特許第6827277号(P6827277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827277PTP包装用印刷インキ組成物、および、PTP包装用印刷インキ組成物を用いた積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827277
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】PTP包装用印刷インキ組成物、および、PTP包装用印刷インキ組成物を用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20210128BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20210128BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20210128BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20210128BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20210128BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20210128BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20210128BHJP
   B65D 75/34 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
   C09D11/10
   B32B15/08 F
   B32B15/082 Z
   B32B15/092
   B32B15/20
   B65D65/42 C
   B65D65/40 D
   B65D75/34
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-133231(P2016-133231)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-2922(P2018-2922A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】511069932
【氏名又は名称】昭北ラミネート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】板倉 英貴
(72)【発明者】
【氏名】森野 映介
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−313938(JP,A)
【文献】 特開2006−001591(JP,A)
【文献】 特開2015−067718(JP,A)
【文献】 特開2005−138848(JP,A)
【文献】 特開2015−199816(JP,A)
【文献】 特開2003−137960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B65D 67/00−85/88
B65D 65/00−65/46
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTP包装の蓋材の耐熱被覆層に用いられるPTP包装用印刷インキ組成物であって、
ブチル化尿素樹脂、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリカ、および、ヒドラジン類のホルムアルデヒド吸収剤を含み、
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ当量が2000〜3500g/eqであることを特徴とするPTP包装用印刷インキ組成物。
【請求項2】
請求項に記載のPTP包装用印刷インキ組成物からなる耐熱被覆層を有し、PTP包装の蓋材として用いられる積層体であって、
アルミニウム基材、前記アルミニウム基材上面に設けられた第1印刷層、および、前記印刷層上面に設けられた前記耐熱被覆層を有し、
前記アルミニウム基材下面に少なくともヒートシール層を有することを特徴とする積層体。
【請求項3】
前記第1印刷層はベタ着色層および文字印刷層から構成されることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項4】
前記アルミニウム基材と前記ヒートシール層との間に、第2印刷層を有することを特徴とする請求項2または3に記載の積層体。
【請求項5】
前記第2印刷層はベタ着色層および文字印刷層から構成されることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の包装に用いられるPTP(Press Through Pack)包装用印刷インキ、およびPTP包装用印刷インキを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の包装用に用いられるPTP包装は、医薬品等を収容する容器、および、蓋材から構成されている。PTP包装の容器は樹脂シートから形成され、医薬品等を収納する収納部が設けられており、蓋材は、基材となるアルミニウム箔の上面に印刷層、耐熱被覆層が形成され、下面に印刷層、ヒートシール層が形成されており、前記蓋材は医薬品等が収容された前記容器の収容部に蓋をするように、ヒートシールによって前記容器に溶着されている。
【0003】
PTP包装の蓋材に設けられている印刷層には、アミノ樹脂を用いた熱硬化型インキが用いられているために、印刷層の熱硬化時、および、蓋材の容器へのヒートシール時に、ホルムアルデヒドが発生する。ホルムアルデヒドの発生は、一部薬品の効能を阻害するだけでなく、発ガン性物質として人体に悪影響を与える。
