(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料ガス及び酸化材ガスを反応させて発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックと、酸化材ガスを前記セルスタックの酸素極側に送給するための酸化材ガス供給手段と、燃料ガスを前記セルスタックの燃料極側に供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段から前記セルスタックの前記燃料極側に供給される燃料ガスの流量を計測するための燃料ガス流量計測手段と、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材ガス供給手段を作動制御するためのコントローラと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記セルスタックでの発電で消費される燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、前記セルスタックでの発電で消費される酸化材ガスの利用率を設定するための酸化材利用率設定手段と、前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、
前記セルスタックの定格発電状態において、前記コントローラは、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、前記利用率値優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材利用率設定手段は第1酸化材利用率を設定し、その後、前記コントローラは、燃料利用率を上昇させた利用率上昇運転を行い、前記利用率上昇運転においては、前記酸化材利用率設定手段は前記第1酸化材利用率を維持するとともに、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率を設定し、前記温度検知手段は、前記利用率値優先運転における前記セルスタックの第1温度状態と前記利用率上昇運転における前記セルスタックの第2温度状態を検知し、前記流量誤差判定手段は、前記セルスタックの前記第1温度状態における第1検知温度及び前記第2温度状態における第2検知温度に基づいて前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定することを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
前記流量誤差判定手段は、前記温度検知手段の前記第1検知温度及び前記第2検知温度の演算温度差と基準温度差とを比較し、前記演算温度差が前記基準温度差よりも小さいときに前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありの判定を行い、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率を設定することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記コントローラは、前記流量誤差判定手段が前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありとの判定したときに前記第2燃料利用率から更に上昇させる上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段を含み、前記上昇利用率演算手段は、前記演算温度差と前記基準温度差との比較温度差に基づいて前記上昇利用率を演算し、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率に前記上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率を設定することを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
燃料ガス及び酸化材ガスを反応させて発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックと、酸化材ガスを前記セルスタックの酸素極側に送給するための酸化材ガス供給手段と、燃料ガスを前記セルスタックの燃料極側に供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段から前記セルスタックの前記燃料極側に供給される燃料ガスの流量を計測するための燃料ガス流量計測手段と、前記酸化材ガス供給手段から前記セルスタックの前記酸素極側に供給される酸化材ガスの流量を計測するための酸化材ガス流量計測手段と、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材ガス供給手段を作動制御するためのコントローラと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記セルスタックでの発電で消費される燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、前記セルスタックでの発電で消費される酸化材ガスの利用率を設定するための酸化材利用率設定手段と、前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、
前記セルスタックの定格発電状態において、前記コントローラは、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、前記利用率値優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材利用率設定手段は第1酸化材利用率を設定し、その後、前記コントローラは、前記温度検知手段の検知温度が目標温度となるように温度優先運転を行い、前記温度優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材ガス供給手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記目標温度となるように制御され、その後、前記流量誤差判定手段は、前記温度優先運転における第2酸化材利用率に基づいて前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定することを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
