特許第6827354号(P6827354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立マクセル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6827354-無線給電装置 図000002
  • 特許6827354-無線給電装置 図000003
  • 特許6827354-無線給電装置 図000004
  • 特許6827354-無線給電装置 図000005
  • 特許6827354-無線給電装置 図000006
  • 特許6827354-無線給電装置 図000007
  • 特許6827354-無線給電装置 図000008
  • 特許6827354-無線給電装置 図000009
  • 特許6827354-無線給電装置 図000010
  • 特許6827354-無線給電装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827354
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】無線給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20210128BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-67731(P2017-67731)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170900(P2018-170900A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井戸 寛
(72)【発明者】
【氏名】戸高 義弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳史
【審査官】 大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−019317(JP,A)
【文献】 特開2001−057827(JP,A)
【文献】 特開2014−017921(JP,A)
【文献】 特開2016−178723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、
受電コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、
前記送電コイルと前記受電コイルの間の電気的若しくは磁気的な作用を介して前記送電装置から前記受電装置へ非接触で電力を伝送する無線給電装置であって、
透明な仕切りで囲われた受電領域を備え、
前記透明な仕切りは、内側の仕切りと、前記内側の仕切りを囲む外側の仕切りで構成され、前記受電領域は前記内側の仕切りで囲われた領域であり、
前記受電装置は前記受電領域内に配置され、前記送電装置は前記受電領域外に配置され、
前記受電装置は前記受電領域内で移動可能であることを特徴とする無線給電装置。
【請求項2】
前記送電コイルの内径をR i n 、外径をR o u t とするとき、前記送電コイルの重心位置からR i n + ( R o u t − R i n ) / 3 の位置より内側に前記内側の仕切りを配置することを特徴とする請求項に記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記受電コイルの外径と前記受電装置の最外部若しくは無線給電対象物の最外部との距離をL とするとき、R i n + ( R o u t − R i n ) / 3 + L より内側に前記内側の仕切りを配置することを特徴とする請求項に記載の無線給電装置
【請求項4】
前記送電装置は前記透明な仕切りを介して前記受電領域の両端側に配置されることを特
徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【請求項5】
前記送電装置が前記透明な仕切りを介して前記受電領域の一方の端面側に配置され、磁
気シールドが前記透明な仕切りを介して前記受電領域の他方の端面側に配置されることを
特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【請求項6】
前記受電装置のバランスを保って前記受電コイルと前記送電コイルを対向させることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置と受電装置の間の電力伝送を非接触(無線)で行う無線給電装置に関し、受電装置が移動可能な無線給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送(以下、無線給電という)する方法として、電磁誘導による電磁誘導方式、電界または磁界共鳴を介した共鳴給電方式、電波によるマイクロ波送電方式などが知られている。この中で既に製品化され一般に多く見られるのは、電磁誘導方式である。この方式は簡易的な設計で高効率の無線給電が可能であるが、送電距離が短いという課題もある。そこで、共振を利用して電力を数m先まで伝送する共鳴給電方式が提案され、この技術を利用した製品開発が、電機メーカー、自動車メーカーを中心に進められている。
