(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、熱交換器100を
図2のI−I線で切断した縦断面図である。
図2は、熱交換器100を
図1のII−II線で切断した横断面図である。
図3は、熱交換器100を
図1のII−II線で切断した斜視図である。
【0011】
熱交換器100は、水を貯留する容器10と、容器10内に蒸気を供給する供給部2と、容器10内に収容され、内部に熱媒体としての水が流通しており、貯留水及び蒸気と熱交換する伝熱管3と、容器10内の貯留水を排出するオーバーフロー管4と、容器10内の空気及び蒸気を排出する開放管5と、供給部2から供給される蒸気の流れを案内するガイド6とを備えている。熱交換器100は、蒸気及び貯留水と伝熱管3内の水とを熱交換させ、蒸気の熱を温水として熱回収する。尚、オーバーフロー管4及び開放管5は、
図1にのみ図示している。
【0012】
容器10は、円筒状に形成された周壁11と、天井部12と、底部13とを有している。容器10の下部は、水を貯留する貯留部14となっている。貯留部14には、初期状態として所定量の貯留水が貯留されていると共に、蒸気から発生したドレンを貯留水として貯留する。
【0013】
オーバーフロー管4は、水平方向に延び、容器10の周壁11を貫通している。オーバーフロー管4の下端部には、貯留水(ドレン)を排出するための配管(図示省略)が接続される。貯留部14に溜まった貯留水(ドレン)の水位がオーバーフロー管4の高さに達すると、一部のドレンは、オーバーフロー管4を介して排出される。つまり、オーバーフロー管4は、貯留部14の上限水位を規定する。
【0014】
開放管5は、容器10の周壁11を貫通している。開放管5は、オーバーフロー管4よりも高い位置に配置されており、容器10の上部空間を容器10の外部空間と連通させる。
【0015】
供給部2は、容器10の貯留水中に蒸気を供給する。供給部2は、環状の共通管21と、共通管21から分岐する複数(この例では8本)の分岐管22とを有している。
【0016】
共通管21は、容器10の周壁11を囲むように配置されている。共通管21には、蒸気供給管(図示省略)が接続されている。蒸気供給管には、例えば、蒸気使用装置の出口側又はドレンタンク等に接続されており、蒸気が供給される。
【0017】
分岐管22は、周壁11を貫通している。分岐管22の上流端は、共通管21に接続されている。分岐管22は、共通管21から水平に延びて周壁11を貫通する上流部23と、上流部23から下方に延びる中間部24と、中間部から水平に延びる下流部25とを有している。下流部25は、貯留部14の貯留水中に浸かっている。
【0018】
下流部25は、容器10の軸心Xを中心とする周方向に蒸気を噴出する。この例では、下流部25は、水平方向であって、容器10の軸心Xを中心とする半径方向に交差する方向に延びている。より具体的には、下流部25は、水平方向であって、下流部25の噴口における、軸心Xを中心とする接線方向に対して少し外側(即ち、軸心Xから離れる側)に向かって蒸気を噴出するように延びている。これら下流部25からの蒸気の噴出により、貯留水に軸心X回りの旋回流が生じる。
【0019】
ガイド6は、分岐管22ごとに設けられている。つまり、ガイド6は、分岐管22と同じ8個設けられている。ガイド6は、上壁61と一対の側壁62とを有している。上壁61は、長方形状に形成されている。一対の側壁62は、長方形状に形成され、上壁61のそれぞれの長辺から垂下している。ガイド6は、分岐管22の下流部25を囲む状態で容器10の底部13に載置される。ガイド6は、上壁61、側壁62、及び容器10の底部13によって閉断面を有する流路を形成する。ガイド6は、流路が下流部25からの蒸気の噴射方向に沿うように載置されている。すなわち、下流部25は、ガイド6が形成する流路内に蒸気を噴出する。
