(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827051
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】歯車式カム拡張可能椎体間インプラントおよび埋め込みの方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20210128BHJP
A61F 2/46 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
A61F2/44
A61F2/46
【請求項の数】30
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-538577(P2018-538577)
(86)(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公表番号】特表2019-503238(P2019-503238A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】US2017015390
(87)【国際公開番号】WO2017132537
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】15/009,582
(32)【優先日】2016年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506298792
【氏名又は名称】ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】デウェイ,ジョナサン・エム
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング,ウィリアム・ディー
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0272743(US,A1)
【文献】
特表2012−513882(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0029636(US,A1)
【文献】
特表2015−500707(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0343678(US,A1)
【文献】
特表2008−512218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/44−2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位椎体と下位椎体との間の患者の円板空間に挿入するための拡張可能脊椎インプラントであって、前記インプラントは、中間長手方向軸を間に定める近位端と遠位端とを有し、折畳位置と一部拡張位置と完全拡張位置との間で拡張可能であり、前記インプラントは、
近位端、遠位端、外面、少なくとも1つの側面、および内面を備える上位端板であって、前記内面の一部分は上位ラック部分を備え、前記上位ラック部分は、前記上位端板の前記近位端と前記遠位端との中間にある少なくとも1つの下向きに突出する歯と、前記上位端板の前記遠位端に近接する少なくとも1つの最も遠位の下向きに突出する歯とを備える、上位端板と、
近位端、遠位端、外面、少なくとも1つの側面、および内面を備える下位端板であって、前記内面の一部分は下位ラック部分を備え、前記下位ラック部分は、前記下位端板の前記近位端と前記遠位端との中間にある少なくとも1つの上向きに突出する歯と、前記下位端板の前記遠位端に近接する少なくとも1つの最も遠位の上向きに突出する歯とを備え、前記下位端板の前記近位端は前記上位端板の前記近位端に旋回可能に連結されている、下位端板と、
前記インプラント内の前記上位端板と前記下位端板との間に備え付けられ、近位端および遠位端を有するシャーシ部分であって、前記近位端は、前記近位端に定められた開口と、前記開口に近接して前記近位端に定められた少なくとも1つの窪みと、前記開口に定められた雌ネジ山の第1のセットと、前記シャーシ部分の前記近位端と前記遠位端との中間に定められた雌ネジ山の第2のセットとを有する、シャーシ部分と、
前記シャーシ部分内に移動可能に備え付けられ、近位端および遠位端を有し、第1および第2の実質的に平行な離間された壁によって定められるヨークであって、前記第1および第2の離間された壁の各々が近位端および遠位端を有する、ヨークと、
前記シャーシ部分内に回転可能に備え付けられ、外面、近位端、および遠位端を有する回転部分であって、前記近位端は前記近位端に定められた開口を有し、前記遠位端は前記ヨークの前記遠位端に近接して位置決めされ、ネジ山が前記外面の少なくとも一部分に定められ、前記ネジ山は前記シャーシ部分内で前記雌ネジ山の第2のセットと係合可能である、回転部分と、
前記ヨークの前記第1および第2の離間された壁の少なくとも一方の前記遠位端のうちの少なくとも一方に回転可能に備え付けられ、前記上位ラック部分の前記下向きに垂れ下がる歯と移動可能に係合するように構成される少なくとも1つの突出する第1の平歯車の歯を有する少なくとも1つの第1の平歯車と、
前記ヨークの前記第1および第2の離間された壁の少なくとも一方の前記遠位端のうちの少なくとも一方に回転可能に備え付けられ、前記下位ラック部分の前記上向きに突出する歯と係合するように構成される少なくとも1つの突出する第2の平歯車の歯を有する少なくとも1つの第2の平歯車と
を備え、
前記回転部分は、自身の回転運動を前記ヨークの直線運動へと変換するようにさらに構成され、前記ヨークは、前記直線運動を、少なくとも前記少なくとも1つの第1の平歯車の回転運動へと変換し、それによって前記少なくとも1つの第1の平歯車を前記ヨークに対して回転させ、
前記少なくとも1つの第1の平歯車の前記ヨークに対する回転は、前記少なくとも1つの突出する第1の平歯車の歯の、前記下向きに垂れ下がる上位ラック歯車の歯に沿う、前記インプラントの前記遠位端に向かう第1の直線歩行運動を定め、それによって前記上位端板を少なくとも前記一部拡張位置へと旋回させる、拡張可能脊椎インプラント。
