特許第6827113号(P6827113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827113シェーグレン症候群の治療におけるペオニフロリン−6’−O−ベンゼンスルホン酸の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827113
(24)【登録日】2021年1月20日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】シェーグレン症候群の治療におけるペオニフロリン−6’−O−ベンゼンスルホン酸の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7048 20060101AFI20210128BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20210128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61K31/7048
   A61P37/06
   A61K45/00
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-527134(P2019-527134)
(86)(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公表番号】特表2019-537615(P2019-537615A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】CN2017073540
(87)【国際公開番号】WO2018133139
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/071998
(32)【優先日】2017年1月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520169753
【氏名又は名称】広州白雲山漢方現代薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU HANFANG PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】魏偉
(72)【発明者】
【氏名】呉華勲
(72)【発明者】
【氏名】顧芳
(72)【発明者】
【氏名】徐軍
(72)【発明者】
【氏名】謝宏偉
(72)【発明者】
【氏名】徐広
(72)【発明者】
【氏名】付劼
(72)【発明者】
【氏名】王学政
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−539927(JP,A)
【文献】 特開2007−176906(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0187599(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0004491(US,A1)
【文献】 International Immunopharmacology,2015年,Vol.28,pp.115-120
【文献】 International Immunopharmacology,2016年,Vol.30,pp.27-35
【文献】 Journal of Ethnopharmacology,2016年,Vol.189,pp.194-201
【文献】 Acta Pharmacologica Sinica,2013年,Vol.34,Supplement,p.90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 45/00
A61P 37/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸を含む、哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項2】
ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の投与量が17.5mg/kg〜70mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項3】
ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の投与量が17.5mg/kg〜35mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項4】
ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の投与量が17.5mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項5】
前記治療薬は、ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸に加えて、他の治療薬を含む併用薬であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項6】
前記他の治療薬は、自己免疫疾患の治療薬、他のシェーグレン症候群の治療薬、及びシェーグレン症候群の治療に促進作用を有する治療薬から選択される1種または複数種であることを特徴とする請求項5に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項7】
前記自己免疫疾患の治療薬は、
Humira(ヒュミラ,アダリムマブ)、Enbrel(エンブレル,エタネルセプト)、Remicade(レミケード,インフリキシマブ)、Simponi(golimumab,ゴリムマブ)、Cimzia(Certolizumab pegol,セルトリズマブ ペゴル)、エタネルセプトを含むTNFαターゲットに作用する生物学的製剤;
Actemra(Ocilizumab,トシリズマブ)、Orencia(Abatacept,アバタセプト)、Stelara(ustekinumab)を含む他の自己免疫疾疾患の治療に用いる生物学的製剤;
Xeljanz(Tofacitinib,トファシチニブ)、Baricitinib(バリシチニブ)を含むJAK1、JAK2、JAK3、TYK2等のターゲットに作用するJAK阻害剤;
Otezla(Apremilast,アプレミラスト)を含む選択的ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤から選択される1種または複数種であることを特徴とする請求項6に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項8】
前記他のシェーグレン症候群の治療薬は、
ピロカルピン、シクロスポリン、シクロペンチルケトン、セビメリン、人工涙液を含む局所乾燥症状を緩和する治療薬
メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、アザチオプリン、クロヅル、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルを含む全身治療に用いる免疫阻害剤;
プレドニゾン、メチルプレドニゾロンを含む糖質コルチコイド類治療薬;及び
ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、抗CD20を含む他の自己免疫疾患の治療薬から選択される1種または複数種であることを特徴とする請求項6に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【請求項9】
前記併用薬におけるペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸及び他の治療薬は、併用して投与されるか、或いは、それぞれ独立して同時または順次に投与されることを特徴とする請求項5に記載の哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療分野に関し、特に、シェーグレン症候群の治療におけるペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シェーグレン症候群(Sjogren Syndrome, SS)は、唾液腺と涙腺を侵入することを特徴とする慢性炎症性自己免疫疾患であり、上記疾患の主な病理学的特徴は、Bリンパ球機能亢進とT細胞抑制機能低下である。シェーグレン症候群は、複数要因が総合的に作用する疾患であり、その発病原因は遺伝的環境、ウイルス要因及び免疫学要因と関連する可能性がある。シェーグレン症候群(primary Sjogren Syndrome, pSS)は世界的疾患であり、中国での発病率は0.33%〜0.77%であり、女性と高齢者によく発生し、男女割合は約1:9〜1:20である。口渇、ドライアイは、上記疾患の典型的な臨床症状であり、一部の患者には慢性おたふく風邪と後期のランパントカリエスが発生する。それ以外には、その他異型全身症状と全身ダメージを含み、例えば、一般的な関節痛、腎臓損害と肺病変などがある。
【0003】
