(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
CCD(Charge Coupled Device)撮像素子から出力された信号から雑音を除去するCDS(Correlated Double Sampling)と、暗電流補正と、利得可変増幅回路(Automatic Gain Control、以下AGC)と、表示装置に出力するためデジタル映像信号Viに変換するADC(Analog Digital Converter)とを内蔵したAFE(Analog Front End)が普及し、従来10ビットだったAFEのADC階調は、12ビットや14ビットが一般的となった。
また、駆動回路や読み出し回路を統合し高速読み出しを可能にしたCMOS(Compleme
ntary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子の改良も進んできた。
【0003】
更に、デジタル信号処理回路の集積化が進み、映像専用のメモリ集積DSPだけでなく、安価な汎用のFPGA(Field Programmable Gate Array)でも、複数ラインの出力信号を記憶し算術処理することが容易に実現できるようになった。
【0004】
それにより、画素数が百万以上のメガピクセルカメラ、HDTV(High Definition Te
leVision;高精細テレビ)カメラ、高速撮像HDTVカメラ、記録部付HDTVカメラ、Internet Protocol(以下IP)伝送部付HDTV(1080×1920)カメラ、より高精細の4K(2160×3840)カメラ、8K(4320×7680)カメラ等が製品化され、HDD(Hard Disk Drive)を用いた非圧縮の記録装置も製品化されている。
【0005】
[撮像素子の構成:
図6]
ここで、撮像素子の構成について
図6用いて説明する。
図6は、撮像素子の構成を示す断面説明図であり、(a)はCCDセンサー(撮像素子)、(b)は従来型CMOSセンサー(表面照射型CMOS撮像素子)、(c)はBSI(Back Side Illumination)型CMOSセンサー(裏面照射型CMOS撮像素子)を示している。
図6(a)に示すように、CCDセンサーは、マイクロレンズ91と、カラーフィルタ92と、フォトダイオード93とが積層され、フォトダイオード93とカラーフィルタ92との間にメタル配線層94が形成されている。
【0006】
マイクロレンズ91によって集光された入射光は、カラーフィルタ92を通過して、R(赤),G(緑),B(青)の成分に分解され、フォトダイオード93に入射されて電荷が発生し、垂直方向及び水平方向に転送されて画素毎の電圧に変換される。
CCDセンサーは、感度は高いものの、消費電力が大きく、CMOS撮像素子に比べて周辺回路の集積が困難である。
【0007】
図6(b)に示す表面照射型CMOS撮像素子は、画素毎にトランジスタ等が設けられた構成であり、低消費電力、集積化が容易であるものの、感度は低い。
図6(c)に示す裏面照射型CMOS撮像素子は、メタル配線層93がフォトダイオード93の裏面側に設けられており、高感度で、低消費電力、集積化が容易である。
【0008】
特に、一般的な低価格の表面照射型CMOS撮像素子(8Kで1.25型を含め4/3型以下、4Kで2/3型以下)は、5波長以下の画素間隔で、フォトダイオード93とマイクロレンズ(オンチップレンズ)91との間にメタル配線層94が積層されているため、低域の変調度が低い。
また、対域外の高域成分の折り返しの偽信号のモアレを抑圧するために光学低域通過フィルタ(O−LPF;Optical Low Pass Filter)を挿入すると、更に変調度が低くなる。
【0009】
更に、2/3型4Kと1.25型8Kにおいては、撮像素子の画素ピッチが約2.5μmと緑波長0.55μmの約4.5倍となり、高倍率ズームレンズの収差を光学的に補正しきれず、低域での変調度(変調伝達関数特性:MTF;Modulation Transfer Function
)が低下する。
【0010】
図7は、絞り値と変調度の関係を示す説明図である。
収差のない理想レンズでも、画素ピッチの波長数以上に絞ると、緑の中心波長0.55μmの光学回折により変調度が低下することが知られている。
