(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827274
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】床構造及び床構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/32 20060101AFI20210128BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20210128BHJP
E04B 1/62 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
E04B5/32 Z
E04B5/43 Z
E04B1/62 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-116093(P2016-116093)
(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-218859(P2017-218859A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】辻埜 真人
(72)【発明者】
【氏名】大関 晴久
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】中島 英己
(72)【発明者】
【氏名】石倉 敦
(72)【発明者】
【氏名】志村 太
(72)【発明者】
【氏名】小森 崇
(72)【発明者】
【氏名】山岸 司
(72)【発明者】
【氏名】榊間 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】前田 信之
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 宏治
(72)【発明者】
【氏名】菊地 俊文
【審査官】
河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−117020(JP,U)
【文献】
特開平07−062754(JP,A)
【文献】
特開2005−232909(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00345620(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/32
E04B 1/62
E04B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部と、該コンクリート部内に配置された主筋と、を有する床スラブと、
該床スラブを支持し、平面視において前記主筋が延びる主筋方向に直交する直交方向に延び、前記主筋方向に離間して配置された複数の床スラブ支持部と、を備え、
前記コンクリート部の表面には、前記主筋方向に沿う目地が前記直交方向に離間して複数設けられ、
前記コンクリート部には、前記直交方向に延びるコンクリートの打継部が設けられ、
前記目地と前記打継部とは、交差していることを特徴とする床構造。
【請求項2】
コンクリート部と、該コンクリート部内に配置された主筋と、を有する床スラブと、
該床スラブを支持し、平面視において前記主筋が延びる主筋方向に直交する直交方向に延び、前記主筋方向に離間して配置された複数の床スラブ支持部と、を備え、
前記コンクリート部の表面には、前記主筋方向に沿う目地が前記直交方向に離間して複数設けられ、
前記コンクリート部には、前記直交方向に延びるコンクリートの打継部が設けられ、
平面視において、前記打継部は、隣り合う前記床スラブ支持部の間に配置されていることを特徴とする床構造。
【請求項3】
前記コンクリート部は、前記目地を長辺とするとともに前記打継部を短辺とする長方形ユニットが、前記主筋方向及び前記直交方向に複数隣接配置されて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の床構造。
【請求項4】
前記床スラブ支持部は、地盤に設けられた基礎に支持されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の床構造。
【請求項5】
主筋を有する床スラブと、該床スラブを支持する床スラブ支持部と、を備えた床構造の施工方法であって、
前記主筋を、前記床スラブ支持部の延びる方向に直交する方向に配筋する配筋工程と、
コンクリートを打設して、内部に前記主筋を埋設したコンクリート部を形成するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート部の表面に、前記主筋の延びる方向に沿う目地を設ける目地形成工程と、を備え、
前記コンクリート打設工程では、前記コンクリートを前記主筋が延びる方向の一方側から他方側に向かって、順次所定領域ごとに打設し、
前記所定領域の境界部分には、前記コンクリートの打継部が形成され、