シェーグレン症候群の治療に関しては、臨床的に主に症状緩和と全身治療2種類の薬品を含む。人工唾液或は人工涙液の代替治療は局所乾燥症状を軽減できる。M3受容体アゴニスト、例えば、ピロカルピン(pilocarpine)或はセビメリン(cevimeline)は、唾液腺、涙腺受容体を刺激することにより、唾液と涙液を産生させ、患者の口渇、ドライアイの症状を顕著に改善することができる。適切な投与量の糖質コルチコイドは損害を受けた組織臓器を保護し、全身性炎症反応を軽減する。免疫阻害剤、例えば、ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine, HCQ)は、炎症性免疫反応を抑制し、外分泌腺の炎症性浸潤を減らし、損傷した外分泌腺と臓器機能を保護する。
【0004】
人工代替品(例えば、人工唾液)は長期的に口腔を乾燥清潔な環境を維持することが困難である。M3受容体アゴニストの治療効果は外分泌腺の症状に対して一定の緩和作用があるだけで、免疫阻害剤は免疫反応を抑制する同時に、たくさんの副作用がある。これら症状の改善と代替治療の薬品は、上記疾患により発生した臓器の損害を根本的に解決できず、また、免疫阻害剤などの副作用があるため、現在、臨床診療では良好な治療効果と少ない副作用を有する薬品が欠けている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的はシェーグレン症候群の治療に用いる物質を提供することであり、前記物質はペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸(Paeoniflorin−6'−0−benzene sulfonate,略語CP−25)であり、シャクヤクからペオニフロリン(Paeoniflorin,Pae)を抽出し、ペオニフロリンの構造を変化させることにより得た化合物である。その抗炎症開始時間及び作用効力は、シャクヤクの総グルコシド及びペオニフロリンよりはるかに優れる。
【0006】
ペオニフロリン6'-O-ベンゼンスルホン酸の分子量は620.62であり、分子式はC293213Sであり、化学構造は下記の式Iに示すようである。
【0007】

(式I)
【0008】
本発明の第1観点は、哺乳類のシェーグレン症候群の治療薬の製造におけるペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の使用に関する。
【0009】
本発明の第2観点は、第1観点の使用に関し、ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の投与量が17.5mg/kg〜70mg/kgであることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3観点は、第1観点の使用に関し、ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の投与量が17.5mg/kg〜35mg/kgであることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4観点は、第1観点の使用に関し、ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の投与量が17.5mg/kgであることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5観点は、第1〜第4観点のうちいずれか一つの使用に関し、前記薬品は、ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸に加えて、他の薬品を含む併用薬であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6観点は、第5観点の使用に関し、前記他の薬品は、自己免疫疾患の治療薬、他のシェーグレン症候群の治療薬、及びシェーグレン症候群の治療に促進作用を有する薬品から選択される1種または複数種である。
【0014】
本発明の第7観点は、第6観点の使用に関し、前記自己免疫疾患薬品は、
TNFαターゲットに作用する生物学的製剤、例えば、Humira(ヒュミラ,アダリムマブ)、Enbrel(エンブレル,エタネルセプト)、Remicade(レミケード,インフリキシマブ)、Simponi(golimumab,ゴリムマブ)、Cimzia(Certolizumab pegol,セルトリズマブ ペゴル)、エタネルセプト;
その他自己免疫疾疾患の治療に用いる生物学的製剤、例えば、Actemra(Ocilizumab,トシリズマブ)、Orencia(Abatacept,アバタセプト)、Stelara(ustekinumab);
JAK1、JAK2、JAK3、TYK2等のターゲットに作用するJAK阻害剤、例えば、Xeljanz(Tofacitinib,トファシチニブ)、Baricitinib(バリシチニブ);
選択的ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤、例えば、Otezla(Apremilast,アプレミラスト)から選択される1種または複数種である。