例えば、1/3型HDTV(1080×1920)カメラでは、画素ピッチが4.9波長に対し、約F5で400TV本でも変調度50%以下のぼけた画像となり、2/3型4K(2160×3840)カメラでは、画素ピッチが4.5波長に対し、約F4.8で800TV本でも変調度50%以下のぼけた画像となる。
【0011】
実際のレンズでは、一般的に、HDTV(1080×1920)カメラ用でF4付近、4K(2160×3840)カメラ用でF2.8付近、8K(4320×7680)カメラ用でF2付近において変調度が最も高く、絞り開放付近では収差のため変調度が低下し、絞り切り付近では光学回折のため変調度が低下する。
【0012】
一方、望遠ズームレンズは、望遠端の絞り値が3.7から5.3と5.6に近く、エクステンダと称する焦点距離を2倍にする補助レンズを挿入すると絞り値が倍になり、望遠端の絞り値が7.4から10.6と5.6よりはるかに大きくなる。
更に、望遠端では収差のため変調度が低下する。そのため、望遠端ではfs/2付近の信号成分はほとんどなく、雑音が主成分となる。
【0013】
[関連技術]
尚、撮像装置に関する従来技術としては、特開2007−49216号公報「輪郭強調処理装置及び輪郭強調処理方法」(特許文献1)、特開平7−264442号公報「固体撮像装置」(特許文献2)、特開2003−333369号公報「画像処理装置および方法、記録媒体、並びにプログラム」(特許文献3)、特開2009−303206号公報「個体撮像装置及び監視システム」(特許文献4)がある。
【0014】
特許文献1には、サンプリング周波数fsの半分付近の信号成分と雑音成分を減衰させるため、輪郭補正信号を、低域通過フィルタ(LPF;Low Pass Filter)を通過させる輪郭強調処理装置が記載されている。
特許文献2には、望遠で変調度が低下する場合に、輪郭補正周波数を低下させる撮像装置が記載されている。
【0015】
また、特許文献3には、基本処理レートの2の累乗数に対応した遅延から輪郭強調(2又は4の単位の画素間隔の差分の輪郭補正)を行うことが記載されている。
特許文献4には、絞り値が大きく、光学回折で変調度が低下すると、輪郭補正の中心周波数を低下させる撮像装置が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る撮像装置は、画素ピッチが撮像光の中心波長の5波長以下のCMOS撮像素子を用いた撮像装置において、輪郭補正を施す補正対象の画素の映像信号と、当該補正対象の画素から2の累乗の画素間隔となる複数の画素の映像信号との差分を算出し、当該複数の差分を加算した差分加算信号に基づいて輪郭補正信号を生成し、補正対象画素の映像信号に輪郭補正信号を加算するようにしているので、fs/2付近の高周波成分を含まない輪郭補正信号とすることができ、低域の輪郭補正信号を補強して、低域におけるMTFを改善し、望遠レンズの望遠端においても焦点合わせを容易にすることができるものである。
【0031】
[実施の形態に係る撮像装置の概略構成:
図1]
本発明の実施の形態に係る撮像装置(本撮像装置)の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本撮像装置の概略構成を示す構成ブロック図である。
図1に示すように、本撮像装置1は、色分解光学系2と、撮像素子3(3R,3G,3B)と、映像信号処理部4と、パラレル/シリアル(P/S)変換部5と、CPU(Cent
ral Processing Unit)6とを備えており、レンズ7及びビューファインダー(映像表示装置)8に接続されている。
【0032】
本撮像装置1の各部について説明する。
色分解光学系2は、レンズ7から入射された入射光を赤色(R)と、緑色(G)と、青色(B)に色分解する。
撮像素子3は、CMOS撮像素子であり、撮像素子3Rは赤色光を光電変換し、撮像素子3Gは緑色光を光電変換し、撮像素子3Bは青色光を光電変換して、各色の光の強弱に応じた電荷を発生する。
ここで、撮像素子3は、緑色光の波長(0.55μm)を基準として5波長以下の画素ピッチで画素が配列されている。
色分解光学系2及び撮像素子3は、請求項に記載した色分解部に相当している。
【0033】
映像信号処理部4は、輪郭補正部11と、ガンマ色補正部12と、マトリクス部13とを備え、大容量メモリ内蔵FPGAや、DDR(Double-Data-Rate)メモリ外付けFPGA等で構成される。
【0034】
輪郭補正部11は、本撮像装置の特徴部分であり、赤、緑、青の各色成分毎に、映像の輪郭を補正する輪郭補正処理を行う。
