特許第6826900号(P6826900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826900
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】物品処理システム
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/24 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   A47L15/24
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-15492(P2017-15492)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-99495(P2018-99495A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-244632(P2016-244632)
(32)【優先日】2016年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健吾
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−345018(JP,A)
【文献】 特開2008−220503(JP,A)
【文献】 特開2003−221888(JP,A)
【文献】 特開平02−217600(JP,A)
【文献】 特開2016−122185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/00−15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に向って流体を噴射する処理を行う処理部と、前記処理部内を通って前記処理部の外部へ延びるコンベアを有しており被処理物の前記処理部への搬入及び前記処理部からの搬出のいずれか一方または両方を行う搬送機構と、を有している物品処理装置に取り付けられる遮音機構であって、前記コンベアのうち前記処理部の筐体の外部に位置する部分を覆うとともに、前記コンベアによる被処理物の搬送を妨げないように、内部空間と、前記内部空間の出入口となる開口部とを有しているカバー部と、前記カバー部の前記開口部に設けられており、前記内部空間を外部から遮断可能であるとともに、弾性変形することにより前記被処理物の前記内部空間内への出入りを許容するカーテン部と、を含む遮音機構と、
前記物品処理装置と、
を含む、物品処理システムであって、
前記物品処理装置の前記コンベアは、前記処理部内を通り前記処理部の両側方に延びており、前記処理部の前記筐体の一側部には、前記コンベアによって搬送される被処理物を搬入するための入口部が設けられ、前記筐体の他側部には、前記コンベアによって搬送される被処理物を搬出するための出口部が設けられており、
前記遮音機構は、前記物品処理装置の前記入口部に対向する位置に配置されている前記カバー部及び前記カーテン部と、前記物品処理装置の前記出口部に対向する位置に配置されている前記カバー部及び前記カーテン部と、前記処理部と対向する位置に配置されて両方の前記カバー部を繋いでいる連結部とを含み、
前記連結部の内面であって、前記カバー部の内部を除く位置に吸音材が配置されていることを特徴とする、物品処理システム。
【請求項2】
前記カーテン部は、前記コンベアの延びる方向において該コンベアの端部の外側に配置されている、請求項1に記載の物品処理システム。
【請求項3】
前記カーテン部はスリットが形成された可撓性のシート状部材または布材である、請求項1または2に記載の物品処理システム。
【請求項4】
前記カバー部は前記内部空間を囲むフレーム状の剛体であり、前記カーテン部は前記カバー部とは別に形成されて該カバー部に取り付けられている、請求項3に記載の物品処理システム。
【請求項5】
前記カーテン部は面密度が0.1kg/m以上、1.0kg/m未満である材料から形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【請求項6】
前記カーテン部は、ポリエステル系布地にポリ塩化ビニルをコーティングしたターポリンシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシートあるいは発泡ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートあるいは発泡ポリプロピレンシートから選ばれる1種あるいは2種以上のシート材料で形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【請求項7】