【0003】
共鳴給電方式では、送電装置内の送電コイルと、受電装置の受電コイルの電磁気的な結合により電力伝送が行われる。両コイル間の結合係数k値が小さい一方で、Q値を高めることにより無線給電を行うが、電磁誘導方式と比較すると伝送距離は長くできるものの、電力伝送効率が低くなってしまう。
【0004】
伝送距離が長くできることはメリットであることに違いないが、一方でリスクも発生する。例えば、送電装置と受電装置間に人・もの(本来の受電対象と異なるもの)が近づいたり更には入ったりするなど安全に対する懸念が増す。すなわち、実用運用上において、人体や精密電子機器類などに対する電磁暴露を注意する必要性が増し、更には金属異物が間に挟まれた場合の対策が重要となる。
【0005】
例えば特許文献1に開示された無線給電装置においては、ユーザーと給電装置の位置を検知・報知し、給電装置の稼働状態を制御する。この方法によれば、ユーザー(人)が存在する場合には給電パワーを小さくするなどして、ユーザーが受ける電磁暴露量を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−60822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ユーザーと給電装置の位置関係によって給電量を制御する。しかし、ユーザーと給電装置の位置関係を検知して報知する装置が別途必要になるなど装置規模が大きくなり、その結果、コストも高くなる。
【0008】
また、展示物やショーウィンドなどのように、本質的に人に見せることを目的とし、更には人を呼び込むための形態に対して無線給電を適用する場合、そもそも人が近づいたら給電量を抑制するということはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の無線給電装置は、送電コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイルの間の作用を介して前記送電装置から前記受電装置へ非接触で電力を伝送し、前記受電装置は透明または半透明な仕切りを介して、外部から視認可能であるものの、人や受電対象物以外のものが送電装置と受電装置の近傍には近づかないようにする。上記送電コイルと受電コイルは無線での電力伝送がより効率良く行われるように配置し、また上記仕切りの位置関係を適正にして受電装置が送電装置の一定の範囲内で動作するようにする。
【0010】
ここで、特に展示物やショーウィンドを考えた場合、外部からの内部への視認性が最重要課題である。このため、上記仕切りはできるだけ透明度の高いガラスやプラスチックとし、更には展示物が入る展示スペースやショーウィンドはできるだけ大きくしたい。しかし、発明者らの検証の結果、誘電体である上記ガラスやプラスチックでは無線給電で発生する不要な漏えい磁場(即ち展示物外やショーウィンド外に漏れてきて、それ以外の人やものに影響を及ぼす磁場)はほとんど防げず、スパッタリング等により導電性が比較的高い金属薄膜を形成した時に低減されることが分かった。但し、金属膜を形成し、更にそれが不要な漏えい磁場を低減するまで厚みを増加させると、上記視認性にとって重要な透明度が落ちることになり本来の目的を十分に果たすことが出来ない。
【0011】
また、展示スペースやショーウィンドを大きくして無線給電による電源供給が出来る空間を広く取るには、必然的に無線給電投入電力を増やす必要が有る。発明者らの検証によると上記のように無線給電を広い空間で行うようにすると、展示スペースやショーウィンドの外への漏えい磁場がより増加し、また無線給電性能自体も十分な効率で行うことが困難になることが分かった。
【0012】
そこで発明者らは、電磁界シミュレーションと試作を繰り返し行い、無線給電性能と漏えい磁場の検証を鋭意継続して行った結果、送電装置内のコイルから発生する磁場分布と受電装置内のコイルで受け取れる磁場方向に技術課題があることが分かった。発明者らはこの技術課題を解決するため、送電コイルをスパイラル状に作製して送電装置を形成する金属筐体内に収め、受電コイルをスパイラル若しくはソレノイド状に作製して受電装置内に配置した。また、できるだけ透明なガラス製若しくはプラスチック製の仕切りを用意し、この仕切りの内側外側に対して、上記スパイラル送電コイルの概ね内径外径に相当するそれぞれの位置に配置した。これにより、内側の仕切りにて受電装置が配置される位置若しくは移動できる範囲を限定し、外側の仕切りにて人やものが近づける領域を安全な領域に限定した。
【0013】
