(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る自動二輪車用フレームについて説明する。
図1は自動二輪車用フレーム30を備えた自動二輪車の全体構成を示す概略側面図であり、
図2は自動二輪車用フレーム30を示す平面図であり、
図3は自動二輪車用フレーム30と各部品との配置関係を示す平面図であり、
図4は自動二輪車用フレーム30と各部品との配置関係を示す側面図である。
【0012】
自動二輪車10の全体構成について説明する。自動二輪車10は、自動二輪車用フレーム30と、前輪12と、後輪14と、ハンドル装置20と、動力機関としてのエンジン22とを備える。以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車10の前輪12及び後輪14が路面に接地する側が下であり、その反対側が上である。また、自動二輪車10が走行する際の走行方向が前であり、その反対側が後ろである。さらに、ユーザが運転者として自動二輪車10に搭乗した状態で、当該ユーザを基準とする左右が自動二輪車10の左右である。本実施例では左右方向を車幅方向として説明することがある。
【0013】
自動二輪車用フレーム30は、ヘッドパイプ32と、一対の前側メインフレーム40と、一対の後側メインフレーム50とを備える。
【0014】
ヘッドパイプ32は、自動二輪車10の前側に設けられている。ヘッドパイプ32は、下方に進むにつれて車両前方傾斜する姿勢に配設されている。一対の前側メインフレーム40は、ヘッドパイプ32から左右に分れつつ後方に延在している。一対の後側メインフレーム50は、一対の前側メインフレーム40の後端部から後側に向けて延びるように設けられている。
【0015】
ヘッドパイプ32には、ステアリングシャフト16が回転可能に挿通されている。ステアリングシャフト16には、アッパーブラケット16Aとアンダーブラケット16Bとが支持されている。アッパーブラケット16Aとアンダーブラケット16Bとによって、フロントフォーク17が下方に向けて延在するように支持されている。フロントフォーク17は、伸縮可能に構成されており、路面から車両への衝撃や、加減速による荷重変化を受止める。フロントフォーク17の下端に前輪12が回転可能に支持されている。
【0016】
ハンドル装置20がアッパーブラケット16A又はフロントフォーク17に備付けられている。このハンドル装置20を操作することで、ステアリングシャフト16、アッパーブラケット、アンダーブラケット及びフロントフォーク17が回転し、これと共に、上記前輪12も回転する。
【0017】
自動二輪車用フレーム30の下側には、エンジン22が搭載されており、自動二輪車用フレーム30の上側には、燃料タンク18、乗員が着座可能なシート27が搭載されている。
【0018】
エンジン22は、動力機関の一例であり、自動二輪車10を走行させるための駆動力を発生させるものである。エンジン22は、前輪12と後輪14との前後間に配置され、より具体的には、スイングアーム28よりも車両前方に配置される。エンジン22は、シリンダアセンブリ23及びクランクケース24を含む。
【0019】
シリンダアセンブリ23は、シリンダブロック23a、シリンダヘッド23b及びヘッドカバー23cを含む。シリンダブロック23a内には燃焼室を形成する空間が形成されており、その空間内にピストンが往復移動可能に収容されている。シリンダヘッド23bには、点火プラグ、吸排気を行うバルブ等が組込まれており、シリンダブロック23aの上側を覆ってシリンダブロック23aと共に燃焼室を形成している。ヘッドカバー23cは、シリンダブロック23aとは反対側でシリンダヘッド23bに結合されており、吸排気を行うバルブ等を覆う。シリンダブロック23a及びシリンダヘッド23bは、例えば金属製の鋳物材料からなり、ヘッドカバー23cよりも高強度でかつ高剛性に形成されている。
【0020】
クランクケース24は、シリンダヘッド23bとは反対側でシリンダブロック23aに結合されており、クランクシャフトを回転可能に支持している。
【0021】
ここでは、エンジン22は、横置き型のエンジンであり、シリンダアセンブリ23に形成された複数の燃焼室が車幅方向に沿って並ぶ。各燃焼室は、上下方向に沿って延びる。より具体的には、燃焼室は、上方に進むにつれて車両前方に傾斜する前傾方向に沿って延びる。言換えると、ピストンの往復動方向が、前記前傾方向に延びる。また、クランクシャフトが車幅方向に延びるように延在している。本実施形態では、燃焼室が2つ設けられる2気筒エンジンが動力機関として用いられる。
【0022】
クランクケース24の上側にシリンダアセンブリ23が設けられている。シリンダアセンブリ23においては、シリンダブロック23aの上側にシリンダヘッド23bが設けられ、その上側にヘッドカバー23cが設けられている。シリンダブロック23aには、燃焼室に吸気を導くための吸気ポート、燃焼室から排気を排出するための排気ポートがそれぞれ形成される。
【0023】
エンジン22は、上部を車両前方に傾けた姿勢で自動二輪車用フレーム30に組付けられている。このため、シリンダヘッド23bは、シリンダブロック23aに対して車両斜め前側に位置している。
【0024】
シリンダアッセンブリ23のうちヘッドパイプ32寄りに形成される部分に、フレーム固定部25a、25bが形成されている。本実施形態では、シリンダヘッド23bのうち車幅方向両側部の前側部分に前側フレーム固定部25aが形成され、後ろ側部分に後側フレーム固定部25bが形成されている。前側フレーム固定部25a及び後側フレーム固定部25bは、例えば、ネジ孔が形成された構成とされている。フレーム固定部25a、25bは、燃焼室の一部を構成するシリンダヘッド23bに形成されることから、シリンダヘッドカバー23cに比べて剛性が高く、シリンダヘッドカバー23cに比べてフレームの固定部分として機能させやすい。また、シリンダヘッド23bは、吸排気ポートが形成されることから、シリンダヘッドカバー23cに比べて上下方向寸法が大きく、シリンダヘッドカバー23cに比べてフレームの固定部分を形成させ易い。本実施形態では、後側フレーム固定部25bは、吸気ポートよりも下方に配置される。また、前側フレーム固定部25aは、排気ポートよりも上方に配置される。
