特許第6827071号(P6827071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827071
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】野球用アンダーシャツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20210128BHJP
   A41B 9/06 20060101ALI20210128BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A41D13/00 115
   A41B9/06 B
   A41D27/28 C
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-110613(P2019-110613)
(22)【出願日】2019年6月13日
(65)【公開番号】特開2020-196980(P2020-196980A)
(43)【公開日】2020年12月10日
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2019-99675(P2019-99675)
(32)【優先日】2019年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517170052
【氏名又は名称】デサントジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江連 悠次郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 晃
(72)【発明者】
【氏名】岡野 哲大
(72)【発明者】
【氏名】田中 悌二
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第204812250(CN,U)
【文献】 登録実用新案第3135972(JP,U)
【文献】 特開平11−061536(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2018−0076946(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
A41B 9/06
A41D 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、
前記脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長く、後半身側から前半身側に向かって身長方向の下方に延びるように形成されていることを特徴とする野球用アンダーシャツ。
【請求項2】
脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、
前記脇部は、前記脇開き部より身長方向の上方に存在する第1脇パーツと、前記脇開き部より身長方向の下方に存在する第2脇パーツを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、
前記第2脇パーツの上端部の外側に前記第1脇パーツの下端部が重ねられ、前記脇開き部は、第1脇パーツと第2脇パーツの重ね合わせ部に形成され
前記脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長いことを特徴とする野球用アンダーシャツ。
【請求項3】
第1脇パーツと第2脇パーツは、前記重ね合わせ部において、身幅方向の両側の接合部で互いに接合され、当該接合部間の長さが身長方向の下方にいくに従い短くなる請求項に記載の野球用アンダーシャツ。
【請求項4】
第1脇パーツの下端縁は身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成されている請求項またはに記載の野球用アンダーシャツ。
【請求項5】
第2脇パーツの上端縁は身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成されている請求項に記載の野球用アンダーシャツ。
【請求項6】
脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、
前記脇部は、前記脇開き部より身長方向の上方に存在する第1脇パーツと、前記脇開き部より身長方向の下方に存在する第2脇パーツを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、
第1脇パーツは第1脇パーツの下端縁において折り返されていないか、第2脇パーツは第2脇パーツの上端縁において折り返されていないか、第1脇パーツは第1脇パーツの下端縁において折り返されておらず、かつ、第2脇パーツは第2脇パーツの上端縁において折り返されておらず、
前記脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長いことを特徴とする野球用アンダーシャツ。
【請求項7】
第1脇パーツはフリーカット布地から構成され、第1脇パーツの端縁において折り返されていないか、第2脇パーツはフリーカット布地から構成され、第2脇パーツの上端縁において折り返されていないか、第1脇パーツはフリーカット布地から構成され、第1脇パーツの下端縁において折り返されておらず、かつ、第2脇パーツはフリーカット布地から構成され、第2脇パーツの上端縁において折り返されていない請求項に記載の野球用アンダーシャツ。
【請求項8】
前記フリーカット布地は、ポリウレタン糸またはポリウレタン層を有しない請求項に記載の野球用アンダーシャツ。
【請求項9】
脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、
前記脇部は、前記脇開き部より身長方向の上方に存在する第1脇パーツと、前記脇開き部より身長方向の下方に存在する第2脇パーツを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、
前記脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長く、
