特許第6827003号(P6827003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6827003-引抜機及び引抜方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827003
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】引抜機及び引抜方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 1/12 20060101AFI20210128BHJP
   B21C 1/22 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   B21C1/12 A
   B21C1/22 B
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-12306(P2018-12306)
(22)【出願日】2018年1月29日
(62)【分割の表示】特願2017-544688(P2017-544688)の分割
【原出願日】2016年12月6日
(65)【公開番号】特開2018-89700(P2018-89700A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501087272
【氏名又は名称】株式会社エフ・エー電子
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】竹本 康介
(72)【発明者】
【氏名】田島 憲一
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−103623(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045373(WO,A1)
【文献】 特開昭52−021248(JP,A)
【文献】 特開昭64−087012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の引抜ユニットを備えた引抜機であって、
前記複数段の引抜ユニットは、第1の引抜ユニット及び第2の引抜ユニットを有し、
前記第1の引抜ユニットは、
通過する金属管の少なくとも外径を縮小して当該金属管を引き抜く第1の引抜ダイス、
前記第1の引抜ダイスの前段に設けられ、前記第1の引抜ダイスに対して前記金属管を送り出す第1の前段キャプスタン、及び、
前記第1の引抜ダイスの後段に設けられ、前記第1の引抜ダイスから前記金属管を引き抜く第1の後段キャプスタン、
を有し、
前記第2の引抜ユニットは、
前記第1の引抜ユニットから送り出された前記金属管の少なくとも外径を縮小して当該金属管を引き抜く第2の引抜ダイス、
前記第2の引抜ダイスの前段に設けられ、前記第1の引抜ユニットから送り出された前記金属管を前記第2の引抜ダイスに対して送り出す第2の前段キャプスタン、及び、
前記第2の引抜ダイスの後段に設けられ、前記第2の引抜ダイスから前記金属管を引き抜く第2の後段キャプスタン、
を有
前記第1の引抜ユニットと前記第2の引抜ユニットとの間において前記金属管に所定の張力を付与する張力付与部とを備え
前記第1の引抜ユニットの前記第1の後段キャプスタンの周速度と、前記第2の引抜ユニットの前記第2の前段キャプスタンの周速度との比率が制御される、引抜機。
【請求項2】
前記第1の前段キャプスタンの周速度と前記第1の後段キャプスタンの周速度との比率である第1の速度比率、及び、前記第2の前段キャプスタンの周速度と前記第2の後段キャプスタンの周速度との比率である第2の速度比率を制御する速度制御部をさらに備えた、請求項1に記載の引抜機。
【請求項3】
前記速度制御部は、前記第1の速度比率が略一定となるように、前記第1の前段キャプスタンの周速度及び前記第1の後段キャプスタンの周速度を制御し、前記第2の速度比率が略一定となるように、前記第2の前段キャプスタンの周速度及び前記第2の後段キャプスタンの周速度を制御する、請求項2に記載の引抜機。
【請求項4】
前記速度制御部は、前記第2の前段キャプスタン前記第1の後段キャプスタンの周速度を略同一となるように制御する、請求項3に記載の引抜機。
【請求項5】
前記第1の引抜ユニットと前記第2の引抜ユニットとの間において、前記第1の後段キャプスタンの周速度と前記第2の前段キャプスタンの周速度との速度差を検出する速度差検出部をさらに備え、
前記速度制御部は、前記速度差に基づいて、前記第1の後段キャプスタンの周速度を制御する、請求項4に記載の引抜機。
【請求項6】
前記張力付与部が前記金属管に付与する張力を制御する張力制御部をさらに備え、
前記速度制御部は、前記張力付与部が前記第1の引抜ユニットと前記第2の引抜ユニットとの間において前記金属管に付与する張力に基づいて、前記第2の前段キャプスタンの周速度と前記第1の後段キャプスタンの周速度を略一定に保つよう制御する、請求項4に記載の引抜機。
【請求項7】
複数段の引抜ユニットを備えた引抜機を用いて金属管を引き抜く引抜方法であって、
