特許第6827087号(P6827087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827087
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】脊椎修復システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20210128BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61B17/70
   A61B17/86
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-175573(P2019-175573)
(22)【出願日】2019年9月26日
(62)【分割の表示】特願2017-225688(P2017-225688)の分割
【原出願日】2017年11月24日
(65)【公開番号】特開2020-14877(P2020-14877A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2019年10月1日
(31)【優先権主張番号】62/428,103
(32)【優先日】2016年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/645,264
(32)【優先日】2017年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514318275
【氏名又は名称】ストライカー・ユーロピアン・ホールディングス・I,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】エリカ・コービン
(72)【発明者】
【氏名】ローリー・ドンブロウスキー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・エル・ブッシュ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ポール・アール・ロシェット
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0015483(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02668925(EP,A1)
【文献】 特開平08−238256(JP,A)
【文献】 特表2014−508550(JP,A)
【文献】 特表2015−531282(JP,A)
【文献】 特開2005−127487(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0083847(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/006598(WO,A1)
【文献】 特開2011−244906(JP,A)
【文献】 特表2011−500292(JP,A)
【文献】 特開2004−329883(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0277193(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0310187(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0269809(US,A1)
【文献】 特許第6596056(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎修復システムであって、
脊椎ロッドと、
前記脊椎ロッドを受け入れるように適合された通路を有する頭部と、前記頭部に連結されかつ遠位尖端を有する軸部と、前記頭部と前記遠位尖端との間に延在する螺旋条と、前記螺旋条の少なくとも一部に沿って延在するセレーション部分と、を有する固定具と、
を備える、脊椎修復システム。
【請求項2】
止めネジをさらに備える、請求項1に記載の脊椎修復システム。
【請求項3】
前記固定具の前記頭部はねじ条を含み、前記止めネジは、前記固定具の前記頭部と係合するねじ条を有している、請求項に記載の脊椎修復システム。
【請求項4】
前記螺旋条の前記セレーション部分は、前記軸部の長軸と平行に測定される個々の厚みを有するセレーションを含み、連続した厚みは、前記螺旋条の長さの一部に沿って前記遠位尖端に向かい増大している、請求項1〜3の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項5】
前記頭部の少なくとも一部は、前記軸部に対して多軸運動可能に構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項6】
前記軸部は、管状に構成されている、請求項1〜5の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項7】
前記軸部は先細に形成されている、請求項1〜6の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項8】
