(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお,以下では,作業機の先端の作業具(アタッチメント)としてバケット10を備える油圧ショベルを例示するが,バケット以外のアタッチメントを備える作業機械で本発明を適用しても構わない。さらに,複数のリンク部材(アタッチメント,アーム,ブーム等)を連結して構成される作業機を有するものであれば油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
【0013】
また,本稿では,或る形状を示す用語(例えば,目標面,設計面等)とともに用いられる「上」,「上方」又は「下方」という語の意味に関し,「上」は当該或る形状の「表面」を意味し,「上方」は当該或る形状の「表面より高い位置」を意味し,「下方」は当該或る形状の「表面より低い位置」を意味することとする。また,以下の説明では,同一の構成要素が複数存在する場合,符号(数字)の末尾にアルファベットを付すことがあるが,当該アルファベットを省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば,3つのポンプ300a,300b,300cが存在するとき,これらをまとめてポンプ300と表記することがある。
【0014】
<第1実施形態>
−油圧ショベルの全体構成−
図1は本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの構成図であり,
図2は本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの制御コントローラを油圧駆動装置と共に示す図である。
【0015】
図1において,油圧ショベル1は,多関節型のフロント作業機1Aと,車体1Bで構成されている。車体1Bは,左右の走行油圧モータ3a,3b(油圧モータ3aは
図2を参照)により走行する下部走行体11と,下部走行体11の上に取り付けられ,旋回油圧モータ4により旋回する上部旋回体12とからなる。
【0016】
フロント作業機1Aは,垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8,アーム9及びバケット10)を連結して構成されている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されており,アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8はブームシリンダ5によって駆動され,アーム9はアームシリンダ6によって駆動され,バケット10はバケットシリンダ7によって駆動される。
【0017】
ブーム8,アーム9,バケット10の回動角度α,β,γ(
図3参照)を測定可能なように,ブームピンにブーム角度センサ30,アームピンにアーム角度センサ31,バケットリンク13にバケット角度センサ32が取付けられ,上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(車体1B)の傾斜角θ(
図3参照)を検出する車体傾斜角センサ(例えば慣性計測装置(IMU))33が取付けられている。なお,角度センサ30,31,32はそれぞれ基準面(例えば水平面)に対する角度センサ(例えば慣性計測装置(IMU))に代替可能である。
【0018】
上部旋回体12に設けられた運転室16内には,走行右レバー23a(
図2)を有し走行右油圧モータ3a(下部走行体11)を操作するための操作装置47a(
図2)と,走行左レバー23b(
図2)を有し走行左油圧モータ3b(下部走行体11)を操作するための操作装置47b(
図2)と,操作右レバー1a(
図2)を共有しブームシリンダ5(ブーム8)及びバケットシリンダ7(バケット10)を操作するための操作装置45a,46a(
図2)と,操作左レバー1b(
図2)を共有しアームシリンダ6(アーム9)及び旋回油圧モータ4(上部旋回体12)を操作するための操作装置45b,46b(
図2)が設置されている。以下では,走行右レバー23a,走行左レバー23b,操作右レバー1aおよび操作左レバー1bを操作レバー1,23と総称することがある。
【0019】
上部旋回体12に搭載された原動機であるエンジン18は,油圧ポンプ2とパイロットポンプ48を駆動する。油圧ポンプ2はレギュレータ2aによって容量が制御される可変容量型ポンプであり,パイロットポンプ48は固定容量型ポンプである。本実施形態においては,
図2に示すように,パイロットライン144,145,146,147,148,149の途中にシャトルブロック162が設けられている。操作装置45,46,47から出力された油圧信号が,このシャトルブロック162を介してレギュレータ2aにも入力される。シャトルブロック162の詳細構成は省略するが,油圧信号がシャトルブロック162を介してレギュレータ2aに入力されており,油圧ポンプ2の吐出流量が当該油圧信号に応じて制御される。
【0020】
パイロットポンプ48の吐出配管であるポンプライン170はロック弁39を通った後,複数に分岐して操作装置45,46,47,フロント制御用油圧ユニット160内の各弁に接続している。ロック弁39は本例では電磁切換弁であり,その電磁駆動部は上部旋回体12の運転室16に配置されたゲートロックレバー(不図示)の位置検出器と電気的に接続している。ゲートロックレバーのポジションは位置検出器で検出され,その位置検出器からロック弁39に対してゲートロックレバーのポジションに応じた信号が入力される。ゲートロックレバーのポジションがロック位置にあればロック弁39が閉じてポンプライン170が遮断され,ロック解除位置にあればロック弁39が開いてポンプライン170が開通する。つまり,ポンプライン170が遮断された状態では操作装置45,46,47による操作が無効化され,旋回,掘削等の動作が禁止される。
