【実施例】
【0132】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0133】
下記の実施例及び比較例で得られた多孔質膜の物性および製造条件の各測定は、以下の方法で行った。
【0134】
(1)幹の太さの平均値の測定方法
1)膜断面
実施例及び比較例で得られた多孔質膜を凍結乾燥して、凍結した膜を折って得た断面をSEMで観察した。細孔が確認できる程度の倍率で膜厚方向に連続して観察した顕微鏡写真を撮影し、それらをつなげることで断面膜厚方向の連続的な写真を得た。得られた連続的な写真に、膜厚を横断するように垂直に直線を引き、更にその直線を、膜厚を3等分するように区切った。
【0135】
3等分した各層において、膜厚部を横断する直線上に存在する孔を全て抽出した。写真を画像処理ソフトに取り込み、抽出した各細孔について、隣り合う細孔との間の最短距離を測定し、幹の太さを得た。最も外側にある細孔は、膜の表面との間の距離を測定し、幹の太さを得た。
【0136】
なお、写真のコントラストが小さく画像処理ソフト上で細孔が認識しにくい場合は、写真のコピーの上に透明シートを重ね、その直線状に存在する孔を黒いペン等を用いて孔部分を黒く塗り潰し、その後透明シートを白紙にコピーすることにより、孔部分は黒、非孔部分は白と明確に区別できる。
【0137】
3等分した各層につき、幹の太さの平均値を得た。3層の内、中空糸膜の外表面から内表面に向かう方向に並んで、第1の層(a)、第2の層(b)、および第3の層(c)とし、また、第1の層(a)に連続する表面を表面A、第3の層(c)に連続する表面を表面Cとする。
【0138】
第1の層(a)において、表面Aに連続する、厚み10μmの層要素を第1の層要素(a1)として、第1の層要素(a1)における幹の太さの平均値S(a1)を算出した。その後、膜厚全体から、第1の層要素(a1)を除いた部分の幹の太さのプロファイルから、連続した厚み10μmの層要素であって、その幹の太さの平均値が、平均値S(a1)より小さくなる層要素が存在するかどうか確認した。
【0139】
なお、膜厚方向で孔径が大きく変化する場合は、同一直線状であれば、各層に付き孔径に応じて、観察する倍率を変えても良い。実施例及び比較例における多孔質膜は、第1の層(a)は5000倍、第2の層(b)は1000倍、第3の層(c)は500倍の倍率で観察した。
【0140】
2)膜表面C
実施例及び比較例で得られた多孔質膜を凍結乾燥して、表面Cを、SEMを用いて細孔が確認できる程度の倍率に拡大した。観察範囲は、任意の位置における、膜厚(μm)×膜厚(μm)の大きさの正方形として、その中に存在する幹を対象とした。表面Cに存在する、各細孔について、隣合う細孔の間の最短距離を幹の太さとした。そして、観察範囲内において、幹の太さが太いものから10本の平均値を求めた。
【0141】
(2)細孔の数の測定方法
上述した膜断面の幹の太さの平均値の測定と同様の方法で、SEMにより、実施例及び比較例で得られた多孔質膜の、断面膜厚方向の連続的な写真を得て、膜厚方向に膜厚部を横断するように垂直に直線を3等分し、膜厚を第1の層(a)、第2の層(b)、および第3の層(c)の3領域に区切った。第1の層(a)、第2の層(b)、および第3の層(c)において、膜厚部を横断する直線状に存在する孔の数を数え細孔を抽出した。て、その平均値を各層の孔の数とした。
【0142】
(3)平均孔径の測定方法
1)膜断面
上述した膜断面の幹の太さの平均値の測定と同様の方法で、SEMにより、実施例及び比較例で得られた多孔質膜の、断面膜厚方向の連続的な写真を得て、膜厚方向に膜厚部を横断するように垂直に直線を3等分し、膜厚を第1の層(a)、第2の層(b)、および第3の層(c)の3領域に区切った。上述した幹の太さの平均値の測定と同様の方法で、3等分した各層において、膜厚部を横断する直線上に存在する孔を全て抽出し、写真を画像処理ソフトに取り込んだ。抽出した全ての細孔について、面積から円相当径を算出して孔径とし、第1の層(a)、第2の層(b)および第3の層(c)の各層において、それぞれ孔径の平均値を計算した。
【0143】
2)膜表面A、C
上述した膜表面Cの幹の太さの平均値の測定と同様の方法で、実施例及び比較例で得られた多孔質膜を凍結乾燥して、表面A、Cを、SEMを用いて細孔が確認できる程度の倍率に拡大した。観察範囲は、任意の位置における、膜厚(μm)×膜厚(μm)の大きさの正方形として、その中に存在する細孔を対象とした。観察範囲内に含まれる細孔を全て抽出し、写真を画像処理ソフトに取り込んだ。抽出した全ての細孔について、面積から円相当径を算出して孔径とし膜表面A、Cにおいて、それぞれ孔径の平均値を計算した。
【0144】
(4)多孔質膜の内径、外径、及び外径と内径の比の測定
多孔質膜を、その長さ方向に直交する方向に円管状に薄く切りそれを測定顕微鏡で観察し、多孔質膜の内径(mm)、外径(mm)を測定した。得られた内径、外径から下記の式を用いて、外径と内径の比を算出した。
外径と内径の比 = 外径/内径
【0145】
(5)阻止孔径の決定法
粒子径が異なる4種類以上のポリスチレンラテックス粒子を用い、それぞれについて0.5wt%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液に、粒子濃度が0.01wt%になるように分散させ、ラテックス粒子分散液を調整した。それぞれのラテックス粒子分散液を多孔質膜でろ過し、ろ過前後の濃度の比から透過阻止率を求めた。このように求めた透過阻止率をプロットして、透過阻止率が90%となる粒子のサイズを算出し、そのサイズを阻止孔径とした。但し、前記4種類の粒子の中に透過阻止率50%以下の粒子サイズと90%以上の粒子サイズを最低1点以上含むように粒子サイズを選定する。