第1の前段キャプスタンを用いて、第1の引抜ダイスに対して金属管を送り出すステップと、
第1の後段キャプスタンを用いて、前記第1の引抜ダイスから前記金属管を引き抜くステップと、
前記第1の後段キャプスタンから送り出された前記金属管に所定の張力を付与するステップと、
第2の前段キャプスタンを用いて、前記第1の後段キャプスタンから送り出され、前記所定の張力が付与された前記金属管を第2の引抜ダイスに対して送り出すステップと、
第2の後段キャプスタンを用いて、前記第2の引抜ダイスから前記金属管を引き抜くステップと
を備え、
前記第1の後段キャプスタンの周速度と、前記第2の引抜ユニットの前記第2の前段キャプスタンの周速度との比率を制御するステップをさらに備えた、引抜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管を引き抜く引抜機及び引抜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の伸線機として、例えば、特開2003−53418号公報(特許文献1)に記載された、スリップ型伸線機と呼ばれるものがある。上記従来のスリップ型伸線機では、キャプスタンの回転速度を金属線の線速度よりも速く設定して、キャプスタンと該金属線との間にスリップを起こしつつ、キャプスタンによって伸線ダイスから該金属線を引き抜いて、該金属線を伸線していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−53418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の伸線機では、例えば細管などの中空構造を有する、パイプ状の金属管を引き抜く場合に、その外径と内径を制御できないという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一形態によれば、通過する金属管の径を縮小して当該金属管を引き抜く第1の引抜ダイス、前記第1の引抜ダイスの前段に設けられ、前記第1の引抜ダイスに対して前記金属管を送り出す第1の前段キャプスタン、及び、前記第1の引抜ダイスの後段に設けられ、前記第1の引抜ダイスから前記金属管を引き抜く第1の後段キャプスタン、を有する第1の引抜ユニットと、前記第1の引抜ユニットから送り出された前記金属管の径を縮小して当該金属管を引き抜く第2の引抜ダイス、前記第2の引抜ダイスの前段に設けられ、前記第2の引抜ダイスに対して前記金属管を送り出す第2の前段キャプスタン、及び、前記第2の引抜ダイスの後段に設けられ、前記第2の引抜ダイスから前記金属管を引き抜く第2の後段キャプスタン、を有する第2の引抜ユニットと、前記第1の引抜ユニットと前記第2の引抜ユニットとの間において前記金属管に所定の張力を付与する張力付与部とを備えた引抜機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態に係る引抜機100の構成を示す模式図である。
図2】引抜機100を制御する制御ユニット200の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
本実施形態において、金属管10は、パイプ状の構造を有する。すなわち、金属管10は、当該金属管が延びる方向に垂直な断面において、所定の外径(以下「金属管10の外径」ともいう。)を有するとともに、その内部(例えば断面の中心)に、所定の内径(以下「金属管10の内径」ともいう。)を持つ円形や楕円形の空間を有する。なお、本実施形態における引抜機100は、パイプ状の構造を有する金属管10の他に、当該金属管が延びる方向に垂直な断面において、内側と外側で物性(例えば硬さ等)の異なる材料からなる金属線を引き抜く引抜機であってもよい。
【0009】
(引抜機100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る引抜機100の構成を示す模式図である。また、図2は、該実施形態に係る引抜機100を制御する制御ユニット200の構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態において、引抜機100は、筐体12と、巻出ユニット20と、引抜ユニット40と、巻取ユニット60と、各ユニットを制御する制御ユニット200を備えて構成される。引抜機100においては、金属管10が送り出され、引き抜かれ、巻き取られる経路(以下「通過経路」という。)に沿って、上流側から下流側に(図1における左から右に)、巻出ユニット20、引抜ユニット40並びに巻取ユニット60が順番に設けられている。そして、引抜機100は、巻出ユニット20から送り出された金属管を、各引抜ユニット40において、順次、その径を縮小して引き抜き、径が縮小された金属管10を、巻取ユニット60において巻き取る。
【0011】
制御ユニット200は、引抜機100の動作を制御する。制御ユニット200は、システムコントローラ110と、巻出ユニットコントローラ120と、引抜ユニットコントローラ140と、巻取ユニットコントローラ160とを有して構成される。システムコントローラ110は、巻出ユニットコントローラ120、引抜ユニットコントローラ140、及び巻取ユニットコントローラ160と接続されており、各ユニットコントローラを統括的に制御する。
