(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827109
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】洗濯機のダンパー及び洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/24 20060101AFI20210128BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20210128BHJP
F16F 7/06 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
D06F37/24 B
F16F15/04 B
F16F7/06
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-523738(P2019-523738)
(86)(22)【出願日】2017年11月10日
(65)【公表番号】特表2019-537474(P2019-537474A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】CN2017110401
(87)【国際公開番号】WO2018086578
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年8月19日
(31)【優先権主張番号】201610997614.0
(32)【優先日】2016年11月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】呂佩師
(72)【発明者】
【氏名】楊林
(72)【発明者】
【氏名】張剛金
(72)【発明者】
【氏名】田云
(72)【発明者】
【氏名】周春霞
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−013282(JP,U)
【文献】
特開平08−010489(JP,A)
【文献】
米国特許第05946946(US,A)
【文献】
中国実用新案第203360863(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/20−37/24
F16F 7/06、15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制震懸架ロッド、上受け、制震バネ、摺動減衰支持ベース及び摺動減衰部材を含み、前記制震懸架ロッドの上端端部は洗濯機の筐体に取り付けられ、前記上受けは洗濯機の外槽に取り付けられ、前記制震懸架ロッドは、上から順に、前記上受け、前記摺動減衰部材、前記摺動減衰支持ベース及び前記制震バネに挿通され、
洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって前記上受けに対し偏心圧力が付与されると、前記制震バネが圧縮されるとともに、前記摺動減衰部材が収縮することで前記制震懸架ロッドに作用する摺動減衰が発生し、偏心力が増大するにしたがって、前記摺動減衰支持ベースと前記摺動減衰部材が共に収縮して前記制震懸架ロッドに作用する摺動減衰が増大し、
洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって前記上受けが解除されると、前記制震バネが伸長し、前記摺動減衰支持ベースと前記摺動減衰部材が徐々に緩むことで、前記制震懸架ロッドに作用する摺動減衰が徐々に減少し、
前記摺動減衰支持ベースは、一端に設けられるリング本体と、リング本体にそれぞれ接続される複数の弾性体を含み、前記リング本体は前記摺動減衰部材に当接するよう設けられ、前記弾性体は前記制震バネの内部に伸入し、複数の前記弾性体の間には、中心に位置して前記制震懸架ロッドを挿通するための貫通孔が形成されるように設計され、
前記弾性体のうちリング本体に接続される一端は傾斜するよう設けられて傾斜構造を形成するか、或いは、前記弾性体は傾斜リブである傾斜構造を通してリング本体に接続され、
前記傾斜構造の内側に収容室が形成されることを特徴とする洗濯機のダンパー。
【請求項2】
前記摺動減衰支持ベースは前記摺動減衰部材寄りの一端に収容室を備え、前記摺動減衰部材は、一端が前記上受けに当接するよう設けられるとともに、他端が前記摺動減衰支持ベースの収容室に伸入することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機のダンパー。
