特許第6827058号(P6827058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827058
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-557667(P2018-557667)
(86)(22)【出願日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2017044056
(87)【国際公開番号】WO2018116852
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-249418(P2016-249418)
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】福井 洋文
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
(72)【発明者】
【氏名】小寺 康夫
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/122064(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/029736(WO,A1)
【文献】 特開2013−088349(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板に設けられ、被測定電流路を流れる電流によって発生する磁気を検出する複数の磁電変換素子と
を備え、
前記配線基板には、仮想矩形の中心に前記被測定電流路を位置させるための切欠が形成され、
前記複数の磁電変換素子は、
前記被測定電流路の延伸方向から見たときに、前記仮想矩形の4つの頂点のそれぞれ中心が位置する4つの第1の前記磁電変換素子と、
前記被測定電流路の延伸方向から見たときに、前記仮想矩形の中心に対して、それぞれの中心が点対称位置にある少なくとも4つの第2の前記磁電変換素子と
を有し、
前記第1の磁電変換素子の感度軸の向きは、前記切欠に沿った前記被測定電流路の着脱方向と直交しており、
前記第2の磁電変換素子の感度軸の向きは、前記着脱方向と平行であり、
前記仮想矩形の中心に対して点対称位置にある前記第1の磁電変換素子同士及び前記第2の磁電変換素子同士の感度軸の向きは平行であり、
前記被測定電流路の延伸方向から見たときに、前記第2の磁電変換素子は、いずれも、それらの中心が、前記仮想矩形よりも内側に位置していることを特徴とする
電流センサ。
【請求項2】
前記一方側にある複数の第2の磁電変換素子と、前記他方側にある複数の第2の磁電変換素子とは、前記中心線に対して線対称に配設されている
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記中心を通り前記着脱方向に平行な中心線に対して、一方側にある複数の前記第2の磁電変換素子と、他方側にある複数の前記第2の磁電変換素子とは、それぞれ前記中心線に平行な仮想直線上に配設されている
請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記仮想矩形の長辺は前記中心線に平行であり、その短辺は前記中心線に直交している
請求項2に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記被測定電流路及び、複数の近隣電流路とが、等間隔で一直線上に配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第2の磁電変換素子は、前記仮想矩形の前記中心を中心とする仮想楕円上に配設されている
請求項2に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1の磁電変換素子及び前記第2の磁電変換素子の感度軸が、前記仮想矩形の中心を囲む閉径路に沿って一方向を向くように、前記第1の磁電変換素子及び前記第2の磁電変換素子が配設されている
請求項1〜6のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項8】
前記第1の磁電変換素子及び前記第2の磁電変換素子は、同一特性である
