特許第6827234号(P6827234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡株式会社の特許一覧 ▶ 大東化成工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827234
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】爪被覆剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/85 20060101AFI20210128BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20210128BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210128BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   A61K8/85
   A61K8/37
   A61K8/81
   A61Q3/02
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-152021(P2016-152021)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-20967(P2018-20967A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 周子
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】春日部 芳久
(72)【発明者】
【氏名】田中 巧
(72)【発明者】
【氏名】土井 萌子
(72)【発明者】
【氏名】長谷 昇
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−097359(JP,A)
【文献】 特開2002−121288(JP,A)
【文献】 特開平10−036225(JP,A)
【文献】 特開2011−168552(JP,A)
【文献】 特開2011−126798(JP,A)
【文献】 特開2002−356640(JP,A)
【文献】 特開2003−277595(JP,A)
【文献】 特開2011−148888(JP,A)
【文献】 特開2004−107413(JP,A)
【文献】 特開平10−204378(JP,A)
【文献】 特開平08−092359(JP,A)
【文献】 特開平08−003297(JP,A)
【文献】 特開平08−003293(JP,A)
【文献】 特開2004−099883(JP,A)
【文献】 特開2002−356612(JP,A)
【文献】 特開平11−209244(JP,A)
【文献】 特開2015−199702(JP,A)
【文献】 特開2014−118395(JP,A)
【文献】 特開2007−022961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリ乳酸、
(2)アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の可塑剤、
(3)アニオン性高分子化合物、及び非イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の分散安定化剤、及び
(4)水
を含有し、
前記ポリ乳酸のTgは20〜54℃である、
ポリ乳酸含有水系分散体から成る爪被覆剤。
【請求項2】
爪上に形成した被覆膜が水で除去できる、請求項1に記載の爪被覆剤。
【請求項3】
35〜42℃の水に浸漬することより、爪上に形成した被覆膜が除去できる、請求項1又は2に記載の爪被覆剤。
【請求項4】
ベースコート剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆剤。
【請求項5】
ポリ乳酸が下記の物性(A)〜(D)の少なくとも1つを満たす、請求項1〜のいずれかに記載の爪被覆剤:
(A)ポリ乳酸を構成する総モノマー分子の80〜100モル%が乳酸モノマーである;(B)ポリ乳酸を構成するL−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)が1〜7である;
(C)還元粘度が0.3〜1.5dl/gである;
(D)数平均分子量が10,000〜90,000である。
【請求項6】
ポリ乳酸含有水系分散体がポリビニルアルコールを含まない、請求項1〜5のいずれかに記載の爪被覆剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
爪被覆剤、特にポリ乳酸を含有する爪被覆剤が開示される。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題に対する意識の高まりから、生分解性素材を利用した製品の開発が行われている。生分解性素材として乳酸がエステル結合によって重合したポリ乳酸が知られている。ポリ乳酸は、植物由来の成分であるグルコース及びスクロース等から合成可能であるため、カーボンニュートラルなバイオプラスチックとしても注目されており、種々の製品への利用が実用化され、また開拓されつつある。
【0003】
例えば、特許文献1には、インキ用のバインダーとしての使用に適した、乳酸残基を80〜100モル%含有し、そのうちL−乳酸とD−乳酸のモル比(L/D)が1〜9であるポリ乳酸が開示されている。特許文献2には、繊維製品及び紙製品等への塗工、含浸、噴霧、及び内部添加等の利用に適したポリ乳酸を可塑剤及び分散安定化剤の存在下で水に分散させた水系分散体が開示されている。
【0004】
一方、マニキュア等の爪被覆剤の多くは、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶剤が用いられており、爪に直接塗布することによる健康への影響が懸念される。また強固な被膜を形成するため除去する際、再度皮膜を溶解しうる除光液(リムーバー)を用いなければならず、有機溶媒に暴露されることにより爪の水分も取り除かれる。よって、爪表面が白くなるなど長期の使用においては爪が脆くなるなど影響がある。特に、妊娠中は有機溶媒による胎児への影響が懸念される。また抗がん剤治療中において副作用で爪が黒ずんだり、もろくなった爪のダメージを隠すため爪被覆剤使用の要望があるものの体への負担が懸念されている。
【0005】
このような背景から有機溶剤を使用していない水系爪被覆剤の開発が盛んとなってきている。しかし、水系被覆剤はアクリル系エマルションポリマー等による樹脂皮膜を形成する為、水では除去できず、またアセトン等の有機溶剤を主成分とする一般的なネイルエナメルリムーバーでも除去できず、除去の困難性が問題であった。剥離性の高い水系爪被覆剤の開発も進められているが、専用のリムーバーを使用する煩雑性があった(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−97359
【特許文献2】特開2002−121288
【特許文献3】特開平10−36225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2には、ポリ乳酸を含有する水系分散体が開示されている。しかし、特許文献2に開示されるポリ乳酸含有水系分散体では、後述する比較例に示される通り、室温で透明な皮膜を形成することはできない。特許文献3に開示される美爪料は、爪上に形成した皮膜の除去に専用のリムーバーを必要とするという煩雑さがあった。このような事情を踏まえ、室温で透明な皮膜形成が可能なポリ乳酸含有水系分散体を提供すること等が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた末、下記に代表される発明によって解決できることが見出された。
【0009】
項1.
ポリ乳酸含有水系分散体から成る爪被覆剤。
項2.
爪上に形成した被覆膜が水で除去できる、項1に記載の爪被覆剤。
項3.
35〜42℃の水に浸漬することより、爪上に形成した被覆膜が除去できる、項1又は2に記載の爪被覆剤。
項4.
ベースコート剤である、項1〜3のいずれかに記載の被覆剤。
項5.
ポリ乳酸含有水系分散体が下記(1)〜(4)を含有する、項1〜4のいずれかに記載の爪被覆剤:
(1)ポリ乳酸、
(2)アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の可塑剤、
(3)アニオン性高分子化合物、及び非イオン性高分子化合物からなる群より選ばれる1種以上の分散安定化剤、及び
(4)水。
項6.
