(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るセルスタック装置100について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係るセルスタック装置100の斜視図であり、
図2は、
図1に示すセルスタック装置100の側面視断面図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、セルスタック装置100は、平板型の固体酸化物形燃料電池であり、積層された複数の燃料電池セル1と、積層方向に延びて、該燃料電池セル1を締結する締結部材21〜28と、を備えている。なお、燃料電池セル1が積層されている方向(
図1中のZ方向)が、積層方向である。
【0024】
セルスタック装置100は、積層方向から見て矩形状に形成され、外周側の縁部に、互いに対向する2組の辺部201と、各辺部を連結する4つの角部202とから構成される外周縁部203を有する。セルスタック装置100の外周縁部203には、締結部材21〜28が設けられている。具体的には、各辺部201の中央部に、それぞれ締結部材21,23,25,27が設けられ、各角部202に、それぞれ締結部材22,24,26,28が設けられている。
【0025】
各辺部201の中央部に設けられた締結部材21,23,25,27の内部には、積層方向に沿って酸化剤ガス又は燃料ガスが流れる流路が形成されている。具体的には、締結部材23及び25の内部には、それぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する流路が形成され、締結部材21及び27の内部には、それぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスを排出する流路が形成される。すなわち、締結部材23及び25は、燃料電池セル1にガスを供給するガス供給管204である。また、締結部材21及び27は、燃料電池セル1からガスを排出するガス排出管205である。このように、セルスタック装置100は、燃料電池セル1にガスを供給するガス供給管204と、燃料電池セル1からガスを排出するガス排出管205と、を備えている。
【0026】
内部に燃料ガスを供給する流路が形成された締結部材23(燃料ガスのガス供給管204)と、内部に燃料ガスを排出する流路が形成された締結部材27(燃料ガスのガス排出管205)とは、積層方向から見て互いに対向して配置されている。また、内部に酸化剤ガスを供給する流路が形成された締結部材25(酸化剤ガスのガス供給管204)と、内部に酸化剤ガスを排出する流路が形成された締結部材21(酸化剤ガスのガス排出管205)とは、積層方向から見て互いに対向して配置されている。
【0027】
次に、燃料電池セル1について説明する。
図3は、
図2に示す燃料電池セル1の拡大断面図である。
図3に示すように、燃料電池セル1は、発電機能を有する平板型の燃料電池セル本体10と、燃料ガスが存在する空間Aと酸化剤ガスが存在する空間Bとを区画するセパレータ30と、接合材と、を備えている。前記接合材として、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20と、セパレータ30とインターコネクタ40とを接合するインターコネクタ用接合材60と、を有している。さらに、燃料電池セル1は、燃料電池セル本体10間の導通を確保するインターコネクタ40と、該インターコネクタ40と燃料電池セル本体10との間の導通を確保する集電体50と、を備えている。
【0028】
[燃料電池セル本体]
図3に示すように、燃料電池セル本体10は、順次積層された、空気極12と、固体電解質層11と、燃料極13と、を備えている。すなわち、固体電解質層11の一方の面には空気極12が設けられ、他方の面には燃料極13が設けられていて、固体電解質層11が空気極12と燃料極13とによって挟まれている。燃料極13は、燃料極基板131と、該燃料極基板131の一方の面に設けられる燃料極活性部132と、を備えている。燃料電池セル本体10の厚さは、例えば100〜2100μmである。なお、本明細書において、空気極12、固体電解質層11及び燃料極13の各層が積層されている方向を積層方向(
図3中のZ方向)という。すなわち、積層方向は、各層の主面と直交する方向である。
【0029】
空気極12、固体電解質層11及び燃料極13(燃料極基板131及び燃料極活性部132)は、それぞれ矩形の平板状に形成されている。つまり、燃料電池セル本体10は、積層方向から見て矩形状である。積層方向から見た空気極12の大きさは、固体電解質層11の大きさよりも小さい。すなわち、固体電解質層11の外周部は、空気極12から露出している。また、積層方向から見た固体電解質層11の大きさは、燃料極活性部132の大きさと等しい。さらに、積層方向から見た燃料極活性部132の大きさは、燃料極基板131の大きさよりも小さい。すなわち、燃料極基板131の外周部は、燃料極活性部132から露出している。
【0030】
図4は、
図3に示すセル用接合材20近傍を示す拡大断面図である。
図4に示すように、燃料電池セル本体10は、積層方向から見て、外周側の縁部に外周縁部101を有する。すなわち、外周縁部101は、空気極12の外周側の縁部12a、固体電解質層11の外周側の縁部11a、燃料極基板131の外周側の縁部131a、及び、燃料極活性部132の外周側の縁部132aに位置している。
【0031】
空気極12は、例えば、LSM(La(Sr)MnO
3:ランタンストロンチウムマンガナイト)、LSCF((La,Sr)(Co,Fe)O
3:ランタンストロンチウムコバルトフェライト)などを含む多孔質材料で構成される。空気極12の気孔率は、例えば15〜55%とすることができる。空気極12の厚さは、例えば50〜200μmとすることができる。空気極12の熱膨張率は、例えば11〜17ppm/Kとすることができる。
【0032】
固体電解質層11は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)を含む緻密質材料で構成される。固体電解質層11の気孔率は、例えば0〜10%とすることができる。なお、固体電解質層11は、GDC(ガドリニウムドープセリア)などの多孔質材料で構成されてもよい。固体電解質層11の厚さは、例えば1〜50μmとすることができる。固体電解質層11の熱膨張率は、例えば9〜11ppm/Kとすることができる。