ここで受電装置が移動体の場合、上記のような仕切りが有る場合には移動が仕切りによって制限されるのであるが、更にはその仕切りに沿って移動する時間帯(滞在時間)が増す。すなわち、仕切り近傍にてその周囲より無線給電性能を高めれば、より効率良く受電装置に電力を供給することができる。特に受電装置内のコイルと送電装置内のコイルとが概ね対向するようにすれば、送電コイルからの磁束がより効率よく受電コイルと錯交するようになる。
【0014】
なお、上記構成は送電装置が1個と受電装置が1個の場合に限定されない。例えば受電装置と送電装置を複数配置することもでき、または送電装置を2つ用意し、その間に1つ若しくは複数の受電装置を配置することもできる。また、送電装置を2つ用意する代わりに、磁気シールド装置により受電装置を挟んで送電装置と対向位置に配置することにより、上記構成とほぼ同様な効果が得られる。
【0015】
仕切り板は透明の板材や円筒材を加工して組み立てる事により、上記のようなコイルとの相対関係を保つように配置することが可能であり、例えばサイズの異なる大小2つ以上の仕切り板を用い、その間に展示用の種々の装飾品を入れることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成を行うことにより、展示の視認性と人やモノが漏えい磁場の大きい近傍に近づくことを防ぐことの両立、更には無線給電性能を十分に維持することができるようになったため、中身の視認性が高くかつ安全な無線給電装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の無線給電装置の送電装置(様態1)の概要を示す図である。
図2】本発明の無線給電装置の送電装置(様態2)の概要を示す図である。
図3】本発明の無線給電装置の送電装置(様態1)から発生される磁界の方向に関するシミュレーション結果を示す図である。
図4】本発明の無線給電装置の送電装置(様態2)から発生される磁界の方向に関するシミュレーション結果を示す図である。
図5】本発明の無線給電装置の送電装置(様態1)から発生される磁界の大きさに関するシミュレーション結果を示す図である。
図6】本発明の無線給電装置の送電装置(様態2)から発生される磁界の大きさに関するシミュレーション結果を示す図である。
図7】受電装置の配置及び移動を制限する仕切りの例を示した図である。
図8】受電装置の配置及び移動を制限する仕切りの内、特に本発明の2重の仕切りを設けた例を示した図である。
図9】本発明の無線給電装置の内、送電装置を仕切りを介して2つ搭載した例を示した図である。
図10】本発明を魚型ロボットに応用した例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の無線給電装置は、送電コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、送電コイルと受電コイルの間の電磁気的な作用により送電装置から受電装置へ非接触で電力の伝送を行う。
【0019】
上記送電装置の上空に配置される受電装置は、その配置される空間が透明な材料で仕切り、その位置がある一定領域に制限されるようにする。これにより無線給電可能な位置に受電装置を閉じ込め、また外部からの受電装置の視認を高くできる。一方で、人やものが法規やガイドライン以上の漏えい磁場を受けないように、ある範囲の送電装置近傍領域に近づくことができないようにする。
【0020】
ここで、上記仕切りは送電コイルから発生する磁場が受電コイルをより効率良く錯交するように、上記仕切りにて受電装置の配置される位置、若しくは移動可能な領域を制限する。具体的には送電コイルの内径をRin外径をRoutとした時に、コイルの中心からRin+(Rout−Rin)/3の位置より内側に上記仕切りを配置する。但し、受電コイルは受電装置内に内蔵されるため、より好ましくは受電コイルと受電装置や更には受電装置が入る無線給電対象物との位置関係も考慮する必要が有る。即ち受電コイルの外径と受電装置の最外部若しくは無線給電対象物の最外部との距離をLとする時、上記しきりの位置はコイルの中心からRin+(Rout−Rin)/3+Lとなる。また、受電装置が特に移動体の場合、仕切りの内側を自由に移動可能ではあるものの、仕切り内を移動する際には比較的仕切り位置の近接付近に滞在する時間帯が増える。このため仕切り位置付近で無線給電性能を高めることにより、より効率よく受電装置に電力を供給できる。
<実施例>
以下、本発明のより詳細な実施の形態について、具体的な例を示して、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は無線給電装置の送電装置の概要を示す図である。リッツ線によって平面スパイラル状に形成されたコイル100、フェライト板101、金属製の筐体102からなる。入出力部103は後に述べるシミュレーションの都合上金属製筐体の外部に出ているが、金属製の筐体内部にて送電回路、送電コイル用共振コンデンサなどを配置することが可能である。本実施例においては20ターンのコイルとMnZn製フェライト板によりインダクタンスを400〜500μHとし、これに対して共振させるためのコンデンサ容量を決めて共振周波数、即ち本実施例にて選定した送電周波数となるように85kHzに合わせた(以下、様態1の送電装置と呼ぶ)。