前記コントローラは、酸化材利用率を演算するための酸化材利用率演算手段を含み、前記酸化材利用率演算手段は、前記温度優先運転における酸化材ガスの供給流量に基づいて前記第2酸化材利用率を演算し、前記流量誤差判定手段は、前記温度優先運転における前記第2酸化材利用率と基準酸化材利用率とを比較し、前記第2酸化材利用率が前記基準酸化材利用率よりも小さいときに前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありの判定を行い、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率を設定することを特徴とする請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記コントローラは、前記流量誤差判定手段がプラス側誤差ありとの判定したときに前記第2燃料利用率から更に上昇させる上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段を含み、前記上昇利用率演算手段は、前記第2酸化材利用率と前記基準酸化材利用率との比較酸化材利用率差に基づき前記上昇利用率を演算し、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率に前記上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率に設定することを特徴とする請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
燃料ガス及び酸化材ガスを反応させて発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックと、酸化材ガスを前記セルスタックの酸素極側に送給するための酸化材ガス供給手段と、燃料ガスを前記セルスタックの燃料極側に供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段から前記セルスタックの前記燃料極側に供給される燃料ガスの流量を計測するための燃料ガス流量計測手段と、前記酸化材ガス供給手段から前記セルスタックの前記酸素極側に供給される酸化材ガスの流量を計測するための酸化材ガス流量計測手段と、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材ガス供給手段を作動制御するためのコントローラと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記セルスタックでの発電で消費される燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、前記セルスタックでの発電で消費される酸化材ガスの利用率を設定するための酸化材利用率設定手段と、前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、
前記セルスタックの定格発電状態において、前記コントローラは、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、前記利用率値優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材利用率設定手段は第1酸化材利用率を設定し、その後、前記コントローラは、前記温度検知手段の検知温度が目標温度となるように第1温度優先運転を行い、前記第1温度優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材ガス供給手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記目標温度となるように制御され、更にその後、前記コントローラは第2温度優先運転を行い、前記第2温度優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材ガス供給手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記目標温度となるように制御され、前記流量誤差判定手段は、前記第1温度優先運転における第2酸化材利用率及び前記第2温度優先運転における第3酸化材利用率に基づいて前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定することを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
前記コントローラは、酸化材利用率を演算するための酸化材利用率演算手段を含み、前記酸化材利用率演算手段は、前記第1温度優先運転における酸化材ガスの供給流量に基づいて前記第2酸化材利用率を演算するとともに、前記第2温度優先運転における酸化材ガスの供給流量に基づいて前記第3酸化材利用率を演算し、前記流量誤差判定手段は、前記第2酸化材利用率及び前記第3酸化材利用率の演算酸化材利用率差と基準酸化材利用率差とを比較し、前記演算酸化材利用率差が前記基準酸化材利用率差よりも小さいときに前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありの判定を行い、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率を設定することを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記コントローラは、前記流量誤差判定手段が前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありとの判定したときに前記第2燃料利用率から更に上昇させる上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段を含み、前記上昇利用率演算手段は、前記演算酸化材利用率差と前記基準酸化材利用率差との比較酸化材利用率差に基づいて前記上昇利用率を演算し、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率に前記上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率を設定することを特徴とする請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)が実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。この固体酸化物形の燃料電池セルは、酸素イオンを伝導する固体電解質の片側に改質燃料ガス(「燃料ガス」とも称する)を酸化する燃料極が配設され、その他側に酸化材ガス(例えば、空気中の酸素)を還元する酸素極が配設され、固体電解質の材料として、一般的にイットリアをドープしたジルコニアが用いられている。