前記カバー部内に、前記カーテン部に対して実質的に平行に並べられている1つまたは複数の中間カーテン部をさらに含み、前記カバー部内に前記カーテン部と前記中間カーテン部の多重構造が構成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【請求項8】
前記中間カーテン部は面密度が0.1kg/m以上、1.0kg/m未満である材料から形成されている、請求項7に記載の物品処理システム。
【請求項9】
前記中間カーテン部は、ポリエステル系布地にポリ塩化ビニルをコーティングしたターポリンシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシートあるいは発泡ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートあるいは発泡ポリプロピレンシートから選ばれる1種あるいは2種以上のシート材料でから形成されている、請求項7または8に記載の物品処理システム。
【請求項10】
前記カバー部は前記カーテン部と一体的に形成されている、請求項3に記載の物品処理システム。
【請求項11】
前記吸音材は、ポリプロピレンからなる不織布である、請求項1から10のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【請求項12】
前記連結部と前記カバー部の少なくとも一部が一体的に形成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【請求項13】
前記物品処理装置の前記入口部には、噴射される流体の飛散を抑制可能であるとともに、弾性変形することにより前記被処理物の前記処理部内への搬入を許容する入口カーテンが設けられ、
前記物品処理装置の前記出口部には、噴射される流体の飛散を抑制可能であるとともに、弾性変形することにより前記被処理物の前記処理部内から外部への搬出を許容する出口カーテンが設けられ、
前記入口カーテンと前記一側部側の前記遮音機構の前記カーテン部とは被処理物の搬送方向の上流側から見て重なる位置にあって多重カーテン構造を構成し、
前記出口カーテンと前記他側部側の前記遮音機構の前記カーテン部とは被処理物の搬送方向の下流側から見て重なる位置にあって多重カーテン構造を構成している、請求項1から12のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【請求項14】
前記物品処理装置は食器洗浄機であり被処理物は食器である、請求項1から13のいずれか1項に記載の物品処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄機等の物品処理装置に取り付けられる遮音機構を含む物品処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理物に流体を噴射することによって様々な処理を行う物品処理装置において、多数の物品を処理するために、物品に向けて流体を噴射する処理部と、処理部への物品の搬入及び搬出を行うための搬送機構とを有する装置がある。特に、搬送機構として、処理部を通って処理部の両側方に延びるコンベアを有する装置は、コンベアによって物品を連続的に搬送して、処理部の一側部から物品を搬入して処理部において処理を行い、続けて処理部の他側部から外部へ処理済みの物品を搬出することにより、効率良く多数の物品の処理が行える。このような物品処理装置の例としては、特許文献1,2に開示されているような、食器を被処理物として用い、洗剤や水を噴射して洗浄を行う食器洗浄機が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−220503号公報
【特許文献2】実用新案登録第3030109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されている食器洗浄機等の物品処理装置においては、特に流体(例えば洗剤や水等)の被処理物への噴射に起因する騒音が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、搬送機構によって連続的に搬送される被処理物に対して流体を噴射して処理を行う物品処理装置における騒音の問題を軽減するための遮音機構を有する物品処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の物品処理システムは、被処理物に向って流体を噴射する処理を行う処理部と、処理部内を通って処理部の外部へ延びるコンベアを有しており被処理物の処理部への搬入及び処理部からの搬出のいずれか一方または両方を行う搬送機構と、を有している物品処理装置に取り付けられる遮音機構であって、コンベアのうち処理部の筐体の外部に位置する部分を覆うとともに、コンベアによる被処理物の搬送を妨げないように、内部空間と、内部空間の出入口となる開口部とを有しているカバー部と、カバー部の開口部に設けられており、内部空間を外部から遮断可能であるとともに、弾性変形することにより被処理物の内部空間内への出入りを許容するカーテン部と、を含む遮音機構と、