【請求項3】
前記摺動減衰部材は、環状の減衰プレートと、前記環状の減衰プレートの一方の側に設けられて内環沿いに分布する複数の減衰材を含み、前記減衰材の間には、中心に位置して前記制震懸架ロッドを挿通するための貫通孔が形成されることを特徴とする請求項2に記載の洗濯機のダンパー。
【請求項4】
前記摺動減衰部材における前記環状の減衰プレートの上壁表面は前記上受けに密着するよう設けられ、前記摺動減衰部材における前記環状の減衰プレートの下壁表面は前記摺動減衰支持ベースの上端面に密着するよう設けられ、前記摺動減衰部材の減衰材は、前記摺動減衰支持ベースの収容室に伸入することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機のダンパー。
【請求項5】
前記摺動減衰部材における前記環状の減衰プレートの上壁表面には環状の突出リブが設けられており、前記上受けの下壁には前記環状の突出リブに係合する環状の凹溝が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の洗濯機のダンパー。
【請求項6】
前記摺動減衰支持ベースの外壁には環状の当止リブが設けられ、前記制震バネの上端が前記環状の当止リブに当止されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗濯機のダンパー。
【請求項7】
前記摺動減衰支持ベースはプラスチック材料により一体成型され、前記摺動減衰部材はゴム製の減衰材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機のダンパー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の洗濯機のダンパーを備える洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗濯機の制震技術分野に関し、具体的には、洗濯機のダンパー及び洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
全自動洗濯機における脱水起動及び脱水運転時には、モータの起動に伴って外槽にぐらつきや揺動が生じ、大きな震動及び騒音が形成される。そこで、洗濯機の脱水時における震動及び騒音を低減するために、従来の全自動洗濯機は一般的にダンパーを装備している。ダンパーの一端は洗濯機の筐体に懸装され、他端は洗濯機の外槽の懸架台に懸架される。また、ダンパー内には制震バネが設けられている。外槽にぐらつき又は揺動が生じた場合、ダンパーは制震の目的を達するために、制震バネの緩衝作用によって外槽の偏心を緩和する。しかし、洗濯機の発展・進歩に伴って、洗濯機の偏心が大きい場合には、制震バネの制震作用だけでは外槽のぐらつき及び揺動を効果的に阻止できなくなっている。
【0003】
従来の洗濯機のダンパーには制震バネのみが設けられるものがあり、これらは小容量の洗濯機に用いられることが多い。また、制震バネをベースに摺動減衰構造を追加しているものもあるが、提供される摺動減衰力が小さすぎるため、制震及び騒音低減効果を有効に発揮できていない。更に、摺動減衰支持ベースと上受けの間に摩擦ゴム部材を追加しているものもあるが、当該構造は高コストであり、信頼性にも劣る。また、磨損期間が長くなるにつれて、ゆっくりと摩擦減衰力が失われてゆく。
【0004】
これらに鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の目的は、洗濯機のダンパーを提供することである。具体的には、以下の技術方案を用いる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
洗濯機のダンパーであって、制震懸架ロッド、上受け、制震バネ、摺動減衰支持ベース及び摺動減衰部材を含み、前記制震懸架ロッドの上端端部は洗濯機の筐体に取り付けられ、上受けは洗濯機の外槽に取り付けられ、前記制震懸架ロッドは、上から順に、上受け、摺動減衰部材、摺動減衰支持ベース及び制震バネに挿通され、洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって上受けに対し偏心圧力が付与されると、制震バネが圧縮されるとともに、摺動減衰部材が収縮することで制震懸架ロッドに作用する摺動減衰が発生し、偏心力が増大するにしたがって、摺動減衰支持ベースと摺動減衰部材が共に収縮して制震懸架ロッドに作用する摺動減衰が増大し、洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって上受けが解除されると、制震バネが伸長し、摺動減衰支持ベースと摺動減衰部材が徐々に緩むことで、制震懸架ロッドに作用する摺動減衰が徐々に減少する。