【0015】
本発明の第8観点は、第6観点の使用に関し、前記他のシェーグレン症候群の治療薬は、
局所乾燥症状を緩和する薬品、例えば、ピロカルピン、シクロスポリン、シクロペンチルケトン、セビメリン、人工涙液;
全身治療に用いる免疫阻害剤、例えば、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、アザチオプリン、クロヅル、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル;
糖質コルチコイド類薬品、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン;及び
その他自己免疫疾患の薬品、例えば、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、抗CD20から選択される1種または複数種である。
【0016】
本発明の第9観点は、第6観点の使用に関し、前記シェーグレン症候群の治療に促進作用を有する薬品は、以下の特許/出願に記載されている物質から選択される1種または複数種:WO2016204429(A1)、CA2950893(A1)、KR20160126734(A)、HK1216994(A1)、US2016362462(A1)、US2016361407(A1)、US2016361360(A1)、US2016361428(A1)、US2016361300(A1)、WO2016200447(A1)、CA2950423(A1)、US2016348072(A1)、US2015065352(A1)、US9512487(B2)、US2016356788(A1)、US2016355591(A1)、US2016355464(A1)、US2016354437(A1)、TW201632559(A)、TW201630938(A)、TW201630880(A)、WO2016196429(A1)、WO2016196393(A2)、MD20160069(A2)、CA2949966(A1)、US2016346328(A1)、US2016346355(A1)、US2016345547(A1)、NZ702458(A)、WO2016191545(A1)、WO2016190630(A1)、WO2016191634(A1)、AU2015253915(A1)、AU2015244025(A1)、AU2015254818(A1)、AU2015254037(A1)、US2016339053(A1)、US2016339049(A1)、US2016340337(A1)、US2016338984(A1)、US2016338953(A1)、WO2016185476(A1)、HRP20161191(T1)、RU2601410(C1)、US2016333089(A1)、US2016333103(A1)、US2016333409(A1)、US2016331834(A1)、US2016331816(A1)、AU2016250372(A1)、AU2016247182(A1)。
【0017】
本発明の第10観点は、第5観点の使用に関し、前記併用薬におけるペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸及び他の薬品は、併用して投与されるか、或いは、それぞれ独立して同時または順次に投与される。
【0018】
本発明は、事前にランダムにグループ化した各グループのシェーグレン症候群モデルマウスに、低(17.5mg/kg)、中(35mg/kg)、高(70mg/kg)三つの投与量勾配のCP−25を、胃内投与の方法により2週間投与した。投与前、投与1週間目、投与2週間目に、マウスの摂水量、唾液量と顎下腺病理及び評価を測定した。各グループにおいて薬投与前後の各指標の変化を比較し、CP−25のシェーグレン症候群の治療に対する効果を評価した。
【0019】
動物実験:
シェーグレン症候群モデルマウス:モデル作製に成功したSPFレベル環境でのC57BL/6雌マウス(同種類マウスの顎下腺抗原を複数回尾背側皮内複数箇所注射することにより動物モデルを作製した)。
【0020】
モデルの構築及びグループ化:
同種類マウスの顎下腺ホモジネートを複数回尾背側皮内複数箇所注射することにより作製した動物モデルを、マウスの総合状況に従い、ランダムに各グループへ分配し、できるだけ各グループマウスの体重状態が類似することを保証した。
【0021】
ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の調剤及び投与:
生体内投与前にペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸(白色の結晶性粉末、純度は98.5%)を微量エタノールで溶かし(40μLエタノールごとに本製品75mgを溶かす)、その後カルボキシメチルセルロースナトリウムを添加して懸濁液を作製し、それぞれ低(17.5mg/kg)、中(35mg/kg)、高(70mg/kg)の3つの投与量勾配の本製品を調整し、4℃冷蔵庫に保管した。高投与量の本製品は、使用前に半時間インキュベーションする必要がある。
【0022】
摂水量指標の検出:
投与群マウスの摂水量は、投与前に増加する傾向を示し、投与1週間後から摂水量が減少する現象が見えたが、モデル群は常に増加する傾向を見せた。
【0023】
唾液量指標の検出:
測定前に2.4%のペントバルビタールナトリウム0.05mlをマウスの腹腔内に注射し、安定した呼吸、角膜反射の消失、四肢の筋肉の弛緩を麻酔の基準とした。完全麻酔後、マウスの頭を少し傾けた状態にし(ヒーターを使用して温度を上げ、腹腔内注射0.025mg/mlのピロカルピン溶液を0.1ml腹腔内注射し、5min後、事前に計量した綿球をマウスの口中に置き、10min後取り出した。湿重量法によりマウス唾液重量を算出した。モデル群マウスの唾液量は顕著に減少し、投与後1週間、2週間後、治療群マウスの唾液量は顕著に回復した。
【0024】
顎下腺組織病理学的検出:
投与2週間後マウスを殺し、各群から4匹のマウスを取って顎下腺の病理検査を行った。顎下腺の処理は、まず10%のホルマリンに24h浸した後、順番に洗浄、脱水と透明化、蝋浸、包埋、パラフィン切片及び最終的なHE染色を行った。モデル群顎下腺には異なる程度のリンパ球の浸潤が存在し、徐々に増加したが、投与群は病理変化を顕著に改善できた。結果に対して病理学的各付を行う。
【0025】
本発明の利点:
本発明者は以下のような予想外の発見をした。本発明のペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸は、従来薬品の投与量よりはるかに低い薬物の用量で同様またはより良いシェーグレン症候群の治療有効性を達成し、副作用を大幅に低減し、患者の服薬コンプライアンスを顕著に上昇させることにより、優れた治療効果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】CP−25のSSモデルマウスの顎下腺の病理に対する影響を示す(HE×100)図である。A:対照群;B:モデル群;C:CP−25低投与量群;D:CP−25中投与量群;E:CP−25高投与量群;F:TGP群;G:Pae群;H:HCQ群。
図2】CP−25のSSモデルマウスの顎下腺の病理に対する影響を示す(HE×400)図である。A:対照群;B:モデル群;C:CP−25低投与量群;D:CP−25中投与量群;E:CP−25高投与量群;F:TGP群;G:Pae群;H:HCQ群。
図3】CP−25のSSモデルマウスの脾臓Bリンパ球の増殖に対する影響を示す図である。**P<0.01vs正常群; #P<0.05 , ##P<0.01vsモデル群図3に示すように、CP−25はモデルマウスのBリンパ球の増殖を顕著に抑制できる。
図4】CP−25のSSモデルマウスの脾臓のCD4+IL-17A+Tリンパ球に対する影響を示す図である。*P<0.05vs正常群;#P<0.05vsモデル群図4に示すように、CP−25はモデルマウスのCD4+IL-17A+Th17細胞割合を顕著に低減させる。
図5】CP−25のSSモデルマウスの脾臓のCD4+CD25+FOXP3+Tリンパ球に対する影響を示す図である。
図6】CP−25のSSモデルマウスの脾臓のCD4+CD25+FOXP3+Tリンパ球に対する影響を示す図である。**P<0.01vs正常群; #P<0.05vsモデル群図6に示すように、CP−25はモデルマウスの脾臓のCD4+CD25+FOXP3+Treg細胞割合を増加させる。
図7】CP−25のSSモデルマウスの脾臓のCD19+CD27+Bリンパ球に対する影響を示す図である。*P<0.05vs正常群; #P<0.05vsモデル群図7に示すように、CP−25はモデルマウスの脾臓のCD19+CD27+B細胞割合を顕著に増加させる。
図8】CP−25のSSモデルマウスの脾臓のCD11C+CD80+DCに対する影響を示す図である。**P<0.01vs正常群; #P<0.05vsモデル群,# #P<0.01vsモデル群図8に示すように、CP−25はモデルマウスの脾臓のCD11C+DC表面分子CD80+の発現を顕著に抑制する。
図9】CP−25のSSモデルマウスの脾臓のCD11C+MHC-II+DCに対する影響を示す図である。**P<0.01vs正常群;#P<0.05vsモデル群 ##P<0.01vsモデル群図9に示すように、CP−25はモデルマウスの脾臓のCD11C+DC表面分子MHC-II+の発現を顕著に抑制する。
