(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827031
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の選択的製造のための改良方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/267 20060101AFI20210128BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210128BHJP
【FI】
C07D207/267
!C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-504889(P2018-504889)
(86)(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公表番号】特表2018-522903(P2018-522903A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】IN2016050141
(87)【国際公開番号】WO2017021976
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】2353/DEL/2015
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ インドラジット クマール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン スーマン ラタ
(72)【発明者】
【氏名】カトリ プラヴィーン クマール
(72)【発明者】
【氏名】レイ シッダールト サンカー
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ マドゥカー オンカーナス
【審査官】
安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−507830(JP,A)
【文献】
特開2001−302625(JP,A)
【文献】
特開2012−239924(JP,A)
【文献】
特開平10−182510(JP,A)
【文献】
特開平10−158238(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101514178(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第1712396(CN,A)
【文献】
特開2013−194012(JP,A)
【文献】
特開2013−95700(JP,A)
【文献】
Journal of Organic Chemistry,1994, Vol.59, No.14,p.3998-4000
【文献】
Catalysis Communications,2002, Vol.3, No.8,p.349-355
【文献】
Bulletin of the Chemical Society of Japan,1977, Vol.50, No.10,p.2517-2521
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の選択的製造のための方法であって、該方法が、以下の段階:
a) 供給原料の、水性形状にあるモノメチルアミン(MMA)およびγ-ブチロラクトン(GBL)を、単一段階で、連続的に攪拌されたタンク反応器(CSTR)内で、1〜2の範囲のMMA対GBLのモル比にて、400〜500m2/gという比表面積をもつ、70〜100というSiO2対Al2O3のモル比を持つゼオライト物質の類であるブレンステッド型の酸性支持体からなり、かつ該支持体の1〜30質量部という金属配合量の割合にまで、Al、Zr、Wから選択される1種または複数の金属の酸化物により改質された触媒の存在下で、全供給原料の1〜10%の間の触媒含有率で、温度130〜250℃および圧力5〜70bar(約0.5〜約7MPa)の操作条件にて、500〜1,000rpmという攪拌速度にて、30〜180分間という期間に渡り反応させて、反応混合物を得る段階;
b) 該反応混合物を、20〜25℃の範囲の温度まで冷却する段階;
c) 公知の方法により、段階b)の該反応混合物から該触媒を分離する段階;
d) 蒸発または蒸留により、段階c)の反応混合物からその生成物を分離して、≧99%に達する選択率、≧98%に達するGBLの転化率にて、NMPを得る段階;