前記目地と前記打継部とは、交差していることを特徴とする床構造の施工方法。
【請求項6】
主筋を有する床スラブと、該床スラブを支持する床スラブ支持部と、を備えた床構造の施工方法であって、
前記主筋を、前記床スラブ支持部の延びる方向に直交する方向に配筋する配筋工程と、
コンクリートを打設して、内部に前記主筋を埋設したコンクリート部を形成するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート部の表面に、前記主筋の延びる方向に沿う目地を設ける目地形成工程と、を備え、
前記コンクリート打設工程では、前記コンクリートを前記主筋が延びる方向の一方側から他方側に向かって、順次所定領域ごとに打設し、
前記所定領域の境界部分には、前記コンクリートの打継部が形成され、
平面視において、前記打継部は、隣り合う前記床スラブ支持部の間に配置されていることを特徴とする床構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造及び床構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、床スラブは、格子状に配置された主筋と、主筋を覆うように打設されたコンクリートと、を備えたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−207741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、杭や基礎梁に支持された床スラブは、杭や基礎梁からの拘束力が大きいため、コンクリートにひび割れが発生しやすい。そこで、ひび割れを抑制するためにコンクリートにカッター目地を入れることがあるが、構造的に支障があり、カッター目地を入れることができない場合がある。
【0005】
また、適切な骨材を選択したり、膨張材及び収縮低減剤を混入したりすることで、コンクリートの乾燥収縮率を低減させ、コンクリートのひび割れを抑制することがある。しかし、適切な骨材、膨張材及び収縮低減剤等の材料を入手することが困難な場合があり、その結果、ひび割れを抑制することができないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、床スラブコンクリートのひび割れの発生を抑制することができる床構造及び床構造の施工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る床構造は、コンクリート部と、該コンクリート部内に配置された主筋と、を有する床スラブと、該床スラブを支持し、平面視において前記主筋が延びる主筋方向に直交する直交方向に延び、前記主筋方向に離間して配置された複数の床スラブ支持部と、を備え、前記コンクリート部の表面には、前記主筋方向に沿う目地が前記直交方向に離間して複数設けられ
、前記コンクリート部には、前記直交方向に延びるコンクリートの打継部が設けられ、前記目地と前記打継部とは、交差していることを特徴とする。
また、本発明に係る床構造は、コンクリート部と、該コンクリート部内に配置された主筋と、を有する床スラブと、該床スラブを支持し、平面視において前記主筋が延びる主筋方向に直交する直交方向に延び、前記主筋方向に離間して配置された複数の床スラブ支持部と、を備え、前記コンクリート部の表面には、前記主筋方向に沿う目地が前記直交方向に離間して複数設けられ、前記コンクリート部には、前記直交方向に延びるコンクリートの打継部が設けられ、平面視において、前記打継部は、隣り合う前記床スラブ支持部の間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成された床構造では、内部に主筋が配置されたコンクリート部の表面には、主筋に沿う方向(主筋方向)に目地が主筋方向に直交する直交方向に離間して複数設けられている。よって、目地によりコンクリート部の収縮を吸収することができるため、コンクリート部における主筋方向に生じるひび割れを抑制することができる。また、主筋は床スラブ支持部の延びる方向に直交する方向(主筋方向)に延びているため、主筋方向に沿って目地を設けても構造耐力上支障はない。
また、コンクリート部は主筋に拘束され、主筋に沿う方向(主筋方向)には収縮しにくいため、コンクリート部における直交方向に生じるひび割れを抑制することができる。
また、コンクリート部にはコンクリートの打継部が設けられている。打継部にはわずかな隙間が生じるため、打継部が延びる直交方向のひび割れをさらに抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る床構造では、前記コンクリート部は、前記目地を長辺とするとともに前記打継部を短辺とする長方形ユニットが、前記主筋方向及び前記直交方向に複数隣接配置されて構成されていてもよい。
【0012】
このように構成された床構造では、コンクリート部には目地を長辺とするとともに打継部を短辺とする長方形ユニットが主筋方向及び直交方向に複数形成されている。よって、長方形ユニットにおける主筋方向に生じるひび割れは、両端(両長辺)の目地により一層抑制される。
