(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の油性抗菌ニス組成物は、上記の各成分を含有するものであり、以下に順に説明する。
<銀含有リン酸ジルコニウム粒子>
本発明において使用される銀含有リン酸ジルコニウム粒子は、リン酸ジルコニウムの結晶構造中に銀イオンを存在させたものである。
銀含有リン酸ジルコニウム粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは0.8μm以上である。また好ましくは2.5μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下であり、さらに好ましくは1.2μm以下である。
このような銀含有リン酸ジルコニウム粒子として、ノバロンAG300、1100、AGC303、AGZ010、AGZ020、AGZ330、AGT330(いずれも東亞合成社)等を使用できる。
銀等の金属を担持して抗菌性を発揮する粒子として、本発明における銀含有リン酸ジルコニウム粒子ではなく銀含有ゼオライトを配合すると、条件によっては、安定性及び耐擦過性等の点において不都合が生じる可能性がある。
【0008】
本発明の油性抗菌ニス組成物中の銀含有リン酸ジルコニウム粒子の濃度としては、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、最も好ましくは2.0質量%以上である。また、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下、最も好ましくは5.0質量%以下である。
0.2質量%未満であると十分な抗菌性を発揮できない可能性があり、20.0質量%を超えると、条件によるものの、安定性と耐摩擦性に劣る可能性がある。
【0009】
<樹脂>
本発明における樹脂は、樹脂ワニスとして油性抗菌ニス組成物中に配合される。その樹脂として、ロジン系樹脂、ロジン変性フェノール系樹脂、ロジン変性マレイン酸系樹脂、ロジン変性アルキド系樹脂、ロジン変性石油系樹脂、ロジンエステル系樹脂、マレイン化ロジン樹脂、石油樹脂、石油系樹脂変性フェノール系樹脂、アルキド系樹脂、植物油変性アルキド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を採用できる。
さらにこれらの樹脂を脂肪酸により変性してなる樹脂を採用でき、その際の脂肪酸としては、例えば、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オクタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の炭素数2〜30程度の天然または合成の脂肪酸;例えば、桐油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、トウモロコシ油、綿実油、コメ油(コメヌカ油)、ナタネ油、キャノーラ油、エゴマ油、ゴマ油、ツバキ油、オリーブ油、落花生油、グレープシード油、ヤシ油、トール油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬油、豚脂、鶏油、イワシやサンマ等の魚油、鯨油、鮫油、ラノリン、ミンクオイル、蜜蝋等の動植物系油;前記動植物系油誘導体(酸化重合油(ボイル油)・加熱重合油(スタンド油)、さらにそれらの脱水化物やエステル化物等の動植物系油の変性物);があげられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0010】
特に上記脂肪酸としては、好ましくは、ヤシ油やヨウ素価80以上のものがあげられ、特に好ましくは、ヤシ油、桐油、大豆油、トール油、アマニ油、ヒマシ油、ベニバナ油、エゴマ油、重合大豆油、重合アマニ油、重合ヒマシ油、重合桐油、重合脱水ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油ブチルエステル、アマニ油ブチルエステル、桐油ブチルエステルの1種以上が用いられる。
これらの中でも、ロジン変性フェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂、マレイン化ロジン樹脂、石油樹脂を採用することが好ましい。
これらの樹脂を油性抗菌ニス組成物に配合するにあたり、これらの樹脂を、150〜230℃に加温された大豆油等の植物油中で30分間程度撹拌されて溶解して得られた樹脂とすることもできる。
【0011】
本発明の油性抗菌ニス組成物中の樹脂の含有量は、好ましくは8.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、さらに好ましくは15.0質量%以上、最も好ましくは17.0質量%以上である。
また好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは40.0質量%以下、さらに好ましくは30.0質量%以下であり、最も好ましくは25.0質量%以下である。
8.0質量%未満であると、耐版摩耗性、乾燥性、耐摩擦性及び光沢に関する性質をバランス良く向上させることが困難になり、50.0質量%を超えると、他の成分を十分に配合できない可能性がある。
【0012】
<平均粒子径10μm以下のワックス>