請求項1〜7のいずれかに記載の電流センサ。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定電流路に流れる電流を検出する電流センサに関し、特に、磁電変換素子を用いて被測定電流路に流れる電流を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の制御や監視のために、被測定電流路に取り付けて被測定電流路に流れる電流を検出する電流センサが良く知られている。この種の電流センサとしては、ホール素子や磁気抵抗素子等の磁電変換素子を用いた電流センサが知られており、磁電変換素子の感度向上や外部磁場からの影響低減等のため、複数の磁電変換素子を用いられることがある。
このように複数の磁電変換素子を用いた電流センサでは、被測定電流路の周囲に発生する磁界の向きに合わせて、被測定電流路の周囲の仮想円上に複数の磁電変換素子を配設していた。
【0003】
しかしながら、上述したように仮想円上に磁電変換素子を配設すると、電流センサが大型化し、被測定電流路と近隣電流路との距離が短い場合に、電流センサを設置できないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1の電流センサでは、被測定電流路の位置を中心とし、当該被測定電流路と近隣電流路とを結ぶ方向を短軸とする仮想楕円上に複数の磁電変換素子を配設している。また、特許文献2の電流センサでは、仮想長方形、又は仮想楕円及び仮想長方形の上に複数の磁電変換素子を配設している。
当該電流センサによれば、近隣電流路の外来磁場の影響を大きく受けずに安定した電流検出ができると共に、小型化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2013/128993号
【特許文献2】国際公開WO2015/122064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電盤やインバーターの小型化によって、隣り合う電線の間隔が更に狭くなった。
このような背景から、電流センサには、被測定電流路と近隣電流路との距離がさらに短い場合においても設置可能であり、近隣電流路の外来磁場の影響を大きく受けずに安定した電流検出したいという要請がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、さらなる小型化が図れると共に、近隣電流路の外来磁場の影響を大きく受けずに安定した電流検出ができる電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明の電流センサは、配線基板と、前記配線基板に設けられ、被測定電流路を流れる電流によって発生する磁気を検出する複数の磁電変換素子とを備え、前記配線基板には、仮想矩形の中心に前記被測定電流路を位置させるための切欠が形成され、前記複数の磁電変換素子は、前記仮想矩形の4つの頂点に位置する4つの第1の前記磁電変換素子と、前記仮想矩形の中心に対して点対称位置にある少なくとも4つの第2の前記磁電変換素子とを有し、前記第1の磁電変換素子の感度軸の向きは、前記切欠に沿った前記被測定電流路の着脱方向と直交しており、前記第2の磁電変換素子の感度軸の向きは、前記着脱方向と平行であり、前記仮想矩形の中心に対して点対称位置にある前記第1の磁電変換素子同士及び前記第2の磁電変換素子同士の感度軸の向きは平行であり、第2の前記磁電変換素子が、前記仮想矩形の内側に位置している。
【0009】
この構成によれば、第1の磁電変換素子が頂点に位置する仮想矩形の内側に、第2の磁電変換素子を配置したことで、一直線上に第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子を配置した場合に比べて、第2の磁電変換素子よりも近隣電流路からの離れた第1の磁電変換素子に生じる近隣電流路の磁界を強くできる。これにより、近隣電流路の磁界に応じた+成分の合計と−成分の合計との絶対値を一致させ、高い精度で相殺できる。
【0010】
好適には、前記中心を通り前記着脱方向に平行な中心線に対して、一方側にある複数の前記第2の磁電変換素子と、他方側にある複数の前記第2の磁電変換素子とは、それぞれ前記中心線に平行な仮想直線上に配設されている。
【0011】
この構成によれば、仮想直線上で第2の磁電変換素子の位置を調整すればよく、測定精度を高める設計が容易になる。
【0012】
好適には、前記一方側にある複数の第2の磁電変換素子と、前記他方側にある複数の第2の磁電変換素子とは、前記中心線に対して線対称に配設されている。
【0013】