前記先細の軸部は、前記軸部長軸と、前記軸部の2回転以上によって進む領域における前記螺旋条の複数の外面を繋ぐ軸との間で測定される16〜20度の角度によって画定されている、請求項7に記載の脊椎修復システム。
【請求項9】
前記螺旋条の前記セレーション部分は、前記軸部の長軸と直交する方向に測定される個別の幅を有するセレーションを含み、連続した幅は、前記螺旋条の長さの一部に沿って前記遠位尖端に向かい減少している、請求項1〜8の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項10】
前記螺旋条の前記セレーション部分は、前記軸部の長軸と直交する方向に測定される個々の幅を有するセレーションを含み、連続した幅は、前記螺旋条の長さの一部に沿って前記遠位尖端に向かい増大している、請求項1〜8の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項11】
前記螺旋条の互いに向き合う側壁は、55〜65度の角度をなしている、請求項1〜10の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項12】
前記頭部は、前記軸部に単軸的に取り付けられている、請求項1〜3、6〜11の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【請求項13】
脊椎修復システムであって、
脊椎ロッドと、
前記脊椎ロッドを受け入れるように適合された通路を有する頭部と、前記頭部に連結されかつ遠位尖端を有する軸部と、前記頭部と前記遠位尖端との間に延在する螺旋条と、前記螺旋条の少なくとも一部に沿って延在しかつ複数の頂部と谷部を有するセレーション部分と、を有する固定具と、
前記通路内に前記脊椎ロッドを保持するための止めネジと、
を備える、脊椎修復システム。
【請求項14】
前記止めネジは、前記固定具の前記頭部と係合するねじ条を有している、請求項13に記載の脊椎修復システム。
【請求項15】
前記頭部は前記軸部と同軸に取り付けられている、請求項13または14に記載の脊椎修復システム。
【請求項16】
前記頭部の少なくとも一部は、前記軸部に対して多軸運動可能に構成されている、請求項13または14に記載の脊椎修復システム。
【請求項17】
前記軸部は、管状に構成されている、請求項13〜16の何れか一項1に記載の脊椎修復システム。
【請求項18】
前記頂部は、前記頂部を隣接谷部に接続する表面間の当接部における線状縁によって画定された第1の形式の頂部と、前記第1の形式の頂部と異なる第2の形式の頂部であって、前記頂部を隣接谷部に接続する表面間の当接部における平面によって画定された第2の形式の頂部と、を含んでいる、請求項13〜17の何れか一項1に記載の脊椎修復システム。
【請求項19】
前記セレーション部分に沿った一連の頂部は、第1の形式の頂部と第2の形式の頂部とが交互に配置されている、請求項18に記載の脊椎修復システム。
【請求項20】
前記各頂部は、前記軸部の長軸と平行または長軸方向に沿って延在している、請求項13〜19の何れか一項に記載の脊椎修復システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/428,103号及び2017年7月10日に出願された米国非仮特許出願第15/645,264号の出願日の利得を主張するものであり、それらの開示内容は、参照することによってここに含まれるものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、脊椎修復システムに関し、さらに詳細には、セレーション螺旋条を有する脊椎固定具に関する。
【背景技術】
【0003】
脊椎固定と一般的に呼ばれる技術は、脊椎の椎骨を一緒に融合し、及び/又は該椎骨を機械的に固定するために用いられている。脊椎固定は、脊椎の全体的な配列を変化させるために、互いに隣接する脊椎の相対的な配向を修正するために用いられることもある。このような技術は、多くの変性疾患を治療するために、かつ殆どの場合、患者が被る苦痛を和らげるために、効果的に用いられてきている。
【0004】
いくつかの用途では、外科医は、脊柱の固定及び安定をもたらすために、(脊椎の1つ又は多数のレベルに沿って)互いに隣接する椎骨の椎弓根に椎弓根スクリューを取り付け、その後、該スクリューを脊椎ロッドに接続することになる。椎体間固定と併せて行われるか又は脊椎の単一又は多数のレベルを横切って行われるかに関わらず、固定ロッドによって接続される椎弓根スクリューの使用は、脊椎外科医によって用いられる重要な治療方法である。
【0005】
電動式スクリュー挿入によって椎弓根スクリューを挿入する外科医もいるが、手動式スクリュー挿入を好む外科医もいる。手動式スクリュー挿入を選ぶ外科医にとって、手術中の外科医の疲労及び骨破損は、重要な課題である。外科医の疲労は、挿入プロセスの正確さ及びスクリューが椎弓骨内に挿入される深さに悪影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に手動挿入における椎弓根スクリューの設計及び使用は、関連する外科処置をより効率的かつより一貫して行うことができるように改良される余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、脊椎ロッドを受け入れるように適合された通路(channel)を備える頭部と、頭部から遠位尖端(distal tip)に延在する軸部であって、螺旋条(thread、ねじ山)を備え、その少なくとも一部にセレーションが付されている軸部と、を備える固定具に関する。