【0007】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰支持ベースは摺動減衰部材寄りの一端に収容室を備え、前記摺動減衰部材は、一端が上受けに当接するよう設けられるとともに、他端が摺動減衰支持ベースの収容室に伸入する。
【0008】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰部材は、環状の減衰プレートと、環状の減衰プレートの一方の側に設けられて内環沿いに分布する複数の減衰材を含み、前記減衰材の間には、中心に位置して制震懸架ロッドを挿通するための貫通孔が形成される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰部材における環状の減衰プレートの上壁表面は上受けに密着するよう設けられ、摺動減衰部材における環状の減衰プレートの下壁表面は摺動減衰支持ベースの上端面に密着するよう設けられ、摺動減衰部材の減衰材は、摺動減衰支持ベースの収容室に伸入する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰部材における環状の減衰プレートの上壁表面には環状の突出リブが設けられており、前記上受けの下壁には環状の突出リブに係合する環状の凹溝が設けられている。
【0011】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰支持ベースは、外槽にぐらつき又は揺動が生じた場合に偏心力を伝達することで、制震懸架ロッドに作用する摺動減衰を発生させる傾斜構造を備え、前記傾斜構造の内側に収容室が形成される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰支持ベースは、一端に設けられるリング本体と、リング本体にそれぞれ接続される複数の弾性体を含み、前記リング本体は摺動減衰部材に当接するよう設けられ、前記弾性体は制震バネの内部に伸入し、複数の前記弾性体の間には、中心に位置して制震懸架ロッドを挿通するための貫通孔が形成されており、前記弾性体のうちリング本体に接続される一端は傾斜するよう設けられて傾斜構造を形成するか、或いは、前記傾斜構造は、弾性体とリング本体を接続するための傾斜リブである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰支持ベースの外壁には環状の当止リブが設けられ、前記制震バネの上端が環状の当止リブに当止される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態として、前記摺動減衰支持ベースはプラスチック材料により一体成型され、前記摺動減衰部材はゴム製の減衰材である。
【0015】
本発明の第2の目的は、洗濯機を提供することである。具体的には、上記いずれかの洗濯機のダンパーを備える洗濯機との技術方案を採用する。
【0016】
本発明における洗濯機のダンパーは、摺動減衰支持ベースと摺動減衰部材を含む。摺動減衰支持ベースには一般的なプラスチック材質を使用すればよく、これにより製造コストが抑えられる。また、摺動減衰部材には、大きな圧力を受けた場合に摺動減衰力を徐々に増大可能となるよう、ゴム材料を使用する。外槽のぐらつき又は揺動に伴い、上受け、摺動減衰部材及び摺動減衰支持ベースが制震懸架ロッド沿いに上下に摺動することで、制震バネが圧縮又は解放される。
【0017】
外槽のぐらつき又は揺動によって上受けに対し偏心力が下向きに付与されると、制震バネが圧縮されるとともに、摺動減衰部材が摺動減衰支持ベースに押圧されて収縮する。偏心力がより大きくなると、摺動減衰支持ベースも圧力の増大に伴って収縮し、懸架ロッドとの間に摩擦を生じて摺動摩擦減衰力を発生させる。外槽のぐらつき又は揺動によって上受けに対する圧力が解除されると、制震バネが伸長し、摺動減衰部材と摺動減衰支持ベースが緩むことで、制震懸架ロッドとの摩擦が徐々に減少する。そして、発生した摺動摩擦減衰力が減少するか、完全に解除されると、洗濯機のダンパーの各部材が元の位置に復帰する。