e) 該段階a)〜d)を数回に渡り繰返した後に、反応器に該触媒をリサイクルする段階、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記MMAが、40%までの質量基準の濃度を持つ水性形状で使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒における金属配合量の質量割合が5〜20である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記触媒の配合において使用される前記支持体が、80〜90というSiO2対Al2O3のモル比および420〜450m2/gという比表面積を持つ、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記全供給物質に関して使用される触媒の量が、1〜5質量%の範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記使用される触媒が、20〜30メッシュという粒度までの粉末形状にある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
数回の実施に渡り使用された前記触媒が、還流下で60〜90℃の温度にて溶媒と共に攪拌し、かつ6〜12時間という期間に渡り、80〜110℃にてオーブン内で乾燥した後に、リサイクルされる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
リサイクル使用のために前記触媒を洗浄する目的で使用される前記溶媒が、アセトン、ジメチレンクロリド、ベンゼン、石油エーテルのような低沸点化学物質から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
NMPの純度が99.99%である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
回収された未反応のモノメチルアミンがリサイクルされる、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の選択的製造のための改良方法に関する。より詳しくは、本発明は、γ-ブチロラクトンおよび好ましくは水性形状にあるモノメチルアミンから、先行文献により公知の方法よりも穏やかな操作条件にて、単一段階で、触媒の存在下における、1-メチル-2-ピロリドンの製造を扱う。該触媒は、多数回の実験に対して、活性を失うことなしにリサイクルすることができ、また頻繁に再生する必要がない。NMPは、電気化学的および石油化学的工業における溶媒として使用される。
【背景技術】
【0002】
N-メチル-2-ピロリドンまたは1-メチル-2-ピロリドン(NMP)は、用途が広くかつ非常に有用な化学物質であり、これは、電気化学から石油化学工業に及ぶ多種多様な最終用途における、大規模かつ多様な応用が見出されている。NMPは、より高い熱的安定性、無毒性を示し、また低粘度を有し、このことは、該NMPを、化学合成において使用するのに、および半導体の調製のために非常に有用なものとしている。これは、本来的に無色であり、あるいはその中に存在する不純物のレベルに応じて黄色である可能性もある。NMPは、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシド等の如き、一群の双極性非プロトン系溶媒に属している。不揮発性および多様な化学物質を溶解する能力のために、NMPは、石油化学的処理中に特定の高価値炭化水素を抽出および回収するための、例えば分解C
4流からの1,3-ブタジエン、およびナフサ/熱分解ガソリンからの芳香族物質(BTX)の回収等々における溶媒として使用される。ストリームクラッカー(stream crackers)からの分解C
4流由来の、NMP抽出された1,3-ブタジエンは、これまでのところポリマー工業用の主な1,3-ブタジエン源である。同様に、NMPの良好な溶解特性は、生地、樹脂および金属被覆プラスチックの表面処理用の溶媒として、あるいは塗料除去剤として、該NMPを、ポリマー工業において極めて有用なものとしている。これは、ポリフェニレンスルフィドの商業的製造における溶媒として使用される。医薬品工業においては、N-メチル-2-ピロリドンは、経口および経皮送達経路両者を経由する薬物の処方において使用される。
【0003】
NMPの工業的製造が、専らγ-ブチロラクトン(GBL)とモノメチルアミン(MMA)との、管状反応器、例えばシャフト反応器(shaft reactor)内で、200〜350℃の温度にて、過圧下、例えば約10MPaでの反応により行われている(工業化学に係るウルマンの百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry), 第5版, 1993, Vol. A22, pp.458-459)ことを述べておくことは適切なことである。