【0033】
燃料極基板131は、例えば、NiとYSZとを含む多孔質材料で構成される。燃料極基板131の気孔率は、例えば15〜55%とすることができる。燃料極基板131の厚さは、例えば50〜2000μmとすることができる。燃料極基板131の熱膨張率は、例えば11〜14ppm/Kとすることができる。
【0034】
燃料極活性部132は、例えば、NiとYSZとを含む多孔質材料で構成される。燃料極活性部132の気孔率は、例えば15〜55%とすることができる。燃料極活性部132の厚さは、例えば5〜100μmとすることができる。燃料極活性部132の熱膨張率は、例えば11〜14ppm/Kとすることができる。
【0035】
燃料電池セル本体10は、さらに、固体電解質層11と空気極12との間に反応防止膜(図示せず)を備えてもよい。燃料電池セル本体10が反応防止膜を備えることにより、固体電解質層11を構成する材料と空気極12を構成する材料とが反応して固体電解質層11と空気極12との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制することができる。反応防止膜は、例えば、GDCから構成される。反応防止膜の気孔率は、例えば10〜30%とすることができる。反応防止膜の厚さは、例えば、3〜50μmとすることができる。
【0036】
[セパレータ]
図3及び
図4に示すように、セパレータ30は、積層方向(
図3及び
図4中のZ方向)から見て内側に開口が形成される。これにより、積層方向の一方側(
図3中の空気極側)から見て、該開口から燃料電池セル本体10の中央部分が露出している。すなわち、セパレータ30は、積層方向から見て、燃料電池セル本体10の外周縁部101の一部と重なるように、矩形の枠状に形成されている。
【0037】
セパレータ30は、積層方向から見て内周側の縁部に燃料電池セル本体10の外周縁部101と重なる内周縁部31と、外周側の縁部に位置する外周縁部32と、を備えている。セパレータ30は、一部が積層方向の他方側(
図3中の燃料極側)に凸となるように湾曲している。また、セパレータ30の内周縁部31は、外周縁部32よりも積層方向の他方側に位置し、セル用接合材20の積層方向の一方側の表面と接合している。一方、セパレータ30の外周縁部32は、内周縁部31よりも積層方向の一方側に位置し、インターコネクタ用接合材60の積層方向の他方側の表面と接合している。これにより、セパレータ30は、燃料極13側に位置する燃料ガスが存在する空間Aと、空気極12側に位置する酸化剤ガスが流れる空間Bとを区画し、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合を防止している。
【0038】
セパレータ30は、例えば、金属で構成される。セパレータ30を構成する金属としては、例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、Ni系耐熱合金(例えば、インコネル600及びハステロイ等)を用いることができる。セパレータ30の厚みは、例えば10〜1000μmとすることができる。セパレータ30の熱膨張率は、例えば11〜18ppm/K程度とすることができる。
【0039】
[セル用接合材]
図4に示すように、セル用接合材20は、セパレータ30に対して積層方向の他方側(
図3中の燃料極側)に位置し、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合している。セル用接合材20は、燃料電池セル本体10の外周縁部101の一部とセパレータ30の内周縁部31とを接合している。より詳しくは、セル用接合材20は、燃料電池セル本体10の固体電解質層11の外周側の縁部11a、燃料極基板131の外周側の縁部131a及び燃料極活性部132の外周側の縁部132aと、セパレータ30の内周縁部31と、を接合している。セル用接合材20は、少なくとも、気密性の高い固体電解質層11と接合することにより、空間Aに存在する燃料ガスと、空間Bに存在する酸化剤ガスとの混合を防止している。
【0040】
図5は、
図3に示すセル用接合材20の平面図である。
図5に示すように、セル用接合材20は、積層方向(
図3中のZ方向)から見て内側に開口が形成され、矩形の枠状に形成されている。すなわち、セル用接合材20は、積層方向から見て外周側の縁部に設けられた外周端縁20aと、内周側の縁部に設けられた内周端縁20bと、を有し、外周端縁20a及び内周端縁20bは、それぞれ、互いに対向する略平行な2組の辺(すなわち、合計4つの辺)と、各辺を接続する4つの角部と、から構成されている。各角部は、それぞれ円弧状に湾曲している。なお、本明細書において、略平行とは、公差を考慮した平行を意味する。このようなセル用接合材20は、燃料電池セル本体10の外周縁部101、及び、セパレータ30の内周縁部31を全周に亘って気密に接合している。これにより、空間Aに存在する燃料ガスと、空間Bに存在する酸化剤ガスとの混合を防止している。
【0041】
図4に示すように、セル用接合材20は、積層方向から見て燃料電池セル本体10の外周縁部101とセパレータ30の内周縁部31とが重なる領域である接合部111を有する。詳しくは、接合部111は、燃料電池セル本体10の外周縁部101のうち、燃料極基板131の外周側の縁部131aの一部と、セパレータ30の内周縁部31と、が重なる領域に位置する。接合部111は、直線状に延びる4つの延伸部112を有する。各延伸部112は、延伸方向の両端部に、隣り合う延伸部112と重なる延伸端部112eをそれぞれ有する。また、各延伸部112は、延伸端部112eを除く領域を延伸方向に3等分した際の中央領域に中央部112cをそれぞれ有する。なお、「直線状に延びる」とは、ある特定の方向に向かって延びていることを意味し、延伸部112の延伸方向に沿う縁部の形状が直線であることに限定されるものではない。
【0042】
接合部111は、ガス供給管204側、すなわち、内部にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する流路が形成された締結部材23及び25側に位置する供給側接合部114a,114bを有する。本実施形態において供給側接合部114a,114bとは、それぞれ延伸部112の中央部112cである。