【0146】
(6)空孔率の測定方法
多孔質膜の膜束を約5cmの長さに切断し、120℃で重量が恒量になるまで充分に乾燥した。その重量を、乾燥膜の重量とした。この糸束を表面張力の小さいエタノール等の液体に浸漬し、微細孔を親水化した後、充分に水洗し、エタノールを水で完全に置換した。その後膜の表面に付着している余分な水を除去した後、膜重量を測定し、湿潤膜の重量とした。湿潤膜と乾燥膜の重量の差から、微細孔に浸み込んだ水の重量を求めた。多孔質膜の寸法から求めた体積と、微細孔に浸み込んだ水の体積から、体積比にて以下の式で空孔率を算出した。
空孔率(%)=微細孔に浸み込んだ水の体積/膜の体積 × 100
【0147】
(7)PVPの含有割合の測定
多孔質膜の1H−NMR測定を下記の条件で実施して、得られたスペクトルから以下の方法でPVPの含有割合を算出した。
[測定条件]
装置:JNM−LA400(日本電子株式会社)
共鳴周波数:400.05MHz
溶媒:重水素化DMF
試料濃度:5重量%
積算回数:256回
(ポリスルホン膜の場合)
1.85〜2.5ppm付近に現れるPVP(4H分)由来のシグナルの積分値(I
PVP)と7.3ppm付近に現れるポリスルホン(4H分)由来のシグナルの積分値(I
PSf)から、下記式によって算出した。
PVP含有割合(重量%)=111(I
PVP/4)/{442(I
PSf/4)+111(I
PVP/4)}×100
【0148】
(ポリエーテルスルホン膜の場合)
1.85〜2.5ppm付近に現れるポリビニルピロリドン(4H分)由来のシグナルの積分値(I
PvP)と8ppm付近に現れるポリエーテルスルホン(4H分)由来のシグナルの積分値(I
PES)から、下記式によって算出した。
PVP含有割合(重量%)=111(I
PVP/4)/{232(I
PES/4)+111(I
PVP/4)}×100
【0149】
(8)製造原液の溶液粘度測定
広口ビンに入れた製造原液を恒温槽に入れ、液温が二重管ノズルから押し出される温度になるように設定した。B型粘度計を用いて粘度の測定を行った。
【0150】
(9)疲労強度の測定(中空糸膜の場合)
長さ約7cm長に切断した中空糸膜を、70℃の乾燥機で、重量が恒量になるまで乾燥させた。これを、
図5に示すように、片方の端部は接着剤Pで封止し、もう片方の端部は、中空部が開口した状態で接着剤Qによって接続治具Rに固定し、中空部へ加圧が可能な形状のサンプルSを作製した。この時、接着部分の間の膜が露出した部分(有効長)が、3cmになるように調整した。サンプルの有効長の部分を、40重量%のエタノール水溶液に30分浸漬し、その後充分に水洗してエタノールを水に置換することで、多孔質の内部の空気を除去した。サンプルSを
図6に示すように、加圧方向を交互に変更(
図6に示す矢印P1方向(濾過時)と矢印P2方向(逆洗時)とに変更)できる装置に取り付け、水圧にて以下の条件で繰り返し加圧を行い、疲労により膜が破壊するまでの繰り返し回数を測定した。
・条件
・圧力
(イ) 濾過時(中空糸膜の場合、内側から外側に加圧):0.3MPa
(ロ) 逆洗時(中空糸膜の場合、外側から内側に加圧):0.2MPa
・時間
(イ) 濾過時:25秒
(ロ) 逆洗時:5秒
・温度
25±5℃
・結果の評価方法
膜が破壊することなく、30000回以上持てば非常に良好(◎)、15000以上30000回未満持てば良好(○)、10,000回以上15000回未満持てば実用上問題ない(△)とし、10000以上持たなかった場合には実用上問題あり(×)として評価した。
【0151】
(10)瞬時破裂強度の測定(中空糸膜の場合)
疲労強度の測定と同じように、長さ約7cm長に切断した中空糸膜を、
図5に示すように、片方の端部は接着剤Pで封止し、もう片方の端部は、中空部が開口した状態で接着剤Qによって接続治具Rに固定し、中空部へ加圧が可能な形状のサンプルSを作製した。これを、
図7に示すように、中空部に矢印P3方向に加圧できるようにして、0.02MPa/秒の速度で昇圧していき、膜が破壊する圧力を測定した。
【0152】
瞬時膜破裂強度が1.5MPa以上である場合には非常に良好(◎)、1.0MPa以上1.4MPa以下である場合には良好(○)、0.6MPa以上1.0MPa未満である場合には実用上問題ない(△)、0.6MPa未満である場合には実用上問題あり(×)として評価した。
【0153】
(11)純水透水量の測定(中空糸膜モジュールの場合)
実施例および比較例で得られた多孔質膜を用いて、有効長70cm、膜本数8本でモジュールを作製した。濾過圧力15kPaで、25℃の純水を用いて内圧濾過を行い、1分間に透過する液量を測定した。その値を単位膜面積当たり、1時間当たり、100kPaに換算して、純水透水量とした。
【0154】
(12)ビール透過性の測定
上述したモジュールを使用して、市販の未濾過ビール(アウグスビール オリジナル(アウグスビール株式会社製)を以下の条件で濾過した。
・条件
・モジュール入りの循環線速度:0.9m/s
・濾過量:100L/m
2/h(定流量濾過)
・温度:10±5℃
・ビール性状
・酵母濃度:10
4個/ml
・濁度:60NTU
濾過の終点は、TMP(膜間差圧)が0.1MPaに達した時点とした。ここで、TMPは以下の式で表される。
TMP(MPa)=
{モジュール入圧(MPa)+モジュール出圧(MPa)}/2−モジュール背圧(MPa)
・濾過性能の評価方法