【請求項2】
前記回転部分の前記近位端の前記開口は、カム拡張器具の遠位端を受け入れるように構成される、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項3】
前記上位端板および前記下位端板の少なくとも一方は、前記上位端板および前記下位端板の少なくとも一方の前記外面から突出する少なくとも1つの突起を備え、前記少なくとも1つの突起は、前記上位椎体および前記下位椎体のそれぞれの対応する端板と係合するように構成される、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項4】
前記ヨークは少なくとも1つの側面をさらに備え、前記ヨークの前記少なくとも1つの側面は前記ヨークの前記側面に定められた走路を有し、前記走路は、前記下位端板および前記上位端板の一方の前記少なくとも1つの側面から突出する杭を中に受け入れるように構成され、それによって前記上位端板が前記下位端板から係合解除することを防止する、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項5】
前記回転部分の回転は、運動を少なくとも前記少なくとも1つの第2の平歯車へとさらに変換して、前記少なくとも1つの第2の平歯車を前記ヨークに対して回転させ、前記ヨークに対する前記少なくとも前記少なくとも1つの第2の平歯車の回転は、前記少なくとも1つの突出する第2の平歯車の歯の、前記上向きに突出する下位ラック歯車の歯に沿う、前記インプラントの前記遠位端に向かう第2の直線歩行運動を定め、前記下位端板を少なくとも前記一部拡張位置へと旋回させる、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項6】
前記上位端板の前記遠位端と前記下位端板の前記遠位端とは協働して先端を形成している、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項7】
前記先端は、前記中間長手方向軸に対する実質的に垂直の角度、および、前記長手方向軸に対する実質的に斜めの角度の一方を定める、請求項6に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項8】
前記上位端板の前記遠位端と前記下位端板の前記遠位端とが協働して、傾斜した縁、鋭い縁、および平面状の縁の1つを定める、請求項6に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項9】
前記先端は、前記上位椎体および前記下位椎体それぞれの対応する端板と係合するように構成される少なくとも1つの突起を含む、請求項6に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項10】
前記回転部分は、概して円筒形であり、前記回転部分の外周面に定められた雄ネジ山のセットを備える、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項11】
前記上位端板および前記下位端板の少なくとも一方は、前記上位端板および前記下位端板の少なくとも一方の前記外面に定められた開口部を備え、前記開口部は、それを通る骨の成長を許容するように構成される、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項12】
少なくとも1つの平歯車から延びる少なくとも1つの係合ピンをさらに備え、前記少なくとも1つの係合ピンは、前記上位端板および前記下位端板の少なくとも一方の前記少なくとも1つの側面に定められる少なくとも1つのスロットに係合するように構成され、前記少なくとも1つの係合ピンと前記少なくとも1つのスロットとの係合は、前記上位端板が前記下位端板から係合解除することを防止する、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項13】
前記上位端板の前記近位端に近接して備え付けられた上位歯車と、前記下位端板の前記近位端に近接して備え付けられた下位歯車とをさらに備え、前記下位歯車は前記上位歯車に旋回可能に係合し、前記上位歯車と前記下位歯車との係合は、前記上位端板が前記下位端板から係合解除することを防止する、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項14】
少なくとも前記上位ラック部分は、最も遠位の下向きに垂れ下がる上位ラック歯車の歯を備え、前記上位ラック歯車の歯は、前記少なくとも1つの第1の平歯車の、前記下向きに垂れ下がる上位ラック歯車の歯に沿う、前記インプラントの前記遠位端に向かう前記歩行運動を少なくとも停止するように構成され、それによって、前記上位端板を、前記下位端板から離して前記完全拡張位置に向けて移動させる、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項15】
少なくとも前記下位ラック部分は、最も遠位の上向きに突出する下位ラック歯車の歯を備え、前記下位ラック歯車の歯は、前記少なくとも1つの第2の平歯車の、前記上向きに突出する下位ラック歯車の歯に沿う、前記インプラントの前記遠位端に向かう前記歩行運動を少なくとも停止するように構成され、それによって、前記上位端板を、前記下位端板から離して前記完全拡張位置に向けて移動させる、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項16】
前記回転部分はネジ山付きのネジを備える、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項17】
前記回転部分は円筒部を備え、前記円筒部は、前記円筒部の外側周囲に備え付けられた複数のラチェット歯を有する、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項18】
前記シャーシ部分は、前記回転部分の前記ラチェット歯に係合するように構成される一続きのツメをさらに備える、請求項17に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項19】