【0003】
この固体酸化物形のセルスタックは、700〜1000℃の高温で、燃料ガス中の水素、一酸化炭素、炭化水素と酸化材ガス中の酸素とを電気化学反応させて発電が行われる。固体酸化物形燃料電池システムは、他の燃料電池システムやガスエンジンなどに比べて、特に高発電効率での発電が可能なことから、有望な発電技術として開発が行われてきた。
【0004】
固体酸化物形燃料電池システムはセルスタックの作動温度が高いため、セルスタックにて消費されない(発電に寄与しない)燃料ガス、換言するとセルスタックの燃料極側から流出する改質燃料ガス(反応燃料ガス)と、セルスタックの酸素極側から流出する酸化材ガス(空気)とが、セルスタックの排出側の燃焼空間において燃焼され、この燃焼によって得られる燃焼熱により、改質用水を気化する気化器や燃料ガスを水蒸気改質する改質器が加熱されるように構成されている。
【0005】
この公知の固体酸化物形燃料電池システムでは、この燃焼空間の上方に気化器及び改質器が配設されている。気化器で行われる気化反応及び改質器で行われる改質反応はともに吸熱反応であり、それ故に、燃焼空間の燃焼で生じる熱はこれらの吸熱反応により奪われ、熱が奪われた後の燃焼排気ガスが外部に排出される。
【0006】
このような固体酸化物形燃料電池システムのセルスタックで消費される燃料ガス(即ち、発電に寄与する燃料ガス)の割合は燃料利用率で示される。正確には、燃料利用率は、燃料ガスの流量に比例する燃料ガスの価電子の供給速度に対し、発電による燃料価電子の消費速度の割合をいう。
【0007】
また、固体酸化物形燃料システムの発電効率は、一般的に、次式(1)、
発電効率=係数×セルスタック電圧×燃料利用率×補機効率×インバータ効率
で表される。ここで係数とは、燃料ガスの価電子数や熱量によって決定される係数であり、補機効率とは、セルスタックから出力された直流電力と、この直流電力により作動される各種ブロア、ポンプなど燃料電池システム内部を駆動するために補機にて消費される直流損失分を差し引いた後の正味直流出力との比であり、またインバータ効率とは、正味直流出力から交流出力に変換する際の変換効率である。
【0008】
上述の発電効率の式(1)から理解されるように、セルスタック(燃料電池セル)の出力電圧が同じであれば、燃料利用率が高いほど発電効率は高くなることが判る。しかし、この燃料利用率を高めたときには、セルスタックでの発電に使用しない余剰燃料ガスが減じるために、この燃焼空間での燃焼熱が少なくなってセルスタックの温度が低下し、これにより、セルスタックの内部抵抗が増加してセルスタックの発電電圧の低下を招くようになる。そのため、燃料利用率を単純に上昇させてもセルスタックの発電効率は頭打ちになる。また、この燃料利用率を極端に高くすると、燃焼空間における燃焼が部分的に正常に維持できなくなり、大幅な温度の低下を招くことが起こるおそれがある。この場合、気化器における気化状態に大きな変化を生じさせることになり、S/C(水蒸気/炭素の比率)も不安定になり、その結果、固体酸化物形燃料電池システムの即時故障モードに入る可能性が高くなる。
【0009】
一方、燃料利用率と並んで、固体酸化物形燃料電池システムを稼働させる際の重要な制御パラメーターとして酸化材利用率(酸化ガスが空気である場合、空気利用率)がある。この空気利用率とは、セルスタックに供給する酸素の総量に対する発電に利用される酸素の割合である。酸化材ガス(例えば、空気)の流量と空気利用率とは、セルスタックの動作温度を適正範囲に保つ上で最適な制御範囲が設定される。即ち、酸化材ガスの流量が少なければ、酸化材ガスによる冷却作用が低下してセルスタックの温度が上昇し、これにより、セルスタックの出力電圧は高くなり、高い発電効率を得るには有利となるが、セルスタックの耐熱性を考慮すると、所定の流量以下にすることはできない。また、セルスタックの経年劣化などによる温度上昇を相殺するためにセルスタックの冷却を行いたい場合、初期に設定された酸化材ガスの供給流量よりも増やして(即ち、空気利用率を低下させて)セルスタックの温度を適正範囲に収めることも行われる。
【0010】
このような固体酸化物形燃料電池システムでは、その発電中においては、上述したことを考慮しながら燃料ガスの燃料利用率及び酸化材ガスの酸化材利用率(空気の場合、空気利用率)を設定し、設定した燃料利用率及び酸化材利用率となるように燃料ガス及び酸化材ガスの供給が制御される。
【0011】
燃料ガス及び酸化材ガスの供給の制御の代表的方法の一つは、セルスタックの発電出力の電流値(出力値)に基づく方法であり、この方法では、発電出力の電流値が決定され、この電流値となるように燃料ガスの燃料利用率と酸化材ガス(例えば、空気)の酸化材利用率が決定され、この燃料利用率及び酸化材利用率となるように燃料ガスの流量及び酸化材ガスの流量が算出され、この算出された流量となるように、燃料ガスブロア及び酸化材ガスブロア(空気ブロア)が作動制御される。このような制御方法による運転は、燃料利用率及び酸化材利用率に基づき制御する利用率値優先運転となり、セルスタックの温度(作動温度)は、外気温度の変化、燃料ガス流量計測手段の検知誤差、更には、セルスタックの経年劣化によるジュール発熱の上昇などにより変動する。
【0012】