出発物質としてのγ-ブチロラクトンおよびモノメチルアミン(MMA)からのNMPの合成に関する数例のその他の方法がある。
日本の三菱化学工業社(Mitsubishi Chemical Industries Co. Ltd. of Japan)による数例の特許(JP 7,221,420;JP 7,400,259;JP 7,420,585;JP 7,642,107)を参照することができ、そこでは出発物質としてGBLおよびMMAを使用するNMPを合成するための連続的方法が記載されている。NMPの製造は、水とショットGBLとの間の高いモル比(典型的に、1モルのGBLにつき、3〜4モルの範囲の水)を用いた反応により、および大量のMMAの存在(典型的に、1モルのGBLにつき1.4〜3モルのMMAという範囲のモル比)に基いて行われた。
バラジアミンズリミテッド(Balaji Amines Limited)社に譲渡された、インド特許出願第4/MUM/2007号(公開番号39/2008)は、γ-ブチロラクトン(GBL)およびモノメチルアミン(MMA)からの、所望のモル比にて、200〜300℃の範囲の温度および約3.04〜約9.12MPa(30〜90atm. (atmospheric))の範囲の圧力にて、15〜150分間という滞留時間に渡り操作される一連の反応器内での、NMPの製造方法を開示している。このようにして得られるNMPが、純度99.7%以上および90%を超える収率であると報告されている。
【0004】
バスフ(BASF)社に譲渡された米国特許第6,348,601 B2号を参照することができ、この特許は、第一段階において、アンモニアとメタノールとを、300〜500℃の範囲の高温および1,500〜3,000kPaの範囲の圧力にて、固体酸触媒および水素の存在下で反応させ、その後アンモニアを分離することによりモノメチルアミン、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンを含む混合物を調製し、また次いで第二段階において、メチルアミンを含む該混合物とγ-ブチロラクトン(GBL)とを、1.05〜1.5の範囲のモノメチルアミン対GBLのモル比で、230〜270℃の温度および約5〜約15MPa(50〜150bar)の圧力にて、2〜4時間という滞留時間に渡り反応させることによる、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の製造方法を開示している。この複雑な方法は、95%またはこれを超える選択度、99%というGBLの転化率にてNMPを与える。
パントシム(Pantochim) S.A.に譲渡された米国特許第6,248,902 B1を参照することができ、この特許はN-メチル-ピロリドンの製造方法を記載しており、該ピロリドンは、γ-ブチロラクトンとモノメチルアミンとの反応によって得られ、そこで該合成は、直列に接続された3つの異なる反応段階を経由する、液相内での連続的な非触媒法によって実施される。三機の反応器は、150〜310℃の範囲の温度および約3.04〜約9.12MPa(30〜90atm)という圧力および5〜180分間という滞留時間にて稼働され、これらは、95%またはこれを超えるNMPに対する選択度と共に、98%を超えるGBLの転化率を与える。
【0005】
バスフ(BASF)社に譲渡された米国特許第6,987,191 B1号を参照することができ、この特許は、同様に連続的な工程において、高純度のN-メチル-2-ピロリドンを高収率で製造することを可能とするような稼働条件で、出発物質としてγ-ブチロラクトンおよび混合メチルアミンを使用する、N-メチルピロリドンの製造方法を開示している。同様に、この方法は、150〜310℃の範囲の操作温度および約4.05〜約10.1MPa(40〜100atm)の圧力にて、15〜180分という滞留時間に及ぶ、連続する3つの段階からなっている。GBLおよびNMPに係る転化率および選択度は、夫々98%および95%を超えるものと報告された。
Chem. abstracts, 124: 145893 (CN-A-11046 35)を参照することができ、このものは、220〜290℃および26MPa(260bar)におけるGBLとMMAとの反応によるNMPの合成を説明している。1:1.4:5.6という質量比の、GBL、30%濃度の水性MMAおよび水からなる混合物の、280℃および6MPa(60bar)でのバッチ式反応は、97%の収率でNMPを与える。上記の質量比は、1:1.2:26.7というGBL:MMA:H
2Oのモル比(該MMA溶液中の水を考慮しない)、あるいは1:1.2:31.5というモル比(該MMA溶液中の水を考慮した場合)に相当する。