【0043】
図6は、
図5に示すセル用接合材20のVI−VI線断面における延伸部112の中央部112c及びその近傍を示す部分端面図である。すなわち、VI−VI線断面とは、セパレータ30の内周縁部31に沿う方向(延伸部112の延伸方向)の断面である。
【0044】
供給側接合部114a(114b)は、該供給側接合部114a(114b)に生じる応力の集中を緩和させる応力緩和部115を有する。具体的には、応力緩和部115は、セパレータ30の内周縁部31と接するセパレータ側界面111aを有し、該セパレータ側界面111aは、その形状が起伏形状である。より詳しくは、
図6に示すように、セパレータ30の内周縁部31に沿う方向の断面におけるセパレータ側界面111aは、その形状が起伏形状である。なお、本発明において、「起伏形状」という文言は、起伏(高くなったり低くなったりするさま)を有する形状を意味する。
【0045】
より詳しくは、セパレータ側界面111aは、凸部と凹部が繰り返されて波打った形状(以下、単に「波状」ともいう)である起伏形状であり、起伏が不規則な起伏形状である。
【0046】
図6に示すように、応力緩和部115は、その最大厚さをT
maxとし、その最小厚さをT
minとしたとき、T
minに対するT
maxの比(T
max/T
min)が1.20以上20.0以下であることが好ましく、1.50以上15.0以下であることが更に好ましい。T
max及びT
minは、
図6を参照して、供給側接合部114a(114b)である延伸部112の中央部112cを延伸方向に沿って均等に10等分し、等分点における延伸部112の幅方向中央部の厚さをそれぞれ測定する。そして、その最大の厚さをT
maxとし、その最小の厚さをT
minとする。本明細書において、延伸部112の「幅方向中央部」とは、延伸部112の幅方向において、公差を考慮した中央に位置する部分を意味する。厚さは、特に限定されないが、走査型電子顕微鏡で延伸部112を倍率250〜1000倍で撮影することにより確認することができる。
【0047】
図6に示すように、応力緩和部115は、セパレータ側界面111aにおける所定の2点L,M間の積層方向から見た直線長さをX
1とし、2点L,M間におけるセパレータ側界面111aの延べ長さをX
2としたとき、X
1に対するX
2の比(X
2/X
1)が1.02以上2.00以下であることが好ましく、1.04以上1.50以下であることが更に好ましい。なお、本明細書において「セパレータ側界面の延べ長さX
2」とは、セパレータ側界面111aを直線に延ばした際の長さを意味する。X
1およびX
2は、
図6を参照して、供給側接合部114a(114b)である延伸部112の中央部112cにおいて、幅方向中央部における延伸方向の両端縁をそれぞれL,Mとして測定する。すなわち、本実施形態において所定の2点間とは、延伸部112の中央部112cにおける幅方向中央部の延伸方向の両端縁間を意味する。X
1およびX
2は、特に限定されないが、撮影する倍率に応じてデジタルカメラ、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて確認することができる。なお、X
2は、前記方法により得た断面画像に対して画像解析を行うことにより数値化することができる。
【0048】
応力緩和部115(供給側接合部114a,114b)は、その平均厚さが10μm以上300μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることが更に好ましい。なお、応力緩和部115の厚さとは、積層方向における厚さを意味する。応力緩和部115の平均厚さは、
図6を参照して、供給側接合部114a(114b)である延伸部112の中央部112cを延伸方向に沿って均等に10等分し、等分点における延伸部112の幅方向中央部の厚さをそれぞれ測定し、その厚さの平均値とする。
【0049】
本発明において、セパレータ側界面111aの形状、T
minに対するT
maxの比及びX
1に対するX
2の比は、使用するセパレータのセル用接合材20と接する界面を形成する領域に対して、金型(プレス)加工や曲げ加工を施して事前に起伏形状を形成しておくことにより、上記のように調整することができる。
【0050】
セル用接合材20としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、セラミックス等を用いることができる。なお、本明細書において、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。このような結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、SiO
2−MgO系等が挙げられる。結晶化ガラスとして、具体的には、SiO
2−MgO−B
2O
3−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。セル用接合材20は、単一の材料で構成されてもよく、複数の材料で構成されてもよい。セル用接合材20が複数の材料で構成されている場合、それらの材料は接触して一体化されていてもよいし、部分的に又は全体的に非接触であってもよい。
【0051】
[インターコネクタ]
図3に示すように、インターコネクタ40は、板状に構成され、積層方向(
図3中のZ方向)から見て矩形状を有する。インターコネクタ40は、外周部にインターコネクタ用接合材60と接合する外周縁部41を有し、該外周縁部41において、インターコネクタ用接合材60を介してセパレータ30と接合される。また、インターコネクタ40は、積層方向から見て燃料電池セル本体10と重なる内側領域42を有し、該内側領域42において、集電体50と接合されている。これにより、インターコネクタ40は、燃料電池セル本体10間の導通を確保することができる。インターコネクタ40は、例えば、金属等で構成される。
【0052】
なお、
図2に示すように、複数の燃料電池セル1が積層されたセルスタック装置100では、最上層及び最下層に、インターコネクタ40の代わりに保持板40’が設けられている。
