特許第6826907号(P6826907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6826907
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-25939(P2017-25939)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-132407(P2018-132407A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】米津 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】森 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】船橋 智彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳雅
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−181769(JP,A)
【文献】 特開平07−301616(JP,A)
【文献】 米国特許第05556526(US,A)
【文献】 特開平06−222039(JP,A)
【文献】 米国特許第05573650(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0314056(US,A1)
【文献】 特開2012−022004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406−27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側の外表面に電極パッドを有するセンサ素子と、
前記軸線方向に延び、前記電極パッドに電気的に接続される端子金具と、
前記端子金具の後端側に電気的に接続され、前記端子金具よりも後端側へ引き出されるリード線と、
前記軸線方向に沿って延びる挿通孔を有し、該挿通孔の内部に前記端子金具を収容すると共に前記センサ素子の前記電極パッドを囲む筒状のセパレータと、
を備えたガスセンサであって、
前記端子金具は、前記軸線方向に延びて前記挿通孔の内部に支持される板状の本体部と、前記本体部に接続すると共に前記軸線方向に垂直な面に沿って径方向に撓む係止部と、前記本体部に接続すると共に前記本体部よりも前記径方向に突出して第1先端向き面を有する鍔部と、を有し、
前記セパレータは、前記挿通孔に連通して第1後端向き面を有する棚部と、前記挿通孔に連通する第2先端向き面とをさらに有し、
前記係止部は、前記セパレータの前記第2先端向き面よりも先端側にて前記挿通孔よりも前記径方向の外側に突出し、前記係止部の第2後端向き面が前記第2先端向き面に当接して前記端子金具の後端側への抜けを防止すると共に、前記鍔部の前記第1先端向き面が、前記棚部の前記第1後端向き面に当接して前記端子金具の先端側への抜けを防止することを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記端子金具は、前記径方向に前記本体部を挟んで前記係止部と反対側で前記本体部に接続すると共に前記軸線方向に撓む押圧部をさらに有し、
前記押圧部は、前記挿通孔の内部で前記挿通孔の壁面を押圧し、前記径方向に前記本体部を挟んで前記押圧部と反対側の前記挿通孔の壁面に、前記鍔部を当接させることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記鍔部が前記係止部よりも後端側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記セパレータの前記第2先端向き面は、前記セパレータの先端縁から後端に向かって前記セパレータの一部を切り欠いた切り欠き部の先端向き面として形成され、
前記切り欠き部の前記軸線方向の長さL1が前記係止部の前記軸線方向の長さL2よりも長く、前記係止部が前記切り欠き部に収容されて前記セパレータの前記先端縁よりも後端側に配置されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記係止部が前記本体部と一体に構成されてなる請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を検出するセンサ素子を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の酸素やNOxの濃度を検出するガスセンサとして、固体電解質を用いたセンサ素子を有するものが知られている。
この種のガスセンサとして、板状のセンサ素子の後端側に電極パッドを設けつつ、センサ素子の後端側の径方向外側を取り囲むようにセパレータ(絶縁部材)を配置し、このセパレータの挿通孔に端子金具を保持したものが用いられている(特許文献1)。端子金具はセンサ素子の電極パッドに電気的に接続されると共に、端子金具の後端側がリード線にカシメ接続され、センサ素子からのセンサ出力信号がリード線を介して外部に取り出されようになっている。なお、リード線は、ガスセンサの後端側に配置されたゴム製のグロメットを挿通して外部に引き出される。