【0021】
操作装置45,46,47は,油圧パイロット方式であり,パイロットポンプ48から吐出される圧油をもとに,それぞれオペレータにより操作される操作レバー1,23の操作量(例えば,レバーストローク)と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することがある)を発生する。このように発生したパイロット圧は,コントロールバルブユニット(図示せず)内の対応する流量制御弁15a〜15f(
図2参照)の油圧駆動部150a〜155bにパイロットライン144a〜149b(
図3参照)を介して供給され,これら流量制御弁15a〜15fを駆動する制御信号として利用される。
【0022】
油圧ポンプ2から吐出された圧油は,流量制御弁15a,15b,15c,15d,15e,15fを介して走行右油圧モータ3a,走行左油圧モータ3b,旋回油圧モータ4,ブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7,に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7が伸縮することで,ブーム8,アーム9,バケット10がそれぞれ回動し,バケット10の位置及び姿勢が変化する。また,供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで,下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。そして,供給された圧油によって走行右油圧モータ3a,走行左油圧モータ3bが回転することで,下部走行体11が走行する。
【0023】
作業機1Aの姿勢は
図3のショベル座標系(ローカル座標系)に基づいて定義できる。
図3のショベル座標系は,上部旋回体12に設定された座標であり,ブーム8の基底部を原点POとし,上部旋回体12における鉛直方向にZ軸,水平方向にX軸を設定した。また,X軸とZ軸によって右手系で規定される方向をY軸とする。X軸に対するブーム8の傾斜角をブーム角α,ブームに対するアーム9の傾斜角をアーム角β,アームに対するバケット爪先の傾斜角をバケット角γとした。水平面(基準面)に対する車体1B(上部旋回体12)の傾斜角を傾斜角θとした。ブーム角αはブーム角度センサ30により,アーム角βはアーム角度センサ31により,バケット角γはバケット角度センサ32により,傾斜角θは車体傾斜角センサ33により検出される。ブーム角αは,ブーム8を最大(最高)まで上げたとき(ブームシリンダ5が上げ方向のストロークエンドのとき,つまりブームシリンダ長が最長のとき)に最少となり,ブーム8を最小(最低)まで下げたとき(ブームシリンダ5が下げ方向のストロークエンドのとき,つまりブームシリンダ長が最短のとき)に最大となる。アーム角βは,アームシリンダ長が最短のときに最小となり,アームシリンダ長が最長のときに最大となる。バケット角γは,バケットシリンダ長が最短のとき(
図3のとき)に最小となり,バケットシリンダ長が最長のときに最大となる。このとき,ブーム8の基底部からアーム9との接続部までの長さをL1,アーム9とブーム8の接続部からアーム9とバケット10の接続部までの長さをL2,アーム9とバケット10の接続部からバケット10の先端部までの長さをL3とすると,ショベル座標系におけるバケット10の先端位置は,X
bkをX方向位置,Z
bkをZ方向位置として,以下の式(1)(2)で表すことができる。
【0024】
X
bk=L
1cos(α)+L
2cos(α+β)+L
3cos(α+β+γ)…式(1)
【0025】
Z
bk=L1sin(α)+L2sin(α+β)+L3sin(α+β+γ)…式(2)
また,油圧ショベル1は,
図1に示すように,上部旋回体12に一対のGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ14A,14Bを備えている。図示されないが,アンテナ14A,14Bは,GNSS受信機を内蔵しており,測位衛星からの測位信号を用いることにより,GNSSアンテナ14A,14Bそれぞれの位置を決定できる。また,2つのアンテナ14を用いることにより,車体の方位を決定することができる。GNSS受信機は別に接続されても良い。GNSSアンテナ14からの情報に基づき,グローバル座標系における油圧ショベル1の位置と方位を算出できる。また,これに式(1)(2)と傾斜角θを用いることにより,グローバル座標系におけるバケット10の爪先の位置を算出することができる。本実施形態ではこれらのGNSS受信機の機能を制御コントローラ40に搭載しており後述の作業機械位置演算部43eがこれに該当する。
【0026】
図4は本実施形態に係る油圧ショベルが備えるMGシステムの構成図である。本システムでのフロント作業機1AのMGとしては,例えば
図7に示すように,油圧ショベル1111による掘削作業のために任意に設定された目標面700と,作業機1A(例えば,バケット10)との位置関係を表示装置53aに表示してオペレータ操作を支援する処理が行われる。
【0027】
図4のシステムは,作業機姿勢検出装置50と,目標面設定装置51と,運転室16内に設置され目標面700と作業機1Aの位置関係を表示可能な表示装置53aと,作業機1Aの作業対象となる現況地形800の位置情報を取得する現況地形取得装置96と,グローバル座標系における油圧ショベル1の位置を取得するためのGNSSアンテナ14と,MGを司る制御コントローラ(制御装置)40と,表示装置53aに表示される操作支援情報を切り替えるための信号を入力するための入力装置52とを備えている。