【0012】
巻出ユニットコントローラ120、引抜ユニットコントローラ140、及び巻取ユニットコントローラ160は、それぞれ、巻出ユニット20、引抜ユニット40及びダンサ部52、並びに巻取ユニット60に設けられた各種構成と接続されており、各ユニットを制御する。なお、図2では、引抜ユニットコントローラ140が1つしか図示されていないが、引抜ユニットコントローラ140は、n段(nは正の整数)の引抜ユニット40−1〜nのそれぞれについて設けられている。
【0013】
このように、制御ユニット200に設けられた、システムコントローラ110並びに巻出ユニットコントローラ120、引抜ユニットコントローラ140、及び巻取ユニットコントローラ160が、巻出ユニット20、引抜ユニット40及びダンサ部52、並びに巻取ユニット60を制御して、金属管10を、巻出ユニット20から送り出し、各引抜ユニット40−1〜nを通過させて引き抜き、巻取ユニット60において巻き取る。
【0014】
図1及び図2に基づいて、引抜機100の各構成について説明する。なお、本実施形態では、図1に示すとおり、巻出ユニット20と巻取ユニット60との間に、金属管10が送り出される経路に沿って、n段の引抜ユニット40が、金属管10を順次引き抜くように、直列に設けられている。以下、各引抜ユニット40を、巻出ユニット20から巻取ユニット60に向かって、それぞれ、引抜ユニット40−1〜nという。また、引抜機100は、n−1段のダンサ部52を有しており、各ダンサ部52は、隣接する引抜ユニット40の間に設けられている。
【0015】
(巻出ユニット20)
巻出ユニット20は、巻出ボビン22と、ガイドローラ24、26及び28と、ダンサ部32とを有して構成される。巻出ユニット20において、金属管10は、巻出ボビン22、ガイドローラ24、ガイドローラ26、ダンサローラ34、ガイドローラ26、ガイドローラ28の順に、これらにわたって所定の張力がかかった状態で掛け渡されている(以下「張架」という。)。
【0016】
巻出ボビン22は、引抜機100の筐体12に回転可能に設けられている。巻出ボビン22は、巻出モータ122が接続されており、その駆動により回転する。これにより、巻出ボビン22に巻かれた金属管10が引き出され、通過経路に送り出される。本実施形態において、巻出ボビン22は、巻出モータ122によって速度制御で駆動される。すなわち、巻出ユニットコントローラ120は、巻出ボビン22が所定の速度で回転するように、巻出モータ122の駆動を制御する。また、巻出ユニットコントローラ120は、ポテンショメータ138が検出したダンサアーム36の角度に基づいて、巻出モータ122の回転速度を制御する。
【0017】
ガイドローラ24、26及び28は、引抜機100の筐体12に回転可能に設けられている。ガイドローラ24、26及び28は、それぞれ、金属管10をノンスリップで送り出すように所定の回数巻かれている。ガイドローラ24、26及び28は、引抜ユニット40によって金属管10に付加された張力によって回転し、巻出ボビン22から送り出された金属管10を、通過経路に沿って、ノンスリップで順次送り出す。
【0018】
ダンサ部32は、ダンサローラ34と、ダンサアーム36と、トルクモータ38とを有して構成されており、巻出ボビン22から送り出された金属管10に、所望の張力を付加する。
【0019】
ダンサローラ34は、棒状に形成されるダンサアーム36の一端側に回転可能に支持されている。金属管10は、ガイドローラ24、ガイドローラ26、ダンサローラ34、ガイドローラ26、ガイドローラ28の順に張架されており、ダンサローラ34によって図中下方に向かう方向に、所定の張力が付加されている。
【0020】
ダンサアーム36は図中略水平に、すなわち、ダンサローラ34によって金属管10に張力が付加される方向と略垂直方向に配置されており、この水平に位置する状態をダンサアーム36の基準位置としている。ダンサアーム36の他端側は、トルクモータ38の駆動軸に固定されて支持されており、トルクモータ38の駆動軸がダンサアーム36の回動軸となっている。
【0021】
ポテンショメータ138(図2)は、トルクモータ38の駆動軸に設けられており、ダンサアーム36の回動角を検出する。また、ポテンショメータ138は、巻出ユニットコントローラ120と接続されており、ポテンショメータ138により検出された回動角を、引抜ユニットコントローラ140に供給する。なお、本実施形態では、ポテンショメータ138が、ダンサアーム36の回動角を検出しているが、ダンサローラ34の位置や変位、例えば、ダンサローラ34が金属管10に対して張力を付与する方向における、該ダンサローラ34の位置や変位を検出してもよい。この場合、ダンサローラ34を回動させずに、垂直移動(金属管に張力を付与する方向に直線移動)させて、金属管10に張力を付与してもよい。
【0022】