【0008】
第1の態様による他の実施形態では、軸部は、長軸を有しており、長軸と螺旋条との間の角度は、軸部の長さに沿って変化するようになっていてもよい。螺旋条のセレーション部分(鋸歯状部分)は、螺旋条の長さの一部に沿って遠位尖端に向かって増大する幅を有するセレーションを備えていてもよい。軸部は、管状であってもよい。頭部は、軸部に関して多軸運動可能になっていてもよい。軸部にテーパが付されていてもよい。さらに、軸部の長軸に対する、螺旋条の2回転以上によって進む箇所における螺旋条の表面を繋ぐ線によって測定される軸部のテーパは、16度から20度の間であってもよい。螺旋条のセレーション部分は、セレーション部分の一部に沿って遠位尖端に向かって減少する幅を有するセレーションを備えていてもよい。螺旋条は、軸部とセレーションの表面との間に位置する壁を備えていてもよく、該壁は、長軸に沿って互いに隣接する壁が互いに対して55度から65度の角度をなすように、傾斜していてもよい。頭部は、軸部に単軸的に取り付けられていてもよい。
【0009】
本発明の第2の態様は、脊椎ロッドを受け入れるように適合された通路を備える頭部と、頭部に連結された軸部であって、遠位尖端を備えている、軸部と、頭部と遠位尖端との間に延在する螺旋条と、螺旋条の少なくとも一部に沿って延在するセレーションであって、頂部と谷部を備えている、セレーションと、を有する固定具である。
【0010】
第2の態様による他の実施形態では、頂部は、隣接谷部から軸部の長軸までの半径距離よりも大きい、軸部の長軸までの半径距離に位置している。歯は、谷部と平行に測定される幅を有していてもよく、谷部の幅が頂部の幅よりも大きくなっていてもよい。歯の頂部は、該頂部を隣接谷部に接続する表面間の当接部における縁によって画定された第1の形式の頂部と、平面によって画定された第2の形式の頂部とを備えていてもよい。セレーションは、遠位尖端から頭部に向かって徐々に増大するピッチを備えていてもよい。第1の頂部は、螺旋条の長さに沿って高さが変化するようになっていてもよい。具体的には、軸部の長軸から測定される第1の半径を有する第1の低頂部が、第2の半径を有する第1の高頂部に隣接し、該第1の高頂部が第3の半径を有する第2の低頂部に隣接し、該第2の低頂部が第4の半径を有する第2の高頂部に隣接するようになっていてもよく、第1及び第3の半径は、同一であってもよく、いずれもが第2及び第4の半径よりも小さくなっていてもよい。
【0011】
頂部は、螺旋条が延在する螺旋曲線と反対の方向において軸部の周りに巻かれる螺旋曲線に沿って延在していてもよい。頂部は、軸部の長軸と平行又は真っ直ぐに並んだ軸に沿って延在していてもよい。軸部は、軸部の長軸に対して傾斜した軸に沿って直線方向に延在する切断フルートを備えていてもよい。軸部は、軸部の遠位尖端から螺旋経路に沿って延在する切断フルートを備えていてもよい。
【0012】
固定具の第3の態様は、脊椎ロッドを受け入れるように適合された通路を有する頭部と、頭部に連結された軸部であって、遠位尖端を備えている、軸部と、頭部と遠位尖端との間に延在する螺旋条と、螺旋条の長さの約35%に沿って延在するセレーションと、を有する固定具である。第3の態様による他の実施形態では、セレーションは、頂部と谷部を備えていてもよい。遠位端部は、テーパを有していてもよく、テーパの第1の端における螺旋条の表面の第1の点と軸部の長軸上の固定具の遠位尖端における第2の点を繋ぐ軸と、軸部の長軸との間の角度は、略20度から30度であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態による固定具の斜視図である。
図2図1の固定具の正面図である。
図3図1の固定具の遠位部分の拡大正面図である。
図4図1の固定具の上面図である。
図5図1の固定具の底面図である。
図6図1の固定具の一部の拡大底面図である。
図7】本発明の他の実施形態による固定具の斜視図である。
図8】本発明の他の実施形態による固定具の斜視図である。
図9A】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9B】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9C】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9D】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9E】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9F】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9G】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9H】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9I】