特許第6826880号(P6826880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6826880ガラス加工装置及びガラス曲板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826880
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ガラス加工装置及びガラス曲板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/02 20060101AFI20210128BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C03B33/02
   B28D5/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-246889(P2016-246889)
(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公開番号】特開2018-100198(P2018-100198A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593046429
【氏名又は名称】日電硝子加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚平
(72)【発明者】
【氏名】森上 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】築山 信恩
(72)【発明者】
【氏名】大西 純一
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−297235(JP,A)
【文献】 特開2012−101975(JP,A)
【文献】 実開昭62−011139(JP,U)
【文献】 特開平05−017175(JP,A)
【文献】 特開2002−113658(JP,A)
【文献】 特開平10−095626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−35/26
C03B 40/00−40/04
B28D 1/00− 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する両端縁に沿って連なる湾曲部又は屈曲部を有する曲板状のガラスの端縁部分を含む一対の不要部分を除去することで、ガラス曲板を得るために用いられるガラス加工装置であって、
前記曲板状のガラスが載置される載置台と、前記載置台に載置された前記曲板状のガラスを押圧する押圧機構と、前記曲板状のガラスの外面に割断線を形成する刃体を有する割断線形成機構と、を備え、
前記載置台は、前記曲板状のガラスの前記湾曲部又は前記屈曲部の内面を支持する支持部を有し、
前記押圧機構は、前記湾曲部又は前記屈曲部を前記載置台の前記支持部に向けて押圧する押圧部を有し、
前記割断線形成機構は、前記刃体を前記曲板状のガラスの対向する両端縁に沿って連なる前記湾曲部又は前記屈曲部に沿って進行させるとともに、第1割断線形成機構及び第2割断線形成機構を備え、前記第1割断線形成機構及び前記第2割断線形成機構は、前記曲板状のガラスの対向する両端縁に沿って連なる前記湾曲部又は前記屈曲部に対して両側となる位置にそれぞれ割断線を形成するように構成され、
前記押圧機構の前記押圧部は、前記第1割断線形成機構により形成する前記割断線と、前記第2割断線形成機構により形成する前記割断線との間の位置を押圧するように配置されることを特徴とするガラス加工装置。
【請求項2】
前記載置台の前記支持部は、前記曲板状のガラスにおける前記湾曲部又は前記屈曲部の内面に沿った凸面を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス加工装置。
【請求項3】
前記載置台は、前記割断線の終端側となる前記曲板状のガラスの端面を支持することで前記曲板状のガラスの移動を規制する終端側移動規制部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のガラス加工装置。
【請求項4】
前記終端側移動規制部は、前記刃体が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに前記刃体よりも軟質な材料から構成されていることを特徴とする請求項に記載のガラス加工装置。
【請求項5】
前記載置台は、前記割断線の始端側となる前記曲板状のガラスの端面を支持することで前記曲板状のガラスの移動を規制する始端側移動規制部を備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のガラス加工装置。
【請求項6】