【0018】
本発明における洗濯機のダンパーは、摺動減衰支持ベースと摺動減衰部材を含む。洗濯機の脱水起動及び運転時に、摺動減衰支持ベースと摺動減衰部材がそれぞれ制震懸架ロッドとの摩擦により外槽に対し摺動減衰力を提供する。これにより、外槽のぐらつき及び揺動が効果的に減少する。特に、大容量の洗濯機に対し良好な制震効果を発揮するため、洗濯機は安静且つ安定的な脱水起動及び運転を維持する。
【0019】
本発明における前記洗濯機のダンパーを備える洗濯機は、安静且つ安定的な脱水起動及び運転を維持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明における洗濯機のダンパーの分解図である。
【
図2】
図2は、本発明における洗濯機のダンパーの正面図である。
【
図3】
図3は、本発明における洗濯機のダンパーの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明における洗濯機のダンパーの摺動減衰支持ベースの立体構造を示す第1の図である。
【
図5】
図5は、本発明における洗濯機のダンパーの摺動減衰支持ベースの立体構造を示す第2の図である。
【
図6】
図6は、本発明における洗濯機のダンパーの摺動減衰支持ベースの断面図である。
【
図7】
図7は、本発明における洗濯機のダンパーの摺動減衰部材の上部立体構造を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明における洗濯機のダンパーの摺動減衰部材の背部立体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を組み合わせて、本発明における洗濯機のダンパー及び洗濯機につき詳細に記載する。
【0022】
図1、
図2及び
図3に示すように、本実施例における洗濯機のダンパーは、制震懸架ロッド300、上受け400、制震バネ700、摺動減衰支持ベース600及び摺動減衰部材500を含む。前記制震懸架ロッド300の上端端部は洗濯機の筐体に取り付けられ、上受け400は洗濯機の外槽に取り付けられる。前記制震懸架ロッド300は、上から順に、上受け400、摺動減衰部材500、摺動減衰支持ベース600及び制震バネ700に挿通される。
【0023】
洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって上受けに対し偏心圧力が付与されると、制震バネ700が圧縮されるとともに、摺動減衰部材500が収縮することで制震懸架ロッド300に作用する摺動減衰が発生する。また、偏心力が増大するにしたがって、摺動減衰支持ベース600と摺動減衰部材500が共に収縮し、制震懸架ロッド300に作用する摺動減衰が増大する。
【0024】
一方、洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって上受けが解除されると、制震バネ700が伸長し、摺動減衰支持ベース600と摺動減衰部材500が徐々に緩むことで、制震懸架ロッド300に作用する摺動減衰が徐々に減少する。
【0025】
本実施例における洗濯機のダンパーは、摺動減衰支持ベース600と摺動減衰部材500を含む。摺動減衰支持ベース600には一般的なプラスチック材質を使用すればよく、これにより製造コストが抑えられる。また、摺動減衰部材500には、大きな圧力を受けた場合に摺動減衰力を徐々に増大可能となるよう、ゴム材料を使用する。外槽のぐらつき又は揺動に伴い、上受け400、摺動減衰支持ベース600及び摺動減衰部材500が制震懸架ロッド300沿いに上下に摺動することで、制震バネ700が圧縮又は解放される。
【0026】
本実施例における洗濯機のダンパーは、洗濯機の脱水起動及び運転時に、摺動減衰支持ベース600と摺動減衰部材500がそれぞれ制震懸架ロッド300との摩擦により外槽に対し摺動減衰力を提供する。これにより、外槽のぐらつき及び揺動が効果的に減少する。特に、大容量の洗濯機に対し良好な制震効果を発揮するため、洗濯機は安静且つ安定的な脱水起動及び運転を維持する。
【0027】
本実施例における洗濯機のダンパーでは、摺動減衰支持ベース600と摺動減衰部材500が共に制震懸架ロッド300に取り付けられている。これらがいずれも良好な摺動減衰を発揮できるよう、摺動減衰支持ベース600と摺動減衰部材500は次のように取り付けられる。即ち、本実施例の前記摺動減衰支持ベース600は、摺動減衰部材500寄りの一端に収容室を備える。前記摺動減衰部材500は、一端が上受け400に当接するよう設けられるとともに、他端が摺動減衰支持ベース600の収容室に伸入する。