物品処理装置と、
を含む、物品処理システムであって、
物品処理装置のコンベアは、処理部内を通り処理部の両側方に延びており、処理部の筐体の一側部には、コンベアによって搬送される被処理物を搬入するための入口部が設けられ、筐体の他側部には、コンベアによって搬送される被処理物を搬出するための出口部が設けられており、
遮音機構は、物品処理装置の入口部に対向する位置に配置されているカバー部及びカーテン部と、物品処理装置の出口部に対向する位置に配置されているカバー部及びカーテン部と、処理部と対向する位置に配置されて両方のカバー部を繋いでいる連結部とを含み、
連結部の内面であって、カバー部の内部を除く位置に吸音材が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、処理部内において生じた騒音が、搬送機構のコンベアの位置から外部に漏れることを抑えて騒音を軽減することが可能であり、かつコンベアによる被処理物の搬送を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の物品処理システムを模式的に示す正面図である。
図2図1に示す物品処理システムの物品処理装置の一例である食器洗浄機の要部を示す斜視図である。
図3図1に示す物品処理システムの遮音機構の斜視図である。
図4】本発明の他の実施形態の遮音機構を示す斜視図である。
図5】(a)は図4に示す遮音機構の平面図、(b)はその正面図、(c)はその側面図である。
図6図4に示す遮音機構の他の構成例の内面を示す斜視図である。
図7】本発明の物品処理システムの遮音機構の変形例の斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態の遮音機構の要部を模式的に示す概略斜視図である。
図9図8に示す遮音機構の要部を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1に模式的に示す本発明の物品処理システムは、主に物品処理装置(図2)と遮音機構(図3)とを含んでいる。まず、物品処理装置の一例である食器洗浄機6について、図1,2を参照して説明する。食器洗浄機6は、主に、物品(被処理物10)に洗剤や水等の流体を噴射して洗浄処理を行う処理部1と、処理部1内を通って処理部1の筐体の両側方に延びるコンベア3と図示しない駆動手段とを含む搬送機構2と、を有している。この食器洗浄機6では、コンベア3の一端部に置かれた被処理物10が、処理部1の一側部の入口部1aから処理部1内に搬入される。処理部1内では、ノズル4から洗剤や水などの流体13が被処理物10に向けて噴射されて洗浄処理が行われる。洗浄が行われた被処理物10は、処理部1の他側部の出口部1bから外部に搬出される。処理部1の入口部1aおよび出口部1bには、処理部1内でノズル4から噴射される流体13が飛散するのを抑え、かつ弾性変形することにより被処理物10の出入りを許容する、スリット5aが形成された可撓性シート状の入口カーテン5および出口カーテン5が設けられている。なお、図2には入口部1a側を示しているが、出口部1b側も実質的に同じ構成である。
【0010】
このような構成の食器洗浄機6では、特に処理部1において噴射されて被処理物10や筐体の内面に当たる流体13の騒音が大きい。そこで、本発明では、食器洗浄機6に遮音機構7(図3)を取り付けることにより、騒音を低減している。その技術的背景について説明する。
【0011】
前述した構成の食器洗浄機6における騒音を本発明者が測定したところ、処理部1の筐体の外部では、筐体の側方に延びているコンベア3の位置において大きな音量が測定された。このことから、本発明者は、処理部1の筐体の内部で発生した騒音が、コンベア3の、筐体の側方の部分を通って外部に拡散していると考えられることを初めて見出した。コンベア3は、主に、実質的に平行に並べて配置されている複数の回転体(ローラ)3aと各ローラ3aを繋ぐ接続片3bとからなり、各ローラ3aおよび各接続片3bの間には、ノズル4から噴射された流体13が溜まらないように(流体溜まりが形成されないように)、隙間が設けられている。その結果、この隙間を通って、処理部1内で発生した騒音が外部に伝わっていると考えられる。この騒音の伝達経路は、入口カーテン5および出口カーテン5では遮断されていない。本発明者が初めて見出したこの知見に基づいて、本発明では、コンベア3の処理部1の側方に延びている部分を覆う遮音機構を設けた。