第1脇パーツは、第1脇パーツの下端縁の延在方向に沿った伸長応力が第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力よりも大きいことを特徴とする野球用アンダーシャツ。
【請求項10】
脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、
前記アンダーシャツは、胸部から腹部にかけて存在する前側パーツと、背骨に沿って存在する後側パーツと、前記脇部に、脇開き部より身長方向の上方に存在する第1脇パーツと、脇開き部より身長方向の下方に存在する第2脇パーツとを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、
前記脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長く、
第1脇パーツにおける第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、前側パーツと後側パーツの身長方向の伸長応力よりも大きいことを特徴とする野球用アンダーシャツ。
【請求項11】
脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、
前記アンダーシャツは、腕に沿って存在する袖パーツと、前記脇部に、脇開き部より身長方向の上方に存在する第1脇パーツと、脇開き部より身長方向の下方に存在する第2脇パーツとを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、
前記脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長く、
第1脇パーツにおける第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、袖パーツの身長方向の伸長応力よりも大きいことを特徴とする野球用アンダーシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野球用アンダーシャツに関するものであり、詳細には、野球用のユニフォームや練習着の下に着用するアンダーシャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野球用のユニフォームや練習着の下に着用されるアンダーシャツが知られている。野球用のアンダーシャツはプレイヤーの上半身の動きを妨げないことが望ましく、例えば特許文献1〜3には様々なスポーツ用アンダーシャツが開示されている。これらの特許文献に開示されるアンダーシャツは、伸縮性の高い生地から構成したり、身体の部位に応じて緊締力を変えたりすることで、所望の筋肉や関節の動きをサポートしたり、運動補助機能が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−49508号公報
【特許文献2】特開2004−44070号公報
【特許文献3】特開2013−253351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来、機能性を高めたアンダーシャツが様々知られているが、なかでも野球では、ピッチングやスローイングなどの際に腕や肩周りをスムーズに動かせることが重要となる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、腕を動かす動作をスムーズに行うことができる野球用アンダーシャツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の野球用アンダーシャツとは、脇部に前半身側から後半身側にかけて延在する脇開き部が設けられた野球用アンダーシャツであって、脇開き部は、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長いところに特徴を有する。本発明の野球用アンダーシャツは、脇部に脇開き部が形成されることにより、腕を上げた際に袖が腕の動きに追従しやすくなり、腕を上げる動作をスムーズに行うことができる。また、脇開き部が後半身側により長く形成されることにより、腕を前に出す動作をスムーズに行うことができる。そのため、ピッチングやスローイングなどの際に腕をスムーズに動かすことができる。
【0006】
脇開き部は、後半身側から前半身側に向かって身長方向の下方に延びるように形成されていることが好ましい。このように脇開き部が形成されていれば、腕を上げたり前に出す動作をした際に脇開き部が開いて、ピッチングやスローイングをよりスムーズに行うことができる。
【0007】
脇部は、脇開き部より身長方向の上方に存在する第1脇パーツと、脇開き部より身長方向の下方に存在する第2脇パーツを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部を形成することができる。この場合、第2脇パーツの上端部の外側に第1脇パーツの下端部が重ねられ、脇開き部は、第1脇パーツと第2脇パーツの重ね合わせ部に形成されていることが好ましい。このように脇開き部が形成されることにより、アンダーシャツの外側に着用するユニフォーム等に脇開き部が引っ掛かりにくくなり、腕を上げたり前に出す動作をスムーズに行いやすくなる。また、脇開き部を通して着用者の脇部が外側から見えにくくなり、アンダーシャツを着用した際の見栄えが良くなる。
【0008】
第1脇パーツと第2脇パーツは、重ね合わせ部において、身幅方向の両側の接合部で互いに接合され、当該接合部間の長さが身長方向の下方にいくに従い短くなるように形成されていることが好ましい。このように第1脇パーツと第2脇パーツが形成されていれば、腕を上げたり前に出したり、あるいは腕を旋回させたりした際に、いずれの腕の角度方向においても第1脇パーツが腕の動きに引っ張られやすくなる。そのため、第1脇パーツの下端縁にしわが多数形成されたり、弛みが生じることが起こりにくくなり、第1脇パーツの下端縁が、外側に着用されるユニフォーム等に引っ掛かりにくくなる。
【0009】