【0025】
他の例として、クランクケースに対してシリンダヘッドが真上又は側面視で前上斜め方向に位置していてもよい。
【0026】
動力機関として、単気筒、2気筒以上の横置型エンジンが用いられてもよい。また、動力機関として電動モータを含むものを備えていてもよい。この場合、電気モータケースのうちで、前上方部分に前側及び後側のフレーム固定部を形成するとよい。
【0027】
また、エンジン22には、自己が発生した回転駆動力を後輪14に伝達するための伝達装置の一例として、変速機26が設けられている。変速機26は、クランクケース24の後部に突出するように設けられている。変速機26は、変速機ケース26a内に、回転出力を変速して出力するギヤ等が収納された構成とされている。変速機26の車幅方向一方側には、出力シャフト26bが突出している。
【0028】
エンジン22の後側にピボットブラケット60が設けられている。このピボットブラケット60に、スイングアーム28が後下方に向けて延在するように取付けられている。スイングアーム28は、斜め後方に延在する姿勢で、その後端を上下に変位させるように揺動可能に支持されている。このスイングアーム28の後端部に後輪14が回転可能に支持されている。
【0029】
上記出力シャフト26bの回転出力が、動力伝達機構29を介して後輪14に伝達される。ここでは、動力伝達機構29は、出力シャフト26bに設けられた歯車及び後輪14に設けられた歯車に巻掛けられたチェーンである。他の例として、動力伝達機構は、
歯付ベルト等の環状ベルトが用いられてもよい。また、動力伝達機構として、ドライブシャフト及びベベルギヤ等を備えるシャフトドライブ機構が用いられてもよい。
【0030】
自動二輪車用フレーム30についてより具体的に説明する。自動二輪車用フレーム30は、ヘッドパイプ32と、一対の前側メインフレーム40と、一対の後側メインフレーム50とを備える。
【0031】
ヘッドパイプ32は、両端が開口する金属製の円筒状部材に形成されている。
【0032】
一対の前側メインフレーム40は、金属製の長尺部材であり、ヘッドパイプ32の外周部に溶接等によって接合されている。一対の前側メインフレーム40は、ヘッドパイプ32から後方に進むにつれて車幅方向外側に向けて分れつつ、ヘッドパイプ32の後側のエンジン22に向けて延びる。ここでは、エンジン22は、ヘッドパイプ32よりも後方かつ下側に位置しており、後側フレーム固定部25bもヘッドパイプ32よりも後方かつ下側に位置している。
【0033】
前側メインフレーム40は、平面視において、前後方向中間位置で屈曲する形状に形成されている。具体的には、前側メインフレーム40は、平面視において、前側部分と後ろ側部分とが形成された構成とされている。一対の前側メインフレーム40の前側部分は、ヘッドパイプ32に溶接されてヘッドパイプ32から後方に進むにつれて車幅方向外側に広がる。一対の前側メインフレーム40の後ろ側部分は、対応する前側部分の後部に連なり、前後方向に平行に延びる。
【0034】
車幅方向(側面視)で見ると、一対の前側メインフレーム40は、ヘッドパイプ32から後側に向けて斜め下方に向うように延在している。車幅方向で見た場合、ここでは、一対の前側メインフレーム40は、ヘッドパイプ32から後側フレーム固定部25bに向けて直線状に延在している。これにより、一対の前側メインフレーム40をより短くすることが可能となる。他の例として、車幅外方向で見た場合、一対の前側メインフレームが途中で曲っていてもよい。また、平面視で見た場合、一対の前側メインフレーム40は、後側に向けて車幅方向外側に斜めに広がるように延在し、エンジン22の幅と同程度に広がった部分からは車両前後方向に沿って後方に向けて延在する。
【0035】
一対の前側メインフレーム40には、動力機関固定部42が設けられている。この動力機関固定部42が、車幅方向で見て、エンジン22と重なる位置でエンジン22に固定されている。具体的には、一対の前側メインフレーム40の後端部に、挿通孔を有する動力機関固定部42が溶接等で固定されている。この動力機関固定部42がエンジン22の後側フレーム固定部25bに重ね合された状態で、ボルト等の締結具Bが動力機関固定部42に挿通されると共に、後側フレーム固定部25bにネジ締め等によって固定されている。なお、前側メインフレームに対して、別途動力機関固定部が固定されることは必須ではない。例えば、前側メインフレームに孔が形成され、当該孔がボルト等の締結具が挿入される動力機関固定部として用いられてもよい。
【0036】
一対の前側メインフレーム40は、エンジン22の左右部分に固定されているため、当該エンジン22によって車幅方向に連結されている。このため、一対の前側メインフレーム40には、それらを車幅方向に連結する連結部材は省略されている。しかしながら、一対の前側メインフレームが車幅方向に沿った連結部材によって連結されていてもよい。
【0037】
一対の前側メインフレーム40及び動力機関固定部42が、左右対称構造である必要はなく、例えば、左右の動力機関固定部42がエンジン22に対して固定される位置が、左右で異なっていてもよい。本実施形態では、
右側の前側メインフレーム40が
左側の前側メインフレーム40よりも長く、
右側の動力機関固定部42が
左側の動力機関固定部42よりも車両後方に位置している。エンジン22に形成されるウオータージャケットの位置が左右対称ではない等の事情により、エンジン22に後側フレーム固定部25bを形成するのに適した強度を確保できる箇所が異なることがあるからである。
【0038】