【0028】
本実施例の摺動減衰部材500は、上受け400に直に当接する。そのため、外槽にぐらつき又は揺動が発生すると、偏心力が上受け400に直に作用し、上受け400が摺動減衰部材500に直に作用する。そして、摺動減衰部材500と制震懸架ロッド300との押圧による摩擦で摺動減衰が発生する。これにより、通常のぐらつき又は揺動の場合であれば、外槽は摺動減衰部材500により発生した摺動減衰によって制震要求を満たすことができる。また、外槽のぐらつき又は揺動が大きい場合には偏心力がより大きくなり、摺動減衰部材500の他端が摺動減衰支持ベース600の収容室に伸入する。そのため、偏心力は更に摺動減衰支持ベース600に伝達可能となり、摺動減衰支持ベース600と制震懸架ロッド300との間にも押圧による摩擦で摺動減衰が発生する。これにより、制震効果が更に強化される。
【0029】
本実施例の好ましい実施形態として、前記摺動減衰部材500は、環状の減衰プレート501と、環状の減衰プレート501の一方の側に設けられて内環沿いに分布する複数の減衰材502を含む。前記減衰材502の間には、中心に位置して制震懸架ロッドを挿通するための貫通孔が形成されている。
【0030】
本実施例における複数の減衰材502の間には減衰材間隔503が備わっている。そのため、外槽にぐらつき又は揺動が生じると減衰材502が緩み、減衰材502と制震懸架ロッド300の間の摺動減衰が小さくなる。また、外槽にぐらつき又は揺動が生じると減衰材502が収縮し、減衰材502と制震懸架ロッド300の間の摺動減衰が増大する。
【0031】
更に、本実施例の前記摺動減衰部材500における環状の減衰プレート501の上壁表面は、上受け400に密着するよう設けられ、摺動減衰部材500における環状の減衰プレート501の下壁表面は、摺動減衰支持ベース600の上端面に密着するよう設けられる。また、摺動減衰部材500の減衰材502は、摺動減衰支持ベース600の収容室に伸入する。このように設けることで、上受け400から摺動減衰部材500、及び摺動減衰部材500から摺動減衰支持ベース600へと偏心力の伝達が実現される。
【0032】
本実施例の好ましい実施形態として、前記摺動減衰部材500における環状の減衰プレート501の上壁表面には環状の突出リブが設けられており、前記上受け400の下壁には環状の突出リブに係合する環状の凹溝が設けられている。これにより、摺動減衰部材500と上受け400との係合を強化可能である一方、前記環状の突出リブを中心に向かって傾斜させさせることで、偏心力がより良好に減衰材502に伝達される。
【0033】
本実施例の好ましい実施形態として、前記摺動減衰支持ベース600は、外槽にぐらつき又は揺動が生じた場合に偏心力を伝達することで、制震懸架ロッド300に作用する摺動減衰を発生させる傾斜構造602を備える。また、前記傾斜構造602の内側に収容室が形成されている。
【0034】
本実施例の摺動減衰支持ベース600は、外槽から付与された力を効果的に伝達可能とする傾斜構造602を備える。外槽のぐらつき又は揺動に伴い、上受け400、摺動減衰部材500、摺動減衰支持ベース600が制震懸架ロッド300沿いに上下に摺動することで、制震バネ700が圧縮又は解放される。好ましくは、傾斜構造602が外槽のぐらつき又は揺動により生じる偏心力を効果的に摺動減衰支持ベース600の変形可能部位に伝達し、制震懸架ロッドに摺動減衰を提供することで良好な制震効果を実現可能となるよう、本実施例の傾斜構造602は、制震懸架ロッド300沿いに上から下へと制震懸架ロッド300に近付く方向に傾斜している。これにより、圧力を受けた際の偏心量が水平方向に分力を発生し、摺動減衰支持ベース600の変形可能部位に作用して収縮させることで、摺動減衰力が発生する。
【0035】
外槽のぐらつき又は揺動によって、上受け400に対し偏心力が下向きに付与されると、制震バネ700が圧縮されるとともに、摺動減衰支持ベース600が収縮して制震懸架ロッド300と摩擦を生じることで、減衰力が発生する。一方、外槽のぐらつき又は揺動によって上受けに対する圧力が解除されると、制震バネ700が伸長し、摺動減衰支持ベース600が緩むことで、制震懸架ロッド300との摩擦が徐々に減少する。そして、発生した摺動摩擦減衰力が減少するか、完全に解除されると、ダンパーの各部材が元の位置に復帰する。