前記始端側移動規制部は、前記刃体が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに前記刃体よりも軟質な材料から構成されていることを特徴とする請求項に記載のガラス加工装置。
【請求項7】
前記第1割断線形成機構及び前記第2割断線形成機構は、
前記第1割断線形成機構の第1刃体と前記第2割断線形成機構の第2刃体とをそれぞれ前記曲板状のガラスの対向する両端縁に沿って連なる前記湾曲部又は前記屈曲部に沿って並走させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のガラス加工装置。
【請求項8】
対向する両端縁に沿って連なる湾曲部又は屈曲部を有する曲板状のガラスの端縁部分を含む一対の不要部分を除去することで、ガラス曲板を製造するガラス曲板の製造方法であって、
前記湾曲部又は前記屈曲部の内面を支持する支持部を有する載置台に前記曲板状のガラスを載置する載置工程と、
前記載置台に載置された前記曲板状のガラスの対向する両端縁に沿って連なる前記湾曲部又は前記屈曲部に沿って割断線形成機構の刃体を進行させることで、前記曲板状のガラスの外面に割断線を形成する割断線形成工程と、
前記割断線に沿った割断によって前記曲板状のガラスから前記不要部分を除去する不要部分除去工程と、を備え
前記割断線形成機構は、第1割断線形成機構及び第2割断線形成機構を備え、
前記割断線形成機構では、前記第1割断線形成機構及び前記第2割断線形成機構によって、前記曲板状のガラスの対向する両端縁に沿って連なる前記湾曲部又は前記屈曲部に対して両側となる位置にそれぞれ割断線を形成し、
前記載置工程では、前記湾曲部又は前記屈曲部を押圧機構の押圧部によって前記載置台の前記支持部に向けて押圧し、
前記押圧機構の前記押圧部は、前記第1割断線形成機構により形成する前記割断線と、前記第2割断線形成機構により形成する前記割断線との間の位置を押圧するように配置されることを特徴とするガラス曲板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス加工装置及びガラス曲板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲面形状を有するガラス曲板の製造方法としては、成形型を用いて平板状のガラスを塑性変形させる方法や、特許文献1に開示されるように平板状のガラスを弾性変形させた状態とし、その状態で塑性変形させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−27936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、曲板状のガラスの不要部分を除去することで、所定の形状のガラス曲板を得るために好適なガラス加工装置及びガラス曲板の製造方法を見出すことでなされたものである。
【0005】
本発明の目的は、曲板状のガラスの不要部分を除去したガラス曲板を容易に得ることのできるガラス加工装置及びガラス曲板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラス加工装置は、対向する両端縁に沿って連なる湾曲部又は屈曲部を有する曲板状のガラスの少なくとも一方の端縁部分を含む不要部分を除去することで、ガラス曲板を得るために用いられるガラス加工装置であって、前記曲板状のガラスが載置される載置台と、前記曲板状のガラスの外面に割断線を形成する刃体を有する割断線形成機構と、を備え、前記載置台は、前記曲板状のガラスの前記湾曲部又は前記屈曲部の内面を支持する支持部を有し、前記割断線形成機構は、前記刃体を前記曲板状のガラスの前記湾曲部又は前記屈曲部が連なる方向に沿って進行させる。
【0007】
この構成によれば、曲板状のガラスの少なくとも一方の端縁部分を含む不要部分を除去するための割断線を曲板状のガラスに容易に形成することができる。このため、割断線を利用して曲板状のガラスを割断することで、曲板状のガラスの上記不要部分を除去したガラス曲板を容易に得ることができる。
【0008】
上記ガラス加工装置において、前記載置台の前記支持部は、前記曲板状のガラスにおける前記湾曲部又は前記屈曲部の内面に沿った凸面を有することが好ましい。
この構成によれば、曲板状のガラスを載置台の支持部により安定して支持することができるため、曲板状のガラスに割断線を精度よく形成することができる。
【0009】
上記ガラス加工装置は、前記載置台に載置された前記曲板状のガラスを前記載置台に向けて押圧する押圧機構をさらに備えることが好ましい。
この構成によれば、曲板状のガラスを載置台の支持部により安定して支持することができるため、曲板状のガラスに割断線を精度よく形成することができる。
【0010】
上記ガラス加工装置において、前記載置台は、前記割断線の終端側となる前記曲板状のガラスの端面を支持することで前記曲板状のガラスの移動を規制する終端側移動規制部を備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、刃体の進行に伴って曲板状のガラスが移動することを抑えることができるため、例えば、曲板状のガラスの端縁まで割断線をより確実に形成することができる。