輪郭補正部11は、垂直輪郭補正処理を行う直輪郭補正部と、水平輪郭補正処理を行う水平輪郭補正処理部とを備えている。
【0035】
そして、本撮像装置の特徴として、輪郭補正部11は、補正対象の画素の映像信号と、2の累乗の画素間隔(例えば、2,4,8,16,32画素間隔)となる画素の映像信号との差分の合計に基づいて、輪郭補正信号を生成する。輪郭補正部11の構成及び動作については後述する。
【0036】
ガンマ色補正部12は、画像の階調を補正(ガンマ色補正)する処理を行う。
マトリクス部13は、映像の輝度や色を調整する処理を行う。
パラレル/シリアル変換部5は、パラレルデータをシリアルデータに変換して、外部に出力する。
CPU6は、撮像装置全体の制御を行うものであり、特に、輪郭補正部11の制御を行って適切な輪郭補正を実現する。
また、CPU6は、レンズ絞り値に応じて輪郭補正信号のレベルを制御する。
【0037】
本撮像装置の動作について簡単に説明する。
レンズ7から入力された光は、色分解光学系2において赤、緑、青の成分に分離され、それぞれ、撮像素子3R,3G,3Bで光電変換されて電気信号となる。
そして、各色の信号は、輪郭補正部11において、それぞれ垂直輪郭補正及び水平輪郭補正処理を施され、ガンマ色補正部12でガンマ色補正が為され、マトリクス部13で色調整を施され、パラレル/シリアル変換部5でシリアルデータに変換されて、映像信号として外部に出力される。
【0038】
[垂直輪郭補正部の構成:
図2]
次に、本撮像装置の特徴部分である、輪郭補正部11の垂直輪郭補正部の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、本撮像装置の垂直輪郭補正部の構成図である。
垂直輪郭補正部11は、垂直方向に配列された画素間の映像信号を比較して、垂直方向の輪郭を補正するものである。
図2に示すように、垂直輪郭補正部は、複数のラインメモリ部M20〜M29と、複数の負の乗算器N20〜N24及びN26〜N30と、正の乗算器P25と、複数の加算器20〜29と、映像レベル判定器28と、乗算器29,32と、小振幅大振幅圧縮制限器31と、補正信号加算部33とを備えている。
【0039】
ここで、ラインメモリ部M20〜M29と、負の乗算器N20〜N24及びN26〜N30と、正の乗算器P25と、複数の加算器20〜29とが請求項に記載した差分加算部に相当し、映像レベル判定器28と、乗算器29,32が輪郭補正信号生成部に相当している。
【0040】
垂直輪郭補正部の各部について説明する。
ラインメモリ部は、補正対象となるライン(32Hとする)の映像信号と、本装置の特徴部分である補正対象ラインから垂直方向に2,4,8,16,32画素だけ離れたラインの映像信号との差分を求めるために、必要な映像信号を保持して出力するものである。
【0041】
具体的には、ラインメモリ部M20は16ライン分の映像信号を蓄積し、ラインメモリ部M21は8ライン分の映像信号を蓄積し、ラインメモリ部M22は4ライン分の映像信号を蓄積し、ラインメモリ部M23は2ライン分の映像信号を蓄積して、それぞれ1ラインずつ負の乗算器N21〜N24に出力する。
【0042】
ラインメモリ部M24は、補正対象ライン(32H)とその次のライン(31H)とを保持して、補正対象ラインを正の乗算器P25、映像レベル判定器28、及び輪郭補正信号加算部33に出力する。
【0043】
また、ラインメモリ部M25及びM26は、それぞれ2ライン分の映像信号を蓄積し、ラインメモリ部M27は4ライン分の映像信号を蓄積し、ラインメモリ部M28は8ライン分の映像信号を蓄積し、ラインメモリ部M29は16ライン分の映像信号を蓄積して、それぞれ1ラインずつ負の乗算器N26〜N30に出力する。
【0044】
負の乗算器N21〜N24は、ラインメモリ部M20〜M23から出力された映像信号に負の係数を乗算し、加算器21〜24に出力する。
負の乗算器N26〜N30は、ラインメモリ部M25〜M29から出力された映像信号に負の係数を乗算し、加算器26〜29に出力する。
負の乗算器N20は、補正前の信号に負の係数を乗算し、加算器20に出力する。
正の乗算器P25は、ラインメモリM24から出力された補正対象ライン(32H)の映像信号に、正の係数を乗算する。
【0045】
加算器20〜29は、負の乗算器N20〜N24、N26〜N30と、正の乗算器P25の出力を加算して、加算器20から差分加算信号を出力する。加算器20〜29は、請求項における差分加算部に相当している。