【0022】
図2は同様にして作製された送電装置を2つ連結した場合を示す。インダクタンス成分は約2倍となるためこれに合わせて共振用コンデンサ容量を選び、共振周波数、即ち送電周波数となる85kHzに合わせた(以下、様態2の送電装置と呼ぶ)。
【0023】
以降、図3から図6の説明は本発明の内容を説明するため、その主たる構成要素である上記様態1及び様態2のコイルから出力される磁界に関しての説明を行う。
【0024】
図3は様態1の送電装置から出力される磁界の方向に関してのシミュレーション結果を示した図である。送電装置からの磁界は85kHzの交流磁界であるが、図の矢印の方向はある時刻での磁界の方向を示す。またここでは説明の都合上、図1で示した送電装置の断面での結果を示した。ここでコイルを形成するリッツ線の束付近の状態を注目すると、そのリッツ線の束の内側端面では上空に向かって磁界が生じ、そこから比較的近傍にて向きが転じ、コイルを形成するリッツ線の束の中央上空ではほぼ真横向きになる。更にコイルを形成するリッツ線の束の外側端面では下方に向かうように周回する。一方、送電装置全体としてはその中心付近においては磁界の向きが比較的上空に向かって揃っている。なお、上記の位置の閾値としては送電コイルの内径をRin外径をRoutとした時に、コイルの中心からRin+(Rout−Rin)/3の位置が相当することが分かった。但し、受電コイルは受電装置内に内蔵されるため、より好ましくは受電コイルと受電装置や更には受電装置が入る無線給電対象物との位置関係も考慮する必要が有る。即ち受電コイルの外径と受電装置最外部乃至無線給電対象物最外部との距離をLとする時、上記しきりの位置はコイルの中心からRin+(Rout−Rin)/3+Lとなる。
【0025】
以上の結果から、送電コイルを形成するリッツ線の束の端面より内側付近にて受電コイルを配置し、更に送電コイルと対向して受電コイルを対向して配置するようにすれば無線給電を効率良く行うことができることが分かった。逆に送電コイルを形成するリッツ線の束の中心の直上に受電コイルを対向して配置してしまうと、送電コイルからの磁界が受電コイルを錯交できないため、無線給電の効率が非常に悪くなることが分かった。このため受電装置が配置自由度をもって無線給電できるようにしたり、受電装置が移動する必要がある場合には上記のように受電装置が配置されたり移動する位置を制限する必要が有ることが分かった。
【0026】
図4は様態2の送電コイルから出力される磁界の方向に関してのシミュレーション結果を示した図である。ここでは説明の都合上、図2で示した送電装置の断面での結果を示した。コイルを形成するリッツ線の束付近の状態や配置の工夫は上記に述べた通りである。本様態2の場合に特徴的なことは両送電コイルの中心付近及びその上空での磁界方向にあり、様態1の場合と比較して、コイル面とより垂直に上空まで磁界が発生していることが分かった。即ち様態2の送電コイルの方が、受電コイルに無線給電電力を送電するのに好適であることが分かった。
【0027】
図5は様態1のコイルから出力される磁界の大きさに関してシミュレーション結果を示した図である。ここでコイルに流れる電流は0.5Aとした。図中に示した数字は磁界の大きさをマイクロテスラ(μT)で示した数字で有り、等高線にてその範囲を示している。図からコイルを形成するリッツ線の束に近いほど大きな磁場が発生していることが明らかになった。
【0028】
ここで27(μT)と示した数字は、国際非電離放射線委員会(ICNIRP)にて規定されたガイドライン値であり、一般に人体はこれより大きな値の磁界を受けないように指針が出ている。即ちなんらかの方法で、27と示す領域より内側に人体が入らないようにして、人体が浴びる磁界(人体への磁場の暴露)を低く抑える必要が有る。また同時に、本来の受電対象以外のもの(例えば、くぎ等の金属)が送電装置の近傍に存在する時には、送電コイルから漏れ出した磁場によって過熱することが無いようにしなければならない。
【0029】
図6は様態2のコイルから出力される磁界の大きさに関して同様にシミュレーションを行った結果である。ここでコイルに流れる電流は同様にして0.5Aとした。図6のように送電装置が対向して2つ配置されることにより、それ自体の構造によって間に人体が入らないようにすることができる。図からコイルを形成するリッツ線の束に近いほど大きな磁場が発生していることは様態1のコイルの場合と同様であるが、更には、送電装置間より外側に発生する磁場(以降不要漏えい磁場と呼ぶ)をあまり増やすことなく、送電装置間においても比較的強い磁界が発生する領域を効果的に作ることが出来ることが分かった。なお、送電装置を2つ用意する代わりに、送電装置の一方を磁気シールドとすることも可能である。磁気シールドは、例えばアルミニウムや銅などの導電性が高い金属を配置したり、フェライト板など透磁率が高い材料を配置することで構成する。送電装置の上に上記のような不要漏えい磁場を制限するものが配置できれば、人や受電対象以外の金属が送電装置に近付かないような効果をもたらすことが出来る。
