特許第6827256号(P6827256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827256
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】建物の建替え方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20210128BHJP
   E04G 23/06 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   E02D29/05 A
   E04G23/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-151660(P2016-151660)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-21320(P2018-21320A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 崇文
(72)【発明者】
【氏名】安田 友彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】林 和宏
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−307688(JP,A)
【文献】 特開2001−303599(JP,A)
【文献】 特開2001−262594(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0008125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/00
E02D 29/045−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物を建て替える方法であって、
前記既存建物の既存地下外壁ならびに当該既存地下外壁に接合された一部の地下柱および地下梁を残して、切梁を架設することなく、前記既存建物の地上部から下端部までを解体する工程と、
解体した前記既存建物の下端部の地盤面に仮設柱を建て込む工程と、
前記既存建物の下端部から上方に向かって、前記既存地下外壁よりも内側の部分を解体しながら、前記既存地下外壁の内側に埋戻しを行う工程と、
前記既存地下外壁を山留壁とし、前記仮設柱で前記山留壁に切梁を架設しながら床付面まで掘削する工程と、
前記床付面上に前記新築建物の地下躯体を構築する工程と、を備えることを特徴とする建物の建替え方法。
【請求項2】
前記残した地下柱および地下梁は、前記既存地下外壁から内側に1スパン分であることを特徴とする請求項1に記載の建物の建替え方法。
【請求項3】
既存建物を建て替える方法であって、
前記既存建物の既存地下外壁ならびに当該既存地下外壁に接合された一部の地下柱および地下梁を残して、切梁を架設することなく、前記既存建物の地上部から下端部までを解体する工程と、
解体した前記既存建物の下端部の地盤面に新築建物の地下柱を建て込む工程と、
前記既存建物の下端部から上方に向かって、前記既存地下外壁よりも内側の部分を解体しながら、前記既存地下外壁の内側に埋戻しを行う工程と、
前記既存地下外壁を山留壁とし、前記新築建物の地下柱で前記山留壁に切梁を架設しながら床付面まで掘削する工程と、
前記床付面上に前記新築建物の前記地下柱以外の残りの地下躯体を構築する工程と、を備えることを特徴とする建物の建替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下躯体を有する既存建物を解体撤去した後に新築建物を構築する、建物の建替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、既存建物を新築建物に建て替えることが行われている。ここで、既存建物が敷地境界にかなり接近している場合、山留壁を敷地境界の外側に構築できないので、既存地下躯体の外壁を山留壁として利用することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、まず、既存地下躯体の外周フレームに補強用壁を形成し、この補強用壁および一部の躯体を残して既存地下躯体を地下1階から最下階まで解体する。次に、既存地下躯体に切梁を架設しながら、この切梁の直下に残した補強用壁および躯体を解体する工程を順次繰り返し行う。
次に、既存地下躯体の既存耐圧板の上から新築杭を打設し、基礎工事を行って、最下段の新築躯体を形成する。新築躯体の外周部に仮設スラブを形成した後、仮設スラブの直上の切梁を解体し、次に、新築躯体の上に次段の新築躯体を形成し、新築躯体の外周部に仮設スラブを形成し、仮設スラブの直上の切梁を解体する工程を順次繰り返し行う。
【0004】
特許文献2では、既存建物の既存地下躯体の内部に擁壁を構築し、この擁壁と既存地下躯体の外周壁との間に解体ガラやコンクリートを充填することで、既存地下躯体の外周壁に作用する土圧を擁壁で支持する。この状態で、新築建物の地下躯体を擁壁の内側に構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−163074号公報