この代表的方法の他の一つは、セルスタック又はその近傍の温度(所謂、作動温度)に基づく方法であり、この方法では、セルスタックの温度(作動温度)と例えば燃料ガスの燃料利用率が決定され、そして、この温度となるように酸化材ガス(例えば、空気)の酸化材利用率(例えば、空気利用率)が可変に設定され、セルスタックの温度が目標温度になるように燃料ガスブロア及び酸化材ガスブロア(空気ブロア)が作動制御される。このような制御方法による運転は、セルスタックの温度に基づき制御する温度優先運転となり、例えば、セルスタックの経年劣化などによる温度上昇を相殺するために酸化材ガス(例えば、空気)の供給流量を増大させて所望の温度範囲に収まるようにする制御は、この運転方法となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この固体酸化物形燃料電池システムの運転において、燃料ガスの燃料利用率は、燃料ガスの価電子の供給速度に対し、発電による燃料価電子の消費速の割合であり、これは燃料電池システム上、セルスタックから引き出す電流値と、燃料電池システムが認識している燃料ガスの供給流量にて決定されるが、この燃料ガスの供給流量に関しては、それを計測する燃料ガス流量計測手段(例えば、燃料ガス流量計測センサ)の計測精度が問題となり、燃料ガスの供給流量については、燃料ガス流量計測手段の検知誤差により意図した供給流量になっていないことがある。この検知誤差、即ち実際の供給流量との乖離は、燃料電池システムの外部に設置した別個の流量計にて計測することが可能であるが、流量を計測する流量計測センサ(燃料ガス流量計測センサ、酸化材ガス流量計測センサ)については、一般的に計測値の±3%程度のものが使用されることが多く、燃料電池システムでは、この流量計測センサ(燃料ガス流量計測センサ、酸化材ガス流量計測センサ)の流量誤差を把握することは困難である。
【0015】
このことを具体的に説明すると、固体酸化物形燃料電池システムに用いた燃料ガス流量計測センサの計測値に検知誤差が存在し、燃料ガス流量計測センサが実際の供給流量値よりも少ない値を示している(換言すると、マイナス側の検知誤差がある)場合、この燃料電池システムが認識している供給流量(即ち、燃料ガス流量計測センサの計測値)よりもより多くの燃料ガスが供給され、より多くの燃料ガスを流す方向の制御誤差が生じている。例えば、燃料電池システムが、上限の燃料利用率を例えば80.5%に設定しているとしても、上述した燃料ガス流量計測センサのマイナス側の検知誤差により多くの燃料ガスを流す方向の制御誤差が生じ、この制御誤差により実際の燃料利用率は例えば79%程度に止まり、燃料電池システムの発電効率自体が意図した目標レベルに到達しないことが起こり得る。
【0016】
本発明の目的は、高い燃料利用率を設定する際に特に問題となる燃料ガスの供給流量の検知誤差の有無をセルスタックの発電中に確認することができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガス及び酸化材ガスを反応させて発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックと、酸化材ガスを前記セルスタックの酸素極側に送給するための酸化材ガス供給手段と、燃料ガスを前記セルスタックの燃料極側に供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段から前記セルスタックの前記燃料極側に供給される燃料ガスの流量を計測するための燃料ガス流量計測手段と、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材ガス供給手段を作動制御するためのコントローラと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記セルスタックでの発電で消費される燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、前記セルスタックでの発電で消費される酸化材ガスの利用率を設定するための酸化材利用率設定手段と、前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、
前記セルスタックの定格発電状態において、前記コントローラは、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、前記利用率値優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材利用率設定手段は第1酸化材利用率を設定し、その後、前記コントローラは、燃料利用率を上昇させた利用率上昇運転を行い、前記利用率上昇運転においては、前記酸化材利用率設定手段は前記第1酸化材利用率を維持するとともに、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率を設定し、前記温度検知手段は、前記利用率値優先運転における前記セルスタックの第1温度状態と前記利用率上昇運転における前記セルスタックの第2温度状態を検知し、前記流量誤差判定手段は、前記セルスタックの前記第1温度状態における第1検知温度及び前記第2温度状態における第2検知温度に基づいて前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記流量誤差判定手段は、前記温度検知手段の前記第1検知温度及び前記第2検知温度の演算温度差と基準温度差とを比較し、前記演算温度差が前記基準温度差よりも小さいときに前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありの判定を行い、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率を設定することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記流量誤差判定手段が前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありとの判定したときに前記第2燃料利用率から更に上昇させる上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段を含み、前記上昇利用率演算手段は、前記演算温度差と前記基準温度差との比較温度差に基づいて前記上昇利用率を演算し、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率に前記上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