(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827329
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】蓋付き包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/08 20060101AFI20210128BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
B65D43/08 200
B65D77/20 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-6475(P2017-6475)
(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公開番号】特開2018-115002(P2018-115002A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】原 光広
(72)【発明者】
【氏名】高山 晃一
【審査官】
武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−29576(JP,A)
【文献】
特開2007−55656(JP,A)
【文献】
特開2000−226071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/08−43/10
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の容器本体と、前記容器本体に開閉自在に外嵌合される合成樹脂製の蓋を備え、
前記蓋の略外周に、外側に向かって降りる段差状の段差嵌合部と、前記段差嵌合部から連なって外側に突出する蓋突出部と、前記蓋突出部の外端から外側に向かって上方に延びる蓋折返部と、前記蓋折返部の外端から外側に向かって略水平に延びる蓋水平端部が設けられ、
前記容器本体の略外周に、外側に向かって降りる段差状の段差被嵌合部と、前記段差被嵌合部から連なって外側に突出する本体突出部と、前記本体突出部の外端から外側に向かって上方に延びる本体折返部と、前記本体折返部の外端から外側に向かって略水平に延びる本体水平端部が設けられ、
前記段差被嵌合部に前記段差嵌合部が着脱自在に外嵌合されて前記蓋で前記容器本体が略密閉され、
前記嵌合状態で、前記段差被嵌合部の周壁部の一部で前記段差嵌合部の周壁部が常時付勢されて、前記蓋突出部、前記蓋折返部、前記蓋水平端部がそれぞれ前記本体突出部、前記本体折返部、前記本体水平端部に略倣うように配置され、前記蓋水平端部の外端と前記本体水平端部の外端の突出位置が略同一になっていることを特徴とする蓋付き包装用容器。
【請求項2】
前記嵌合状態における前記蓋水平端部の外端の下端部と前記本体水平端部の外端の上端部との離間距離が1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の蓋付き包装用容器。
【請求項3】
前記段差嵌合部の前記周壁部の付勢される箇所よりも下側の位置に内方に突出する内方突部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の蓋付き包装用容器。
【請求項4】
前記内方突部が前記蓋の周方向に断続的に形成されていることを特徴とする請求項3記載の蓋付き包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、食材等が収容される合成樹脂製の蓋付き包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の包装用容器の被嵌合部に合成樹脂製の蓋の嵌合部を被せるように外嵌合する蓋付き包装用容器が知られている。例えば特許文献1には、包装用容器の被嵌合部に蓋の嵌合部が被せるように外嵌合されると共に、蓋の嵌合部の外端から下方に垂下する蓋垂下部の先端に内方に突出する蓋突出部が形成され、包装用容器の被嵌合部から下方に垂下する容器垂下部の最下部に蓋突出部が係止される蓋付き包装用容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−202340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の蓋付き包装用容器は、包装用容器の被嵌合部から下方に垂下する容器垂下部の最下部に、蓋の嵌合部の外端から下方に垂下する蓋垂下部の先端に設けられる蓋突出部を係止することにより、蓋が容器から外れにくくし密閉性を高めている。