また、端子金具に板状の抜け止め部を設け、ガスセンサの外部に引き出されたリード線がガスセンサの使用時に後端側に引っ張られた際に、抜け止め部の後端向き面がセパレータの先端向き面に当接して端子金具の後端側への抜けを防止している。
【0003】
このガスセンサは次のように組み付けられる。まず、セパレータよりも先端側に端子金具を配置すると共に、セパレータの後端側から挿通孔にリード線を通し、端子金具の後端側にリード線の先端側をカシメ接続する。
次に、端子金具の抜け止め部がセパレータの先端向き面に引っ掛かるまで、セパレータの後端側のリード線を後端側に引張り、セパレータの挿通孔の先端側から端子金具を挿通孔の内部に収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−181769号公報(図8図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セパレータの挿通孔に柔らかいリード線を通す作業は煩雑であり、生産性の低下を招く。そこで、予めリード線を接続した端子金具をセパレータの後端側から挿通孔に通すことで生産性を向上できる。ところが、従来の端子金具の場合、後端側への抜け止め部が干渉するので、セパレータの後端側から挿通孔に端子金具を挿通することは不可能である。
そこで、図10に示すように、バネ状の抜け止め部500bを端子金具500に設けることを想定した。この抜け止め部500bは、軸線O方向に延び、軸線O方向の先端が固定端となり、後端が自由端となって軸線O方向及び径方向Dに撓むことができる。そして、抜け止め部500bは、セパレータ1000の挿通孔1000hの内部で径方向D内側に収容され、挿通孔1000hから径方向外側に広がる段部1000dで径方向Dに拡開して段部1000dの先端向き面1000aに引っ掛かる。
従って、予め端子金具500の後端側にリード線600をカシメ接続し、端子金具500をセパレータ1000の後端側から挿通孔1000hに挿通すると、抜け止め部500bが挿通孔1000hに収容されるので、挿通孔1000hに端子金具500及びリード線600を容易に通すことができる。
【0006】
ところが、セパレータ1000に保持した端子金具500を後端側に引っ張ると、比較的弱い力で抜け止め部500bが折れ曲がったり、径方向Dの内側に曲がり、セパレータ1000から端子金具500が抜けてしまうことが判明した。これは、抜け止め部500bが径方向Dだけでなく軸線O方向にも撓むためである。
一方、抜け止め部500bのバネ力を強くすると、抜け止め部500bの折れ曲がり及び端子金具500の抜けを抑制できるものの、セパレータ1000の挿通孔1000hへの端子金具500の挿入荷重が高くなり、生産性の低下を招くことになる。
【0007】
そこで、本発明は、予めリード線を接続した端子金具をセパレータの挿通孔に挿通することで生産性を向上させると共に、端子金具の後端側への抜けを抑制したガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、軸線方向に延び、先端側に検出部を有すると共に、後端側の外表面に電極パッドを有するセンサ素子と、前記軸線方向に延び、前記電極パッドに電気的に接続される端子金具と、前記端子金具の後端側に電気的に接続され、前記端子金具よりも後端側へ引き出されるリード線と、前記軸線方向に沿って延びる挿通孔を有し、該挿通孔の内部に前記端子金具を収容すると共に前記センサ素子の前記電極パッドを囲む筒状のセパレータと、を備えたガスセンサであって、前記端子金具は、前記軸線方向に延びて前記挿通孔の内部に支持される板状の本体部と、前記本体部に接続すると共に前記軸線方向に垂直な面に沿って径方向に撓む係止部と、前記本体部に接続すると共に前記本体部よりも前記径方向に突出して第1先端向き面を有する鍔部と、を有し、前記セパレータは、前記挿通孔に連通して第1後端向き面を有する棚部と、前記挿通孔に連通する第2先端向き面とをさらに有し、前記係止部は、前記セパレータの前記第2先端向き面よりも先端側にて前記挿通孔よりも前記径方向の外側に突出し、前記係止部の第2後端向き面が前記第2先端向き面に当接して前記端子金具の後端側への抜けを防止すると共に、前記鍔部の前記第1先端向き面が、前記棚部の前記第1後端向き面に当接して前記端子金具の先端側への抜けを防止することを特徴とする。
【0009】
このガスセンサによれば、係止部が径方向に撓むので、予めリード線を接続した端子金具をセパレータの挿通孔に挿通することが可能となる。
また、係止部は軸線方向に垂直な面に沿って径方向に撓むが、実質的に軸線方向に撓まない。このため、係止部の第2後端向き面がセパレータの第2先端向き面に当接しているときに、端子金具を後端側に引っ張っても係止部が折れ曲がったり、径方向の内側に曲がることが抑制され、端子金具の後端側への抜けを有効に防止することができる。