ポリ乳酸が下記の物性(A)〜(E)の少なくとも1つを満たす、項1〜5のいずれかに記載の爪被覆剤:
(A)ポリ乳酸を構成する総モノマー分子の80〜100モル%が乳酸モノマーである;
(B)ポリ乳酸を構成するL−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)が1〜7である;
(C)還元粘度が0.3〜1.5dl/gである;
(D)数平均分子量が10,000〜90,000である;
(E)Tgが20〜54℃である。
項7.
ポリ乳酸含有水系分散体がポリビニルアルコールを含まない、項1〜6のいずれかに記載の爪被覆剤。
【発明の効果】
【0010】
室温で透明な皮膜形成が可能なポリ乳酸含有水系分散体が提供される。ポリ乳酸含有水系分散体、及び、それによって形成される皮膜は、生分解性及び/又はカーボンニュートラルという観点で優れている。ポリ乳酸含有水系分散体によって、環境に配慮した各種製品(例えば、化粧料)が提供される。好適な一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体によって形成された皮膜は水に晒すことによって容易に剥離可能である。よって、ポリ乳酸含有水系分散体は、爪被覆剤として好適である。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体をベースコートとして使用し、その上に他の爪被覆剤(例えば、従来型の有機溶媒系爪被覆剤)等を塗布することにより、そのような他の爪被覆剤による皮膜も特別なリムーバーの使用なく剥離することが可能となる。好適な一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、有機溶媒を実質的に含まないため、安全性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
爪被覆剤とは、爪の表面に皮膜を形成するための材料であり、ネイルエナメル、ネイルラッカー、及びマニキュア等を包含し、ケア剤又はパック剤として使用されるものも含まれる。爪被覆剤は、ポリ乳酸含有水系分散体であることが好ましい。また、このような爪被覆剤は、爪の表面に形成した皮膜が水に晒すこと(例えば、浸漬すること)によって容易に剥離可能であることが好ましい。一実施形態において、爪皮膜剤によって爪の表面に形成された皮膜は、水に浸漬することにより容易に剥離できることが好ましい。剥離に使用する水の温度は特に制限されないが、より短時間で剥離するという観点から、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、又は38℃以上が好ましい。また、水の温度の上限も特に制限されないが、指を浸漬し得る温度という観点から45℃以下、好ましくは42℃以下である。ここで、容易に剥離できるとは、水に約30秒浸漬し、指で皮膜を軽くこすることによって剥離できることを意味する。水への浸漬時間は、皮膜が剥離できる限り特に制限されず、好ましくは30秒以下、25秒以下、又は20秒以下である。
【0012】
剥離に用いる水の種類は特に制限されず、適宜選択することができる。例えば、水道水、RO水、脱イオン水、蒸留水、及び精製水等の純水から適宜選択して使用することができる。
【0013】
上記のような性質から、ポリ乳酸含有水系分散体から成る爪被覆剤は、ネイルシール、人工爪、及び他の爪被覆剤のベースコートとして使用することにより、これらの剥離を容易にすることができる。爪被覆剤でベースコートを形成する場合、その上に設ける膜及び物の種類は特に制限されない。一実施形態において、ベースコートの上には、除光液等のリムーバーを通常必要とする爪被覆剤、人工爪、又はネイルシールであることが好ましい。
【0014】
一実施形態において、爪被覆剤であるポリ乳酸含有水系分散体は、下記の(1)〜(4)を含むことが好ましい。
(1)ポリ乳酸
(2)アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の可塑剤
(3)アニオン性高分子化合物、及び非イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上の分散安定化剤
(4)水
【0015】
ポリ乳酸は、分散安定化剤及び可塑剤の存在下で水に安定的に分散され、そのようにして得られる分散体は室温で透明皮膜の形成が可能であることが好ましい。このような観点及び皮膜に良好な生分解性を与えるという観点から、一実施形態において、ポリ乳酸を構成する総モノマー分子に占める乳酸モノマーの割合の下限値は、例えば、80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、上限は100モル%である。
【0016】
ポリ乳酸を構成する総モノマーに占める乳酸モノマーの割合(モル比)は、次のようにして求められる。ポリ乳酸を、重クロロホルム又は重ジメチルスルホキシドに溶解し、VARIAN社製 NMR装置400−MRを用いて、1H−NMR分析及び13C−NMR分析を行い、得られる積分比より、組成を求める。得られた組成をもとに乳酸モノマーの割合(モル比)を算出する。
【0017】
ポリ乳酸を構成する乳酸モノマーは、L−乳酸及びD−乳酸のいずれであってもよいが、上記と同様の観点から、ポリ乳酸を構成する総乳酸モノマーにおけるL−乳酸とD−乳酸とのモル比(L−乳酸/D−乳酸)の上限は、例えば、9以下であり、好ましくは7以下、より好ましくは5以下であり、下限は1である。
【0018】
ポリ乳酸を構成するD−乳酸とL−乳酸とのモル比(L/D)は、次のようにして測定される。ポリ乳酸を純水、1N水酸化ナトリウム及びイソプロピルアルコールの混合溶媒に添加し、70℃で加熱攪拌して加水分解する。これを濾過し、濾液中の固形分を除去した後、硫酸を加えて中和し、L−乳酸及びD−乳酸を含有する水溶液を得る。この水溶液を試料として、キラル配位子交換型のカラム(SUMICHIRAL OA−5000(株式会社住化分析センター製))を用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)でL−乳酸及びD−乳酸の量を測定する。L−乳酸由来のピーク面積とD−乳酸由来のピーク面積の比率より、モル比(L−乳酸/D−乳酸)を算出する。
【0019】
ポリ乳酸を構成する乳酸モノマーは、繰り返し単位とも呼ばれ、下記式1で示される構造を有する。
【0020】
【化1】
【0021】
ポリ乳酸は、乳酸モノマー以外のモノマー分子を有していても良い。そのようなモノマー分子は、特に制限されないが、例えば、カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、10−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、クエン酸、及びグルコン酸等のオキシ酸、コハク酸、プロピレングリコール、並びにグリセリン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0022】
ポリ乳酸の還元粘度(ηSP/C)は、特に制限されないが、例えば、下限は、0.3dl/g以上であり、好ましくは0.4dl/g以上である。ポリ乳酸の還元粘度(ηSP/C)の上限は、例えば、1.5dl/g以下であり、好ましくは1.3dl/g以下であり、更に好ましくは1.2以下である。ポリ乳酸の還元粘度は、重合反応時の重合時間、重合温度、減圧の程度等の条件を変化させること、及び共重合成分として使用するアルコール成分の使用量を変化させることによって調整することができる。ポリ乳酸の還元粘度は、0.1gのポリ乳酸をフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶かし、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定される。
【0023】
ポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)は、室温で透明な皮膜を形成するという観点から、その下限は、好ましくは20℃以上であり、好ましくは25℃以上であり、好ましくは30℃以上であり、好ましくは35℃以上である。一方、Tgの上限は、好ましくは60℃以下であり、好ましくは55℃以下であり、好ましくは54℃以下であり、好ましくは53℃以下であり、好ましくは52℃以下であり、好ましくは50℃以下である。一実施形態において、ポリ乳酸のTgは、20〜54℃又は30〜52℃であり得る。ポリ乳酸のTgは、例えば、共重合成分の割合を変化させることにより調整することができる。ポリ乳酸のTgはDSC(示差走査熱量計)法により測定した値である。
【0024】
ポリ乳酸の数平均分子量は、特に制限されないが、室温で透明な皮膜を形成するという観点から、その下限は好ましくは10,000であり、より好ましくは30,000である。一方、ポリ乳酸の数平均分子量の上限は、好ましくは、90,000であり、より好ましくは70,000である。数平均分子量がこの範囲にあることにより、ポリ乳酸が分散体の中で適当な粒径で存在し、それが良好な透明皮膜の形成に資すると考えられる。
【0025】
