【実施例】
【0028】
本発明の生体音取得装置に係る実施例を図面に基づいて説明する。本実施例では、生体音取得装置の一例として電子聴診器を挙げる。
【0029】
<電子聴診器の構成>
実施例に係る電子聴診器の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施例に係る電子聴診器の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1において、電子聴診器100は、振動センサ11、バンドバスフィルタ12、遮断周波数調整部13、パワーアンプ14、音量調整部15及びイヤフォン16を備えて構成されている。
【0031】
振動センサ11は、生体から発せられる生体音(例えば、呼吸音等)を取得可能なセンサである。振動センサで取得された生体音を示す生体音信号は、バンドパスフィルタ12に出力される構成となっている。なお、振動センサは、「取得部」の一具体例である。
【0032】
バンドパスフィルタ12は、振動センサ11から入力される生体音信号のうち、所望の周波数帯域の信号のみを通過させるフィルタである。バンドパスフィルタ12で遮断される遮断周波数は、遮断周波数調整部13によって調整される。バンドパスフィルタ12を通過した生体音信号は、パワーアンプ14に出力される構成となっている。
【0033】
パワーアンプ14は、生体音信号のパワー(強度)を設定されたゲインに応じて変化させて出力する。パワーアンプ14のゲインは、音量調整部15によって調整される。パワーアンプを通過した生体音信号は、イヤフォン16に出力される構成となっている。
【0034】
イヤフォン16は、生体音信号が示す生体音を音として出力可能に構成されている。
【0035】
次に、電子聴診器100のチェストピース(聴診のために生体に押し当てる部分)の構成について、
図2から
図4を参照して説明する。
図2は、実施例に係る電子聴診器のチェストピースの要部を示す断面図であり、
図3は、本体部の構成を示す斜視図である。また
図4は、
図2のA−A’線断面図である。
【0036】
図2において、振動センサ11は、ダイヤフラム21上に保持されている。ダイヤフラム21は、シリコンゴムやウレタンゴム等で構成されており、振動センサ11を収容する本体部22に接続されている。なお、図中のダイヤフラム21の下側の面が「前面」の一具体例であり、上側の面が「後面」の一具体例である。また、図中の本体部22の下側の面が「底面」の一具体例であり、上側の面が「天面」の一具体例である。振動センサ11、ダイヤフラム21及び本体部22は、振動検出モジュールを形成している。
【0037】
図3にも示されているように、本体部22の天面には第1連絡孔22aが形成されている。第1連絡孔22aは、「連絡部」の一具体例であり、ダイヤフラム21の後面と、本体部22外の外部空気を連絡している。また、第1連絡孔22aは、振動センサ11から出力される電気信号(生体音信号)を伝達するための信号線を、振動検出モジュールの外部へと導くための機能も有している。
【0038】
図2に戻り、振動検出モジュールは、防振ダンパー23により、グリップ部24に固定されている。グリップ部24には、例えば聴診者や被聴診者が触れることにより無用な振動(つまり、ノイズ)が生じる場合があるが、防振ダンパー23を設けることにより、無用な振動が振動検出モジュールへ伝播することを抑制できる。
【0039】
図4にも示されているように、グリップ部24には、複数の第2連絡孔24aが形成されている。第2連絡孔24aは、「第2の連絡部」の一具体例であり、グリップ部24外の外部空気と、本体部22外の外部空気とを連絡している。第2連絡孔24aは、振動センサ11を中心にして8方向に向けて空けられている。尚、第2連絡孔例は、あくまで一例であり、8方向でなくても良く、個数も8個でなくても良い。
【0040】
第2連絡孔24aを複数形成すれば、振動センサ11から見て相異なる複数方向の外部空気との連絡が行える。また、聴診者がグリップ部24を把持することで一部の第2連絡孔24aが塞がれてしまった場合でも、他の第2連絡孔24aを介して外部空気との連絡を維持することができる。
【0041】
<外部雑音の低減効果>
次に、本実施例に係る電子聴診器100によって発揮される外部雑音の低減効果について、
図5を参照して説明する。
図5は、ダイヤフラムの前面及び後面に伝達される外部雑音が相殺される様子を示す概念図である。
【0042】
図5に示すように、生体200からは、取得すべき生体音と共に外部雑音(例えば、環境音)がダイヤフラム21の前面に伝達される。このため、仮に何らの対策も施さなければ、生体音に混じって多くの雑音が取得されてしまい、生体音に基づく診断等を正確に行えなくなってしまうおそれがある。
【0043】
しかるに本実施例では、既に説明したように、本体部22に第1連絡孔22aが形成されており、グリップ部24に第2連絡孔24aが形成されている。このため、外部雑音は、第2連絡孔24a及び第1連絡孔22aを介して、ダイヤフラム21の後面にも伝達される。
【0044】
すると、ダイヤフラム21の前面及び後面の各々に同じ外部雑音が同位相で伝達されるため、外部雑音が相殺されることになる。即ち、外部雑音に起因する振動が弱められる。よって、振動センサ11によって取得される外部雑音は小さくなる。
【0045】
一方で、生体音については、ダイヤフラム21の前面からしか伝達されない。このため、生体音は外部雑音のように相殺されずに、振動センサ11で取得される。この結果、振動センサでは、外部雑音が低減され、好適に生体音を取得することが可能となる。
【0046】
以下では、雑音低減に関する具体的な効果例について、
図6を参照して説明する。
図6は、連絡孔の有無による外部雑音の強度の違いを示すグラフである。
【0047】
図6において、本願発明者は、外部スピーカーからホワイトノイズを出力した状態で振動検出モジュールを生体に押し当て、その時に取得される音を測定するという実験を行った。より具体的には、第1連絡孔22aを粘土で塞いだ状態(即ち、第1連絡孔22aが形成されていない構成を模擬した状態)と、塞がない状態とで、取得される音を別々に測定した。
【0048】
この結果、第1連絡孔22aを塞いだ状態に比べて、塞がない状態で測定された音の方が、明らかに加速度(即ち、振動の強度)が小さくなることが実証された。即ち、本実施例による雑音低減機能が有効であることが証明された。
【0049】
<変形例>
次に、振動検出モジュールの変形例について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、本体部の第1変形例を示す断面図である。また
図8は、本体部の第2変形例を示す断面図である。
【0050】
図7に示す第1変形例では、第1連絡孔22aに透湿防水シート30が配置されている。透湿防水シートは、水を通さない一方で、空気を通すという特性を有している。このため、
外部雑音を本体部22の内部に伝達させつつも、防水機能を発揮させることが可能である。即ち、外部雑音を相殺させて低減することができ、更には装置の信頼性も高めることが可能となる。
【0051】
図8に示す第2変形例では、第1連絡孔22aを含めて、本体部22の内部全体に弾性体40が充填されている。弾性体40は、例えばシリコーン等で構成すればよい。このように構成すれば、本体部22内への水の侵入をより確実に防止することが可能である。また、外部雑音についても弾性体40を介してダイヤフラム21の後面に伝達される。このため、ダイヤフラム21の前面及び後面の各々から伝達される外部雑音を相殺させて、好適に低減することが可能である。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生体音取得装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。