【実施例1】
【0017】
図1に示されるように、シール貼付装置10は、長尺のシールSをワークWに貼付ける装置であり、シール送出装置20及びロボットアーム30を備える。シールSは、発泡性の樹脂を用いて形成されており、ワークWが最終製品に取り付けられたときに、他部品との間の密閉性を高め、熱、水、音などの侵入を防ぐためのものである。
【0018】
シール送出装置20は、作業空間内の固定された貼付け位置PにシールSを送り出すように構成されている。ロボットアーム30は、6個の関節軸を有する多関節型であり、ワークWを保持するロボットハンド32を有する。ロボットアーム30は、ワークWを保持するとともにワークWを貼付け位置Pに対して相対移動させるように構成されている。ロボットアーム30は、シールSを貼付ける予定のワークW上のシール貼付領域が貼付け位置Pに順次現れるように、ワークWを貼付け位置Pに対して相対移動させる。これにより、ワークW上のシール貼付領域にシールSが連続的に貼り付けられる。
【0019】
図2に示されるように、シール送出装置20は、本体部40、シール貼付部50、振り子駆動部60、剥離紙回収パイプ70、吸引ブロア80及び剥離紙回収タンク90を有する。本体部40は、貼付け位置Pの近傍にシール貼付部50を支持するように構成されており、旋回装置42、支持部44、本体プレート46及びシール保持用トレイ48を有する。シール貼付部50は、本体部40の本体プレート46に振り子揺動可能に係合されており、シールSを案内して貼付け位置Pに送り出すように構成されている。振り子駆動部60は、本体部40の本体プレート46に対するシール貼付部50の振り子揺動を駆動するように構成されている。剥離紙回収パイプ70は、シール吸入口が貼付け位置Pの近傍に開口し、シール排出口が剥離紙回収タンク90内に開口するように伸びている。吸引ブロア80は、剥離紙回収パイプ70のシール吸入口からシール排出口に送風するように構成されており、シール貼付部50から送り出されたシールSの一方の面を被覆する剥離紙をシール吸入口から吸引し、シール排出口から剥離紙回収タンク90に排出する。剥離紙回収タンク90は、シールSの剥離紙を回収するように構成されている。
【0020】
本体部40の旋回装置42は、貼付け位置Pを通過する旋回軸回りに本体部40の支持部44を旋回させるように構成されている。この例では、旋回装置42の旋回軸が鉛直方向に伸びている。
図3に、旋回装置42の要部斜視図を示す。旋回装置42は、中空軸部142、ピニオン144及び旋回用サーボモータ146を有する。中空軸部142は、その外周面に歯車142aが形成されている。中空軸部142の上面には図示省略の支持部44の一端が固定されている。ピニオン144は、中空軸部142の歯車に噛み合うように構成されており、旋回用サーボモータ146で駆動される。このように、本体部40の支持部44は、旋回用サーボモータ146の駆動により旋回軸回りに旋回することができる。剥離紙回収パイプ70の一部が、旋回軸に沿って中空軸部142の中空内を通過するように伸びている。このような構成により、旋回装置42によって支持部44が旋回した場合でも、中空軸部142よりも下流側(剥離紙回収タンク90側)の剥離紙回収パイプ70の位置を安定させることができる。
【0021】
図2に示されるように、本体部40の支持部44は、旋回軸方向に沿って伸びる支柱45を有する。支柱45の貼付け位置P側の端部に本体プレート46が固定されている。本体プレート46は、略平板状の形態を有しており、後述する振り子駆動部60の構成要素の一部が固定されるとともに、シール貼付部50が振り子揺動可能となるように係合されている。
【0022】
シール保持用トレイ48は、上面が開放した略箱状の形態を有しており、シール貼付部50に供給する未使用のシールSを保持するように構成されている。シール保持用トレイ48は、支持部44に固定されており、支持部44の旋回に追随して旋回する。このため、旋回装置42によって支持部44が旋回した場合でも、未使用のシールSが絡まる等の不具合の発生が抑えられる。
【0023】
図4及び
図5に示されるように、シール貼付部50は、貼付け位置Pに対するシールSの送出方向が調整されるように、貼付け位置Pを振り子支点とする単一面内の振り子軌道を振り子揺動可能に構成されており、振り子プレート51、シール押付シリンダ52及びローラ駆動用サーボモータ53を有する。さらに、
図6に示されるように、シール貼付部50は、送出ローラ54及びガイドローラ55を有する。
【0024】
図4及び