Chem. abstracts, 129:67694 (JP-A2-10158238)を参照することができ、このものは、250〜300℃にて、GBLと1.03〜1.50モル当量のMMAとの、1.0〜2.9モル当量の水の存在下での反応に関する。1:1.1:1というモル比でのGBLとMMAおよび水との、280℃における1時間に及ぶバッチ式反応は、99.9%の収率でNMPを与える。
Derwent abstract 1998-607722, Chem. Abstracts, 134:178463 (RO-B1-113640)を参照することができ、これらは、2-段階手順で、液相においてNMPを連続的に製造するための方法に係る。その第一段階における反応条件は、1:1.2:2.1というGBL、MMAおよび水のモル比、150〜170℃の温度および約9〜約10MPa(90〜100bar)の圧力である。その第二の段階における反応条件は、280〜290℃および約9〜約10MPa(90〜100bar)である。
【0006】
Chem. abstract, 82:139947 (JP-B4-49 020 585)を参照することができ、これは、1部のGBLと2部のモノメチルアミンおよび2〜4部の水(1:5.5:9.6〜19.1というモル比)を、250℃において2時間に渡り反応させて、99%の収率でNMPを得ることを記載している。この反応のための温度範囲は、一般に200〜300℃、特に230〜300℃である。
Chem. abstract, 87:5802 (JP-A2-49 041364)を参照することができ、このものは、1:1.4:4混合物(1:3.9:19.1というモル比)としての、GBLとモノメチルアミンおよび水との、250℃および約4.4〜約4.9MPa(44〜49bar)という圧力における反応を開示している。
バスフ(BASF)社に譲渡された米国特許第7,227,029 B2号を参照することができ、この特許は、γ-ブチロラクトン(GBL)とモノメチルアミン(MMA)とを液相内で反応させることによる、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の連続的製造のための方法を記載しており、そこでGBLおよびMMAは、1:1.08〜1:2というモル比で使用され、また該反応は、320〜380℃および約7〜約12MPa(70〜120bar)という絶対圧力にて、反応器の単位容積当たり1.4kg/時のGBLという空間速度にて行われる。この方法は、98%を超えるGBLの転化率の下で、98%を超える選択度にてNMPを与える。この方法は、竪型の管型反応器の使用を要求し、該反応器において、該モノメチルアミンおよび該GBLは、該反応器の底部において、2つの流体インジェクタを通して別々に供給されるが、その供給混合物が、10質量%未満の水を含むことを条件としている。
【0007】
モンサント(Monsanto)社に譲渡された米国特許第2,964,535号を参照することができ、この特許は、水性溶液においてアルカリ金属水酸化物で処理し、その後蒸留することによる、NMPの精製法に関連している。
液相における熱工程は高いNMP収率へと導くが、該工程は以下のような欠点を被る:
a. 該液相において該反応を行うための高い圧力要件は、高い資本および運転コストと関連する、高い工業技術的支出を伴う;
b. 高温および高圧下での水性メチルアミン溶液に係る高い腐蝕率は、装置の寿命を減じ、かつそれ故に該プラントの設備投資および運用コストを高める;
c. NMPの高い空時収量を獲得するための多数の反応段階は、高い資本および運転コストと関連する。
ミツビシ(Mitsubishi)により記載された方法は、同様に過剰のMMAの分離およびその回収および合成水が加算される(反応したGBL1モルに対して水1モル)、該反応器に送られる水の分離に関連する高いコストの観点からも不利である。
過剰のMMAおよび水の存在下での上記連続的な反応と関連する上記障害を回避するために、別の方法が提案されており、またこれらは触媒の使用に基いている。
モービルオイル(Mobil Oil)社の所有するドイツ特許第2,159,858号を参照することができ、そこでは、13X型ゼオライトの存在下における、GBLおよびMMAを用いた合成が記載されている。
【0008】
アクゾ(AKZO)社の所有するドイツ特許第4,203,527号を参照することができ、ナックス(Nax)型ゼオライト上での、275℃という温度における、気相中での、GBL、MMAおよび水蒸気が関与する合成が記載されている。
上述の方法は、工業的応用においては成功しておらず、その理由は、再生を必要とする上述した触媒の使用が、非触媒的方法と比較して、この方法の経済収支の観点から不利であることにある。
従って、NMPを製造するための従来技術の方法に係る全体としての欠点は、以下の通りである:
a. 液相内で上記反応を行うための高い圧力要件は、高い資本および運転コストと関連する、高い工業技術的支出を伴う;
b. 高温および高圧下での水性メチルアミン溶液に係る高い腐蝕率は、装置の寿命を減じ、かつそれ故にそのプラントの設備投資および運用コストを高める;
c. NMPの高い空時収量を獲得するための多数の反応段階は、高い資本および運転コストと関連する;
d. 過剰のMMAの分離およびその回収および該MMAの分離に関連する高いコスト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、工業的な見地に基く本発明の必要性は、頻繁に再生する必要のない触媒の存在下で、文献記載の従来技術に従う条件よりも一層穏やかな条件の下で、典型的なGBL対MMAのモル比にて、GBLおよび好ましくは水性形状にあるMMAからNMPを製造するために最も重要である。もう一つの本発明の可能性ある側面は、NMPが、≧99%という極めて高い選択度にて、≧99%というGBLの転化率にて製造されることから、該生成物の低い分離コストである。
本発明の一つの目的は、上記従来の方法に係る欠点を排除し、かつ高い収率でNMPを製造するための一段階接触法を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、単一の段階で、供給物質として、γ-ブチロラクトンおよびモノメチルアミンを用いる、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を選択的に製造するための改良法を提供することにあり、該モノメチルアミンは、好ましくは40質量%までの範囲の水性溶液中の該アミンの濃度を持つ水性形状(aqueous form)にある。
本発明の更に別の目的は、従来の文献記載の技術において述べられている操作条件よりも穏やかな操作条件、即ち130〜250℃、好ましくは150〜200℃の温度および約0.5〜約7MPa(5〜70bar)、好ましくは約2〜約3MPa(20〜30bar)の圧力にて、かつ30〜180分間、好ましくは60〜120分間という滞留期間に渡り、酸性支持体、好ましくはブレンステッド型酸性支持体からなり、かつAl、Zr、W等の如き金属の内の酸化物の少なくとも1種またはその組合せにより、質量百分率で1〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは10〜15という金属配合量にまで改質された触媒の存在下でのバッチ式操作により、NMPを製造するための改良法を提供することにある。
本発明の更にもう一つの目的は、水性形状にあるMMAおよびGBLを、1:1〜1:2、好ましくは1:1〜1:1.5、より好ましくは1:1〜1:1.15というGBL対MMAのモル比にて使用して、≧99%という選択度にて、≧99%のGBLの転化率で、NMPを製造するための改良法を提案することにある。
本発明のもう一つの目的は、供給原料としてのGBLおよびMMAからNMPを選択的に製造するために、頻繁な再生無しに、触媒を効率的にリサイクルするための改良法を提案することにある。
本発明の更なる目的は、従来技術において述べられている方法と比較して、より低コストにて、GBLおよびMMAからNMPを選択的に製造するための方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、N-メチル-2-ピロリドンを選択的に製造するための改良方法を提供するものであり、該方法は、以下の段階を含む:
a) 供給原料の、好ましくは水性形状にあるモノメチルアミン(MMA)およびγ-ブチロラクトン(GBL)を、単一の段階で、連続的に攪拌されたタンク反応器(CSTR)内で、1〜2の範囲のMMA対GBLのモル比にて、400〜500m
2/gという比表面積を持ち、70〜100というSiO
2対Al
2O
3のモル比を持つゼオライト物質の類であるブレンステッド型酸性支持体からなり、かつ該支持体の1〜30質量部という金属配合量(metal loading)の割合にまで、Al、Zr、Wから選択される1種または複数の金属の酸化物により改質された触媒の存在下で、全供給原料の1〜10%の間の触媒含有率で、温度130〜250℃および圧力5〜70という操作条件下で、500〜1,000という攪拌速度にて、30〜180分間という期間に渡り反応させる段階;
b) 該反応混合物を、20〜25℃という範囲の温度まで冷却する段階;
c) 公知の方法により、段階b)の該反応混合物から該触媒を分離する段階;
d) 蒸発または蒸留により段階c)の反応混合物からその生成物を分離して、≧99%に達する選択率にて、≧98%に達するGBLの転化率(conversion)にて、NMPを得る段階;