率を設定することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガス及び酸化材ガスを反応させて発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックと、酸化材ガスを前記セルスタックの酸素極側に送給するための酸化材ガス供給手段と、燃料ガスを前記セルスタックの燃料極側に供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段から前記セルスタックの前記燃料極側に供給される燃料ガスの流量を計測するための燃料ガス流量計測手段と、前記酸化材ガス供給手段から前記セルスタックの前記酸素極側に供給される酸化材ガスの流量を計測するための酸化材ガス流量計測手段と、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材ガス供給手段を作動制御するためのコントローラと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記セルスタックでの発電で消費される燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、前記セルスタックでの発電で消費される酸化材ガスの利用率を設定するための酸化材利用率設定手段と、前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、
前記セルスタックの定格発電状態において、前記コントローラは、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、前記利用率値優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材利用率設定手段は第1酸化材利用率を設定し、その後、前記コントローラは、前記温度検知手段の検知温度が目標温度となるように温度優先運転を行い、前記温度優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材ガス供給手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記目標温度となるように制御され、その後、前記流量誤差判定手段は、前記温度優先運転における第2酸化材利用率に基づいて前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記コントローラは、酸化材利用率を演算するための酸化材利用率演算手段を含み、前記酸化材利用率演算手段は、前記温度優先運転における酸化材ガスの供給流量に基づいて前記第2酸化材利用率を演算し、前記流量誤差判定手段は、前記温度優先運転における前記第2酸化材利用率と基準酸化材利用率とを比較し、前記第2酸化材利用率が前記基準酸化材利用率よりも小さいときに前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありの判定を行い、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率を設定することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記流量誤差判定手段がプラス側誤差ありとの判定したときに前記第2燃料利用率から更に上昇させる上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段を含み、前記上昇利用率演算手段は、前記第2酸化材利用率と前記基準酸化材利用率との比較酸化材利用率差に基づき前記上昇利用率を演算し、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率に前記上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率に設定することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガス及び酸化材ガスを反応させて発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルを積層したセルスタックと、酸化材ガスを前記セルスタックの酸素極側に送給するための酸化材ガス供給手段と、燃料ガスを前記セルスタックの燃料極側に供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段から前記セルスタックの前記燃料極側に供給される燃料ガスの流量を計測するための燃料ガス流量計測手段と、前記酸化材ガス供給手段から前記セルスタックの前記酸素極側に供給される酸化材ガスの流量を計測するための酸化材ガス流量計測手段と、前記セルスタックの温度を検知するための温度検知手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材ガス供給手段を作動制御するためのコントローラと、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記セルスタックでの発電で消費される燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、前記セルスタックでの発電で消費される酸化材ガスの利用率を設定するための酸化材利用率設定手段と、前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、