さらに、鍔部の第1先端向き面が、棚部の第1後端向き面に当接して端子金具の先端側への抜けを防止する。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記端子金具は、前記径方向に前記本体部を挟んで前記係止部と反対側で前記本体部に接続すると共に前記軸線方向に撓む押圧部をさらに有し、前記押圧部は、前記挿通孔の内部で前記挿通孔の壁面を押圧し、前記径方向に前記本体部を挟んで前記押圧部と反対側の前記挿通孔の壁面に、前記鍔部を当接させるとよい。
このガスセンサによれば、端子金具が挿通孔の径方向にブレて(鍔部が挿通孔の壁面から遠ざかるように)挿入されたとしても、押圧部が鍔部を挿通孔の壁面に接触させるので、端子金具の先端部を径方向に位置決めすることができ、端子金具の先端部が電極パッドを踏み外すことを防止することができる。
【0011】
本発明のガスセンサにおいて、前記鍔部が前記係止部よりも後端側に位置するとよい。
このガスセンサによれば、係止部がより先端側に位置するので、係止部に係止されるセパレータの先端向き面を切り欠き部等によって形成する際に、セパレータの先端縁からの切り欠き長さを短くすることができ、セパレータの製造が容易になる。
【0012】
本発明のガスセンサにおいて、前記セパレータの前記第2先端向き面は、前記セパレータの先端縁から後端に向かって前記セパレータの一部を切り欠いた切り欠き部の先端向き面として形成され、前記切り欠き部の前記軸線方向の長さL1が前記係止部の前記軸線方向の長さL2よりも長く、前記係止部が前記切り欠き部に収容されて前記セパレータの前記先端縁よりも後端側に配置されてなるとよい。
このガスセンサによれば、長さL1が長さL2よりも長いため、係止部が切り欠き部に軸線方向に完全に収容され、係止部がセパレータの先端縁よりも後端側に配置される。このため、端子金具の先端部が軸線方向に電極パッド側により近づき、端子金具のバネ性(弾性)による先端部の押圧がより強くなり、電極パッドと端子金具との間に電気的接続がさらに安定する。
【0013】
本発明のガスセンサにおいて、前記係止部が前記本体部と一体に構成されてなるとよい。
このガスセンサによれば、端子金具の生産性が向上すると共に、本体部に繋がる係止部の強度が向上し、端子金具の後端側への抜けをさらに確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、予めリード線を接続した端子金具をセパレータの挿通孔に挿通することで生産性を向上させると共に、端子金具の後端側への抜けを抑制したガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るガスセンサの長手方向に沿う断面図である。
図2】センサ素子の斜視図である。
図3】端子金具の斜視図である。
図4】先端側から見たセパレータの底面図である。
図5】セパレータの軸線方向の断面斜視図である。
図6】先端側から見たセパレータの底面斜視図である。
図7】セパレータの挿通孔に端子金具を通し始めた状態を示す図である。
図8】端子金具が挿通孔の所定深さまで挿入された最終状態を示す図である。
図9図8のA−A線に沿う断面図である。
図10】予めリード線を接続した端子金具をセパレータの挿通孔に通す際の不具合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係るガスセンサ(酸素センサ)200の長手方向に沿う全体断面図、図2はセンサ素子10の斜視図、図3は端子金具21の斜視図、図4は先端側から見たセパレータの底面図である。
このガスセンサ200は、自動車や各種内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサである。
【0017】
図1において、ガスセンサ200は、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、軸線O方向(ガスセンサ200の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすセンサ素子10と、センサ素子10の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ106と、軸線方向に貫通する挿通孔166hの先端側の内部に、センサ素子10の後端部の周囲を取り囲む状態で配置されるセラミック製筒状のセパレータ166と、センサ素子10とセパレータ166との間に配置される4個の端子金具21(図1では、2個のみを図示)と、を備えている。
又、センサ素子10の先端のガス検出部10aは、アルミナ等の多孔質保護層20で覆われている(図2参照)。
【0018】