図5に示されるように、振り子プレート51は、略平板状の形態を有しており、本体プレート46から所定距離隔てて配置されているとともに、本体プレート46に対して平行に延びている。振り子プレート51と本体プレート46の双方に平行な面は、シール貼付部50の振り子軌道を含む面にも平行であり、以下、振り子軌道面ともいう。
【0025】
シール押付シリンダ52は、シール貼付部50からシールSが貼付け位置Pに向けて送り出される送出口に隣接して設けられている。シール押付シリンダ52は、伸縮運動可能に構成されており、貼付け位置PにあるシールSをワークWに向けて付勢し、シールSがワークWに良好に貼付けられるように構成されている。
【0026】
ローラ駆動用サーボモータ53は、振り子プレート51に固定されており、送出ローラ54を駆動する。
図6に示されるように、送出ローラ54は、ガイドローラ55に対向しており、シールSが案内される案内路に隣接する。送出ローラ54とガイドローラ55の間の案内路を通過するシールSは、送出ローラ54とガイドローラ55により圧縮されている。ローラ駆動用サーボモータ53は、送出ローラ54を回転駆動することにより、案内路を通過するシールSの長手方向のテンションを調整するように構成されている。
【0027】
図4及び
図5に示されるように、振り子駆動部60は、弧状ガイドレール62、弧状ガイドブロック64、直線駆動機構66及び一対のガイド壁68を有する。
【0028】
弧状ガイドレール62は、振り子プレート51に対向する側の本体プレート46の表面に固定されており、振り子軌道面内を伸びている。弧状ガイドレール62は、振り子軌道面に対して垂直方向から観測したときに、振り子支点である貼付け位置Pに対して同心円上を伸びており、貼付け位置Pを通過する鉛直線に対して線対称な形状を有する。弧状ガイドブロック64は、本体プレート46に対向する側の振り子プレート51の表面に固定されており、弧状ガイドレール62に係合するとともに弧状ガイドレール62に沿って摺動可能に構成されている。これにより、シール貼付部50は、弧状ガイドレール62に案内されて振り子軌道面内の振り子軌道を振り子揺動することができる。
【0029】
直線駆動機構66、ボールねじ駆動用サーボモータ102、ボールねじ104、直線状ガイドレール106及び摺動部材108を有する。ここで、ボールねじ104と直線状ガイドレール106は、直線状レールの一例である。
【0030】
ボールねじ駆動用サーボモータ102は、本体プレート46に固定されており、ボールねじ104のねじ軸104aを回転駆動する。ボールねじ104のねじ軸104aは、振り子プレート51に対向する側の本体プレート46の表面に固定されており、振り子軌道面内を水平方向に伸びている。ボールねじ104のナット104bは、ねじ軸104aの回転に応じてねじ軸104aに沿って直線移動する。
【0031】
直線状ガイドレール106は、振り子プレート51に対向する側の本体プレート46の表面に固定されており、振り子軌道面内を水平方向に伸びている。直連状ガイドレール106とボールねじ104のねじ軸104aは、平行に伸びており、弧状ガイドレール62の一方の端部側と他方の端部側の間を伸びている。直連状ガイドレール106とボールねじ104のねじ軸104aの各々は、振り子軌道面に対して垂直方向から観測したときに、振り子支点である貼付け位置Pと弧状ガイドレール62の間に配置されており、貼付け位置Pを通過する鉛直線に対して線対称な形状を有する。
【0032】
摺動部材108は、ボールねじ104のナット104bに連結されているとともに直線状ガイドレール106に沿って摺動可能に構成されている。摺動部材108は、振り子プレート51に向けて突出する突出部108aを有する。突出部108aは、円筒状の形態を有する。
【0033】
一対のガイド壁68は、振り子プレート51に固定されており、平行に延びる一対の壁で構成されている。一対のガイド壁68の間に摺動部材108の突出部108aが位置する。円筒状の突出部108aは、一対のガイド壁68の双方の側面に線接触する。
【0034】
図7A〜
図7Cに、シール貼付部50が振り子揺動する様子を概略して示す。
図7Aは、シール貼付部50が初期位置にある状態を示す。このとき、摺動部材108は、貼付け位置Pの鉛直下方に位置決めされる。シール貼付部50が初期位置にあるとき、一対のガイド壁68は鉛直方向に伸びており、摺動部材108の突出部108aがその間の上下の略中央に位置する。
図7B及び
図7Cは、シール貼付部50が初期位置から振り子軌道面内を振り子揺動した状態を示す。摺動部材108が直線状ガイドレール106に沿って直線移動すると、摺動部材108の突出部108aは、一対のガイド壁68の一方のガイド壁68の側面を摺動しながら直線移動する向きにその一方のガイド壁68の側面を押す。シール貼付部50は、この一方のガイド壁68に作用する力を利用することで、弧状ガイドレール62に案内されて振り子揺動することができる。