前記セルスタックの定格発電状態において、前記コントローラは、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、前記利用率値優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材利用率設定手段は第1酸化材利用率を設定し、その後、前記コントローラは、前記温度検知手段の検知温度が目標温度となるように第1温度優先運転を行い、前記第1温度優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材ガス供給手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記目標温度となるように制御され、更にその後、前記コントローラは第2温度優先運転を行い、前記第2温度優先運転においては、前記燃料利用率設定手段は前記第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率を設定するとともに、前記酸化材ガス供給手段は、前記温度検知手段の検知温度が前記目標温度となるように制御され、前記流量誤差判定手段は、前記第1温度優先運転における第2酸化材利用率及び前記第2温度優先運転における第3酸化材利用率に基づいて前記燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記コントローラは、酸化材利用率を演算するための酸化材利用率演算手段を含み、前記酸化材利用率演算手段は、前記第1温度優先運転における酸化材ガスの供給流量に基づいて前記第2酸化材利用率を演算するとともに、前記第2温度優先運転における酸化材ガスの供給流量に基づいて前記第3酸化材利用率を演算し、前記流量誤差判定手段は、前記第2酸化材利用率及び前記第3酸化材利用率の演算酸化材利用率差と基準酸化材利用率差とを比較し、前記演算酸化材利用率差が前記基準酸化材利用率差よりも小さいときに前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありの判定を行い、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率を設定することを特徴とする。
【0025】
更に、本発明の請求項9に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記流量誤差判定手段が前記燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありとの判定したときに前記第2燃料利用率から更に上昇させる上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段を含み、前記上昇利用率演算手段は、前記演算酸化材利用率差と前記基準酸化材利用率差との比較酸化材利用率差に基づいて前記上昇利用率を演算し、前記燃料利用率設定手段は、前記第2燃料利用率に前記上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池システムを制御するためのコントローラは、燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、酸化材ガス(例えば、空気)の利用率を設定するための酸化材利用率設定手段(例えば、空気利用率設定手段)と、燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、セルスタックの定格発電状態において、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転が行なわれ、この利用率値優先運転においては、第1燃料利用率(例えば、78%)及び第1酸化材利用率(例えば、38%)が設定され、その後、燃料利用率を上昇させる利用率上昇運転が行われ、この利用率上昇運転においては、第1酸化材利用率(38%)が維持された状態において第2燃料利用率(例えば、80%)が設定される。このように運転状態を切り替えるときに、酸化材利用率(空気利用率)を一定に保持することにより、セルスタックの温度状態に着目してその変化状態を捉まえることができ、この温度状態の変化を利用して燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を調べることができる。
【0027】
例えば、燃料ガス流量計測手段が実際の供給流量値よりも少ない値を示していて、燃料ガス流量計測手段にマイナス側の誤差がある場合、燃料ガスを実際の計測値よりも多く流す方向の制御誤差が生じ、この制御誤差がない場合に比してセルスタックの温度が高くなり、この温度状態の程度を見ることにより測定誤差の程度を知ることができる。
【0028】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、温度検知手段の第1検知温度及び第2検知温度の演算温度差と基準温度差が比較され、この演算温度差が基準温度差よりも小さいと、流量誤差判定手段は、第1燃料利用率から第2燃料利用率に遷移する過程で燃料ガス流量計測手段にプラス側の検知誤差が拡大しているとの判定を行うようになる。そして、プラス側の検知誤差が拡大している場合、燃料ガスが計測流量値よりも多く供給されているために、燃料ガスの燃料利用率として第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率の設定が可能となり、この第3燃料利用率に設定することにより燃料電池システムの発電効率を高めることができる。
【0029】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、上昇利用率演算手段は、上述の演算温度差と基準温度差との比較温度差に基づいて上昇利用率を演算し、燃料利用率設定手段は、第2燃料利用率にこの上昇利用率を加算した第3燃料利用率を燃料利用率として設定するので、この第3燃料利用率は燃料ガス流量計測手段の検知誤差の程度に応じた値とすることができる。
【0030】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池システムを制御するためのコントローラは、燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、酸化材ガス(例えば、空気)の利用率を設定するための酸化材利用率設定手段(例えば、空気利用率設定手段)と、燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、セルスタックの定格発電状態において、燃料利用率及び酸化材利用率(例えば、空気利用率)を優先した利用率値優先運転を行い、この利用率値優先運転においては、第1燃料利用率(例えば、78%)及び第1酸化材利用率(例えば、38%)が設定され、その後、セルスタックの温度を目標温度に維持する温度優先運転が行なわれ、この温度優先運転においては、第1燃料利用率(例えば、78%)よりも高い第2燃料利用率(例えば、80%)が設定されるとともに、温度検知手段の検知温度が目標温度(例えば、743℃)となるように酸化材ガス供給手段が制御される。このように運転を切り替えるときに、温度優先運転における酸化材利用率に着目し、この温度優先運転における第2酸化材利用率を捉まえることにより、この第2空気利用率を利用して燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を調べることができる。