しかしながら、この蓋付き包装用容器の構造では、包装用容器の被嵌合部から下方に垂れ下がるように容器垂下部を設け、蓋の嵌合部の外端から下方に垂れ下がるように蓋垂下部を設け、更にその先に蓋突出部を設けるため、蓋付き包装用容器の全体の周縁が垂れ下がった形状となり、デザイン性に劣る。また、かなり長めに垂下する容器垂下部、かなり長めに垂下する蓋垂下部と蓋突出部を容器周縁に形成するため、合成樹脂材が余分に必要になり高コストになるという問題もある。そのため、容器から蓋が外れにくくして密閉性を高められると共に、低コストでデザイン性に優れる蓋付き包装用容器が求めている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、常時は容器から蓋が外れにくく高い密閉性を得ることができると共に、低コストでデザイン性に優れる蓋付き包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓋付き包装用容器は、
合成樹脂製の容器本体と、前記容器本体に開閉自在に外嵌合される合成樹脂製の蓋を備え、前記蓋の略外周に、外側に向かって降りる段差状の段差嵌合部と、前記段差嵌合部から連なって外側に突出する蓋突出部と、前記蓋突出部の外端から外側に向かって上方に延びる蓋折返部と、前記蓋折返部の外端から外側に向かって略水平に延びる蓋水平端部が設けられ、前記容器本体の略外周に、外側に向かって降りる段差状の段差被嵌合部と、前記段差被嵌合部から連なって外側に突出する本体突出部と、前記本体突出部の外端から外側に向かって上方に延びる本体折返部と、前記本体折返部の外端から外側に向かって略水平に延びる本体水平端部が設けられ、前記段差被嵌合部に前記段差嵌合部が着脱自在に外嵌合されて前記蓋で前記容器本体が略密閉され、前記嵌合状態で、
前記段差被嵌合部の周壁部の一部で前記段差嵌合部の周壁部が常時付勢されて、前記蓋突出部、前記蓋折返部、前記蓋水平端部がそれぞれ前記本体突出部、前記本体折返部、前記本体水平端部に略倣うように配置され、前記蓋水平端部の外端と前記本体水平端部の外端の突出位置が略同一になっていることを特徴とする。
これによれば、蓋と容器本体が外嵌合で略密閉されると共に、蓋突出部、蓋折返部、蓋水平端部がそれぞれ本体突出部、本体折返部、本体水平端部に略倣うように配置され、更に蓋水平端部の外端と本体水平端部の外端の突出位置が略同一の受け皿状となることから、蓋付き包装用容器を下から持ち上げた際に蓋が外れることを確実に防止することが可能となり、常時は外力や振動で蓋が外れにくく蓋と容器本体の高い密閉性を得ることができる。従って、食品、食材等を収容した容器本体と蓋を接着テープで留める等の更なる密閉状態を維持する構成を用いずとも密閉状態が運搬等に耐えうる蓋付き包装用容器を得ることができる。また、長めに垂れ下がる垂下部を蓋や容器に形成する必要がないことから、余分な合成樹脂材を使用する必要が無く製造コストを低減することができると共に、デザイン性を高めることができる。
また、段差被嵌合部の周壁部の一部で段差嵌合部の周壁部を常時付勢して、蓋水平端部の外端と本体水平端部の外端の突出位置を略同一にしていることから、蓋水平端部に内外方向等の弾力性、柔軟性を付与することができ、この蓋水平端部の弾力性、柔軟性で利用者が意図的に蓋を外す動作を行った際にはスムーズに蓋を外させることができる。
【0007】
本発明の蓋付き包装用容器は、
前記嵌合状態における前記蓋水平端部の外端の下端部と前記本体水平端部の外端の上端部との離間距離が1mm以下であることを特徴とする。
これによれば、
蓋水平端部の外端と本体水平端部の外端とが離れすぎて意図しない蓋の離脱が発生することを防止し、より高い安定性を有する蓋と容器本体の密閉状態を得ることができる。
【0008】
本発明の蓋付き包装用容器は、
前記段差嵌合部の前記周壁部の付勢される箇所よりも下側の位置に内方に突出する内方突部が形成されていることを特徴とする。
これによれば、
内方突部が付勢箇所に引っ掛かることで、より一層確実に意図しない蓋の離脱が発生することを防止することができる。また、内方突部がある箇所とない箇所の屈曲で段差嵌合部の周壁部の機械的強度を高めることができ、蓋水平端部の外端と本体水平端部の外端の突出位置が略同一になっている状態の安定性、耐久性を高めることができる。
【0009】
本発明の蓋付き包装用容器は、
前記内方突部が前記蓋の周方向に断続的に形成されていることを特徴とする。
これによれば、