【0012】
遮音機構の一例は、図1,3に示すように、物品処理装置(食器洗浄機6)の処理部1の筐体の入口部1aまたは出口部1bに対向して配置されるカバー部8と、カバー部8に取り付けられたカーテン部9とを含む。具体的には、カバー部8は、アクリル板等からなりコンベア3の一部を覆う上板8aと側板8bとからなるフレーム状の剛体である。このカバー部8は、コンベア3による被処理物10の搬送を妨げないような内部空間8cを有するとともに、被処理物10を内部空間8cに進入または内部空間8cから退出させるための開口部8dと、処理部1の入口部1aまたは出口部1bに接続される接続部8eを有しており、処理部1の筐体の内部と連通するトンネル状に形成されている。そして、このカバー部の開口部8dを塞ぐように、スリット9aが形成された樹脂製の可撓性のシート状部材または布材からなるカーテン部9が取り付けられている。カーテン部9は、遮音機構7が物品処理装置(食器洗浄機6)に取り付けられた状態で、開口部8dを塞いで内部空間8cを外部から遮断可能である。また、カーテン部9はコンベア3の延びる方向においてコンベア3の端部の外側に位置しており、スリットaで分割された各部がそれぞれ弾性変形することによって隙間を生じさせ、被処理物10の内部空間8c内への進入や内部空間8cからの退出を許容することができる。
【0013】
このようなカバー部8とカーテン部9とからなる遮音機構7が、処理部1の筐体の入口部1aに対向する位置と出口部1bに対向する位置とにそれぞれ配置されることにより、食器洗浄機6のコンベア3は処理部1の筐体の外側においても両遮音機構7によって覆われ、外部に露出しなくなる。その結果、外部に伝わる騒音が低減する。このことは実験的にも確認された(一実験例では、両遮音機構7を取り外した状態では85dB程度の騒音が測定されたのに対し、両遮音機構7を取り付けると、同じ動作条件で80dB程度まで騒音が低減した)。また、遮音機構7のカーテン部9と食器洗浄機6の入口カーテン5及び出口カーテン5は実質的に同じ構成であり、いずれもスリット5a,9aで分割された各部がそれぞれ弾性変形することによって、コンベア3による被処理物10の搬送を妨げない。従って、多数の被処理物10を連続的に搬送しながら処理(洗浄)するという物品処理の効率をほとんど低下させない。
【0014】
また、遮音機構7のカーテン部9と入口カーテン5は被処理物10の搬送方向の上流側から見て重なって位置し、多重カーテン構造を構成するため、被処理物10の搬送時にも遮音機構7のカーテン部9と入口カーテン5のいずれか一方は弾性変形せずに閉じている可能性が高く、遮音の信頼性が高い。遮音機構7のカーテン部9と出口カーテン5も被処理物10の搬送方向の下流側から見て重なって位置し、多重カーテン構造を構成するため、前述したのと同様の効果が得られる。
【0015】
前述した実施形態では、処理部1の筐体の入口部1aに対向する位置と出口部1bに対向する位置とにそれぞれ遮音機構7が配置されているが、入口部1a側のカバー部と出口部1b側のカバー部とを連結部により連結して一体化することも可能である。そのような構成の遮音機構11を図4,5に示している。この遮音機構11では、食器洗浄機6の処理部1及び搬送機構2の全体の正面前方に重なる金属板状の連結部11aの両側部にそれぞれカバー部8が取り付けられるか、または一体的に形成されている。それらのカバー部8にはカーテン部9がそれぞれ取り付けられており、カバー部8およびカーテン部9の構成は、前述した実施形態と実質的に同じである。この構成によると、図1,3に示す例と同様の効果を奏することができるとともに、食器洗浄機6への遮音機構11の取り付けが容易になる。すなわち、両側部にカバー部8およびカーテン部9が取り付けられた金属板状の連結部11aを、物品処理装置(食器洗浄機6)の正面に配置すればよく、複数のカバー部を別々に取り付ける必要は無い。なお、処理部1及び搬送機構2の正面前方を覆う連結部11aには、メンテナンス用の操作部11bと開閉扉11cが設けられている。
【0016】