ポリ乳酸の数平均分子量は次の手順で測定される。濃度が0.5質量%程度となるようにポリ乳酸をテトラヒドロフランに溶解し、これを孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過する。濾過したポリ乳酸について、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Alliance GPCシステムを用いて30℃で数平均分子量を測定する。分子量標準サンプルにはポリスチレン標準物質を用いる。
【0026】
上記のような物性を満たすポリ乳酸は公知であり、例えば、特許文献1に開示される方法に従って製造することができる。合成方法としては、乳酸の二量体であるラクチドと、乳酸以外のモノマー分子を溶融混合し、公知の開環重合触媒(例えばオクチル酸スズ、アルミニウムアセチルアセトナート等)を使用して加熱開環重合させる方法や、加熱および減圧による直接脱水重縮合を行う方法等が挙げられる。また、乳酸の二量体であるラクチドのみを用いて合成することもできる。
【0027】
ポリ乳酸含有水系分散体中でのポリ乳酸の配合割合は、室温で透明皮膜が形成可能である限り特に制限されないが、例えば、重量換算で、下限は30%であり、好ましくは35%であり、上限は80%であり、好ましくは70%であり、好ましくは60%であり、好ましくは50%である。一実施形態において、ポリ乳酸の配合割合は、30〜80%又は35〜50重量%である。
【0028】
ポリ乳酸含有水系分散体は、室温での透明な皮膜形成が可能であるように、可塑剤を含有することが好ましい。そのような可塑剤としては、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの任意の混合物からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。これらはいずれも商業的に入手可能である。より好ましい可塑剤は、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、及びこれらの任意の組み合わせから成る群より選択される一種以上である。
【0029】
ポリ乳酸含有水系分散体における上記可塑剤の配合割合は、室温で透明皮膜が形成される限り特に制限されない。例えば、可塑剤は、ポリ乳酸100重量部に対して40重量部以下、好ましくは30重量部以下の割合で配合される。可塑剤の配合割合の下限は、特に制限されないが、例えば、ポリ乳酸100重量部に対して、3重量部以上、又は5重量部以上である。
【0030】
ポリ乳酸含有水系分散体は、ポリ乳酸を水系溶媒に安定的に分散させるために、分散安定化剤を含有することが好ましい。そのような分散安定化剤は、ポリ乳酸を安定的に水に分散させることができる限り特に制限されず、例えば、カチオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、ポリビニルアルコール及び非イオン性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上であり得、好ましくはアニオン性高分子化合物、及び非イオン性界面活性剤から成る群より選択される1種以上である。これらの分散安定化剤として用いる高分子化合物の平均分子量は特に制限されず、例えば、5000以上であり、好ましくは1万以上である。好適な一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを含まないことが好ましい。
【0031】
分散安定化剤として用いることができるカチオン性高分子化合物としては、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のカチオン性アクリル系モノマー、これらカチオン性アクリル系モノマーにハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸、モノクロル酢酸等を反応して得られる、例えばメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチルジメチル硫酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノプロピルクロル酢酸塩等の4級アンモニウム塩等の単独重合体や共重合体が挙げられる。また、上記カチオン性アクリル系モノマーと、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸ポリオキシエチレンエステル、アクリル酸アルコキシポリオキシエチレンエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ポリオキシエチレンエステル、メタクリル酸アルコキシポリオキシエチレンエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、モルホリルアクリルアミド等のアクリルモノマー、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、テトラエチレングリコールアリルエーテル、メトキシエチレングリコールアリルエーテル等のアリルエーテル類、酢酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、メチルビニルイミダゾール等のビニルアミン類、ジアリルアンモニウムクロライド、或いは上記カチオン性アクリル系モノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体等のアクリル系ポリマーが挙げられる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのカチオン性高分子化合物から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのカチオン性高分子化合物から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0032】
分散安定化剤として用いることができる他のカチオン性高分子化合物としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン等の環状イミンの重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の不飽和アミンの重合体等、これらの4級アンモニウム塩等のカチオン系ポリマーが挙げられる。また、これらのカチオン系ポリマーに、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ポリオキシアルキレン基、及びカルボキシアルキル基等から成る群より選択される一種以上が付加したポリマーを用いることもできる。アルキル基はアルキルハライドをカチオン系ポリマーと反応さることで付加することができる。ヒドロキシアルキル基は1,2−エポキシアルカンをカチオン系ポリマーと反応さることで付加することができる。アシル基は、脂肪酸またはアシルハライドをカチオン系ポリマーと反応さることで付加することができる。ポリオキシアルキレン基は酸化エチレンをカチオン系ポリマーと反応さることで付加することができる。カルボキシアルキル基はモノクロル酢酸及び/又はアクリル酸等をカチオン系ポリマーと反応さることで付加することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのカチオン性高分子化合物から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのカチオン性高分子化合物から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0033】
カチオン性高分子化合物は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸等の二塩基酸類、並びに、これら二塩基酸類のアルキルエステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートグリシジルエーテル、及びジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びオルソフタル酸ジグリシジルエーテル等のジエポキシ類、ソルビタンポリグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、尿素、グアニジン類、二塩基酸ジハライド、及びジアルデヒド等で架橋したものでも良い。
【0034】
カチオン性高分子化合物が、カチオン性アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体である場合、カチオン性高分子化合物を構成するモノマー分子におけるカチオン性アクリル系モノマーの含有率は30モル%以上であることが好ましい。
【0035】
一実施形態において好ましいカチオン性高分子化合物は、(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)共重合体、(エチレンジアミン/ダイマージリノール酸ステアリル)共重合体、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウム、(メタクリル酸ジエチルアミノエチル/HEMA/メタクリル酸パーフルオロヘキシルエチル)クロスポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、(ステアリン酸アリル/VA)コポリマー、及びこれらの任意の組み合わせから成る群より選択される1種以上である。