【0053】
[集電体]
図3に示すように、集電体50は、燃料電池セル本体10の空気極12側に配置される空気極側集電体51と、燃料極13側に配置される燃料極側集電体52と、を備えている。空気極側集電体51及び燃料極側集電体52は、それぞれ互いに間隔を空けて配置され、長さ方向(
図3中のX方向)に延びる複数の短冊状片から構成されている。空気極側集電体51の各短冊状片の間は、酸化剤ガスが流れる流路となる。一方、燃料極側集電体52の各短冊状片の間は、燃料ガスが流れる流路となる。空気極側集電体51は、積層方向(
図3中のZ方向)の一方側の端部がインターコネクタ40と接合し、他方側の端部が空気極12と接合する。一方、燃料極側集電体52は、積層方向の一方側の端部が燃料極基板131と接合し、他方側の端部が隣り合う燃料電池セル1のインターコネクタ40と接合する。これにより、集電体50は、インターコネクタ40と燃料電池セル本体10との間の導通を確保することができる。集電体50は、例えば、金属で構成される。
【0054】
[インターコネクタ用接合材]
図3に示すように、インターコネクタ用接合材60は、セパレータ30の外周縁部32と、インターコネクタ40の外周縁部41と、を接合している。このようなインターコネクタ用接合材60は、積層方向から見て矩形の枠状に形成されており、セパレータ30の外周、及び、インターコネクタ40の外周を全周に亘って気密に接合している。これにより、空間Aに存在する燃料ガスと、空間Bに存在する酸化剤ガスとの混合を防止している。インターコネクタ用接合材60としては、セル用接合材20と同様の材料を用いることができる。
【0055】
上述の燃料電池セル1は、燃料極13側に位置する空間Aに燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、空気極12側に位置する空間Bに酸化剤ガスを流すことにより、空気極12において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極13において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、その結果、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2−…(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
−…(2)
【0056】
本実施形態に係るセルスタック装置100は、供給側接合部114a,114bが、該供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中を緩和させる応力緩和部115を有する。これにより、供給側接合部114a,114bに加えられる応力を分散させて、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中を緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係るセルスタック装置100において、応力緩和部115(供給側接合部114a,114b)は、セパレータ30の内周縁部31と接するセパレータ側界面111aを有し、セパレータ側界面111aは、その形状が起伏形状である。セパレータ側界面111aを起伏形状とすることにより、供給側接合部114a,114bに加えられる応力が起伏を介して分散される。これにより、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。
【0058】
前記応力緩和部は、その最大厚さをT
maxとし、その最小厚さをT
minとしたとき、T
minに対するT
maxの比(T
max/T
min)が1.20以上20.0以下であることが好ましい。T
minに対するT
maxの比が前記範囲内であることにより、供給側接合部114a,114bに加えられる応力が起伏を介してより分散される。これにより、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。なお、セルスタック装置100は、供給側接合部114a,114bが応力緩和部を有する限り、(T
max/T
min)が上記範囲にない場合においても、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中を緩和させることができる。
【0059】
本実施形態に係るセルスタック装置100において、応力緩和部115は、セパレータ側界面111aにおける所定の2点L,M間の積層方向から見た直線長さをX
1とし、2点L,M間におけるセパレータ側界面111aの延べ長さをX
2としたとき、X
1に対するX
2の比が1.02以上2.00以下であることが好ましい。X
1に対するX
2の比が前記範囲内であることにより、供給側接合部114a,114bに加えられる応力が起伏を介してより分散される。これにより、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。なお、セルスタック装置100は、供給側接合部114a,114bが応力緩和部を有する限り、(X
2/X
1)が上記範囲にない場合においても、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中を緩和させることができる。
【0060】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係るセルスタック装置100について、第1実施形態と異なる部分を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0061】
本発明の第2実施形態に係るセルスタック装置100では、積層方向から見て各角部202に設けられた締結部材22,24,26,28の内部に、積層方向に沿って酸化剤ガス又は燃料ガスが流れる流路が形成されている。具体的には、締結部材24及び26の内部には、それぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する流路が形成され、締結部材22及び28の内部には、それぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスを排出する流路が形成される。すなわち、締結部材24及び26は、燃料電池セル1にガスを供給するガス供給管204である。また、締結部材22及び28は、燃料電池セル1からガスを排出するガス排出管205である。