本実施形態において遮音効果をより向上させるために、図6に示すように連結部11aの内面に吸音材14を配置することができる。この構成によると、前述したカバー部8およびカーテン部9による遮音効果に加えて、吸音材14が音を吸収するため、より大きな遮音効果が得られる。連結部11aの内面のみならず、カバー部8の内側にも同様な吸音材を配置することもできるが、食器洗浄機のように液体を噴射する物品処理装置の遮音機構の場合には、吸音材が液体(液体洗剤や水など)を吸収して保持し、衛生上の問題を生じる可能性がある。従って、図6に示す例のように、食器洗浄機等の遮音機構では、噴射される液体が付着しないようにカバー部8の外側のみに吸音材14を配置している。液体が付着するおそれがない個所には、できるだけ広い範囲にわたって吸音材14を配置することが、遮音効果のために好ましい。吸音材14としては、グラスウール、ロックウール、フェルト、不織布、ポリウレタンフォーム、発泡ゴム、発泡樹脂等を用いることができる。特に吸音材14がポリプロピレンの不織布から構成されていると、湿度に対する耐久性が高く、ほとんど液体を吸収しないため、食器洗浄機等の遮音機構に適している。
【0017】
図7には、遮音機構の変形例として、カバー部とカーテン部が可撓性のシート状部材または布材12によって一体的に形成された構成が示されている。すなわち、本変形例では
、処理部の筐体の入口部1aを塞ぐ位置に、入口カーテン5と重なるように、可撓性のシート状部材または布材12が取り付けられている。この可撓性のシート状部材または布材12は、入口部1aの高さ方向の寸法よりも長さが長いため、処理部1の筐体と搬送機構2のコンベア(図7では図示省略しているが、図2と実質的に同じ構成である)とに沿うように緩やかに湾曲している。それにより、この可撓性のシート状部材または布材12は、搬送機構2のコンベアの、処理部1の筐体の外側に位置する部分を覆っている。そして、スリット12aが設けられているため、スリット12aで分割された各部がそれぞれ弾性変形することによって隙間を生じさせ、被処理物10の進入や退出を許容することができる。すなわち、この可撓性のシート状部材または布材12が、カバー部とカーテン部の機能を兼ね備えた遮音機構として機能する。本変形例の可撓性のシート状部材または布材12も、処理部1の入口部1aに設けられた入口カーテン5と重なるように配置されており、多重カーテン構造を構成している。なお、図7には、処理部1の入口部1aに遮音機構12が取り付けられた構成を示しているが、処理部1の出口部1bにおいても、同様の遮音機構12を取り付けることができ、同様の効果を得ることができる。
【0018】
以上説明したいずれの構成においても、搬送機構2のコンベアの処理部1の筐体の外側に位置する部分が遮音機構7,12によって覆われているため、処理部1の内部で発生した騒音が外部に伝達される経路が遮断され、騒音の軽減が図れる。そして、スリットが形成されたカーテン部9,12を用いているため、コンベアによる被処理物10の搬送の妨げとなることはない。また、物品処理装置(食器洗浄機6)に予め設けられている入口カーテン5や出口カーテン5と重なるようにカーテン部9,12を配置して多重カーテン構造を構成しているため、遮音の信頼性が高い。
【0019】
本発明は、食器洗浄機に限らず、被処理物に何らかの処理を施す物品処理装置全般において、騒音軽減のために用いることができる。特に、処理部に搬送される被処理物に対して流体13を噴射することによって処理を行う装置(例えば塗装装置や乾燥装置など)では、搬送装置のコンベアからの騒音伝達経路を遮断することが極めて効果的である。また、搬送装置が処理部1の両側方に延びておらず一方の側方のみに延びており、1つの開口部のみから被処理物の進入と退出とを行わせる装置においても、本発明を適用可能である。その場合、遮音機構は1つだけ設ければよい。また、搬送装置が処理部1の両側方に延びている構成であっても、一方の側方のみに遮音機構を配置する構成であってもある程度の効果は得られる。搬送装置2のコンベアは、ローラ3aと接続片3bとからなる構成に限られず、複数のローラのみで構成されていてもよく、また無限軌道からなるものであってもよい。その他、本発明の遮音機構および物品処理システムは、各部の形状や材料等に関して前述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な修正や変更が可能である。
【0020】
次に、本発明において、さらに遮音効果を高めた実施形態について説明する。この構成では、カバー部8の開口部8dに設けられているカーテン部9に加えて、開口部8dと処理部1の筐体の入口部1aまたは出口部1bとの間であって、被処理物の搬送方向の上流側または下流側から見てカーテン部9に重なる位置に、中間カーテン部15が配置されている。具体的には、図8に示す実施形態では、カバー部8の開口部8d(図3参照)の外側から処理部1の筐体の入口部1aまたは出口部1b(図1参照)までの間に、カーテン部9と2つの中間カーテン部15が配置されている。カーテン部9と中間カーテン部15の各々は、スリット9a,15aを有する薄いシート材からなる2層構造である。