【0020】
伝熱管3は、容器10の周壁11に沿って周回するようにコイル状に形成されている。尚、
図1〜3では、伝熱管3を簡略化して一周のみ図示しているが、伝熱管3は複数回、周回している。伝熱管3の大部分(例えば、容器10内を周回している部分)は、貯留部14の貯留水中に浸かっている。伝熱管3は、ガイド6内を通るように配置されている。伝熱管3の一端部31及び他端部32は、鉛直方向に延び、天井部12を貫通し、容器10の外側まで延びている。伝熱管3の一端部31には、水供給管(図示省略)が接続され、伝熱管3の他端部32に、水排出管(図示省略)が接続されている。伝熱管3の一端部31から供給された冷水は、伝熱管3の内部を流通し、他端部32から排出される。冷水は、伝熱管3を流通する際に蒸気及び貯留水と熱交換して熱を回収する。伝熱管3を流れる水の向きは、
図1に示すように、分岐管22が蒸気を噴出する向き(即ち、貯留水の旋回流の向き)とは逆向きになっている。尚、伝熱管3は、伝熱部の一例である。
【0021】
このように構成された熱交換器100の動作について説明する。
【0022】
伝熱管3には、一端部31から他端部32へ向かって冷水が流通している。一方で、供給部2から容器10内に蒸気が供給される。容器10の貯留部14には初期状態の貯留水が存在する。供給部2の分岐管22は、貯留水に浸かっており、貯留水中に蒸気を供給する。分岐管22は、水平方向であって、容器10の軸心X回りの周方向に蒸気を噴出する。分岐管22から噴出された蒸気は、ガイド6によって案内され、噴出方向への流れがしばらく維持される。蒸気は、貯留水中を流通する間に、貯留水と熱交換し、凝縮してドレンとなる。ドレンは、貯留水と混ざり合い、貯留水が増加する。貯留水は、蒸気との熱交換及びドレンの混合によって温度が上昇する。貯留水は、伝熱管3と熱交換する。また、一部の蒸気は、伝熱管3と直接熱交換する。伝熱管3内の水は、伝熱管3を介して貯留水及び蒸気から熱を受け取り、温水となる。こうして、蒸気の熱が伝熱管3内の水によって回収される。
【0023】
貯留水が増加していくと、やがて、貯留水の水位は、オーバーフロー管4の高さに達する。すると、貯留水の一部は、オーバーフロー管4から排出されていく。また、供給部2から供給される蒸気に空気が混入している場合、空気は、貯留水を通過し、容器10の上部空間に滞留する。最終的に、空気は、開放管5から容器10の外部に排出される。
【0024】
このように構成された熱交換器100においては、蒸気が供給部2から貯留水中の水平方向に噴出されるので、蒸気を単純に上方に噴出する構成と比較して、蒸気が貯留水中を進む距離を長くすることができる。これにより、蒸気を貯留水の深い位置に噴出しなくても、蒸気と貯留水との接触時間を確保することができ、熱交換能力を確保することができる。それに加えて、蒸気を貯留水の深い位置に供給しなくてもよいので、蒸気の供給圧力を低減することができる。その結果、熱交換能力の向上と供給圧力の低減を両立することができる。
【0025】
さらに、供給部2から噴出された蒸気を水平方向に案内するガイド6を設けることによって、貯留水中に噴出された蒸気は、より長い間、水平方向に流れる。これにより、蒸気と貯留水との接触時間をより長くすることができる。
【0026】
特に、ガイド6は、蒸気の浮上を規制する上壁61を有しているので、蒸気が貯留水の水面まで浮上するまでの時間、即ち、蒸気と貯留水との接触時間をより長くすることができる。
【0027】
また、供給部2は、容器10の軸心Xを中心とする周方向に蒸気を噴出することによって、貯留水に旋回流を発生させることができる(