前記ツメと前記ラチェット歯との前記係合は、少なくとも、前記インプラントを前記一部拡張位置および前記完全拡張位置の一方に維持するように構成される、請求項18に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項20】
前記回転部分は、前記回転部分の前記遠位端に定められた実質的にT字形の突起を備え、前記実質的にT字形の突起は前記ヨークに接触するように適合される、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項21】
前記インプラントの前記近位端に定められる近位拡張機構をさらに備え、前記近位拡張機構は、前記回転部分の前記近位端に連結されたトグルと、少なくとも1つの後旋回ピンとを備え、前記少なくとも1つの後旋回ピンは、少なくとも1つの後斜面に近接して位置決めされ、前記トグルは、前記トグルを回転させるときおよび並進させるときの一方に、前記少なくとも1つの旋回ピンを前記少なくとも1つの後斜面に沿って滑らせるように構成される、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項22】
前記シャーシ部分は前記近位端と前記遠位端との中間に弓状部分をさらに備え、前記弓状部分は内面と外面とを有し、前記内面は前記内面に定められたネジ山を備える、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項23】
前記ヨークの前記遠位端は、前記ヨークの前記第1の壁の前記遠位端と前記第2の壁の前記遠位端とを連結する、前記長手方向軸に対して実質的に横断する遠位端横材をさらに備える、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第1の平歯車および前記少なくとも1つの第2の平歯車の少なくとも一方は長さを有し、前記完全拡張位置におけるインプラント拡張の量は前記長さに関連する、請求項1に記載の拡張可能脊椎インプラント。
【請求項25】
拡張可能脊椎インプラントを上位椎体と下位椎体との間の患者の円板空間へと挿入するためのキットであって、
中間長手方向軸を間に定める近位端と遠位端とを有し、折畳位置と一部拡張位置と完全拡張位置との間で拡張可能である前記インプラントであって、
近位端、遠位端、外面、少なくとも1つの側面、および内面を備える上位端板であって、前記内面の一部分は上位ラック部分を備え、前記上位ラック部分は、前記上位端板の前記近位端と前記遠位端との中間にある少なくとも1つの下向きに突出する歯と、前記上位端板の前記遠位端に近接する少なくとも1つの最も遠位の下向きに突出する歯とを備える、上位端板、
近位端、遠位端、外面、少なくとも1つの側面、および内面を備える下位端板であって、前記内面の一部分は下位ラック部分を備え、前記下位ラック部分は、前記下位端板の前記近位端と前記遠位端との中間にある少なくとも1つの上向きに突出する歯と、前記下位端板の前記遠位端に近接する少なくとも1つの最も遠位の上向きに突出する歯とを備え、前記下位端板の前記近位端は前記上位端板の前記近位端に旋回可能に連結されている、下位端板、
前記インプラント内の前記上位端板と前記下位端板との間に備え付けられ、近位端および遠位端を有するシャーシ部分であって、前記近位端は、前記近位端に定められた開口と、前記開口に近接して前記近位端に定められた少なくとも1つの窪みと、前記開口に定められた雌ネジ山の第1のセットと、前記シャーシ部分の前記近位端と前記遠位端との中間に定められた雌ネジ山の第2のセットとを有する、シャーシ部分、
前記シャーシ部分内に移動可能に備え付けられ、近位端および遠位端を有し、第1および第2の実質的に平行な離間された壁によって定められるヨークであって、前記第1および第2の離間された壁の各々が近位端および遠位端を有する、ヨーク、
前記シャーシ部分内に回転可能に備え付けられ、外面、近位端、および遠位端を有する回転部分であって、前記近位端は前記近位端に定められた開口を有し、前記遠位端は前記ヨークの前記遠位端に近接して位置決めされ、ネジ山が前記外面の少なくとも一部分に定められ、前記ネジ山は前記シャーシ部分内の前記雌ネジ山の第2のセットと係合可能である、回転部分、
前記ヨークの前記第1および第2の離間された壁の少なくとも一方の前記遠位端のうちの少なくとも一方に回転可能に備え付けられ、前記上位ラック部分の前記下向きに垂れ下がる歯と移動可能に係合するように構成される少なくとも1つの突出する第1の平歯車の歯を有する少なくとも1つの第1の平歯車、ならびに、
前記ヨークの前記第1および第2の離間された壁の少なくとも一方の前記遠位端のうちの少なくとも一方に回転可能に備え付けられ、前記下位ラック部分の前記上向きに突出する歯と係合するように構成される少なくとも1つの突出する第2の平歯車の歯を有する少なくとも1つの第2の平歯車
を備え、
前記回転部分は、自身の回転運動を前記ヨークの直線運動へと変換するようにさらに構成され、前記ヨークは、前記直線運動を、少なくとも前記少なくとも1つの第1の平歯車の回転運動へと変換し、それによって前記少なくとも1つの第1の平歯車を前記ヨークに対して回転させ、
少なくとも前記少なくとも1つの第1の平歯車の前記ヨークに対する前記回転は、前記少なくとも1つの突出する第1の平歯車の歯の、前記下向きに垂れ下がる上位ラック歯車の歯に沿う、前記インプラントの前記遠位端に向かう第1の直線歩行運動を定め、それによって前記上位端板を少なくとも前記一部拡張位置へと旋回させる、
前記インプラントと、
前記インプラントの前記近位端に取り付け可能な挿入器具と
を備えるキット。
【請求項26】
前記挿入器具は、近位端および遠位端を備え、
近位端および遠位端を有する少なくとも1つの中空な実質的に円筒形の外側シャフトであって、前記遠位端は少なくとも1つの突出する指部分を備え、前記少なくとも1つの突出する指部分は、前記シャーシ部分の後壁に定められた少なくとも1つの窪みに係合するように構成される、外側シャフトと、