【0062】
内部に燃料ガスを供給する流路が形成された締結部材24(燃料ガスのガス供給管204)と、内部に燃料ガスを排出する流路が形成された締結部材28(燃料ガスのガス排出管205)とは、積層方向から見て互いに対向して配置されている。また、内部に酸化剤ガスを供給する流路が形成された締結部材26(酸化剤ガスのガス供給管204)と、内部に酸化剤ガスを排出する流路が形成された締結部材22(酸化剤ガスのガス排出管205)とは、積層方向から見て互いに対向して配置されている。
【0063】
次に、燃料電池セル1について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係るセルスタック装置100における、接合部111の延伸方向に沿った断面図である。
【0064】
積層方向から見て燃料電池セル本体10の外周縁部101とセパレータ30の内周縁部31とが重なる領域である接合部111は、ガス供給管204側、すなわち、内部にそれぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する流路が形成された締結部材24及び26側に位置する供給側接合部214a,214bを有する。
図7に示すように、本実施形態において供給側接合部214a,214bとは、延伸部112のそれぞれ延伸端部112eである。
【0065】
供給側接合部214a,214bは、該供給側接合部214a,214bに生じる応力の集中を緩和させる応力緩和部115を有する。具体的には、
図7に示すように、応力緩和部115(供給側接合部214a,214b)は、延伸端部112eに位置し、該応力緩和部115を含む延伸部112の延伸方向の中央部112cにおける厚みよりも大きい厚みを有する。応力緩和部115(供給側接合部214a,214b、延伸端部112e)の厚みは、中央部112cから該応力緩和部115に向けて徐々に大きくなる。すなわち、応力緩和部115を含む延伸部112は、セパレータ30の内周縁部31と接するセパレータ側界面111aを有し、該セパレータ側界面111aは、燃料電池セル本体10側に向けて円弧状に湾曲している。
【0066】
中央部112cにおける厚みTcに対する応力緩和部115(延伸端部112e)における厚みTeの比(Te/Tc)は、1.5以上であることが好ましく、11.5以上であることがより好ましい。前記比が大きいほど、応力緩和部115(供給側接合部214a,214b、延伸端部112e)の強度が高くなるので好ましい。前記比の上限値は、容易に製造できる観点から、例えば50である。
【0067】
応力緩和部115(延伸端部112e)における厚みTe及び中央部112cにおける厚みTcは、接合部111の幅方向中央部において測定される。厚みTeは、延伸端部112eを延伸方向に沿って均等に10等分し、等分点における接合部111の幅方向中央部の厚さをそれぞれ測定し、その厚さの平均値を応力緩和部115(延伸端部112e)の厚さとする。また、厚みTcは、中央部112cを延伸方向に沿って均等に10等分し、等分点における接合部111の幅方向中央部の厚さをそれぞれ測定し、その厚さの平均値を中央部112cにおける厚みTcとする。厚さは、特に限定されないが、走査型電子顕微鏡で延伸部112を倍率250〜1000倍で撮影することにより確認することができる。
【0068】
前記中央部112cにおける厚みTcに対する応力緩和部115(延伸端部112e)における厚みTeの比(Te/Tc)は、燃料電池セル本体10の外周縁部101とセパレータ30の内周縁部31との間隔を制御することで調整できる。例えば、セパレータ30の内周縁部31を湾曲させることにより、比(Te/Tc)を調整できる。具体的には、
図7に示すように、セパレータ30の内周縁部31を、燃料電池セル本体10の外周縁部101に向けて湾曲させることによって、応力緩和部115(延伸端部112e)における厚みTeを中央部112cにおける厚みTcよりも大きく、すなわち、比(Te/Tc)が1を超えるように制御する。
図7では、燃料電池セル本体10は積層方向と直交する方向に水平に延び、セパレータ30の内周縁部31は中央に向かうにつれて下方に向けて湾曲している。
【0069】
本実施形態に係るセルスタック装置100において、応力緩和部115(供給側接合部214a,214b、延伸端部112e)は、該応力緩和部115を含む延伸部112の延伸方向の中央部112cにおける厚みよりも大きい厚みを有する。これにより、供給側接合部214a,214bに加えられる応力がより分散されるため、供給側接合部214a,214bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。
【0070】
本実施形態に係るセルスタック装置100において、中央部112cにおける厚みTcに対する応力緩和部115(延伸端部112e)における厚みTeの比(Te/Tc)は、1.5以上であることが好ましい。これにより、供給側接合部214a,214bに加えられる応力がより分散されるため、供給側接合部214a,214bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。
【0071】
本実施形態に係るセルスタック装置100において、応力緩和部115を含む延伸部112は、セパレータ30の内周縁部31と接するセパレータ側界面111aを有し、該セパレータ側界面111aは、燃料電池セル本体10側に向けて円弧状に湾曲している。これにより、供給側接合部214a,214bに加えられる応力がより分散されるため、供給側接合部214a,214bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。
【0072】
本実施形態に係るセルスタック装置100において、応力緩和部115は、積層方向から見て外周側の縁部に設けられた外周端縁20aと、内周側の縁部に設けられた内周端縁20bと、を有し、外周端縁20a及び内周端縁20bは、それぞれ円弧状に湾曲している。これにより、供給側接合部214a,214bに加えられる応力が外周端縁20a及び内周端縁20bを介してより分散されるため、供給側接合部214a,214bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。