【0028】
作業機姿勢検出装置50は,ブーム角度センサ30,アーム角度センサ31,バケット角度センサ32,車体傾斜角センサ33から構成される。これらの角度センサ30,31,32,33は作業機1A,及び車体,すなわち上部旋回体12の姿勢センサとして機能している。
【0029】
目標面設定装置51は,目標面700に関する情報(各目標面の位置情報や傾斜角度情報を含む)を入力可能なインターフェースである。目標面700は,設計面を施工に適した形で抽出・修正したものである。目標面設定装置51は,グローバル座標系(絶対座標系)上に規定された目標面の3次元データを,外部端末(図示せず)から無線通信,または記憶装置(例えばフラッシュメモリやUSBメモリ)を介して受け取る。目標面700の位置情報は,油圧ショベル1の掘削作業で形成すべき最終目標形状である設計面の位置情報に基づいて作成される。掘削作業の場合には目標面700は設計面上またはその上方に設定され,盛土作業の場合には設計面上またはその下方に設定される。なお,目標面設定装置51を介した目標面の入力はオペレータが手動で行っても良い。
【0030】
現況地形取得装置96としては,例えばショベル1に備えられたステレオカメラ,レーザスキャナ又は超音波センサ等が利用できる。これらの装置はショベル1から現況地形上の点までの距離を計測するものであり,現況地形取得装置96で取得した現況地形は膨大な量の点群の位置データで定義されが,そのままだとデータが多すぎて扱いにくいので現況地形取得装置96の中で,適宜,扱いやすいデータ形式に変換する。なお,現況地形の3次元データをステレオカメラ,レーザスキャナ又は超音波センサ等を搭載したドローン(無人航空機)等により予め取得しておき,当該3次元データを制御コントローラ40内に取り込むためのインターフェースとして現況地形取得装置96を構成しても良い。
【0031】
入力装置52は,表示装置53aに表示される操作支援情報を切り替えるための信号を制御コントローラ40に入力するためのインターフェースである。操作支援情報を切り替えるための信号には,後述する周辺掘削深さ(第4距離)の表示を指示する第4距離表示信号と,後述する現況地形距離(第5距離)の表示を指示する第5距離表示信号が含まれる。入力装置52のハードウェア構成としては,例えば,各信号のON/OFFを切り替えるスイッチ式のものや,表示装置53aと一体又は別体のタッチパネル式のものが利用できる。
【0032】
制御コントローラ40は,入力インターフェース91と,プロセッサである中央処理装置(CPU)92と,記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と,出力インターフェース95とを有している。入力インターフェース91には,作業機姿勢検出装置50である角度センサ30〜32及び傾斜角センサ33からの信号と,目標面設定装置51からの信号と,現況地形取得装置96からの信号と,GNSSアンテナ14からの信号と,入力装置52からの信号が入力され,CPU92が演算可能なように変換する。ROM93は,後述するフローチャートに係る処理を含めMGを実行するための制御プログラムと,当該フローチャートの実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり,CPU92は,ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力インターフェース91及びROM93,RAM94から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力インターフェース95は,CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成し,その信号を表示装置53aに出力する。
【0033】
なお,
図4の制御コントローラ40は,記憶装置としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えているが,記憶装置であれば特に代替可能であり,例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
【0034】
図5は,制御コントローラ40の機能ブロック図である。制御コントローラ40は,MG制御部43と,表示制御部374aを備えている。
【0035】
図6は
図5中のMG制御部43の機能ブロック図である。MG制御部43は,現況地形更新部43aと,記憶部43mと,基準点位置演算部43dと,作業機械位置演算部43eと,第1距離演算部43fと,第2距離演算部43gを備えている。記憶部43mは,現況地形記憶部43bと,初期地形記憶部43kと,目標面記憶部43cと,設計面記憶部43lを備えている。
【0036】
現況地形記憶部43bは,油圧ショベル周囲の現況地形800の位置情報(現況地形データ)を記憶する。例えば,現況地形データは,グローバル座標系において適宜のタイミングで現況地形取得装置96によって取得される。
【0037】
現況地形更新部43aは,取得した現況地形の位置情報でもって,現況地形記憶部43bに記憶されている現況地形の位置情報を適宜のタイミングで更新する。現況地形更新部43aによる現況地形の位置情報の取得方法の具体例としては,現況地形取得装置96によるものの他,基準点位置演算部43dにより演算されるバケット爪先の軌跡情報がある。後者については後に詳述する。
【0038】
目標面記憶部43cは,目標面設定装置51からの情報に基づき演算された目標面700の位置情報(目標面データ)を記憶する。本実施形態では,