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9J】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9K】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9L】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9M】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9N】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9O】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9P】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図9Q】本発明による固定具の他の実施形態の遠位部分の斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態による固定具の斜視図である。
図11】本発明の他の実施形態による固定具の斜視図である。
図12】本発明の他の実施形態による固定具の斜視図である。
図13】本発明の他の実施形態による固定具の斜視図である。
図14】本発明による固定具の種々のバージョンに対する平均最大挿入トルクのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、脊椎手術中に脊椎ロッドと併せて用いられる固定具とを備えた脊椎修復システムに関する。当業者であれば、以下の記述が本発明の原理の単なる例示にすぎず、多くの異なる代替的実施形態をもたらす種々の方法に適用されてもよいことを認めるだろう。
【0015】
図1−6は、脊椎用に構成された、特に、椎弓根スクリュー又は固定具として用いられるように構成された固定具100の第1の実施形態を示している。固定具100は、スクリュー本体101と、脊椎ロッドを受け入れるように適合された通路を有するチューリップとを備えている。脊椎ロッドは、チューリップ内に取り付けられ、チューリップの雌螺旋条内にねじ込まれた(図示されない)止めネジによって、適所に保持されるようになっている。チューリップは、図1−6に示されていないが、以下に述べる図10−13に示される実施形態において、その特徴が記載されている。
【0016】
固定具100は、多軸式であり、スクリュー本体101がチュリーップから分離している。チューリップ及びスクリュー本体の近位端は、一般的に、固定具100の頭部と呼ばれている。スクリュー本体101は、固定具100の近位部分102又は頭部から遠位尖端105に向かって長軸108に沿って延在する軸部103を備えてる。チューリップは、スクリュー本体101の近位部分102に対して多軸運動可能になっている(すなわち、多軸椎弓根スクリューである)。スクリュー本体101の近位端102は、多軸接続を生じさせるためにチューリップの遠位開口に対して締まり嵌め接続をなすようになっている。チューリップは、スクリュー本体101を中心として旋回し、該スクリュー本体101に対して種々の角度をなし、これによって、適切なロッド配置を促進することになる。他の実施形態では、固定具は、スクリュー本体の近位端に静止固定されたチューリップを有する一体構造であってもよい(すなわち、単軸椎弓根スクリューであってもよい)。このような実施形態は、いずれも、図12に関連して以下に説明するようなチューリップから延在する開創ブレードを追加的に有していてもよい。
【0017】
軸部103は、近位部分102と遠位尖端105との間に延在する螺旋条104を備えている。螺旋条104が遠位尖端105を始端とすることによって、軸部103は、接触直後に骨内に係合かつ係留することが可能になる。図1−3に示されているように、螺旋条104は、その長さに沿って、個々のセレーション107を有するセレーション部分106を備えている。セレーション部分106は、螺旋条104の長さの約35%から40%に沿って延在している。いくつかの実施形態では、セレーション部分106は、螺旋条104の長さの35%に沿って延在している。他の実施形態では、セレーション部分106の範囲は、螺旋条104の長さの約25−45%、螺旋条104の長さの約20−50%、又は螺旋条104の長さの約10−60%とすることができる。螺旋条の全長に対するセレーション部分のこの比率によって、スクリュー長さに関わらず、手動挿入中の一貫性のある感触が可能になる。セレーション部分106を組み入れることによって、前述の先行技術の問題が解決されることになる。セレーション107は、挿入トルクを低下させ、これによって、引抜力を損なうことなく、挿入の容易さを改良することができる。セレーションスクリューは、より迅速な挿入も可能にする。挿入トルクの低下は、骨破損及び骨侵入の機会を低減させることになる。加えて、セレーション107によって、外科医は、最小のエネルギー付与によって触覚フィードバックを維持し、その結果、他のセレーションを有しない先行技術のスクリューの手動によるスクリュー挿入と比較して、固定具100の位置決め中の正確さを増すことができる。
【0018】