脇開き部が第1脇パーツと第2脇パーツの重ね合わせ部に形成される場合、第1脇パーツの下端縁は身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成されていてもよい。このように第1脇パーツの下端縁が形成されることにより、第1脇パーツの下端縁がたるみにくくなり、アンダーシャツの脇部の見栄えが良くなる。また、第1脇パーツの下端縁が、外側に着用されるユニフォーム等により引っ掛かりにくくなる。この場合、さらに、第2脇パーツの上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成されていてもよく、これにより、着用者が脇を開いたときに、湾曲状の第1脇パーツの下端縁と第2脇パーツの上端縁によって脇開き部により広く開口が形成されやすくなり、脇開き部における通気性を高めることができる。また、ピッチングやスローイングの際、第1脇パーツと第2脇パーツの重ね合わせ部の身幅方向の両側に身長方向のせん断歪みが生じても、重ね合わせ部にしわや弛みが生じにくくなり、腕の旋回動作をスムーズに行いやすくなる。
【0010】
第1脇パーツは第1脇パーツの下端縁において折り返されていないか、第2脇パーツは第2脇パーツの上端縁において折り返されていないか、第1脇パーツは第1脇パーツの下端縁において折り返されておらず、かつ、第2脇パーツは第2脇パーツの上端縁において折り返されていないことが好ましい。これにより、脇開き部の近傍がごわつかずに柔軟に形成され、着用者がアンダーシャツを着用した際に脇部に違和感を覚えにくくなる。
【0011】
上記のように第1脇パーツまたは第2脇パーツが形成される場合、第1脇パーツはフリーカット布地から構成され、第1脇パーツの端縁において折り返されていないか、第2脇パーツはフリーカット布地から構成され、第2脇パーツの上端縁において折り返されていないか、第1脇パーツはフリーカット布地から構成され、第1脇パーツの下端縁において折り返されておらず、かつ、第2脇パーツはフリーカット布地から構成され、第2脇パーツの上端縁において折り返されていないことが好ましい。このように第1脇パーツと第2脇パーツが構成されることにより、第1脇パーツの下端縁や第2脇パーツの上端縁でほつれが生じにくくなる。フリーカット布地は、ポリウレタン糸またはポリウレタン層を有しないものであることが好ましく、これにより、脇開き部の近傍のごわつきが抑えられ、脇部を軽量に形成することができる。
【0012】
第1脇パーツは、第1脇パーツの下端縁の延在方向に沿った伸長応力が第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このように第1脇パーツが構成されていれば、第1脇パーツは、第1脇パーツの下端縁の延在方向よりも、第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向に対して伸長しやすくなる。脇部は、腕を上げ下ろしする際に、身長方向に対して特に負荷がかかるため、このように第1脇パーツが構成されていれば、腕を伸ばした方向に沿って第1脇パーツが伸長しやすくなり、腕をスムーズに動かしやすくなる。
【0013】
アンダーシャツは、胸部から腹部にかけて存在する前側パーツと、背骨に沿って存在する後側パーツと、脇部に第1脇パーツと第2脇パーツとを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、第1脇パーツにおける第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力が、前側パーツと後側パーツの身長方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このようにアンダーシャツが構成されていれば、腕を上げる動作をした際に、第1脇パーツよりも前側パーツと後側パーツの方が伸長しやすくなる。そのため、脇部や肩周りにおける突っ張り感が低減し、腕を上げる動作をスムーズに行いやすくなる。
【0014】
アンダーシャツは、腕に沿って存在する袖パーツと、脇部に第1脇パーツと第2脇パーツとを有し、第1脇パーツと第2脇パーツによって脇開き部が形成され、第1脇パーツにおける第1脇パーツの下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力が、袖パーツの身長方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このようにアンダーシャツが構成されていれば、腕を上げたり前に出す動作をした際に、第1脇パーツよりも袖パーツの方が伸長しやすくなる。そのため、脇開き部が形成されていることと相まって、脇部や肩周りにおける突っ張り感が低減し、腕を動かす動作をスムーズに行いやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の野球用アンダーシャツは、脇部に脇開き部が形成されることにより、腕を上げた際に袖が腕の動きに追従しやすくなり、腕を上げる動作をスムーズに行うことができる。また、脇開き部が後半身側により長く形成されることにより、腕を前に出す動作をスムーズに行うことができる。そのため、ピッチングやスローイングなどの際に腕をスムーズに動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の野球用アンダーシャツの一例を表し、アンダーシャツを前側から見た全体図を表す。
図2図1に示した野球用アンダーシャツを後側から見た全体図を表す。
図3】アンダーシャツの脇部の平面図の一例を表す。
図4】アンダーシャツの脇部の平面図の他の一例を表す。
図5】アンダーシャツの脇部の平面図の他の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の野球用アンダーシャツについて、図面を参照して説明する。なお、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。図1図4には、本発明の野球用アンダーシャツの一例を示した。図1はアンダーシャツを前側から見た全体図を表し、図2はアンダーシャツを後側から見た全体図を表し、図3はアンダーシャツの脇部の平面図の一例を表し、図4および図5はアンダーシャツの脇部の平面図の他の例を表す。図1および図2では、アンダーシャツを構成する各パーツが一点鎖線で区分して表されている。
【0018】