前記少なくとも1つの外側シャフトを貫いて通るように構成され、近位端および遠位端を有する実質的に円筒形の内側シャフトであって、前記遠位端は、前記内側シャフトの前記遠位端の外周面に定められた雄ネジ山のセットを備え、前記雄ネジ山のセットは、前記シャーシ部分内で前記雌ネジ山の第1のセットに係合するように構成される、実質的に円筒形の内側シャフトと
を備える、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記内側シャフトの前記近位端は、骨移植材料を前記外側シャフトへと挿入するように構成される、前記近位端に定められた漏斗部分をさらに備える、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記外側シャフトは、前記骨移植材料を前記漏斗部分から前記インプラントの前記シャーシ部分へと移送するように適合される、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記内側シャフトを貫いて延びる細長い駆動ロッドをさらに備える、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
前記駆動ロッドの近位端に取り付けられるT字形取っ手およびタップキャップの一方をさらに備える、請求項29に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、脊椎インプラントと、2つの隣接する椎体の間の患者の円板空間にインプラントを埋め込むための方法とに関する。より詳細には、本発明は、患者の円板空間内で折畳位置から拡張位置まで拡張するように構成される、歯車式カムを備える拡張可能な脊椎インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]拡張可能な脊椎インプラントが知られている。既存の拡張可能脊椎インプラントは、従来からの「4本の棒」と「クランクスライダ」との拡張機構を使用する。折畳位置にある間に、外科的に強化された円板空間に挿入された後、既存の拡張可能脊椎インプラントは拡張される。既存の拡張可能インプラントは、少なくとも、(1)望ましくない過剰な初期の拡張力を円板空間に加え、(2)不均一な拡張力を円板空間に加え、(3)微調整への信頼できる能力を欠くとして知られている。既存の拡張可能インプラントは、例えば、インプラントの遠位先端と隣接する椎体との間の係合を確保するためといったことでしばしば有利となり得る、遠位先端における様々な構成も欠いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]関連する技術の短所のうちの1つまたは複数を未然に防ぐ拡張可能脊椎インプラントを提供することが、本発明の目的である。
[0004]上位椎体と下位椎体との間の患者の円板空間への挿入のための拡張可能脊椎インプラントを提供することが、本発明の別の目的である。インプラントは、中間長手方向軸を間に定める近位端と遠位端とを有し、折畳位置と一部拡張位置と完全拡張位置との間で拡張可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0005]インプラントは上位端板を備える。上位端板は、近位端と、遠位端と、外面と、少なくとも1つの側面と、内面とを有する。内面の一部分は上位ラック部分を備える。上位ラック部分は、上位端板の近位端と遠位端との中間にある下向きに突出する歯と、上位端板の遠位端に近接する少なくとも1つの最も遠位の下向きに突出する歯とを備える。インプラントは下位端板をさらに備える。下位端板は、近位端と、遠位端と、外面と、少なくとも1つの側面と、内面とを有する。内面の一部分は下位ラック部分を備える。下位ラック部分は、下位端板の近位端と遠位端との中間にある上向きに突出する歯と、下位端板の遠位端に近接する少なくとも1つの最も遠位の上向きに突出する歯とを備える。下位端板の近位端は、上位端板の近位端に旋回可能に連結される。
【0005】
[0006]シャーシ部分が、インプラント内の上位端板と下位端板との間に備え付けられる。シャーシ部分は近位端と遠位端とを有する。近位端は、近位端に定められた開口を有する。
【0006】
[0007]ヨークがシャーシ部分内に移動可能に備え付けられる。ヨークは近位端と遠位端とを有する。ヨークは、近位端から遠位端へと延びる第1および第2の平行な離間された壁によって定められる。長手方向軸に対して横断する遠位横材が、ヨークの第1の壁の遠位端と第2の壁の遠位端とを連結する。
【0007】
[0008]回転部分がシャーシ部分内に回転可能に備え付けられる。回転部分は近位端と遠位端とを有する。遠位端は、ヨークの遠位横材に接触するように構成される。近位端は、近位端に定められた、インプラント拡張器具の遠位端を受け入れるように構成される開口を有する。
【0008】
[0009]少なくとも1つの第1の平歯車は、ヨークの第1および第2の壁の一方の遠位端に回転可能に備え付けられる。少なくとも1つの第1の平歯車は、上位ラック部分の下向きに突出する歯に係合するように構成される歯を有する。少なくとも1つの第2の平歯車は、ヨークの第1および第2の壁の一方の遠位端に回転可能に備え付けられる。少なくとも1つの第2の平歯車は、下位ラック部分の上向きに突出する歯に係合するように構成される歯を有する。
【0009】
[0010]回転部分は、自身の回転運動をヨークの直線運動へと変換するように構成される。ヨークは、直線運動をヨークに対する平歯車の回転へと変換し、平歯車を上位ラック歯車の歯と下位ラック歯車の歯とのそれぞれに沿って、インプラントの遠位端に向けて歩行させ、それによってインプラントを、一部拡張位置を通じて移動させる。平歯車の歯が上位ラックまたは下位ラックのそれぞれの最も遠位の歯に当接するとき、インプラントは完全拡張位置に達する。
【0010】