【0004】
PTP包装におけるホルムアルデヒドの問題を解消することを目的とした特許文献1,2には、ホルムアルデヒド吸収剤を、PTP用包装の蓋材の内面に使用することが記載されている。引用文献1,2は、蓋材の外面の印刷層により発生したホルムアルデヒドが、PTP包装に収容された医薬品等に到達する前に、前記蓋材の内面のヒートシール層でホルムアルデヒドを吸収するものである。
【0005】
さらに、特許文献3には、包装体においてホルムアルデヒドによる容器内の収容物への影響を防ぐために、蓋材にニトロセルロース系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む層を設けることが記載されており、特許文献4には、ポリエステルウレタン樹脂とブロックイソシアネートとを含む包装用インキ組成物をPTP包装に用いることが記載されている。
【0006】
その他に、特許文献5には、ホルムアルデヒドを放出する可能性のある硬化剤を用いないPTP包装用印刷インキが記載されている。また、特許文献6には、一分子中に少なくとも2個の2−オキソ−1,3ジオキソラン−4−イル基を有するビニル重合体(A)と、一分子中に少なくとも2個のカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する化合物をPTP包装の蓋材の耐熱被覆材及びインキの主成分に用いることで、ホルムアルデヒドの放出のないPTP包装用熱封緘性蓋材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006− 1591号公報
【特許文献2】特開2015− 67718号公報
【特許文献3】特許第4371894号公報
【特許文献4】特開2015−199816号公報
【特許文献5】特開2014− 28621号公報
【特許文献6】特開2005−138848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載されているホルムアルデヒド吸収剤は、蓋材の内面のヒートシール層に含まれており、蓋材の外面において発生したホルムアルデヒドとは、蓋材のアルミニウム箔などの基材によって隔てられているために、蓋材の外部から侵入してくるホルムアルデヒドと接触しなけれ十分に効果を発揮できない。さらに、蓋材の外面において発生したホルムアルデヒドは、蓋材の外周から侵入してくることから、蓋材の部位によっては、ホルムアルデヒド吸収剤が破過してしまい、ホルムアルデヒドを吸収できなくなり、PTP包装に収容された医薬品等がホルムアルデヒドの影響を受ける可能性もある。また、引用文献1,2のように、蓋材の内面のヒートシールに含まれたホルムアルデヒド吸収剤は、PTP包装に収容された医薬品等と接触することになるため、医薬品等の種類によっては薬効に影響を及ぼすことも十分考えられる。
【0009】
特許文献3に記載されているイソシアネート系硬化剤は、一般的に2液硬化インキなどに使用され、初期乾燥性に優れており、完全硬化時間も短いことから、硬化物の後加工適性等に優れている。しかしながら、イソシアネート系硬化剤のこのような特徴は、アミノ樹脂や本発明に使用するブロックイソシアネートに比べて長期保存性が無いことを意味しており、特許文献3に記載されているようなイソシアネート系硬化剤を用いる場合、硬化剤を混合後、速やかに印刷・塗工の工程を行わなければ、混合物の増粘やゲル化を招くことになる。イソシアネート系硬化剤に長期保存性が無いという欠点は、使用直前に硬化剤を混合することで対処可能であるが、硬化剤を使用する際の計量の煩雑さを解消することはできず、硬化剤の計量ミス、添加そのものを忘れることにより、製品の性能が不十分になるという問題が生じる可能性がある。
【0010】
特許文献4は、耐熱性および密着性を有するインキ組成物を提供することを目的としており、ホルムアルデヒドの発生を抑えることについては特に記載されていない。そして、特許文献4に記載のポリエステルウレタン樹脂とブロックイソシアネートとを含む包装用インキ組成物は、PTP包装の蓋材のアルミニウム基材の表面のインキ層に用いられ、インキ層上に設けられる耐熱被覆層には、一般的なエポキシ樹脂およびメラミン樹脂を含むバインダー樹脂を用いており、ブロックイソシアネートを含む樹脂では無いことから、ホルムアルデヒドに対する効果は不明である。特許文献4の明細書の段落[0061]に記載されている「焼き付け条件(1):180℃で30秒間」では通常の数倍の時間を要しており実際の印刷条件に適したものではなく、「焼き付け条件(2):240℃で10秒間」はレトルト食品用の焼き付け条件であり医薬品包装の焼き付け条件には適さずあまりにも高温で、エネルギーロスが多いという問題があり、医薬品等を想定したPTP包装に、特許文献4に記載のインキ組成物を用いることは適切であるとは言えない。
【0011】
そこで、本発明は、ホルムアルデヒドの発生を抑制する、または、ホルムアルデヒドを発生しないPTP包装用印刷インキ組成物、および、PTP包装用印刷インキ組成物を用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のPTP包装用印刷インキ組成物は、PTP包装の蓋材の耐熱被覆層に用いられるPTP包装用印刷インキ組成物であって、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含むことを特徴とする。
【0013】
前記エポキシ樹脂は固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、エポキシ当量が2000〜3500g/eqである。
【0014】