野球用アンダーシャツ1は袖を有する。アンダーシャツ1の袖の長さは特に限定されないが、本発明の効果がより奏効される点から袖は少なくとも肘まで延びていることが好ましく、前腕まで延びていることがより好ましい。アンダーシャツ1は、例えば五分袖、七分袖または長袖のシャツであることが好ましい。
【0019】
アンダーシャツ1は、複数のパーツを組み合わせて構成することができる。図面に示したアンダーシャツ1は、胸部から腹部に存在する前側パーツ2と、背骨に沿って存在する後側パーツ3とを有し、脇部に脇パーツ4,5が設けられている。脇パーツ4,5は、アンダーシャツ1の左右両側において、身幅方向に対し前側パーツ2と後側パーツ3の間に設けられる。腕には袖パーツ8が設けられている。図面に示したアンダーシャツ1では、袖パーツ8が腕から肩甲骨にかけて延在しているが、袖パーツ8は腕の付け根や肩まで延在し、肩甲骨まで延在しないものであってもよい。また、アンダーシャツ1は他の構成パーツを有するものであってもよい。各パーツは、編布、織布等の布地から構成されることが好ましく、当該布地は伸縮性を有することが好ましい。各パーツは、縫製、シームテープ、熱融着、接着剤等の公知の接合手段により、互いに接続することができる。縫製方法は特に限定されないが、縫合部分での引っ掛かりが少なくなる点から、フラットシーマ(4本針縫製)を採用することが好ましい。
【0020】
アンダーシャツ1において、身長方向とは、着用者の頭から足にかけての方向に相当し、身幅方向とは、着用者の左右方向に相当する。アンダーシャツ1の身長方向と身幅方向は、着用者がアンダーシャツ1を着用した状態で定められる。身長方向に対しては上方と下方が定められ、身幅方向に対しては、身幅方向の中心線(着用者の左右方向の中心線に対応)を基準に、内方と外方が定められる。
【0021】
アンダーシャツ1は前半身と後半身を有する。前半身と後半身は、アンダーシャツ1の体側部を身長方向に延びる境界線によって区分され、アンダーシャツ1を平面状に置いたときの前側部分を前半身とし、後側部分を後半身とする。前半身と後半身は、アンダーシャツ1を構成する各パーツとは無関係に規定される。
【0022】
アンダーシャツ1の脇部には、脇開き部6が設けられている。脇部は、袖の付け根の内側部分を含む部分、すなわち着用者の胴体と腕の接続部の内側部分を含む部分であり、例えば脇を閉じた状態で上腕(好ましくは上腕の上半分の部分)と体側部に挟まれた部分に相当する。脇部には、アンダーシャツ1の前半身側から後半身側にかけて脇開き部6が設けられている。具体的には、脇部は、脇開き部6より身長方向の上方に存在する第1脇パーツ4と、脇開き部6より身長方向の下方に存在する第2脇パーツ5を有し、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5によって脇開き部6が形成されている。脇開き部6は脇部の少なくとも一部に形成され、例えば脇部から背中(特に肩甲骨)にかけて延在していてもよい。アンダーシャツ1は、脇開き部6において、アンダーシャツ1の内側の空間と外側の空間が連通する。
【0023】
脇開き部6は、前半身側から後半身側にかけて延在し、後半身側に存在している部分が前半身側に存在している部分よりも長くなっている。このように脇開き部6が形成されることにより、野球における様々な動作をスムーズに行うことができる。例えば脇開き部6を有しない場合は、腕を上げる動作の際に、袖が腕の動きにスムーズに追従せず、腕や肩周りが突っ張りやすくなる。しかし、脇部に脇開き部6が形成されることにより、腕を上げた際に袖が腕の動きに追従しやすくなり、腕を上げる動作をスムーズに行うことができる。また、脇開き部6が後半身側により長く形成されることにより、腕を前に出す動作をスムーズに行うことができる。そのため、アンダーシャツ1を着用することにより、特にピッチングやスローイングの動作をスムーズに行うことができる。また、肩周りの動きをスムーズにしつつ、脇部以外の箇所、例えば腕や胸部におけるサポート機能を好適に発揮させることが可能となる。
【0024】
脇開き部6は、肩甲骨またはその近傍まで延在していることが好ましい。これにより、肩周りを動かした際に肩甲骨の動きが阻害されにくくなり、特にピッチングやスローイングの際に腕を前に出す動作をスムーズに行いやすくなる。肩甲骨の近傍としては、肩甲骨から3cm以内が好ましく、2cm以内がより好ましく、1cm以内がさらに好ましい。
【0025】
脇開き部6は、アンダーシャツ1の前半身には長く形成されなくてよい。脇開き部6の前側は、例えば、乳頭よりも身幅方向の内方に延在しないことが好ましい。
【0026】
脇開き部6の長さは、例えば4cm以上が好ましく、6cm以上がより好ましく、8cm以上がさらに好ましい。一方、脇開き部6の長さの上限については、20cm以下が好ましく、18cm以下がより好ましく、15cm以下がさらに好ましい。前半身側に形成された脇開き部6の長さL1と後半身側に形成された脇開き部6の長さL2との比L1/L2は、肩周りの動きを広範囲にわたってスムーズにする点から、10/90以上が好ましく、20/80以上がより好ましく、またアンダーシャツ1の前半身側の見栄えを良くする点から、45/55以下が好ましく、40/60以下がより好ましい。
【0027】
脇開き部6は、身幅方向に平行に延びるように形成されていてもよく、身幅方向に対して斜めに延びるように形成されていてもよい。また、脇開き部6は、直線状に形成されていてもよく、曲線状に形成されていてもよい。脇開き部6が身幅方向に対して斜めに延びるように形成される場合、脇開き部6は、アンダーシャツ1の後半身側から前半身側に向かって身長方向の下方に延びるように形成されていてもよく、上方に延びるように形成されていてもよい。脇開き部6は、身幅方向に対して60°以下の角度で延びることが好ましく、50°以下がより好ましく、40°以下がさらに好ましい。
【0028】
脇開き部6は、アンダーシャツ1の後半身側から前半身側に向かって身長方向の下方に延びるように形成されていることが好ましい。このように脇開き部6が形成されていれば、腕を上げたり前に出す動作をした際に、脇開き部6が開きやすくなり、ピッチングやスローイングの動作がよりスムーズになる。
【0029】
