【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る漏洩位置推定装置は、
流体が流通する配管を内部に含んだ容器において前記配管から前記流体が漏洩する漏洩位置を推定する漏洩位置推定装置であって、
前記容器の外部に設けられ、前記容器の壁の複数の部位での前記漏洩に起因する振動に関する情報をそれぞれ検知するための複数のセンサと、
前記複数のセンサのそれぞれによって検知された前記情報から前記漏洩位置を推定する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記流体の漏洩が発生すると仮想した仮想漏洩位置に関する位置情報と、前記仮想漏洩位置において前記流体の漏洩が発生した際に前記複数のセンサのそれぞれによって検知される前記情報の推定値であるとともに前記位置情報に対応して前記複数のセンサのそれぞれに対して予め設定される推定情報の集合である推定情報群とをそれぞれ有する複数のマップ要素を含むマップを記憶するマップ記憶部と、
前記複数のセンサのそれぞれによって検知された前記情報の集合である情報群に対応する推定情報群を抽出し、前記抽出された推定情報群に対応する前記位置情報に基づいて前記漏洩位置を推定する漏洩位置推定部と
を含む。
【0007】
上記(1)の構成によると、容器の壁の複数の部位での漏洩に起因する振動に関する情報をそれぞれ検知するための複数のセンサを設け、流体の漏洩が発生すると仮想した仮想漏洩位置に関する位置情報と、仮想漏洩位置において流体の漏洩が発生した際に複数のセンサのそれぞれによって検知される情報の推定値であるとともに位置情報に対応して複数のセンサのそれぞれに対して予め設定される推定情報の集合である推定情報群とをそれぞれ有する複数のマップ要素を含むマップに基づいて、複数のセンサのそれぞれによって検知された情報の集合である情報群に対応する推定情報群を抽出し、抽出された推定情報群に対応する位置情報に基づいて漏洩位置を推定することができるので、容器内の漏洩位置を精度よく推定することができる。また、複数のセンサは容器の外部に設けられることにより、安価なセンサを用いることができるので、安価な装置を構成することができる。
【0008】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記抽出された推定情報群は、複数の前記推定情報群の中で前記情報群に最も近似する推定情報群である。
【0009】
上記(2)の構成によると、例えば機械学習などの方法を用いて情報群に最も近似する推定情報群を抽出することで、複数のセンサによって検知された情報群に対して正確な漏洩位置の推定を行うことができる。
【0010】
(3)いくつかの実施形態では、上記(1)または(2)の構成において、
前記推定情報のそれぞれは、前記推定情報が属する推定情報群における1つの基準推定情報に対する比として記述され、
前記情報のそれぞれは、前記情報が属する情報群における1つの基準情報に対する比として記述される。
【0011】
漏洩位置での漏洩の程度の違いによって、複数のセンサのそれぞれによって検知された絶対値としての情報は異なる場合がある。上記(3)の構成によると、情報及び推定情報をそれぞれ基準情報及び基準推定情報に対する相対値とすることにより、複数のセンサのそれぞれによって検知された情報と推定情報とが絶対値としては異なっていたとしても、相対値としては近似することになる。したがって、漏洩位置での漏洩の程度に違いがあっても、情報群に対して正確な漏洩位置の推定を行うことができる。
【0012】
(4)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(3)のいずれかの構成において、
前記複数のセンサはそれぞれ接触式センサである。
【0013】
上記(4)の構成によると、接触式センサは非接触式センサよりも安価なので、非接触式センサを用いた場合に比べて安価な装置を提供することができる。
【0014】
(5)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(4)のいずれかの構成において、
前記容器は、ボイラの圧力容器である。
【0015】
上記(5)の構成によると、ボイラにおいて、圧力容器内の漏洩位置を安価に精度よく検出することができる。
【0016】