軸部103は、テーパを有している。軸部103のこのテーパ部分は、螺旋条104の2回転以上によって進む領域における軸部103の長軸108と螺旋条104の複数の外面を繋ぐ軸との間で測定される16度から20度の間の角度によって画定されている。いくつかの実施形態では、軸部103のテーパ部分は、螺旋条104の長さの約35%に沿って延在しており、このテーパ部分の長さは、セレーション部分106が延在する螺旋条104の長さと一致していてもよい。他の実施形態では、テーパ部分の範囲は、螺旋条104の長さの約25−45%、螺旋条104の長さの約20−50%、、又は螺旋条104の長さの約10−60%とすることができる。この構成は、いったん螺旋条の最大直径に達したなら、セレーション部分106が終了し、最大直径の螺旋条が続いて骨に切り込まれないように、設計されている。さらに、最大直径の螺旋条による骨への切込みは、その後に挿入された非セレーション螺旋条と骨との間の係合を弱め、これによって、ユーザーへの触覚フィードバックを低下させることになる。軸部103のテーパ部分及びセレーション部分106の両方が、螺旋条の長さの同一範囲(すなわち、約35%)に沿って延在することによって、スクリューの挿入中常時いくらかの抵抗が生じるが、これは、望ましいことである。本発明による他の実施形態では、軸部がテーパを有していなくてもよい。
【0019】
図1−6の実施形態では、スクリュー本体101の近位部分102は、近位側を向いた平坦な上面126と遠位側を向いた略球面125とを備えている。略球面125は、チューリップと相互作用し、チューリップとスクリュー本体101との間の多軸運動を可能にする。図1,2,4に示されているように、近位部分102は、平坦な上面126の中心部分から延在する突起130を備えている。近位部分102は、平坦な上面126の周囲における突起130を囲む位置に、平坦な上面126から延在する小隆起135をさらに備えている。小隆起125は、各々、突起130よりも小さい寸法を有している。突起130及び小隆起135の形状は、対応するチューリップアセンブル及び対応する挿入器具に依存して変更可能であるが、図示されている実施形態では、突起130及び小隆起135は、各々、略球状の近位端を有するように丸められている。図2により明瞭に示されているように、この実施形態では、近位部分102は、6つの小隆起135を備えている。他の実施形態では、小隆起135の数は、変更されてもよい。
【0020】
螺旋条104は、多くの断面積、例えば、台形、正方形、三角形、矩形、又は当技術分野において知られている任意の他の形状の1つ又は複数を有することができる。図2,3に示されているように、螺旋条104は、両側に軸部103の内径から螺旋条104の外径に延在する側壁110を備えている。これらの側壁110は、軸部103の長軸108に沿って互いに向き合う側壁110がそれらの間に60度の角度αをなすように、傾斜している。角度αは、図示されている実施形態におけるように約60度とすることができるが、他の実施形態では、約55−65度の範囲内の値であってもよい。さらに他の実施形態では、角度αは、約45−75度の範囲内の値であってもよく、他の実施形態では、約40−80度の範囲内の値であってもよい。螺旋条104は、側壁110と軸部103の長軸108との間の角度が軸部103の長さに沿って変化するように、構成されている。すなわち、螺旋条104の側壁と長軸108との間の角度は、螺旋条104の進路に沿って変化する。他の実施形態では、側壁110の角度は、一定であってもよい。図1−6に示されている実施形態では、側壁110は、螺旋条104の互いに隣接する螺旋条部分間の凹状の螺線経路と交差するまで、長軸108に向かって延在しており、この螺旋経路は、軸部103の内径を含んでいる。他の実施形態では、側壁110は、軸部103の内径と交差するまで該内径に向かって延在するようになっていてもよく、又は螺旋条104の互いに隣接する螺旋条部分間の(凹状ではなく)平面状の螺旋経路に沿って軸部の内径に向かって延在するようになっていてもよい。
【0021】
図2に示されているように、螺旋条104は、軸部103の遠位端部にセレーション部分106を備えている、セレーション部分106は、軸部103の近位端部における滑らかな非セレーション部分に連続的に移行している。セレーション107が、セレーション部分106に沿って幾何学的に切り込まれている。セレーション107は、挿入トルクを低下させることによって、椎弓骨への固定具100の挿入を容易にする。トルクのこの低下は、外科医の疲労を制限し、椎弓骨の破損又は侵入の機会を低減させることになる。
【0022】
図3を参照すると、螺旋条104は、テーパβを画定するテーパ部分を有している。このテーパ角は、軸部103の長軸と、遠位尖端105を螺旋条104のテーパ部分の近位端における螺旋条104の外面に繋ぐ軸120と、の間で測定されるようになっている。角度βは、図示されている実施形態では、25度である。他の実施形態では、角度βは、約25度又は約20度から30度の間の値とすることができる。さらに他の実施形態では、角度βは、約15−35度の範囲内の値であってもよく、他の実施形態では、約10−40度の範囲内の値であってもよい。
【0023】