・ビール透過量:TMPが0.1MPaに達するまでに濾過した、ビールの累積濾過量(ビール透過量)を計測することによって、濾過性能を評価した。すなわち、ビールの累積濾過量が多いほど濾過性能が高いものとして評価した。具体的には、ビールの累積濾過量が、500L/m
2/h以上の場合には良好(○)、100L/m
2/h以上500L/m
2/h未満である場合には実用上問題ない(△)、100L/m
2/h未満である場合には実用上問題あり(×)として評価した。
・濾液の酵母濃度:0であること
・濾液の濁度:3〜20NTUであること
【0155】
(13)濾過後の透水保持率の測定
上述した未濾過ビールを濾過した後のモジュールで、再度、前記(11)純水透水量の測定と同様の方法で純水透水量を測定し、濾過後の透水保持率を算出した。
濾過後の透水保持率(%)=濾過後の純水透水量/初期純水透水量×100
【0156】
(14)逆洗による透水保持率の測定
濾過後の透水保持率を測定後、以下の条件で逆洗を実施した。
・条件
・用いる液体:25℃の純水
・逆洗圧力:30kPa
・時間:5分間
逆洗後、再度純水透水量を測定し、逆洗による透水保持率を以下の式で求めた。
逆洗による透水保持率(%)=逆洗後の純水透水量/初期純水透水量×100
【0157】
逆洗後の透水保持率が、90%以上の場合には良好(○)、70%以上90%未満である場合には実用上問題ない(△)、70%未満である場合には実用上問題あり(×)として評価した。
【0158】
この逆洗後の透水保持率が確保されていれば、本発明のビールの製造方法における逆洗工程の後の第二の濾過工程においても、十分な濾過性能を達成できているといえる。
【0159】
また、実施例1〜9の中空糸膜の製造条件を表1に示し、得られた中空糸膜の性質を表2に示し、得られた中空糸膜の評価結果を表3に示す。また、実施例10〜18の中空糸膜の製造条件を表4に示し、得られた中空糸膜の性質を表5に示し、得られた中空糸膜の評価結果を表6に示す。
【0160】
[実施例1]
ポリスルホン(SOLVAY ADVANCED POLYMERS社製、Udel P3500)20重量%、PVP(BASF社製、Luvitec k90)10重量%を、NMP64.5重量%に70℃で撹拌溶解し、グリセリン5.5重量%を加えてさらに撹拌し製造原液を調整した。一方、内部凝固液として、NMP90重量%と純水10重量%の混合液を作製した。製造原液を61℃に温調し、二重管状ノズルの外側から吐出し、同時に内部凝固液を二重管状ノズルの内側から吐出して、空走部分を0.5秒間通過させたのち、外部凝固液で凝固させ、紡速10.5m/minで巻取り、中空糸多孔質膜を作製した。外部凝固液は純水を用い、外部凝固液が入った浴槽は、84℃に温調した。このとき、膜が通過する空走部分とその下の外部凝固液は、温調可能な一体型の筒状物で覆い、空走部分の温度が約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。
【0161】
この時、筒状物が外部凝固液に浸漬している深さは5cmであり、この間の中空糸膜の滞留時間は、0.29秒であった。また、空走部分の温度と筒状物に覆われた部分の外部凝固液の温度の実測値は、空走部分が90.1℃、筒状物に覆われた部分の外部凝固液が89.2℃であり、温度が等しいことを確認した。
【0162】
筒状物は、直径113mmの円筒状のものを使用し、空走部分の長さは85mmとした。この時の筒状物内の空間の体積は852cm
3であり、水蒸気量は、0.37g、絶対湿度は431g/m
3であった。
【0163】
その後、多孔質膜を水中で脱溶媒を行った後、遊離塩素濃度100ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中で、50℃で1.5時間PVPを分解処理した後、90℃で1.5時間熱水洗浄を行い、多孔質中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、内径1.55mm、外径2.48mmで、外内径比は1.60であった。
【0164】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が高く、ビールの濾過性能も良好で、かつ逆洗による透水回復性も良好であった。
【0165】
[実施例2]
製造原液の組成を、ポリスルホン22重量%、PVP(BASF社製、Luvitec k90)10重量%、NMP62.5重量%、グリセリン5.5重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0166】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が更に向上したが、ビールの濾過性は、透過性がやや低下した。また、逆洗による透水回復性は良好であった。
【0167】
[実施例3]
製造原液の組成を、ポリスルホン18重量%、PVP(BASF社製、Luviteck80)15重量%、NMP62重量%、グリセリン5.0重量%とし、一体型の筒状物の空走部分の温度を、約75℃になるように調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0168】
得られた膜は、繰り返し疲労強度がやや低下したが、使用上は問題ない程度であった。ビールの濾過性、逆洗による透水回復性は良好であった。
【0169】
[実施例4]
筒状物が外部凝固液に浸漬している深さを2cmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。このとき、中空糸膜が筒状物で覆われた部分の外部凝固液の滞留時間は、0.11秒であった。