本発明の油性抗菌ニス組成物は、平均粒子径10.0μm以下のワックスを含有する。そのワックスとして、 蜜蝋、ラノリンワックス、鯨蝋、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の動植物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物、石油系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等のフッ素樹脂系ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックスとポリエチレンワックスの混合物、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス等が挙げられる。
中でも、ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックスとポリエチレンワックスの混合物、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等を使用できる。
なおポリエチレンワックスや、ポリテトラフルオロエチレンワックスとポリエチレンワックスの混合物を使用することが好ましい。また、ポリテトラフルオロエチレンワックスとポリエチレンワックスの混合物は、それぞれのワックスを単に混合して、それぞれのワックスの粒子が単に混ざり合っているものでもよい。さらに、それぞれのワックスの粒子が結合して一体化してなる粒子を形成してもよい。一体化の態様として、ポリテトラフルオロエチレンワックス粒子中に、ポリエチレンワックス粒子が包含されたもの、又はその関係が逆のもの、ポリテトラフルオロエチレンワックス粒子とポリエチレンワックス粒子とが隣接して結合したもの、のいずれでも良い。
【0013】
ポリエチレンワックスとしては、SB−25、SB−35、SB−45、SB−60、SB−70、SB−100、PSB−2500、PSB−3500、PSB−4500、PSB−6000(森村ケミカル社)、S−394、S−483(Shamrock社)等を使用できる。
ポリテトラフルオロエチレンワックスとポリエチレンワックスの混合物としては、Fluoroslip231、Fluoroslip421T、Fluoroslip511(Shamrock)等を使用できる。
フッ素樹脂系ワックスとしては、SST−1MG、SST−2、SST−2D、SST−3、SST−4等(いずれもポリテトラフルオロエチレンワックス)(Shamrock社)等を使用できる。
【0014】
フィッシャー・トロプシュワックスとしては、サゾールワックスH1、H1N6、C105、H105、Spray30、Spray105、Aqua30、Aqua30s、H1N4、A1、A2、A14、A28、AP5、A859、B39、B52、B19、WE52(サゾール社)、FT115、FT105、FT0165、FT0070(日本精鑞社)等を使用できる。
【0015】
そしてワックスの平均粒子径が好ましくは8.0μm以下、より好ましくは6.0μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下のものを使用できる。
また、使用するワックスの平均粒子径を、油性抗菌ニス組成物の粘度に応じて適宜選択してもよい。
【0016】
ワックスの、油性抗菌ニス組成物中の含有量は、0.1質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは3.0質量%以上であり、さらに好ましくは4.0質量%以上であり、最も好ましくは5.0質量%以上である。また好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは13.0質量%以下であり、さらに好ましくは11.0質量%以下である。
ワックスの含有量が1.0質量%より少ないとスクラッチ性が低下する可能生があり、一方、15.0質量%より多いと印刷装置を汚す等して作業性が低下する傾向にある。
【0017】
<ドライヤー>
本発明の油性抗菌ニス組成物に含有されるドライヤーとしては、金属の脂肪酸塩(金属石鹸)が好ましく、中でもマンガンやコバルト、鉛、カルシウム、ジルコニウム、バリウム、ナトリウム、カリウム等の金属のナフテン酸やオクチル酸を使用できる。
油性抗菌ニス組成物中のドライヤーの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、最も好ましくは0.5質量%以上である。また好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、最も好ましくは0.8質量%以下である。
0.1質量%未満であると乾燥性に劣る可能性があり、2.0質量%を超えるとニス組成物としての取り扱い性に劣る可能性がある。
【0018】
<植物油>
本発明の油性抗菌ニス組成物に含有される植物油としては、桐油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、トウモロコシ油、綿実油、コメ油(コメヌカ油)、ナタネ油、キャノーラ油、エゴマ油、ゴマ油、ツバキ油、オリーブ油、落花生油、グレープシード油、ヤシ油、トール油、パーム油、パーム核油等の乾性油や半乾性油等が例示される。好ましくは大豆油、桐油、アマニ油等である。