【0036】
カチオン性高分子化合物は、通常、適当な酸性化合物の塩の形態で用いるのが好ましい。酸性化合物としては、塩酸、硫酸、蟻酸、リン酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、乳酸等の有機酸を挙げることができる。これらの酸性化合物及びその任意の組み合わせから成る群より選択される一種以上を使用することができる。安全性、価格、熱安定性、及び着色性等の観点から好ましい酸性化合物は、酢酸、リン酸、及び乳酸、並びにこれらの組み合わせから成る群より選択される1種以上である。
【0037】
一実施形態において好ましいカチオン性高分子化合物は、アクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、及びこれらの中和物等のモノマー、並びにこれらモノマーの4級塩から成る群より選択される少なくとも一種を主モノマー単位成分とするポリマーである。
【0038】
分散安定化剤として用いることができるアニオン性高分子化合物としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系モノマー、不飽和ジカルボン酸系モノマー、及び不飽和スルホン酸系モノマー等から成る群より選択されるモノマーで構成されるホモポリマー、前記モノマーの任意の組み合わせからなる共重合体、前記モノマーと共重合可能な他のモノマー(以下、単に「他のモノマー」と呼ぶ。)との共重合体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、これらの酸の中和物、及び部分中和物等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸系モノマーとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、これらの酸の中和物、及び部分中和物等が挙げられる。不飽和スルホン酸系モノマーとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、これら酸の中和物、及び部分中和物等が挙げられる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのアニオン性高分子化合物から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのアニオン性高分子化合物から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0039】
上記他のモノマーとしては、特に制限されないが、例えば(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアミド、及びt−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、2−メチルスチレン、及び酢酸ビニル等の疎水性モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、ポリエチレングリコールモノプレノールエステル、ポリプロピレングリコールモノプレノールエステル、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、ポリエチレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノアリルエーテル、及びビニルアルコール等の水酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等のリン含有モノマー、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びエトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0040】
アニオン性高分子化合物は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸等の二塩基酸類、並びに、これら二塩基酸類のアルキルエステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートグリシジルエーテル、及びジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びオルソフタル酸ジグリシジルエーテル等のジエポキシ類、ソルビタンポリグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、尿素、グアニジン類、二塩基酸ジハライド、及びジアルデヒド等で架橋したものでも良い。
【0041】
アニオン性高分子化合物は、通常、適当な塩基性化合物の塩の形態で用いることが好ましい。このような塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、モノエタノールアミン、及びジイソプロパノールアミン等のアミン化合物、並びにアンモニア等を挙げることができる。これらの酸性化合物及びその任意の組み合わせから成る群より選択される一種以上を使用することができる。
【0042】
一実施形態において好ましいアニオン性高分子化合物は、メタクリル酸又はその中和物を主モノマー単位成分とするポリマーである。
【0043】
分散安定化剤として用いる非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコール、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等を挙げることができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの非イオン性界面活性剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0044】
上述する分散安定化剤は、ポリ乳酸を安定的に水に分散させることができる限り、1種のみを用いても2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。一実施形態において、ポリ乳酸をより安定に分散させるという観点から、分散安定化剤は、カチオン性高分子化合物及び/又はアニオン性高分子化合物と非イオン性界面活性剤とを併用することが好ましい。一実施形態において、(A)アニオン性高分子化合物と(B)非イオン性界面活性剤との配合割合は、例えば、重量換算で、(A):(B)=4:1〜0.1:99.9であり、好ましくは1:1〜0.5〜9.5である。
【0045】
ポリ乳酸含有水系分散体における分散安定化剤の配合割合は、ポリ乳酸を水系溶媒中に安定的に分散させることができる限り特に制限されない。例えば、分散安定化剤の配合割合の下限は、ポリ乳酸100重量部に対して0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であり、上限は20重量部以下、好ましくは10重量部以下である。
【0046】
ポリ乳酸含有水系分散体に含有される水の種類は特に制限されず、ポリ乳酸含有水系分散体の使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、水道水、並びに、RO水、脱イオン水、蒸留水、及び精製水等の純水から適宜選択して使用することができる。
【0047】
ポリ乳酸含有水系分散体に含有される水の量は、ポリ乳酸を安定に分散させることが可能であり、常温で透明な皮膜が形成可能である限り特に制限されない。例えば、水は、水系分散体全量の30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%である。
【0048】
一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体においてポリ乳酸は略球形で分散しており、その平均粒径は、室温で透明な皮膜を形成するという観点から、好ましくは3μm未満であり、好ましくは2.5μm未満であり、好ましくは2μm未満であり、好ましくは1.5μm未満であり、好ましくは1.0μm未満である。平均粒径の下限は特にないが、例えば、0.01μm以上である。このような粒径を有する分散したポリ乳酸は、上述する好ましい物性を有するポリ乳酸、分散安定化剤、及び可塑剤を組み合わせて使用することによって得られる。
【0049】
分散したポリ乳酸の平均粒径は、水系分散体の製造直後に粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所株式会社性:LA−910型粒度分布測定装置)にて測定できる。
【0050】