(6)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る漏洩位置推定方法は、
流体が流通する配管を内部に含んだ容器において前記配管から前記流体が漏洩する漏洩位置を推定する漏洩位置推定方法であって、
前記容器の壁の複数の部位での前記漏洩に起因する振動に関する情報をそれぞれ検知するための複数のセンサを前記容器の外部に設けるセンサ設置ステップと、
前記センサ設置ステップの後、前記複数のセンサのそれぞれが前記情報を検知する情報検知ステップと、
前記流体の漏洩が発生すると仮想した仮想漏洩位置に関する位置情報と、前記仮想漏洩位置において前記流体の漏洩が発生した際に前記複数のセンサのそれぞれによって検知される前記情報の推定値であるとともに前記位置情報に対応して前記複数のセンサのそれぞれに対して予め設定される推定情報の集合である推定情報群とをそれぞれ有する複数のマップ要素を含むマップに基づいて、前記複数のセンサのそれぞれによって検知された前記情報の集合である情報群に対応する推定情報群を抽出し、前記抽出された推定情報群に対応する前記位置情報に基づいて前記漏洩位置を推定する漏洩位置推定ステップと
を含む。
【0017】
上記(6)の方法によると、容器の壁の複数の部位での漏洩に起因する振動に関する情報をそれぞれ検知するための複数のセンサを設け、流体の漏洩が発生すると仮想した仮想漏洩位置に関する位置情報と、仮想漏洩位置において流体の漏洩が発生した際に複数のセンサのそれぞれによって検知される情報の推定値であるとともに位置情報に対応して複数のセンサのそれぞれに対して予め設定される推定情報の集合である推定情報群とをそれぞれ有する複数のマップ要素を含むマップに基づいて、複数のセンサのそれぞれによって検知された情報の集合である情報群に対応する推定情報群を抽出し、抽出された推定情報群に対応する位置情報に基づいて漏洩位置を推定することができるので、容器内の漏洩位置を精度よく推定することができる。また、複数のセンサは容器の外部に設けられることにより、安価なセンサを用いることができるので、安価に容器内の漏洩位置を推定することができる。
【0018】
(7)いくつかの実施形態では、上記(6)の方法において、
前記漏洩位置推定方法は、前記センサ設置ステップの前に、前記複数のセンサが前記容器の外部において設置される各設置位置を決定する設置位置決定ステップをさらに含み、
前記設置位置決定ステップは、
前記容器内の異なる任意の位置で前記漏洩が発生したときに前記容器内における各漏洩による各音波が前記容器の壁を振動させる振動加速度レベルの和を、前記容器の壁の複数の部位においてそれぞれ計算する第1ステップと、
前記振動加速度レベルの和の値が最も大きい部位を前記設置位置の1つと決定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて決定された前記1つの設置位置から、予め決められた距離だけ離れた少なくとも1つの位置を前記設置位置の少なくとも1つと決定する第3ステップと
を含む。
【0019】
上記(7)の方法によると、設置位置には、漏洩に起因する振動加速度レベルを検知可能な漏洩位置の範囲が最も広くなる位置が含まれるので、その位置から適当な間隔をあけた複数の設置位置を決定することにより、最適な設置位置を決定することができる。
【0020】
(8)いくつかの実施形態では、上記(7)の方法において、
前記設置位置決定ステップは、前記第3ステップの後に、新たに決定された少なくとも1つの前記設置位置のそれぞれから、予め決められた距離だけ離れた少なくとも1つの位置を前記設置位置の少なくとも1つと決定することを少なくとも1回行う第4ステップをさらに含む。
【0021】
上記(8)の方法によると、任意の大きさの容器に対して、最適な設置位置を決定することができる。
【0022】
(9)いくつかの実施形態では、上記(6)〜(8)のいずれかの方法において、
前記漏洩位置推定方法は、前記漏洩位置推定ステップの前に、
前記容器内の異なる任意の位置で前記漏洩が発生したときの前記容器内における各漏洩による各音波の伝搬状況を解析する音波伝搬解析ステップと、
前記音波伝搬解析ステップにおいて解析された前記音波の前記伝搬状況に基づいて、前記マップを作製するマップ作製ステップと
をさらに含む。
【0023】
上記(9)の方法によると、数値計算によってマップを作製することができるので、任意の構成の容器に関するマップを作製することができる。