e) 該段階a)〜d)を数回に渡って繰返した後に、反応器に該触媒をリサイクルさせる段階。
本発明の一態様において、上記MMAは、好ましくは40%までの質量基準の濃度を持つ水性形状で使用される。
本発明のもう一つの態様において、触媒における金属配合量に係る質量割合は、好ましくは5〜20、より詳しくは10〜15である。
【0011】
本発明の更にもう一つの態様において、上記触媒の配合(formulation)において使用される上記支持体は、80〜90という好ましいSiO
2対Al
2O
3のモル比および420〜450m
2/gという好ましい比表面積を持つ。
本発明の更に別の態様において、上記全供給物質について使用される触媒の量は、好ましくは1〜5質量%の範囲にある。
本発明の更に別の態様において、使用される上記触媒は、粒度20〜30メッシュまでの粉末形状にある。
本発明のもう一つの態様において、数回の実施(several runs)に対して使用された上記触媒は、還流下で60〜90℃の温度にて溶媒と共に攪拌し、かつ80〜110℃にて6〜12時間の期間に渡りオーブン内で乾燥した後に、リサイクルされる。
本発明の更に別の態様において、リサイクル使用するために上記触媒を洗浄する目的で使用される上記溶媒は、アセトン、ジメチレンクロリド、ベンゼン、石油エーテルのような低沸点化学物質から選択される。
本発明の更に別の態様において、NMPの純度は99.99%である。
本発明の更に別の態様において、回収される未反応のモノメチルアミンは、リサイクルされる。
本発明の一態様において、γ-ブチロラクトン、および好ましくは水性形状にあるモノメチルアミンは、NMPを選択的に製造するための原料物質として使用される。
本発明の更に別の態様において、使用される適切な触媒は、酸性支持体で構成され、かつAl、Zr、W等の金属の1種またはその組合せからなる金属酸化物により、1〜30、好ましくは5〜20、より具体的には10〜15という金属配合量の質量割合にて改質されている。
【0012】
本発明の更に別の態様において、使用される上記触媒は、過剰量の低沸点溶媒、好ましくは脱イオン水中に、適量の上記金属のプリカーサ塩を溶解し、および該溶液を、好ましくは粉末形状にある上記支持体と接触状態に置き、およびこの混合物を40〜60℃の範囲の温度にて、スラリーが得られるまで攪拌し、次いで110℃にて6〜12時間、好ましくは8〜10時間に渡りオーブン内で乾燥し、および最終的に450℃にて3〜6時間、好ましくは4〜5時間に渡り、空気を連続的に流しつつ焼成することによる、従来のインシピエントウェットネス(incipient wetness)含浸法によって製造される。
本発明の更に別の態様において、上記全供給材料に関して使用される触媒の量は、1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の範囲にある。
本発明の更に別の態様において、使用される上記触媒は、20〜30メッシュという粒度までの粉末形状にある。
本発明の更に別の態様において、上記触媒は、濾過により反応混合物から分離され、また更なる反応のために単にリサイクルされる。
本発明の更に別の態様において、数回の実験に対して使用された上記触媒は、溶媒と共に、60〜90℃にて還流下で攪拌し、および6〜12時間という期間に渡り80〜110℃にてオーブン内で乾燥した後に、リサイクルされる。
本発明の更に別の態様において、リサイクル使用のために上記触媒を洗浄する目的で使用される上記溶媒は、アセトン、ジメチレンクロリド、ベンゼン、石油エーテル等のような低沸点化学物質の中の一つであり得る。
本発明の更に別の態様において、純粋なNMP(99.99%)は、上記生成物の混合物中に残されている水およびメチルアミンを蒸発させることにより得られる。
本発明の更に別の態様において、回収される未反応のモノメチルアミンは、リサイクルされる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に従えば、上記方法は、単一段階によるバッチ式操作で、典型的なCSTR内で、触媒の存在の下に、好ましくは水性形状にあるモノメチルアミン(MMA)とγ-ブチロラクトンとを反応させることによる、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の製造に関連する。別の方法において、好ましくは水性形状にあるMMAが、約0.5〜約7MPa(5〜70bar)、好ましくは約2〜約3MPa(20〜30bar)の圧力下で、予め混合されたGBLおよび該触媒を含有する該反応器に導入される。もう一つの別法においては、GBLが、約0.5〜約7MPa(5〜70bar)、好ましくは約2〜約3MPa(20〜30bar)の圧力の下に、予備混合された、好ましくは水性形状にあるMMAおよび該触媒を含む該反応器内に導入される。