【0012】
上記ガラス加工装置において、前記終端側移動規制部は、前記刃体が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに前記刃体よりも軟質な材料から構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、終端側移動規制部は、刃体が進行する進行経路となる位置に配置されることで、刃体の進行に伴って曲板状のガラスが移動しようとする力を好適に受け止めることができる。また、終端側移動規制部は、刃体よりも軟質な材料から構成されているため、終端側移動規制部に刃体が進入したとしても、刃体の損傷は発生し難い。
【0014】
上記ガラス加工装置において、前記載置台は、前記割断線の始端側となる前記曲板状のガラスの端面を支持することで前記曲板状のガラスの移動を規制する始端側移動規制部を備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、例えば、載置台を移動させるように構成しても、曲板状のガラスを載置台上に好適に保持させることができる。
上記ガラス加工装置において、前記始端側移動規制部は、前記刃体が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに前記刃体よりも軟質な材料から構成されていることが好ましい。
【0016】
ここで、割断線形成機構の刃体を載置台に対して接近させることで刃体を所定の位置に配置する際や、刃体の進行を開始させた直後では、例えば、刃体が振動することで、割断線の形成が好適に開始されないおそれがある。上記構成によれば、始端側移動規制部を刃体が進行する進行経路となる位置に配置することで、刃体を始端側移動規制部に当接することができる。こうした始端側移動規制部を刃体よりも軟質な材料から構成することで、刃体に損傷が発生することを抑えるとともに刃体を安定させることができる。
【0017】
上記ガラス加工装置において、前記割断線形成機構は、第1割断線形成機構及び第2割断線形成機構を備え、前記第1割断線形成機構及び前記第2割断線形成機構は、前記曲板状のガラスにおける前記湾曲部又は前記屈曲部の連なる方向に対して両側となる位置にそれぞれ割断線を形成することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、曲板状のガラスにおける湾曲部又は屈曲部の連なる方向に対して両側となる位置に同時に割断線を形成することが可能となる。
上記ガラス加工装置において、前記第1割断線形成機構及び前記第2割断線形成機構は、前記第1割断線形成機構の第1刃体と前記第2割断線形成機構の第2刃体とをそれぞれ前記湾曲部又は前記屈曲部が連なる方向に沿って並走させることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、曲板状のガラスには、湾曲部又は屈曲部の連なる方向に対して両側から第1刃体と第2刃体とにより挟み込むように力が加わるため、載置台に載置された曲板状のガラスが安定し易い。これにより、曲板状のガラスに割断線を精度よく形成することができる。
【0020】
上記課題を解決するガラス曲板の製造方法は、対向する両端縁に沿って連なる湾曲部又は屈曲部を有する曲板状のガラスの少なくとも一方の端縁部分を含む不要部分を除去することで、ガラス曲板を製造するガラス曲板の製造方法であって、前記湾曲部又は前記屈曲部の内面を支持する支持部を有する載置台に前記曲板状のガラスを載置する載置工程と、前記載置台に載置された前記曲板状のガラスの前記湾曲部又は前記屈曲部が連なる方向に沿って刃体を進行させることで、前記曲板状のガラスの外面に割断線を形成する割断線形成工程と、前記割断線に沿った割断によって前記曲板状のガラスから前記不要部分を除去する不要部分除去工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、曲板状のガラスの不要部分を除去したガラス曲板を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、実施形態におけるガラス曲板を示す斜視図であり、(b)は、実施形態における曲板状のガラスを示す斜視図である。
図2】実施形態におけるガラス加工装置の主要部を示す概略斜視図である。
図3】ガラス加工装置の主要部を示す概略側面図である。
図4】ガラス曲板の製造方法を示す概略図である。
図5】ガラス曲板の製造方法を示す概略図である。
図6】ガラス曲板の製造方法を示す概略図である。
図7】ガラス曲板の製造方法を示す概略図である。
図8】ガラス曲板の製造方法を示す概略図である。