図3,4を参照すると、セレーション部分106は、頂部112と谷部115を備えている。頂部112と谷部115は、セレーション部分106に沿って交互に配置され、セレーション107を画定することになる。頂部112は、長軸108に沿って見ると、三角形状を有してる。これらのセレーション107は、軸部103の長軸と平行に測定されるそれぞれの厚み116をさらに備えており、一連の厚み116は、螺旋条104の長さの一部に沿って遠位尖端105に向かって増大している。各厚み116は、各セレーション107の遠位端から近位端に向かう方向に測定されている。他の実施形態では、一連の厚みは、螺旋条104の長さの一部に沿って遠位尖端105に向かって減少していてもよいし、又は一定であってもよい。
【0024】
図1−6の実施形態では、各頂部112は、軸部103の長軸108から隣接谷部115までの半径距離よりも大きい、軸部103の長軸108からの半径距離に配置されている。各頂部112は、軸部103の長軸108と平行に測定される隣接谷部115の厚みよりも小さい、軸部103の長軸108と平行に測定される厚みを有している。換言すれば、螺旋条104の側壁110間の角度及び/又は軸部103の表面117の湾曲に起因して、谷部115の厚みは、隣接する頂部112の厚みよりも大きい。
【0025】
これらのセレーション107は、軸部103の長軸と直交する方向から測定されるそれぞれの幅を備えており、一連の幅は、螺旋条104の長さの一部に沿って遠位尖端105に向かって減少している。他の実施形態では、一連の幅は、螺旋条104の長さの一部に沿って遠位尖端105に向かって減少していてもよいし、又は一定であってもよい。
【0026】
セレーション107のピッチは、セレーション107を画定する互いに離接する谷部115間の距離、すなわち、頂部112の向こう側の第1の谷部115から隣接する第2の谷部までの距離である。図1−6に示されている実施形態では、それぞれのセレーション107のピッチは、軸部103の遠位尖端105から近位部分102に向かって徐々にかつ付加的に増大している。従って、遠位尖端105により近い箇所におけるセレーション107のピッチは、近位部分102により近い箇所におけるセレーション107のピッチよりも小さい。螺旋条104の一回転当たりのセレーションの数は、軸部103を遠位尖端105から近位部分102に向かって見た図6に示されているように、一定である。その結果、遠位尖端105により近い箇所におけるセレーション107のピッチが小さくなる。何故なら、テーパ構造に起因して、概して小径の螺旋条104の部分の周囲にセレーションがより密に配置されるからである。螺旋条104のテーパ部分の角度を異ならせることによって、種々の形状のセレーション107が得られることになる。一実施形態では、互いに隣接する谷部115を通る平面から測定されるセレーション107の各面の角度は、25度である。他の実施形態では、互いに隣接する谷部115を通る平面から測定されるセレーション107の各面の角度は、20−30度の間にあり、他の実施形態では、約10−40度の間にある。
【0027】
本発明による固定具の他の実施形態が、それぞれ、図7,8に示されている。軸部203に沿って螺旋条204の全長にわたって延在するセレーション207を有する固定具200が、図7に示されている。管状軸部303を有する固定具300が、図8に示されている。管状軸部303は、軸部303の長さに沿った通路350を画定している。通路350は、固定具300の全長に沿って延在しているとよく、これによって、通路350の近位端及び遠位端の両方にアクセス可能である。通路350の遠位開口が、図7に示されている。近位開口は、固定具300の近位部分における中心突起に対応している。
【0028】
図9A−9Iは、螺旋条の一回転当たりのセレーションの数が異なる種々の実施形態を示している。各実施形態において、ピッチは、遠位尖端から近位部分に向かって徐々に増大している。例えば、図9Aに示されている固定具400では、螺旋条404の一回転当たり72個の頂部412が設けられている。螺旋条404の一回転当たりの頂部の数を同一にするためのスクリューのテーパに起因して、遠位尖端405のピッチは、近位部分402により近い螺旋条404のピッチよりも小さくなっている。
【0029】
図9A−9Cは、一種類の頂部を有する固定具を示している。例えば、図9Cでは、頂部612は、該頂部612を隣接谷部に接続する表面間の当接部における線状縁613によって画定されている。図9D−9Iは、2種類の頂部を有する固定具を示している。例えば、図9Fでは、いくつかの頂部は、線状縁によって画定されているが、頂部919は、該頂部919を隣接谷部に接続する表面間の当接部におけ平坦面又は平面によって画定されている。いくつかの実施形態では、セレーション部分に沿った一連の頂部は、線状頂部と平面頂部との間で交互に変化されてもよい。
【0030】
他の実施形態では、図9Jに示されているように、螺旋条は、交互に配置されかつ高さ(スクリュー本体の長軸から頂部までの距離)が異なる2種類の頂部を備えている。この構成は、二重Vカットをなしている。また、この構成では、第1の高頂部が第1の低頂部に隣接し、第1の低頂部が第2の高頂部に隣接し、このパターン(高−低−高−低)が螺旋条の周りに継続するように、頂部が変化するようになっていてもよい。高頂部は、同一の高さを有していてもよいし、異なる高さを有していてもよい。但し、いずれの高頂部も、好ましくは、同一であってもよいし又は異なっていてもよい低頂部の高さよりも大きくなっている。