図4に示すように,3次元の目標面を作業機1Aが移動する平面(作業機の動作平面)で切断した断面形状を目標面700(2次元の目標面)として利用する。なお,
図4の例では目標面700は1つだが,傾斜の異なる複数の目標面が連結している場合もある。複数の目標面が連結している場合には,例えば,作業機1Aから最も近いものを目標面と設定する方法や,バケット爪先の下方に位置するものを目標面とする方法や,任意に選択したものを目標面とする方法等がある。
【0039】
初期地形記憶部43kは,施工対象の現場で全ての作業機械が作業を開始する前の現況地形(本稿では「初期地形」と称することがある)の位置情報を記憶している。すなわち,初期地形の位置情報は,現況地形更新部43aによる更新が1度も行われていない現況地形の位置情報のオリジナルデータである。
【0040】
設計面記憶部43lは,油圧ショベル1の掘削作業で形成すべき最終目標形状であり,目標面700を作成する際の基となる設計面の位置情報を記憶している。設計面の位置情報は外部から入力され,記憶部43l内に記憶される。なお,目標面700の位置情報は,設計面の位置情報を施工に適した形で抽出,修正したものである。
【0041】
作業機械位置演算部43eは,一対のGNSSアンテナ14からの情報に基づいてグローバル座標系における油圧ショベル1の位置情報(
図3のショベル座標系の原点である車体基準位置P0の座標)と方位情報を演算し,そのデータを基準点位置演算部43dに出力する。
【0042】
基準点位置演算部(バケット位置演算部)43dは,作業機1Aに任意に設定した基準点Ps(
図7参照)の位置情報を演算する。本実施形態の基準点Psは
図7に示すようにバケット10の爪先におけるバケット幅方向の中心点とし,その位置はグローバル座標系で定義するものとする。まず,基準点位置演算部43dは,作業機姿勢検出装置50からの情報に基づき,ショベル座標系(ローカル座標系)におけるフロント作業機1Aの姿勢と,バケット10の爪先の位置を演算する。既述のとおり,バケット10の爪先位置情報(Xbk,Zbk)(バケット位置データ)は,式(1)及び式(2)により演算できる。また,グローバル座標系における車体基準位置P0の座標と車体傾斜角度θと,ローカル座標系における爪先位置に基づいて,バケット10の爪先(基準点Ps)の座標値をローカル座標からグローバル座標に変換できる。以下,グローバル座標系として例を説明する。ただし,ローカル座標系で統一して以下の処理を行っても構わない。
【0043】
第1距離演算部43fは,基準点位置演算部43dで算出された基準点(バケット爪先)Psの位置情報と目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報に基づいて,基準点Psから目標面700に向かって所定の方向に延ばした仮想直線Lv(
図7参照)上における基準点(バケット爪先)Psと目標面700の距離である第1距離D1(
図7参照)を演算する。本実施形態における仮想直線Lvの「所定の方向」は
図7に示すように鉛直方向とする。すなわち,バケット爪先から鉛直方向に延ばした仮想直線Lv上におけるバケット爪先と目標面700の距離が第1距離となる。第1距離D1は基準点Psから目標面700までの距離を示すので「目標面距離」と称されることもある。
【0044】
第2距離演算部43gは,基準点位置演算部43dで算出された基準点Psの位置情報と,目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報と,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報に基づいて,仮想直線Lv上における目標面700と現況地形800の距離である第2距離D2(
図7参照)を演算する。なお,第2距離D2は,仮想直線Lvが現況地形800と目標面700に交差する2点間の距離であると換言できる。第2距離D2は仮想直線Lv上における現況地形800の地表面から目標面700までの距離(すなわち掘削深さ)を示すので「第1掘削深さ」と称されることもある。
【0045】
表示制御部374aは,MG制御部43から入力される情報及び入力装置52から入力される信号を基に表示装置53を制御する。表示制御装置374には,作業装置1Aの画像及びアイコンを含む表示関連データが多数格納されている表示ROMが備えられており,表示制御装置374が,MG制御部43からの入力情報に基づいて所定のプログラムを読み出すとともに,表示装置53における表示制御をする。本実施形態の表示制御部374aは,MG制御部43から入力される基準点Ps(バケット爪先)の位置情報及びフロント作業機1Aの姿勢情報と,現況地形記憶部43bから入力される現況地形800の位置情報と,目標面記憶部43cから入力される目標面700の位置情報と,第1距離演算部43fから入力される第1距離と,第2距離演算部43gから入力される第2距離に基づいて表示装置53を制御する。これにより
図7に示すように表示装置53aの表示画面に,目標面700と作業機1A(バケット10の爪先)の位置関係が表示されるとともに,当該表示画面に第1距離D1と第2距離D2が表示される。
【0046】
図7は本実施形態の表示装置53aの表示画面の一例である。
図7の表示画面には,バケット10と,バケット10の近傍の目標面700及び現況地形800と,第1距離D1と,第2距離D2が表示されている。第1距離D1及び第2距離D2は距離表示部80に表示されており,第1距離(目標面距離)D1は図中で「距離」と表示されており,第2距離(第1掘削深さ)D2は図中で「掘削深さ」と表示されている。なお,図中には,基準点Psと,仮想直線Lvと,第1距離D1及び第2距離D2の寸法線が記載されているが,これらは図の説明であり実際の表示画面には表示されない(他の表示画面の図についても同様とする)。表示画面に表示する目標面700及び現況地形800の範囲は任意に設定可能である。例えば,基準点Psの位置(すなわちバケット爪先の位置)を基準にし,基準点Psから所定の範囲内に存在する目標面700と現況地形800を表示する方法がある。