この構成によれば、中心線に対して線対称に第2の磁電変換素子が配置されるので、対称性が保たれ、地磁気のような一様な外来磁場を高い精度で相殺できる。
【0014】
好適には、前記仮想矩形の長辺は前記中心線に平行であり、その短辺は前記中心線に直交している。
【0015】
この構成によれば、第1の磁電変換素子が頂点に配置される仮想矩形の短辺を中心軸に直交するようにしたことで、磁電変換素子を配設する中心軸に直交する方向における必要な距離を短くできる。すなわち、被測定電流路と近隣電流路との距離を狭くできる。
【0016】
好適には、前記複数の第2の磁電変換素子は、前記仮想矩形の前記中心を中心とする仮想楕円上に配設されている。
【0017】
この構成によれば、仮想矩形の中心を中心とする仮想楕円上に第2の磁電変換素子を位置調整をすればよく、測定精度を高める設計が容易になる。また、被測定電流路と近隣電流路との距離を狭くできる。
【0018】
好適には、前記第1の磁電変換素子及び前記第2の磁電変換素子の感度軸が、前記仮想矩形の中心を囲む閉径路に沿って一方向を向くように、前記第1の磁電変換素子及び前記第2の磁電変換素子が配設されている。
【0019】
この構成によれば、磁電変換素子の感度軸と被測定電流路の磁界との方向を合わせることができ、被測定電流路の磁界を効率的に検出でき、測定精度を高めることができる。
【0020】
好適には、前記第1の磁電変換素子及び前記第2の磁電変換素子は、同一特性である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、さらなる小型化が図れると共に、近隣電流路の外来磁場の影響を大きく受けずに安定した電流検出ができる電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る電流センサを示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る電流センサを示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る電流センサの磁電変換素子の配置を説明するための図であって、図1に示すZ1側から見た配線基板の上面図である。
図4図3に示す電流センサの近隣電流路を説明するための図である。
図5図3に示す電流センサにおいて、図4に示す近隣電流路CN1からの磁界の影響を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態に係る電流センサの磁電変換素子の配置の第1変形例を説明するための図であって、図1に示すZ1側から見た配線基板の上面図である。
図7】本発明の実施形態に係る電流センサの磁電変換素子の配置の第2変形例を説明するための図であって、図1に示すZ1側から見た配線基板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る電流センサ101を示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る電流センサ101を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る電流センサ101を説明するための図であって、図1に示すZ1側からZ2側に見た配線基板16の上面図である。
【0024】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る電流センサ101は、被測定電流路CBに電流が流れたときに発生する磁気を検出する複数の磁電変換素子15と、複数の磁電変換素子15が配置された配線基板16とを備えて構成されている。また、電流センサ101は、配線基板16を収納する収納部11sを有する筐体11と、磁電変換素子15からの電気信号を取り出すための取出し端子13tを有したコネクタ13と、被測定電流路CBを固定し保持するための保持部材14と、を備えている。
【0025】
筐体11は、合成樹脂材料で形成されている。この筐体11は、上方が開口した箱状のケース31と、ケース31の開口部を塞ぐような板状のカバー41と、から構成され、ケース31内部に、配線基板16を収納する収納部11sが形成されている。
【0026】
ケース31には、その一辺側からケース31の中心側に向かって切り欠かれた凹部(凹溝)32が形成され、この凹部32内に被測定電流路CBが導入されて保持されるように構成されている。凹部32の奥壁32aは、被測定電流路CBの外周面と相補形状に形成されている。