水性溶液中のMMAの濃度は、40質量%までであってよく、また該MMAは1〜2、より好ましくは1〜1.5、より具体的には1〜1.15というGBLに対するモル比にて、該反応器に導入される。使用される該触媒の量は、上記全供給物質の1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。次いで、該反応混合物は、130〜250℃、好ましくは150〜200℃の範囲の所定温度まで加熱され、かつ30〜180分間、好ましくは60〜120分間という滞留期間に渡り、適切な攪拌の下に維持される。次いで、該反応器を室温まで冷却し、かつ該触媒を、濾過により該反応生成物の混合物から分離する。従って、集められた該反応生成物は、蒸発または蒸留による分離工程の何れかに掛けられて、≧99%に達する選択度にて、≧98%に達するGBLの転化率にてNMPを製造する。
従って、本発明は、触媒の存在下で、従来技術の文献において述べられた方法よりも穏やかな条件にて、NMPを選択的に製造するための改良法を提供するものである。
本発明によれば、使用される上記触媒は、ブレンステッド型の酸性支持体からなり、かつAl、Zr、Wの内の1種またはその組合せの酸化物により、該支持体の1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部、より具体的には10〜15質量部という金属配合割合まで改質された、典型的な酸性触媒である。
【0014】
本発明に従えば、使用される上記触媒は、過剰量の低沸点溶媒、好ましくは脱イオン水中に、適量の上記金属のプリカーサ塩を溶解し、および該溶液を、好ましくは粉末形状にある上記支持体と接触状態に置き、およびこの混合物を40〜60℃の範囲の温度にて、スラリーが得られるまで攪拌し、次いで110℃にて6〜12時間、好ましくは8〜10時間に渡りオーブン内で乾燥し、および最終的に450℃にて3〜6時間、好ましくは4〜5時間という期間に渡り、空気を連続的に流しつつ焼成することによる、従来のインシピエントウェットネス含浸法によって製造される。
本発明に従えば、上記触媒の配合において使用される上記支持体は、70〜100、好ましくは80〜90というSiO
2対Al
2O
3のモル比を持ち、400〜500m
2/g、好ましくは420〜450m
2/gという比表面積を有するゼオライト物質の類である。
本発明に従えば、使用される上記触媒は、20〜30メッシュという粒度までの粉末形状にある。
本発明に従えば、上記触媒は、数回の実験後に、活性における如何なる大幅な変化も無しに、リサイクルすることができる。
本発明に従えば、上記触媒はアセトン、ジメチレンクロリド、ベンゼン、メタノール、石油エーテル等のような低沸点溶媒と共に、60〜90℃の温度にて還流下で攪拌し、引続き80〜110℃にて6〜12時間の期間に渡りオーブン内で乾燥することにより、多数回の実験後に十分に洗浄される。
本発明によれば、上記純粋なNMPは、蒸発または蒸留の何れかによる、水およびMMAの分離後に得られる。該回収されたMMAは、更にここにおいて述べられた方法で使用し尽くすことができる。
【実施例】
【0015】
実例としてのみ与えられ、従って本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない、以下に与えられる実施例において、本発明を詳細に説明する。
実施例
NMPの合成を、容積100mLを持ち、かつ高品位のステンレススチール製の反応器容器からなるバッチ式CSTR内で、以下に示される条件下で行った。該反応器は、上記反応体と触媒との混合を可能とする攪拌機、該反応混合物の温度を検出する、該容器内部の熱電対および該容器内部の圧力を検出するプローブを備えている。該容器内の圧力は、反応体の該容器への充填中、高圧シリンダから供給される窒素ガスを使用することにより維持される。その外部加熱ジャケットは、極めて円滑に該容器内の該反応温度の達成を可能とする。安全対策のために、該容器は、その50容積%まで反応体および触媒で満たされている。該攪拌機は、該反応体と触媒との極めて良好な混合のために、3,000rpmまでの最高速度に調節し得る。一旦該滞留時間を超えたら、該反応器容器を氷水で冷却することによって該反応を停止させて、該容器の内容物を室温とする。その圧力をガス抜き弁によって解除し、かつ該混合物の内容物を、該触媒を分離するための濾過で使用する。一旦該触媒が分離されたら、該生成物の混合物を、該溶液から水および未反応のMMAを蒸発させる目的で使用する。このようにして分離された該触媒は、リサイクル実験のために直接使用される。次いで、軽量物質(lighters)の蒸発後に残される生成物を、GBL、NMPおよび副産物の含有率を測定するように予めキャリブレートされたFID検出器を備えた、ガスクロマトグラフィーによって分析して、GBLの転化率およびNMPの生成に対する選択度を、以下の式により最終的に算出する:
【0016】
・転化率(%) = [(供給物質中のGBLのモル数 − 生成物中のGBLのモル数)/(供給物質中のGBLのモル数)]×100
・選択度(%) = [(生成物中のNMPのモル数)/(供給物質中のGBLのモル数 − 生成物中のGBLのモル数)]×100
使用された上記触媒は、上述の反応においてH-ZSM-5 (80というSiO
2対Al
2O
3のモル比、425m
2/gという典型的表面積)上に担持された酸化物の形状にある、15%のAlで構成されている。該触媒は、21.2805gのAl(NO
3)
3・9H
2Oを約40mLの脱イオン水に溶解することにより調製され、また10gの粉末化されたHZSM-5と共に60℃にて、濃厚なスラリーが得られるまで攪拌される。次いで、該スラリーを、室温にて24時間維持し、またオーブン内で110℃にて12時間に渡り乾燥させる。最終的な触媒は、該乾燥物質を管状炉内で、450℃の温度まで、2℃/分の勾配で加熱し、また一定の空気流の下で、450℃にて5時間に渡り維持することにより焼成した後に得られる。
上記実験の条件およびその結果は、以下の通りである:
【0017】
【表1】
(*:リサイクル触媒を使用)
【0018】
上記実験のために使用された触媒の組合せ:
【0019】
【表2】
(*:リサイクル触媒を使用)
【0020】
〔発明の効果〕
・本発明の方法は、好ましくは水性形状にあるMMAおよびGBLから、従来技術の文献において述べられている条件よりも穏やかな条件にて、高い選択度でNMPを製造する。
・本発明は、高頻度での再生を必要とすることなく、立て続けに多数回の実験のために使用することのできる触媒を用いている。
・本発明は、NMPを製造するための低コスト法を提供する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の選択的製造のための改良方法であって、該方法が、以下の段階:
a) 供給原料の、好ましくは水性形状にあるモノメチルアミン(MMA)およびγ-ブチロラクトン(GBL)を、単一段階で、連続的に攪拌されたタンク反応器(CSTR)内で、1〜2の範囲のMMA対GBLのモル比にて、400〜500m2/gという比表面積をもつ、70〜100というSiO2対Al2O3のモル比を持つゼオライト物質の類であるブレンステッド型の酸性支持体からなり、かつ該支持体の1〜30質量部という金属配合量の割合にまで、Al、Zr、Wから選択される1種または複数の金属の酸化物により改質された触媒の存在下で、全供給原料の1〜10%の間の触媒含有率で、温度130〜250℃および圧力5〜70の操作条件にて、500〜1,000という攪拌速度にて、30〜180分間という期間に渡り反応させて、反応混合物を得る段階;
b) 該反応混合物を、20〜25℃の範囲の温度まで冷却する段階;
c) 公知の方法により、段階b)の該反応混合物から該触媒を分離する段階;
d) 蒸発または蒸留により、段階c)の反応混合物からその生成物を分離して、≧99%に達する選択率、≧98%に達するGBLの転化率にて、NMPを得る段階;
e) 該段階a)〜d)を数回に渡り繰返した後に、反応器に該触媒をリサイクルする段階、を含む、前記改良方法。
〔2〕前記MMAが、好ましくは40%までの質量基準の濃度を持つ水性形状で使用される、前記〔1〕記載の改良方法。
〔3〕触媒における金属配合量の質量割合が好ましくは5〜20、より詳しくは10〜15である、前記〔1〕記載の改良方法。
〔4〕前記触媒の配合において使用される前記支持体が、80〜90という好ましいSiO2対Al2O3のモル比および420〜450m2/gという好ましい比表面積を持つ、前記〔1〕記載の改良方法。
〔5〕前記全供給物質に関して使用される触媒の量が、好ましくは1〜5質量%の範囲にある、前記〔1〕記載の改良方法。
〔6〕前記使用される触媒が、20〜30メッシュという粒度までの粉末形状にある、前記〔1〕記載の改良方法。
〔7〕数回の実施に渡り使用された前記触媒が、還流下で60〜90℃の温度にて溶媒と共に攪拌し、かつ6〜12時間という期間に渡り、80〜110℃にてオーブン内で乾燥した後に、リサイクルされる、前記〔1〕記載の改良方法。
〔8〕リサイクル使用のために前記触媒を洗浄する目的で使用される前記溶媒が、アセトン、ジメチレンクロリド、ベンゼン、石油エーテルのような低沸点化学物質から選択される、前記〔7〕記載の改良方法。
〔9〕NMPの純度が99.99%である、前記〔1〕記載の改良方法。
〔10〕回収された未反応のモノメチルアミンがリサイクルされる、前記〔1〕記載の改良方法。