(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827353
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】半導体装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20210128BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
H01L23/28 A
H01L23/12 K
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-65908(P2017-65908)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-170376(P2018-170376A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】門井 聖明
【審査官】
井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−070749(JP,A)
【文献】
実開昭55−062051(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを覆う封止体から引き出された複数のリードからなる半導体装置であって、
前記リードが前記封止体の一主面から引き出され、前記一主面に対し垂直方向に延出された直線状リードと、
前記直線状リードと離間し、前記直線状リードを螺旋状に取り巻く螺旋状リードと、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記螺旋状リードのリード延出部が前記一主面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記螺旋状リードのリード延出部が前記一主面と異なる面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記一主面と異なる面が前記封止体の側面であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記螺旋状リードの螺旋ピッチは一定であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記螺旋状リードが複数の螺旋状リードからなり、多重螺旋構造を成すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記直線状リードの中心から前記複数の螺旋状リードの各々までの距離である半径が前記複数の螺旋状リードの各々で同じであることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記直線状リードの中心から前記複数の螺旋状リードの各々までの距離である半径が前記複数の螺旋状リードの各々で異なることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数の螺旋状リードの少なくとも1つの前記螺旋状リードのリード延出部が前記一主面に設けられ、少なくとも他の1つの前記螺旋状リードのリード延出部が前記一主面と異なる面に設けられていることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記一主面と異なる面が前記封止体の側面であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の半導体装置を実装基板に実装した電子装置であって、
前記螺旋状リードを接合する前記実装基板には前記螺旋状リードが貫通する貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は前記螺旋状リードに沿った形状であることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を実装する実装基板に対する取り付け高さを任意に調整できる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の半導体装置を実装基板に実装した電子装置の側面図である。
半導体装置11のリード12は半田9を介して実装基板13に実装され、実装基板13と半導体装置11は電気的に接続されている。半導体装置11は磁気センサのような磁気を検出する素子を搭載している場合、センシングする被測定物(例えば、磁石)との距離15が、その検出感度に重要な影響を与える。センサとして機能する半導体装置と被測定物との距離15は検出感度にとって重要な要因であり、実装基板13への半導体装置11の取り付け高さ14を精度良く調整する必要がある。
【0003】
特許文献1には、半導体集積回路装置の複数のリードピンが、それぞれ対応する回路配線を有する基板の実装穴に、金属からなる固定用部材を半導体集積回路装置と基板との間に介在させて挿入され、金属からなる固定用部材がリードピンの所定位置に取付けられて基板に半導体集積回路装置が固定されている電子装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数のリードの中間部分を側方に突出するように円弧状に屈曲させ、その屈曲部を利用して配線基板に半導体装置を固定するという半導体リード構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−235628号公報
【特許文献2】特開2002−93978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電子装置では、ストレート形状のリードピンの所定位置に固定用部材を取付けて固定する方式であるから高さバラツキが大きく、取り付け高さを精度良く制御することは困難である。
【0007】