【0035】
図8に、ワークWの表面形状に対してシール貼付部50が振り子揺動する様子を概略して示す。なお、上記したように、シールが送り出される貼付け位置は作業空間内の固定位置である。このため、実際には、ワークWが貼り付け位置に対して相対移動することに留意されたい。
【0036】
この例では、ワークWに凸部Waが存在する。ワークW上のシール貼付領域は、矢印A1の向きに連続して伸びており、この凸部Waの表面にも伸びている。シールは、矢印A1の向きに沿ってワークW上のシール貼付領域に連続して貼り付けられていく。したがって、図示省略のロボットアームは、矢印A1の向きとは逆向きにワークWを貼付け位置に対して相対移動させる。ここで、シール貼付部50の各々に付されている矢印A2が、シール貼付部50から送出されるシールの送出方向を示す。このように、シール貼付部50が振り子揺動可能に構成されているので、シールの送出方向とワークW上のシール貼付領域の表面との成す角が適切な範囲に調整される。これにより、シールは、ワークW上のシール貼付領域に良好に貼り付けられていく。このとき、図示省略のロボットアームは、ワークWを矢印A1とは逆向きにワークを移動させるとともに、凸部Waの高さに応じてワークを紙面上向きに移動させる。例えば、シール貼付部50が振り子揺動しない場合、シールの送出方向とシール貼付領域の表面との成す角を適切な範囲に調整するためには、凸部Waの表面形状に合わせてロボットアームがワークを傾斜させるように制御しなければならない。このように、シール貼付部50が振り子揺動可能に構成されることで、ワークW上のシール貼付領域の表面形状が複雑な場合であっても、ロボットアームの動作量を軽減しながら、シールの送出方向とワーク上のシール貼付領域の表面との成す角を適切な範囲に調整することができる。
【0037】
また、上記したように、シール貼付装置10では、本体部40の支持部44が、貼付け位置を通過する旋回軸回りに旋回可能に構成されている。このため、本体部40の支持部44に係合されるシール貼付部50も、貼付け位置を通過する旋回軸回りに旋回可能に構成されている。ワークW上のシール貼付領域の長手方向が変化する部分にシールを貼り付けるときに(
図8の例では、例えばシール貼付領域の進行方向が紙面奥行方向に変化する場合)に、シール貼付部50を旋回させてシール貼付領域の進行方向を変化させることにより、そのようなシール貼付領域の長手方向の変化に対応させることができる。これにより、ロボットアームの動作量をさらに軽減させることができる。
【0038】
図9に示されるように、シール貼付装置10はさらに、制御装置202及び記憶装置204を備える。制御装置202は、ロボットアーム30、本体部40の支持部44の旋回を駆動する旋回用サーボモータ146、シール貼付部50の振り子揺動を駆動するボールねじ駆動用サーボモータ102及びシールSの長手方向のテンションを調整するローラ駆動用サーボモータ53の動作を制御する。記憶装置204は、ワークWの種類に応じてロボットアーム30及び各サーボモータ146,102,53に実行させる作業を記述したプログラムを記憶している。制御装置202は、記憶装置204に記憶されているプログラムに基づいて、ロボットアーム30及び各サーボモータ146,102,53の動作を制御する。
【0039】
制御装置202は、ワークW上のシール貼付領域の長手方向が変化する部分にシールを貼り付けるときに、送出ローラ54を回転駆動してシールを弛ませるようにローラ駆動用サーボモータ53を制御する。あるいは、制御装置202は、ワークW上のシール貼付領域の長手方向が変化する部分にシールを貼り付けるときに、シール貼付領域の長手方向の変化に対応して旋回用サーボモータ146を駆動させる直前にシールの貼り付けが進む向き側にシール貼付部50の振り子揺動を往復させてシールを弛ませるようにボールねじ駆動用サーボモータ102を制御する。あるいは、制御装置202は、これらの制御の双方を同時に又は選択的に実施してもよい。シール貼付領域の長手方向が変化する部分に貼り付けられるシールは、外周側に加わる引っ張り力によってシール剥がれが生じやすい。制御装置202は、シール貼付領域の長手方向が変化する部分にシールを貼り付けるときに、シールを弛ませることで、シールの外周側に加わる引っ張り力を緩和し、このようなシール剥がれを抑えることができる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。