7によって吸着される電解質を補充するための補充液の使用量を抑制することができる。
【0056】
また、血液浄化治療中、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるので、定期的に、浄化された透析液にて血液浄化治療を行わせることができる。さらに、収容手段6に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段8を具備したので、血液浄化治療時に透析液中の電解質が不足してしまうのを防止することができる。
【0057】
またさらに、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液中の老廃物濃度を測定し得る老廃物濃度測定手段Sを具備するとともに、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件は、治療状態開始後に老廃物濃度測定手段Sにて測定された老廃物濃度が所定濃度に達したことであるので、確実且つ円滑に治療状態から浄化状態に切り替えることができる。
【0058】
また、治療状態開始後に浄化状態に切り替えられるための所定条件について、治療状態開始後に透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液中の老廃物濃度が所定濃度に到達すると推定される推定時間とすれば、簡易且つ容易に治療状態から浄化状態に切り替えることができる。なお、当該推定時間を所定条件とすれば、老廃物濃度測定手段Sを具備しない血液浄化装置においても、治療状態から浄化状態に切り替えることができる。
【0059】
次に、本発明の第3の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、先の実施形態と同様、血液透析装置に適用されるものであり、図9に示すように、血液浄化手段としてのダイアライザ1に動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3が接続された血液回路と、第1収容手段6a及び第2収容手段6bと、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を有する透析液循環ライン(第1循環流路系及び第2循環流路系)と、ポンプP1、P2と、老廃物濃度測定手段Sと、透析液浄化手段7と、補充液供給手段8と、制御手段10とを具備して構成されている。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0060】
第1収容手段6a及び第2収容手段6bは、それぞれ透析液が所定量収容されたタンク等から成り、第1収容手段6a及び透析液導入ラインL1に接続されて透析液を流通させ得る流路L1aと、第1収容手段6a及び透析液排出ラインL2に接続されて透析液を流通させ得る流路L2aと、第2収容手段6b及び透析液導入ラインL1に接続されて透析液を流通させ得る流路L1bと、第2収容手段6b及び透析液排出ラインL2に接続されて透析液を流通させ得る流路L2bとを有している。
【0061】
流路L1a及び流路L1bには、電磁弁V1、V2がそれぞれ配設されるとともに、流路L2a及び流路L2bには、電磁弁V3、V4がそれぞれ配設されており、制御手段10によって任意の電磁弁が開閉制御可能とされている。これにより、電磁弁V1、V3を開状態としつつ電磁弁V2、V4を閉状態とすれば、流路L1a、透析液導入ラインL1、透析液排出ラインL2及び流路L2aによって、ダイアライザ1を介して第1収容手段6aの透析液を循環させ得る第1循環流路系が構成されるとともに、電磁弁V1、V3を閉状態としつつ電磁弁V2、V4を開状態とすれば、流路L1b、透析液導入ラインL1、透析液排出ラインL2及び流路L2bによって、ダイアライザ1を介して第2収容手段6bの透析液を循環させ得る第2循環流路系が構成されている。すなわち、第1収容手段6aを有する透析液循環ラインが第1循環流路系を構成するとともに、第2収容手段6bを有する透析液循環ラインが第2循環流路系を構成するのである。
【0062】
さらに、第1収容手段6aは、透析液を流通可能な流路L3aを介して流路L3に接続され、透析液を流通可能な流路L5aを介して流路L5に接続されるとともに、第2収容手段6bは、透析液を流通可能な流路L3bを介して流路L3に接続され、透析液を流通可能な流路L5bを介して流路L5に接続されている。また、透析液浄化手段7から延設された流路L4は、流路L5に接続されている。流路L3a及び流路L3bには、電磁弁V5、V6がそれぞれ配設されるとともに、流路L5a及び流路L5bには、電磁弁V7、V8がそれぞれ配設されており、制御手段10によって任意の電磁弁が開閉制御可能とされている。
【0063】
ここで、本実施形態においては、第1循環流路系及び第2循環流路系の何れか一方が治療状態のとき、他方が浄化状態とされるよう構成されている。具体的には、図10、12に示すように、電磁弁V1、V3、V6、V8を開状態としつつ電磁弁V2、V4、V5、V7を閉状態とすることにより、第1循環流路系(第1収容手段6aを有する透析液循環ライン)を治療状態、且つ、第2循環流路系(第2収容手段6bを有する透析液循環ライン)を浄化状態(但し、図10はポンプPa、Pbが停止した停止状態を示している)とするとともに、図11に示すように、電磁弁V2、V4、V5、V7を開状態としつつ電磁弁V1、V3、V6、V8を閉状態とすることにより、第1循環流路系を浄化状態、且つ、第2循環流路系を治療状態とするよう構成されている。