上記一対の前側メインフレーム40は、金属製のパイプ部材によって構成されている。他の例として、一対の前側メインフレームは、金属板をプレス加工したフレーム、溶融した金属を鋳型に流し込んで作った鋳造フレーム、金属に対して金型等により圧力をかけて製造した鍛造フレーム等であってもよい。
【0039】
上記一対の前側メインフレーム40には、エンジン22に供給されるガソリン等の燃料を蓄える燃料タンク18を支持するタンク支持部49が連結されている。タンク支持部49は、金属板等で形成された部材であり、一対の前側メインフレーム40の前寄りの部分に溶接等で接合されている。このタンク支持部49に、燃料タンク18の前側部分がネジ止等によって固定される。燃料タンク18の他の部分が一対の後側メインフレーム50等にブラケット等を介して支持されていてもよい。
【0040】
上記支持状態で、燃料タンク18は、エンジン22の上方位置に設けられる。また、燃料タンク18は、一対の前側メインフレーム40及び一対の後側メインフレーム50の上側に位置している。車幅方向で見ると、動力機関固定部42は、燃料タンク18の下側位置に設けられる。ここでは、動力機関固定部46も燃料タンク18の下側位置に設けられる。また、車両前後方向において、動力機関固定部42とシート27との間に、車両の前後方向中央位置が配設される。なお、燃料タンク18及びシート27の下方であってエンジン22の上方の空間には、アンチロックブレーキユニット、過給機が配置されてもよい。
【0041】
側面視において、一対の前側メインフレーム40の上面は、燃料タンク18の下面よりも下方を通過する。本実施形態では、一対の前側メインフレーム40の上面は、後述するエアクリーナ19の下面よりも下方を通過する。さらに、本実施形態では、一対の前側メインフレーム40の上面は、後述するスロットルボディ37及び吸気ポートよりも下方を通過する。これによって、燃料タンク18の下方に配置される車載部品と一対の前側メインフレーム40との干渉を防ぐことができる。
【0042】
動力機関固定部42は、車両前後方向における中央位置よりも前側に設けられることが好ましい。なお、自動二輪車用フレーム30の製造誤差等を考慮すると、動力機関固定部42、46の一方を、締結具Bの外径に応じた円孔に形成し、他方は、長孔又は締結具Bの外径よりも大きい(若干大きい)円孔に形成しておくことが好ましい。
【0043】
ヘッドパイプ32には、一対の前側アンダーフレーム44が設けられている。一対の前側アンダーフレーム44は、一対の前側メインフレーム40より下側に設けられ、ヘッドパイプ32から車両後方に進むにつれて車幅方向に分れてエンジン22に向けて延びて当該エンジン22に固定されている。
【0044】
より具体的には、一対の前側アンダーフレーム44は、金属製の長尺部材であり、ヘッドパイプ32の外周部に溶接等によって接合されている。一対の前側アンダーフレーム44がヘッドパイプ32に対して接合された箇所は、一対の前側メインフレーム40の接合箇所よりも下側である。
【0045】
一対の前側アンダーフレーム44は、ヘッドパイプ32から車幅方向外側に向けて分れつつ、ヘッドパイプ32の後側のエンジン22に向けて延びる。ここでは、前側フレーム固定部25aはヘッドパイプ32よりも後方かつ下側で、さらに、後側フレーム固定部25bよりも前側に位置している。
【0046】
平面視において、前側アンダーフレーム44は、前側メインフレーム40よりも前方及び幅方向外側に配置される部分を有している。これにより、前側メインフレーム40が車体内側に配置されることになり、車体の大型化を抑制しやすい。また、前後方向に垂直な段面において、一対の前側メインフレーム40
及び一対の前側アンダーフレーム44を直線で結んだ形状を台形形状にすることができ、各フレーム40、44に生じる曲げ応力を低減し易い。
【0047】
また、車幅方向(側面視)で見ると、一対の前側アンダーフレーム44は、ヘッドパイプ32から後側に向けて斜め下方に向うように延在している。車幅方向で見た場合、ここでは、一対の前側アンダーフレーム44は、ヘッドパイプ32から前側フレーム固定部25aに向けて直線状に延在している。これにより、一対の前側アンダーフレーム44をより短くすることが可能となる。他の例として、車幅外方向で見た場合、一対の前側アンダーフレーム44が途中で曲っていてもよい。また、平面視で見た場合、一対の前側アンダーフレーム44は、後側に向けて車幅方向外側に斜めに広がるように延在し、エンジン22の幅と同程度に広がっている。
【0048】
一対の前側アンダーフレーム44には、動力機関固定部46が設けられている。この動力機関固定部46が、車幅方向で見て、エンジン22と重なる位置でエンジン22に固定されている。具体的には、一対の前側アンダーフレーム44の後端部に、挿通孔を有する動力機関固定部46が溶接等で固定されている。この動力機関固定部46がエンジン22の前側フレーム固定部25aに重ね合された状態で、ボルト等の締結具Bが動力機関固定部46に挿通されると共に、前側フレーム固定部25aにネジ締め等で固定されている。なお、前側アンダーフレーム44に動力機関固定部46が溶接等で固定されていることは必須ではない。例えば、前側アンダーフレームに孔が形成され、当該孔がボルト等の締結具が挿入される動力機関固定部として用いられてもよい。
【0049】
一対の前側アンダーフレーム44も、エンジン22の左右部分に固定されているため、当該エンジン22によって車幅方向に連結されている。このため、一対の前側アンダーフレーム44には、それらを車幅方向に連結する連結部材は省略されている。しかしながら、一対の前側アンダーフレームが車幅方向に沿った連結部材によって連結されていてもよい。
【0050】
上記一対の前側アンダーフレーム44は、金属製のパイプ部材によって構成されている。他の例として、一対の前側アンダーフレームは、金属板をプレス加工したフレーム、溶融した金属を鋳型に流し込んで作った鋳造フレーム、金属に対して金型等により圧力をかけて製造した鍛造フレーム等であってもよい。
【0051】