図2の太矢印参照)。その結果、貯留水中に噴出された蒸気は、旋回流の流れに乗って、貯留水中を進む距離がさらに延長される。これにより、蒸気が貯留水の水面に浮上するまでの時間を遅くさせ、蒸気と貯留水との接触時間をより長くすることができる。さらに、旋回流が発生することにより、伝熱管3と接する貯留水の流れが速くなり、伝熱管3と貯留水との熱交換が促進される。このことによっても、熱交換能力が向上する。
【0028】
さらに、供給部2は、軸心X回りの周方向における複数箇所に配置された複数の分岐管22を有している。そのため、周方向の複数箇所から蒸気が周方向に噴射される。これにより、旋回流がより発生しやすくなる。
【0029】
さらに、供給部2は、下流部25の噴口における、軸心Xを中心とする接線方向に対して少し外側(即ち、軸心Xから離れる側)に向かって蒸気を噴出する。仮に、接線方向に対して内側に向かって蒸気が噴出されると、蒸気は、軸心Xに向かって螺旋状に進み、比較的小さな半径の旋回流となる。それに対し、接線方向に対して外側に向かって蒸気が噴出されると、蒸気がそのまま進んだとしても、蒸気は、周壁11に当たり、周壁11に沿って流れる。その結果、比較的大きな半径の旋回流となる。これにより、蒸気が貯留水中を進む距離を長くすることができ、蒸気と貯留水との熱交換量を増加させることができる。
【0030】
それに加えて、ガイド6は、供給部2の蒸気の噴出方向に沿って延びている。これにより、蒸気の拡散を抑制し、蒸気の指向性を高め、旋回流をより生じやすくすることができる。特に、ガイド6は、供給部2の蒸気の噴出方向に沿って延びる一対の側壁62を有しているので、蒸気が軸心Xを中心とする半径方向の外側や内側に逸れていくことを防止し、蒸気の指向性を高めることができる。
【0031】
さらに、伝熱管3をガイド6内に配置することによって、伝熱管3と蒸気及び貯留水との熱交換を促進することができる。つまり、蒸気及び高温の貯留水が拡散することなく、集中的に流れる中に伝熱管3が配置されているので、より多くの蒸気及び高温の貯留水が伝熱管3と熱交換を行うようになる。
【0032】
また、伝熱管3は、高さ方向において、供給部2の噴口とガイド6の上壁61の間に配置されているので、供給部2の噴口から噴出された蒸気が上壁61まで浮上する間に、伝熱管3と接触しやすくなる。このことによっても、蒸気と伝熱管3との熱交換が促進される。
【0033】
さらに、上壁61まで浮上した蒸気は、ガイド6内を上壁61に沿って流れる。伝熱管3は、上壁61の下面に沿って(即ち、下面の近傍に)配置されている。そのため、上壁61に沿って流れる蒸気は、伝熱管3と接触しやすい。このことによっても、蒸気と伝熱管3との熱交換が促進される。
【0034】
以上のように、熱交換器100は、水(液体)を貯留する貯留部14が設けられた容器10と、貯留部14の水中に蒸気を供給する供給部2と、貯留部14内に収容され、貯留部14の水及び供給部2から供給された蒸気と熱交換を行う伝熱管3(伝熱部)とを備え、供給部2は、水平(即ち、貯留部14の水の深さ方向に対して直交する方向)に蒸気を噴出する。
【0035】
この構成によれば、貯留部14の水中に噴出された蒸気は、単純に上方に浮上するのではなく、水平方向に流れながらしだいに浮上していく。そのため、蒸気が貯留水中を進む距離が長くなり、蒸気と貯留水との接触時間も長くなる。これにより、貯留水中の比較的深い位置から蒸気を供給しなくても、熱交換能力を確保することができる。さらには、貯留水中の比較的浅い位置から供給することができるので、蒸気使用装置等から蒸気を排出する圧力、即ち、蒸気の供給圧力を低減することができる。これらの結果、熱交換能力の向上と蒸気の供給圧力の低減とを両立させることができる。
【0036】
また、熱交換器100は、供給部2から噴出された蒸気の流れを案内するガイド6をさらに備え、ガイド6は、供給部2から噴出された蒸気を、水平(即ち、深さ方向に対して直交する方向)に案内する。