【0047】
−動作−
以上のように構成される実施形態の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図8は本実施形態に係る制御コントローラ40によるMGのフローチャートである。制御コントローラ40は所定の制御周期で
図8のフローチャートを繰り返し実行する。
【0048】
ステップS1では,現況地形更新部43aが現況地形取得装置96から最新の現況地形の位置情報を取得し,これを利用して現況地形記憶部43bに記憶された現況地形の位置情報を更新する。
【0049】
ステップS2では,基準点位置演算部43dは,作業機姿勢検出装置50と作業機位置演算部43eの出力に基づいてグローバル座標系におけるバケット爪先の座標を演算する。
【0050】
ステップS3では,第1距離演算部43fは,基準点位置演算部43dで算出したバケット爪先の座標と目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報に基づいて,仮想直線Lv上におけるバケット爪先と目標面700の距離である第1距離D1を演算する。
【0051】
ステップS4では,第2距離演算部43gは,基準点位置演算部43dで算出したバケット爪先の座標と,目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報と,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報に基づいて,仮想直線Lv上における目標面700と現況地形800の距離である第2距離D2を演算する。
【0052】
ステップS5では,表示制御部374aは,ステップS3で演算した第1距離D1と,ステップS4で演算した第2距離D2を表示装53aの画面上の表示部80に同時に表示する。
【0053】
−効果−
上記のように構成した本実施形態によれば,バケット爪先(基準点)から鉛直方向における現況地形800と目標面700の距離である第2距離(第1掘削深さ)が表示装置53aに表示されるので,現況地形800と目標面700の距離をオペレータが把握可能になる。これによりバケット10が現況地形800から離れた位置にあるときにでも,目標面700が現況地形700からどの程度下方に存在するかを客観的に把握でき,どの程度のスピードでフロント作業機1Aを操作すればよいかを把握できる。
【0054】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。ここでは,第1実施形態と共通する部分については説明を省略し,主に異なる部分について説明する。
【0055】
図9は第2実施形態のMG制御部43の機能ブロック図である。MG制御部43は,第3距離演算部43hを備えている。
【0056】
第3距離演算部43hは,基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の下方にある場合,基準点位置演算部43dで算出された基準点Psの位置情報と,目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報とに基づいて,仮想直線Lv上における基準点Psと目標面700の距離である第3距離D3(
図11参照)を演算する。なお,第3距離D3は,仮想直線Lvと目標面700の交点と基準点Psとの距離であると換言できる。基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の下方にある場合,第3距離D3は仮想直線Lv上における基準点Psから目標面700までの距離(すなわち掘削深さ)を示すので「第2掘削深さ」と称されることもある。ただし,数値としては,第3距離D3は第1距離D1と通常一致する。
【0057】
本実施形態の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図10は本実施形態に係る制御コントローラ40によるMGのフローチャートである。制御コントローラ40は所定の制御周期で
図10のフローチャートを繰り返し実行する。なお,
図8のフローチャートと同じ処理には同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0058】
まず,ステップS4に続くステップS11では,第3距離演算部43hは,基準点位置演算部43dで算出したバケット爪先の座標と目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報に基づいて,仮想直線Lv上におけるバケット爪先と目標面700の距離である第3距離D3を演算する。
【0059】
ステップS12では,表示制御部374aは,ステップS3で演算した第1距離D1とステップS4で演算した第2距離D2の大小関係を比較する。第1距離D1が第2距離D2より大きい場合には,表示制御部374aは,基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の上方にあるとみなして,
図7のように第1距離D1と第2距離D2を表示装置53aに同時に表示する(ステップS5)。一方,第2距離D2が第1距離D1以上の場合には,表示制御部374aは,基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の下方にあるとみなして,