また、植物油の脂肪酸アルキルエステルも使用できる。その植物油の脂肪酸のモノアルキルエステルを構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の不飽和脂肪酸が好ましく例示され、このような不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が好ましく例示される。脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成するアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく例示され、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく例示される。植物油類に含まれる不飽和結合部分が、油性抗菌ニス組成物塗布後の皮膜中で酸化重合することで油性抗菌ニス組成物が乾燥する。好ましくは、脂肪酸アルキルエステルとして、大豆油脂肪酸ブチルエステルや、アマニ油脂肪酸ブチルエステルなどを採用できる。
【0019】
上記の通り、植物油、及び植物油の脂肪酸アルキルエステルを合わせた、油性抗菌ニス組成物中における含有量は、好ましくは20.0質量%以上であり、より好ましくは30.0質量%以上であり、さらに好ましくは40.0質量%以上である。また80.0質量%以下が好ましく、より好ましくは75.0質量%以下であり、さらに好ましくは70.0質量%以下である。
【0020】
<鉱物油>
本発明の油性抗菌ニス組成物には、上記植物油の一部に代えて鉱物油を添加してもよい。鉱物油としては、溶剤とも呼ばれる軽質鉱物油や、潤滑油状である重質鉱物油等が挙げられる。
軽質鉱物油としては、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤が例示される。このような非芳香族系石油溶剤としては、ENEOS株式会社製の0号ソルベント、同AFソルベント5号、同AFソルベント6号、同AFソルベント7号等が例示される。
重質鉱物油としては、スピンドル油、マシン油、ダイナモ油、シリンダー油等として分類されてきた各種の潤滑油を挙げることができる。これらの中でも、環境面から、縮合多環芳香族成分の含有量が抑制されたものが好ましい。このような鉱物油としては、ENEOS株式会社製のインクオイルH8、同インクオイルH35(いずれも商品名)、三共油化工業株式会社製のSNH8、同SNH46、同SNH220、同SNH540(いずれも商品名)等が例示される。
これらの鉱物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。油性抗菌ニス組成物における鉱物油の含有量としては、油性抗菌ニス組成物全体に対して0〜50質量%程度を例示することができる。
【0021】
<その他の樹脂>
本発明の油性抗菌ニス組成物の性能が低下しない範囲内で、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂及びエチレン−酢酸ビニル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等を併用することも可能である。但し、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂は使用してもしなくてもよい。
【0022】
<その他の成分>
本発明の油性抗菌ニス組成物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、表面調整剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を本発明の効果が毀損されない範囲で使用できる。また、本発明の油性抗菌ニス組成物に無機又は有機の公知の色材を含有させても良い。
【0023】
(油性抗菌ニス組成物の製造)
本発明の油性抗菌ニス組成物を製造する方法について説明する。
本発明の油性抗菌ニス組成物は、上記の各材料を、例えば、三本ロール等により分散混合し、必要に応じて油性抗菌ニス組成物の粘度を調整することによって得る一液型の組成物である。
本発明の油性抗菌ニス組成物中における溶剤の含有量は、油性抗菌ニス組成物全量に対する含有量である。
【0024】
(用途)
本発明の油性抗菌ニス組成物は、紙基材、各種樹脂シート等の樹脂成形体表面、金属表面、セラミックス表面、木質材表面を含む周知の材料の表面に抗菌層を形成させるために使用できる。その中でも特に耐摩擦性が要求される場合に適している。
またオフセット印刷用、グラビア印刷等公知各種の印刷方法、中でも特にオフセット印刷用油性抗菌ニス組成物とすることができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の各成分及び合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0026】
<銀担持粒子>
ノバロンAG−300:商品名「ノバロンAG−300」、銀イオンをリン酸ジルコニウムに担持した粒子、平均粒径1μm、固形分100%、東亞合成社製
銀担持結晶性アルミノ珪酸塩:M
2/nO・Na
2O・Al
2O
3・2.5SiO
2・XH
2O (M:銀、亜鉛イオンの混合物、X:3.2〜7.6)
【0027】