【0073】
<その他の実施形態>
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態(以下、両実施形態を合わせて本実施形態ともいう)について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0074】
本実施形態では、燃料電池セル本体10及びインターコネクタ40の積層方向から見た形状が矩形状である。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、燃料電池セル本体10及びインターコネクタ40は、積層方向から見た形状が矩形以外の多角形状、円形状又は楕円形状であってもよい。
【0075】
本実施形態では、積層方向から見た空気極12の大きさが、固体電解質層11の大きさよりも小さい。また、積層方向から見た燃料極活性部132の大きさが、燃料極基板131の大きさよりも小さい。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、積層方向から見た空気極12の大きさが固体電解質層11の大きさと等しく形成されていてもよいし、積層方向から見た燃料極活性部132の大きさが燃料極基板131の大きさと等しく形成されていてもよい。さらに、空気極12、固体電解質層11、燃料極基板131及び燃料極活性部132の大きさがすべて等しく形成されていてもよい。
【0076】
本実施形態では、燃料電池セル本体10における外周縁部101のセパレータ30と重なる領域(すなわち、接合部111)が燃料極基板131の外周側の縁部131aの一部に位置している。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セパレータ30と重なる領域が、固体電解質層11の外周側の縁部11a又は燃料極活性部132の外周側の縁部132aの一部に位置していてもよい。
【0077】
本実施形態では、セパレータ30、セル用接合材20及びインターコネクタ用接合材60の積層方向から見た形状が矩形の枠状である。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セパレータ30、セル用接合材20及びインターコネクタ用接合材60は積層方向から見た形状が矩形以外の多角形、円形又は楕円形の枠状であってもよい。
【0078】
本実施形態では、セパレータ30の内周縁部31がセル用接合材20の積層方向の一方側の表面と接合している。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セパレータ30の内周縁部31の少なくとも一部がセル用接合材20に埋設されていてもよい。セパレータ30の内周縁部31の少なくとも一部がセル用接合材20に埋設されていることにより、セパレータ30とセル用接合材20との接合面積が増加するため、接合強度が向上する。
【0079】
本実施形態では、セル用接合材20が、燃料電池セル本体10の固体電解質層11の外周側の縁部11a、燃料極基板131の外周側の縁部131a及び燃料極活性部132の外周側の縁部132aに接合している。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セル用接合材20が、少なくとも固体電解質層11の外周側の縁部11aに接合していれば、燃料極基板131の外周側の縁部131a及び燃料極活性部132の外周側の縁部132aに接合されていなくてもよい。また、セル用接合材20が、少なくとも固体電解質層11の外周側の縁部11aに接合していれば、さらに、空気極12の外周側の縁部12aに接合していてもよい。空気極12と燃料極13との間に固体電解質層11以外の緻密な層が形成されている場合、セル用接合材20は、固体電解質層11に接合していなくてもよく、少なくとも前記緻密な層に接合していればよい。これにより、セル用接合材20は、空間Aに存在する燃料ガスと、空間Bに存在する酸化剤ガスとの混合を防止している。
【0080】
本実施形態では、セル用接合材20の外周端縁20a及び内周端縁20bが、積層方向から見て、それぞれ、互いに対向する略平行な2組の辺と、円弧状に湾曲した角部と、を含む。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、前記辺は、曲線部を有していてもよい。具体的には、前記辺は、径方向の外方に向かって凸形状、凹形状、又は、凹凸が繰り返された形状に形成されていてもよい。前記辺が曲線部を有することにより、残留する応力が分散されて、応力の集中が抑制されやすくなる。このため、セル用接合材20における応力をより緩和することができる。また、前記角部は、直角又は鋭角に形成されていてもよいし、C形状に屈曲していてもよい。
【0081】
本実施形態では、接合部111が直線状に延びる4つの延伸部112を有する。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、接合部111は、セル用接合材20の形状に合わせて、4つ以外の複数の延伸部112から構成されていてもよい。
【0082】
第1実施形態では、各辺部201の中央部に設けられた締結部材21,23,25,27の内部に、積層方向に沿って酸化剤ガス又は燃料ガスが流れる流路が形成されている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、積層方向から見て各角部202に設けられた締結部材22,24,26,28の内部に、積層方向に沿って酸化剤ガス又は燃料ガスが流れる流路が形成されていてもよい。具体的には、締結部材24及び26の内部には、それぞれ燃料ガス及び酸化剤ガスを供給する流路が形成され、締結部材22及び28の内部には、それぞれ酸化剤ガス及び燃料ガスを排出する流路が形成されていてもよい。この場合、締結部材24及び26は、燃料電池セル1にガスを供給するガス供給管204であり、締結部材22及び28は、燃料電池セル1からガスを排出するガス排出管205である。なお、当該構成において供給側接合部114a,114bとは、それぞれ延伸部112の両端部に設けられた延伸端部112eである。