また、特許文献2に開示された半導体リード構造では、実装基板への取り付け高さを所定の高さとすることはできるが、屈曲部の位置が決められており、半導体装置を実装する顧客側で自由に高さ調節することができない。そのため、半導体装置としての電気特性は同じながらもリード形状のみが異なる製品を顧客ごとに多数生産することになり、生産管理が煩雑になるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、半導体装置を実装基板に実装する際に、取り付け高さを精度良く調整できる半導体装置および電子装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を用いた。
半導体チップを覆う封止体から引き出された複数のリードからなる半導体装置であって、
前記リードが前記封止体の一主面から引き出され、前記一主面に対し垂直方向に延出された直線状リードと、
前記直線状リードと離間し、前記直線状リードを螺旋状に取り巻く螺旋状リードと、
を備える半導体装置とした。
【0010】
また、半導体装置を実装基板に実装した電子装置であって、
前記螺旋状リードを接合する前記実装基板には前記螺旋状リードが貫通する貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は前記螺旋状リードに沿った形状であることを特徴とする電子装置とした。
【発明の効果】
【0011】
上記手段を用いることで、半導体装置を実装基板に実装する際に、取り付け高さを精度良く調整できる半導体装置および電子装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の下面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を実装基板に実装した電子装置の側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を実装する実装基板の貫通孔部拡大図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を実装基板に実装したときの上面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
【
図8】従来の半導体装置を実装基板に実装した電子装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の半導体装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1は、半導体チップ(図示せず)を樹脂で被覆した円柱形状の樹脂封止体10と樹脂封止体10の底面である一主面4から垂直方向に伸びた複数のリード2a、2b,3とから構成されている。樹脂封止体内で複数のリード2a、2b,3と半導体チップ上の電極は電気的に接続されている。複数のリードは、1本の直線状リード3と直線状リード3と離間してこれを螺旋状に取り巻く複数の螺旋状リード2a、2bとからなり、1本の直線状リード3は一主面4のほぼ中心から軸方向へ直線的に伸び、螺旋状リード2a、2bは一主面4の径方向の外周付近から軸方向に螺旋的に伸びて、多重螺旋構造を形成している。このときの螺旋の向きは右巻き、左巻きのいずれでも構わないが、複数の螺旋状リードの巻方向は同一である。一主面4における直線状リード3の中心から螺旋状リードまでの距離である半径rは螺旋状リード2aと螺旋状リード2bとで等距離で、この半径rは螺旋状リード2a、2bが周回を重ねても変わらずに常に一定である。また、螺旋状リード2aの螺旋ピッチ21は常に一定で、螺旋状リード2bにおいても同一の螺旋ピッチ21を有する。後述するように、この螺旋ピッチ21の大小によって実装基板上に半導体装置を実装するときの高さ精度が変わることになる。
【0014】
上記では半導体チップの封止体を樹脂封止体として説明したが、本発明においては樹脂封止体に限定されることなく、メタルCANで半導体チップを覆った封止体を利用した半導体装置としても良い。また、螺旋状リードが複数である多重螺旋構造を例に説明したが、螺旋状リードは1本でも良い。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の下面図である。
左図は半導体装置1の樹脂封止体が円柱形、右図は半導体装置1の樹脂封止体が長方体の例である。樹脂封止体の一主面4上には複数のリード延出部7が設けられおり、一主面4の中心部に1箇所、周辺部に2箇所のリード延出部7が設けられ、周辺部のリード延出部7の1箇所から螺旋状リード2a、他の1箇所から螺旋状リード2b、そして、中心部のリード延出部7から直線状リード3が延伸されている。図示された点線は一主面4の中心部を中心とした円を示しており、この円の円周に沿って螺旋状リード2a、2bが形成され、一主面4における直線状リード3の中心から螺旋状リードまでの距離である半径rは螺旋状リード2aと螺旋状リード2bとで等距離である。さらに、螺旋状リード2aおよび2bに対応するリード延出部7は直線状リード3に対応するリード延出部7を中心として対称の位置に設けられている。もし、搭載された半導体チップが4端子であれば、周辺部に設けられるリード延出部7は3箇所となり、中心角120°で均等に分割された円周上に3つのリード延出部7が位置することになる。このように端子数が増えた場合は、その数に応じてリード延出部7を円周上に均等に配置すれば良い。
【0016】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を実装基板に実装した電子装置の側面図である。
実装基板13に予め設けられた複数の貫通孔に、半導体装置1の樹脂封止体10から延伸された螺旋状リード2aおよび2b、直線状リード3をネジのように回転させながら押し込み、所定の取り付け高さ5および所定の向きになった時点で止め、実装基板13とリードとを半田9を介して接合する。そして、実装基板13の下面から飛び出した不要なリードを切断して電子装置の製造完了となる。螺旋状リード2a,2bの螺旋ピッチ21は任意に決められるが、螺旋ピッチ21を大きくすると、1回の回転による押し込み量は大きく、逆に螺旋ピッチ21を小さくすると、1回の回転による押し込み量は小さくなる。半導体装置1の高さ精度を厳しく管理したい場合は、螺旋ピッチ21を小さくしたほうが有利である。
【0017】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を実装する実装基板の貫通孔部拡大図である。(a)は側面図、(b)は平面図である。