(樹脂ワニス1)
冷却管、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂(荒川化学株式会社製、タマノル414、樹脂固形分100質量%)を40部、大豆油64.5部を仕込んだ後200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させた後、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を0.5部仕込み、その後170℃で60分間加熱保持して、樹脂ワニス1を得た。
【0028】
<ワックス>
PSB−2500(ポリエチレンワックス、平均粒子径2.5μm、融点128〜140℃、森村ケミカル社製)
S−395(ポリエチレンワックス、平均粒子径12.5μm、融点126℃、
Shamrock社製)
Fluoroslip511(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びポリエチレン混合ワックス(ポリテトラフルオロエチレンワックスとポリエチレンワックスのそれぞれのワックスの粒子が、結合して一体化してなる粒子を形成したものを含む)(平均粒子径6μm、融点126℃、Shamrock社製)
<ドライヤー>
オクチル酸マンガン
オクチル酸コバルト
【0029】
(実施例1〜7及び比較例1〜7)
<油性抗菌ニス組成物の製造>
表1の配合(各材料の配合比率は質量%である)に従い、各材料を混合し、三本ロールを用いて練肉することで実施例及び比較例の油性抗菌ニス組成物を得た。
【0030】
<評価方法及び評価基準>
(塗工物の作成)
下記の条件で実施例及び比較例の抗菌組成物を塗工した。
印刷機:小森コーポレーション 小森LITHRONE LS−426
版:平版用CTP版 XPF(富士フィルム社製)
用紙:王子マテリア株式会社 UFコート
印刷速度:12000部/時
湿し水:富士フィルム社製 SUPERIA PRESSMAX S−Z1(湿し水中濃度 3容量%)
【0031】
(耐版摩耗性)
全ベタの版を用いて連続50000部塗工した後に、版面と紙面の状態を確認、目視評価した。
○:版面に摩耗が見られず、紙面のベタ形成に欠陥が見られない。
△:版面に摩耗が見られたが、紙面のベタ形成には欠陥が見られない。
×:版面に摩耗が見られ、紙面のベタ形成に欠陥が見られる。
【0032】
(乾燥性)
JIS K 5701を参考に実施した。東洋精機製C型乾燥試験機のドラムの円周上に、得られた各塗工物に当て紙を重ねて巻き付け、この上に一定荷重の押し圧歯車を載せ、ドラムの回転とともにこれをドラムの軸方向に移動させ、当て紙に移る押し圧歯車の押し跡で試料の乾燥時間、裏移りの状態などを測定した。
○:10時間で押し跡がつかなくなった。
△:15時間で押し跡がつかなくなった。
×:24時間たっても押し跡がついていた。
【0033】
(耐摩擦性)
得られた各塗工物を、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて評価した。
評価条件:500g×50回、当紙:UFコート
○:50回以上こすっても塗工面が取れなかった。
△:10回〜49回こすって塗工面が取れた。
×:1回〜9回こすって塗工面がとれた。
【0034】
(光沢)
得られた各塗工物について、日本電色工業株式会社製光沢計で60°光沢値(Gs)を測定した。
○:Gs(60°)=30%以上
△:Gs(60°)=20%以上30%未満
×:Gs(60°)=20%未満
【0035】
【表1】
【0036】
本発明に沿った例である実施例1〜7によれば、油性抗菌ニス組成物による耐版摩耗性、油性抗菌ニス組成物による塗膜の乾燥性、耐摩擦性及び光沢性が良好であった。
これに対して、銀含有リン酸ジルコニウム粒子を含有せず、銀担持結晶性アルミノ珪酸塩を含有した比較例1によれば、耐版摩耗性と耐摩擦性に劣り、樹脂ワニスを使用しない比較例2によれば、全ての性質の点で劣り、ワックスを含有しない比較例3とワックスを少量のみ含有する比較例4によれば、いずれも耐版摩耗性と耐摩擦性に劣り、ワックスを多量に含有する比較例5によれば、光沢性に劣り、ドライヤーを含有しない比較例6によれば特に乾燥性に劣り、平均粒子径が10μmを超えるワックスを含有する比較例7によれば塗膜の光沢性に劣っていた。
上記の比較例のうち、耐版摩耗性と耐摩擦性に劣る比較例1における銀担持結晶性アルミノ珪酸塩(ゼオライト)に代えて、上記特許文献2によれば、粉砕装置の磨耗が起きやすいほど硬度が高いことがわかるリン酸ジルコニウム粒子を採用しても、耐版摩耗性、つまり版を摩耗しないという性質をはじめとする全ての効果において優れた効果を発揮できることがわかる。これは結晶性アルミノ珪酸塩自体が本来それほど硬度が高くないこと、それに対して上記のようにリン酸ジルコニウムは硬度がより高いことを考慮すると顕著な効果である。
【課題】銀を担持した高い硬度のリン酸ジルコニウム粒子を含有する油性抗菌ニス組成物により印刷しても、耐版摩耗性に優れ、乾燥性を有し、かつ、得られた塗膜が、優れた耐摩擦性及び光沢を有する油性抗菌ニス組成物を提供すること。
【解決手段】銀含有リン酸ジルコニウム粒子、樹脂、ドライヤー、植物油を含有し、さらに、平均粒子径10.0μm以下のワックスを全組成物中0.1〜15.0質量%含有する油性抗菌ニス組成物。