一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体の粘度は、室温で透明な皮膜を形成するという観点から、好ましくは100mPa・s以上であり、好ましくは150mPa・s以上である。粘度の上限は、例えば、1000Pa・s以下、好ましくは900Pa・s以下、好ましくは800Pa・s以下、好ましくは700Pa・s以下、好ましくは600Pa・s以下、好ましくは500mPa・s以下、好ましくは450mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下である。なお、粘度は、B型粘度計で測定できる。
【0051】
一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、化粧料(例えば、ネイルマニキュア)に適した性質を有することが好ましい。例えば、ポリ乳酸含有水系分散体は、爪に塗布した際に室温で3分以内(好ましくは2分以内)に透明且つ艶のある皮膜を形成可能な性質を有することが好ましい。また、このようにして爪上に形成される皮膜は、除光液等を用いなくても水(又は温水)で簡単に洗い流すことができる性質を有することが好ましい。
【0052】
ポリ乳酸含有水系分散体は、その使用目的等に応じて、更に任意の成分を含有することができる。例えば、ポリ乳酸含有水系分散体は、増粘剤、表面平滑剤、流動性調製剤等を含有することができる。増粘剤としては、ポリエチレングリコール等のポリアルコキシド系高分子、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉誘導体、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム等のガム類、カゼイン、キトサン、キチン等の動物性高分子等が挙げられる。表面平滑剤としては、天然ワックス、及び合成ワックス等のワックス類等を挙げることができる。天然ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、及び木ろう等の植物系天然ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系天然ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系天然ワックス、並びに、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス等の石油系天然ワックス等が挙げられる。合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素類、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等が挙げられる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの成分から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの成分から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0053】
爪被覆剤は、ポリ乳酸含有水系分散体のみから成っていても良いが、ポリ乳酸含有水系分散体と他の成分とを混合することによって得ることもできる。なお、他の成分と混合する場合の該水系分散体の化粧料への配合量は、例えば、化粧料全量に対して下限は1%であり、好ましくは10%であり、上限は90%であり、好ましくは80%である。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、有機溶媒を実質的に含んでいないことが好ましい。ここで、実質的に含んでいないとは、例えば、ポリ乳酸又はポリ乳酸含有水系分散体の製造過程で使用された有機溶媒が不可避的に残留する量(例えば、重量換算で300ppm以下、好ましくは200ppm以下、好ましくは100ppm以下)を許容することを意味する。一実施形態(例えば、マニキュアの形態)において、ポリ乳酸含有水系分散体は、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、n−ブタノール、及びイソドデカンから成る群より選択される一種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、n−ブタノール、及びイソドデカンから成る群より選択される一種以上の有機溶媒を実質的に含んでいないことが好ましい。
【0054】
爪被覆剤には、上述する成分の他、化粧料に通常用いられる成分を化粧料の種類に応じて適宜配合することができる。例えば、無機粉体、有機粉体、有機顔料、パール顔料などの粉体;油脂、ロウ類、炭化水素、シリコーン類、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸などの油性成分;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤の各種界面活性剤;低級アルコール、多価アルコール、糖類、ステロール類などのアルコール類;増粘剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤;防腐剤;動植物抽出物、酸・アルカリなどの添加成分を例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの添加成分から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの添加成分から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0055】
無機粉体としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、窒化ホウ素、ヒドロキシアパタイト、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、群青ピンク、紺青、酸化クロム、酸化コバルト、カーボンブラック、アルミナなどを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの無機粉体から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの無機粉体から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0056】
有機粉体としては、例えば、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、シリコーンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、アクリルパウダー、ラウロイルリジン、スチレン・アクリル酸共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの有機粉体から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの有機粉体から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0057】
有機顔料としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色223号、赤色226号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色505号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色201号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色402号、黄色403号、黄色404号、黄色405号、黄色406号、黄色407号、緑色3号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、緑色402号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、青色205号、青色403号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、紫色201号、紫色401号、黒色401号などを例示することができる。尚、有機顔料としては、上記した酸性染料、塩基性染料などの染料の他、染料のアルミニウムなどのレーキ顔料などであっても良い。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの有機顔料から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの有機顔料から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0058】
パール顔料としては、例えば、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆雲母チタン、酸化チタン被覆シリカ、(PET/ポリオレフィン)ラミネート、(PET/Al/エポキシ樹脂)ラミネート、ホウケイ酸(Ca/Na)などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのパール顔料から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのパール顔料から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0059】