脇開き部6は、例えば図3に示すように、スリット状に形成することができる。この場合、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5は、第1脇パーツ4の下端縁と第2脇パーツ5の上端縁とが平面視で互いに対向するように配置され、第1脇パーツ4の下端縁と第2脇パーツ5の上端縁の間のスリットが脇開き部6として機能する。脇開き部6がスリット状に形成される場合、スリットの両端部間の距離が脇開き部6の長さとなり、スリットの延在方向が脇開き部6の延在方向となる。
【0030】
脇開き部6は、図4に示すように、第2脇パーツ5の上端部の外側に第1脇パーツ4の下端部が重ねられ、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の重ね合わせ部7に形成されるものであってもよい。第1脇パーツ4の下端部は、第1脇パーツ4の下端縁を含み、第2脇パーツ5と重なる部分と規定され、第2脇パーツ5の上端部は、第2脇パーツ5の上端縁を含み、第1脇パーツ4と重なる部分と規定される。脇開き部6は、重ね合わせ部7において、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5が身幅方向の両側の接合部で互いに接合され、その間で非接合とされることにより形成される。この場合、第1脇パーツ4の下端縁の非接合部分の両端部間の距離が脇開き部6の長さとなり、第1脇パーツ4の下端縁の非接合部分の延在方向が脇開き部6の延在方向となる。
【0031】
図面には示されていないが、脇開き部6は、第1脇パーツ4の下端部の外側に第2脇パーツ5の上端部が重ねられ、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の重ね合わせ部に形成されるものであってもよい。この場合は、第2脇パーツ5の上端縁の非接合部分の両端部間の距離が脇開き部6の長さとなり、第2脇パーツ5の下端縁の非接合部分の延在方向が脇開き部6の延在方向となる。
【0032】
脇開き部6は、図4に示すように、第2脇パーツ5の上端部の外側に第1脇パーツ4の下端部が重ねられ、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の重ね合わせ部7に形成されるものであることが好ましい。このように脇開き部6が形成されることにより、アンダーシャツ1の外側に着用するユニフォーム等に脇開き部6が引っ掛かりにくくなり、腕を上げたり前に出す動作をスムーズに行いやすくなる。また、脇開き部6を通して着用者の脇部が外側から見えにくくなり、アンダーシャツ1を着用した際の見栄えが良くなる。
【0033】
図5には、図4に示した脇部の変形例を示した。図4では、第1脇パーツ4の下端縁と第2脇パーツ5の上端縁が直線状に形成されていたが、図5に示すように、第1脇パーツ4の下端縁は曲線状に形成されていてもよく、第2脇パーツ5の上端縁は曲線状に形成されていてもよい。なかでも、第2脇パーツ5の上端部の外側に第1脇パーツ4の下端部が重ねられて脇開き部6が形成される場合は、第1脇パーツ4の下端縁が身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成されることが好ましい。このように第1脇パーツ4の下端縁が形成されることにより、第1脇パーツ4の下端縁がたるみにくくなり、アンダーシャツ1の脇部の見栄えが良くなる。また、第1脇パーツ4の下端縁が、外側に着用されるユニフォーム等により引っ掛かりにくくなる。なお、このように第1脇パーツ4の下端縁が曲線状に形成される場合、第1脇パーツ4の下端縁の非接合部分の両端部を結ぶ直線の延在方向が、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向となり、また脇開き部6の延在方向となる。
【0034】
上記のように第1脇パーツ4の下端縁が身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成される場合、第1脇パーツ4の下端縁の非接合部分の両端部を結ぶ直線の長さをL1Hとし、第1脇パーツ4の下端縁上の点と当該直線との最大距離をL1Vとすると、L1VはL1Hの0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましく、また0.6倍以下が好ましく、0.5倍以下がより好ましく、0.4倍以下がさらに好ましい。
【0035】
第2脇パーツ5の上端部の外側に第1脇パーツ4の下端部が重ねられて脇開き部6が形成される場合は、図5に示すように、第1脇パーツ4の下端縁が身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成され、かつ、第2脇パーツ5の上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成されることも好ましい。このように第1脇パーツ4の下端縁と第2脇パーツ5の上端縁が形成されていれば、着用者が脇を開いたときに、湾曲状の第1脇パーツ4の下端縁と第2脇パーツ5の上端縁によって脇開き部6により広く開口が形成されやすくなり、脇開き部6における通気性を高めることができる。また、ピッチングやスローイングの際、第1脇パーツと第2脇パーツの重ね合わせ部の身幅方向の両側に身長方向のせん断歪みが生じても、重ね合わせ部にしわや弛みが生じにくくなり、腕の旋回動作をスムーズに行いやすくなる。さらに、第2脇パーツ5の上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成されることによって、第2脇パーツ5の上端縁が着用者の脇に接触しにくくなり、アンダーシャツ1の着用感をより高めることができる。この場合、脇開き部6を着用者の脇のより近くに設けることが可能となり、それにより脇部における通気性をより高めることができる。
【0036】
上記のように第2脇パーツ5の上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成される場合、第2脇パーツ5の上端縁の非接合部分の両端部を結ぶ直線の長さをL2Hとし、第2脇パーツ5の上端縁上の点と当該直線との最大距離をL2Vとすると、L2VはL2Hの0.05倍以上が好ましく、0.1倍以上がより好ましく、また0.6倍以下が好ましく、0.5倍以下がより好ましく、0.4倍以下がさらに好ましい。
【0037】