【0036】
このように、本実施例における洗濯機のダンパーは、摺動減衰支持ベース600を備える。洗濯機の脱水起動及び運転時には、摺動減衰支持ベース600と制震懸架ロッド300との摩擦によって外槽に摺動減衰力が提供されるため、外槽のぐらつき及び揺動が効果的に減少し、良好な制震効果が発揮される。これにより、洗濯機は安静且つ安定的な脱水起動及び運転を維持する。
【0037】
そのため、本実施例における洗濯機のダンパーは、単体として設計された摺動減衰支持ベース600を備えることで、制震懸架ロッド300に対し良好な摺動摩擦減衰を発揮し、洗濯機の制震効果を高めることが可能となる。本実施例の摺動減衰支持ベース600は、単独で使用して一般的な洗濯機の制震要求を満たしてもよいし、より良好な制震効果を取得して更に大型の洗濯機に適応すべく、摺動減衰材と組み合わせて摺動減衰効果をいっそう強化してもよい。また、本実施例の摺動減衰支持ベース600の材料としては、一般的なプラスチック材質を使用すればよい。これにより、製造コストが抑えられ、使用寿命も延びる。
【0038】
本実施例の摺動減衰支持ベース600が、外槽のぐらつき又は揺動に伴って制震懸架ロッド300に対する摺動減衰の大きさを変更可能となるよう、具体的に、本実施例における前記摺動減衰支持ベース600は、一端に設けられるリング本体601と、リング本体601にそれぞれ接続される複数の弾性体606を含む。前記リング本体601は摺動減衰部材500に当接するよう設けられ、前記弾性体606は制震バネ700の内部に伸入する。複数の前記弾性体606の間には、中心に位置して制震懸架ロッド300を挿通するための貫通孔が形成されている。
【0039】
洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって上受け400に対し偏心圧力が付与されると、制震バネ700が圧縮されるとともに、摺動減衰支持ベース600の傾斜構造602が偏心力を各前記弾性体606に伝達する。すると、弾性体606が収縮することで、制震懸架ロッド300に対する摺動減衰が増大する。
【0040】
一方、洗濯機の外槽のぐらつき又は揺動によって上受けが解放されると、制震バネ700が伸長し、各前記弾性体606が緩むことで、制震懸架ロッド300に対する摺動減衰が減少するか、完全に解除される。
【0041】
本実施例の弾性体606の間には弾性隙間605が備わっているため、外槽にぐらつき又は揺動が生じていない場合には、弾性体の内壁と制震懸架ロッド300とが接触してはいるものの、押圧による摩擦は発生しないか、押圧による摩擦力が大きくはならない。一方で、外槽にぐらつき又は揺動が発生すると、傾斜構造602から伝達された偏心力の働きによって弾性体606が収縮する。そして、弾性体606の内壁と制震懸架ロッド300が密着し、押圧による摩擦で大きな摺動摩擦減衰が発生することで、外槽のぐらつき又は揺動が緩和されて、制震効果が実現される。
【0042】
好ましくは、本実施例では弾性体606を4つ含み、4つの弾性体606が円をなしている。また、弾性体606の間には弾性隙間605が備わっている。
【0043】
具体的に、本実施例の前記弾性体606は、リング本体601の周方向に均一な間隔を置いて分布している。前記弾性体606のうちリング本体601に接続される一端は傾斜するよう設けられ、傾斜構造602を形成している。或いは、前記傾斜構造602は、弾性体606とリング本体601を接続するための傾斜リブである。
【0044】
本実施例の傾斜構造602は、リング本体601の中心に向かって傾斜するよう設けられる。これにより、摺動減衰支持ベース600全体がリング本体601から弾性体606に向かって縮小するよう設けられる。本実施例の摺動減衰支持ベース600は一体成型としてもよいし、一部を接続して形成してもよい。
【0045】
本実施例の好ましい実施形態として、前記弾性体606は傾斜部と垂直部を含む。前記傾斜部の一端はリング本体に接続され、他端はリング本体の内側に向かって傾斜するよう設けられる。また、前記垂直部は傾斜部に接続されるとともに、垂直方向に設けられる。前記弾性体606の垂直部の内壁は、内側に突出するよう設けられて制震懸架ロッドに接触し、制震懸架ロッドに対する摺動減衰を発生させる。本実施例の弾性体606と傾斜構造602は一体成型される。弾性体606の傾斜部が傾斜構造602に相当し、垂直部が制震懸架ロッド300と接触して摺動摩擦減衰を発生させる変形可能部位に相当する。