【0031】
例えば、燃料ガス流量計測手段が実際の供給流量値よりも少ない値を示していて、燃料ガスの計測流量にマイナス側の検知誤差がある場合、より多くの燃料ガスを流す制御誤差を生じるようになり、その結果、セルスタックの温度が上昇傾向となり、目標温度に保つために酸化材ガスの供給量が増加し(このことは、酸化材利用率が小さくなることを意味する)、この酸化材利用率の低下を見ることにより測定誤差の程度を知ることができる。
【0032】
また、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、酸化材利用率演算手段は、温度優先運転における酸化材ガスの流量に基づいて第2酸化材利用率を演算し、この温度優先運転における第2酸化材利用率(第2空気利用率)と基準酸化材利用率(基準空気材利用率)との比較が行われ、第2酸化材利用率と基準酸化材利用率とが等しいときには検知誤差はないが、この第2酸化材利用率が基準酸化材利用率よりも小さいと、燃料ガスが計測流量よりも多く供給されているとして、流量誤差判定手段は燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありとの判定を行い、この判定に基づき、第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率が設定される。
【0033】
また、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、上昇利用率演算手段は、上述の第2酸化材利用率(例えば、第2空気利用率)と基準酸化材利用率(例えば、基準空気利用率)との酸化材利用率差に基づいて上昇利用率を演算し、燃料利用率設定手段は、第2燃料利用率にこの上昇利用率を加算した第3燃料利用率を燃料利用率として設定するので、このようにしても第3燃料利用率を燃料ガス流量計測手段の検知誤差の程度に応じた値とすることができる。
【0034】
また、本発明の請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池システムを制御するためのコントローラは、燃料ガスの利用率を設定するための燃料利用率設定手段と、酸化材ガス(例えば、空気)の利用率を設定するための酸化材利用率設定手段(例えば、空気利用率設定手段)と、燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を判定するための流量誤差判定手段とを含み、セルスタックの定格発電状態において、燃料利用率及び酸化材利用率を優先した利用率値優先運転を行い、この利用率値優先運転においては、第1燃料利用率(例えば、78%)及び第1酸化材利用率(例えば、38%)が設定され、その後、セルスタックの温度が目標温度となるように第1温度優先運転を行い、この第1温度優先運転においては、第1燃料利用率(例えば、78%)に維持した状態においてセルスタックの温度が目標温度(例えば、743℃)となるように酸化材ガス供給手段が制御され、更にその後、第2温度優先運転において、第1燃料利用率(例えば、78%)よりも高い第2燃料利用率(例えば、80%)が設定されるとともに、セルスタックの温度がこの目標温度(例えば、743℃)となるように酸化材ガス供給手段が制御される。このように運転を切り替えるときに、第1温度優先運転における第2酸化材利用率と第2温度優先運転における第3酸化材利用率との酸化材利用率の変動に着目し、この酸化材利用率の変化状態を捉まえることにより、燃料ガス流量計測手段の検知誤差の有無を調べることができる。
【0035】
また、本発明の請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、酸化材利用率演算手段は、第1温度優先運転における酸化材ガスの流量に基づいて第2酸化材利用率を演算し、また第2温度優先運転における酸化材ガスの流量に基づいて第3酸化利用率を演算する。そして、流量誤差判定手段は、第2酸化材利用率及び第3酸化材利用率の演算酸化材利用率差と基準酸化材利用率差とを比較し、この演算酸化材利用率差が基準酸化材利用率差よりも小さいときに、燃料ガスが計測流量値より多く供給されているとして流量誤差判定手段は燃料ガス流量計測手段にプラス側誤差ありとの判定を行い、第2燃料利用率よりも高い第3燃料利用率が設定される。
【0036】
更に、本発明の請求項9に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、上昇利用率演算手段は、上述の演算酸化材利用率差と基準酸化材利用率差との比較酸化材利用率差に基づいて上昇利用率を演算し、燃料利用率設定手段は、第2燃料利用率にこの上昇利用率を加算した前記第3燃料利用率を設定するで、この第3燃料利用率は、燃料ガス流量計測手段の検知誤差の程度に応じた値とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの実施形態について説明する。まず、
図1〜
図4を参照して、第1の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。
【0039】
図1において、図示の固体酸化物形燃料電池システム2は、燃料ガス(例えば、天然ガス、都市ガスなど)を改質するための改質器4と、改質器4にて水蒸気改質された燃料ガス(「改質燃料ガス」とも称する)及び酸化材ガスとしての空気の酸化及び還元によって発電を行うセルスタック6とを備えている。
【0040】
セルスタック6は、複数の燃料電池セル(図示せず)を積層して構成され、各燃料電池セルは酸素イオンを伝導する固体電解質と、固体電解質の一方側に設けられた燃料極と、固体電解質の他方側に設けられた酸素極とを備えており、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0041】