【0013】
また、一般的に、長方形状をなすコンクリートでは、コンクリートは長辺方向に収縮して短辺に沿う方向にひび割れが生じやすいが、本発明の長方形ユニットの短辺方向は主筋と直交する方向であるため、短辺方向(直交方向)に生じるひび割れは、コンクリート部が主筋に拘束されることにより抑制される。
【0014】
また、本発明に係る床構造では、前記床スラブ支持部は、地盤に設けられた基礎に支持されていてもよい。
【0015】
このように構成された床構造では、床スラブ支持部が地盤に設けられた基礎に支持されていて、床スラブはいわゆる1階スラブである。一般的に、地盤はコンクリートと比較して収縮しにくいため、地盤に設けられた基礎に支持された1階スラブには大きな拘束力が作用しひび割れが生じやすいが、本発明では1階スラブにおいてもひび割れを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る床構造の施工方法は、主筋を有する床スラブと、該床スラブを支持する床スラブ支持部と、を備えた床構造の施工方法であって、
前記主筋を、前記床スラブ支持部の延びる方向に直交する方向に配筋する配筋工程と、コンクリートを打設して、内部に前記主筋を埋設したコンクリート部を形成するコンクリート打設工程と、前記コンクリート部の表面に、前記主筋の延びる方向に沿う目地を設ける目地形成工程と、を備え、前記コンクリート打設工程では、前記コンクリートを前記主筋が延びる方向の一方側から他方側に向かって、順次所定領域ごとに打設
し、前記所定領域の境界部分には、前記コンクリートの打継部が形成され、前記目地と前記打継部とは、交差していることを特徴とする。
また、本発明に係る床構造の施工方法は、主筋を有する床スラブと、該床スラブを支持する床スラブ支持部と、を備えた床構造の施工方法であって、前記主筋を、前記床スラブ支持部の延びる方向に直交する方向に配筋する配筋工程と、コンクリートを打設して、内部に前記主筋を埋設したコンクリート部を形成するコンクリート打設工程と、前記コンクリート部の表面に、前記主筋の延びる方向に沿う目地を設ける目地形成工程と、を備え、前記コンクリート打設工程では、前記コンクリートを前記主筋が延びる方向の一方側から他方側に向かって、順次所定領域ごとに打設し、前記所定領域の境界部分には、前記コンクリートの打継部が形成され、平面視において、前記打継部は、隣り合う前記床スラブ支持部の間に配置されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成された床構造の施工方法では、主筋が埋設されたコンクリート部の表面に、主筋方向に沿う目地を設ける。よって、目地によりコンクリート部の収縮を吸収することができるため、コンクリート部における主筋方向に生じるひび割れを抑制することができる。また、主筋は床スラブが延びる方向(直交方向)に直交する方向(主筋方向)に延びているため、主筋方向に沿って目地を設けても構造耐力上支障はない。
また、コンクリート部は主筋に拘束され、主筋に沿う方向には収縮しにくいため、コンクリート部における直交方向に生じるひび割れを抑制することができる。
また、コンクリートを主筋方向の一方側から他方側に向かって順次所定領域ごとに打設するため、領域の境界部分には打継部が形成される。打継部にはわずかな隙間が生じるため、打継部が延びる方向(直交方向)のひび割れをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る床構造及び床構造の施工方法によれば、床スラブコンクリートのひび割れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の床構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る床構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の床構造の平面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。
図3は、
図1のB−B断面図である。
図4は
図1のC−C断面図である。
図1から
図4に示すように、床構造100は、地盤に複数設置された杭(基礎)1に支持されている。
ここで、便宜上、
図1の紙面左右方向(水平方向の一方向)をX方向(直交方向)として、紙面上下方向(水平方向のうちX方向と直交する方向)をY方向(主筋方向)と称する。
本実施形態では、杭1は、X方向及びY方向において、それぞれ等間隔に設置されている。
【0021】
床構造100は、杭1に支持された地中梁(床スラブ支持部)2と、地中梁2に支持された床スラブ3と、を備えている。
【0022】
地中梁2は、X方向に延び、Y方向に離間して複数設置されている。本実施形態では、地中梁2は、上側の幅が下側の幅よりも広く、せいが低いいいわゆる扁平梁である。
【0023】