【0027】
本実施形態では、凹部32の奥壁32aは、円筒形状の被測定電流路CBの外周面に対応するように円弧状に湾曲して形成されている。また、奥壁32aに連なるケース31の対向する内側壁32bには、クリップバネ14Kの自由端部側を係止する切欠32cが、それぞれ対峙する位置に形成されている。
【0028】
切欠32cは、内側壁32bの上端部側から下方に向かって切り欠かれ、入り口側の端面が、外方に向かって傾斜するように形成されている。被測定電流路CBは、その外周面の奥側を凹部32の奥壁32aに当接させた状態で、手前側を切欠32cから凹部32内に突出するクリップバネ14Kによって挟持されることで、筐体11に対して保持される。この凹部32の奥壁32aとクリップバネ14Kとで挟持される位置が、筐体11に対する被測定電流路CBの中心PPとなる。本実施形態では、中心PPが、後述する仮想矩形Lの中心PPとなる。
【0029】
カバー41は、一方の辺部に、ケース31の凹部32と対応するように同一形状の開口部42が形成され、この開口部42の形成された辺部と反対側の辺部に、コネクタ13の上端部を筐体11外部に露出させるための開口部43が形成されている。
【0030】
保持部材14は、被測定電流路CBを固定し保持するための部材であり、被測定電流路CBの外縁を挟み込んで保持するクリップバネ14Kと、被測定電流路CBが中心PPに配設された後にクリップバネ14Kを押さえる押し部材14Hとを備えている。
【0031】
押し部材14Hは、略直方体形状で形成されており、ケース31に形成された凹部32に強く嵌合されるサイズで作製されている。この押し部材14Hは、クリップバネ14Kを押さえた状態で、ケース31の凹部32内に保持される。
【0032】
配線基板16は、多層のプリント配線板(PCB)を用いられ、配線板上に設けられた銅(Cu)等の金属箔をパターニングして、配線パターンが形成されている。配線基板16は、ケース31の収納部11sに収納可能な大きさで形成されており、その一辺部に、被測定電流路CBが挿通されて且つ配設される切欠19が形成されている。すなわち、配線基板16は、収納部11sの底面部と相似形状に形成されており、ケース31の凹部32と相補形状の切欠部17が形成されている。
【0033】
図1及び図3に示すように、配線基板16の切欠19の近傍には、複数(10個)の磁電変換素子15が配置され、切欠19が形成される辺部と対向する辺部近傍にはコネクタ13が配設されている。なお、磁電変換素子15の詳細な配置位置については後述する。
【0034】
コネクタ13は、相手側コネクタ(図示省略)と電気的に接続する複数の端子を備えており、これら複数の端子の中に、磁電変換素子15からの電気信号を取り出すため取出し端子13tを有している。また、コネクタ13は、相手側コネクタ(図示省略)と嵌合するための絶縁基体13Kを備えている。絶縁基体13Kは、上方が開口した箱状に形成され、その内部に、取出し端子13tを含む複数の端子が、各端子間を絶縁した状態で保持され収納されている。なお、本実施形態では、磁電変換素子15からの電気信号を取り出すためにコネクタ13を用いたが、コネクタ13に限らず、例えば、フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuits)等を用いても良い。
【0035】
磁電変換素子15は、被測定電流路CBに電流が流れたときに発生する磁気を検出する電流センサ素子であって、例えば、巨大磁気抵抗効果を用いた磁気検出素子(GMR(Giant Magneto Resistive)素子という)を用いることが可能である。この磁電変換素子15は、説明を容易にするため詳細な図示は省略したが、GMR素子をシリコン基板上に作製した後、切り出されたチップを熱硬化性の合成樹脂でパッケージングし、信号の取り出しのためのリード端子がGMR素子と電気的に接続されて構成されている。そして、このリード端子により、配線基板16にはんだ付けがされている。
【0036】
図3に示すように、電流センサ101では、被測定電流路CBの中心PPの周囲に、4個の第1の磁電変換素子15a,15b,15c,15dと、6個の第2の磁電変換素子17a,17b,17c,17d,17e,17fとが配設さている。
第1の磁電変換素子15a,15b,15c,15dと、6個の第2の磁電変換素子17a,17b,17c,17d,17e,17fは、同一の磁電変換特性を有している。これにより、電流センサ101の測定精度を高めるための設計が容易になる。