一例としては、長いシート材を2つ折りにして構成された2層構造のカーテン部9と、同様の2層構造の2つの中間カーテン部15が設けられ、カーテン部9と中間カーテン部15は三重のカーテン部を構成しているため、それぞれがスリットを有する合計6層のシート材からなる(さらに処理部1の入口カーテン5または出口カーテン5を加えると、入口カーテン5または出口カーテン5が単層構造であれば合計7層、入口カーテン5または出口カーテン5も2層構造であれば合計8層のシート材が存在する)。カーテン部9および各中間カーテン部15は互いに3mm以上、望ましくは5mm以上、さらに望ましくは8mm以上の間隔を置いて実質的に平行に配置されている。カーテン部9,15を構成する各シート材のスリット9a,15aは、搬送方向上流側または下流側から見て重ならないようにずらして形成されている。その理由は、1つのシート材が、被処理物が進行する際にスリットが開いて被処理物が通過可能な空間を形成した場合にも、そのスリットが開いた部分に対向する位置では、他のシート材にはスリットが設けられておらず閉じた状態になるので、少なくとも他のシート材による遮音効果が維持されるからである。全てのシート材(図8に示す例では6層のシート材)の全てにおいてスリットの位置がずらしてあってもよいが、必ずしもそのような構成にする必要はない。少なくとも、1つのカーテン部9または中間カーテン部15を構成する隣り合うシート材のスリットがずらして形成されていれば、前述した効果が得られる。カーテン部9および各中間カーテン部15の相互の間隔は、被処理物の円滑な通過を妨げず、かつ、スリット9a,15aが開いて被処理物が通過可能な空間が、搬送方向に見て互いに重なる位置に同時に形成されることをできるだけ抑えるために、3mm以上、望ましくは5mm以上、さらに望ましくは8mm以上であることが好ましい。ただし、中間カーテン部15の数は限定されず、各々のカーテン部9および中間カーテン部15を構成するシート材の層数も限定されない。
【0021】
図9には、中間シート材15の取り付け方法の一例を示している。具体的には、カバー部8の天板8fの内面にL字形のアンクル16を取り付け、このアンクル16にフック17を取り付けておく。一方、図8,9に示すように、前述した通り2つ折りのシート材からなる中間カーテン部15の折り曲げ部に支持軸18を通すとともに、折り曲げ部の一部に切り欠き15bを設けて支持軸18を露出させる。そして、切り欠き15bを介して露出している支持軸18をフック17に係止させることにより、カバー部8の天板8fに吊り下げられた形態で中間カーテン部15が支持される。カバー部8の開口部8dに位置するカーテン部9も同様な方法で支持してもよいが、カーテン部9は、図1,3〜6に示すようにカバー部8の開口部8の外側に貼り付けてもよい。
【0022】
カーテン部9および中間カーテン部15は、カバー部8で容易に支持するための軽さと、被処理物の円滑な通過を妨げないようにするための柔軟性と、被処理物が存在しない部分ではしっかりと閉じるための剛性と、遮音効果を発揮するための重さや厚さや遮音性等を兼ね備えた材料からなることが好ましい。具体的には、単位面積当たりの重量、すなわち面密度が0.1kg/m以上、1.0kg/m未満、望ましくは、0.15kg/m以上、0.9kg/m未満、さらに望ましくは0.2kg/m以上、0.8kg/m未満であり、非通気性および耐水性などの特性を有したシート形状の材料、例えば、ポリエステル系布地にポリ塩化ビニルをコーティングしたターポリンシート、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシートあるいは発泡ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートあるいは発泡ポリプロピレンシート等の材料からなることが好ましい。面密度が0.1kg/mを下回ると、十分な遮音性を得ることができず、一方、1.0kg/m以上だと非処理物の円滑な通過を妨げる。
【符号の説明】
【0023】
1 処理部
1a 入口部
1b 出口部
2 搬送機構
3 コンベア
3a 回転体(ローラ)
3b 接続片
4 ノズル
5 入口カーテン、出口カーテン
5a スリット
6 食器洗浄機
7,11,12 遮音機構
8 カバー部
8a 上板
8b 側板
8c 内部空間
8d 開口部
8e 接続部
8f 天板
9 カーテン部
9a,12a,15a スリット
10 物品(被処理物)
11a 連結部
11b 操作部
11c 開閉扉
13 流体
14 吸音材
15 中間カーテン部
15b 切り欠き
16 アンクル
17 フック
18 支持軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9