地中梁2と床スラブ3における地中梁2の上部分とは、一体として構成され、梁主筋21と、あばら筋22と、コンクリート部41と、を有している。
【0024】
梁主筋21は、X方向に延び、Y方向及び鉛直方向に離間して複数配置されている。あばら筋22は、複数の梁主筋21を囲繞し、X方向に離間して複数配置されている。また、鉛直方向に離間して配置された梁主筋21どうしは、幅止筋23により結束されている。
【0025】
本実施形態では、梁主筋21は、例えば鉄筋径22mm(D22)の部材が用いられている。また、あばら筋22は、例えば鉄筋径13mm(D13)の部材が用いられ、200mmピッチで配置されている。
【0026】
コンクリート部41は、梁主筋21、あばら筋22及び幅止筋23を覆うように、打設されている。換言すると、梁主筋21、あばら筋22及び幅止筋23は、充填されたコンクリート部41内に埋設されている。
【0027】
床スラブ3は、上段主筋31及び下段主筋32(主筋)と、上段配力筋33及び下段配力筋34と、コンクリート部42と、を有している。
【0028】
上段主筋31及び下段主筋32は、床スラブ3に生じる力に主に抗し、Y方向に延びている。上段主筋31は床スラブ3の上側に配置され、下段主筋32は床スラブ3の下側に配置されている。上段主筋31及び下段主筋32は、X方向に離間して複数配置されている。
【0029】
上段配力筋33及び下段配力筋34は、X方向に延びている。上段配力筋33は上段主筋31の下側に配置され、下段配力筋34は上段主筋31の上側に配置されている。上段配力筋33及び下段配力筋34は、Y方向に離間して複数配置されている。
【0030】
上段主筋31、下段主筋32、上段配力筋33及び下段配力筋34は、平面視において、それぞれ地中梁2側にまで延びている。
図2において、地中梁2を挟んで両側の下段配力筋34の端部どうしは締結されていないが、締結されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、上段主筋31、下段主筋32、上段配力筋33及び下段配力筋34は、例えば鉄筋径13mm(D13)の部材が用いられ、200mmピッチで配置されている。なお、上段主筋31及び下段主筋32の方が上段配力筋33及び下段配力筋34よりも、径が大きい鉄筋であり、ピッチが短くてもよい。
【0032】
コンクリート部42は、上段主筋31、下段主筋32、上段配力筋33及び下段配力筋34を覆うように、打設されている。換言すると、上段主筋31、下段主筋32、上段配力筋33及び下段配力筋34は、充填されたコンクリート部42内に埋設されている。
【0033】
コンクリート部41及びコンクリート部42(総称して、単にコンクリート部4と称することがある)は、同時に打設されることで、連続して形成されている。
【0034】
コンクリート部4は、Y方向の一方側(
図1に示す紙面下側)から他方側(
図1に示す紙面上側)に向かって、順次所定領域ごとに打設されている。打設された順に、それぞれ第一領域D1、第二領域D2、第三領域D3及び第四領域D4とする。
【0035】
第一領域D1から第四領域D4の各領域において、各コンクリート部4は、X方向に長い長方形状をなしている。本実施形態では、長辺の長さL1が短辺の長さL2の4倍とされている。
【0036】
第一領域D1から第四領域D4において、隣接する領域の境界部分(長辺)には、コンクリート部4の表面にわずかな隙間であるコンクリートの打継部51が形成されている。換言すると、打継部51は、X方向に沿って形成されている。
【0037】
平面視において、打継部51は、隣り合う地中梁2間に配置されている。平面視において、地中梁2の端部同士間の距離M1とすると、地中梁2の端部から打継部51までの短い方の距離M2はM1の1/4であることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、各領域のコンクリート部4は、2本の地中梁2をまたがるように配置されている。
【0039】
コンクリート部4の表面には、Y方向に沿って、カッター等により形成されたカッター目地(目地)52が形成されている。カッター目地52はX方向に離間して複数配置されている。
【0040】
本実施形態では、平面視において、カッター目地52は、杭1の中央と重なる位置に配置されている。カッター目地52は、第一領域D1から第四領域D4において、一直線上に形成されている。カッター目地52は、例えば深さ30mm、幅4mm程度である。
【0041】
コンクリート部4の表面には、カッター目地52を長辺として、打継部51を短辺とする長方形ユニットRがX方向及びY方向に隣接配置されている。本実施形態では、長方形ユニットRは、一例として、短辺が5000mmであり、長辺が10000mmとされている。
【0042】
カッター目地52には、ポリマーセメントモルタル等の充填材(不図示。以下同じ。)が充填されている。これにより、鉄筋の腐食を抑制される。
【0043】
次に、上記の床構造100の施工方法について説明する。
まず、配筋工程を行う。