上記では、第2脇パーツ5の上端部の外側に第1脇パーツ4の下端部が重ねられて脇開き部6が形成される場合において、第1脇パーツ4の下端縁が身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成される態様、または、第1脇パーツ4の下端縁が身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成され、かつ、第2脇パーツ5の上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成される態様を説明したが、アンダーシャツ1は、第1脇パーツ4の下端縁が直線状に形成され、第2脇パーツ5の上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成されてもよい。
【0038】
図面には示されていないが、第1脇パーツ4の下端部の外側に第2脇パーツ5の上端部が重ねられて脇開き部6が形成される場合は、第2脇パーツ5の上端縁が身長方向の下方に凸となる湾曲状に形成されることが好ましく、また第1脇パーツ4の下端縁が身長方向の上方に凸となる湾曲状に形成されることが好ましい。この場合は、第2脇パーツ5の上端縁の非接合部分の両端部を結ぶ直線の延在方向が、第2脇パーツ5の上端縁の延在方向となり、また脇開き部6の延在方向となる。
【0039】
脇開き部6が、第2脇パーツ5の上端部の外側に第1脇パーツ4の下端部が重ねられた重ね合わせ部7に形成される場合、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5は、重ね合わせ部7において身幅方向の両側で互いに接合された接合部間の長さが、身長方向の下方にいくに従い短くなるように形成されていることが好ましい。なお、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の接合部間の長さとは、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に対して平行な方向に対する長さを意味する。第1脇パーツ4の下端縁が曲線状に形成される場合は、第1脇パーツ4の下端縁の非接合部分の両端部を結ぶ直線の延在方向に対して平行な方向に対する長さを、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の接合部間の長さとする。このように第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の重ね合わせ部7が形成されていれば、腕を上げたり前に出したり、あるいは腕を旋回させたりした際に、いずれの腕の角度方向においても第1脇パーツ4が腕の動きに引っ張られやすくなる。そのため、第1脇パーツ4の下端縁にしわが多数形成されたり、弛みが生じることが起こりにくくなり、第1脇パーツ4の下端縁が、外側に着用されるユニフォーム等に引っ掛かりにくくなる。
【0040】
第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の重ね合わせ部7は、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の長さ(最短長さ)が1cm以上であることが好ましく、2cm以上がより好ましく、3cm以上がさらに好ましい。このように重ね合わせ部7が形成されることにより、腕を動かした際に第2脇パーツ5の上端縁が露出しにくくなり、脇開き部6が、外側に着用されるユニフォーム等に引っ掛かりにくくなる。一方、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の重ね合わせ部7は、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の長さ(最短長さ)が12cm以下が好ましく、10cm以下がより好ましく、8cm以下がさらに好ましい。これにより、脇開き部6における通気性を高めることができる。
【0041】
第1脇パーツ4は、第1脇パーツ4の下端縁において折り返されていないことが好ましい。第2脇パーツ5は、第2脇パーツ5の上端縁において折り返されていないことが好ましい。これにより、脇開き部6の近傍がごわつかずに柔軟に形成され、着用者がアンダーシャツ1を着用した際に脇部に違和感を覚えにくくなる。この場合、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の少なくとも一方が上記のように形成されていることが好ましく、第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の両方が上記のように形成されていることがより好ましい。
【0042】
第1脇パーツ4が第1脇パーツ4の下端縁において折り返されずに形成される場合、第1脇パーツ4が布材から構成されていると、当該布材が第1脇パーツ4の下端縁でほつれるおそれがある。同様に、第2脇パーツ5が第2脇パーツ5の上端縁において折り返されずに形成される場合、第2脇パーツ5が布材から構成されていると、当該布材が第2脇パーツ5の上端縁でほつれるおそれがある。このような布材のほつれを防ぐため、第1脇パーツ4は下端縁にかがり縫いが施されていてもよく、第2脇パーツ5は上端縁にかがり縫いが施されていてもよい。これにより、第1脇パーツ4が下端縁で折り返されたり、第2脇パーツ5が上端縁で折り返される場合と比べて、脇開き部6の近傍のごわつきを低減することができる。
【0043】
なお、第1脇パーツ4の下端縁や第2脇パーツ5の上端縁にかがり縫いが施される場合は、かがり縫いが施されない場合と比べると、脇開き部6の近傍の柔軟性がいくらか低下することは避けられない。従って、脇開き部6の近傍の柔軟性をより高める点から、第1脇パーツ4や第2脇パーツ5はフリーカット布地から構成されていることが好ましい。すなわち、第1脇パーツ4はフリーカット布地から構成され、第1脇パーツ4の端縁において折り返されていないことが好ましく、第2脇パーツ5はフリーカット布地から構成され、第2脇パーツ5の上端縁において折り返されていないことが好ましい。このように第1脇パーツ4と第2脇パーツ5が構成されることにより、第1脇パーツ4の下端縁や第2脇パーツ5の上端縁を切断縁から形成し、特にほつれ防止のための縫製加工を施さなくても、第1脇パーツ4の下端縁や第2脇パーツ5の上端縁で布材のほつれが生じにくくなる。また、脇開き部6の近傍での柔軟性を高めることができるため、アンダーシャツ1を着用した際に、着用者が脇部に違和感を覚えにくくなる。より好ましくは、アンダーシャツ1は、第1脇パーツ4がフリーカット布地から構成され、第1脇パーツ4の端縁において第1脇パーツ4が折り返されておらず、かつ、第2脇パーツ5がフリーカット布地から構成され、第2脇パーツ5の上端縁において第2脇パーツ5が折り返されないように形成される。