[0011]上位椎体と下位椎体との間の患者の円板空間へと前述した拡張可能脊椎インプラントを埋め込む方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。方法は、折畳位置においてインプラントを外科的に準備された円板空間へと挿入するステップと、インプラント挿入器具を使用するステップと、回転部分を回転させるステップと、回転運動を定めるステップと、回転部分の回転運動をインプラントの遠位端に向けたヨークの直線運動へと変換するステップと、平歯車をヨークに対して回転させ、それによって平歯車を上位ラックおよび下位ラックのそれぞれの突出する歯に沿って歩行させるステップと、インプラントを、一部拡張位置を通じて完全拡張位置へと拡張するステップとを含む。挿入器具は、中空の外側シャフトと、外側シャフトを貫いて通るように構成される中空の内側シャフトと、中空の内側シャフトを貫いて通るように構成される細長い駆動部とを備える。細長い駆動部は、インプラントの一部分に接触するように構成される鋭くない遠位端を有する。細長い駆動部に加えられた移動は、インプラントへと伝達され、インプラントを円板空間へと押し込む。細長い駆動部の取り外しの後、骨成長材料が内側シャフトを通じてインプラントへと送られ得る。
【0011】
[0012]本発明のこれらの目的および他の目的は、以下の明細書および添付の図面の検討から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0013]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図2】[0014]一部拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図3】[0015]一部拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図4】[0016]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図5】[0017]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図6】[0018]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの分解した部品の図である。
【
図7】[0019]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの下位端板、シャーシ部分、ヨーク、回転部分、および平歯車の上方からの斜視図である。
【
図8】[0020]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図9】[0021]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図10】[0022]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図11】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図12】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図13】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図14】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図15】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図16】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの1つの好ましい実施形態で使用される多段拡張機構の側方からの概略図である。
【
図17】[0023]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図18】[0024]完全開放位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図19】[0025]一部拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図20】[0026]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図21】[0027]一部拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図22】[0028]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図23】[0029]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの別の実施形態の上方からの斜視図である。
【
図24】[0030]完全拡張位置における
図23の実施形態の上方からの斜視図である。
【
図25】[0031]本発明による歯車式カム拡張可能インプラントの分解した部品の図である。
【
図26】[0032]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図27】[0033]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図28】[0034]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの後面図である。
【
図29】本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの後面図である。
【
図30】[0035]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図31】[0036]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図32】[0037]単段拡張機構における平歯車およびラックの側方からの概略図である。
【
図33】単段拡張機構における平歯車およびラックの側方からの概略図である。
【
図34】単段拡張機構における平歯車およびラックの側方からの概略図である。
【