地中梁2の梁主筋21、あばら筋22及び床スラブ3の上段主筋31、下段主筋32、上段配力筋33、下段配力筋34を所定の位置に配筋する。
【0044】
次に、コンクリート打設工程を行う。
まず、第一領域D1の周囲に型枠(不図示)を配置して、梁主筋21、あばら筋22、上段主筋31、下段主筋32、上段配力筋33及び下段配力筋34を内部に埋設するように、コンクリートを打設する。これにより、第一領域D1にコンクリート部4が形成される。
【0045】
次に、目地形成工程を行う。
第一領域D1にコンクリート部4が硬化した後、速やかにカッター等によりカッター目地52を設け、充填材を充填する。
【0046】
次に、第二領域D2、第三領域D3及び第四領域D4において、順次第一領域D1と同様にコンクリートと打設し、カッター目地52を設け、充填材を充填する。
【0047】
各領域の境界部には、コンクリートの打継部51が形成される。
なお、カッター目地52及び打継部51の直下に配置される鉄筋には、防錆処理を施すことで、鉄筋の腐食を抑制することができる。
【0048】
このように構成された床構造100では、コンクリート部4の表面には、上段主筋31及び下段主筋32に沿う方向(Y方向)にカッター目地52が設けられている。カッター目地52が無い場合には、地中梁2間においてコンクリート部4に、上段主筋31及び下段主筋32が延びるY方向にひび割れが発生しやすい。本発明では、カッター目地52によりコンクリート部4の収縮を吸収することができるため、コンクリート部4におけるY方向に生じるひび割れを抑制することができる。また、上段主筋31及び下段主筋32は地中梁2の延びる方向に直交する方向(Y方向)に延びているため、Y方向に沿ってカッター目地52を設けても構造耐力上支障はない。
【0049】
また、コンクリート部4は上段主筋31及び下段主筋32に拘束され、上段主筋31及び下段主筋32に沿う方向(Y方向)には収縮しにくいため、コンクリート部4におけるX方向に生じるひび割れを抑制することができる。
【0050】
また、コンクリート部4にはカッター目地52を長辺とする長方形ユニットRが複数形成されている。よって、長方形ユニットRにおけるY方向に生じるひび割れは、両端(両長辺)のカッター目地52により一層抑制される。
【0051】
また、一般的に、長方形状をなすコンクリートでは、コンクリートは長辺に沿う方向に収縮して短辺方向にひび割れが生じやすいが、本発明の長方形ユニットRの短辺方向は上段主筋31及び下段主筋32と直交する方向であるため、短辺方向(X方向)に生じるひび割れは、コンクリート部4が上段主筋31及び下段主筋32に拘束されることにより抑制される。
【0052】
また、コンクリート部4にはコンクリートの打継部51が設けられている。打継部51にはわずかな隙間が生じるため、打継部51が延びるX方向のひび割れをさらに抑制することができる。
【0053】
また、地中梁2が地盤に設けられた杭1に支持されていて、床スラブ3はいわゆる1階スラブである。一般的に、地盤はコンクリートと比較して収縮しにくいため、地盤に設けられた杭1に支持された1階スラブには大きな拘束力が作用しひび割れが生じやすいが、本発明では1階スラブにおいてもひび割れを抑制することができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、上記に示す実施形態では、床スラブ支持部として地中梁2を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。床スラブ支持部は、床スラブ3を支持するものであればよく、鉄骨等で構成されていてもよい。
【0056】
また、上記に示す実施形態では、床スラブは、杭1に支持された1階床スラブを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。2階以上に設けられる床スラブであってもよく、地階の最下階以外(基礎に直接支持されていない階)の床スラブでもよい。
【0057】
また、上記に示す実施形態では、カッター目地52は、平面視において、杭1の中央と重なる位置に配置されているが、本発明はこれに限られず、平面視において、杭1の中央からずれた位置や、杭1からずれた位置であってもよい。
【0058】
また、カッター目地52等所定の箇所にひび割れを生じさせるために、カッター目地52の下方にひび割れ誘発鉄筋や塩化ビニル樹脂製のパイプを配置することで、所定の箇所にひび割れを発生させて、それ以外の箇所に生じるひび割れを抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
100…床構造
1…杭(基礎)
2…地中梁(床スラブ支持部)
3…床スラブ
4…コンクリート部
21…梁主筋
22…あばら筋
23…幅止筋
31…上段主筋(主筋)
32…下段主筋(主筋)
33…上段配力筋
34…下段配力筋
51…打継部
52…カッター目地(目地)
D1…第一領域
D2…第二領域
D3…第三領域
D4…第四領域
R…長方形ユニット
X方向…直交方向
Y方向…主筋方向