油性成分としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油などの油脂;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワレン、スクワランなどの炭化水素;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのシリコーン類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセロール、2−エチルヘキサン酸ジグリセリドなどの脂肪酸エステル;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの油性成分から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの油性成分から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0060】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油およびこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類などの非イオン界面活性剤;高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、N−アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩などの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩などのアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩などのアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などの環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼエトニウムなどの陽イオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩などのグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩などのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの界面活性剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの界面活性剤から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0061】
アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;1,3−ブタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類;ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、キシリトール、ラクトース、トレハロースなどの糖類;コレステロール、フィトステロールなどのステロール類などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのアルコール類から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらのアルコール類から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0062】
増粘剤としては、例えば、ベントナイト、スメクタイトの他、バイデライト系、ノントロナイト系、サポナイト系、ヘクトライト系、ソーコナイト系、スチーブンサイト系などの粘度鉱物;カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、デキストラン、アミロース、アミロペクチン、アガロース、プルラン、コンドロイチン硫酸、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニル系高分子などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの増粘剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの増粘剤から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0063】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステルなどの安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸メチル、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレートなどのアントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸メチルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;パラメトキシケイ皮酸オクチル、エチル−4−イソプロピルシンナメートなどのケイ皮酸系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ベンジルサリシレートなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルなどのウロカニン酸系紫外線吸収剤などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの紫外線吸収剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの紫外線吸収剤から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0064】
酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類、亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、チオ乳酸、チオグリコール酸、L−システイン、N−アセチル−L−システインなどを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの酸化防止剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの酸化防止剤から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0065】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸塩、リン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、アラニン、シュウ酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−四酢酸、N−オキシエチルエチレンジアミン−三酢酸、エチレングリコールビス−四酢酸、エチレンジアミン−四プロピオン酸、1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸などを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの金属イオン封鎖剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これら金属イオン封鎖剤から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0066】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン液、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール、石炭酸、ヘキサクロロフェンなどのフェノール類、安息香酸およびその塩、ウンデシレン酸、サリチル酸、ソルビン酸およびその塩、デヒドロ酢酸およびその塩、感光素101号、感光素201号、感光素401号、ヒノキチオール、トリクロサンなどを例示することができる。一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これらの防腐剤から成る群より選択される1種以上を含有することが好ましい。他の実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体は、これら防腐剤から成る群より選択される1種以上を含有しないことが好ましい。
【0067】
一実施形態において、ポリ乳酸含有水系分散体に含まれる成分は、天然由来のものが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0069】
製造例1:ポリ乳酸A