図11のように第1距離D1と第3距離D3を表示装置53aの表示部80に同時に表示する(ステップS13)。すなわち,この場合は,同一の数値が表示部80に2つ表示されることになる。
【0060】
−効果−
現実では,掘削作業中に現況地形800の下方にバケット爪先が位置することは無い。しかし,表示装置53aの表示画面上では,現況地形更新部43aによる現況地形800の位置情報の更新タイミングと第2距離算出部43gによる第2距離D2の算出タイミングがずれると,
図11のように現況地形800の下方にバケット爪先が表示される可能性がある。この場合にも第1実施形態のように第2距離D2を表示すると,第2距離D2の数値は実際の掘削深さよりも大きな値となるので,オペレータに違和感を与える虞がある。しかし,本実施形態によれば,このような事態が発生した場合であっても,現況地形800と目標面700の距離をオペレータが正確に把握できる。これにより現況地形800の位置情報の更新タイミングと第2距離D2の算出タイミングがずれても,目標面700が現況地形700(バケット爪先)からどの程度下方に存在するかを客観的に把握できる。
【0061】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。ここでは,第1,2実施形態と共通する部分については説明を省略し,主に異なる部分について説明する。
【0062】
図12は第3実施形態のMG制御部43の機能ブロック図である。MG制御部43は,第4距離演算部43iを備えている。
【0063】
第4距離演算部43iは,目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報と,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報に基づいて,現況地形800上の複数の点から目標面700に向かって第1実施形態と同じ鉛直方向に延ばした複数の仮想直線Ls上における目標面700と現況地形800の複数の距離である第4距離D4を演算する。すなわち,第4距離D4は現況地形800上に設定した複数の点と同数の距離の集合であり,その集合に含まれる各距離は,現況地形800上の任意の点から目標面700までの鉛直方向(所定の方向)における距離を示す。第4距離D4は,作業機械の周辺における,仮想直線Lvの傾きと同方向での現況地形800と目標面700の距離(すなわち掘削深さ)の集合を示すので「周辺掘削深さ」と称されることもある。
【0064】
本実施形態の入力装置52は,制御コントローラ40内の表示制御部374aに対して,第1及び第2実施形態の
図7,11の表示の代わりに周辺掘削深さ(第4距離)の表示を指示する信号(「第4距離表示信号」と称することがある)を出力可能に構成されている。本実施形態の表示制御部374aは,第4距離表示信号が入力装置52から入力されていない場合には,第2実施形態のフロー,すなわち
図10に従って表示装置53aの表示画面を制御する。
【0065】
本実施形態の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図13は本実施形態に係る制御コントローラ40によるMGのフローチャートである。制御コントローラ40は所定の制御周期で
図13のフローチャートを繰り返し実行する。なお,
図8,10のフローチャートと同じ処理には同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0066】
ステップS21では,表示制御部374aは,第4距離表示信号が入力装置52から入力されているか否かの判定を行う。ここで第4距離表示信号が入力されていないと判定された場合には,
図10のフローをステップS1から開始し,ステップS5またはステップS13までの処理を実行する。すなわち,この場合には第2実施形態と同じ表示処理が実行される。一方,ステップS21で第4距離表示信号が入力されていると判定された場合にはステップS22に進む。
【0067】
ステップS22では,現況地形更新部43aが現況地形取得装置96から最新の現況地形の位置情報を取得し,これを利用して現況地形記憶部43bに記憶された現況地形の位置情報を更新する。
【0068】
ステップS23では,第4距離演算部43iは,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報と,目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報を取得する。
【0069】
ステップS24では,第4距離演算部43iは,作業機械位置演算部43eで演算されたグローバル座標系における油圧ショベル1の位置情報と方位情報を取得する。
【0070】
ステップS25では,第4距離演算部43iは,ステップS24で取得した油圧ショベルの位置情報を基準として所定の範囲に含まれる現況地形800上の複数の点についての掘削深さを算出することにより第4距離D4を演算する。第4距離D4を演算する範囲は限定しても良い。演算範囲を限定する場合,その範囲は,例えば,油圧ショベル1の位置を含む所定の閉領域で定義できる。当該所定の閉領域は,例えば,油圧ショベル1の位置を中心とした所定の半径を有する円で定義できる。また,当該所定の閉領域に含まれるどの点について掘削深さを演算するかについては任意に設定できる。例えば,現況地形800上に四角メッシュを定義し,各メッシュの中心点の掘削深さを演算するように設定できる。
【0071】
図14は第4距離D4を表示装置53aに表示する際の表示画面の一例である。この図の例では現況地形800を四角メッシュで分割しており,各四角メッシュの中心点の掘削深さを第4距離演算部43iで演算し,その演算値の一の位を四捨五入した数値を平面図上に表示している。