【0046】
本実施例の好ましい実施形態として、前記傾斜リブは、一端がリング本体601に接続され、他端が、リング本体601の内側に向かって傾斜するよう設けられるとともに弾性体606に接続される。また、前記弾性体606は垂直方向に設けられる。前記弾性体606の内壁は、内側に突出するよう設けられて制震懸架ロッド300に接触し、制震懸架ロッドに対する摺動減衰を発生させる。本実施例の傾斜リブはリング本体601と一体成型され、弾性体606が傾斜リブに固定接続される。これによれば、減衰係数のより高いゴム材料を用いて弾性体606を製造可能となる。且つ、必要に応じて相応の規格の弾性体606を選択し、摺動減衰要求を満たすことが可能となる。
【0047】
本実施例では前記傾斜リブを複数含み、これらがリング本体601の周方向に沿って弾性体606と一対一で対応するよう設けられる。
【0048】
更に、本実施例における各前記弾性体606の傾斜部と垂直部との交差部分の外壁には、当止リブ604がそれぞれ設けられる。各当止リブ604は環状の当止リブをなし、前記制震バネ700の上端が環状の当止リブに当止される。或いは、各前記傾斜リブと各前記弾性体606との交差部分の外壁に当止リブ604がそれぞれ設けられる。各当止リブ604は環状の当止リブをなし、前記制震バネ700の上端が環状の当止リブに当止される。
【0049】
本実施例の摺動減衰支持ベース600は摺動減衰部材500と制震バネ700の間に設けられ、摺動減衰支持ベース600のリング本体601が摺動減衰部材500に当接する。摺動減衰部材500は、外槽の偏心力を受けると摺動減衰支持ベース600に直接作用することが可能である。また、摺動減衰支持ベース600は、制震バネ700を当止する環状の当止リブを更に備える。これにより、外槽の偏心力の一部が摺動減衰支持ベース600を通じて制震バネ700に直に作用可能となり、制震バネ700が圧縮することで制震弾性力が提供される。また、他の偏心力は傾斜構造を通じて弾性体606に作用し、弾性体606と制震懸架ロッド300との摩擦により摺動摩擦減衰が発生する。よって、本実施例の摺動減衰支持ベース600は、洗濯機の外槽のぐらつき及び揺動に対し良好な制震効果を有する。
【0050】
本発明の好ましい実施形態として、前記当止リブ604と弾性体606の傾斜部における外壁との間には補強リブ603が設けられる。或いは、前記当止リブ604と傾斜リブの外壁との間に補強リブ603が設けられる。補強リブ603を設けることで、摺動減衰支持ベース600の全体強度を強化可能となり、より良好な耐摩耗性が備わることから、使用寿命が延びる。
【0051】
本実施における洗濯機のダンパーは、更に、制震懸架ロッド300の上端端部に取り付けられる懸架ロッドベース200を含む。前記懸架ロッドベース200は洗濯機の筐体上部に懸装される。前記懸架ロッドベース200と洗濯機の筐体との間には、制震作用を増強するガスケット100が追加される。
【0052】
本実施例における洗濯機のダンパーは、更に、制震懸架ロッド300の下端端部に固着される下受け800を含み、前記制震バネ700の下端が前記下受け800に当止される。
【0053】
且つ、本実施例は、上述したいずれかの洗濯機のダンパーを備える洗濯機を提供する。本発明における前記洗濯機のダンパーを備える洗濯機は、安静且つ安定的な脱水起動及び運転を維持可能である。
【0054】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に限定するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではなく、本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて行うわずかな変形或いは補足は、同等に変形された等価の実施例とみなされる。本発明の技術方案の内容を逸脱することなく、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲内とされる。
【符号の説明】
【0055】
100 ガスケット
200 懸架ロッドベース
300 制震懸架ロッド
400 上受け
500 摺動減衰部材
501 環状減衰プレート
502 減衰材
503 減衰材間隔
504 摺動減衰面
600 摺動減衰支持ベース
601 リング本体
602 傾斜構造
603 補強リブ
604 当止リブ
605 弾性隙間
606 弾性体
700 制震バネ
800 下受け