トルクモータ38は、ダンサアーム36及びダンサローラ34を介して、金属管10に所定の張力を付与する。すなわち、トルクモータ38は、該トルクモータ38の回転トルクを、ダンサアーム36及びダンサローラ34を介して金属管10に伝達して、金属管10に張力を付与する。トルクモータ38は、巻出ユニットコントローラ120と接続されており、該巻出ユニットコントローラ120の指令(トルク指令)に基づいて、所定の回転トルクを生成する。
【0023】
なお、ダンサ部32は、トルクモータ38に代えて、サーボモータ(例えば、トルク制御モードで使用する。)、ロータリーソレノイド(例えば、供給される電流に応じた回転トルクを発生させて使用する。)、エアーシリンダ(例えば、ダンサアーム36の推力を調整して使用する。)、DCモータ(例えば、供給される電流に応じた回転トルクを発生させて使用する。)等のアクチュエータを有してもよい。また、ダンサ部32は、トルクモータ38等のアクチュエータに代えて、おもり(例えば、ダンサアーム36に当該おもりの重さを付加する。)、バネ(ダンサアーム36に接続された引きバネや押しバネの引き位置、押し位置を調整して使用する。)、ゼンマイバネ(ダンサアーム36の回転軸中心にゼンマイバネを配置し、バネを巻いて使用する。)等を有してもよい。なお、例示された何れの手段も、金属管10に付与される張力が所定の値になるように使用される。
【0024】
また、ダンサ部32は、回動するダンサアーム36を介して金属管10に張力を付与するが、これに限られない。ダンサ部32は、例えば、垂直又は水平方向に移動するダンサロールを有し、当該ダンサロールを介して金属管10に張力を付与してもよい。この場合、例えば、直線型のエンコーダ、位置比例出力型の位置センサ、超音波距離計、レーザー距離計等によって、ダンサロールの位置が検出され、金属管10に付与される張力が制御される。
【0025】
ダンサ部32は、かかる構成によって、トルクモータ38が生成した所定のトルクを、ダンサアーム36及びダンサローラ34を介して金属管10に伝達することにより、該金属管10に所定の設定された張力を付与する。すなわち、巻出ユニット20から送り出される金属管10に付与される張力は、トルクモータ38の回転トルクに応じて定まる。
【0026】
以上のとおり、本実施形態における巻出ユニット20は、巻出ボビン22から一定の速度で送り出された金属管10に対して、ダンサ部32が所定の張力を付与することによって、金属管10が所望の張力を有した状態で、引抜ユニット40−1に該金属管10を送り出すことができる。
【0027】
(引抜ユニット40)
本実施形態において、引抜機100は、巻出ユニット20と巻取ユニット60との間に、n段の引抜ユニット40−1〜nを有して構成される。巻出ユニット20、引抜ユニット40−1〜n及び巻取ユニット60は、連結して設けられている。そして、巻出ユニット20から送り出された金属管10は、引抜ユニット40−1、40−2、・・・40−nの順番に通過して引き抜かれる。引抜ユニット40−nにおいて引き抜かれた金属管10は、巻取ユニット60に送り出される。なお、本実施形態において、引抜ユニット40−1〜nは、同一の構成を有するので、以下、引抜ユニット40−1〜nを個々に特定しない限り、引抜ユニット40−1〜nを「引抜ユニット40」と総称して説明する。また、引抜ユニット40−1〜nに含まれる各構成についても、同様に総称して説明する。
【0028】
引抜ユニット40は、引抜ダイス42と、ガイドローラ44及び46と、駆動キャプスタン48及び50とを有して構成される。引抜ユニット40において、金属管10は、ガイドローラ44、引抜ダイス42、ガイドローラ46、駆動キャプスタン50にわったって張架されている。
【0029】
引抜ダイス42は、ガイドローラ44とガイドローラ46との間に設けられている。引抜ダイス42は、金属管10が張架される方向にダイス孔を有しており、金属管10が該ダイス孔を通過して引き抜かれると、金属管10の外径が縮小し、金属管10が引き抜かれる。このとき、金属管10の径の縮小率(断面積の減少率)は、引抜ダイス42に設けられたダイス孔の径に応じて定まり、該縮小率に応じて、金属管10が引き抜かれる。引抜ユニット40−1〜nの各段の引抜ダイス42のダイス孔の径は、最終段の引抜ユニットである引抜ユニット40−nにおいて引き抜かれた金属管10が所望の外径となるように、適宜選択される。
【0030】
本実施形態において、引抜ユニット40−1〜nは、通過する金属管10の外径を徐々に縮小する。従って、引抜ダイス42−nに設けられたダイス孔の径は、引抜ダイス42−1に設けられたダイス孔よりも小さい。また、引抜ダイス42−1に設けられたダイス孔の径は、引抜ダイス42−1に設けられたダイス孔よりも小さい。
【0031】
本実施形態において、引抜ダイス42は、筐体12に固定されたダイスホルダに格納されている。引抜機100は、金属管10が引抜ダイス42から引き抜かれるときに、その引抜加工力を測定する手段を有してもよい。該手段は、例えば、引抜ダイス42がダイスホルダを押圧する力を検出して該引抜加工力を測定する手段であってもよく、また、筐体12に固定されたダイスホルダの歪みを検出して該引抜加工力測定する手段であってもよい。
【0032】