ここで、加算器20において、各負の乗算器からの出力と正の乗算器P25からの出力との差分の合計が算出されるよう、正の乗算器P25の係数又は/及び負の乗算器N20〜N24、N26〜N30の係数がCPU6からの指示により調整されている。
【0046】
つまり、加算器20から出力される差分加算信号は、補正対象ライン(32H)の映像信号と、補正対象ラインから2の累乗数(ここでは、2,4,8,16,32)だけ離れたラインの映像信号との差分の合計となる。
このように2の累乗数の間隔で差分信号を求め、加算して輪郭補正信号を生成することで、高周波数成分のない輪郭補正信号を生成できるものである。
【0047】
映像レベル判定器28は、補正対象ラインの映像信号のレベルを判定して、しきい値判定により暗部を検出する。
乗算器29は、暗部の輪郭補正信号を減衰させるため、正負及び増幅度を可変調整する。
映像レベル判定器28及び乗算器29により、映像レベルが低い領域では、輪郭補正信号付加によるノイズを低減するために、輪郭補正信号を小さくする制御を行い、任意の映像レベル以上の場合には、輪郭補正信号のレベルを一定とする制御を行う。
【0048】
CPU6は、各負の乗算器N20〜N24,N26〜N30と正の乗算器P25の係数を制御すると共に、乗算器29で乗算される増幅値の正負及び増幅度を制御する。
具体的には、CPU6は、加算器20からの出力が、補正対象ライン(32H)の映像信号と、補正対象ラインから2の累乗数(ここでは、2,4,8,16,32)だけ離れたラインの映像信号との差分の合計となるよう、係数を制御する。
また、本撮像装置のCPU6は、レンズ絞りを絞った場合の映像信号変調度の劣化を改善するために、レンズ絞り値に応じて輪郭補正信号のレベルを制御する。具体的には、レンズアイリスが絞り側になると、乗算器29の係数を調整して、輪郭補正信号を増幅する制御を行う。
【0049】
小振幅大振幅圧縮制限器(以下、制限器とする)31は、差分加算信号が大振幅であれば圧縮し、小振幅の場合には圧縮を制限する。
乗算器32は、制限器31からの出力に乗算器29からの係数を乗算して、適切な極性及びレベルの垂直輪郭補正信号を生成する。
補正信号加算部33は、ラインメモリ部M24から出力される補正対象ライン(32H)に、垂直輪郭補正信号を加算して、垂直輪郭補正を行う。
【0050】
このように、本撮像装置では、1画素間隔の周辺画素差分処理を行わないため、超低域の変調度を増強でき、高域変調度を相対的に低下させるものである。
例えば、NTSC(National Television System Committee;全米テレビジョンシステム委員会)の0.5MHzを100%として定義される5MHz変調度や、2Kの飛越走査のHDTVの1MHzを100%として定義される27.5MHz変調度等の高域変調度を相対的に低下させる。
【0051】
[垂直輪郭補正部の動作:
図2]
本撮像装置の垂直輪郭補正部の動作について
図2を用いて説明する。
補正前信号は、負の乗算器N20及びラインメモリ部M20に入力され、ラインメモリ部M20〜M29において、クロックのタイミングで、蓄積されると共に1ラインずつ負の乗算器N21〜N30及び正の乗算器P25に出力される。
【0052】
具体的には、ラインメモリ部M24から出力される補正対象ラインを32Hとすると、負の乗算器N20〜N24には、それぞれ、0H,16H,24H,30Hが入力され、正の乗算器P25にはH32が入力され、負の乗算器N26〜N30には、それぞれ34H,36H,40H,48H,64Hが入力される。
すなわち、補正対象ラインから2の累乗だけ離れたラインの映像信号が負の乗算器N21〜N24,N26〜N30に入力される。
【0053】
そして、各負の乗算器N20〜N24、N26〜N30、正の乗算器P25において負又は正の係数が乗算され、加算器20〜29で加算されて、補正対象ラインの映像信号と他のラインの映像信号との差分の合計が算出されて、加算器20から差分加算信号として出力される。
【0054】
差分加算信号は、制限器31で振幅調整が施され、更に乗算器32において映像レベルに応じた調整が為されて、垂直輪郭補正信号が生成され、補正信号加算部33において、補正対象ラインの映像信号と垂直輪郭補正信号とが加算されて、垂直方向の輪郭補正が行われる。
このようにして垂直輪郭補正部の動作が行われるものである。
【0055】