【0170】
得られた膜は、繰り返し疲労強度、ビールの濾過性は良好であった。逆洗による透水回復性がやや低下したが、使用上は問題ない程度であった。
【0171】
[実施例5]
筒状物が外部凝固液に浸漬している深さを15cmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。このとき、中空糸膜が筒状物で覆われた部分の外部凝固液の滞留時間は、0.86秒であった。
【0172】
得られた膜は、繰り返し疲労強度、ビールの濾過性は良好であったが、逆洗による透水回復性がやや低下したが、使用上は問題ない程度であった。
【0173】
[実施例6]
筒状物が外部凝固液に浸漬している深さを5cmとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。このとき、中空糸膜が筒状物で覆われた部分の外部凝固液の滞留時間は、0.03秒であった。
【0174】
実施例6で得られた膜では、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、第1の層要素(a1)に存在する細孔の数よりも細孔の数が多い厚み10μmの層要素は存在しなかった。
【0175】
得られた膜は、繰り返し疲労強度、ビールの濾過性は良好であったが、逆洗による透水回復性が低下した。
【0176】
[実施例7]
一体型の筒状物の空走部分の温度を、約55℃になるように調整した以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度と筒状物に覆われた部分の外部凝固液の温度の実測値は、空走部分が55.0℃、筒状物に覆われた部分の外部凝固液が54.8℃であり、温度が等しいことを確認した。空走部分の相対湿度は100%とした。筒状物の内部の空間部分の水蒸気量は、0.089g、絶対湿度は104g/m
3であった。
【0177】
得られた膜は、繰り返し疲労強度、ビールの濾過性、逆洗による透水回復性は良好であった。
【0178】
[実施例8]
一体型の筒状物を、直径が185mmの円筒状のものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時の筒状物内の空間の体積は2284cm
3であり、水蒸気量は、0.98gであった。
【0179】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性は向上したが、濾液の濁度の上昇が見られた。逆洗による透水回復性もやや低下が見られた。
【0180】
[実施例9]
一体型の筒状物を、直径が30mmの円筒状のものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時の筒状物内の空間の体積は18cm
3であり、水蒸気量は、0.0075gであった。
【0181】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性がやや低下した。また、逆洗による透水回復性は良好であった。
【0182】
[実施例10]
一体型の筒状物を、直径が200mmの円筒状のものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時の筒状物内の空間の体積は2669cm
3であり、水蒸気量は、1.2gであった。
【0183】
製膜中に、空走部分の水蒸気により膜に結露が生じ、部分的に小孔径となる構造の不均一性が発生した。
【0184】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性は向上したが、濾液の濁度の上昇が見られた。逆洗による透水回復性は低下が見られた。
【0185】
[実施例11]
内部凝固液の組成を、NMP75重量%、純水25重量%の混合液とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0186】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性がやや低下したが、使用上は問題ない程度であった。逆洗による透水回復性は良好であった。
【0187】
[実施例12]
内部凝固液の組成を、NMP98重量%、純水2重量%の混合液とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0188】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が高く、ビールの濾過性能も良好で、かつ逆洗による透水回復性も良好であった。
【0189】
[実施例13]
内部凝固液の組成を、NMP65重量%、純水35重量%の混合液とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0190】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性の低下が見られた。逆洗による透水回復性は、やや低下が見られた。
【0191】
[実施例14]
内部凝固液の組成を、NMP50重量%、純水50重量%の混合液とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0192】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性に顕著な低下が見られた。逆洗による透水回復性は良好であった。
【0193】
[実施例15]