一対の前側アンダーフレーム44及び動力機関固定部46が、左右対称構造である必要はなく、例えば、左右の動力機関固定部46がエンジン22に対して固定される位置が、左右で異なっていてもよい。一対の前側メインフレーム40及び動力機関固定部42に関して述べたのと同様に、エンジン22に形成されるウオータージャケットの位置が左右対称ではない等の事情により、エンジン22に、前側フレーム固定部25aを形成するのに適した強度を確保できる箇所が異なることがあるからである。本実施形態では、一対の前側アンダーフレーム44及び動力機関固定部46は、左右対称構造である。
【0052】
なお、上記
一対の前側アンダーフレーム44の前側には、エンジン22のシリンダブロック23a及びシリンダヘッド23bに形成されたウオータージャケットに通される冷却水を冷却するためのラジエータ34が設けられている。ラジエータ34は、前側アンダーフレーム44に取付けられたブラケットを介して支持されている。この支持状態で、ラジエータ34は、一対の前側メインフレーム40の前側に位置している。この位置は、エンジン22のシリンダヘッド23bの前側位置である。ラジエータ34の左右から引出された配管34Pがシリンダブロック23a及びシリンダヘッド23bに形成されたウオータージャケットに連結されている。上記動力機関固定部42、46は、いずれもラジエータ34の上端部よりも下側でかつ車両後方に位置している。
【0053】
また、エンジン22の上側には、エンジン22に吸気される空気に含まれる異物を除去するエアクリーナー19が設けられている。エアクリーナー19は、一対の前側メインフレーム40の間から上方に至る部分に設けられている。エアクリーナー19は、動力機関固定部42、46の上側に位置している。エアクリーナー19は、燃料タンク18の下側位置に設けられており、燃料タンク18によって上方から覆われた状態となっている。
【0054】
また、エンジン22内の燃焼済のガスを排出する排気管35が設けられている。排気管35の一端は、エンジン22のシリンダヘッド23bの前部において、当該シリンダヘッド23bに形成された排気ポートに接続されている。排気管35は、エンジン22のシリンダヘッド23bの前部から下方に延びると共にエンジン22の下部の側方を通って車輌後方に向けて延びる。排気管35の他端部は、スイングアーム28の外方を通って斜め上方に向いつつスイングアーム28の後端部に達する。排気管35の他端部は、後側補助フレーム54に支持されたタンデムステップステー36を介して吊下げ状態で支持されている。排気管35を全体的に見ると、自動二輪車用フレーム30の下方に位置している。
【0055】
ま
た、エンジン22のシリンダヘッド23bの後部上側位置に、燃料及び空気をエンジン22内に送込むスロットルボディ37が設けられている。スロットルボディ37は、エンジン22とエアクリーナー19との間に位置している。自動二輪車用フレーム30との関係で説明すると、スロットルボディ37は、一対の前側メインフレーム40の動力機関固定部42の上方位置に設けられている。
【0056】
自動二輪車10の左右それぞれにおいて、前側メインフレーム40と前側アンダーフレーム44とは、連結フレーム部材48によって連結されている。ここでは、複数の連結フレーム部材48がトラス構造をなすように前側メインフレーム40と前側アンダーフレーム44とを連結している。より具体的には、2つの連結フレーム部材48のそれぞれの両端部が前側メインフレーム40及び前側アンダーフレーム44に連結されており、2つの連結フレーム部材48の前側メインフレーム40に対する連結箇所間の距離が、2つの連結フレーム部材48の前側アンダーフレーム44に対する連結箇所間の距離よりも大きくなっている。これにより、前側メインフレーム40、前側アンダーフレーム44及び連結フレーム部材48によって台形状をなすトラス構造が形成されている。連結フレーム部材48は、前側メインフレーム40及び前側アンダーフレーム44よりも剛性が低く設定される。具体的には、連結フレーム部材48の外径は、前側メインフレーム40及び前側アンダーフレーム44の外径よりも小さく形成される。
【0057】
前側アンダーフレーム44の後部から上方に延びて前側メインフレーム40に接続される補強フレーム47が設けられていてもよい。補強フレーム47は、上下方向に延びる。これによって、前側のフレーム40、44に上下方向にかかる力による変形をさらに抑えることができる。例えば、補強フレーム47は、前側メインフレーム40のうち、平面視で屈曲する部分又はその近傍に溶接されていてもよい。
【0058】
一対の後側メインフレーム50は、一対の前側メインフレーム40の動力機関固定部42のそれぞれから後側に延びるように形成されている。側面視で、後側メインフレーム50は、直線状に延びる。本実施形態では、後側メインフレーム50は、後方に進むにつれて上方に延びる。前側メインフレーム40と後側メインフレーム50とは、側面視で下方に凸となるV字状に並ぶ。動力機関固定部
42を介して、前側メインフレーム40と後側メインフレーム50とが溶接されることで、前側メインフレーム40に対して、後側メインフレーム50の向きを大きく異ならせることができる。
【0059】
一対の後側メインフレーム50は、一対の前側メインフレーム40よりも低剛性な部材に形成されている。ここでは、一対の前側メインフレーム40及び一対の後側メインフレーム50を金属製のパイプ部材とし、一対の前側メインフレーム40のパイプ径及びパイプ厚を、一対の後側メインフレーム50のパイプ径及びパイプ厚よりも小さくすることで、一対の後側メインフレーム50を、一対の前側メインフレーム40よりも低剛性な部材に形成している。一対の前側メインフレーム及び一対の後側メインフレームの少なくとも一方を、金属板をプレス加工したフレーム、鋳造フレーム、鍛造フレーム等とした場合であっても、それらの板厚を適宜設定することで、上記を実現できる。
【0060】