尚、本実施の形態においては、垂直方向に32画素間隔までの差分の合計に基づいて垂直輪郭補正信号を生成するようにしているが、64画素間隔や128画素間隔の差分の合計を求めて垂直輪郭補正信号を生成してもよい。
【0056】
[水平輪郭補正部の構成:
図3]
次に、本撮像装置の特徴部分である、水平輪郭補正部の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、本撮像装置の水平輪郭補正部の構成図である。
水平輪郭補正部は、水平方向に配列された画素間の映像信号を比較して、水平方向の輪郭を補正するものである。
図3に示すように、水平輪郭補正部は、複数の画素遅延部D40〜D49と、複数の負の乗算器N40〜N44及びN46〜N50と、正の乗算器P45と、複数の加算器40〜49と、映像レベル判定器51と、乗算器52,54と、小振幅大振幅圧縮制限器53と、補正信号加算部55とを備えている。
【0057】
つまり、水平輪郭補正部は、
図2に示した垂直輪郭補正部のラインメモリ部M20〜M29の代わりに、画素遅延部D40〜D49が設けられ、水平方向に配列された画素について処理を行う点が異なるが、その他の基本的な構成及び動作は垂直輪郭補正部と同等であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
そして、水平輪郭補正部では、補正対象画素の映像信号と、当該補正対象画素から水平方向に2,4,8,16,32画素だけ離れた画素の映像信号との差分の合計が加算器40から加算差分信号として出力され、小振幅大振幅圧縮制限器53において、加算差分信号の振幅補正が行われ、映像レベル判定器51での判定結果に基づいて乗算器54で調整されて水平輪郭補正信号が生成され、補正信号加算部55において、補正対象画素(32d)の映像信号と水平輪郭補正信号とが加算されて、水平方向の輪郭補正が行われる。
【0059】
水平方向の輪郭補正においても、1画素間隔の周辺画素差分処理を行わないため、超低域の変調度を増強でき、高域変調度を相対的に低下させるものである。
【0060】
[本撮像装置における差分加算信号の例:
図4]
ここで、本撮像装置における差分加算信号の例について
図4を用いて説明する。
図4は、2,4,8,16画素間隔の差分加算信号の周波数軸表示である。
図2を例として説明すると、
図4(a)に示す2画素間隔の差分加算信号は、正の乗算器P25と、負の乗算器N24及びN26に0(ゼロ)以外の係数が設定され、他の負の乗算器には係数0が設定された状態で、加算器40から得られる差分加算信号である。
【0061】
同様に、
図4(b)に示す4画素間隔の差分加算信号は、2画素間隔の場合に加えて、負の乗算器N23とN27が0以外の係数となった場合の差分加算信号であり、8画素間隔の差分加算信号は、更に負の乗算器N22とN28に0以外の係数が設定され、16画素間隔の差分加算信号は、更に負の乗算器N21とN29にも0以外の係数が設定された場合の差分加算信号である。
【0062】
図4に示すように、本撮像装置の差分加算信号は、いずれも、雑音も含めてfs/2付近の高周波成分がないため、低周波数(低域)の変調度を改善した映像信号を出力することができるものである。
そのため、入力信号が変調度の低い状態であっても、被写界深度の浅い望遠端での焦点合わせを容易にすることができるものである。
【0063】
[本撮像装置における輪郭補正:
図5]
本撮像装置における輪郭補正信号及び輪郭補正後の信号例について
図5を用いて説明する。
図5は、本撮像装置の輪郭補正信号及び輪郭補正後の信号例を示す模式説明図である。
図5(a)は、補正前信号、(b)は、17H成分/17画素成分(8画素間隔)の差分加算信号に基づく輪郭補正信号、(c)は、9H成分/9画素成分(4画素間隔)の差分加算信号に基づく輪郭補正信号、(d)は、7H成分/7画素成分(3画素間隔)の差分加算信号に基づく輪郭補正信号、(e)は、5H成分/5画素成分(2画素間隔)の差分加算信号に基づく輪郭補正信号、(f)は、3H成分/3画素成分(1画素間隔)の差分加算信号に基づく輪郭補正信号、(g)は、17H9H5H成分/17画素9画素5画素成分(8画素4画素2画素間隔)の輪郭補正信号による輪郭補正後の信号、(h)は、9H5H成分/9画素5画素成分(4画素2画素間隔)の輪郭補正信号による輪郭補正後の信号を示している。
ここで、(d)と(f)は、本撮像装置では生成されない信号であるが、参考のために示している。