製造原液の吐出量を調整し、外径を太くしたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜は、内径1.55mm、外径3.50mmで、外内径比は2.26であった。
【0194】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が更に向上したが、ビールの濾過性は、透過性が低下した。また、逆洗による透水回復性は良好であった。
【0195】
[実施例16]
製造原液の組成を、ポリスルホン20重量%、PVP(BASF社製、Luviteck30)15重量%、NMP62重量%、グリセリン5.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0196】
得られた膜は、繰り返し疲労強度の低下が見られたが、使用上問題ない範囲であった。また、ビールの濾過性は透過性がやや低下したが、使用上問題ない範囲であった。逆洗による透水回復性は良好であった。
【0197】
[実施例17]
製造原液の組成を、ポリエーテルスルホン20重量%、PVP(BASF社製、Luviteck90)10重量%、NMP64.5重量%、グリセリン5.5重量%とし、内部凝固液の組成を、NMP75重量%、純水25重量%の混合液としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0198】
得られた膜は、繰り返し疲労強度は良好であった。ビールの濾過性は、透過性にやや低下が見られたが、使用上問題ない範囲であった。逆洗による透水回復性はやや低下が見られた。
【0199】
[実施例18]
製造原液の組成を、ポリスルホン20重量%、ポリエチレングリコール(Clariant社製、POLYGLYKOL 35000 S)15重量%、NMP62重量%、グリセリン5.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0200】
得られた膜は、繰り返し疲労強度の低下が見られたが、使用上問題ない範囲であった。また、ビールの濾過性は透過性に低下が見られた。また、PVPを含有しないことで、被濾過物の膜への吸着が起こり、逆洗による透水回復性は低かった。
【0201】
[実施例19]
製造原液の組成を、ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製Kynar741)18重量%、PVP(BASF社製、Luviteck90)14重量%、ジメチルアセトアミド65重量%、グリセリン3重量%、内部凝固液としてジメチルアセトアミド90重量%と純水10重量%の混合液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。
【0202】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が高く、ビールの濾過性能も良好であったが、逆洗による透水回復性はやや低下がみられた。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0203】
次に比較例について説明する。比較例1〜8の中空糸膜の製造条件を表7に示し、得られた中空糸膜の性質を表8に示し、得られた中空糸膜の評価結果を表9に示す。
【0204】
[比較例1]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部の温度は、約84℃になるように調整した。
【0205】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が90.0℃、外部凝固液の液面の温度が81.2℃であり、温度が異なっていた。
【0206】
比較例1によって得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0207】
また、得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0208】
[比較例2]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例1と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約84℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部温度は、約84℃になるように調整した。
【0209】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が84.3℃、外部凝固液の液面の温度が81.0℃であり、温度が異なっていた。
【0210】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0211】
また、得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0212】
[比較例3]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例2と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部の温度は、約84℃になるように調整した。
【0213】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が90.0℃、外部凝固液の液面の温度が80.1℃であり、温度が異なっていた。