図10】CP−25のNODモデルマウスの顎下腺の病理に対する影響を示す(HE×100)図である。A:対照群;B:モデル群;C:CP−25低投与量群;D:CP−25中投与量群;E:CP−25高投与量群;F:TGP群;G:Pae群;H:HCQ群。
図11】CP−25のNODモデルマウスの顎下腺の病理に対する影響を示す(HE×400)図である。A:対照群;B:モデル群;C:CP−25低投与量群;D:CP−25中投与量群;E:CP−25高投与量群;F:TGP群;G:Pae群;H:HCQ群。
図12】CP−25のNODモデルマウスのT、Bリンパ球の増殖に対する影響を示す図である。A:T細胞;B:リンパ球図12に示すように、CP−25はモデルマウスのT、Bリンパ球の増殖を顕著に抑制する。
図13】CP−25のNODモデルマウスの脾臓のCD4+IL-17A+Tリンパ球に対する影響を示す図である。**P<0.01vs正常群;#P<0.05,##P<0.05,vsモデル群図13に示すように、CP−25はモデルマウスの脾臓のCD4+IL-17A+Th17細胞割合を顕著に低減させる。
図14】CP−25のNODモデルマウスの脾臓のCD4+CD25+FOXP3+Tリンパ球に対する影響を示す図である。**P<0.01vs正常群;##P<0.01vsモデル群図14に示すように、CP−25はモデルマウスの脾臓のCD4+CD25+FOXP3+Treg細胞割合を顕著に増加させる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、具体的な実施例を用いて、本発明を詳しく説明する。
【0028】
1.分類診断基準(中華リウマチ雑誌2010;14(11):766-768):
【0029】
【表1】
表1 シェーグレン症候群分類基準項目
【0030】
【表2】
表2 分類基準項目の具体的分類
【0031】
その中:抗核抗体(ANA)陽性者は92%;リウマトイド因子(RF)陽性者は70%-80%;抗SSA/Ro抗体陽性者は70%;抗SSB/LA抗体陽性者は45%;高IgE症候群患者は90%を占める。
【0032】
2.シェーグレン症候群モデルマウス:モデル作製に成功したSPFレベル環境でのC57BL/6雌マウス(同種類マウスの顎下腺ホモジネートを複数回尾背側皮内複数箇所注射することにより動物モデルを作製した)
【0033】
3.機器試薬:分析天びん、電気ヒーター、眼科用ハサミ、眼科ピンセット、1ml注射器;CP−25、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-NA)、2.4%ペントバルビタールナトリウム(pentobarbital sodium)、0.025mg/mlのピロカルピン(pilocarpine)。
【0034】
4.モデルの構築及びグループ化:
同種類マウスの顎下腺ホモジネートを複数回尾背側皮内複数箇所注射することにより作製した動物モデルを、マウスの総合状況に従い、ランダムに各グループへ分配し、できるだけ各グループマウスの体重状態が類似することを保証した。
【0035】
5.ペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸の調剤及び投与:
生体内投与前にペオニフロリン−6'−O−ベンゼンスルホン酸(白色の結晶性粉末、純度は98.5%)を微量エタノールで溶かし(40μLエタノールごとに本製品75mgを溶かす)、その後カルボキシメチルセルロースナトリウムを添加して懸濁液を作製し、それぞれ低(17.5mg/kg)、中(35mg/kg)、高(70mg/kg)の3つの投与量勾配の本製品を調整し、4℃冷蔵庫に保管した。高投与量の本製品は、使用前に半時間インキュベーションする必要がある。
【0036】
6.摂水量指標の検出:
投与群マウスの摂水量は、投与前に増加する傾向を示し、投与1週間後から摂水量が減少する現象が見えたが、モデル群は常に増加する傾向を見せた。
【0037】
7.唾液量指標の検出:
測定前に2.4%のペントバルビタールナトリウム0.05mlをマウスの腹腔内に注射し、安定した呼吸、角膜反射の消失、四肢の筋肉の弛緩を麻酔の基準とした。完全麻酔後、マウスの頭を少し傾けた状態にし(ヒーターを使用して温度を上げ、腹腔内注射0.025mg/mlのピロカルピン溶液を0.1ml腹腔内注射し、5min後、事前に計量した綿球をマウスの口中に置き、10min後取り出した。湿重量法によりマウス唾液重量を算出した。モデル群マウスの唾液量は顕著に減少し、投与後1週間、2週間後、治療群マウスの唾液量は顕著に回復した。
【0038】
【表3】
表3 異なる薬物の投与前、投与1週間目、投与2週間目の唾液量(mg/10min)

△△P<0.01vs正常群;#P<0.05,##P<0.01,vsモデル群,*P<0.05vsTGP、Pae、HCQ群の比較
【0039】