L−ラクチド120g、DL−ラクチド80g、エチレングリコール0.3g、アセトアセチルアルミニウム180mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間反応させた後、減圧によりラクチドモノマーを除去し、ポリ乳酸Aを作製した。
【0070】
製造例2:ポリ乳酸B
L−ラクチド120g、DL−ラクチド80g、エチレングリコール0.1g、オクチル酸スズ36mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間反応させた後、減圧によりラクチドモノマーを除去し、ポリ乳酸Bを作製した。
【0071】
製造例3:ポリ乳酸C
L−ラクチド120g、DL−ラクチド80g、イセチオン酸ナトリウム1.1g、オクチル酸スズ36mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間反応させた後、減圧によりラクチドモノマーを除去し、ポリ乳酸Cを作製した。
【0072】
製造例4:ポリ乳酸D
L−ラクチド108g、DL−ラクチド72g、カプロラクタム20g、ソルビトール1.0g、オクチル酸スズ37mgをフラスコ内に加え、窒素雰囲気下、180℃で3時間反応させた後、減圧によりラクチドモノマーを除去し、ポリ乳酸Dを作製した。
【0073】
試験例1:ポリ乳酸の物性
ポリ乳酸A〜Dの数平均分子量、ガラス転移温度(Tg)、比重、還元粘度、ポリ乳酸を構成するL−ポリ乳酸とD−乳酸のモル比率(L/D)、及びポリ乳酸を構成する総モノマーに占める乳酸モノマーのモル比率(乳酸率)を測定した。これらの測定方法は、下記の通りである。また、測定結果を下記表1に示す。
【0074】
数平均分子量の測定方法
濃度が0.5質量%程度となるように各ポリ乳酸をテトラヒドロフランに溶解し、これを孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過した。ろ過したポリ乳酸について、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Alliance GPCシステムを用いて30℃で数平均分子量を測定した。分子量標準サンプルにはポリスチレン標準物質を用いた。
【0075】
Tgの測定方法
5mgの各ポリ乳酸をアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量分析計「DSC−220」を用いて、一旦、昇温速度20℃/分で−20℃から120℃まで昇温し、任意の速度で冷却後、昇温速度10℃/分で−20℃から120℃まで昇温して、DSC曲線を測定した。得られた中点法によりガラス転移温度(Tg)を決定した。
【0076】
還元粘度の測定方法
0.1gの各ポリ乳酸をフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶かし、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
【0077】
比重の測定方法
各ポリ乳酸を適当量はかりとり、電子比重計SD−200Lを用いて30℃で測定した。
【0078】
D−乳酸とL−乳酸とのモル比(L/D)の測定方法
各ポリ乳酸を純水、1N水酸化ナトリウム及びイソプロピルアルコールの混合溶媒に添加し、70℃で加熱攪拌して加水分解した。これを濾過し、濾液中の固形分を除去した後、硫酸を加えて中和し、L−乳酸及びD−乳酸を含有する水溶液を得た。この水溶液を試料として、キラル配位子交換型のカラム(SUMICHIRAL OA−5000(株式会社住化分析センター製))を用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いてL−乳酸及びD−乳酸の量を測定した。L−乳酸由来のピーク面積とD−乳酸由来のピーク面積の比率より、モル比(L−乳酸/D−乳酸)を算出した。
【0079】
総モノマーに占める乳酸モノマーのモル比率の測定方法
ポリ乳酸15mgを0.5mLの重クロロホルムに溶解し、400MHzの核磁気共鳴(NMR)スペクトル装置(Varian製)を用いてプロトンの積分値を求め、それに基づいて乳酸モノマーのモル比率を求めた。測定条件は、室温、d1=26sであった。
【0080】
【表1】
【0081】
製造例5:ポリ乳酸含有水系分散体
ポリ乳酸Aを50g量り取り、100gの酢酸エチルに溶解した。この溶液に、0.3gのアクリルアミド/メタクリル酸コポリマー、及び15gの下記表1に示す各種可塑剤のいずれか、及び脱イオン水を62.5g加え、高圧分散機に仕込み、120℃に加熱して10,000rpmで3分間撹拌した後、40℃に冷却した。その後、加温濃縮にて酢酸エチルを除去してポリ乳酸Aが分散した水系分散体を得た。得られたポリ乳酸A含有水系分散体の固形分含量は、47.4重量%であり、平均粒径は0.5μmであり、粘度は330mPa・sである、pHは2.4であった。
【0082】
試験例2:製膜性評価
製造例5で得られたポリ乳酸A含有水系分散体をポリプロピレン板に塗布し、100μmの厚みとなるようにアプリケーターを用いて広げ、20、25、30、40、又は75℃で放置し60分後に製膜の有無、並びに、膜の透明性及びつやを評価した。これらの測定結果を下記表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2において、○は透明な膜が形成されたことを意味し、△は若干透明感がある白い膜が形成されたことを示し、×は透明感のない真っ白な膜が形成されたことを意味する。興味深いことに、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、又はセバシン酸ジイソプロピルを用いた場合にのみ室温で透明な皮膜が形成された。膜が形成されたポリプロピレン版の下に黒文字(文字サイズ14pt)が書かれた白い紙を敷き、文字がはっきり確認できる場合を透明と判断した。膜に光沢が確認された場合に、つやがあると判断した。尚、表2において、*は、ポリ乳酸に使用可能な可塑剤として市販されている「DAIFATTY-101」(大八化学工業株式会社製)である。
【0085】
試験例3:製膜性評価
アクリルアミド/メタクリル酸コポリマーに代えてメタクリル酸ジメチルアミノエチルアクリルアミドコポリマーを用いた以外は、上記の製造例5と同様にしてポリ乳酸Aが分散した水系分散体を作製した。得られたポリ乳酸A含有水系分散体の固形分含量は、48.9重量%であり、平均粒径は0.5μmであり、粘度は398mPa・sである、pHは2.6であった。得られたポリ乳酸A含有水系分散体について上記試験例2と同様に製膜性を評価した。その結果を下記表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
上記の通り、試験例2の場合と同様の結果が得られた。即ち、可塑剤として、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、又はセバシン酸ジイソプロピルを用いた場合にのみ室温で透明な皮膜が形成された。
【0088】
試験例4:製膜性評価
アクリルアミド/メタクリル酸コポリマーに代えてアクリル酸ジメチルアミノエチル/アクリルアミド/メタクリルアミドを用いた以外は、上記の製造例5と同様にしてポリ乳酸Aが分散した水系分散体を作製した。得られたポリ乳酸A含有水系分散体について上記試験例2と同様に製膜性を評価した。その結果、試験例2及び3と同様の結果が得られた。即ち、可塑剤として、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、又はセバシン酸ジイソプロピルを用いた場合にのみ室温で透明な皮膜が形成された。
【0089】
試験例5:製膜性評価
ポリ乳酸Aをポリ乳酸Bに変更した外上記の製造例5と同様にしてポリ乳酸Aが分散した水系分散体を作製した。得られたポリ乳酸B含有水系分散体について上記試験例2と同様に製膜性を評価した。その結果、試験例2及び3と同様の結果が得られた。即ち、可塑剤として、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、又はセバシン酸ジイソプロピルを用いた場合にのみ室温で透明な皮膜が形成された。尚、ポリ乳酸Aをポリ乳酸C又はDに変更した場合も同様の結果が得られた。
【0090】
試験例6:製膜性評価
ポリ乳酸Aを下記表4に示す物性を満たすポリ乳酸F又はGに変更した外上記の製造例5と同様にしてポリ乳酸Aが分散した水系分散体を作製した。得られたポリ乳酸F又はG含有水系分散体について上記試験例2と同様に製膜性を評価した。その結果、表2に示すいずれの可塑剤を用いた場合も、室温で膜形成は見られず分散体が乾燥した白い固形物が形成され、透明な膜を得ることはできなかった。
【0091】
【表4】
【0092】
試験例6:爪上での製膜性評価
製造例5で得られたポリ乳酸A含有水系分散体(可塑剤としてアジピン酸ジイソプロピルを使用)をパネラーの爪に塗布し、2分間放置した後、製膜の有無を試験例2と同様に評価した。その結果、透明且つ艶のある膜の形成が確認された。
【0093】
試験例7:爪被覆剤の物性