【0037】
仮想矩形L1の中心PPは、前述したように、被測定電流路CBの横断面(X,Y断面)の中心となる。切欠19は、被測定電流路CBに対して電流センサ101を位置決めした際に、仮想矩形L1の中心PPに被測定電流路CBの中心を位置させることが可能な形状を有している。
図3に示すように、中心線L2に対して切欠19の左側(X2方向側)の配線基板16の表面には、第1の磁電変換素子15a,15bと第2の磁電変換素子17a,17b,17cが配設されている。また、Y1方向から見て切欠19の右側(X1方向側)の配線基板16の表面には、第1の磁電変換素子15c,15dと第2の磁電変換素子17d,17e,17fが配設されている。
【0038】
図3に示すように、中心PPを中心とする仮想矩形L1を規定した場合に、第1の磁電変換素子15a〜15dは、仮想矩形L1の4つの頂点に位置する。
具体的には、図3に示すように、中心PPを通り、被測定電流路CBの切欠32cに沿った着脱方向(Y1−Y2方向)に平行な中心線L2を規定した場合に、仮想矩形L1の長辺は中心線L2に平行であり、その短辺は中心線L2に直交している。
【0039】
また、第2の磁電変換素子17a〜17fは、仮想矩形L1の内側に位置し、仮想矩形L1の中心である中心PPに点対称位置にある。
具体的には、図3に示すように中心線L2に対してX2側に第2の磁電変換素子17a〜17cが位置し、X1側に第2の磁電変換素子17d〜17fが位置している。
図3に示す例では、第2の磁電変換素子17a〜17cはY1−Y2方向に平行な仮想直線L3上に位置し、第2の磁電変換素子17d〜17fはY1−Y2方向に平行な仮想直線L4上に位置している。仮想直線L3とL4とは、中心線L2に対して線対称である。
【0040】
第1の磁電変換素子15a、第2の磁電変換素子17a,17b,17c及び第1の磁電変換素子15bは、第1の長方形L1の中心PPに対して、それぞれ第1の磁電変換素子15c、第2の磁電変換素子17d,17e,17f及び第1の磁電変換素子15dとそれぞれ点対称に配設されている。
【0041】
このように第1の磁電変換素子15a〜15d及び第2の磁電変換素子17a〜17fを配設することで、磁電変換素子が円周上に等間隔で配設されている場合(比較例)と比較して、被測定電流路CBが挿通されて且つ配設される磁電変換素子の配置でありながら、磁電変換素子の配設スペースを小さくできる。
【0042】
すなわち、比較例に係る磁電変換素子の場合には、被測定電流路CBの配設位置を中心として周方向に等間隔で磁電変換素子が均等配置されている。そのため、磁電変換素子間から被測定電流路CBを導入して配設位置に配設する場合、磁電変換素子同士の素子間隔として、少なくとも被測定電流路CBが通過可能な間隔を確保する必要があるので、全ての磁電変換素子の配設領域が大きくなり、これに伴い配線基板が大型化してしまうことになる。
【0043】
一方、本実施形態に係る磁電変換素子15の配置の場合には、3個の第2の磁電変換素子17a,17b,17cが第2の長方形L3の長辺L31上に配設され、3個の第2の磁電変換素子17f,17e,17dが第2の長方形L3の長辺L32上に配設されている。
そのため、第2の磁電変換素子17a,17b,17cと第2の磁電変換素子17f,17e,17dとの配置に必要なX1−X2方向(X方向)の距離を短くできる。すなわち、被測定電流路CBと隣接する近隣電流路CN1,CN2との距離を狭くできる。
その結果、特に切欠19の形成方向と直交する方向(X1−X2方向)における磁電変換素子の配設領域を小さくすることができ、配線基板16の小型化、つまり電流センサ101の小型化が可能である。特に配電盤のように複数の電流路を、できるだけ狭い間隔で設けたい用途では、切欠19の左右の腕部18の幅を狭くできることが重要となる。
【0044】
第1の磁電変換素子15a〜15dの感度軸(磁気を感知する方向)の向きSJは、仮想矩形L1の短辺に平行、すなわち、切欠32cへの被測定電流路CBの着脱方向Y1−Y2と直交している。これにより、電流センサ101の測定精度を高める設計が容易になる。
具体的には、第1の磁電変換素子15a,15cの感度軸の向きSJはX1方向であり、第1の磁電変換素子15d,15aの感度軸の向きSJはX2方向である。
また、第2の磁電変換素子17a,17b,17cの感度軸の向きSJはY1方向であり、第2の磁電変換素子17d,17e,17fの感度軸の向きSJはY2方向である。