【0214】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0215】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0216】
[比較例4]
ポリスルホン18重量%、PVP(BASF社製、Luvitec k80)15重量%を、NMP62重量%に70℃で撹拌溶解し、グリセリン5重量%を加えてさらに撹拌し製造原液を調整した。一方、内部凝固液として、NMP90重量%と純水10重量%の混合液を作製した。製造原液を61℃に温調し、二重管状ノズルの外側から吐出し、同時に内部凝固液を二重管状ノズルの内側から吐出して、50mmの空走部分を0.46秒間通過させ、80℃の純水の外部凝固液で凝固させた。そして、紡速6.5m/minで巻取り、中空糸多孔質膜を作製した。外部凝固液が入った浴槽は、75℃に温調した。このとき、膜が通過する空走部分のみを温調可能な底面積38cm
2の筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態として、空走部分の温度が75℃になるように調整し、相対湿度は100%(絶対湿度240g/m
3)にした。
【0217】
このとき、空走部分の温度と筒状物に覆われた部分の外部凝固液の温度の実測値は、空走部分が75.0℃、筒状物に覆われた部分の外部凝固液が70.2℃であり、温度が異なることを確認した。
【0218】
筒状物内の空走部分の体積は190cm
3であり、水蒸気量は、0.05gであった。その後、多孔質膜を水中で脱溶媒を行った後、遊離塩素濃度2000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中で、15時間PVPを分解処理した後、90℃で3時間熱水洗浄を行い、多孔質中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は、内径1.41mm、外径2.32mmで、外内径比は1.65であった。
【0219】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0220】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0221】
[比較例5]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例9と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部の温度は、約84℃になるように調整した。
【0222】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が89.8℃、外部凝固液の液面の温度が80.3℃であり、温度が異なっていた。
【0223】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0224】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0225】
[比較例6]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例14と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部の温度は、約84℃になるように調整した。
【0226】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が90.0℃、外部凝固液の液面の温度が80.4℃であり、温度が異なっていた。
【0227】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0228】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0229】
[比較例7]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例15と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部の温度は、約84℃になるように調整した。
【0230】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が90.1℃、外部凝固液の液面の温度が79.9℃であり、温度が異なっていた。
【0231】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0232】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【0233】
[比較例8]
空走部分のみを温調可能な筒状物で覆い、その下の外部凝固液は覆わない状態とした以外は、実施例18と同様の方法で中空糸膜を作製した。この時、空走部分の温度は約90℃になるように調整し、相対湿度は100%にした。また、外部凝固液の内部の温度は、約84℃になるように調整した。
【0234】
空走部分の温度と、外部凝固液の液面の温度の実測値は、空走部分が90.0℃、外部凝固液の液面の温度が80.3℃であり、温度が異なっていた。
【0235】
得られた膜においては、第1の層要素(a1)以外の第1〜第3の層(a)〜(c)の中に、幹の太さの平均値が、第1の層要素の幹の太さの平均値S(a1)よりも小さい、連続した10μmの層要素が存在しなかった。
【0236】
得られた膜は、繰り返し疲労強度が低く、濾過/逆洗が繰り返される環境において、長期の使用に耐えない結果であった。
【表7】
【表8】
【表9】