【0083】
第1実施形態では、セパレータ30の内周縁部31に沿う方向(延伸部112の延伸方向)の断面におけるセパレータ側界面111aの形状が、起伏形状である。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セパレータ30の内周縁部31に沿う方向と交差する方向の断面において、セパレータ側界面111aの形状が起伏形状であってもよい。
【0084】
第1実施形態では、セパレータ側界面111aの形状が、不規則的に起伏が繰り返された形状である。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セパレータ側界面111aの形状が、規則的に起伏が繰り返された形状であってもよいし、規則的な起伏と不規則的な起伏とが組み合わされた形状であってもよい。セパレータ側界面111aの形状が起伏形状を有する限り、上記のいずれの態様であったとしても、セル用接合材20における応力が緩和される。
【0085】
第2実施形態では、応力緩和部115を含む延伸部112が、セパレータ30の内周縁部31と接するセパレータ側界面111aを有し、該セパレータ側界面111aが、燃料電池セル本体10側に向けて円弧状に湾曲している。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、応力緩和部115を含む延伸部112が、燃料電池セル本体10の外周縁部101と接するセル側界面111bを有し、セル側界面111bが、セパレータ30側に向けて円弧状に湾曲していてもよい。当該構成によっても、供給側接合部214a,214bに加えられる応力がより分散されるため、供給側接合部214a,214bに生じる応力の集中をより緩和させることができる。その結果、燃料電池セル本体10とセパレータ30とを接合するセル用接合材20におけるクラックの発生をより抑制することができる。なお、セパレータ側界面111a及びセル側界面111bの両方が、これらの界面が近づく方向に向けて円弧状に湾曲していてもよい。
【0086】
第2実施形態では、延伸部112の厚みが、中央部112cから該応力緩和部115に向けて徐々に大きくなる。すなわち、応力緩和部115の厚みが最も大きく、中央部112cの厚みが最も小さい。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、応力緩和部115の厚みが最も大きければ、中央部112cの厚みが最も小さくなくてもよい。すなわち、延伸端部112e及び中央部112cを除く領域で、延伸部112の厚みが最も小さく構成されていてもよい。
【0087】
本実施形態では、インターコネクタ用接合材60が、セパレータ30の外周縁部32と、インターコネクタ40の外周縁部41と、を直接接合している。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、セパレータ30の外周縁部32とインターコネクタ40の外周縁部41との間に、インターコネクタ用接合材60とは異なる他の部材を配置してもよい。他の部材としては、例えば、絶縁材、コンプレッションシール材等が挙げられる。例えば、他の部材として絶縁材を用いることにより、セパレータ30とインターコネクタ40との間の絶縁性を向上させ、また、空気極12側に位置する空間Bの高さを調整することができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
[試験例1]
<燃料電池の作製>
表1に示すNo.1−1〜No.1−5の燃料電池セルを積層して結合させることにより、試験例1のセルスタック装置Iを作製した。燃料電池セル及びセルスタック装置Iの構造は、
図1〜6に示すとおりである。No.1−1〜No.1−4は実施例に相当し、No.1−5は比較例に相当する。No.1−1〜No.1−4の燃料電池セルは、供給側接合部114a,114bの少なくともセパレータの内周縁部に沿う方向の断面における界面の形状が、波状で、かつ、起伏が不規則な起伏形状である。
【0090】
空気極としてはLSCF(気孔率:40%、厚さ:30μm、熱膨張率:14.4ppm/K)、固体電解質層としては8YSZ(気孔率:0.5%、厚さ:20μm、熱膨張率:10.5ppm/K)、燃料極基板としてはNi−8YSZ(気孔率:40%、厚さ:800μm、熱膨張率:12.8ppm/K)、燃料極活性部としてはNi−8YSZ(気孔率:35%、厚さ:10μm、熱膨張率:12.8ppm/K)を用いた。さらに、セパレータとしては日新製鋼製NCA−1(厚さ:200μm、熱膨張率:13.5ppm/K)、セル用接合材及びインターコネクタ用接合材としては結晶化ガラスを用いた。
【0091】
<評価方法>
試験例1のセルスタック装置Iについて、熱サイクル試験により、ガスリーク量及びクラック発生の有無を調べた。具体的には、セルスタック装置を電気炉内に設置し、室温から400℃/hrの昇温速度で750℃まで昇温した後、500℃の酸化剤ガス及び燃料ガスをガス供給管から導入して30min保持した。その後、400℃/hrの降温速度で室温まで降温した。このサイクルを10回繰り返した後、電気炉から取り出して、ガスリーク量及びクラック発生の有無を調べた。なお、ガス供給管204に供給する酸化剤ガス及び燃料ガスの温度は、熱交換が充分に行われず、予熱不足の酸化剤ガス及び燃料ガスが導入された場合、及び、未改質の燃料ガスが導入された場合に、燃料電池が冷やされる最も低い温度を想定して、500℃に設定した。
【0092】
ガスリーク量は、空気極から燃料極へリークするガスの流量を測定した。より詳しくは、燃料電池の酸化剤ガス排出管出口端部及び燃料ガス排出管入口端部を封止した上で、酸化剤ガス供給管よりアルゴンガスを供給し、燃料電池の空気極側を10kPaに加圧して、燃料ガス供給管の出口端部に設けた流量計によりガスリーク量を測定した。結果を表1に示す。なお、測定下限が0.1(cc/min)であるため、下記の表1において、測定下限未満のものを「<0.1(cc/min)」と記載し、ガスリークがないと判断した。
【0093】