【0031】
図9Kに示されている他の実施形態では、頂部と谷部は、丸められている。図9Lに示されている他の実施形態では、螺旋条は、各頂部を画定する2つの線状縁と各谷部を画定する2つの線状縁とを有する正方形断面又は矩形断面を有している。図9Mに示されている他の実施形態では、セレーションは、貝殻状であり、頂部は、湾曲しており、谷部は、線状縁を形成している。
【0032】
図9N,9Oに示されている他の実施形態では、セレーションは、固定具1700の螺旋条の反対方向に沿った螺旋状とすることができる。すなわち、セレーション1707は、螺旋条1704が延在する螺旋曲線と反対の方向において固定具1700の周りに巻かれる螺旋曲線に沿って延在する頂部1712を有することができる。従って、頂部1712は、軸部1703の長軸Xと真っ直ぐ並んでおらず又は平行になっていない。
【0033】
図9Pに示されている他の実施形態では、固定具は、軸部の長軸に対して傾斜した軸に沿って直線方向に延在する切断フルートを有している。図9Qに示されている他の実施形態では、固定具は、軸部の遠位尖端からの螺旋経路に沿って延在する切断フルートを有している。本実施形態による固定具は、単一リード(1条ねじ)または二重リード(2条ねじ)の螺旋条を備えることができ、1または複数の切断フルートを備えることができる。二重リードは、固定具に優れた引抜強度もたらすことになる。
【0034】
図10は、固定具100と同様の実施形態を示している。具体的には、スクリュー本体1101及びチューリップ1109を有する固定具1100が示されている。図11は、固定具2100が管状ではない点を除けば、図10の実施形態と同様の実施形態を示している。図12に示されている実施形態は、チューリップ3109が開創ブレード3111を備えている固定具3100である。開創ブレード3111は、脊椎ロッドの挿入中にガイドとして作用し、いったん脊椎ロッドがチューリップ3109に係留されたなら、離脱することが可能である。図13は、固定具100と同様の実施形態を示している。この実施形態では、固定具4100は、より長い軸部を有しており、チューリップ4109の遠位面が傾斜している。
【0035】
本発明の実施形態による種々の構成のスクリューに対して、実験的試験を行った。各スクリューは、5.0mmの直径及び35.0mmの長さを有しており、さらに以下のように構成されている。
【0036】
【表1】
【0037】
平均最大挿入トルクを決定するために、スクリューA−Dの試験を行った。図14に示されているように、本発明によるセレーションを有するスクリューB−Dは、セレーションを備えていないスクリューAよりも優れた性能を示した。平均挿入トルクは、スクリューAと比較してスクリューB−Dの全てにおいて低くなっている。これは、セレーションを設けることによってスクリューの挿入トルクを低下させ、これによって、手動挿入の性能を改善するという望ましい効果を証拠付けることになる。
【0038】
本発明によるセレーション骨スクリューでは、セレーション部分は、螺旋条長さの関数として画定することができる。螺旋条長さに対して螺旋条のセレーション部分の長さを比例させることによって、スクリュー長さに関わりなく一貫した感触を確保することができる。比例関係をもたらすことによって、エンドユーザーは、スクリュー長さに関わらず同一の操作性を有することになる。セレーション部分の長さの計算は、以下の式、すなわち、「(セレーションの長さ)=(螺旋条長さ)×X、但し、Xは、定数」を用いて行うことができる。その結果、セレーション部分の長さと螺旋条長さとの間に直線関係が生じる。従って、本発明によるスクリューのキットは、一定値に基づく比例長さのセレーション部分を有する種々の全長のスクリューを含むことができる。
【0039】
他の実施形態では、製造上の制約に起因して、固有のセレーション長さの数が少なく、それでも一貫した感触の必要性を満たすことが望ましい。従って、セレーション部分は、区分化(bucketed)比例アプローチを用いて画定されるとよい。例えば、もし(スクリュー長さ)≦(X)なら、(セレーション長さ)=(Y)、但し、Xは、画定されたスクリュー長さであり、Yは、画定されたセレーション長さである。これによって、固有のセレーション長さの数が少なくなるが、同一の低下された挿入トルクをエンドユーザにもたらすことができる。例えば、セレーション長さの5つの区分(bucket)を画定することによって、所望範囲内の(セレーション長さ)/(螺旋条長さ)の比率、例えば、0.25−0.45を達成することができる。本発明によるスクリューのキットは、多数の選択肢をユーザーにもたらすこれらの種々の区分(bucket)によるセレーション長さを有する種々の長さのスクリューを備えることができる。
【0040】
本発明をここでは特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示にすぎないことを理解されたい。それ故、例示的な実施形態に対して多数の修正形態がなされてもよいこと、及び添付の請求項によって規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図9L
図9M
図9N
図9O
図9P
図9Q
図10
図11
図12
図13
図14