【0064】
しかして、先の実施形態と同様、第1循環流路系及び第2循環流路系について、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるようになっている。かかる所定条件については、先の実施形態と同様である。具体的には、図10に示すように、ポンプP1、P2を駆動させつつポンプPa、Pbを停止させるとともに、電磁弁V1、V3、V6、V8を開状態としつつ電磁弁V2、V4、V5、V7を閉状態とすることにより、第1循環流路系を治療状態(この場合、第2循環流路系は、未だ浄化の必要がないため停止状態とされている)とする。
【0065】
しかるに、第1循環流路系の治療状態開始後、所定条件を満たすことを条件として、図11に示すように、ポンプP1、P2及びポンプPa、Pbを駆動させるとともに、電磁弁V2、V4、V5、V7を開状態としつつ電磁弁V1、V3、V6、V8を閉状態とすることにより、第1循環流路系を浄化状態及び第2循環流路系を治療状態とする。そして、第2循環流路系の治療状態開始後、所定条件を満たすことを条件として、図12に示すように、ポンプP1、P2及びポンプPa、Pbを駆動させるとともに、電磁弁V1、V3、V6、V8を開状態としつつ電磁弁V2、V4、V5、V7を閉状態とすることにより、第1循環流路系を治療状態及び第2循環流路系を浄化状態とする。
【0066】
このように、第1循環流路系及び第2循環流路系の何れか一方が治療状態のとき、他方が浄化状態(但し、本実施形態においては、治療開始直後の第1循環流路系が治療状態のとき、第2循環流路系は停止している)とされ、血液浄化治療中、図11、12に示すように、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるようになっている。これにより、血液浄化治療を連続して行わせつつ透析液の浄化を行わせることができる。
【0067】
第3の実施形態によれば、第1循環流路系及び第2循環流路系について、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液を透析液浄化手段7を介さずにダイアライザ1に導入可能な治療状態と、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環した透析液を透析液浄化手段7にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるので、透析液の浄化効率を向上させることができるとともに、透析液に含まれる治療に必要な電解質の低下を抑制することができる。さらに、本実施形態によれば、透析液浄化手段7によって吸着される電解質を補充するための補充液の使用量を抑制することができる。
【0068】
また、血液浄化治療中、治療状態と浄化状態とが順次切り替わって繰り返し行われるので、定期的に、浄化された透析液にて血液浄化治療を行わせることができる。さらに、収容手段6に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段8を具備したので、血液浄化治療時に透析液中の電解質が不足してしまうのを防止することができる。
【0069】
上記第3の実施形態においては、第2の実施形態と同様、図13に示すように、ポンプP1、P2に代えて、透析液導入ラインL1と透析液排出ラインL2とに跨って配設された複式ポンプPとするとともに、除水ポンプPcを具備した流路L6を透析液排出ラインL2から延設させるものとしてもよい。この場合、除水ポンプPcを駆動させることにより、ダイアライザ1に導入される透析液の流量よりダイアライザ2から排出される透析液の流量が大きくなり、除水し得るようになっている。なお、図13で示すように、流路L6に電磁弁V9を設け、除水時に当該電磁弁V9を開状態とするのが好ましい。
【0070】
次に、本発明の第4の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
本実施形態に係る血液浄化装置は、先の実施形態と同様、血液透析装置に適用されるものであり、図14に示すように、血液浄化手段としてのダイアライザ1に動脈側血液回路2及び静脈側血液回路3が接続された血液回路と、収容手段6と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を有する透析液循環ラインと、迂回ラインL7、L8と、ポンプP1、P2と、老廃物濃度測定手段Sと、透析液浄化手段7と、補充液供給手段8と、制御手段10とを具備して構成されている。なお、先の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0071】
迂回ラインL7、L8は、透析液循環ライン(本実施形態においては透析液循環ラインを構成する透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2のうち透析液排出ラインL2)を流れる透析液を迂回させて流通可能とされるとともに透析液浄化手段7が配設された流路から成る。かかる迂回ラインL7には、電磁弁V10が配設されるとともに、透析液導入ラインL1における迂回ラインL7の接続部位と迂回ラインL8の接続部位との間には、電磁弁V11が配設されている。
【0072】