クラック発生の有無は、試験例1の燃料電池を解体して供給側接合部114a,114b、すなわち、ガス供給管側に位置する延伸部112の中央部112cの表面に浸透探傷剤を塗布し、マイクロスコープで観察することにより行った。結果を表1に示す。
【0094】
各燃料電池セルは、上述のガスリーク量及びクラック発生の有無の結果から、下記の基準に基づき総合評価を行った。
◎:クラックがなく、かつ、ガスリークがなかった。
○:軽微なクラックが発生し、かつ、ガスリークがなかった。
△:軽微なクラックが発生し、かつ、ガスリーク量が少なかった(1.0cc/分未満)。
×:大きなクラックが発生し、かつ、ガスリーク量が多かった(1.0cc/分以上)。
【0095】
【表1】
【0096】
<評価結果>
表1に示されるように、セパレータ側界面111aの形状が起伏形状でないNo.1−5に係る燃料電池セルは、大きなクラックが確認されたため、ガスリーク量が多かった。対して、セパレータ側界面111aの形状が起伏形状であるNo.1−1〜No.1−4に係る燃料電池セルは、クラックが確認されないか、クラックが確認されたとしても軽微であったため、ガスリークがないか、ガスリークがあったとしてもガスリーク量が少なかった。すなわち、請求項2の構成要件をすべて満たすNo.1−1〜No.1−4に係る燃料電池セルは、クラックの発生が抑制されていた。特に、No.1−1及びNo.1−2に係る燃料電池セルは、クラックが確認されず、かつ、ガスリークもなかった。すなわち、No.1−1及びNo.1−2に係る燃料電池セルは、クラックの発生が顕著に抑制されていたといえる。
【0097】
セパレータ側界面111aの形状が起伏形状である応力緩和部115を有することにより、供給側接合部114a,114bに加えられる応力が起伏を介して分散されたと考えられる。これにより、供給側接合部114a,114bに生じる応力の集中をより緩和させることができ、その結果、セル用接合材20におけるクラックの発生が抑制されたものと考えられる。
【0098】
No.1−3に係る燃料電池セルは、軽微なクラックが確認されたものの、ガスリークがなかった。すなわち、セパレータ側界面111aの形状が起伏形状である応力緩和部を有する限り、X
1に対するX
2の比が1.02以上2.00以下の範囲にない場合においてもクラックの発生が抑制されることが示された。
【0099】
No.1−4に係る燃料電池セルは、軽微なクラックが確認されたものの、ガスリーク量が少なかった。すなわち、セパレータ側界面111aの形状が起伏形状である応力緩和部を有する限り、T
minに対するT
maxの比が1.20以上20.0以下の範囲になく、かつ、X
1に対するX
2の比が1.02以上2.00以下の範囲にない場合においてもクラックの発生が抑制されることが示された。
【0100】
[試験例2]
(試験例2)
表2に示すNo.2−1〜No.2−9の燃料電池セルを積層して結合させることにより試験例2のセルスタック装置IIを作製した。セルスタック装置IIの構造は、本発明の第2実施形態及び
図6に示すとおりである。すなわち、ガス供給管204及びガス排出管205を積層方向から見て角部202に設けて、燃料ガスのガス供給管204及びガス排出管205と、酸化剤ガスのガス供給管204及びガス排出管205とを、それぞれ積層方向から見て互いに対向するように配置させた。No.2−1〜No.2−7は実施例に相当し、No.2−8及びNo.2−9は比較例に相当する。
【0101】
評価方法は、試験例1と同様に行った。なお、クラック発生の有無は、供給側接合部114a,114b、すなわち、ガス供給管側に位置する延伸部112の延伸端部112eを観察することにより行った。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
<評価結果>
表2に示されるように、延伸端部112eの厚みTeが中央部112cの厚みTcよりも小さいNo.2−8,No.2−9に係る燃料電池セルは、大きなクラックが確認されたため、ガスリーク量が多かった。対して、延伸端部112eの厚みTeが中央部112cの厚みTcよりも大きいNo.2−1〜No.2−7に係る燃料電池セルは、クラックが確認されないか、クラックが確認されたとしても軽微であったため、ガスリークがなかった。すなわち、請求項7の構成要件をすべて満たすNo.2−1〜No.2−7に係る燃料電池セルは、クラックの発生が抑制されていた。特に、No.2−1〜No.2−4に係る燃料電池セルは、クラックが確認されず、かつ、ガスリークもなかった。すなわち、No.2−1〜No.2−4に係る燃料電池セルは、クラックの発生が顕著に抑制されていたといえる。
【0104】
中央部112cにおける厚みTcよりも大きい厚みTeを有する延伸端部112e(応力緩和部115)を有することにより、応力緩和部115に加えられる応力が分散されたと考えられる。これにより、セル用接合材20におけるクラックの発生が抑制されたものと考えられる。
【0105】
No.2−5〜No.2−7に係る燃料電池セルは、軽微なクラックが確認されたものの、ガスリークがなかった。すなわち、中央部112cにおける厚みTcよりも大きい厚みTeを有する延伸端部112e(応力緩和部115)を有する限り、中央部112cにおける厚みTcに対する延伸端部112eにおける厚みTeの比が1.5以上の範囲にない場合においてもクラックの発生が抑制されることが示された。
【0106】
また、No.2−1及びNo.2−2の結果から分かるように、燃料電池セルは、セパレータ側界面111aが湾曲していたとしても、セル側界面111bが湾曲していたとしても、同様にクラックの発生が抑制されていた。
【解決手段】セルスタック装置は、複数の燃料電池セルとガス供給管とガス排出管とを備え、燃料電池セルは、順次積層された空気極と固体電解質層と燃料極とを備え、積層方向から見て外周側の縁部に外周縁部を有する平板型の燃料電池セル本体と、積層方向から見て内側に開口が形成されかつ内周側の縁部に燃料電池セル本体の外周縁部と重なる内周縁部を有するセパレータと、燃料電池セル本体とセパレータとを接合するセル用接合材とを備え、セル用接合材は、積層方向から見て燃料電池セル本体の外周縁部とセパレータの内周縁部とが重なる領域である接合部を有し、接合部は、ガス供給管側に位置する供給側接合部を有し、供給側接合部は、該供給側接合部に生じる応力の集中を緩和させる応力緩和部を有する。