マウス唾液量に基づく分析によると、高投与量のCP−25はシェーグレン症候群動物モデルマウスの治療に関して、投与後1週間目に効果があることに対し、TGP、Pae、HCQは、投与後1週間目の時に顕著な作用が見られなかった。投与時間の伸びに伴い、2週間後、CP−25の効果はさらに顕著になった。これは、CP−25がシェーグレン症候群の治療に対して効果が早くて効能が良いことを示す。
【0040】
顎下腺組織病理学的検出:
投与2週間後マウスを殺し、各群から4匹のマウスを取って顎下腺の病理検査を行った。顎下腺の処理は、まず10%のホルマリンに24h浸した後、順番に洗浄、脱水と透明化、蝋浸、包埋、パラフィン切片及び最終的なHE染色を行った。モデル群顎下腺には異なる程度のリンパ球の浸潤が存在し、徐々に増加したが、投与群は病理変化を顕著に改善できた。結果に対して病理学的グレードを行う。
【0041】
注釈:顎下腺Chisholm及びMason評価基準:0級、リンパ球浸潤なし;I級、軽度のリンパ球浸潤;II級、中程度のリンパ球浸潤;III級、1個のリンパ球浸潤巣/4mm;IV級、1個以上のリンパ球浸潤巣/4mm(注釈:1個のリンパ球浸潤巣は、50個またはそれ以上のリンパ球を指す)。
【0042】
【表4】
表4 各組マウスの顎下腺の病理学的基準の影響
△△P<0.01vs正常群;#P<0.05,##P<0.01,vsモデル群
【0043】
顎下腺のHE染色評価結果の順位和検定が示されるように、高投与量のCP−25は、シェーグレン症候群の治療への効果が顕著であり、顎下腺病理変化を顕著に改善できる。
【実施例1】
【0044】
CP−25のC57BL/6マウスの誘導型シェーグレン症候群の治療に対する作用
【0045】
【表5】
表5 CP−25のSSモデルマウスの唾液量に対する影響
注釈:△△P<0.01vs正常群;#P<0.05,##P<0.01,vsモデル群,*P<0.05vsTGP、Pae、HCQ群の比較
CP−25はモデルマウスの唾液量を顕著に上昇させ、TGP、Pae、HCQ群より薬物の効果発揮開始時間早かった。
【実施例2】
【0046】
【表6】
表6 CP−25のSSモデルマウスの臓器指数に対する影響(mg/g)
注釈:P<0.05vs正常群,#P<0.05,##P<0.01,vsモデル群
CP−25は上昇するモデルマウスの顎下腺指数を顕著に抑制する。
【実施例3】
【0047】
【表7】
表7 CP−25のSSモデルマウスの顎下腺病理学的評価に対する影響
△△P<0.01vs正常群;#P<0.05,vsモデル群
CP−25はモデルマウスの顎下腺の病理学的変化を顕著に改善する。
【実施例4】
【0048】
CP−25のNODマウスの治療に対する作用
【0049】
【表8】
表8 CP−25のNODモデルマウスの唾液量に対する影響(mg/匹/10min)
*P<0.05, **P<0.01vs正常群;#P<0.05,##P<0.01vsモデル群; △P<0.05vsTGP、Pae群
CP−25はモデルマウスの唾液量を顕著に上昇させ、TGP、Pae群より薬物の効果発揮開始時間早かった。
【実施例5】
【0050】
【表9】
表9 CP−25のNODモデルマウスの臓器指数に対する影響(mg/g)
注釈:*P<0.05vs正常群;#P<0.05vsモデル群
CP−25は上昇するモデルマウスの顎下腺指数を顕著に抑制する。
【実施例6】
【0051】
【表10】
表10 CP−25のNODモデルマウスの顎下腺病理学的評価に対する影響
*P<0.05vs正常群;#P<0.05,vsモデル群
CP−25はモデルマウスの顎下腺の病理学的変化を顕著に改善する。

分析と結論
【0052】
上記実施例に基づいて、本発明者は実験データに対して分析を行った。その結果、CP−25高投与量群は、一部の治療指標において、CP−25中低投与量群より効きが早く(例えば、表5. CP−25のSSモデルマウス唾液量に対する影響(mg/10min)に示す)、一部の治療指標において、CP−25中低投与量群と相当する(例えば、表6. CP−25のSSモデルマウスの臓器指数に対する影響(mg/g)に示す)。シェーグレン症候群の発病特徴は比較的に病態の進展が遅くて期間が長いことを考え、その他疾患の患者と異なり、シェーグレン症候群患者は薬物の用量が少なくて治療効果が良い期待を有し、同時に、患者は効能の持続性に対して比較的高い期待を持つ。前記疾患及び患者の治療特徴により、CP−25中低投与量群は、CP−25高投与量群及びTGP、Pae、HCQ群と比較して、優れた実質的な効能と顕著な進展を有する。以上より、シェーグレン症候群の早期治療において、短期的にCP−25高中投与量を用いて治療し、その後、長期的にCP−25中低投与量を用いて治療する。好ましくは、シェーグレン症候群早期治療において、短期的にCP−25高投与量を用いて治療し、その後、長期的にCP−25中投与量を用いて治療し、続いて、長期的にCP−25低投与量を用いて治療する。より好ましくは、シェーグレン症候群早期治療において、短期的にCP−25中投与量を用いて治療し、その後、長期的にCP−25低投与量を用いて治療する。最も好ましくは、シェーグレン症候群治療の全般において、CP−25低投与量を用いて治療する。