なお、金属管10及び/又は引抜ダイス42を潤滑油に浸漬しておくと、引抜ダイス42を通過する金属管10の揺れ等を防止し、その安定性を向上させることができる。このため、金属管10及び/又は引抜ダイス42を潤滑油に浸漬するためのオイルタンクを設けてもよい。例えば、引抜ダイス42とガイドローラ44との間に、オイルタンクを配置し、該オイルタンクを金属管10が通過するよう構成してもよい。この場合、引抜動作中に、潤滑油がオイルタンクからオーバーフローするように、該潤滑油をオイルタンクに供給する手段を有することが好ましい。また、引抜ダイス42をオイルタンク内に配置し、該オイルタンクを金属管10が上下または水平方向に貫通するように配置してもよい。但し、貫通する部分にはシールが必要となる。
【0033】
金属管10及び/又は引抜ダイス42を潤滑油に浸漬することで、次のような利点がある。各引抜ユニット40内の引抜ダイス42において行う引抜加工に最適な潤滑油を使用することができる。潤滑油の組成は、引抜ダイス42の消耗に対して大きな影響を与えるが、かかる構成を有することにより、引抜加工に特化した組成の潤滑油を安定して供給することが可能になる。また、金属管10と駆動キャプスタン50との摩擦による潤滑油の汚れの影響を低減するため潤滑油の循環や浄化システムが必要であったが、循環や浄化システムが簡易なものでよくなるため、生産コストの低減が可能となる。
【0034】
ガイドローラ44及び46は、引抜機100の筐体12に回転可能に設けられている。ガイドローラ44及び46は、駆動キャプスタン48又は50の回転によって金属管10に付加された張力によって回転し、金属管10を通過経路に沿ってノンスリップで順次送り出す。
【0035】
駆動キャプスタン48及び50(前段キャプスタン及び後段キャプスタンの一例である。)は、引抜機100の筐体12に回転可能に設けられている。駆動キャプスタン48及び50は、駆動モータ150(図2参照)が接続されており、引抜ユニットコントローラ140からの指令に基づいて、所定の速度で回転する。駆動キャプスタン48及び50は、それぞれ、引抜ダイス42に金属管10を送り出し、引抜ダイス42から金属管10を引き出す。
【0036】
駆動キャプスタン48及び50の外周面は、溶射加工されており、その表面硬度を上げて耐久性を高くするとともに、駆動キャプスタン48及び50の表面(金属管10との接触面)と金属管10との間に滑りが発生することを防止している。また、駆動キャプスタン50の外周面は、摩擦係数の大きい弾性体(例えば、ウレタンやゴム等の樹脂)によって被覆されてもよい。このように、表面加工された駆動キャプスタン50により、金属管10がノンスリップで引抜ダイス42から引き抜かれ、次段に送り出される。
【0037】
(ダンサ部52)
ダンサ部52は、ダンサローラ54と、ダンサアーム56と、トルクモータ58とを有して構成されており、引抜ユニット40において引き抜かれた金属管10に張力を付加する。
【0038】
ダンサローラ54は、棒状に形成されるダンサアーム56の一端側に回転可能に支持されている。金属管10は、ダンサローラ54にノンスリップで巻き付けられており、ダンサローラ54によって図中下方に向かう方向に張力が付加されている。
【0039】
ダンサアーム56は、図中略水平に、すなわち、ダンサローラ54によって金属管10に張力が付加される方向と略垂直方向に配置されている。ダンサアーム56は、この水平に位置する状態をダンサアーム56の基準位置としている。ダンサアーム56の他端側は、トルクモータ58の駆動軸に固定されて支持されており、トルクモータ58の駆動軸がダンサアーム56の回動軸となっている。
【0040】
ポテンショメータ158(図2)は、トルクモータ58の駆動軸に設けられており、ダンサアーム56の回動角を検出する。また、ポテンショメータ158は、引抜ユニットコントローラ140と接続されており、ポテンショメータ158により検出された回動角を、引抜ユニットコントローラ140に供給する。
【0041】
トルクモータ58は、ダンサアーム56及びダンサローラ54を介して、金属管10に張力を付与する。すなわち、トルクモータ58は、該トルクモータ58の回転トルクを、ダンサアーム56及びダンサローラ54を介して金属管10に伝達して、金属管10に張力を付与する。トルクモータ58は、引抜ユニットコントローラ140と接続されており、引抜ユニットコントローラ140の指令(トルク指令)に基づいて、所定の回転トルクを生成する。
(巻取ユニット60)
巻取ユニット60は、ガイドローラ66、68及び70と、ダンサ部72と、巻取ボビン80とを有して構成される。巻取ユニット60において、金属管10は、ガイドローラ66、ダンサローラ74、ガイドローラ66、68、70、巻取ボビン80の順に張架されている。
【0042】
ガイドローラ66、68及び70は、引抜機100の筐体12に回転可能に設けられている。ガイドローラ66、68及び70は、それぞれ、金属管10をノンスリップで送り出すように所定の回数巻かれている。ガイドローラ66、68及び70は、巻取ボビン80の回転によって金属管10に付加された張力によって回転し、引抜ユニット40−nにおいて引き抜かれた金属管10を、通過経路に沿って、ノンスリップで順次送り出す。