図14の各四角メッシュ内の数値の単位は
図7,11と同様にセンチメートルである。ただし,第4距離D4の表示に際する四捨五入は必須では無い。また,
図14の例では,掘削深さを視覚的に理解することを容易にする観点から,掘削深さの数値に応じて各メッシュの背景パターンを変更している。ただし,深さの数値に応じた背景パターンの変更を行わなくても良い。
【0072】
−効果−
上記のように構成した本実施形態によれば,オペレータは油圧ショベル1の周囲の掘削深さを容易に把握できる。これにより油圧ショベル1の周辺において目標面700が現況地形700からどの程度下方に存在するかを客観的に把握でき,どの程度のスピードでフロント作業機1Aを操作すればよいかを把握できる。
【0073】
−変形例−
図15は第4距離D4を表示装置53aに表示する際の表示画面の一例である。この図の例では,現況地形800上の各点で掘削深さを第4距離演算部43iで演算し,その演算値を現況地形800上にプロットし,同じ掘削深さの点を線(等深さ線)で結ぶことで第4距離D4を表示している。図中の線の間に挿入されている数値は掘削深さを示し,数値の単位はセンチメートルである。このように第4距離D4を表示しても
図14と同様の効果を得ることができる。
【0074】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態について説明する。ここでは,第1,第2,第3実施形態と共通する部分については説明を省略し,主に異なる部分について説明する。
【0075】
図16は第4実施形態のMG制御部43の機能ブロック図である。MG制御部43は,第5距離演算部43jを備えている。
【0076】
第5距離演算部43jは,基準点位置演算部43dで算出された基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の上方にある場合,基準点位置演算部43dで算出された基準点Psの位置情報と,目標面記憶部43cに記憶された目標面700の位置情報と,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報に基づいて,仮想直線Lv上における基準点(バケット爪先)Psと現況地形800の距離である第5距離D5を演算する。すなわち,バケット爪先から鉛直方向に延ばした仮想直線Lv上におけるバケット爪先と現況地形800の距離が第5距離となる。第5距離D5は基準点Psから現況地形800までの距離を示すので「現況地形距離」と称されることもある。数値としては第5距離D5は第1距離D1から第2距離D2を減じた値であるため,第1距離D1から第2距離D2を減じた値を第5距離D5として算出しても良い。
【0077】
本実施形態の入力装置52は,制御コントローラ40内の表示制御部374aに対して,第1及び第2実施形態の
図7,11の表示に加えて第5距離D5の表示を指示する信号(「第5距離表示信号」と称することがある)を出力可能に構成されている。本実施形態の表示制御部374aは,第5距離表示信号が入力装置52から入力されていない場合には,第3実施形態のフロー,すなわち
図13に従って表示装置53aの表示画面を制御する。
【0078】
本実施形態の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図17は本実施形態に係る制御コントローラ40によるMGのフローチャートである。制御コントローラ40は所定の制御周期で
図17のフローチャートを繰り返し実行する。なお,
図8,10,13のフローチャートと同じ処理には同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0079】
ステップS31では,表示制御部374aは,第5距離表示信号が入力装置52から入力されているか否かの判定を行う。ここで第5距離表示信号が入力されていないと判定された場合には,
図13のフローをステップS21から開始し,ステップS5(
図10)またはステップS13(
図10)またはステップS25(
図13)までの処理を実行する。すなわち,この場合には第3実施形態と同じ表示処理が実行される。一方,ステップS31で第5距離表示信号が入力されていると判定された場合にはステップS1に進む。なお,ステップS1−S11の説明は省略する。
【0080】
ステップS32では,第5距離演算部43jは,基準点位置演算部43dで算出したバケット爪先の座標と現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報に基づいて,仮想直線Lv上におけるバケット爪先と現況地形800の距離である第5距離D5を演算する。
【0081】
ステップS12では,表示制御部374aは,ステップS3で演算した第1距離D1とステップS4で演算した第2距離D2の大小関係を比較する。第1距離D1が第2距離D2より大きい場合には,表示制御部374aは,基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の上方にあるとみなして,
図18のように第1距離D1と第2距離D2と第5距離D5を表示装置53aに同時に表示する(ステップS33)。一方,第2距離D2が第1距離D1以上の場合には,表示制御部374aは,基準点(バケット爪先)Psが現況地形800の下方にあるとみなして,
図11のように第1距離D1と第3距離D3を表示装置53aの表示部80に表示する(ステップS13)。
【0082】
−効果−