なお、他の例として、自動二輪車10の左右それぞれにおいて、前側メインフレームと後側メインフレームとが1本の連続する棒状部材によって形成され、その中間部に、エンジンに固定可能な動力機関固定部が溶接等で接合して、動力機関固定部を設けられた構成としてもよい。
【0061】
一対の後側メインフレーム50は、車幅方向フレーム52によって連結されている。ここでは、一対の後側メインフレーム50のうち車幅方向において徐々に狭まる前側部分(エンジン22の上方の位置)、その後方の並列状態に延びる部分の複数箇所、及び、後端部に車幅方向フレーム52が設けられている。車幅方向フレーム52は、金属製のパイプ部材又は金属板で形成された部材であり、一対の後側メインフレーム50に溶接等で接合されている。
【0062】
一対の後側メインフレーム50には、ブラケット等を介して乗員が着座するシート27が取付けられている。
【0063】
また、一対の後側メインフレーム50に対して、ピボットブラケット60及びエンジン22を支持する一対の後側補助フレーム54が設けられている。一対の後側補助フレーム54は、長尺部材であり、一対の後側メインフレーム50の後部に溶接等で接合されている。一対の後側補助フレーム54は、前側に向けて一対の後側メインフレーム50に対して上下方向に徐々に間隔をあけるように設けられ、一対の後側補助フレーム54の前側端部は、エンジン22の後部の上側位置に位置している。一対の後側補助フレーム54の前側端部には、挿通孔を有する固定部56が溶接等で接合されている。
【0064】
平面視において、一対の後側補助フレーム54は、一対の後側メインフレーム50よりも幅方向外側に配置される部分を有する。これによって、後側メインフレーム50が車体内側に配置されることになり、車体の大型化を抑制しやすい。また、前後方向において垂直な
断面において、一対の後側メインフレーム50、一対の後側補助フレーム54を直線で結んだ形状を台形形状にでき、各フレーム50、54に生じる曲げ応力を低減しやすい。
【0065】
また、一対の後側補助フレーム54の延在方向中間部に、同乗者の足を支持するタンデムステップを支持するタンデムステップステー36が取付けられている。
【0066】
一対の後側補助フレーム54のうち固定部56よりも車両後方に、ブラケット54Pが溶接等で固定されている。ブラケット54Pは、一対の後側補助フレーム54より下側に突出している。ブラケット54Pの下側端部には、挿通孔が形成されており、当該ブラケット54Pに板状ブラケット68、69が支持される。
【0067】
また、前側
メインフレーム
40の後端部(ここでは動力機関固定部42)と一対の後側補助フレーム54の前側端部との間に、長尺状の補助プレート58が設けられていてもよい。補助プレート58の一端部は、動力機関固定部42と共にエンジン22に固定されており、補助プレート58の他端部は、固定部56と共にピボットブラケット60に固定されている。補助プレート58は、省略されてもよい。
【0068】
補助プレート58が設けられる場合には、補助プレート58がその軸方向の力を支えることで、後側メインフレーム50に与えられる曲げ方向の力を抑えることができる。補助プレート58は、後側メインフレーム50よりも曲げ剛性が小さく設定されることで、重量増加を抑えるとともに、ピボットブラケット60から与えられる力が後側メインフレーム50に伝わることを防ぎやすい。補助プレート58は、ボルト締結などによって、後側メインフレーム50に対して着脱可能に構成されていてもよい。
【0069】
エンジン22を全体的に観察すると、エンジン22の前側上部にあるシリンダヘッド23bが、一対の前側メインフレーム40に設けられた動力機関固定部42及び一対の前側アンダーフレーム44に設けられた動力機関固定部46によって支持され、それよりも下方のシリンダブロック23a及びクランクケース24が一対の前側メインフレーム40及び一対の前側アンダーフレーム44よりも下方に位置している。また、エンジン22の後部が一対の後側補助フレーム54の固定部56に固定されたピボットブラケット60によって支持されている。
【0070】
スイングアーム28を支持するための構成についてより具体的に説明する。
【0071】
図5はエンジン22の後側においてスイングアーム28を支持する部分を示す概略側面図であり、
図6は同部分を車両後方から見た概略背面図である。
【0072】
スイングアーム28は、エンジン22の後側に設けられたピボットブラケット60を介して揺動可能に支持されている。
【0073】
ピボットブラケット60は、板状に形成された部材であり、エンジン22の後側にボルト等の締結具Bを介して固定されている。
【0074】
ピボットブラケット60の上側の車幅方向両端部には、ネジ孔等が形成されたブラケット固定部62が形成されている。そして、一対のブラケット固定部62を、一対の後側補助フレーム54の固定部56の間に配設した状態で、ボルト等の締結具Bを、固定部56に挿通させてブラケット固定部62にネジ締め等で固定することで、ピボットブラケット60の上部が一対の後側補助フレーム54の固定部56間に固定される。
【0075】
ピボットブラケット60の上下方向中間部の車幅方向両端部には、シャフト固定用凹部63が形成されている。シャフト固定用凹部63は、例えば、ネジ孔であり、ピボットシャフト70が固定される。ピボットシャフト70は、金属等で形成された部材であり、棒状のシャフト部71の先端部に雄ネジ部が形成されると共に、基端部にシャフト部71よりも太い頭部72が形成された構成とされている。
【0076】
スイングアーム28のうち車両前側の端部には、上記ピボットシャフト70を挿通可能な挿通孔28hが設けられている。挿通孔28hの内周部には、軸受28aが設けられている。そして、ピボットシャフト70を、スイングアーム28の挿通孔28h内に挿通した状態で、ピボットシャフト70の先端部をシャフト固定用凹部63にネジ締め等で固定する。これにより、車両後側に向けて延びるスイングアーム28がピボットシャフト70を中心として揺動可能に支持される。この状態で、頭部72がピボットシャフト70からのスイングアーム28の抜け止を行う。