図4(a)に示すように、実装基板13にはその上表面から下面に至る貫通孔22が3箇所設けられ、中央の貫通孔22は直線状リード用の孔で、両端の貫通孔22は螺旋状リード用の孔である。この側面図では理解しにくいが、左端の貫通孔は上表面から下面にいくに従って紙面の手前から奥方向やや右寄りに傾斜しており、右端の貫通孔は上表面から下面にいくに従って紙面の奥から手前方向やや左寄りに傾斜している。中央の貫通孔22は実装基板13の基板平面に対し垂直な貫通孔である。
【0018】
次に、
図4(b)の平面図にて、各々の貫通孔22の傾斜の様子について説明する。3箇所の貫通孔の貫通孔入口22aは横一直線に並んでいるが、両端の貫通孔においては、貫通孔出口22bは貫通孔入口22aと完全に重畳せずにずれている。左端の貫通孔では貫通孔入口22aに対し貫通孔出口22bが図の上方やや右寄りにずれている。これは、貫通孔22が上表面から下面にいくに従って手前から奥方向やや右寄りに傾斜していることを示すものである。また、右端の貫通孔22では貫通孔入口22aに対し貫通孔出口22bが図の下方やや左寄りにずれている。これは、貫通孔が上表面から下面にいくに従って手前から奥方向やや左寄りに傾斜していることを示すものである。なお、両端の貫通孔22の貫通孔入口22aと貫通孔出口22bは平面視的に螺旋状リードの描く円周に沿って設けられる。また、この貫通孔の傾斜の度合いは螺旋状リードの傾斜と合致したものであり、螺旋状リードの螺旋ピッチや半径から決まるものである。これらの傾斜の度合いは既知であるから、実装基板へ半導体装置を取り付ける際、取り付け時の回転数さえ知っていれば精度良く所定の高さに実装することが可能である。
【0019】
もし、上記のような形状の貫通孔22の形成が困難であれば、両端の貫通孔22を実装基板13の基板平面に対し垂直な形状の貫通孔としても構わないが、その際は螺旋状リード2a,2bが貫通できるように幅広に設ける必要がある。
【0020】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を実装基板に実装したときの上面図である。
螺旋状リードを実装基板13の貫通孔に通して、半導体装置を回転させる事で、その取り付け高さを精度良く変えられることは上述のとおりだが、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置では高さと同時に取り付け向きを任意に決めることもできる。例えば、半導体装置1が指向性の高いセンサの場合、センシングしたい被検出対象(例えば、光や音)に対し検出感度の良好な方向(センシング方向)6に半導体装置1を実装することが容易である。左図では発光体(電球型)と半導体装置1のセンシング方向6が合っていないが、半導体装置1を90°左に回転させるだけで被検出対象を検出感度良く検出することが可能となる。これは半導体装置1の第一の平面4に対して円の円周に沿うように螺旋状リード2a,2bを設けたためである。また、半導体装置1のセンシング方向6を変えることでその取り付け高さ5も変わることになるが、螺旋状リード2a,2bの螺旋ピッチ21が十分に小さければ、センシング方向6の調整によって変わる高さの変化量は小さいもので許容範囲内とすることが可能である。
【0021】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
図1では、螺旋状リード2a、2bが円柱形状の樹脂封止体10の底面である一主面4にリード延出部が設けられていたが、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置では、リード延出部が一主面4ではなく円柱の側面に設けられている構成とした。このような構成とすることで、螺旋状リード2a,2bの半径rを円柱形状の樹脂封止体10の半径よりも大きくすることができ、耐振性の高い半導体装置1とすることができる。螺旋状リード2a,2bは2つのスプリングを組合せた形状であり実装基板に接合した場合、外界からの振動が実装基板を経由して半導体装置のリードに伝わり、リードが疲労破壊をして実装不良が生じることがある。螺旋状リード2a,2bがスプリングとして機能して振動のストレスを緩和してリードの疲労破壊を防ぐことになる。本実施例では、半径がより大きくなったことで振動を受けても半導体装置1の姿勢復元性が高く、より安定したセンシングが可能となる。
【0022】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
本実施例は、第1実施形態と第3の実施形態を組合せたもので、一方の螺旋状リード20は一主面4の外周付近にリード延出部が設けられ、ここからリードが螺旋的に伸びている。また、他方の螺旋状リード19は円柱形状の樹脂封止体10の側面にリード延出部が設けられ、ここからリードが螺旋的に伸びている。多重螺旋構造を成す2本の螺旋状リードの螺旋ピッチ21は同じであるが、半径が異なり、円柱の側面から伸びた螺旋状リード19の半径が円柱の底面から伸びた螺旋状リード20の半径よりも大きくなるように形成されている。このような構成にすることで、振動数の異なる振動に対しても耐振性のある半導体装置1とすることができる。
【0023】
これまで、本発明の半導体装置が実装基板に任意の高さに取り付けることができること、実装基板へ任意の向きに取り付けることができること、そして、耐振性があることを説明したが、本発明の半導体装置のリードはコイルと類似した形状であり、アンテナとしても利用できる。このように本発明の半導体装置の場合は、リードの部分を電気信号の伝達としての機能以外に、アンテナ機能としても活用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 半導体装置
2a 螺旋状リード
2b 螺旋状リード
3 直線状リード
4 半導体装置第一の平面
5 取り付け高さ
6 半導体装置のセンシング方向
7 リード延出部
9 半田
10 樹脂封止体
11 半導体装置
12 リード
13 実装基板
14 取り付け高さ
15 半導体装置と対象物との距離
16 半導体装置のセンシング方向
19 半径の大きい螺旋状リード
20 半径の小さい螺旋状リード
21 螺旋ピッチ
22 貫通孔
22a 貫通孔入口
22b 貫通孔出口
r 半径