前記ホルムアルデヒド吸収剤として、第1級アミン類、第2級アミン類、アミド類、イミン類、アミジン類、イミド類、尿素類、トリアジン類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、および、グアニジン類のいずれかを用いる。
【0015】
本発明の積層体はPTP包装の蓋材として用いられる積層体であって、アルミニウム基材、前記アルミニウム基材上面に設けられた第1印刷層、および、前記印刷層上面に設けられた前記耐熱被覆層を有し、前記アルミニウム基材下面に少なくともヒートシール層を有し、前記耐熱被覆層は、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含むPTP包装用印刷インキ組成物からなることを特徴とする。
【0016】
前記第1印刷層はベタ着色層および文字印刷層から構成される。
【0017】
前記アルミニウム基材と前記ヒートシール層との間に第2印刷層を有し、前記第2印刷層はベタ着色層および文字印刷層から構成される。
【0018】
本発明の別の形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、PTP包装の蓋材の耐熱被覆層用インキ組成物、および、前記蓋材の印刷層用インキ組成物からなるPTP包装用印刷インキ組成物であって、前記耐熱被覆層用インキ組成物は、エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含み、前記印刷層用インキ組成物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むことを特徴とする。
【0019】
前記エポキシ樹脂は固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、エポキシ当量が2000〜3500g/eqである。
【0020】
前記ブロックイソシアネート硬化剤はブロック剤として活性メチレン系、アミン系、オキシム系、および、カプロラクタム系のいずれかを有し、解離温度が90〜120℃である。
【0021】
前記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂はビニルアルコールまたはビニルアクリレートとの共重合で、OH基で官能基化されたものであり、JIS K7367−2(ISO1628−2)に準拠して測定したK値が35〜50である。
【0022】
本発明の別の形態の積層体はPTP包装の蓋材として用いられる積層体であって、アルミニウム基材、前記アルミニウム基材上面に設けられた前記第1印刷層、および、前記第1印刷層上面に設けられた耐熱被覆層を有し、前記アルミニウム基材下面に少なくともヒートシール層を有し、前記耐熱被覆層はエポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む前記耐熱被覆層用インキ組成物からなり、前記第1印刷層は塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む前記印刷層用インキ組成物からなることを特徴とする。
【0023】
前記第1印刷層はベタ着色層および文字印刷層から構成され、前記ベタ着色層および前記文字印刷層が前記印刷層用インキ組成物からなる。
【0024】
前記アルミニウム基材と前記ヒートシール層との間に第2印刷層を有し、前記第2印刷層は前記印刷層用インキ組成物からなり、さらに、前記第2印刷層はベタ着色層、および文字印刷層から構成され、前記ベタ着色層および前記文字印刷層が前記印刷層用インキ組成物からなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のPTP包装用印刷インキ組成物はPTP包装の蓋材の耐熱被覆層に用いられるPTP包装用印刷インキ組成物であって、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含むことから、熱硬化時に発生するホルムアルデヒドを前記ホルムアルデヒド吸収剤により吸収することで、ホルムアルデヒドの発生量を抑制することができる。
【0026】
本発明の積層体は、PTP包装の蓋材として用いられる積層体であって、アルミニウム基材、前記アルミニウム基材上面に設けられた第1印刷層、および、前記印刷層上面に設けられた前記耐熱被覆層を有し、前記アルミニウム基材下面に少なくともヒートシール層を有し、前記耐熱被覆層は、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含むPTP包装用印刷インキ組成物からなることにより、前記積層体をPTP包装の容器にヒートシールする際に発生するホルムアルデヒドを前記ホルムアルデヒド吸収剤によって吸収することで、従来よりもホルムアルデヒドの発生量を抑制することができる。
【0027】
本発明の別の形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、PTP包装の蓋材の耐熱被覆層用インキ組成物、および、前記蓋材の印刷層用インキ組成物からなるPTP包装用印刷インキ組成物であって、前記耐熱被覆層用インキ組成物はエポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含み、前記印刷層用インキ組成物は塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むことことにより、熱硬化時にホルムアルデヒドを発生しないインキ組成物を実現する。
【0028】