図9】ガラス曲板の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のガラス加工装置及びガラス曲板の製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0024】
図1(a)及び図1(b)に示すように、ガラス曲板11を得るための曲板状のガラス12は、対向する両端縁13,14に沿って連なる湾曲部15を有している。詳述すると、曲板状のガラス12は、湾曲部15から第1端縁13まで延在する平板状の第1延在部16と、湾曲部15から第2端縁14まで延在する平板状の第2延在部17とを有している。すなわち、本実施形態の曲板状のガラス12の断面形状は、逆U字状である。
【0025】
曲板状のガラス12は、四辺を有する平板状のガラスの対向する両端縁(第1端縁13と第2端縁14)を近づけるように曲げることで形成することができる。詳述すると、曲板状のガラス12は、平板状のガラスを湾曲形状の成形面を有する成形型に沿って熱変形させることで得られる。本実施形態の曲板状のガラス12は、結晶性ガラスから形成されている。結晶性ガラスとしては、例えば、LAS(LiO−Al−SiO)系結晶性ガラスが挙げられる。LAS系結晶性ガラスは、熱処理によりβ−石英固溶体又はβ−スポジュメン固溶体が主結晶として析出するガラスである。このため、曲板状のガラス12から得られたガラス曲板11を熱処理することで、結晶化ガラスからなるガラス物品が得られる。このように得られたガラス物品は、例えば、低熱膨張性を有するため、耐熱性を必要とする用途に好適に用いることができる。
【0026】
本実施形態のガラス曲板11は、曲板状のガラス12における両端縁部分を含む一対の不要部分GP(第1延在部16と湾曲部15の一部、及び第2延在部17と湾曲部15の一部)を除去することで得られる。すなわち、図1(b)の二点鎖線に沿って曲板状のガラス12を割断することで、ガラス曲板11が得られる。
【0027】
図2及び図3に示すように、ガラス曲板11を得るために用いられるガラス加工装置18は、曲板状のガラス12が載置される載置台19と、割断線形成機構20とを備えている。割断線形成機構20は、曲板状のガラス12の外面に割断線(スクライブライン)を形成する刃体21を有している。載置台19は、曲板状のガラス12の湾曲部15の内面を支持する支持部22を有している。ガラス加工装置18の割断線形成機構20は、載置台19に載置された曲板状のガラス12の湾曲部15が連なる方向Dに沿って刃体21を進行させる。
【0028】
まず、ガラス加工装置18の載置台19の詳細について説明する。
ガラス加工装置18の載置台19の支持部22は、曲板状のガラス12の湾曲部15の内面に沿った凸面を有している。支持部22の凸面は、曲板状のガラス12に割断線を形成する部分(刃体21が当接する部分)に対向する内面全体にわたって支持する形状であることが好ましい。
【0029】
ガラス加工装置18の載置台19は、割断線形成機構20で形成される割断線の終端側となる曲板状のガラス12の端面を支持することで、曲板状のガラス12の移動を規制する終端側移動規制部23を備えている。終端側移動規制部23は、刃体21が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに刃体21よりも軟質な材料から構成されている。終端側移動規制部23を構成する材料は、ゴム弾性を有することが好ましい。終端側移動規制部23の外面は、曲板状のガラス12の外面と略面一に構成されることが好ましい。
【0030】
載置台19は、割断線形成機構20で形成される割断線の始端側となる曲板状のガラス12の端面を支持することで、曲板状のガラス12の移動を規制する始端側移動規制部24をさらに備えている。始端側移動規制部24は、刃体21が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに刃体21よりも軟質な材料から構成されている。始端側移動規制部24を構成する材料は、ゴム弾性を有することが好ましい。始端側移動規制部24の外面は、曲板状のガラス12の外面と略面一に構成されることが好ましい。
【0031】
上述した構成の載置台19において、曲板状のガラス12は、載置台19の終端側移動規制部23と始端側移動規制部24との間に配置され、曲板状のガラス12の内面は、載置台19における支持部22の凸面で支持される。
【0032】
次に、ガラス加工装置18の割断線形成機構20の詳細について説明する。