図35】[0038]折畳位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図36】[0039]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図37】[0040]完全拡張位置における、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの上方からの斜視図である。
【
図38】[0041]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントに連結される、本発明によるインプラント挿入器具の上方からの斜視断面図である。
【
図39】[0042]円板空間へのインプラントの挿入を描写している、本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントに連結される、本発明によるインプラント挿入器具の上方からの斜視図である。
【
図40】[0043]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントに連結される、本発明によるインプラント挿入器具の上方からの斜視断面図である。
【
図41】[0044]本発明によるインプラント挿入器具に取り付けられる歯車式カム拡張可能インプラントの上方からの斜視断面図である。
【
図42】[0045]本発明によるインプラント挿入器具によって円板空間へと挿入されている本発明による歯車式カム拡張可能インプラントの上方からの斜視断面図である。
【
図43】[0046]本発明によるインプラント挿入器具によって円板空間へと挿入されている本発明による歯車式カム拡張可能インプラントの上方からの斜視断面図である。
【
図44】[0047]インプラント挿入器具の取り外しに続いて円板空間へと挿入される歯車式カム拡張可能インプラントの上方からの斜視断面図である。
【
図45】[0048]下位椎体によって支持されている本発明による歯車式カム拡張可能インプラントの上方からの斜視図である。
【
図46】[0049]本発明による歯車式カム拡張可能インプラントと本発明によるインプラント挿入器具との間の取り付けの位置を描写している上方からの斜視図である。
【
図47】[0050]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図48】[0051]本発明による歯車式カム拡張可能脊椎インプラントの側方からの断面図である。
【
図49】[0052]下位端板、シャーシ、ヨーク、下位平歯車、および、周囲ラチェット歯を伴う円筒部を描写する部分的な上方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0053]歯車式カム拡張可能脊椎インプラント10が、上位椎体と、隣接する下位椎体との間の外科的に強化された円板空間に挿入されるように構成されている。インプラント10は、中間長手方向軸L−Lを間に定める近位端12と遠位端14とを備えている。
【0014】
[0054]一実施形態では、インプラント10は上位端板16を備えている。
図6、
図8、および
図9に描写されているように、上位端板16は、近位端18と、遠位端20と、側面22と、内面24とを備えている。内面24は、下向きに突出する歯28と、最も遠位で下向きに突出する歯29とを備える上位ラック部分26を備えている。
【0015】
[0055]一実施形態では、インプラント10は下位端板30を備えている。下位端板30は、近位端32と、遠位端34と、側面36と、内面38とを備えている。内面38は、上向きに突出する歯42と、最も遠位で上向きに突出する歯43とを備える下位ラック部分40を備えている。
【0016】
[0056]一実施形態では、インプラント10は、上位端板16と下位端板30との間でインプラント内に備え付けられるシャーシ部分44を備えている。シャーシ部分44は近位端46と遠位端48とを備えている。
図7〜
図9、
図21、
図22、および
図46に描写されているように、シャーシ部分44の近位端46は、中間長手方向軸L−Lに対して垂直な壁であり、壁を貫いて定められる開口50と、開口50に近接する壁に定められる1つまたは複数の窪み52とを有する。シャーシ部分44は、近位端46の開口50に定められる雌ネジ山54の第1のセットをさらに備えている。
【0017】
[0057]一実施形態では、
図1〜
図7に描写されているように、シャーシ部分44は、近位端46と遠位端48との中間に弓状部分56を備えている。雌ネジ山58の第2のセットが弓状部分56の内面に定められている。
【0018】
[0058]一実施形態では、ヨーク60がシャーシ部分44内に移動可能に備え付けられる。ヨーク60は、第1の壁62と、第1の壁62から離間された平行な第2の壁64とによって定められている。第1の壁62は近位端66と遠位端68とを有している。第2の壁64は近位端70と遠位端72とを有している。
図6、
図7、および
図41〜
図43に描写されているように、第1の壁62の遠位端68と第2の壁64の遠位端72とは、遠位端横材71によって連結され得る。
図5に描写されているように、ヨーク60は、第1の壁62および第2の壁64の少なくとも一方に定められるスロット74を備えている。各々のスロット74は、下位端板30の内側面から突出するピン76をその中に受け入れるように構成されている。スロット74へのピン76の挿入は、インプラント10の分離を防止するのを支援する。
【0019】
[0059]一実施形態では、回転部分78がシャーシ部分44内で回転可能に備え付けられる。回転部分78は、近位端80と、遠位端82と、外面84とを備えており、雄ネジ山86が外面84に定められている。一実施形態では、
図6、
図8、
図9、
図20〜
図22、
図25〜
図27、
図30、および
図31に描写されているように、遠位端82はT字形の突起88を備えている。しかしながら、本発明は、回転部分78の遠位端82においてT字形の突起を有するように限定されていない。一実施形態では、回転部分の近位端80は、インプラント拡張器具(図示していない)の遠位端を受け入れるように構成される開口89を備えている。本発明は、回転部分78がインプラント拡張器具によって回転され得る限り、開口89について任意の特定の構成に限定されない。