本発明の別の形態の積層体は、PTP包装の蓋材として用いられる積層体であって、アルミニウム基材、前記アルミニウム基材上面に設けられた前記第1印刷層、および、前記第1印刷層上面に設けられた耐熱被覆層を有し、前記アルミニウム基材下面に少なくともヒートシール層を有し、前記耐熱被覆層は、エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む前記耐熱被覆層用インキ組成物からなり、前記第1印刷層は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む前記印刷層用インキ組成物からなることにより、前記積層体をPTP包装の容器にヒートシールする際にホルムアルデヒドを発生することが無く、従来のPTP包装におけるホルムアルデヒドによる問題を確実に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施形態の積層体の断面図である。
図2】第1の実施形態の積層体を用いたPTP包装の断面図である。
図3】第2の実施形態の積層体の断面図である。
図4】第2の実施形態の積層体を用いたPTP包装の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のPTP包装用印刷インキについて、以下に説明する。PTP包装の蓋材は、アルミニウム基材に、印刷層、耐熱被覆層、ヒートシール層等を設けた積層体であり、本発明の第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、PTP包装の蓋材の最外層となる耐熱被覆層に用いられるインキ組成物である。
【0031】
本発明の第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、少なくとも、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含む。前記エポキシ樹脂としては、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂で、エポキシ当量が2000〜3500g/eqであるものを用いることが好ましい。前記ポリビニルブチラール樹脂は、エポキシ樹脂と相溶性を有するものであればよく、特に限定するものではない。
【0032】
前記ホルムアルデヒド吸収剤としては、第1級アミン類、第2級アミン類、アミド類、イミン類、アミジン類、イミド類、尿素類、トリアジン類、ヒドラジン類、ヒドラジド類、および、グアニジン類のいずれかを用いることが好ましく、ヒドラジド類が最も好ましい。ヒドラジド類の具体例として、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジドおよび3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等のモノヒドラジド化合物、および、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジドおよび2,5−ナフトエ酸ジヒドラジド等の二塩基酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物を用いることができる。
【0033】
第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、その他に、硬化用触媒、および、溶剤(メタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、トルエン等)を含む。硬化用触媒としては酸触媒を用いることが好ましく、芳香族スルホン酸およびその塩を用いることができる。その他の溶剤については、特に限定するものではなく、必要に応じて適宜、配合することができる。
【0034】
本発明の第1の実施形態のPTP包装用インキ組成物は、ホルムアルデヒド吸収剤を含むことにより、耐熱被覆層を形成する際の熱硬化反応時に発生するホルムアルデヒドを吸収し、ホルムアルデヒドの発生を抑制することができるので、ホルムアルデヒドによる人体への悪影響を低減させることができる。
【0035】
次に、第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いた積層体1の発明について説明する。積層体1はPTP包装の蓋材として用いられ、積層体1の最外層となる耐熱被覆層4に第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いる。
【0036】
前記積層体1は、アルミニウム基材2、第1印刷層3、耐熱被覆層4、第2印刷層5、および、ヒートシール層6から構成され、図1に示すように、アルミニウム基材2の上面に、第1印刷層3、耐熱被覆層4の順で積層され、アルミニウム基材2の下面に、第2印刷層5、ヒートシール層6の順で積層されている。
【0037】
前記アルミニウム基材2は、PTP包装の蓋材に用いられる一般的なアルミニウム箔であり、厚みは数十μmとし、材質については特に限定するものではない。前記アルミニウム基材2の上面に設けられる前記第1印刷層3は、白ベタ印刷層7および文字印刷層8から構成される。前記白ベタ印刷層7は白色の着色層をベタ塗りで形成したものであり、前記白ベタ印刷層7の上に文字、模様等を含む文字印刷層8を形成している。
【0038】
前記白ベタ印刷層7および前記文字印刷層8には、PTP包装の蓋材の印刷層に一般的に用いられているインキ組成物をPTP包装の用途、種類等に応じて用いることができ、インキ組成物として、アミノ樹脂の硬化剤、ポリエステル系ウレタン樹脂、顔料等を含むインキ組成物が用いられる。アミノ樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂あるいはそれらの共重合樹脂などを使用できるが、ブチル化メラミン樹脂又はブチル化尿素樹脂が好ましい。前記白ベタ印刷層7および前記文字印刷層8を積層する順番については特に限定するものではなく、一方を省略することも可能である。