第1の磁電変換素子15a〜15d及び第2の磁電変換素子17a〜17fは、それらの感度軸の向きSJが、被測定電流路CBの中心である仮想矩形L1の中心PPを囲む閉径路に沿って一方向(本実施形態では時計回り方向)を向くように配設されている。
【0045】
これにより、第2の磁電変換素子17a,17b,17は、中心PPを中心に点対称位置にある第2の磁電変換素子17d,17e,17fと感度軸の向きSJが逆になる。
後段の演算回路では、第1の磁電変換素子15a〜15dの出力と第2の磁電変換素子17a〜17fの出力とを加算することで、被測定電流路CBの磁界に応じた成分を累積して有効化し、近隣電流路CNの磁界に応じた成分をキャンセルする。
【0046】
図4は、図3に示す電流センサ101の近隣電流路を説明するための図である。
図5は、図3に示す電流センサ101において、図4に示す近隣電流路CN1からの磁界の影響を説明するための図である。
図5に示すように、第2の磁電変換素子17d,17e,17fの位置は、X1側の近隣電流路CN1に近く、近隣電流路CN1からの磁界B1からの磁界が強い。しかも、第2の磁電変換素子17d,17e,17fの感度軸の向きと、近隣電流路CN1からの磁界B1の向きが平行に近い。但し、第2の磁電変換素子17d,17e,17fの感度軸の向きと、近隣電流路CN1からの磁界B1の向きは、ほぼ逆方向である。つまり、近隣電流路CN1からの磁界B1の感度軸方向成分は、感度軸方向と逆である。以上より、第2の磁電変換素子17d,17e,17fでは、近隣電流路CN1からの磁界B1が、負の符号の大きな絶対値で計測される。
【0047】
X2側の第2の磁電変換素子17a,17b,17cの位置は、X1側の近隣電流路CN1から遠く、近隣電流路CN1からの磁界B1からの磁界が弱い。第2の磁電変換素子17a,17b,17cの感度軸の向きと、近隣電流路CN1からの磁界B1の向きが平行に近い。第2の磁電変換素子17a,17b,17cの感度軸の向きと、近隣電流路CN1からの磁界B1の向きは、ほぼ同一方向である。以上より、第2の磁電変換素子17a,17b,17cでは、近隣電流路CN1からの磁界B1が、正の符号の小さな絶対値で計測される。
【0048】
X2側の第1の磁電変換素子15a,15bの位置は、X1側の近隣電流路CN1から遠く、近隣電流路CN1からの磁界B1からの磁界が弱い。第1の磁電変換素子15a,15bの感度軸の向きと、近隣電流路CN1からの磁界B1の向きは直交に近い。但し、近隣電流路CN1からの磁界B1の感度軸方向成分は、感度軸方向と同じである。以上より、第1の磁電変換素子15a,15bでは、近隣電流路CN1からの磁界B1が、正の符号の非常に小さな絶対値で計測される。
【0049】
X1側の第1の磁電変換素子15c,15dの位置は、X1側の近隣電流路CN1からやや近く、近隣電流路CN1からの磁界B1からの磁界がやや強い。第1の磁電変換素子15a,15bの感度軸の向きと、近隣電流路CN1からの磁界B1の向きは、平行ではなく、直交もしていない。但し、近隣電流路CN1からの磁界B1の感度軸方向成分は、感度軸方向と同じである。以上より、第1の磁電変換素子15c,15dでは、近隣電流路CN1からの磁界B1が、正の符号のやや大きな絶対値で計測される。しかも、本発明では、「X1側の第1の磁電変換素子15c,15d」を、近隣電流路CN1側(X1側)に近づけて配置することで、計測される値を大きくしている。
【0050】
以上説明したとおり、合計3つの第2の磁電変換素子17d,17e,17fによって、近隣電流路CN1からの磁界B1が、負の符号で計測される。一方、合計7つの第1の磁電変換素子15a,15b,15c,15d,第2の磁電変換素子17a,17b,17cによって、近隣電流路CN1からの磁界B1が、正の符号で計測される。
上述したとおり、第2の磁電変換素子17d,17e,17fによって、近隣電流路CN1からの磁界B1が大きく計測される。第2の磁電変換素子17a,17b,17cによって、近隣電流路CN1からの磁界B1が、小さく計測される。第1の磁電変換素子15a,15bによって、近隣電流路CN1からの磁界B1が、非常に小さく計測される。第1の磁電変換素子15c,15dによって、近隣電流路CN1からの磁界B1が、やや大きく計測される。
【0051】