【0043】
ダンサ部72は、ダンサローラ74と、ダンサアーム76と、トルクモータ78とを有して構成されており、引抜ユニット40−nにおいて引き抜かれた金属管10に、所望の張力を付加する。
【0044】
ダンサローラ74は、棒状に形成されるダンサアーム76の一端側に回転可能に支持されている。金属管10は、ガイドローラ66、ダンサローラ74、ガイドローラ66、ガイドローラ68、ガイドローラ70の順に張架されており、ダンサローラ74によって図中下方に向かう方向に、所定の張力が付加されている。
【0045】
ダンサアーム76は図中略水平に、すなわち、ダンサローラ74によって金属管10に張力が付加される方向と略垂直方向に配置されており、この水平に位置する状態をダンサアーム76の基準位置としている。ダンサアーム76の他端側は、トルクモータ78の駆動軸に固定されて支持されており、トルクモータ78の駆動軸がダンサアーム76の回動軸となっている。
【0046】
ポテンショメータ178(図2)は、トルクモータ78の駆動軸に設けられており、ダンサアーム76の回動角を検出する。また、ポテンショメータ178は、巻取ユニットコントローラ160と接続されており、ポテンショメータ178により検出された回動角を、巻取ユニットコントローラ160に供給する。
【0047】
トルクモータ78は、ダンサアーム76及びダンサローラ74を介して、金属管10に所定の張力を付与する。すなわち、トルクモータ78は、該トルクモータ78の回転トルクを、ダンサアーム76及びダンサローラ74を介して金属管10に伝達して、金属管10に張力を付与する。トルクモータ78は、巻取ユニットコントローラ160と接続されており、該巻取ユニットコントローラ160の指令(トルク指令)に基づいて、所定の回転トルクを生成する。
【0048】
巻取ボビン80は、引抜機100の筐体12に回転可能に設けられている。巻取ボビン80は、巻取モータ180が接続されており、その駆動により回転する。これにより、引抜ユニット40−nにおいて引き抜かれた金属管10、巻取ボビン80に巻き取られる。本実施形態において、巻取ボビン80は、巻取モータ180によって速度制御で駆動される。すなわち、巻取ユニットコントローラ160は、巻取ボビン80が所定の速度で回転するように、巻取モータ180の駆動を制御する。具体的には、巻取ユニットコントローラ160は、駆動キャプスタン50−nの周速度及びダンサアーム76の回動角に基づいて、巻取モータ180の回転速度を制御する。
【0049】
以上のとおり、本実施形態における巻取ユニット60では、ダンサ部72が引抜ユニット40−nから送り出された金属管10に所定の張力を付与しつつ、巻取ボビン80が一定の速度で金属管10を巻き取っている。
【0050】
(引抜機100の引抜動作)
次に、以上のように構成された引抜機100が、パイプ状の金属管10を引き抜く動作を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0051】
(駆動キャプスタン48及び50の周速度の設定)
引抜ユニット40の各段において、引抜ダイス42を通過した金属管10の外径は、当該引抜ダイス42の孔径によって定まる。すなわち、巻取ユニット60において巻き取られる金属管10の外径は、巻出ユニット20から送り出された金属管10の外径及び各引抜ダイス42の孔径によって制御される。
【0052】
他方で、本実施形態において、所定の引抜ユニット40の引抜ダイス42を通過した金属管10の内径は、当該引抜ユニット40において、引抜ダイス42の前段に設けられた駆動キャプスタン48の周速度と、後段に設けられた駆動キャプスタン50の周速度の比率によって制御される。
【0053】
金属管10(内部の空間を含む)が引抜ダイス42を単位時間あたりに通過する通過体積は一定であるから、引抜ユニット40において、引抜ダイス42を通過する前の金属管10の外径をD1、内径をd1、引抜ダイス42を通過した後の金属管10の外径(すなわち、引抜ダイス42の孔径)をD2、内径をd2、駆動キャプスタン48の周速度をV1、駆動キャプスタン50の周速度をV2とすると、以下の式が成り立つ。

V1(πD12/4−πd12/4)=V2(πD22/4−πd22/4)・・・式1

すなわち、

V1(D12−d12)=V2(D22−d22)・・・式2
【0054】
式2において、D1、d1、D2は既知の定数であるため、V1(駆動キャプスタン48の周速度)とV2(駆動キャプスタン50の周速度)の比率を制御することにより、d2(引抜ダイス42を通過した後の金属管10の内径)を所望の大きさにすることができる。なお、駆動キャプスタン40の周速度と駆動キャプスタン50の周速度との比率に代えて、駆動キャプスタン40の周径及び駆動キャプスタン50の周径に基づいて、駆動キャプスタン40の回転速度と駆動キャプスタン50の回転速度との比率を制御してもよい。例えば、駆動キャプスタン48の周径と駆動キャプスタン50の周径が等しい場合には、駆動キャプスタン40の周速度と駆動キャプスタン50の周速度との比率は、それらの回転速度の比率に等しくなる。
【0055】