図2及び図3に示すように、ガラス加工装置18の割断線形成機構20は、第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26とを備えている。第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、曲板状のガラス12における湾曲部15の連なる方向Dに対して両側となる位置にそれぞれ割断線を形成する。第1割断線形成機構25の第1刃体21a及び第2割断線形成機構26の第2刃体21bは、曲板状のガラス12の外面に対して垂直となるように当接される。本実施形態では、第1刃体21a及び第2刃体21bは、上述した曲板状のガラス12の不要部分GPを割断するため、曲板状のガラス12における湾曲部15の斜め上方から当接される。第1刃体21a及び第2刃体21bとしては、例えば、超硬材から構成されるホイールが用いられる。第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、それぞれ第1刃体21a及び第2刃体21bを直線状に進行させる。
【0033】
ガラス加工装置18の第1割断線形成機構25は、図示を省略した駆動部によって第1刃体21aを上述した方向Dに沿って進行させる。駆動部としては、例えば、モータにより駆動されるラックアンドピニオン機構や流体圧シリンダを用いることができる。また、第1割断線形成機構25は、第1刃体21aを載置台19に対して接近及び離間させる変位機構を備えている。変位機構としては、例えば、第1刃体21aを載置台19に対して接近及び離間させる方向に往復動させる流体圧シリンダや、アームの先端に設けた第1刃体21aを載置台19に対して接近及び離間させる方向に回動させる回動機構が挙げられる。本実施形態の第1割断線形成機構25は、第1刃体21aを載置台19に対して接近及び離間させる流体圧シリンダを備えている。第2割断線形成機構26についても、第1割断線形成機構25と共通する構成を有している。
【0034】
本実施形態の第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、第1刃体21aと第2刃体21bとをそれぞれ湾曲部15が連なる方向Dに沿って並走させる。すなわち、第1刃体21a及び第2刃体21bは、平面視で対向する位置であり、同一の方向Dに沿って進行する。例えば、第1刃体21aと第2刃体21bとを連結した連結アームを駆動する共通の駆動部を第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26に設けたり、位置センサを用いて第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26を駆動制御したりすることで、第1刃体21aと第2刃体21bとを並走させることができる。
【0035】
図2及び図3に示すように、本実施形態のガラス加工装置18は、載置台19に載置された曲板状のガラス12を載置台19に向けて押圧する押圧機構27をさらに備えている。押圧機構27は、載置台19に載置された曲板状のガラス12の湾曲部15が連なる方向Dに沿って延在する押圧部28を備えている。押圧部28は、例えば、流体圧シリンダ等の昇降機構によって昇降されるように構成されている。押圧部28において曲板状のガラス12と接する面は、ゴム弾性を有していることが好ましい。なお、押圧部28は、例えば、曲板状のガラス12において、湾曲部15が連なる方向Dの両端部分のみや中央部分のみを押圧するように構成してもよい。
【0036】
図4に示すように、ガラス加工装置18は、曲板状のガラス12の搬入を行う搬入部29と、曲板状のガラス12を加工する加工部30とを備えている。上述したガラス加工装置18の載置台19は、搬入部29と加工部30とのいずれかに位置するように往復動可能に設けられている。こうした載置台19は、図示を省略するが、例えば、基台上のレールを走行する車輪を備えている。載置台19は、加工部30の所定の位置で一時的に固定される。ガラス加工装置18の加工部30には、上述した割断線形成機構20及び押圧機構27が装備されている。
【0037】
次に、ガラス加工装置18の動作をガラス曲板11の製造方法とともに説明する。
ガラス曲板11の製造方法は、対向する両端縁13,14に沿って連なる湾曲部15を有する曲板状のガラス12の両端縁部分を含む不要部分GPを除去することで、ガラス曲板11を製造する方法である。ガラス曲板11の製造方法は、載置工程と割断線形成工程と不要部分除去工程とを備えている。
【0038】
図4に示すように、本実施形態のガラス曲板11の製造方法における載置工程では、搬入部29に位置している載置台19に曲板状のガラス12を載置する。載置工程後の載置台19は、ガラス加工装置18の搬入部29から加工部30に移動され、加工部30の所定の位置に固定される。
【0039】
図5及び図6に示すように、ガラス加工装置18の加工部30では、載置台19に載置された曲板状のガラス12をガラス加工装置18の押圧機構27によって載置台19に向けて押圧する。このとき、曲板状のガラス12は、載置台19の支持部22と押圧機構27の押圧部28との間で挟持された状態となる。
【0040】
次に、図6及び図7に示すように、ガラス加工装置18における割断線形成機構20の刃体21を載置台19に近づける。このとき、図7に示すように、刃体21(第1刃体21a及び第2刃体21b)の刃先は、載置台19の始端側移動規制部24に当接される。