従って、「合計3つの第2の磁電変換素子17d,17e,17fによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の合計(符号は負になる)」と、「合計7つの第1の磁電変換素子15a,15b,15c,15d,第2の磁電変換素子17a,17b,17cによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の合計(符号は正になる)」とが概ね一致する。本実施形態では、第1の磁電変換素子15c,15dの位置を近隣電流路CN1に近づけることによって、全ての磁電変換素子(第1の磁電変換素子15a,15b,15c,15d,第2の磁電変換素子17a,17b,17c,17d,17e,17f)で計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の合計を、精度良く0に近づけることができる。
【0052】
なお、第1の磁電変換素子15aと15bは、第1の磁電変換素子15c,15dと、中心線L2に対して、線対称な位置である。このため、第1の磁電変換素子15c,15dを近隣電流路CN1に近づけると、第1の磁電変換素子15a,15bは、近隣電流路CN1から遠ざかる。このため、第1の磁電変換素子15cと15dによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1を大きくすると、第1の磁電変換素子15aと15bによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1は小さくなる。つまり、変化の大小方向だけで考えると、第1の磁電変換素子15a〜15dの中心線L2からの距離を変えたことによる「第1の磁電変換素子15cと15dによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の大きさの変化」と、「第1の磁電変換素子15aと15bによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の大きさの変化」とは、相殺する。
【0053】
しかし、上述したとおり、「第1の磁電変換素子15aと15bによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の大きさ」は、非常に小さい。このため、「第1の磁電変換素子15cと15dによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の大きさの変化』と、『第1の磁電変換素子15aと15bによって計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の大きさの変化』とは、完全には相殺されない。よって、第1の磁電変換素子15a〜15dの中心線からの距離を変えることで、全ての磁電変換素子(第1の磁電変換素子15a,15b,15c,15d,第2の磁電変換素子17a,17b,17c,17d,17e,17f)で計測される近隣電流路CN1からの磁界B1の合計を、ほぼ0にできる。
【0054】
以上説明したように、電流センサ101によれば、近隣電流路CN1からの磁界の影響を精度良くキャンセルして、被測定電流路CBの電流を正確に検出できる。これにより、電流センサ101の検出精度を落とすことなく、さらなる小型化が図れる。
【0055】
図4のように電流センサ101が、2つの近隣電流路CN1、近隣電流路CN2に挟まれた場合、重ね合わせの理が成立する。このため、電流路CN1、CN、CN2が等間隔で配置されていれば、2つの近隣電流路CN1、近隣電流路CN2の磁界の影響を共に精度良く相殺できる。
【0056】
また、電流センサ101によれば、図3に示すように第1の磁電変換素子15a〜15d及び第2の磁電変換素子17a〜17fを配置したことで、磁電変換素子の配置エリアのX方向の幅を最小限にでき、被測定電流路CBと近隣電流路CN1,CN2との距離を狭くできる。これにより、配線基板16の小型化、つまり電流センサ101の小型化が可能である。特に、切欠19の左右の腕部18の幅が狭くできる。
【0057】
また、電流センサ101によれば、図3に示すように第1の磁電変換素子15a〜15d及び第2の磁電変換素子17a〜17fの感度軸の方向SJを規定したことで、磁電変換素子が円周上に等間隔で配設されている場合(比較例)と比較して、各磁電変換素子を配線基板16に実装する際に、容易に実装することができると共に、配線基板16と第1の磁電変換素子15a〜15d及び第2の磁電変換素子17a〜17fとの位置関係を容易に設計することができる。従って、被測定電流路CBの取付け角度や取付け位置等の精度を高めることができるので、測定精度を向上させることができる。