併用薬
【0053】
当業者は、以下のことを容易に知ることができる。CP−25は、自己免疫疾患薬品と共に併用薬としてシェーグレン症候群の治療へ用いられることが可能である。併用薬の中で自己免疫疾患薬品として用いられるのは次のようなものを含むが、これに限れない。TNFαターゲットに作用する生物学的製剤、例えば、Humira(ヒュミラ,アダリムマブ)、Enbrel(エンブレル,エタネルセプト)、Remicade(レミケード,インフリキシマブ)、Simponi(golimumab,ゴリムマブ)、Cimzia(Certolizumab pegol,セルトリズマブ ペゴル)、エタネルセプト; その他自己免疫疾疾患の治療に用いる生物学的製剤、例えば、Actemra(Ocilizumab,トシリズマブ)、Orencia(Abatacept,アバタセプト)、Stelara(ustekinumab); JAK1、JAK2、JAK3、TYK2等のターゲットに作用するJAK阻害剤、例えば、Xeljanz(Tofacitinib,トファシチニブ)、Baricitinib(バリシチニブ); 選択的ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤、例えば、Otezla(Apremilast,アプレミラスト)。
【0054】
同様に、当業者は、以下のことを容易に知ることができる。CP−25は、可以与その他シェーグレン症候群を治療する薬品と共に併用薬としてシェーグレン症候群の治療へ用いられることが可能である。併用薬の中でその他シェーグレン症候群を治療する薬品は次のようなものを含むが、これに限れない。局所乾燥症状を緩和する薬品、例えば、ピロカルピン、シクロスポリン、シクロペンチルケトン、セビメリン、人工涙液; 全身治療に用いる免疫阻害剤、例えば、メトトレキサート、レフルノミド、シクロホスファミド、アザチオプリン、クロヅル、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル;糖質コルチコイド類薬品、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン;及びその他自己免疫疾患の薬品、例えば、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、抗CD20。
【0055】
本発明における前記併用薬の中その他薬品は、シェーグレン症候群の治療に対して促進効果を有する薬品を含み、下記特許出願/特許中の前記1種または複数種物質を含むが、これに限定されない。
【0056】
【表11】

表11. 併用薬の中その他薬品に関する一部の特許出願/特許

人用投与量と治療有効量
【0057】
CP−25投与量:
本発明において、動物実験で使用したCP−25の投与量は、17.5、35、70mg/kg/日である。前記投与量は、動物実験において一般的な投与量であり、体表面積による換算では、成人に対応するのは約1.75〜7.0mg/kg/日であり、60kg/人の大人で計算すると、一回の投与量は約105〜420mgになり、一日3回取ることであれば、大人は毎日約315〜1260mgである。
【0058】
以上より、当業者は本発明によると、当業者は、本発明の前記投与量は治療有効量、すなわち、本発明の前記シェーグレン症候群を有効に治療および/または予防する投与量を指すことを理解できると考えられる。CP−25を有効成分とした投与量、及び前記その他薬品或はその他物質と共に有効成分として用いられる総投与量及び各自の投与量を含む。当業者は本発明を通して、本発明の治療有効量は本発明の重要構成要素であり、本発明のその他部分と共に本発明を構成することを知ることができる。
薬品製剤
【0059】
本発明の医薬組成物は、製薬分野の当業者が既知の方法で製造しても良い。前記組成物は、本発明の治療有効量のCP−25、または治療有効量の上前記その他薬品または他の物質の組合せ、および活性成分の担体または媒体に適した担体または賦形剤を含む。前記担体または賦形剤は、本分野の既知のものである。前記薬品組成物は、経口投与が好ましい。前記組成物は、異なる形式での投与でも良いが、錠剤またはカプセルの形が好ましい。その他の形式、例えば、座薬、溶液、懸濁液、乾燥懸濁液、シロップ剤などでもよい。本分野で既知の多くの異なる徐放技術と製剤を本発明に用いても良い。徐放と胃保護の複合作用を有する製剤を本発明に用いても良い。
図1
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