【特許文献2】特開2006−266036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の建て替え方法では、外周部の一部の躯体を残して既存地下躯体を解体した後、既存地下躯体の内側に切梁を架設しながら、この切梁の直下に残した補強用壁および躯体を解体する。したがって、切梁が解体作業の障害となるため、工期が長期化するおそれがあった。
また、特許文献2の建て替え方法では、既存建物の外周壁と新築建物の外周壁との間に擁壁を構築するため、平面視で、新築建物の地下躯体を、既存建物の地下躯体よりもかなり小さくする必要があった。
【0007】
本発明は、工期が長期化するのを防ぐとともに、平面視で新設地下躯体が既存躯体よりも小さくなるのを極力防止できる、建物の建替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、建物の建替え方法として、新たに新築建物用の山留壁を構築し、その山留壁間に切梁を設けて既存地下躯体を解体して撤去していくのではなく、既存地下躯体(地下外壁、地下柱、地下梁)の一部を存置し、既存地下躯体の中央部の梁およびスラブならびに外周部のスラブを解体して撤去した後、撤去した既存地下躯体部分と、存置した既存地下躯体の地下柱および地下梁を解体して撤去した部分に、既存地下躯体の最下階から地上階側に向って土を埋戻していくことで、短工期かつ低コストで建物を建て替える方法を発明するに至った。
【0009】
具体的には、既存建物の既存地下躯体の解体および撤去の方法として、既存地下外壁とその既存地下外壁に接合された地下柱、地下梁、あるいは既存地下外壁と接する床の一部を存置し、側方土圧に抵抗できるように、既存地下外壁、一部の地下柱、および一部の地下梁でバットレス架構体を形成する。そして、地下の最下階まで1次解体を行い、その後、地下最下階から地表面に向かって、既存地下外壁を山留壁として残した状態で、バットレス架構体を含めた既存地下躯体を2次解体しながら、撤去した既存地下躯体部分に土を埋め戻す。よって、既存地下外壁を挟んで、外側地盤による土圧と、撤去した既存地下躯体部分に埋め戻した土圧とを相殺させることで、バットレス架構体の地下柱や地下梁を解体して撤去した後であっても、既存地下外壁を自立させておくことができる。
【0010】
第1の発明の建物の建替え方法は、既存建物(例えば、後述の既存建物1)を建て替える方法であって、前記既存建物の既存地下外壁(例えば、後述の既存地下外壁15)ならびに当該既存地下外壁に接合された一部の地下柱(例えば、後述の地下柱12、12a)および地下梁(例えば、後述の地下梁13、13a)を残して、前記既存建物の地上部(例えば、後述の既存地上躯体3)から下端部までを解体する工程(例えば、後述のステップS1、S2)と、前記既存建物の下端部から上方に向かって、前記既存地下外壁よりも内側の部分を解体しながら、前記既存地下外壁の内側に埋戻しを行う工程(例えば、後述のステップS3)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、既存地下外壁に切梁を架設することなく、既存地下躯体の解体作業を進めることができるので、短工期かつ低コストで建物を建て替えることができる。
また、埋め戻した土の上から、杭打機により新築建物の杭を打設できるので、杭打機の安定性や走行経路が確保された状態で、新築建物の杭を確実に打設できる。
また、従来のように既存地下外壁の内側に側方土圧を受ける擁壁を構築し、さらにこの擁壁の内側に新設地下躯体を構築する構成ではないので、平面視で、新築建物の地下躯体を既存建物の地下躯体よりも極端に小さくする必要がない。
【0012】
第2の発明の建物の建替え方法は、前記残した地下柱および地下梁は、前記既存地下外壁から内側に1スパン分であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、外周壁から内側に1スパン分の柱および梁を残したので、外周壁、柱、梁で門型フレームが形成されるから、外周壁に切梁を設けることなく、この外周壁に作用する土圧を受け止めることができる。
【0014】
第3の発明の建物の建替え方法は、前記既存地下外壁の内側に埋戻しを行う工程では、解体した前記既存建物の下端部に新築建物の地下柱または仮設柱(例えば、後述の仮設柱20)を構築することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、解体した既存地下躯体の下端部に新築建物の地下柱または仮設柱を設けたので、新築建物の地下躯体を構築する際、この新築建物の地下柱や仮設柱を、構台や切梁を支持する棚杭として利用でき、短工期かつ低コストで既存地下躯体を建て替えできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既存地下外壁は、この既存地下外壁に隣接する地下柱および地下梁によって、バットレス形式で支持される。また、既存地下躯体を解体および撤去する際、山留壁を新たに構築する必要がなく、かつ、対向する既存地下外壁の間に切梁を設置させる必要もなく、既存地下躯体を解体して撤去できるので、建物の建替えを短工期で、経済的に行うことができる。また、平面視で新設地下躯体が既存躯体よりも小さくなるのを極力防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る建物の建替え方法が適用される既存建物の地下1階平面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】建物の建て替え方法のフローチャートである。
図4】建物の建て替え方法のステップS1、S2における地下1階平面図である。