主体金具138は、ステンレスから構成され、軸線方向に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。この貫通孔154には、センサ素子10の先端部を自身の先端よりも突出させるように当該センサ素子10が配置されている。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0019】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、センサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で環状形状のアルミナ製のセラミックホルダ151、粉末充填層156(以下、滑石リングともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。
また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されている。そして、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0020】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、センサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重のプロテクタである、外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が溶接等によって取り付けられている。
【0021】
そして、主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、外筒144の後端側(図1における上方)の開口部には、センサ素子10の4個の端子金具21(図1では、2個のみを表示)とそれぞれ電気的に接続される4本のリード線146(図1では2本のみを表示)が挿通されるリード線挿通孔(図示せず)が形成された、ゴム製のグロメット170が配置されている。
さらに、グロメット170の軸線O方向中心には基準雰囲気となる大気を導入するための貫通孔170hが形成され、この貫通孔170hには円筒状のフィルタ金具172が嵌挿されている。そして、貫通孔170hとフィルタ金具172の間に、貫通穴170hを閉塞するようにして配置された、空気は通す(通気性を有す)が水を通さない撥水性フィルタ174が保持され、貫通孔170hを介してガスセンサ200の内外に大気を導入可能になっている。
なお、外筒144の内部には、グロメット170と筒状の保持部材175とが後端側からこの順で配置されており、外筒144の外側からグロメット170と保持部材175とを加締めてグロメット170が外筒144の内部に保持されている。
【0022】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側(図1における上方)には、セパレータ166が配置される。なお、このセパレータ166は、センサ素子10の後端側の主面に形成される合計4個の電極パッド11(図1では2個のみを表示)の周囲に配置される。このセパレータ166は、軸線方向に貫通する挿通孔166hを有する筒状形状に形成されると共に、外表面から径方向外側に突出する鍔部167が備えられている。セパレータ166は、鍔部167が保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に保持される。
【0023】
図2に示すようにセンサ素子10は、軸線O方向に延びる板状をなし、先端部10sが酸素濃度を検出するガス検出部10aとなっていて、ガス検出部10aは多孔質保護層20で覆われている。なお、センサ素子10自身は公知の構成であり、図示はしないが酸素イオン透過性の固体電解質体と1対の電極とを有するガス検出部と、ガス検出部を加熱して一定温度に保持するヒータ部とを備えている。
そして、センサ素子10の一方の主面の後端側には、幅W方向に2つの電極パッド11が並び、ガス検出部10aからのセンサ出力信号がリード部(図示せず)を介してこれら電極パッド11から出力される。又、主面に対向するように設けられた他方の主面の後端側にも、幅W方向に2つの電極パッド11が並び、リード部(図示せず)を介してヒータ部に電力を供給するようになっている。
各電極パッド11は、軸線O方向に長い矩形状になっていて、例えばPtを主体とする焼結体として形成することができる。
【0024】
図3は端子金具21の斜視図を示す。なお、本実施形態では、後述するようにガスセンサ200は4本の端子金具21を有するが、これら4本の端子金具21は、図4に示すようにセパレータ166内のそれぞれ矩形の各頂点となる位置に配置され、隣接する端子金具21同士が線対称をなし、対角線上の端子金具21同士が同一形状である。すなわち、図3の端子金具21と、図3の右方向にこれと線対称の端子金具(図4の右側の端子金具21に相当)の2種類があり、各端子金具が有する各構成部分は実質的に同一であるから、図3の端子金具21についてのみ説明する。