そして、治療状態のとき、図15に示すように、電磁弁V10を閉状態及び電磁弁V11を開状態とすることにより、迂回ラインL7、L8への流れを規制するとともに、浄化状態のとき、図16に示すように、電磁弁V10を開状態及び電磁弁V11を閉状態とすることにより、迂回ラインL7、L8にて透析液を流通させつつ透析液浄化手段7で浄化させるよう構成されている。
【0073】
ここで、本実施形態においては、先の実施形態と同様、治療状態(図15参照)開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態(図16参照)に切り替えられるようになっている。かかる所定条件については、先の実施形態と同様である。具体的には、治療状態のとき、図15に示すように、ポンプP1、P2を駆動させつつポンプPbを停止させるとともに、電磁弁V10を閉状態及び電磁弁V11を開状態とする。これにより、収容手段6内の透析液は、透析液導入ラインL1を流れてダイアライザ1に至り、そこで血液浄化された後、迂回ラインL7、L8を流れずに透析液排出ラインL2を介して収容手段6に排出されることとなり、収容手段6内の透析液が透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を介して循環し得るようになっている。
【0074】
一方、浄化状態のとき、図16に示すように、ポンプP1、P2を駆動させつつポンプPbを駆動させるとともに、電磁弁V10を開状態及び電磁弁V11を閉状態とする。これにより、収容手段6内の透析液は、透析液導入ラインL1を流れてダイアライザ1に至る。そして、ダイアライザ1に流れた透析液にて血液浄化された後、その排液が迂回ラインL7、L8を流れて透析液浄化手段7にて浄化され、透析液排出ラインL2を介して収容手段6に排出されることとなり、収容手段6内の透析液が透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を介して循環する過程で透析液浄化手段7にて浄化し得るようになっている。
【0075】
このように、治療状態のとき、迂回ラインL7、L8への流れを規制するとともに、浄化状態のとき、迂回ラインL7、L8にて透析液を流通させつつダイアライザ1で浄化させるので、透析液を流動させつつ浄化させることができ、且つ、血液浄化治療を連続して行わせつつ透析液の浄化を行わせることができる。なお、本実施形態においては、透析液浄化手段7を有する迂回ラインL7、L8が透析液排出ラインL2に接続されているが、図17に示すように、透析液導入ラインL1に接続するようにしてもよい。また、ポンプP1、P2に代えて第2実施形態の如き複式ポンプとしてもよい。
【0076】
第4の実施形態によれば、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)にて循環する透析液を透析液浄化手段7を介さずにダイアライザ1に導入可能な治療状態と、透析液循環ライン(透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2)の透析液を透析液浄化手段7にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられるので、透析液の浄化効率を向上させることができるとともに、透析液に含まれる治療に必要な電解質の低下を抑制することができる。さらに、本実施形態によれば、透析液浄化手段7によって吸着される電解質を補充するための補充液の使用量を抑制することができる。またさらに、収容手段6に対し、血液浄化治療にて必要とされる電解質が含まれる補充液を供給可能な補充液供給手段8を具備したので、血液浄化治療時に透析液中の電解質が不足してしまうのを防止することができる。
【0077】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられる血液浄化装置であれば足り、例えば上記実施形態の所定条件とは異なる他の所定条件(透析液中の老廃物濃度と相関があるパラメータを条件とするのが好ましい)であってもよい。また、補充液供給手段8又は老廃物濃度測定手段Sを具備しないもの、或いは重量計9を具備しないもの(例えばポンプPbの流量を制御して所定量の補充液を供給するもの等)であってもよい。さらに、透析液の組成が適正か否か確認するための透析液濃度確認手段(例えば電導度計等)を具備するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
透析液循環ラインにて循環する透析液を透析液浄化手段を介さずに血液浄化手段に導入可能な治療状態と、透析液循環ラインの透析液を透析液浄化手段にて浄化可能な浄化状態とが切替可能とされるとともに、治療状態開始後、所定条件を満たしたことを条件として、浄化状態に切り替えられる血液浄化装置であれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 ダイアライザ(血液浄化手段)
2 動脈側血液回路
3 静脈側血液回路
4 血液ポンプ
5 静脈側エアトラップチャンバ
6 収容手段
7 透析液浄化手段
8 補充液供給手段
9 重量計
10 制御手段
11 排出手段
L1 透析液導入ライン
L2 透析液排出ライン
L3 流路
L4 流路
L5 補充液供給ライン
L6 流路
L7、L8 迂回ライン
S 老廃物濃度測定手段
P1、P2、Pa、Pb ポンプ
Pc 除水ポンプ
P 複式ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17