図5】建物の建て替え方法のステップS1、S2における地下3階平面図である。
図6図4および図5のB−B断面図である。
図7】建物の建て替え方法のステップS3、S4における縦断面図である。
図8】建物の建て替え方法のステップS5における縦断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る建物の建替え方法のステップS5、S6における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、対向する既存地下外壁間に切梁を設置することなく、既存地下躯体を解体して撤去する建物の建替え方法である。
本願発明の特徴は、既存地下外壁を利用しながら、先ずは、地上部から地下最下階まで既存地下躯体の中央エリアと外周エリアのスラブとを解体して撤去した後、その後、解体撤去した箇所に土を埋戻しながら、既存地下躯体の外周エリアの地下柱および地下梁を解体して撤去し、最終的に地表面まで土を埋戻す点である。本発明によれば、既存地下躯体を解体撤去する際に、切梁を設置しないことで、短工期かつ低コストで建物の建て替えが実現できる。
本発明の実施形態としては、対向する既存地下外壁とこの既存地下外壁に接合された既存地下躯体の一部を残す場合(後述の図4図8)と、さらに、この既存地下外壁の外側の地盤に新設の山留壁を設置する場合(後述の図9)がある。
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る建物の建替え方法が適用される既存建物1の地下1階平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
既存建物1は、地下に構築された既存地下躯体2と、この既存地下躯体2の上に構築された既存地上躯体3と、を備える。
【0020】
既存地下躯体2は、地下3階までの鉄筋コンクリート構造であり、長手方向に6スパン、短手方向に3スパンの大きさである。
この既存地下躯体2は、格子状に延びる基礎梁10、この基礎梁10同士の間に設けられた耐圧版11、基礎梁10の上に設けられた地下柱12、地下柱12同士の間に架設された地下梁13、地下梁13同士の間および基礎梁10同士の間に設けられた床14、および、外周に位置する地下外周柱12aおよび地下外周梁13aの間に設けられた既存地下外壁15を備える。
【0021】
以下、既存建物1の建て替え方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図4図6に示すように、既存地下躯体2の既存地下外壁15とこの既存地下外壁15を支持するバットレス架構体16を残して、既存地下躯体2を最下端部まで解体する。なお、新築建物の最下階が既存建物の耐圧版より深い位置となる場合、既存建物の耐圧版も解体するが、この耐圧版の解体は、新築建物の地下階の構築に支障を及ぼさない程度の最小範囲に限定する。
【0022】
バットレス架構体16は、基礎梁10、地下外周柱12a、地下外周梁13a、既存地下外壁15の1スパン内側に位置する地下柱12、および、地下外周柱12aと地下柱12との間に架設された地下梁13で構成される。
【0023】
このバットレス架構体16では、図4に示すように、既存地下外壁15と一体化された地下外周柱12aに地下梁13が接合されており、この地下梁13には、既存地下外壁15の1スパン内側に位置する地下柱12が接合されている。これにより、既存地下外壁15、地下梁13、および地下柱12で、門型のフレームが形成される。
【0024】
特に、平面視において既存地下外壁15同士が交差する入隅部(コーナ部分)では、既存地下外壁15を、地下柱12と互いに交差する2本の地下梁13とにより支持する。よって、既存地下外壁15の入隅部において、既存地下外壁15の入隅部の変形を防止し、既存地下外壁15の自立性を高めることができる。
この解体作業を行った結果、図5に示すように、耐圧版11が設けられていた箇所から、既存地下躯体2の直下の地盤面4が露出する。
【0025】
ステップS2では、図6に示すように、既存地下躯体2の最下端部の地盤面4に、仮設柱20を建て込む。
【0026】
ステップS3では、図7に示すように、既存地下躯体2の下端から上方に向かって、既存地下外壁15よりも内側の部分つまりバットレス架構体16を構成する地下柱12および地下梁13を解体して撤去しながら、既存地下外壁15の内側に地表面付近まで埋戻しを行う。
このとき、図7に示すように、バットレス架構体16の梁13の一部を残しておいてもよい。
このようにして、地表面まで埋め戻すことで、この埋め戻し土5によって既存地下外壁15が内側から支持されて、既存地下外壁15に作用する土圧に抵抗する。よって、ステップS3の終了時には、既存建物1の既存地下躯体2のうち、既存地下外壁15を含むバットレス架構体16が存置され、その他の既存地下躯体2を解体撤去した部分に、地上面付近まで土が埋め戻された状態となる。
【0027】
ステップS4では、図7に示すように、地表面レベルから、新築建物のための新設の杭21を打設する。ここで、杭21の打設箇所に既存地下躯体2の一部が残存している場合、図示しないケーシングドライバにより残存した躯体を撤去した後、杭21を打設する。
【0028】