製造例5で調製したポリ乳酸A及びアジピン酸ジイソプロピルを含有する水系分散体(以下、「分散体A」)、試験例6で調製したポリ乳酸Fを含有する水系分散体(以下、「分散体F」)及びポリ乳酸Gを含有する水系分散体(以下、「分散体G」)、下記表5に示す成分を混合し、均一に分散させた水系分散体(以下、「分散体X」)、及び、有機溶剤系の爪被覆剤である「ベースコート」(ちふれ社製)について、下記評価項目1〜8について評価した。いずれの評価も10名の女性パネラーを用いて行った。
【0094】
【表5】
【0095】
「ベースコート」(ちふれ社製)には、次の成分が含まれる:ニトロセルロース(12.28%)、無水フタル酸/無水トリメリト酸/グリコールズ)コポリマー(6.09%)、クエン酸アセチルトリブチル(9.57%)、シリカ(2.01%)、ステアラルコニウムヘクトライト(1.28%)、酢酸エチル(18.84%)、イソプロパノール(5.70%)、酢酸ブチル(約53%)。
【0096】
評価項目1:乾燥時間
マニキュア用の刷毛を用いて各試料を爪上に塗布し、乾燥して皮膜が形成されるまでの時間を測定した。下記(イ)の評価基準により評価を行い、全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:2分未満
4点:2分以上3分未満
3点:3分以上4分未満
2点:4分以上5分未満
1点:5分以上
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0097】
評価項目2:塗布時の透明性
マニキュア用の刷毛を用いて各試料を爪上に塗布し、5分間乾燥させた後、形成された皮膜の「透明性」について下記(イ)の評価基準により評価した。得られた全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:透明度が高く光沢がある。
4点:透明度が高いがやや光沢がない。
3点:やや透明性が下がり、やや光沢もない。
2点:やや透明性が下がり、光沢がない。
1点:透明性がなく、光沢もない。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0098】
評価項目3:表面のべたつき感
マニキュア用の刷毛を用いて各試料を爪上に塗布し、5分間乾燥させた後に爪表面を指で触り、皮膜表面の「べたつき感」を下記(イ)の評価基準により評価した。全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:べたつきがなく皮膜表面を触っても変化がない。
4点:わずかにべたつきがあるが皮膜表面を触っても変化がない。
3点:ややべたつきがあり、わずかに皮膜表面に指紋がつく。
2点:べたつきがあり、皮膜表面にはっきりと指紋が残る。
1点:べたつきがあり、指先に皮膜成分がつく。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0099】
評価項目4:耐水性
マニキュア用の刷毛を用いて各試料を爪上に塗布し、5分間乾燥させた後、約10秒間流水に爪を晒し、「耐水性」について下記(イ)の評価基準により評価した。全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:皮膜が全く変化しない。
4点:水に濡れているときは皮膜に若干ふやけなどの変化があるが、乾いた後は
元に戻っている。
3点:水に濡れているときは皮膜に若干ふやけなどの変化があり、しばらくした後に皮膜の一部が剥がれるなど軽微な変化がある。
2点:水に濡れているときは皮膜に若干ふやけなどの変化があり、しばらくした後皮膜の剥がれ、皮膜表面の透明性が低下するなど変化が起こる。
1点:水に濡れた途端皮膜が剥がれる。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0100】
評価項目5:水での落としやすさ
マニキュア用の刷毛を用いて各試料を爪上に塗布し、塗布から5分間乾燥させた後、指先を42℃の水に30秒間浸漬後、指先で爪表面を軽くこすった。皮膜が剥離しない場合はさらに42℃の水に30秒間浸漬した後、指先で爪表面を軽くこすった。皮膜が剥離しない場合は爪表面を皮膜の端を爪で引っ掻いた。それでも皮膜が剥離しない場合はエタノールまたはアセトンを湿らせた脱脂綿でこすった。このようにして皮膜の剥がし易さを下記(イ)の評価基準により評価し、全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:42℃の水に30秒間1回浸漬し、軽くこすっただけで皮膜が剥がれた。
4点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、軽くこすることにより皮膜が剥がれた。
3点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、爪で皮膜を引っ掻くことにより皮膜が剥がれた。
2点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、爪で皮膜を引っ掻いても皮膜が残り、エタノールでふき取った。
1点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、爪で皮膜を引っ掻いても皮膜が残り、アセトンでふき取った。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0101】
評価項目6:剥離後の爪の状態(色味、凹凸)
評価項目5の手順に従って、各試料を用いて爪上に皮膜を形成し、それを剥離した。剥離から30分ほど経ってから「剥離後の爪の状態」について下記(イ)の評価基準により評価した。全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:塗布前と比べ爪表面の状態に変化がない。
4点:塗布前と比べ爪表面の色味がわずかに白っぽくなった。
3点:塗布前と比べ爪表面の状態がわずかに白っぽくなりわずかにスジが入った。
2点:塗布前と比べ爪表面の状態がやや白っぽくなりやや凹凸ができた。
1点:塗布前と比べ爪表面の状態が白っぽくなり凹凸ができた。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0102】
評価項目7:有機溶剤系爪被覆剤を上に塗布した際の表面の色ムラ
マニキュア用の刷毛を用いて各試料を爪上に塗布し、5分間乾燥させた後、その上に有機溶剤系爪被覆剤(「ネイルエナメル」ちふれ社製)を塗布した。5分以上放置し、皮膜を形成させ表面の状態を下記(イ)の評価基準により評価した。全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:色ムラがなく表面が均一。
4点:わずかに色ムラや表面に凹凸がある。
3点:表面の一部にやや色ムラや表面に凹凸がある。
2点:やや色ムラや表面に凹凸がある。
1点:色ムラや表面に凹凸がある。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0103】
評価項目8:有機溶剤系爪被覆剤を上に塗布した際の落としやすさ
評価項目7と同様にして、各試料で形成した皮膜上に、有機溶剤系爪被膜剤(「ネイルエナメル」ちふれ社製)を塗布し皮膜を形成した。その後、評価項目5の手順に従って皮膜を剥離した。有機溶剤系爪被覆剤による皮膜が積層された状態での皮膜の落としやすさを下記(イ)の評価基準により評価した。全パネルの評点の平均値を下記(ロ)の判定基準に従って判定した。
(イ)評価基準
5点:42℃の水に30秒間1回浸漬し、軽くこすっただけで皮膜が剥がれた。
4点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、軽くこすることにより皮膜が剥がれた。
3点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、爪で皮膜を引っ掻くことにより皮膜が剥がれた。
2点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、爪で皮膜を引っ掻いても皮膜が残り、エタノールでふき取った。
1点:42℃の水に30秒間浸漬する操作を2回行った後、爪で皮膜を引っ掻いても皮膜が残り、アセトンでふき取った。
(ロ)判定基準
◎:4.5点以上5点以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0104】
評価結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
処方例1:ネイルマニキュア
製造例5のポリ乳酸A含有水系分散体(可塑剤は、アジピン酸ジメチル)を用いて下記処方のネイルマニキュアを下記製造方法で作製した。各成分の配合割合は質量%である。
(1)精製水 15.1
(2)1,3−ブチレングリコール 1.0
(3)合成ヘクトライト(注1) 0.3
(4)キサンタンガム 0.3
(5)防腐剤 0.3
(6)製造例5のポリ乳酸A含有水系分散体 80.0
(7)合成雲母チタン(注2) 3.0
計 100.0
(注1):LAPONITE XLS(ROCKWOOD社製)
(注2):DK PEARL−SY SILVER(大東化成工業社製)
【0107】
製造方法:成分(1)から(5)を均一に溶解したあと、成分(6)、ついで成分(7)を加えた。よく混合した後、容器に充填して製品を得た。