【0039】
前記耐熱被覆層4は、第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いて前記第1印刷層3上に形成されており、前記PTP包装用印刷インキ組成物は、少なくとも、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、および、ホルムアルデヒド吸収剤を含んでいる。
【0040】
前記アルミニウム基材2の下面に設けられる前記第2印刷層5は、文字印刷層9およびベタ着色印刷層10から構成される。前記文字印刷層9は、前記アルミニウム基材2の下面に、文字、模様等を印刷したものであり、前記文字印刷層9の下に前記ベタ着色印刷層10をベタ塗りで形成している。前記第2印刷層5については、PTP包装の種類、用途に応じて適宜設けられる層であり、前記第2印刷層5を設けない場合は前記アルミニウム基材2の下面に直接前記ヒートシール層6を形成することになる。
【0041】
前記ヒートシール層6は、積層体1を、PTP包装の容器にヒートシールによって封緘するために用いられ、熱封緘接着剤によって形成される。熱封緘接着剤は、前記積層体1がヒートシールされるPTP包装の材質に応じて適宜選択され、例えば、塩化ビニルコポリマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系等の樹脂を用いることができる。
【0042】
前記積層体1を、蓋材として用いたPTP包装11について説明する。図2に示すように、PTP包装11は容器12および蓋材1から構成され、前記容器12に、医薬品15を収容するための収容部13が設けられており、前記収容部13を封緘するために、前記容器12のフランジ14に前記積層体1がヒートシールされる。
【0043】
本発明の積層体1は、前記容器12にヒートシールする際に発生するホルムアルデヒドを、前記耐熱被覆層4に含まれるホルムアルデヒド吸収剤によって吸収することから、PTP包装11に収容された医薬品15等へのホルムアルデヒドによる影響を低減することができる。
【0044】
本発明のPTP包装用印刷インキ組成物は、ホルムアルデヒド吸収剤を含むことにより、耐熱被覆層を形成する際の熱硬化反応時に発生するホルムアルデヒド、および、積層体をPTP包装用の蓋材としてヒートシールする際に発生するホルムアルデヒドを吸収することができ、PTP包装内の医薬品等へのホルムアルデヒドの影響を大幅に低減させることができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物について説明する。第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、PTP包装の蓋材の最外層となる耐熱被覆層に用いられる耐熱被覆層用インキ組成物、および、前記蓋材の印刷層に用いられる印刷層用インキ組成物を含む。
【0046】
前記耐熱被覆層用インキ組成物は、エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含み、前記印刷層用インキ組成物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む。前記印刷層用インキ組成物は、蓋材に設けられる全ての印刷層に用いる必要がある。
【0047】
前記耐熱被覆層用インキ組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂で、エポキシ当量が2000〜3500g/eqであるものを用いることが好ましい。前記印刷層用インキ組成物に含まれる塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂としては、ビニルアルコールまたはビニルアクリレートとの共重合で、OH基で官能基化されたものであり、K値が35〜50であるものを用いることが好ましい。
【0048】
前記耐熱被覆層用インキ組成物および前記印刷層用インキ組成物に含まれるブロックイソシアネート硬化剤は、ブロック剤として活性メチレン系、アミン系、オキシム系、および、カプロラクタム系のいずれかを有し、解離温度が90〜120℃であるものを用いることが好ましい。特に、活性メチレン系でブロックされたHDI系のイソシアネート種を用いることが好ましい。
【0049】
前記耐熱被覆層用インキ組成物は、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤の他に、溶剤(メタノール、PGM、トルエン等)等を必要に応じて含むことができる。
【0050】
前記印刷層用インキ組成物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤の他に、顔料、ポリエステル系ウレタン樹脂、および、溶剤(メタノール、PGM、トルエン等)等を必要に応じて含むことができる。
【0051】
本発明の第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、前記耐熱被覆層用インキ組成物および前記印刷層用インキ組成物に含まれる硬化剤として、ホルムアルデヒドを発生するアミノ樹脂の硬化剤ではなく、ホルムアルデヒドを発生しないブロックイソシアネート硬化剤を用いることにより、熱硬化反応時にホルムアルデヒドを発生させなくすることが可能となり、ホルムアルデヒドによる影響を無くすことができる。
【0052】
次に、第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いた積層体1’の発明について説明する。積層体1’は、PTP包装の蓋材として用いられ、積層体1’の耐熱被覆層4’、第1印刷層3’および第2印刷層5’に、第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いる。第1の実施形態と同じ部材については同一の符号を用いて説明している。