図3に示すように、端子金具21は、略板状をなして軸線O方向に延びる板状の本体部21aと、本体部21aの先端縁から後端に向かって折り返された先端部21bと、本体部21aの後端に接続する圧着端子部21cと、軸線O方向に圧着端子部21cと先端部21bの間で本体部21aの両端からそれぞれL字状に折曲する1対の鍔部21dと、押圧部21eと、鍔部21dよりも先端側で本体部21aの幅方向の一端(図の左側)から径方向に突出して延びる係止部21fと、を一体に備えている。
【0025】
ここで、1対の鍔部21dは、圧着端子部21cと先端部21bの間で本体部21aの両端からそれぞれ先端部21bの折り返し方向(後述するセンサ素子10側)に向かってL字状に折曲し、さらにその折曲部の後端側から先端部21bの折り返し方向に向かってさらに径方向に突出して延びた部位である。また、軸線O方向から見て、1対の鍔部21dは本体部21aを間に挟んで平行に延び、1対の鍔部21dの先端向き面301が面一になっている。
また、上記した本体部21aの両端からの折曲部のうち、一方の折曲部(図の右側)は軸線O方向に先端に向かって切れ目が入れられ、切れ目部分が折曲部の板面から径方向外側に、かつ先端側の固定端を基準に後端側の自由端に向かって拡がる押圧部21eが片状に形成されている。
これにより、押圧部21eは、軸線O方向に平行な面Tに沿って軸線O方向に、及びこれと交差する径方向Dに共に撓む。
【0026】
係止部21fは、本体部21aの幅方向の一端(図3の左側)から径方向に突出して延び、係止部21fの固定端が本体部21aの上記一端に繋がっている。このため、係止部21fは、軸線O方向に垂直な面Sに沿って径方向Dに撓むが、わずかな変形を除いて実質的に軸線O方向には撓まない。
また、係止部21fには後端向き面304が形成されている。
【0027】
圧着端子部21cは公知の筒状をなし、この筒内に被覆を向いて導線を露出させたリード線146を挿入して圧着することで、リード線146が電気的に接続される。
先端部21bの先端縁は後端に向かって折り返されて自由端を形成している。そして、先端部21bは、端子金具21自身のバネ性(弾性)によって電極パッド11側に押圧されることにより、電極パッド11と端子金具21との間に確実な電気的接続が得られるようになっている。
又、端子金具21は、例えば1枚の金属板(インコネル(登録商標)等)を打ち抜いた後、先端部21b等を折り曲げて製造することができるが、これに限定されない。
【0028】
図5は、セパレータ166の軸線O方向の断面斜視図を示し、図6は、先端側から見たセパレータ166の底面斜視図を示す。
なお、図4に示すように、セパレータ166の中心には、矩形の挿通孔166hが軸線方向に貫通している。そして、この挿通孔166hの矩形の各頂点の径方向外側には、4個の矩形孔が挿通孔166hと一体に連通し、軸線O方向から見て挿通孔166hは全体として略H字状に形成されている。そして、4本の端子金具21は、挿通孔166hの矩形の各頂点に位置する部位に挿入されている。
【0029】
そして、図5に示すように、セパレータ166には、挿通孔166hに連通して後端向き面302を有する棚部166aが形成されている。
また、図6に示すように、セパレータ166には、挿通孔166hに連通して先端向き面303が形成されている。なお、本実施形態において、先端向き面303は、セパレータ166の先端縁166fから後端に向かってセパレータ166の一部を切り欠いた切り欠き部166sの先端向き面として形成されている。
また、図6において、先端縁166fからの切り欠き部166sの軸線O方向の長さをL1とし、係止部21fの軸線O方向の長さをL2とする。
【0030】
なお、先端向き面301、303がそれぞれ特許請求の範囲の「第1先端向き面」、「第2先端向き面」に相当し、後端向き面302、304がそれぞれ特許請求の範囲の「第1後端向き面」、「第2後端向き面」に相当する。
【0031】
次に、図7図9を参照し、予めリード線146を接続した端子金具21をセパレータ166の後端側から挿通孔166hに通す態様について説明する。図7は、セパレータ166の後端側から挿通孔166hに端子金具21を通し始めた状態を示し、図8は端子金具21が挿通孔166hの所定深さまで挿入された最終状態を示す。また、図9図8のA−A線に沿う断面を示す。
なお、図7(a)、図8(a)はそれぞれセパレータ166の軸線O方向の断面斜視図を示し、図7(b)、図8(b)はそれぞれ先端側から見たセパレータ166の底面図を示す。
【0032】
図7(a)に示すように、リード線146を接続した端子金具21をセパレータ166の後端側から挿通孔166hに通す際、係止部21fが挿通孔166hにぶつからないよう(干渉しないよう)、係止部21fを径方向に撓ませる。本実施形態では、係止部21fは図7の紙面の手前から奥に向かって径方向に突出しており、紙面の奥側で挿通孔166hの壁面に衝突してしまう。
そこで、係止部21fを図7(a)の紙面の手前に向かって(図7(b)では上から下へ向かって)径方向に撓ませ、端子金具21をセパレータ166の後端側から挿通孔166hに通す。
実際には、例えば端子金具21を挿通孔166hに通し、端子金具21全体を図7の紙面の奥に向かって径方向に押しながら挿通孔166hに挿入することで、係止部21fを撓ませることができる。