【0077】
一対のピボットシャフト70は、それぞれ板状ブラケット68、69によっても一定位置に支持されている。
【0078】
一対の板状ブラケット68、69は、後側補助フレーム54のブラケット54Pの下側の端部からピボットシャフト70を越える長さ寸法の細長板状部材に形成されている。
【0079】
板状ブラケット68、69の上側の端部は、後側補助フレーム54のブラケット54Pにボルト等の締結具Bによって固定されている。
【0080】
ピボットブラケット60の下側の車幅方向一方側部分には、介在ブラケット66がボルト等の締結具Bによって固定されており、一方(
図6の左側)の板状ブラケット68の下側の端部が、当該介在ブラケット66にボルト等の締結具Bによって固定されている。
【0081】
他方(
図6の右側)の板状ブラケット
69の下側の端部は、ピボットブラケット60の下側の車幅方向他方側部分に固定されている。
【0082】
これにより、一対の板状ブラケット68、69が、一対の後側補助フレーム54のそれぞれに支持されると共に、ピボットブラケット60の両側のそれぞれに支持される。
【0083】
この状態で、一対の板状ブラケット68、69は、対応するピボットシャフト70の外側方を通り、上下方向に延在し、かつ、車幅方向に対して垂直な姿勢に保たれる。
【0084】
一対の板状ブラケット68、69の延在方向中間部には、ピボットシャフト70の頭部72が嵌め込まれた状態で支持されている。これにより、一対のピボットシャフト70が、それらの外側方から板状ブラケット68、69によって支持されている。
【0085】
また、ピボットブラケット60には、リアサスペンション80の一端を支持するリアサスペンション支持部76が設けられている。
【0086】
リアサスペンション80は、ショックアブソーバーとコイルスプリングとを含んでおり、後輪14の振動や衝撃を抑制する役割を果す部材である。リアサスペンション80の一端は、ピボットブラケット60に対してエンジン22とは反対側に突出するリアサスペンション支持部76にボルト等の締結具Bを介して支持されている。リアサスペンション80の他端は、スイングアーム28に直接又はリンク構造を介して連結されている。そして、後輪14の振動又は衝撃によってスイングアーム28が揺動すると、それに伴ってリアサスペンション80が伸縮して、当該スイングアーム28の揺動を抑制する。
【0087】
この自動二輪車10では、後輪14が自動二輪車10を前進させようとする力は、主としてピボットシャフト70からピボットブラケット60を介してエンジン22に伝達される。そして、エンジン22から一対の前側メインフレーム40、さらに、ヘッドパイプ32を介して、前輪12等に伝達される。このため、比較的短くかつ簡素なフレーム構造によって、エンジン22を支持しつつ、後輪14が自動二輪車10を前進させようとする力を、自動二輪車10の全体に伝達することが可能となる。
【0088】
以上のように構成された自動二輪車用フレーム30によると、一対の前側メインフレーム40がエンジン22に向けて延び、車幅方向で見てエンジン22と重なる位置で動力機関固定部42がエンジン22に固定されるため、なるべく短いフレームによって、エンジン22の支持に必要な剛性及び強度を確保し易い。特に、一対の前側メインフレーム40に、別途エンジン固定用のブラケット等をエンジン側に向けて延出させるように設ける必要が無いため、エンジン22を支持する構造を含む自動二輪車用フレーム30において、支持に必要な剛性及び強度を確保しつつ、さらなる軽量化が可能となる。
【0089】
また、本実施形態では、一対の前側メインフレーム40は、シリンダヘッド23bの後側に形成される後側フレーム固定部25bに固定される。一対の前側メインフレーム40は、ヘッドパイプ32の上側部分かつ後側部分に固定されることで、前側メインフレーム40を短尺化できる。本実施形態では、側面視において、後側フレーム固定部25bと、ヘッドパイプ32の前側メインフレーム40の溶接位置とを結ぶ第1直線に沿って、前側メインフレーム40が延びることで、さらなる短尺化が可能となる。より具体的には、本実施形態は、一対の前側メインフレーム40が、前記第1直線に重なる領域に沿って延びる延在部分を有することを含む場合を開示する。
【0090】
また、前側メインフレーム40の短尺化により、その固有振動数をエンジン22の振動数から外すことも容易となり、自動二輪車10の振動を抑えることができる。
【0091】
また、一対の後側メインフレーム50は、動力機関固定部42で一対の前側メインフレーム40にそれぞれ連結された部材であるため、簡易な構成で、前側メインフレーム40と後側メインフレーム50とを強固にエンジン22に支持できる。しかも、一対の後側メインフレーム50は、一対の前側メインフレーム40よりも低剛性な部材であるため、高剛性かつ高強度な一対の前側メインフレーム40でエンジン22を支持することができる。一方、エンジン22以外の部品、例えば、シート27、電装部品等を支持する一対の後側メインフレーム50については、低剛性な軽量の部材を用いることができる。これにより、自動二輪車用フレーム30全体として、エンジン22を支持する強度及び剛性を確保しつつ、さらなる軽量化が可能となる。
【0092】
また、後側フレーム固定部25bに、前側メインフレーム40と、後側メインフレーム50の両方が固定される。これによって、後側メインフレーム50の前部を固定する部分を別途エンジン22に形成する必要がなく、エンジン22の構成が複雑となることを防ぐことができる。
【0093】
また、後側補助フレーム54が、ピボットブラケット60に形成されるブラケット固定部62に固定される。これによって、後側補助フレーム54の前部を固定する部分を別途エンジン22に形成する必要がなく、エンジン22の構成が複雑となることを防ぐことができる。
【0094】