【0044】
フリーカット布地とは、布地を切断した際の布地端の処理が不要な布地を意味する。フリーカット布地としては、例えば、弾性糸(例えばポリウレタン糸)を布地の編組織に編み込み、その編み込み構造によって布地端をほつれにくくしたもの;布地の編組織に融着糸を編み込み、熱処理を加えることによって、布地端をほつれにくくしたもの;布地に樹脂層(例えばポリウレタン層)を固着させることによって、布地端をほつれにくくしたもの;高密度編布や高密度織布から布地を構成することによって、布地端をほつれにくくしたもの等が挙げられる。なお、脇開き部6の近傍のごわつきを抑え、軽量に形成する点から、フリーカット布地はポリウレタン糸またはポリウレタン層を有しないことが好ましく、高密度編布または高密度織布から構成されることがより好ましい。
【0045】
第1脇パーツ4は、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に沿った伸長応力が、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このように第1脇パーツ4が構成されていれば、第1脇パーツ4が、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向よりも、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向に対して伸長しやすくなる。脇部は、腕を上げ下ろしする際に、身長方向に対して特に負荷がかかるため、このように第1脇パーツ4が構成されていれば、腕を伸ばした方向に沿って第1脇パーツ4が伸長しやすくなり、腕をスムーズに動かしやすくなる。
【0046】
第2脇パーツ5も、第1脇パーツ4と同じように、腕を伸ばした方向に沿って第2脇パーツ5が伸長しやすいことが好ましい。従って、第2脇パーツ5は、第2脇パーツ5の上端縁の延在方向に沿った伸長応力が、第2脇パーツ5の上端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このように第2脇パーツ5が構成されていれば、第2脇パーツ5は、第2脇パーツ5の下端縁の延在方向よりも、第2脇パーツ5の下端縁の延在方向に垂直な方向に対して伸長しやすくなる。
【0047】
上記に説明した第1脇パーツ4と第2脇パーツ5の伸長応力は、第1脇パーツ4または第2脇パーツ5を所定の方向に50%伸長させた際の伸長応力として規定される。伸長応力は、測定対象となる試験片を引張試験機で引っ張り、その際の応力を測定することにより求める。具体的には、1インチ(2.54cm)の幅で切り出した試験片を、つかみ間隔が100mmとなるように留め具間に固定する。そして、試験片を引張速度200mm/分で引っ張りながら、留め具間の距離が150mmになったときの応力を測定する。後述する前側パーツ2と後側パーツ3の伸長応力についても、同様にして求める。
【0048】
第1脇パーツ4を、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF1Hとし、第1脇パーツ4を、第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向に50%伸長させたときの伸長応力をF1Vとしたとき、F1HはF1Vの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。一方、第1脇パーツ4は、伸長応力の異方性が強すぎないことが望ましいことから、F1HはF1Vの3.0倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましい。
【0049】
第2脇パーツ5を、第2脇パーツ5の下端縁の延在方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF2Hとし、第2脇パーツ5を、第2脇パーツ5の下端縁の延在方向に垂直な方向に50%伸長させたときの伸長応力をF2Vとしたとき、F2HはF2Vの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、また3.0倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましい。
【0050】
1HとF2Hの具体的な値としては、例えば、7.0N以上が好ましく、10.0N以上がより好ましく、また25.0N以下が好ましく、20.0N以下がより好ましい。F1VとF2Vは、例えば、5.0N以上が好ましく、6.0N以上がより好ましく、また20.0N以下が好ましく、15.0N以下がより好ましい。
【0051】
第1脇パーツ4における第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、前側パーツ2と後側パーツ3の身長方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このようにアンダーシャツ1が構成されていれば、腕を上げる動作をした際に、第1脇パーツ4よりも前側パーツ2と後側パーツ3の方が伸長しやすくなる。そのため、脇部や肩周りにおける突っ張り感が低減し、腕を上げる動作をスムーズに行いやすくなる。
【0052】
第1脇パーツ4における第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、前側パーツ2と後側パーツ3の身幅方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このようにアンダーシャツ1が構成されていれば、腕を前に出す動作をした際に、第1脇パーツ4よりも前側パーツ2と後側パーツ3の方が伸長しやすくなる。そのため、脇部や肩周りにおける突っ張り感が低減し、腕を前に出す動作をスムーズに行いやすくなる。