上記のように構成した本実施形態によれば,鉛直方向におけるバケット爪先(基準点)から現況地形800までの距離である第5距離(現況地形距離)が表示装置53aに表示されるので,バケット爪先と現況地形800の距離をオペレータが把握可能になる。これにより,現況地形800がバケット爪先からどの程度下方に存在するかを客観的に把握でき,どの程度のスピードでフロント作業機1Aを操作すればよいかを把握できる。
【0083】
−変形例−
なお,上記の例では,ステップS33に進んだ場合,第1距離D1,第2距離D2,第5距離D5の全てを表示することとしたが,第2距離D2は非表示としても良い。また,第2距離D2を非表示とするか否かは入力装置52で選択可能な構成としても良い。
【0084】
<その他>
−基準点−
上記の各実施形態では,第1,2,3,5距離を算出する際の作業機械側の基準点(基準点位置演算部43dの基準点)Psをバケット10の爪先(作業機1Aの先端)に設定したが,基準点Psは作業機1Aに任意に設定することができる。また,基準点は常時同じ点に設定する必要はなく,例えば作業機1Aの姿勢に応じて基準点Psが移動するような構成も可能である。例えば,バケット10の底面やバケットリンク13の最外部も選択可能であり,目標面700から最も距離の近いバケット10上の点を適宜制御点とする構成を採用しても良い。
【0085】
−仮想直線の方向(傾き)−
また,上記の各実施形態では,基準点(バケット爪先)Psから鉛直方向に延ばした直線を仮想直線Lvと定義したが,基準点Psから直線を延ばす方向は任意に設定が可能であり,鉛直方向以外に延ばした直線を仮想直線としても良い。例えば,
図19の例では,基準点(バケット爪先)Psを通過し目標面700と直交する直線を仮想直線Lv’としている。このように各距離D1−D5を設定しても本発明はその効果を発揮することができる。
【0086】
−基準点の軌跡による現況地形の位置情報の更新−
また,上記の各実施形態では,現況地形800の位置情報の更新に際して,現況地形取得装置96の出力から最新の情報を取得していたが,基準点位置演算部43dで演算されるバケット爪先の位置情報を利用して現況地形800の位置情報を更新しても良い。この場合,現況地形更新部43aにおいて,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形800の位置情報と基準点位置演算部43dで演算されるバケット爪先の位置情報を入力する。そして,現況地形更新部43aは,バケット爪先の位置と現況地形の上下関係を比較する。基準点位置演算部43dで演算されたバケット爪先の位置が現況地形記憶部43bに記憶された現況地形の位置よりも下方にあると判定された場合,基準点位置演算部43dで演算されたバケット爪先の位置情報によって現況地形記憶部43bに記憶された現況地形の位置情報を更新する。一方,基準点位置演算部43dで演算されたバケット爪先の位置が現況地形記憶部43bに記憶された現況地形の位置よりも上方にあると判定された場合には,現況地形記憶部43bに記憶された現況地形の位置情報の更新は行わない。すなわち,ここでは,現況地形800を掘削した際のバケット爪先の軌跡を掘削後の現況地形800としてみなして現況地形データを更新している。
【0087】
図20Aにバケット爪先の位置情報に基づく現況地形更新部43aによる現況地形の更新を表す模式図を示す。ある水平方向座標x’におけるバケット高さ方向の座標z1と現況地形の高さ方向の座標z0を比較して,z1がz0よりも下方向にあった場合はz1を新たな現況地形データとして更新する。
図20Bは
図20Aに基づく現況地形更新部43aによる現況地形の更新後の表示装置53aの表示画面の一例である。
【0088】
このようにバケット爪先位置情報を現況地形の更新に利用することにより,掘削毎に現況地形取得装置96が現況地形データを取得する必要がなくなり,現況地形データの取得に要する時間を短縮することが可能である。また,一旦現況地形データを取得しておけば,以後は現況地形更新部43aの更新機能で逐次現況地形データが更新されるので,現況地形取得装置96を油圧ショベル1に搭載することを省略することも可能となる。
【0089】
−初期地形の表示−
ところで
図20Bの例では,表示制御部374aは,初期地形記憶部43kから初期地形850の位置情報を読み出して更新後の現況地形800の位置情報とともに表示している。このように初期地形850と現況地形800を同時に表示すると,作業開始当初からの作業の進捗を容易に把握できる。なお,初期地形850と現況地形800の同時表示は上記の各実施形態で適用可能であることはいうまでもない。
【0090】
−補足−
上記の制御コントローラ40に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は,それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また,上記の制御コントローラ40に係る構成は,演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該制御コントローラ40の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は,例えば,半導体メモリ(フラッシュメモリ,SSD等),磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク,光ディスク等)等に記憶することができる。
【0091】
なお,本発明は,上記の実施の形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば,本発明は,上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず,その構成の一部を削除したものも含まれる。