【0064】
(g)の信号は、(b)の8画素間隔の差分加算信号と、(c)の4画素間隔の差分加算信号と、(e)の2画素間隔の差分加算信号との合計に基づいて生成された輪郭補正信号と、(a)の補正前信号とを加算して得られる信号である。
(g)に示した輪郭補正後の信号は、例えば、17H15H13H11H9H7H5H3H輪郭補正信号(17H15H13H11H9H7H5H3H成分/17画素15画素13画素11画素9画素7画素5画素3画素成分の差分加算信号に基づく輪郭補正信号)で補正した場合と比べると、高周波数成分の細かい輪郭を再生できないものの、高域雑音が少ないので、輪郭補正信号を大きくすることができ、強く輪郭補正でき、輪郭を十分明瞭にすることができるものである。
【0065】
また、(h)の信号は、(c)の4画素間隔の差分加算信号と、(e)の2画素間隔の差分加算信号との合計に基づいて生成された輪郭補正信号と、(a)の補正前信号とを加算して得られる信号である。
(h)の輪郭補正後の信号は、例えば、9H7H5H3H輪郭補正信号(9H7H5H3H成分/9画素7画素5画素3画素成分の差分加算信号に基づく輪郭補正信号)で補正した場合と比べると、高周波成分の細かい輪郭を再生できないが、高域雑音が少ないので、輪郭補正信号を大きくすることができ、輪郭を明瞭にすることができるものである。
【0066】
そのため、望遠端における開放絞り値が、画素ピッチ/撮像光の中心波長の値より大きいレンズ、又は収差が大きいレンズなど、低周波数において変調度が低い特性を有するレンズを用いた場合にも、被写界深度の浅い望遠端での焦点合わせを容易にすることができるものである。
【0067】
したがって、
図7に示した、アスペクト比16:9の撮像素子のサイズとレンズの口径比による変調度の変化のように、口径比Fの超望遠ズームレンズの変調度が低下しても、輪郭補正が容易になる。
【0068】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る撮像装置によれば、画素間隔が5波長以下のCMOS撮像素子を用いた撮像装置において、輪郭補正部11が、輪郭補正を施す補正対象の画素の映像信号と、補正対象画素と2の累乗の画素間隔(2,4,8,18,32等)となる複数の画素の映像信号との差分をそれぞれ算出し、当該複数の差分を加算した差分加算信号に基づいて輪郭補正信号を生成し、補正信号加算部が、補正対象画素の映像信号に輪郭補正信号を加算するようにしているので、fs/2付近の高周波成分が含まれない輪郭補正信号を生成でき、低域の輪郭補正信号を補強して、低域におけるMTFを改善し、被写界深度の浅い望遠レンズの望遠端においても焦点合わせを容易にすることができる効果がある。
【0069】
また、本撮像装置では、補償対象画素と、2,4,8,16,32画素間隔となる画素との差分の合計を算出しているが、64画素、128画素等、より多くのラインメモリ部又は画素遅延部、乗算器、加算器を備えた構成としてもよく、多いほど輪郭補正の効果は大きくなるため、回路規模が許容されるならば、多くすることが望ましい。
また、映像レベル判定器出力信号が小信号大振幅圧縮制限器から出力する輪郭補正信号レベルを制御することから、レンズ絞り値に応じて映像レベル判定器出力信号レベルを制御することにより輪郭補正信号レベルを制御することも容易となる。
【0070】
64画素間隔の差分を加えて輪郭補正信号を生成すれば、例えば、2Kの飛越操作のHDTVの0.5MHz変調度を改善することができ、更に128画素間隔の差分を加えれば、2Kの飛越操作のHDTVの0.25MHzの変調度を改善することができる効果がある。
【0071】
また、監視用1/3型HD2K撮像素子と、報道用2/3型4K撮像素子と、中継用4/3型8K撮像素子は、2.5μmの同一画素間隔となっており、超望遠での収差が大きく、絞りが暗く、MTFが低い状態になるが、本装置によれば、それらの特性を許容して、低周波でのMTFを改善することができ、撮像装置の低価格化を実現できる効果がある。
つまり、本装置は、高価で大型の低域MTFの高いUHDTVレンズを使用することなく、電子的に補正することにより、低コストで輪郭強調を可能とする効果がある。
【0072】
更に、本装置によれば、監視用1/3型HD2Kカメラや4Kカメラや8Kカメラの拡販だけではなく、放送局や中継会社が多数保有している2Kカメラのファームウェアバージョンアップによる画質向上にも活用することができる効果がある。