【0053】
前記積層体1’は、アルミニウム基材2、第1印刷層3’、耐熱被覆層4’、第2印刷層5’、および、ヒートシール層6から構成され、図3に示すように、アルミニウム基材2の上面に、第1印刷層3’、耐熱被覆層4’の順で積層され、アルミニウム基材2の下面に、第2印刷層5’、ヒートシール層6の順で積層されている。
【0054】
前記アルミニウム基材2は、PTP包装の蓋材に用いられる一般的なアルミニウム箔であり、厚みは数十μmとし、材質については特に限定するものではない。前記アルミニウム基材2の上面に設けられる前記第1印刷層3’は、白ベタ印刷層7’および文字印刷層8’から構成される。前記白ベタ印刷層7’は、白色の着色層をベタ塗りで形成したものであり、前記白ベタ印刷層7’の上に、文字、模様等を含む文字印刷層8’を形成している。
【0055】
前記白ベタ印刷層7’および前記文字印刷層8’には、第2の実施形態のPTP包装用インキ組成物の印刷層用インキ組成物を用いる。前記印刷層用インキ組成物は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含んでいる。
【0056】
前記耐熱被覆層4’は、第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物の耐熱被覆層用インキ組成物を用いて前記第1印刷層3’上に形成されており、前記耐熱被覆層用インキ組成物は、少なくとも、エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含んでいる。
【0057】
前記アルミニウム基材2の下面に設けられる前記第2印刷層5’は、文字印刷層9’およびベタ着色印刷層10’から構成される。前記文字印刷層9’は、前記アルミニウム基材2の下面に、文字、模様等を印刷したものであり、前記文字印刷層9’の下に前記ベタ着色印刷層10’をベタ塗りで形成している。前記文字印刷層9’および前記ベタ着色印刷層10’には、第2の実施形態のPTP包装用インキ組成物の印刷層用インキ組成物を用いる。前記第2印刷層5’は、PTP包装の種類、用途に応じて適宜設けられる層であり、前記第2印刷層5’を設けない場合は前記アルミニウム基材2の下面に直接前記ヒートシール層6を形成することになる。
【0058】
前記ヒートシール層6は、積層体1’を、PTP包装の容器にヒートシールによって封緘するために用いられ、熱封緘接着剤によって形成される。熱封緘接着剤は、前記積層体1’がヒートシールされるPTP包装の材質に応じて適宜選択され、例えば、塩化ビニルコポリマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系等の樹脂を用いることができる。
【0059】
前記積層体1’を蓋材として用いたPTP包装11’について説明する。図4に示すように、PTP包装11’は容器12および蓋材1から構成され、前記容器12に、医薬品15を収容する収容部13が設けられており、前記収容部13を封緘するために、前記容器12のフランジ14に前記積層体1’がヒートシールされる。
【0060】
本発明の積層体1’は、前記容器12にヒートシールする際に、ホルムアルデヒドを発生するアミノ樹脂を耐熱被覆層および印刷層に含んでいないことから、熱硬化反応時にホルムアルデヒドを発生することがなく、ホルムアルデヒドによる問題を解消することができる。
【0061】
本発明のPTP包装用印刷インキ組成物は、硬化剤として、ホルムアルデヒドを発生しないブロックイソシアネート硬化剤を用いることにより、積層体を形成する際の熱硬化反応時、および、積層体をPTP包装用の蓋材としてヒートシールする際に、ホルムアルデヒドを発生させなくすることができ、PTP包装内の医薬品等へのホルムアルデヒドの影響をなくすことができ、さらに、従来と同等の耐熱性を確保することができる。
【0062】
次に、実施例1,2、および、比較例1,2を用いて、本発明のPTP包装用印刷インキ組成物の効果について説明する。
【実施例1】
【0063】
実施例1として、第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いた試料を用意する。実施例1の試料は、アルミニウム基材として、厚さ20μmの硬質アルミニウム箔を用意し、アルミニウム箔上に白ベタ着色層、および、墨文字層を印刷し、各々180℃で10秒間乾燥させる。その後、耐熱被覆層を塗工し、220℃で10秒間乾燥させた積層体を試料として用意した。
【0064】
白ベタ着色層用インキ組成物は、ブチル化尿素樹脂「ベッカミンP−138(DIC株式会社製)」を6重量部、二酸化チタン顔料を21重量部、塩化ビニルコーポリマー「ビンノールE15/40A(ワッカーケミカル社製)」を12重量部、ポリエステル系ウレタン樹脂「サンプレンIB−2000(三洋化成工業株式会社製)」を3重量部含有し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を5重量部、トルエンを10重量部、メチルエチルケトン(MEK)を40重量部含有したものを用いた。
【0065】
墨文字着色層用インキ組成物は、ブチル化尿素樹脂「ベッカミンP−138(DIC株式会社製)」を3重量部、カーボンブラック顔料を7重量部、塩化ビニルコーポリマー「ビンノールE15/40A(ワッカーケミカル社製)」を12重量部、ポリエステル系ウレタン樹脂「サンプレンIB−2000(三洋化成工業株式会社製)」を3重量部含有し、溶剤としてPGMを8重量部、トルエンを30重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0066】