図8および
図9に描写されているように、開口89は、インプラント拡張器具の多角形の遠位端を受け入れるために多角形を有している。別の例として、限定としてではないが、開口89は、インプラント拡張器具のネジ付きの遠位端を受け入れるためにネジ付きとされ得る。
【0020】
[0060]一実施形態では、
図47〜
図49に描写されているように、ネジ付きの回転部分78は、周囲ラチェット歯166を伴う円筒部164に置き換えられており、弓状部分56の合致するネジ山54は一体のツメ168に置き換えられている。ラチェット歯166は溝170によって分離されている。ツメ168は、シャーシ部分44に取り付けられた「生きた(live)」バネ172と一体であるため、曲がるようにされている。この実施形態では、畝状とされた円筒部164が前進させられるにつれて、各々のツメ168は次のそれぞれの溝170へと前進する。このようにして、円筒部164の遠位端はヨーク60を押し、平歯車90および94をインプラント10の遠位端14に向けて歩行させ、インプラントを拡張させる一方で、ツメ168はラチェット歯166同士の間のそれぞれの溝170において保持され、それによってインプラント10をその拡張された位置で保持する。
【0021】
[0061]一実施形態では、一対の第1の平歯車90が、ヨーク60の第1の壁62の遠位端68と、ヨーク60の第2の壁64の遠位端72とにそれぞれ回転可能に備え付けられている。各々の第1の平歯車90は、上位ラック部分26の下向きに突出する歯28と係合するように構成された突出する第1の平歯車の歯92を備えている。
【0022】
[0062]一実施形態では、
図5〜
図7、
図18、
図24、
図36、および
図37に描写されているように、第2の平歯車94が、ヨーク60の第1の壁62の遠位端68と、ヨーク60の第2の壁64の遠位端72との間でそれぞれ回転可能に備え付けられている。
図6に描写されているように、平歯車90および94は、ピン98でヨーク60に回転可能に取り付けられている。第2の平歯車94は、下位ラック部分40の上向きに突出する歯42と係合するように構成された突出する第2の平歯車の歯96を備えている。本発明は、2つの第1の平歯車90と1つの第2の平歯車96とを有することに限定されない。例えば、
図20に描写されているように、本発明は、2つの第1の平歯車90と2つの第2の平歯車96とを備え得る。1つの第1の平歯車90と2つの第2の平歯車96とを有することは、本発明の範囲内でもある。
【0023】
[0063]一実施形態では、
図19および
図20に描写されているように、スロット160が、下位端板30の遠位端34に近接する側面36に定められ、ピン162が第2の平歯車96から突出して定められている。ピン162は、上位端板と下位端板とが分離するのを防止するのを助けるために、スロット160と係合するように構成されている。
【0024】
[0064]一実施形態では、回転部分78は、回転部分78の雄ネジ山86がシャーシ部分44のネジ付き部分58に係合する状態で、回転部分78の遠位端82がヨーク60の遠位横材71に接触するまでシャーシ部分44内で回転する。回転部分78の回転は、インプラント10の遠位端14に向かうヨーク60の直線運動へと変換される。ヨーク60の直線運動は第1の平歯車90および第2の平歯車94を回転させる。それぞれの第1の平歯車の歯92および第2の平歯車の歯96は、上位ラック部分26の下向きに突出する歯28および下位ラック部分40の上向きに突出する歯42のそれぞれにおいて、インプラント10の遠位端14に向かって「歩行」する。歯が「歩行」していくにつれて、上位端板16は下位端板30から離されるように移動され、それによってインプラント10を、一部拡張位置へと移動させ、一部拡張位置を通じて移動させる。それぞれの平歯車の歯92および96は、それぞれの最も遠位の下向きに突出する歯29または代替で最も遠位の上向きに突出する歯43に達するとき、インプラント10の遠位端に向けてさらに遠くへと「歩行」できず、インプラントは完全拡張位置に達する。完全拡張位置における拡張の量は、平歯車の長さに関連付けられる。
図6に描写されているように、平歯車は長さS1を有するが、個々の患者の要件に依存して異なる平歯車長さも可能である。平歯車の長さに関連付けられる完全拡張の種々の量が、例えば
図4、
図5、
図9、
図20、および
図22に描写されている。
【0025】
[0065]一実施形態では、
図32〜
図34に描写されているように、平歯車92および94は、単段での拡張移動においてそれぞれのラック26および40に沿って、それぞれの平歯車がそれぞれのラックに沿って単純に転がることで、「歩行」する。
【0026】
[0066]一実施形態では、
図10〜
図16に描写されているように、平歯車90および94は、多段での拡張移動においてそれぞれのラック26および40に沿って「歩行」し、
図10および
図11に描写されているように、それぞれの平歯車が最初にそれぞれのラックに沿って転がり、続いて、
図12および
図13に描写されているように、ボールソケットのようにして旋回することを含む。
図14〜
図16に描写されているように、歯車が前進させられるにつれて、ピッチ直径の周囲は互いに沿って並進する。この並進は、固定された長さのリンク機構と比較して、装置の開始位置において、より大きな取付角を可能にする。取付角/機構の利点は、高い状態で始まり、歯車が前進させられるにつれて低下し、歯車がさらに前進するにつれて増加する。多段拡張パターンは、歯車のラックとの一定の迎え角を可能にする。
【0027】
[0067]一実施形態では、
図1および
図2で描写されているように、上位端板16は、上位椎体の端板の表面(図示していない)に係合するように構成された突起100を備えている。上位端板16は、そこに定められる開口102をさらに備えており、開口102は、インプラント10に搭載される骨成長材料からの骨成長を、開口102に通過させ、上位椎体と融合させることができるように構成される。上位端板16は、椎体端板の荷重を分配するように構成された滑らかな表面104をさらに備えている。滑らかな表面104は、