一方、端子金具21を挿通孔166hに通した際、押圧部21eは軸線O方向に撓んで挿通孔166hの内側に収容されるので、挿通孔166hの壁面に衝突する(干渉する)ことがなく挿通孔166h内に挿入されてゆく。
【0033】
端子金具21がさらに挿通孔166hの先端側に挿入されると、図5図9に示すように、一方(図7(a)の右側)の鍔部21dの先端向き面301が、セパレータ166の棚部166aの後端向き面302に当接して挿入深さが規定される。
このとき、図8(a)に示すように、径方向に撓んで挿通孔166h内に収容されていた係止部21fは、先端向き面303より先端側の切り欠き部166sにて径方向に解放されて挿通孔166hよりも径方向の外側に突出(拡径)する。そして、係止部21fの後端向き面304がセパレータ166の先端向き面303に当接する(図9)。
また、このとき、端子金具21の本体部21aが、端子金具21自身のバネ性(弾性)によって図9の紙面の左側へと押圧され、本体部21a挿通孔166hの壁面に押し付けられることで、係止部21fが位置決めされる。
【0034】
以上により、係止部21fが径方向に撓むので、予めリード線146を接続した端子金具21をセパレータ166の挿通孔166hに挿通することが可能となる。
また、係止部21fは軸線O方向に垂直な面S(図3参照)に沿って径方向に撓むが、実質的に軸線O方向に撓まない。このため、係止部21fの後端向き面304がセパレータ166の先端向き面303に当接しているときに、端子金具21を後端側に引っ張っても係止部21fが折れ曲がったり、径方向の内側に曲がることが抑制され、端子金具21の後端側への抜けを有効に防止することができる。
さらに、鍔部21dの先端向き面301が、棚部166aの後端向き面302に当接して端子金具21の先端側への抜けを防止する。
また、本体部21a挿通孔166hの壁面に押し付けられることで、係止部21fが図9の紙面の右側へと移動することが抑制され、係止部21fの抜けを有効に防止することができる。
【0035】
本実施形態において、端子金具21は、径方向に本体部21aを挟んで係止部21fと反対側で本体部21aに接続する押圧部21eを有する。この押圧部21eは、挿通孔166hの内部で軸線O方向に撓んで挿通孔166hの壁面を押圧する。そして、図8(b)に示すように、その反力F1を端子金具21に作用させ、押圧部21eと反対側の挿通孔166hの壁面(図8(b)の右側の壁面)に、鍔部21dを当接させる。
これにより、端子金具21が挿通孔166hの径方向にブレて(鍔部21dが挿通孔166hの壁面から遠ざかるように)挿入されたとしても、押圧部21eが鍔部21dを挿通孔166hの壁面に接触させるので、端子金具21の先端部を径方向に位置決めすることができ、端子金具21の先端部が電極パッド11を踏み外すことを防止することができる。
【0036】
本実施形態において、端子金具21の鍔部21dが係止部21fよりも後端側に位置する。これにより、係止部21fがより先端側に位置するので、係止部21fに係止されるセパレータ166の先端向き面303を切り欠き部166s等によって形成する際に、セパレータ166の先端縁166fからの切り欠き長さを短くすることができ、セパレータ166の製造が容易になる。
【0037】
本実施形態において、上述の長さL1を長さL2よりも長くすると、係止部21fが切り欠き部166sに軸線O方向に完全に収容され、係止部21fがセパレータ166の先端縁166fよりも後端側に配置される。
このため、端子金具21の先端部21bが軸線O方向に電極パッド11側により近づき、端子金具21のバネ性(弾性)による先端部21bの押圧がより強くなり、電極パッド11と端子金具21との間に電気的接続がさらに安定する。
【0038】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、端子金具の本体部、係止部、鍔部、押圧部の形状、個数等は上記実施形態に限定されない。セパレータの形状、セパレータの挿通孔や棚部の形状、個数等も上記実施形態に限定されない。
さらに、ガスセンサの種類としては、酸素センサの他、全領域空燃比センサ、及びNOxセンサ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0039】
10 センサ素子
10a 検出部
11 電極パッド
21 端子金具
21a 本体部
21d 鍔部
21e 押圧部
21f 係止部
146 リード線
166 セパレータ
166a 棚部
166f セパレータの先端縁
166h 挿通孔
166s 切り欠き部
200 ガスセンサ
301 第1先端向き面
302 第1後端向き面
303 第2先端向き面
304 第2後端向き面
O 軸線
S 軸線方向に垂直な面
D 径方向
L1 切り欠き部の軸線方向の長さ
L2 係止部の軸線方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10