【0030】
図7は上記不要漏えい磁場による人体への磁場の暴露と無線給電性能を考察し、また外部からの視認性を保つために配置した仕切りである。図のようにガラスや透明なプラスチック材にて箱状の仕切りを作り、これを送電装置上空に配置すれば上記2つの課題は解決できる。即ち、外部からの視認性が高く受電装置が実際に無線給電を受けている状況が目視で確認できるため、例えば受電装置が展示用のマネキンやロボットである場合に特に有用となる。但し、図3及び図4の説明で述べたように、上記受電装置の受電コイルが送電コイルを形成するリッツ線の束の中央直上付近に配置されたり移動したりする状況となる場合には、無線給電性能が一気に悪化することが課題となる。
【0031】
図8は上記課題も解決するため、送電装置からの磁界方向を考察して図7でしめした構造に追加で仕切りを設けた構成である。即ち、内側の仕切りによりその仕切り内部にて受電装置が配置され、移動できるようにした。これにより送電コイルから発生する磁場の方向を懸念する必要無く、効率良く無線給電可能とすることができる。更には外側の仕切りにより人体や受電対象以外の金属ある一定以上の磁場に晒されることが無いようにできた。なお、仕切りを透明な材料で構成できるため、上記仕切りの外からも受電装置の状態が視認できるようにすることができた。
【0032】
図9は上記した方法を合わせ、組立てを行った無線給電装置である。即ち送電装置を2つ用意し、その間に2重の仕切りを持った透明な仕切り(本例ではシミュレーション結果をもとに、送電装置より全体幅を大きくした箱)を上記説明したように適切に配置した。また、受電装置はその仕切りの内側に自由に配置することが出来、かつ移動することができるようにした。ここで本発明の効果を実証するため、本発明の装置を作製し交流磁界を実測した所、周囲の漏えい磁場は27μTにできることが分かった。
【0033】
以上により無線給電性能を落とすことなく不要漏えい磁場の影響を少なくできため、人体の磁界暴露や金属異物の過熱を心配することなく、かつ受電装置の状態を無線給電装置の外部から視認することができるようになった。
【0034】
ここで、一般的には磁界共鳴方式を用いると電力伝送距離が長くなるが、発明者らの検討によると特に受電コイルのサイズが小さい場合、磁界共鳴方式に依っても電力伝送距離を伸ばすことが難しくなることが分かっている。そこで、電力伝送が主に磁界によって行われとみなし、送電コイルからの出力磁界とその磁界を受け取る受電コイルとの関係を考えた結果、送電コイルは平面スパイラル状にコイル外周に比較的密に巻くことがより好ましく、受電コイルはソレノイド状に形成することが好ましかった。また送電コイルと受電コイルができるだけ対向するようにすることが好ましく、受電コイルが含まれる受電装置乃至受電対象物は上記仕切りに付近に配置するか、若しくは上記仕切り付近に滞在する時間が比較的長い場合に有効であった。
【0035】
本発明の主要な用途において受電装置はショーウィンドに飾られるマネキンやロボット内に設置されるが、その際にも上記のような構成にすることが好ましい。図10には、例えば魚型のロボットを展示物とした場合を示した。魚型のロボットにはその内部にソレノイド状の受電コイルを備えた受電装置が組み込まれ、スパイラル状の送電コイルを備えた送電装置の電力を受けて無線にて稼働するようにしておいた。仕切りはその内部を水で満たし、魚型ロボットはその中を回遊するが、受電装置の重量バランスを適切に保つことにより送電コイルと受電コイルが常に対向するように、水槽内を回遊させることができる。また魚型ロボットはランダムに動いても、仕切り付近の送電コイルからの磁場を特に強く受ける位置で滞在する時間が、その他より比較的多くすることが出来る。
【0036】
従って上記記載の通り、仮に魚型ロボットが小さく、更に受電コイルが小さい場合でも水槽内を十分な電力を受けて回遊させることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の無線給電装置は無線給電性能を落とすことなく実効的な不要漏えい磁場を最低限に抑えることができる。このため、展示物やショーウィンドなどのように本質的に人に見せることを目的とし、更には人を呼び込むための形態に対して無線給電を適用する場合に関して有効に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
100 送電コイル
101 フェライト板
102 筐体
103 送電コイルの入出力
104 送電コイル連結線
200 送電装置
201 受電装置
202 仕切り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10