【0041】
図8に示すように、ガラス曲板11の製造方法における割断線形成工程では、ガラス加工装置18の載置台19に載置された曲板状のガラス12の湾曲部15が連なる方向Dに沿って刃体21を進行させることで、曲板状のガラス12の外面に割断線を形成する。詳述すると、ガラス加工装置18の載置台19の始端側移動規制部24に当接された刃体21(第1刃体21a及び第2刃体21b)を載置台19の終端側移動規制部23上まで直線状に進行させる。このとき、本実施形態の第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、第1刃体21aと第2刃体21bを曲板状のガラス12の湾曲部15が連なる方向Dに沿って並走させる。
【0042】
本実施形態の割断線形成工程では、第1刃体21a及び第2刃体21bの進行によって、曲板状のガラス12における湾曲部15の連なる方向Dに対して両側となる位置にそれぞれ割断線Lが形成される。割断線形成工程後、割断線形成機構20の刃体21を終端側移動規制部23から離間させるとともに、押圧機構27を曲板状のガラス12から離間させる。続いて、固定を解除した載置台19をガラス加工装置18の加工部30から搬入部29に移動させる。
【0043】
図9に示すように、ガラス加工装置18の搬入部29では、割断線Lが形成された曲板状のガラス12を載置台19から降ろす。ガラス曲板11の製造方法における不要部分除去工程では、割断線Lに沿った割断(スクライブ)によって曲板状のガラス12から不要部分GPを除去する。これにより、曲板状のガラス12から不要部分GPが除去されることで、ガラス曲板11が得られる。
【0044】
得られたガラス曲板11を熱処理することで、結晶性ガラスが結晶化されたガラス物品となる。なお、ガラス曲板11を所定の長さに切断する工程や、ガラス曲板11を面取りする工程を通じてガラス物品を得ることもできる。
【0045】
以上詳述した実施形態によれば、次のような作用効果が発揮される。
(1)ガラス加工装置18は、対向する両端縁13,14に沿って連なる湾曲部15を有する曲板状のガラス12の両端縁部分を含む不要部分GPを除去することで、ガラス曲板11を得るために用いられる。ガラス加工装置18は、曲板状のガラス12が載置される載置台19と、割断線形成機構20とを備えている。割断線形成機構20は、曲板状のガラス12の外面に割断線Lを形成する刃体21を有している。載置台19は、曲板状のガラス12の湾曲部15の内面を支持する支持部22を有している。割断線形成機構20は、刃体21を曲板状のガラス12の湾曲部15が連なる方向Dに沿って進行させる。
【0046】
この構成によれば、曲板状のガラス12の両端縁部分を含む不要部分GPを除去するための割断線Lを曲板状のガラス12に容易に形成することができる。このため、割断線Lを利用して曲板状のガラス12を割断することで、曲板状のガラス12の不要部分GPを除去したガラス曲板11を容易に得ることができる。
【0047】
(2)ガラス加工装置18における載置台19の支持部22は、曲板状のガラス12における湾曲部15の内面に沿った凸面を有している。
この場合、曲板状のガラス12を載置台19の支持部22により安定して支持することができるため、曲板状のガラス12に割断線Lを精度よく形成することができる。従って、より寸法精度の高いガラス曲板11を得ることが可能となる。また、上記凸面をゴム系材料から構成することで、例えば、曲板状のガラス12を支持させる際の衝撃を吸収させることができるため、曲板状のガラス12の破損の発生を抑制することもできる。
【0048】
(3)ガラス加工装置18は、載置台19に載置された曲板状のガラス12を載置台19に向けて押圧する押圧機構27をさらに備えている。
この場合、曲板状のガラス12を載置台19の支持部22により安定して支持することができるため、曲板状のガラス12に割断線Lを精度よく形成することができる。従って、より寸法精度の高いガラス曲板11を得ることが可能となる。
【0049】
(4)ガラス加工装置18の載置台19は、割断線Lの終端側となる曲板状のガラス12の端面を支持することで曲板状のガラス12の移動を規制する終端側移動規制部23を備えている。
【0050】
この場合、刃体21の進行に伴って曲板状のガラス12が移動することを抑えることができるため、例えば、曲板状のガラス12の端縁まで割断線Lをより確実に形成することができる。
【0051】
(5)ガラス加工装置18の終端側移動規制部23は、刃体21が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに刃体21よりも軟質な材料から構成されている。