【0037】
この構成によれば、貯留水中に噴出された蒸気が水平方向に進む距離がより長くなる。その結果、蒸気が貯留水の水面まで浮上するまでの時間が遅くなり、蒸気と貯留水との接触時間がより長くなる。
【0038】
さらに、ガイド6は、蒸気の浮上を規制して、蒸気を水平(即ち、深さ方向に対して直交する方向)に案内する上壁61を有し、伝熱管3の少なくとも一部は、上壁61の下方に配置されている。
【0039】
この構成によれば、貯留水中に噴出された蒸気は、上壁61によって浮上が規制され、上壁61の下方を上壁61に沿って流れる。そして、上壁61の下方には、伝熱管3が配置されているので、蒸気と伝熱管3との接触が促進される。その結果、熱交換能力を向上させることができる。
【0040】
また、供給部2は、貯留部14において、深さ方向に延びる軸心X回りの旋回流が発生する方向に蒸気を噴出する。
【0041】
この構成によれば、貯留水に軸心X回りの旋回流が発生するようになる。蒸気の噴出方向による効果に加えて、蒸気が旋回流に乗って流れることによっても、蒸気が貯留水中を進む距離が長くなる。それに加えて、旋回流が発生することにより、伝熱管3と接する貯留水の流れが速くなり、伝熱管3と貯留水との熱交換が促進される。
【0042】
さらに、供給部2は、貯留部14において、深さ方向に延びる軸心X回りの周方向における複数箇所から蒸気を噴出する。
【0043】
この構成によれば、軸心X回りの周方向における複数箇所から蒸気が噴出されるので、旋回流が発生しやすくなる。
【0044】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0045】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0046】
例えば、熱交換器100の各要素の構成は、一例に過ぎず、様々な構成を採用することができる。
【0047】
熱交換器100は、伝熱部として伝熱管3を採用しているが、これに限られるものではない。伝熱管3は、コイル状でなくてもよい。また、伝熱管3は、フィンチューブ型であってもよい。さらには、伝熱部は、ヒートシンク等であってもよい。
【0048】
供給部2は、8個の分岐管22を有し、容器10の複数箇所から蒸気を供給しているが、これに限られるものではない。供給部2は、容器10の1箇所から蒸気を供給してもよい。また、分岐管22の個数は、7個以下であってもよく、9個以上であってもよい。
【0049】
さらに、供給部2は、蒸気を貯留水中に水平に噴出しているが、貯留水の深さ方向に対して傾斜又は直交する方向に蒸気を噴出する限り、任意の方向に蒸気を噴出することができる。蒸気を単純に上方に噴出する構成と比較して、蒸気を深さ方向に対して少なくとも傾斜させることによって、比較的浅い位置から蒸気を噴出したとしても蒸気が貯留水中を進む距離を確保することができる。つまり、供給圧力を低減しつつ、熱交換能力を確保することができる。例えば、下流部25は、中間部24から水平方向ではなく、斜め下方又は斜め上方に延びていてもよい。
【0050】
また、供給部2は、蒸気を軸心X回りの周方向に噴出しているが、これは好ましい例であり、供給部2は、蒸気をそれ以外の方向に噴出してもよい。例えば、供給部2は、蒸気を軸心Xを中心とする半径方向内側又は外側に蒸気を噴出してもよい。ただし、貯留水に旋回流を発生させる観点からは、供給部2は、蒸気を半径方向に対して傾斜又は直交する方向に蒸気を噴出することが好ましい。
【0051】
また、ガイド6は、省略してもよい。ただし、蒸気の拡散を防止して、旋回流の発生の促進又は伝熱管3との熱交換を促進のためには、ガイド6を設けることが好ましい。