また、側面視において、後側メインフレーム50と後側補助フレーム54と、それらのフレーム固定位置とで形成される三角形の底辺の前後方向長さを大きくすることができるので、曲げ方向の力としてフレーム50、54に与えられる力を減らしやすい。
【0095】
特に、前側メインフレーム40は、エンジン22に向って延びるので比較的短くでき、後側メインフレーム50は、その後方に向けて比較的長く延び易い。この点からすると、比較的長くなり易い後側メインフレーム50を、低剛性な軽量の部材とすることで、より効果的な軽量化が可能となる。
【0096】
なお、別例として、前側メインフレームと後側メインフレームとが別体とされ、後側メインフレームに動力機関固定部が設けられ,当該後側の動力機関固定部が、前側メインフレームの動力機関固定部と共にエンジンに固定される構成であってもよい。
【0097】
また、一対の前側メインフレーム40の動力機関固定部42は、エンジン22において比較的上側に位置するシリンダヘッド23bに固定されるため、一対の前側メインフレーム40をより短くでき、より軽量化、高剛性化及び高強度化が可能となる。
【0098】
また、動力機関固定部42が燃料タンク18の下側位置に設けられるため、一対の前側メインフレーム40をより短くできる。また、動力機関固定部42を支持する強度及び剛性を有する一対の前側メインフレーム40によって、重量物となり得る燃料タンク18を支持できる。
【0099】
また、一対の前側アンダーフレーム44によっても、エンジン22をよりしっかりと支持できる。
【0100】
また、本実施形態では、一対の前側アンダーフレーム44は、シリンダヘッド23bの前側に形成される前側フレーム固定部25aに固定される。また、一対の前側アンダーフレーム44は、ヘッドパイプ32の下側部分かつ前側部分に固定されることで、前側アンダーフレーム44を短尺化できる。本実施形態では、側面視において、前側フレーム固定部25aと、ヘッドパイプ32の前側アンダーフレーム44の溶接位置とを結ぶ第2直線に沿って、前側アンダーフレーム44が延びることで、さらに短尺化を図ることができる。より具体的には、本実施形態は、一対の前側アンダーフレーム44が、第2直線に沿って重なる領域に沿って延びる延在部分を有することを含む場合を開示する。
【0101】
また、これらのように、前側メインフレーム40及び前側アンダーフレーム44のヘッドパイプ32及びエンジン22への接続位置をそれぞれ異ならせることで、前側メインフレーム40及び前側アンダーフレーム44の短尺化を図り易い。
【0102】
また、本実施形態では、前側のフレーム40、44が前方に進むにつれて上方に直線状に傾斜する。これによって、路面から後輪14が受けた力がヘッドパイプ32に伝わるにあたって、シリンダヘッド23bから直線状にヘッドパイプ32に伝わる。これによって、前側のフレーム40、44には、ヘッドパイプ32に伝わる力が軸方向の力として伝わりやすく、曲げ方向の力が与えられることを低減することができる。これによって、前側のフレーム40、44の曲げ剛性を抑えて軽量化をさらに促進することができる。
【0103】
また、側面視において、前側メインフレーム40と前側アンダーフレーム44との上下方向距離は、前方に進むにつれて小さくなる。すなわち、2つのフレーム固定部25a、25bと、ヘッドパイプ32とを結ぶ形状が三角形状に形成される。これによって、前側のフレーム40、44にかかる力のうち、曲げ方向の力を押えやすい。
【0104】
また、一対の前側メインフレーム40同士については、エンジン22によって車幅方向に連結するため、当該一対の前側メインフレーム40同士を車幅方向に連結する部材を省略でき、軽量化が可能となる。また、一対の後側メインフレーム50については、車幅方向フレーム52によって車幅方向に連結して所望の強度及び剛性を得ることができる。
【0105】
なお、上記各フレームの剛性の相対的な関係は、所望の強度及び剛性を得ることができる範囲で、任意に設定できる。例えば、前側アンダーフレーム44は、前側メインフレーム40に比べて剛性が高く形成されていてもよい。この場合、例えば、前側アンダーフレーム44は、前側メインフレーム40に比べて、肉厚及び外径が大きく形成されていてもよい。
【0106】
また、各フレームの曲げ剛性の関係としては、例えば、次の通りとすることができる。
【0107】
第1の例として、前側メインフレーム40及び前側アンダーフレーム44の曲げ剛性を後側メインフレーム50の曲げ剛性よりも大きくし、後側メインフレーム50の曲げ剛性を後側補助フレーム54の曲げ剛性よりも大きくし、後側補助フレーム54の曲げ剛性を連結フレーム部材48の曲げ剛性よりも大きくすることが考えられる。
【0108】
第2の例として、前側アンダーフレーム44の曲げ剛性を前側メインフレーム40の曲げ剛性と同じかこれよりも大きくし、前側メインフレーム40の曲げ剛性を連結フレーム部材48の曲げ剛性よりも大きくすることが考えられる。
【0109】
第3の例として、後側メインフレーム
50の曲げ剛性を後側補助フレーム54の曲げ剛性よりも大きくすることが考えられる。
【0110】
また、エンジン22の後部に固定されたピボットブラケット60によって、スイングアーム28が揺動可能に支持されているため、自動二輪車10の前方への駆動力が、主としてスイングアーム28からピボットブラケット60、エンジン22及び一対の前側メインフレーム40を介してヘッドパイプ32に伝達される。このため、自動二輪車用フレーム30がエンジン22と一体的となって走行するための駆動力を受けることができる。また、スイングアーム28及びリアサスペンション80を支持する強度をピボットブラケット60に持たせることができるため、エンジン22の軽量化が可能となる。また、スイングアーム28の仕様変更等に対して、エンジン22の仕様変更を行わずとも、ピボットブラケット60の仕様変更によって対応可能となり、設計変更に容易に対応することが可能となる。
【0111】