内方突部がある箇所とない箇所の屈曲で弾力性を高めることができ、蓋水平端部の弾力性、柔軟性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、常時は蓋が外れにくく高い密閉性を得ることができると共に、低コストでデザイン性に優れる蓋付き包装用容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の蓋付き包装用容器の分解斜視図。
【
図3】実施形態の蓋付き包装用容器の外端周辺を示す部分拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態の蓋付き包装用容器〕
本発明の実施形態の蓋付き包装用容器10は、
図1〜
図3に示すように、平面視略矩形の包装用容器である容器本体20と、容器本体20に開閉自在に外嵌合される平面視略矩形の蓋30とから構成される。容器本体20、蓋30は、それぞれ合成樹脂で全体に亘って薄肉板状に形成されており、図示例の蓋30は透明な合成樹脂で形成されている。
【0013】
容器本体20は、略中央に盛り上がった隆起部211を有する底部21と、底部21の周囲から上側に向かって外方に傾斜するように立設する側壁22を備え、側壁22は容器本体20の全周に亘って周状に設けられている。
【0014】
容器本体20の略外周には、側壁22の上側に連なるように設けられ、外側に向かって降りる段差状の段差被嵌合部23と、段差被嵌合部23から連なって外側に突出する本体突出部24と、本体突出部24の外端から外側に向かって上方に延びる本体折返部25と、本体折返部25の外端から外側に向かって略水平に延びる本体水平端部26が設けられている。段差被嵌合部23の略垂直に延びる周壁部231の上部には外方に突出する外方突条231aが全周に亘って形成されている。本体水平端部26にはエンボス加工による小凹凸が表裏面に形成されている。
【0015】
蓋30は、天板31と、天板31の周囲から下側に向かって外方に傾斜するように延びて形成されている側壁32を備え、側壁22は蓋30の全周に亘って周状に設けられている。蓋30の略外周には、側壁32の下側に連なるように設けられ、外側に向かって降りる段差状の段差嵌合部33と、段差嵌合部33から連なって外側に突出する蓋突出部34と、蓋突出部34の外端から外側に向かって上方に延びる蓋折返部35と、蓋折返部35の外端から外側に向かって略水平に延びる蓋水平端部36が設けられている。
【0016】
段差嵌合部33の略垂直に延びる周壁部331の下部には内方に突出する内方突部331aが形成されている。本実施形態の内方突部331aは、蓋30の周方向に連続的に形成されているが、蓋30の周方向に所定間隔を開けて断続的に形成しても良好である。内方突部331aを蓋30の周方向に断続的に形成する場合には、内方突部331aがある箇所とない箇所の屈曲で弾力性を高めることができ、蓋水平端部36の弾力性、柔軟性を一層高めることができる。内方突部331aは、後述する容器本体20の段差被嵌合部23に蓋30の段差嵌合部33を外嵌合した状態で、段差嵌合部33の周壁部331の付勢される箇所よりも下側の位置になるように設けられている。
【0017】
容器本体20に蓋30を外嵌合して構成した蓋付き包装用容器10では、容器本体20の段差被嵌合部23に蓋30の段差嵌合部33が着脱自在に被さるように外嵌合されて蓋30で容器本体20が略密閉される。この略密閉した嵌合状態では、
図3に示すように、蓋30の蓋突出部34、蓋折返部35、蓋水平端部36が、それぞれ容器本体20の本体突出部24、本体折返部25、本体水平端部26に略倣うように配置される。
【0018】
そして、容器本体20の段差被嵌合部23の周壁部231の少なくとも一部で蓋30の段差嵌合部33の周壁部331が常時付勢されて、蓋水平端部34の外端と本体水平端部24の外端の突出位置が略同一になるように構成されている。本実施形態では段差被嵌合部23の周壁部231の外方突条231aで、段差嵌合部33の周壁部331が内方突部331aよりも上側の位置で常時付勢されることにより、蓋水平端部36の外端の外側への突出位置L2と本体水平端部26の外端の外側への突出位置L1が略同一になっている。尚、この突出位置L1とL2の「略同一」には、突出位置L1と突出位置L2の差が0.5mm以下である場合が含まれ、また、好適には突出位置L1と突出位置L2の差を0mmとすると望ましい。
【0019】