この場合、終端側移動規制部23は、刃体21が進行する進行経路となる位置に配置されることで、刃体21の進行に伴って曲板状のガラス12が移動しようとする力を好適に受け止めることができる。また、終端側移動規制部23は、刃体21よりも軟質な材料から構成されているため、終端側移動規制部23に刃体21が進入したとしても、刃体21の損傷は発生し難い。従って、刃体21に対する影響を極力抑え、かつ終端側移動規制部23の機能を好適に発揮させることができる。
【0052】
(6)ガラス加工装置18の載置台19は、割断線Lの始端側となる曲板状のガラス12の端面を支持することで曲板状のガラス12の移動を規制する始端側移動規制部24を備えている。
【0053】
この場合、例えば、載置台19を移動させるように構成しても、曲板状のガラス12を載置台19上に好適に保持させることができる。従って、載置台19を移動させて曲板状のガラス12板を移動させることが容易となる。
【0054】
(7)ガラス加工装置18の始端側移動規制部24は、刃体21が進行する進行経路となる位置に配置されるとともに刃体21よりも軟質な材料から構成されている。
ここで、割断線形成機構20の刃体21を載置台19に対して接近させることで刃体21を所定の位置に配置する際や、刃体21の進行を開始させた直後では、例えば、刃体21が振動することで、割断線Lの形成が好適に開始されないおそれがある。上記構成の場合、始端側移動規制部24を刃体21が進行する進行経路となる位置に配置することで、刃体21を始端側移動規制部24に当接することができる。こうした始端側移動規制部24を刃体21よりも軟質な材料から構成することで、刃体21に損傷が発生することを抑えるとともに刃体21を安定させることができる。従って、曲板状のガラス12に対する割断線Lの形成を好適に開始することができる。
【0055】
(8)ガラス加工装置18の割断線形成機構20は、第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26を備えている。第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、曲板状のガラス12における湾曲部15の連なる方向Dに対して両側となる位置にそれぞれ割断線Lを形成する。
【0056】
この場合、曲板状のガラス12における湾曲部15の連なる方向Dに対して両側となる位置に同時に割断線Lを形成することが可能となる。従って、曲板状のガラス12の両端縁部分を含む不要部分GPを除去したガラス曲板11を効率よく得ることができる。
【0057】
(9)ガラス加工装置18の第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、第1刃体21aと第2刃体21bとをそれぞれ湾曲部15が連なる方向Dに沿って並走させる。
【0058】
この場合、曲板状のガラス12には、湾曲部15の連なる方向Dに対して両側から第1刃体21aと第2刃体21bとにより挟み込むように力が加わるため、載置台19に載置された曲板状のガラス12が安定し易い。これにより、曲板状のガラス12に割断線Lを精度よく形成することができる。従って、より寸法精度の高いガラス曲板11を得ることが可能となる。
【0059】
(10)ガラス曲板11の製造方法は、対向する両端縁13,14に沿って連なる湾曲部15を有する曲板状のガラス12の両端縁部分を含む不要部分GPを除去することで、ガラス曲板11を製造する方法である。ガラス曲板11の製造方法は、載置工程と割断線形成工程と不要部分除去工程とを備えている。載置工程では、湾曲部15の内面を支持する支持部22を有する載置台19に曲板状のガラス12を載置している。割断線形成工程では、載置台19に載置された曲板状のガラス12の湾曲部15が連なる方向Dに沿って刃体21を進行させることで、曲板状のガラス12の外面に割断線Lを形成している。不要部分除去工程では、割断線Lに沿った割断によって曲板状のガラス12から不要部分GPを除去している。
【0060】
この方法によれば、上記(1)欄で述べたように、曲板状のガラス12の不要部分GPを除去したガラス曲板11を容易に得ることができる。
(11)曲板状のガラス12は、四辺を有する平板状のガラス(長方形又は正方形)の対向する両端縁を近づけるように成形型を用いて曲げたものである。ここで、例えば、結晶性ガラスから構成された平板状のガラスや、厚さが1mm以上の平板状のガラスの場合、熱変形しに難い。このような平板状のガラスから曲板状のガラス12を成形する場合、平板状のガラス(長方形又は正方形)の対向する両端縁間の長さをより長く設定すれば、平板状のガラスの両端縁側の自重を利用して成形型に沿った湾曲部15を容易に形成することができる。ところが、平板状のガラスの両端縁間の長さをより長く設定した場合、平板状のガラスの両端縁側の部分、すなわち、成形された曲板状のガラス12の両端縁側に製品(ガラス曲板11)として不要な部分が存在することになる。
【0061】