耐熱被覆層のインキ組成物(第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物)は、ブチル化尿素樹脂「ベッカミンP−138(DIC株式会社製)」を6重量部、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂「JER1009(三菱化学株式会社製)」を22重量部、ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBX−1(積水化学工業社製) 」を1重量部、さらに硬化用触媒としてパラトルエンスルホン酸を0.1重量部、シリカ「ファインシールE−50(株式会社トクヤマ製)」を4重量部、溶剤としてメタノールを5重量部、PGMを8重量部、トルエンを18重量部、MEKを残部とし、合計100重量部の溶液を調製し、それに対してアルデヒド吸収剤「ケムキャッチP−9600(大塚化学株式会社製)」を10重量部を配合したものを用いた。
【実施例2】
【0067】
実施例2として、第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物を用いた試料を用意する。実施例2の試料は、アルミニウム基材として、厚さ20μmの硬質アルミニウム箔を用意し、アルミニウム箔上に白ベタ着色層、および、墨文字層を印刷し、各々180℃で10秒間乾燥させる。その後、耐熱被覆層を塗工し、220℃で10秒間乾燥させた積層体を試料として用意した。
【0068】
白ベタ着色層用インキ組成物(第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物の印刷層用インキ組成物)は、解離温度が110℃以下である活性メチレン系ブロック剤を有するブロックイソシアネート硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製)を6重量部、二酸化チタン顔料を21重量部、塩化ビニルコーポリマー「ビンノールE15/40A(ワッカーケミカル社製)」を12重量部、ポリエステル系ウレタン樹脂「サンプレンIB−2000(三洋化成工業株式会社製)」を3重量部含有し、溶剤としてPGMを5重量部、トルエンを10重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0069】
墨文字着色層用インキ組成物(第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物の印刷層用インキ組成物)は、解離温度が110℃以下である活性メチレン系ブロック剤を有するブロックイソシアネート硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製)を3重量部、カーボンブラック顔料を7重量部、塩化ビニルコーポリマー「ビンノールE15/40A(ワッカーケミカル社製)」を12重量部、ポリエステル系ウレタン樹脂「サンプレンIB−2000(三洋化成工業株式会社製)」を3重量部含有し、溶剤としてPGMを8重量部、トルエンを30重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0070】
耐熱被覆層のインキ組成物(第2の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物の耐熱被覆層用インキ組成物)は、解離温度が110℃以下である活性メチレン系ブロック剤を有するブロックイソシアネート硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製)を5重量部、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂「JER1009(三菱化学株式会社製)」を23重量部、ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBX−1(積水化学工業社製) 」を1重量部、シリカ「ファインシールE−50(株式会社トクヤマ製)」を4重量部、溶剤としてメタノールを5重量部、PGMを8重量部、トルエンを18重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0071】
比較例1
アルミニウム基材として、厚さ20μmの硬質アルミニウム箔を用意し、アルミニウム箔上に白ベタ着色層、および、墨文字層を印刷し、各々180℃で10秒間乾燥させる。その後、耐熱被覆層として、ホルムアルデヒド吸収剤を含まない耐熱インキ組成物を塗工し、220℃で10秒間乾燥させた積層体を試料として用意した。白ベタ着色層および墨文字層は、実施例1と同じインキ組成物を用いる。
【0072】
耐熱被覆層のホルムアルデヒド吸収剤を含まない耐熱インキ組成物は、ブチル化尿素樹脂「ベッカミンP−138(DIC株式会社製)」を6重量部、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂「JER1009(三菱化学株式会社製)」を22重量部、ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBX−1(積水化学工業社製)」を1重量部、さらに硬化用触媒としてパラトルエンスルホン酸を0.1重量部、シリカ「ファインシールE−50(株式会社トクヤマ製)」を4重量部、溶剤としてメタノールを5重量部、PGMを8重量部、トルエンを18重量部、MEKを残部として配合し、合計100重量部の溶液を用いた。
【0073】
比較例2