更に、この略密閉した嵌合状態においては、蓋水平端部36の外端の下端部と本体水平端部26の外端の上端部との離間距離Hを1mm以下とすると好適であり、より好ましくはこの離間距離Hを0mmとするとよい。これにより、蓋水平端部36の外端と本体水平端部26の外端とが離れすぎて意図しない蓋の離脱が発生することを防止し、より高い安定性を有する蓋30と容器本体20の密閉状態を得ることができる。
【0020】
本実施形態の蓋付き包装用容器10によれば、蓋30と容器本体20が外嵌合で略密閉されると共に、蓋突出部34、蓋折返部35、蓋水平端部36がそれぞれ本体突出部24、本体折返部25、本体水平端部26に略倣うように配置され、更に蓋水平端部36の外端と本体水平端部26の外端の突出位置が略同一の受け皿状となることから、蓋付き包装用容器を10下から持ち上げた際に蓋30が外れることを確実に防止することが可能となり、常時は外力や振動で蓋30が外れにくく蓋30と容器本体20の高い密閉性を得ることができる。従って、食品、食材等を収容した容器本体20と蓋30を接着テープで留める等の更なる密閉状態を維持する構成を用いずとも密閉状態が運搬等に耐えうる蓋付き包装用容器10を得ることができる。また、長めに垂れ下がる垂下部を蓋や容器に形成する必要がないことから、余分な合成樹脂材を使用する必要が無く製造コストを低減することができると共に、デザイン性を高めることができる。
【0021】
また、段差被嵌合部23の外周面の少なくとも一部で段差嵌合部33の周壁部331を常時付勢して、蓋水平端部36の外端と本体水平端部26の外端の突出位置を略同一にしていることから、蓋水平端部36に内外方向等の弾力性、柔軟性を付与することができ、この蓋水平端部36の弾力性、柔軟性で利用者が意図的に蓋30を外す動作を行った際にはスムーズに蓋30を外させることができる。
【0022】
また、段差嵌合部33の周壁部331の付勢される箇所よりも下側の位置に内方突部331aを形成することにより、内方突部331aが付勢箇所に引っ掛かることで、より一層確実に意図しない蓋30の離脱が発生することを防止することができる。また、内方突部331aがある箇所とない箇所の屈曲で段差嵌合部33の周壁部331の機械的強度を高めることができ、蓋水平端部36の外端と本体水平端部26の外端の突出位置が略同一になっている状態の安定性、耐久性を高めることができる。
【0023】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0024】
例えば本発明の蓋付き包装用容器における容器本体の平面視形状、蓋の平面視形状は、上記実施形態の平面視矩形に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば平面視略六角形、平面視略八角形、平面視略十二角形等の平面視略多角形の容器本体と蓋、或いは平面視略円形若しくは平面視略楕円形の容器本体と蓋とすることも可能である。
【0025】
また、容器本体20の段差被嵌合部23の周壁部231の少なくとも一部で蓋30の段差嵌合部33の周壁部331を常時付勢する構成は、段差被嵌合部23の周壁部231の外方突条231aで段差嵌合部33の周壁部331を常時付勢する構成に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で適宜である。また、蓋30の段差嵌合部33の周壁部331は内方突部331aを設けない構成とすることも可能である。
【0026】
また、上記実施形態では、容器本体20の段差被嵌合部23の周壁部231の少なくとも一部で蓋30の段差嵌合部33の周壁部331を常時付勢して、蓋水平端部36の外端と本体水平端部26の外端の突出位置を略同一にする構成としたが、容器本体20の段差被嵌合部23の周壁部231が蓋30の段差嵌合部33の周壁部331を常時付勢することなく、蓋水平端部36の外端と本体水平端部26の外端の突出位置を略同一にする構成も、本発明の蓋付き包装用容器に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えば食品、食材等を収容する蓋付き包装用容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…蓋付き包装用容器 20…容器本体 21…底部 211…隆起部 22…側壁 23…段差被嵌合部 231…周壁 231a…外方突条 24…本体突出部 25…本体折返部 26…本体水平端部 30…蓋 31…天板 32…側壁 33…段差嵌合部 331…周壁 331a…内方突部 34…蓋突出部 35…蓋折返部 36…蓋水平端部 L1…本体水平端部の外端の突出位置 L2…蓋水平端部の外端の突出位置 H…蓋水平端部の外端の下端部と本体水平端部の外端の上端部との離間距離