本実施形態のガラス曲板11の製造方法に供される曲板状のガラス12は、四辺を有する平板状のガラスの対向する両端縁を近づけるように成形型を用いて曲げる成形工程により得られたものである。この場合、上述したように両端縁側にガラス曲板11では不要な不要部分GPを有する平板状のガラスを用いることで、例えば、結晶性ガラスから構成された平板状のガラスであっても、容易に湾曲部15を形成することができる。さらに、本実施形態のガラス曲板11の製造方法では、上述した載置工程、割断線形成工程、及び不要部分除去工程を備えているため、不要部分GPを除去したガラス曲板11を容易に得ることができる。このように、本実施形態のガラス曲板11の製造方法は、例えば、結晶性ガラスから構成されたガラス曲板11を得る場合に特に有利となる。
【0062】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・ガラス加工装置18の第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26は、第1刃体21aと第2刃体21bとをそれぞれ湾曲部15が連なる方向Dに沿って並走させているが、例えば、第1刃体21aの進行させる方向と第2刃体21bを進行させる方向を互いに対向させてもよい。
【0063】
・ガラス加工装置18の第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26のいずれか一方を省略してもよい。この場合、ガラス加工装置18において、例えば、第1割断線形成機構25によって曲板状のガラス12に割断線Lを形成した後に、曲板状のガラス12の向きを変えて第1割断線形成機構25によってさらに割断線Lを形成すればよい。但し、この場合、曲板状のガラス12の一対の割断線Lの位置を合わせることが煩雑となることから、ガラス加工装置18は、上記実施形態のように第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26を備えていることが好ましい。
【0064】
・ガラス曲板は、曲板状のガラス12のいずれか一方の端縁部分を含む不要部分を除去することで得られたものであってもよい。この場合、ガラス加工装置18の第1割断線形成機構25及び第2割断線形成機構26のいずれか一方を省略してもよい。
【0065】
・ガラス加工装置18の載置台19における始端側移動規制部24を刃体21が進行する進行経路以外の部分に配置してもよい。終端側移動規制部23についても、刃体21が進行する進行経路以外の部分に配置してもよい。
【0066】
・ガラス加工装置18の載置台19における始端側移動規制部24及び終端側移動規制部23の少なくとも一方を省略してもよい。
・ガラス加工装置18の押圧機構27を省略してもよい。
【0067】
・ガラス加工装置18の載置台19における支持部22は、湾曲部15に沿った凸面を有しているが、例えば、先端面が平坦な凸部を有する支持部等に変更することもできる。
・ガラス加工装置18は、搬入部29及び加工部30を備え、載置台19はガラス加工装置18の搬入部29と加工部30との間を往復動可能に設けられているが、加工部30に固定された載置台19に曲板状のガラス12を搬入するように構成してもよい。但し、本実施形態のように、搬入部29と加工部30との間を往復動可能に設けた載置台19によれば、載置台19に曲板状のガラス12を載置する際に、例えば、割断線形成機構20と曲板状のガラス12との接触を回避することが容易となるため、曲板状のガラス12の破損の発生を抑制することが可能となる。
【0068】
・ガラス加工装置18の割断線形成機構20が割断線Lを形成する位置は、上記実施形態に限定されず、例えば、曲板状のガラス12の第1延在部16又は第2延在部17であってもよい。
【0069】
・曲板状のガラス12は、結晶性ガラス以外のガラスから形成されたものであってもよい。
・曲板状のガラス12は、平板状のガラスの対向する両端縁を近づけるように成形型を用いて曲げたものに限定されず、例えば、溶融ガラスから連続して湾曲部15を成形して得られたものや、管ガラスを管軸方向に沿って切断して得られた半円管状のものであってもよい。この場合であっても、ガラス加工装置18を用いることで、製品として不要な部分を容易に除去することができる。
【0070】
・ガラス加工装置18は、断面L字状や断面V字状の屈曲部を有する曲板状のガラスの加工に適用することもできる。この場合、例えば、ガラス加工装置18の載置台19を支持部22の形状等を必要に応じて変更すればよい。
【符号の説明】
【0071】
11…ガラス曲板、12…曲板状のガラス、13…第1端縁、14…第2端縁、15…湾曲部、18…ガラス加工装置、19…載置台、20…割断線形成機構、21…刃体、21a…第1刃体、21b…第2刃体、22…支持部、23…終端側移動規制部、24…始端側移動規制部、25…第1割断線形成機構、26…第2割断線形成機構、27…押圧機構、D…方向、GP…不要部分、L…割断線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9