また、一対の板状ブラケット68、69によって、ピボットブラケット60の両側で、ピボットシャフト70の頭部72を支持しているため、コンパクトかつ簡易な構造で、スイングアーム28のピボットシャフト70を支持することが可能となる。
【0112】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0113】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0114】
以上のように、本明細書は、下記の各態様に係る発明を含んでいる。
【0115】
第1の態様にかかる自動二輪車用フレームは、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから車幅方向に分れて前記ヘッドパイプの後側の動力機関に向けて延び、車幅方向で見て動力機関と重なる位置で動力機関に固定された動力機関固定部を含む一対の前側メインフレームと、前記一対の前側メインフレームの動力機関固定部のそれぞれから後側に向けて延びる一対の後側メインフレームとを備える。
【0116】
これにより、一対の前側メインフレームが動力機関に向けて延び、車幅方向で見て動力機関と重なる位置で動力機関固定部が動力機関に固定される構造によって、動力機関の支持に必要な剛性及び強度を確保することができる。また、前側メインフレームに別途動力機関固定用のブラケット等を動力機関に向けて延出させる必要が無いため、動力機関を支持する構造を含む自動二輪車用フレームにおいて、支持に必要な剛性及び強度を確保しつつ、さらなる軽量化が可能となる。
【0117】
第2の態様は、第1の態様に係る自動二輪車用フレームであって、前記一対の後側メインフレームは、前記動力機関固定部で前記一対の前側メインフレームにそれぞれ連結された部材であり、前記一対の前側メインフレームよりも低剛性な部材とされているものである。
【0118】
これにより、高剛性かつ高強度な一対の前側メインフレームで動力機関を支持することができる。一方、動力機関以外の部品を支持する一対の後側メインフレームについては、低剛性な軽量の部材を用いることができる。これにより、自動二輪車用フレーム全体として、動力機関を支持する強度及び剛性を確保しつつ、さらなる軽量化が可能となる。
【0119】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る自動二輪車用フレームであって、前記動力機関は、クランクケースに対してシリンダヘッドが上側に位置するエンジンを含み、前記動力機関固定部は、前記シリンダヘッドに固定されるものである。
【0120】
これにより、前記動力機関固定部は、前記エンジンのシリンダヘッドに固定されるため、一対の前側メインフレームをより短くできる。
【0121】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る自動二輪車用フレームであって、車幅方向で見て、前記動力機関固定部が、燃料タンクの下側位置に設けられ、前記一対の前側メインフレームに、前記燃料タンクを支持するタンク支持部が連結されているものである。
【0122】
これにより、前記動力機関固定部が、燃料タンクの下側位置に設けられるため、一対の前側メインフレームをより短くできる。また、動力機関を支持する強度及び剛性を有する一対の前側メインフレームによって、重量物となり得る燃料タンクを支持できる。
【0123】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る自動二輪車用フレームであって、前記一対の前側メインフレームより下側に設けられ、前記ヘッドパイプから車幅方向に分れて動力機関に向けて延びて動力機関に固定された一対の前側アンダーフレームをさらに備えるものである。
【0124】
これにより、一対の前側アンダーフレームによっても、動力機関をよりしっかりと支持できる。
【0125】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る自動二輪車用フレームであって、前記一対の前側メインフレーム同士は、動力機関を介して車幅方向に連結されており、前記一対の後側メインフレーム同士を連結する車幅方向フレームをさらに備えるものである。
【0126】
これにより、一対の前側メインフレーム同士については、動力機関によって車幅方向に連結することができるため、当該一対の前側メインフレーム同士を車幅方向に連結する部材を省略でき、軽量化が可能となる。また、一対の後側メインフレーム同士については車幅方向フレームによって車幅方向に連結することができる。
【0127】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る自動二輪車用フレームであって、前記動力機関の後部に固定され、車両後側に向けて延びるスイングアームを揺動可能に支持すると共に、リアサスペンションの一端を支持するリアサスペンション支持部が設けられたピボットブラケットをさらに備えるものである。
【0128】
これにより、自動二輪車の前方への駆動力が、主としてスイングアームからピボットブラケット、動力機関及び一対の前側メインフレームを介してヘッドパイプに伝達される。このため、自動二輪車用フレームが動力機関と一体的となって駆動力を受けることができる。また、スイングアーム及びリアサスペンションを支持する強度をピボットブラケットに持たせることができるため、動力機関の軽量化が可能となる。
【0129】
第8の態様は、第7の態様に係る自動二輪車用フレームであって、前記一対の後側メインフレームに対して前記ピボットブラケット及び前記動力機関を支持する一対の後側補助フレームと、前記一対の後側補助フレームのそれぞれに支持されると共に、前記ピボットブラケットの両側のそれぞれに支持され、スイングアームのピボットシャフトを、前記ピボットブラケットの外側方から支持する一対の板状ブラケットとを備える。
【0130】
これにより、コンパクトかつ簡易な構造で、スイングアームのピボットシャフトを支持することができる。