【0053】
上記のように第1脇パーツ4における第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力が、前側パーツ2と後側パーツ3の身長方向の伸長応力と身幅方向の伸長応力よりも大きい場合、前側パーツ2と後側パーツ3は、身長方向の伸長応力が身幅方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。ピッチングやスローイングでは、腕は特に前に強く出すように動かすため、そのような動作をよりスムーズに行えるようにすることが好ましい。そのため、前側パーツ2と後側パーツ3が、身長方向の伸長応力が身幅方向の伸長応力よりも大きくなるように構成されていれば、前側パーツ2と後側パーツ3は身幅方向により伸長しやすくなり、脇開き部6が設けられることと相まって、腕を前に向かってよりスムーズに動かしやすくなる。
【0054】
第2脇パーツ5も、上記のように構成されていることが好ましい。すなわち、第2脇パーツ5における第2脇パーツ5の上端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、前側パーツ2と後側パーツ3の身長方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。また、第2脇パーツ5における第2脇パーツ5の上端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、前側パーツ2と後側パーツ3の身幅方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。
【0055】
前側パーツ2を身長方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF3Vとし、後側パーツ3を身長方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF4Vとしたとき、F1V(またはF2V)はF3VとF4Vの1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、また2.5倍以下が好ましく、2.0倍以下がより好ましい。前側パーツ2を身幅方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF3Hとし、後側パーツ3を身幅方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF4Hとしたとき、F1V(またはF2V)はF3HとF4Hの1.5倍以上が好ましく、2.0倍以上がより好ましく、また8.0倍以下が好ましく、6.0倍以下がより好ましい。F3VはF3Hの1.5倍以上が好ましく、1.8倍以上がより好ましく、また6.0倍以下が好ましく、5.0倍以下がより好ましい。F4VはF4Hの1.5倍以上が好ましく、1.8倍以上がより好ましく、また6.0倍以下が好ましく、5.0倍以下がより好ましい。
【0056】
3VとF4Vの具体的な値としては、例えば、2.0N以上が好ましく、3.0N以上がより好ましく、また12.0N以下が好ましく、10.0N以下がより好ましい。F3HとF4Hは、例えば、1.0N以上が好ましく、1.5N以上がより好ましく、また8.0N以下が好ましく、6.0N以下がより好ましい。
【0057】
第1脇パーツ4における第1脇パーツ4の下端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、袖パーツ8の身長方向(すなわち腕の延在方向)の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このようにアンダーシャツ1が構成されていれば、腕を上げたり前に出す動作をした際に、第1脇パーツ4よりも袖パーツ8の方が伸長しやすくなる。そのため、脇開き部6が形成されていることと相まって、脇部や肩周りにおける突っ張り感が低減し、腕を動かす動作をスムーズに行いやすくなる。
【0058】
第2脇パーツ5も、上記のように構成されていることが好ましい。すなわち、第2脇パーツ5における第2脇パーツ5の上端縁の延在方向に垂直な方向の伸長応力は、袖パーツ8の身長方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。
【0059】
袖パーツ8を身長方向に沿って50%伸長させたときの伸長応力をF5Vとしたとき、F1V(またはF2V)はF5Vの1.5倍以上が好ましく、2.0倍以上がより好ましく、また8.0倍以下が好ましく、6.0倍以下がより好ましい。F5Vの具体的な値としては、例えば、1.0N以上が好ましく、1.5N以上がより好ましく、また8.0N以下が好ましく、6.0N以下がより好ましい。
【0060】
前側パーツ2と後側パーツ3の身長方向の伸長応力は、袖パーツ8の身長方向の伸長応力よりも大きいことが好ましい。このようにアンダーシャツ1が構成されていれば、腕を上げたり前に出す動作をした際に、前側パーツ2や後側パーツ3よりも袖パーツ8の方が伸長しやすくなる。そのため、腕を動かす動作、特に肘を曲げ伸ばしする動作をよりスムーズに行いやすくなる。F3V(またはF4V)はF5Vの1.5倍以上が好ましく、1.8倍以上がより好ましく、また6.0倍以下が好ましく、5.0倍以下がより好ましい。
【0061】
アンダーシャツ1を構成する各パーツは、編布または織布から構成されることが好ましい。編布の編組織は特に限定されず、公知の編組織を採用すればよい。編布の編組織としては、平編、ゴム編、両面編、ハーフ編等が挙げられる。織布の織組織は特に限定されず、公知の織組織を採用すればよい。織布の織組織としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。より好ましくは、アンダーシャツ1を構成する各パーツは編布から構成される。
【符号の説明】
【0062】
1:野球用アンダーシャツ
2:前側パーツ
3:後側パーツ
4:第1脇パーツ
5:第2脇パーツ
6:脇開き部
7:重ね合わせ部
8:袖パーツ
図1
図2
図3
図4
図5