本実施形態では、最終段の引抜ユニットである引抜ユニット40−nにおける駆動キャプスタン50−nの周速度を基準として、各引抜ユニット40における駆動キャプスタン48及び50の周速度が設定される。
【0056】
まず、各引抜ユニット40における金属管10の外径の縮小率(各引抜ダイス42の前後における金属管10の外径の比率)及び内径の縮小率(各引抜ダイス42の前後における金属管10の内径の比率)、並びに、引抜ユニット40−nにおける駆動キャプスタン50−nの周速度V2が設定されると、駆動キャプスタン48−nの周速度V1が式2に基づいて定められる。
【0057】
また、駆動キャプスタン48−nの前段の引抜ユニット40−(n−1)の駆動キャプスタン50−(n−1)の周速度V2は、駆動キャプスタン48−nの周速度V1と略同じ速度となる。そして、駆動キャプスタン48−(n−1)の周速度V1は、式2に基づいて定められる。このようにして、所望の外径及び内径を有する金属管10が得られるよう、各引抜ユニット40における駆動キャプスタン48の周速度V1及び駆動キャプスタン50の周速度V2が定められる。
【0058】
(巻出ユニット20の動作)
巻出ユニット20は、金属管10を、巻出ユニット20から略一定の速度で送り出す。すなわち、巻出ユニットコントローラ120は、巻出ユニット20から金属管10が送り出される速度(以下、金属管10が通過経路の各位置において送られる速度を「線速度」という。)が、駆動キャプスタン50−nの周速度に応じた、略一定の速度に維持されるように、巻出モータ122の回転数を制御する。なお、巻出ユニット20から送り出された金属管10の線速度は、駆動キャプスタン50−nの周速度に応じて定められた、駆動キャプスタン48−1の周速度と略等しい。
【0059】
本実施形態において、巻出ユニットコントローラ120は、ガイドローラ44における金属管10の線速度をフィードフォワード信号とし、ダンサアーム36の回動角をフィードバック信号として、巻出モータ122の回転数を制御する。具体的には、駆動キャプスタン48−1の周速度が、巻出ユニット20から金属管10が送り出される速度、つまり、駆動キャプスタン48−1を通過する金属管10の線速度として、引抜ユニットコントローラ140に供給される。駆動キャプスタン48−1の周速度は、例えば、駆動キャプスタン48−1に設けられたエンコーダによって検出される。そして、巻出ユニットコントローラ120は、該線速度を示す速度信号をフィードフォワード信号として、巻出モータ122に供給して、巻出モータ122の回転を制御する。
【0060】
他方で、ダンサアーム36が回動して、巻出ボビン22から送り出された金属管10に所定の張力が付与されると、巻出ボビン22から送り出された金属管10の線速度と、ガイドローラ44を通過する金属管10の線速度との間に、所定の誤差が生じる。巻出ユニットコントローラ120は、ポテンショメータ138によって検出された該回動角に基づくフィードバック信号を生成し、巻出モータ122の回転を制御して、該誤差による線速度のずれを補正し、巻出ユニット20から送り出される金属管10の線速度を略一定に維持する。
【0061】
具体的に説明すると、巻出ユニットコントローラ120は、ポテンショメータ138が検出した、ダンサアーム36の該回動角と、ダンサアーム36が基準位置にあるときの回動角との回動角偏差を演算する。そして、巻出ユニットコントローラ120は、該回動角偏差がゼロに近づくように、巻出モータ22の回転速度を決定して、それに基づく回転速度指令を巻出モータ122に供給する。巻出ユニットコントローラ120は、該回動角偏差をフィードバック信号として、例えば、P制御、PI制御、PID制御等の制御によって、巻出モータ22の回転速度を制御する。
【0062】
(引抜ユニット40の動作)
次に、各引抜ユニット40が、巻出ユニット20から送り出された金属管10を引き抜く動作について説明する。
【0063】
引抜ユニットコントローラ140は、式2に基づいて設定された周速度に基づいて、各駆動キャプスタン48及び50に接続された各駆動モータ150の回転速度を制御する。例えば、引抜機100に、5段の引抜ユニット40が設けられており、巻出ユニット20から送り出される金属管10(すなわち、母材)の外径が1.5mmであり、肉厚が0.075mmであり、内径が1.35mmであり、巻取ユニット60で巻き取られる金属管10の外径のターゲット値が1.0mm、内径のターゲット値が0.9mmと、金属管10の外径と内径の比率が一定となるように引き抜く場合、各引抜ユニット40における、引抜ダイス42の孔径、並びに、駆動キャプスタン48及び50の周速度は、以下のとおり設定される。

【表1】
【0064】
また、巻出ユニット20から送り出される金属管10(すなわち、母材)の外径が1.5mmであり、肉厚が0.075mmであり、内径が1.35mmであり、巻取ユニット60で巻き取られる金属管10の外径のターゲット値が1.0mm、内径のターゲット値が0.85mmであり、金属管10の肉厚が0.075mmの一定値となるように引き抜く場合、各引抜ユニット40における、引抜ダイス42の孔径、並びに、駆動キャプスタン48及び50の周速度は、以下のとおり設定される。