ステップS5では、図8に示すように、新築建物の地下躯体を構築するために、既存地下外壁15を山留壁として利用し、構台22および切梁23を架設しながら、埋め戻した土5を床付面6まで掘削する。このとき、上述の仮設柱20により構台22および切梁23を支持する。このとき、切梁23の端面が既存地下外壁15の内壁面に接するように、切梁23を架設する。また、梁13の一部が残っていた場合には、掘削時にこの梁13を撤去する。
【0029】
ステップS6では、新設の杭21の上に新設の地下躯体を構築する。
このとき、既存地下外壁15を新築建物の地下壁としてそのまま利用してもよいし、既存地下外壁15の内壁面に複数の後施工アンカー筋(図示していない)を設け、その後施工アンカー筋を新設の鉄筋コンクリート造の地下壁(図示していない)に定着させて、既存地下外壁と新設の地下壁とを一体化した合成地下外壁を設けてもよい。
【0030】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)既存地下躯体2の既存地下外壁15に切梁を架設することなく、既存地下躯体2の解体作業を進めることができるので、短工期かつ低コストで既存建物1を建て替えることができる。
また、埋め戻した土5の上から、杭打機により、新築建物のための新設の杭21を打設できるので、杭打機の安定性や走行経路が確保された状態で、新設の杭21を確実に打設できる。
また、従来のように既存地下躯体2の既存地下外壁15と新設地下躯体の既存地下外壁との間に構造物を構築する構成ではないので、平面視で、新築建物の地下躯体を既存建物の地下躯体よりも極端に小さくする必要がない。
【0031】
(2)既存地下外壁15から内側に1スパン分の柱12および梁13を残したので、既存地下外壁15、柱12、梁13で門型フレームが形成されるから、既存地下外壁15に切梁を設けることなく、この既存地下外壁15に作用する土圧を受け止めることができる。
【0032】
(3)解体した既存地下躯体2の最下端部に仮設柱20を設けたので、新築建物の地下躯体を構築する際、この仮設柱20を構台22や切梁23を支持する棚杭として利用することで、大断面サイズの切梁でなくとも既存地下外壁15間に切梁を架設でき、短工期かつ低コストで既存建物1を建て替えできる。
【0033】
(4)新設の地下躯体を構築する際、既存地下外壁15を山留壁として利用することで、新設の山留壁を構築することなく、短工期かつ低コストで既存建物1を建替えることができる。
【0034】
(5)新築建物の地下躯体において、既存地下外壁15に新設のコンクリート造の地下壁を一体化させて合成地下外壁とした場合には、新たに構築する地下壁を薄くすることができる。よって、新築建物の地下階において、広い居住空間を確保できる。
【0035】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、既存地下外壁15の外側に新設の山留壁30を設ける点が第1実施形態と異なる。
すなわち、ステップS5では、図9(a)に示すように、新築建物の地下躯体を構築するために、対向する既存地下外壁15のそれぞれの外側の地盤に、新設の山留壁30を構築する。その後、図9(a)および図9(b)に示すように、地表面より下方に向って、既存地下外壁15の解体および撤去を行いながら、新設の山留壁30の内壁面に切梁23を架設する。
ステップS6では、新設の山留壁30によって囲まれた部分に、新設の地下躯体を構築する。
【0036】
なお、本実施形態では、対向する既存地下外壁15のそれぞれの外側に新設の山留壁30を設けたが、これに限らず、対向する既存地下外壁15の一方のみの外側に新設の山留壁を設けてもよい。
【0037】
本実施形態によれば、上述の(1)〜(5)に加えて、以下のような効果がある。
(6)新築建物の地下躯体を構築する際、地表面から既存地下外壁15の解体および撤去を行いながら新設の山留壁30の内壁面に切梁23を架設することで、切梁23の下側では、新設の山留壁30と既存地下外壁15が側方土圧に抵抗するため、高い安全性を確保することができる。
【0038】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態においては、バットレス架構体16を、1スパン分の地下柱12および地下梁13を含んで構成したが、これに限らない。例えば、バットレス架構体を、1スパン分の地下柱12および地下梁13に加えて、既存地下外壁15に接する床14を含んで構成してもよい。あるいは、バットレス架構体を複数スパンに亘る地下柱12および地下梁13を含んで構成してもよい。あるいは、バットレス架構体を1スパン分に満たない地下柱12、地下梁13、および、既存地下外壁15に接する床14の一部を含んで構成してもよい。
【0039】
このように、バットレス架構体を既存地下外壁15に接する床14の一部を含めた場合、以下のような効果がある。すなわち、既存地下外壁15に接する一部の床14を解体しないため、解体時に既存地下外壁15に損傷を与えることはない。また、既存地下外壁15に接する床14の一部を存置したので、土圧に抵抗する既存地下外壁15の面外剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…建物 2…既存地下躯体 3…既存地上躯体(地上部)
4…地盤面 5…埋め戻し土 6…床付面
10…基礎梁 11…耐圧版 12…地下柱 12a…地下外周柱
13…地下梁 13a…地下外周梁 14…床 15…既存地下外壁
16…バットレス架構体
20…仮設柱 21…新設の杭 22…構台 23…切梁 30…新設の山留壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9