図1および
図2に描写されているように、上位端板16の上面の長さの大部分に沿って、または、上位椎体端板から離してより柔らかい網目状の骨だけを接触させるために、上面の長さの一部分だけにわたって、構成され得る。
【0028】
[0068]一実施形態では、
図8および
図9に描写されているように、下位端板30は、下位椎体の端板に係合するための突起106(
図45に描写されている)と、インプラント10における骨移植材料からの骨成長を、それ自体に通過させ、下位椎体と融合させることができるように構成された開口108とを備えている。
【0029】
[0069]一実施形態では、上位端板16の遠位端20と下位端板30の遠位端34とは先端110を定めている。先端110は、
図45に描写されているように傾斜されてもよく、
図23および
図24に描写されているように平坦であってもよく、または、
図26に描写されているように中心点になってもよい。
【0030】
[0070]一実施形態では、先端110は骨係合突起112を備え得る。別の実施形態によれば、先端110は突起を有してなくてもよい。骨係合突起112は、インプラント10が拡張しているときにインプラントの移動を防止するように構成されている。
【0031】
[0071]一実施形態では、
図35および
図36に描写されているように、係合ピン114は、少なくとも1つの平歯車90または94から延び、上位端板16の側面におけるスロット116と係合させられる。スロット116における係合ピン114の係合は、インプラント10の拡張の間、端板16および30が結合解除しないようにするのを支援する。
【0032】
[0072]一実施形態では、
図35および
図36に描写されているように、上位歯車118が上位端板16の近位端18に定められており、下位端板30の近位端32に定められた下位歯車120と係合している。上位近位歯車118と下位近位歯車120との係合は、インプラント10の拡張の間、端板16および30が結合解除するのを防止するのを支援する。
【0033】
[0073]一実施形態では、独立した近位拡張機構122がインプラント10の近位端12に定められている。
図28〜
図31、
図35、および
図36に描写されているように、近位拡張機構122は近位端の多角形のトグル124を備え、トグル124は回転部分78の近位端80に取り付けられている。一対の近位端の旋回ピン126が、近位端のトグル124から突出している。一実施形態では、トグル124は1つの伸延位置を有し得るが、他の実施形態では、トグル124は累進的な伸延位置を有し得る。一実施形態では、トグル124は回転させられ得るが、他の実施形態では、トグル124は並進させられ得る。トグル124が回転させられる実施形態では、旋回ピン126は、カムのような作用を用いて伸延する。トグル124が並進させられる実施形態では、旋回ピン126は、近位の傾斜128に沿って滑ることで伸延させられる。
【0034】
[0074]一実施形態では、
図38〜
図44および
図46に描写されている挿入器具130は近位端132と遠位端134とを備えている。中空で円筒形の外側シャフト136は近位端132と遠位端134との間で延びている。中空で円筒形の内側シャフト138は外側シャフト136を貫いて延びている。内側シャフト138は近位端140と遠位端142とを有している。
【0035】
[0075]一実施形態では、
図38に描写されているように、T字形取っ手158が内側シャフト138の近位端140に定められている。T字形取っ手158は、内側シャフト138を貫いて延びる細長い駆動部143に付着している。
【0036】
[0076]一実施形態では、
図42および
図43に描写されているように、細長い駆動部143は鋭くない遠位端154を有している。
[0077]一実施形態では、
図39に描写されているように、タップキャップ144が内側シャフト138の近位端140に定められており、駆動部143に取り付けられる。
【0037】
[0078]一実施形態では、
図40に描写されているように、タップキャップ144が、内側シャフト138の近位端140に定められている漏斗146へと取り外し可能に嵌まる。
【0038】
[0079]一実施形態では、取っ手148が設けられ、外側シャフト136の外面を掴んでいる。取っ手148は、挿入器具130を用いている間に外科医によって保持されるように構成されている。
【0039】
[0080]一実施形態では、
図46に描写されているように、外側シャフト136の遠位端134は、シャーシ部分44の近位端46において開口50に近接する窪み52へと嵌まり入るように構成される突出する指部150を備えている。
【0040】
[0081]一実施形態では、
図40および
図46に描写されているように、内側シャフト138の遠位端142は、シャーシ部分44の開口50において雌ネジ山54の第1のセットに係合するように構成される雄ネジ山152を備えている。
【0041】
[0082]一実施形態では、
図38、
図39、および
図42に描写されているように、T字形取っ手158に力を加えること、または、タップキャップ144に力を加えることのいずれかで、細長い駆動部143は、内側シャフト138を通じて、シャーシ部分44の近位端46における開口50を通じて、および、シャーシ部分44を通じて、回転部分78における鋭くない近位端の開口89まで移動される。回転部分78への細長い駆動部143の運動の変換は、インプラント10を円板空間へと押し込む。インプラント10および内側シャフト138からの細長い駆動部143の取り外しに続いて、
図44に描写されているように、骨成長材料が内側シャフト138を通じてインプラント10へと挿入され得る。
【0042】
[0083]本発明の他の実施形態が、ここで開示されている本発明の詳細および実践の検討から、当業者には明らかとなる。仕様および例は単なる例示として検討されることが意図されており、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって指示されている。