【表2】
【0065】
また、引抜ユニットコントローラ140は、ポテンショメータ158によって検出された、各ダンサアーム56の回動角に基づいて、当該ダンサアーム56の前段の引抜ユニット40に設けられた駆動キャプスタン50の回転速度をさらに制御する。
【0066】
すなわち、まず、ダンサ部52の前後にある駆動キャプスタン50と駆動キャプスタン48との間で、周速度に誤差が生じた場合、当該ダンサ部52のダンサアーム56が当該誤差に基づいて回動する。例えば、駆動キャプスタン50の周速度が、駆動キャプスタン48の周速度よりも遅い場合、ダンサアーム56は、図1における上方向に回動する。そして、ポテンショメータ158(速度差検出部の一例である。)が当該誤差(回動角)を検出し、引抜ユニットコントローラ140は、当該検出された誤差に基づいて、その前段にある駆動キャプスタン50の回転速度を制御する。
【0067】
これにより、ダンサ部52の前後にある駆動キャプスタン48及び50の周速度を略一定の速度に保つことができるので、各引抜ダイス42を通過する金属管10の内径を所望の大きさにすることができる。
【0068】
また、ダンサ部52(張力付与部の一例である。)は、隣接する2つの引抜ユニット40の間における、金属管10に張力を制御してもよい。これにより、引抜機100は、前段の引抜ユニット40で金属管10に付与された張力をリセットし、次段の引抜ユニット40に対して、所定の張力を有する状態で金属管10を送り出すことができる。
【0069】
(巻取ユニット60の動作)
巻取ユニット60は、巻出ユニット20から送り出され、各引抜ユニット40において引き抜かれた金属管10の線速度が略一定となるように、該金属管10を巻き取る。すなわち、巻取ユニットコントローラ160は、巻取ユニット60に供給される金属管10の線速度が略一定に維持されるように、巻取モータ180の回転数を制御する。
【0070】
本実施形態において、巻取ユニットコントローラ160は、例えば、巻取ユニット60の前段にある駆動キャプスタン50−nの回転数、すなわち、金属管10の線速度をフィードフォワード信号とし、ダンサアーム76の回動角をフィードバック信号として、巻取モータ180の回転数を制御する。具体的には、駆動キャプスタン50−nを通過する金属管10の線速度は、駆動キャプスタン50−nに設けられたエンコーダによって検出され、引抜ユニットコントローラ140に供給される。そして、巻取ユニットコントローラ160は、該線速度を示す速度信号をフィードフォワード信号として、巻取モータ180に供給して、巻取モータ180の回転を制御する。
【0071】
また、巻取ユニットコントローラ160は、ポテンショメータ178によって検出された該回動角に基づくフィードバック信号を生成し、巻取モータ180の回転を制御する。
【0072】
具体的に説明すると、巻取ユニットコントローラ160は、ポテンショメータ178が検出した、ダンサアーム76の該回動角と、ダンサアーム76が基準位置にあるときの回動角との回動角偏差を演算する。そして、巻取ユニットコントローラ160は、該回動角偏差がゼロに近づくように、巻取モータ180の回転速度を決定して、それに基づく回転速度指令を巻取モータ180に供給する。巻取ユニットコントローラ160は、該回動角偏差をフィードバック信号として、例えば、P制御、PI制御、PID制御等の制御によって、巻取モータ180の回転速度を制御する。
【0073】
巻取ユニット60は、以上の動作により、巻取ボビン80において既に巻き取られた金属管10の巻取量に拘らず、引抜ユニット40−nから送り出される金属管10の線速度(すなわち、駆動キャプスタン50−nにおける金属管10の線速度)を略一定に維持し、他方で、当該線速度とガイドローラ68及び70を通過する金属管10の線速度との間にずれが生じないように、該金属管10を巻取ボビン80において巻き取ることができる。
【0074】
本実施形態に係る引抜機100は、以上の構成及び動作により、所望の外径及び内径を有する金属管10を作成することができる。
【0075】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0076】
10・・・金属管、20・・・巻出ユニット、22・・・巻出ボビン、22・・・巻出モータ、24、26、28・・・ガイドローラ、32・・・ダンサ部、34・・・ダンサローラ、36・・・ダンサアーム、38・・・トルクモータ、40・・・引抜ユニット、42・・・引抜ダイス、44、46・・・ガイドローラ、50・・・駆動キャプスタン、60・・・巻取ユニット、66、68、70・・・ガイドローラ、72・・・ダンサ部、74・・・ダンサローラ、76・・・ダンサアーム、78・・・トルクモータ、80・・・巻取ボビン、100・・・引抜機、110・・・システムコントローラ、120・・・巻出ユニットコントローラ、122・・・巻出モータ、138・・・ポテンショメータ、140・・・引抜ユニットコントローラ、150・・・駆動モータ、160・・・巻取ユニットコントローラ、178・・・ポテンショメータ、180・・・巻取モータ、200・・・制御ユニット。
図1
図2