アルミニウム基材として、厚さ20μmの硬質アルミニウム箔を用意し、アルミニウム箔上に白ベタ着色層、および、墨文字層を印刷し、各々180℃で10秒間乾燥させる。その後、耐熱被覆層として、耐熱インキ組成物を塗工し、220℃で10秒間乾燥させた積層体を試料として用意した。白ベタ着色層、墨文字層、および、耐熱被覆層は、実施例2に用いたインキ組成物に含まれるブロックイソシアネート硬化剤をMEKオキシム系ブロック剤を有するものに変更したものを用いる。
【0074】
白ベタ着色層用インキ組成物は、解離温度が130℃以上であるMEKオキシム系ブロック剤を有するブロックイソシアネート硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製)を6重量部、二酸化チタン顔料を21重量部、塩化ビニルコーポリマー「ビンノールE15/40A(ワッカーケミカル社製)」を12重量部、ポリエステル系ウレタン樹脂「サンプレンIB−2000(三洋化成工業株式会社製)」を3重量部含有し、溶剤としてPGMを5重量部、トルエンを10重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0075】
墨文字着色層用インキ組成物は、解離温度が130℃以上であるMEKオキシム系ブロック剤を有するブロックイソシアネート硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製)を3重量部、カーボンブラック顔料を7重量部、塩化ビニルコーポリマー「ビンノールE15/40A(ワッカーケミカル社製)」を12重量部、ポリエステル系ウレタン樹脂「サンプレンIB−2000(三洋化成工業株式会社製)」を3重量部含有し、溶剤としてPGMを8重量部、トルエンを30重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0076】
耐熱被覆層のインキ組成物は、解離温度が130℃以上であるMEKオキシム系ブロック剤を有するブロックイソシアネート硬化剤(旭化成ケミカルズ株式会社製)を5重量部、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂「JER1009(三菱化学株式会社製)」を23重量部、ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBX−1(積水化学工業社製) 」を1重量部、シリカ「ファインシールE−50(株式会社トクヤマ製)」を4重量部、溶剤としてメタノールを5重量部、PGMを8重量部、トルエンを18重量部、MEKを40重量部含有したものを用いた。
【0077】
実施例1,2および比較例1,2の試料をそれぞれ用意し、ホルムアルデヒド発散量測定および耐熱性試験を行い、結果を表1に記載した。
【0078】
ホルムアルデヒド発散量測定
実施例1,2および比較例1,2それぞれについて500cmの試料を用意し、各試料を500mlのヘッドスペースボトルに入れ、100℃で2時間加熱してホルムアルデヒドを発生させた。その後、1時間掛けて常温に戻し、ガス検知管(株式会社ガステック製No.91L検知管)を用いてヘッドスペースボトル内のホルムアルデヒド濃度(ppm)を測定した。
【0079】
耐熱性試験
実施例1,2および比較例1,2の各試料において、印刷面の塗膜をお互いの面面で合わせて熱圧着を行い、コート層同士のブロッキングの無い温度160〜240℃の範囲で調査した。評価として、ブロッキングが見られなかった最も高い温度を示す。なお、熱圧着は、各温度において圧力0.3MPa、1秒間の条件下で行った。実用温度は200℃以上である。
【0080】
【表1】
【0081】
表1を参照すると、ホルムアルデヒド発散量は、実施例1は、比較例1に対して約30%低減されていることから、本発明の第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物におけるホルムアルデヒド吸収剤の有効性が認められる。また、耐熱性については、実施例1と比較例1は同じであり、本発明の第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は、従来と同等の耐熱性を有することかわかる。
【0082】
表1を参照すると、ブロックイソシアネート硬化剤を用いた実施例2および比較例2では、ホルムアルデヒド発散量がゼロとなっており、硬化剤としてアミノ樹脂の代わりにブロックイソシアネート硬化剤を用いることはホルムアルデヒド対策として極めて有効であることがわかる。また、耐熱性については、実施例2は、実施例1および比較例1とほぼ同等であり、PTP包装用インキ組成物として要求される性能を十分に満たしていることがわかる。しかしながら、実施例1とは異なる種類のブロックイソシアネート硬化剤を用いた比較例2は、耐熱性が他と比べて大幅に低くなっており、PTP包装用インキ組成物に求められる性能に応じて適宜ブロックイソシアネート硬化剤を選択する必要がある。
【0083】
以上のように、本発明のPTP包装用印刷インキ組成物および積層体は、従来のPTP包装用インキ組成物および積層体に求められる性能を十分に確保しながら、ホルムアルデヒドによる問題を解決することができる。
【0084】
本発明の第1の実施形態のPTP包装用印刷インキ組成物は耐熱被覆層に用いるインキ組成物であるが、印刷層に用いるインキ組成物については限定しておらず、第2の実施形態のPTP包装用インキ組成物のように、印刷層にブロックイソシアネート硬化剤を用いる必要はなく、従来のインキ組成物を用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
1,1’ 積層体
2 アルミニウム基材
3,3’ 第1印刷層
4,4’ 耐熱被覆層
5 第2印刷層
6 ヒートシール層
7,7’ 白ベタ印刷層
8,8’ 文字印刷層
9,9’ 文字印刷層
10,10’ ベタ着色印刷層
11,11’ PTP包装
12 容器
13 収容部
14 フランジ
15 医薬品
図1
図2
図3
図4