【0058】
電流センサ101では、切欠19の両側の2列の仮想直線L3,L4上に第2の磁電変換素子17a〜17fを配置すると共にでき仮想の長方形Lの4つの頂点に第1の磁電変換素子15a〜15dを位置調整をすればよく、測定精度を高める設計が容易になる。
【0059】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0060】
図6は、本発明の実施形態に係る電流センサの磁電変換素子の配置の第1変形例を説明するための図であって、図1に示すZ1側から見た配線基板の上面図である。
なお、図6に示すように、第1の磁電変換素子15dの感度軸の向きSJを第1の磁電変換素子15aとは逆のX1方向とし、第1の磁電変換素子15cの感度軸の向きSJを第1の磁電変換素子15bとは逆のX2方向とし、第2の磁電変換素子17d,17e,17fの感度軸の向きSJを第2の磁電変換素子17a,17b,17cと同じY1方向としてもよい。
【0061】
この場合は、後段の演算回路では、第1の磁電変換素子15a,15b及び第2の磁電変換素子17a,17b,17cの出力から、第1の磁電変換素子15c,15d及び第2の磁電変換素子17d,17e,17fの出力を減算することで、被測定電流路CBの磁界に応じた成分を累積して有効化し、近隣電流路CNの磁界に応じた成分をキャンセルする。
【0062】
図7は、本発明の実施形態に係る電流センサの磁電変換素子の配置の第2変形例を説明するための図であって、図1に示すZ1側から見た配線基板の上面図である。
図7に示すように、中心PPを中心とする仮想矩形L1を規定した場合に、第1の磁電変換素子15a〜15dは、仮想矩形L1の4つの頂点に位置する。
また、第2の磁電変換素子17a〜17fは、仮想矩形L1の内側に位置し、仮想矩形L1の中心である中心PPに点対称位置にある。
【0063】
具体的には、第2の磁電変換素子17a〜17fは、図6に示すように仮想楕円L5上に位置し、中心線L2に対してX2側に第2の磁電変換素子17a〜17cが位置し、X1側に第2の磁電変換素子17d〜17fが位置している。
第2の磁電変換素子17a〜17cと第2の磁電変換素子17d〜17fとはそれぞれ中心線L2に対して線対称に位置している。
図7の構成によっても、近隣電流路CNの磁界に応じた成分を精度良くキャンセルできる。
【0064】
なお、図7では、第2の磁電変換素子17b、17eが部分的に仮想矩形L1からはみ出ている。しかし、本発明における、磁電変換素子の位置は、磁電変換素子の中心の位置を意味する。このため、第2の磁電変換素子17a〜17fのパッケージの一部が、第1の磁電変換素子15a〜15dの中心を結ぶ仮想矩形L1からはみ出ていても、本発明に含まれる。
【0065】
また、上述した実施形態では、第1の磁電変換素子15a〜15d及び第2の磁電変換素子17a〜17fの全てを配線基板16の一方の面に配設した場合を例示したが、一部あるいは全部の磁電変換素子を他方の面に配設してもよい。
【0066】
また、上述した実施形態において、磁電変換素子の数は、第1の磁電変換素子が4つ、第2の磁電変換素子が4つ以上であれば、特に限定されない。
【0067】
また、磁電変換素子間の距離についても特に限定されない。
【0068】
また、上述した実施形態では、磁電変換素子としてGMR素子を好適に用いたが、磁気の方向を検知できる磁気検出素子であれば良く、MR(Magneto Resistive)素子、AMR(Anisotropic Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、ホール素子等であっても良い。但し、ホール素子等の場合は、GMR素子やMR素子の感度軸と異なるので、使用するホール素子の感度軸に合わせて、実装に工夫が必要である。
【符号の説明】
【0069】
101…電流センサ
11…筐体
13…コネクタ
15a〜15d…第1の磁電変換素子
16…配線基板
17a〜17f…第2の磁電変換素子
31…ケース
BB…中心
CB…被測定電流路
CN1,CN2…近隣電流路
L1…仮想矩形
L2…中心線
L3、L4…仮想直線
L5…仮想楕円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7