セルスタック6の燃料極側8の導入側は、改質燃料ガス送給ライン10を介して改質器4に接続され、この改質器4は、燃料ガス供給ライン12を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源14(例えば、埋設管や燃料ガスタンクなど)に接続されている。燃料ガス供給ライン12には、燃料ガスを供給するための燃料ガスブロア16が配設され、またこの燃料ガスブロア16の下流側に燃料ガス流量計測手段17(例えば、燃料ガス流量計測センサ)が配設されている。燃料ガスブロア16は燃料ガス供給源14からの 燃料ガスを改質器4に供給し、その回転数が増大(又は減少)すると、燃料ガス供給ライン12を通して供給される燃料ガスの供給流量が増大(又は減少)し、燃料ガス流量計測手段17は、燃料ガス供給ライン12を通して供給される燃料ガスの供給流量を計測する。この燃料ガス供給源14、燃料ガス供給ライン12及び燃料ガスブロア16は、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を構成する。
【0042】
また、セルスタック6の酸素極側18の導入側は、空気送給ライン20(酸化材ガス送給ラインとして機能する)を介して酸化材ガスとしての空気を予熱するための空気予熱器22(酸化材ガス余熱器として機能する)に接続され、この空気予熱器22は、空気供給ライン24(酸化材供給ラインとして機能する)を介して酸化材ブロアとしての空気ブロア26に接続され、空気供給ライン20には、酸化材ガスとしての空気の流量を計測するための空気流量計測手段27(酸化材ガス流量計測手段として機能する)が配設され、この空気流量計測手段27は空気供給ライン20を通して供給される空気の供給流量を計測する。この空気ブロア26の回転数が上がる(又は下がる)と、空気供給ライン24を通して供給される空気の供給量が増大(又は減少)し、空気供給ライン24及び空気ブロア26は、酸化材ガスとしての空気を供給するための空気供給手段(酸化材ガス供給手段として機能する)を構成する。
【0043】
セルスタック6の燃料極側8及び酸素極側18の流出側には燃焼空間28が設けられ、燃料極側8から流出された燃料ガス(「反応燃料ガス」とも称する)と酸素極側18から流出された空気(酸化材ガス)とがそれぞれこの燃焼空間28に送給されて燃焼される。この燃焼空間28は燃焼排気ガスライン30を介して空気予熱器22に接続され、この空気予熱器22には燃焼排気ガス排出ライン32が接続されている。
【0044】
この実施形態では、セルスタック6、改質器4及び空気余熱器22が電池ハウジング34内に収容されている。電池ハウジング34の内面又は外面、或いはその両面には断熱材が配設され、この電池ハウジング34が高温状態に保たれる高温空間36を規定し、セルスタック6、改質器4及び空気余熱器22は、この高温空間36に収容されて高温状態に保たれる。
【0045】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、改質器4には水供給ライン38を介して水供給源40(例えば、純水タンクなど)が接続され、この水供給ライン38に水ポンプ42が配設されている。この水ポンプ42の回転数が上がる(又は下がる)と、水供給ライン38を通して供給される改質用水の供給量が増大(又は減少)し、水供給ライン38及び水ポンプ42は、改質用水を供給するための水供給手段を構成する。尚、この形態では、水供給源40からの水を供給しているが、このような構成に代えて、燃焼排気ガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収し、この回収した凝縮水を改質器4に供給して改質用水として利用するように構成することもできる。
【0046】
この固体酸化物形燃料電池システム2の稼動運転は、次のようにして行われる。燃料ガス供給源14からの燃料ガスが燃料ガス供給ライン12を通して改質器4に供給されると共に、水供給源40からの改質用水が水供給ライン38を通して改質器4に供給される。改質器4においては、燃料ガスが水(水蒸気)により水蒸気改質され、水蒸気改質された燃料ガス(改質燃料ガス)が改質燃料ガス送給ライン10を通してセルスタック6の燃料極側8に送給される。また、空気ブロア26からの空気は、空気供給ライン24を通して空気予熱器22に供給され、この空気予熱器22において燃焼排気ガスとの間で熱交換されて加温された後に、空気送給ライン20を通してセルスタック6の酸素極側18に送給される。
【0047】
セルスタック6の燃料極側8は改質燃料ガスを酸化し、またその酸素極側18は空気中の酸素を還元し、燃料極側8の酸化及び酸素極側18の還元による電気化学反応により発電が行われる。燃料極側8からの反応燃料ガス及び酸素極側18からの空気は燃焼空間28に流出され、空気中の酸素を利用して反応燃料ガス(余剰燃料ガスを含んでいる)が燃焼され、この燃焼熱によりセルスタック6、改質器4及び空気予熱器22が加熱される。
【0048】
燃焼空間28からの燃焼排気ガスは燃焼排気ガスライン30を通して空気予熱器22に送給され、この空気予熱器22において空気ブロア26からの空気との熱交換に利用されて燃焼排気ガス排出ライン32を通して外部に排出される。
【0049】
尚、燃焼排気ガスの廃熱を温水として貯える貯湯タンクを備えた貯湯装置を設け、更にこの貯湯装置に関連して、燃焼排気ガス排出ライン32を通して流れる燃焼排気ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を燃焼排気ガス排出ライン32に配設し、この熱交換器における熱交換により加温された温水を貯湯装置の貯湯タンクで貯えるようにしてもよい。
【0050】
この固体酸化物形燃料電池システム2は、
図2に示す制御系により制御される。
図1とともに
図2を参照して、固体酸化物形燃料電池システム2は、これを作動制御するためのコントローラ52を備え、このコントローラ52は、例えばマイクロプロセッサなどから構成される。燃料ガス流量計測手17(燃料ガス流量計測センサ)及び酸化材ガス流量計測手段としての空気流量計測手段27(空気流量計測センサ)からの計測信号は、このコントローラ52に送給される。
【0051】
また、セルスタック6又はその近傍の温度(所謂、セルスタック6の作動温度)を検出するための温度検出手段54(温度センサ)が設けられ、この温度検出手段54からの検知信号がコントローラ52に送給される。更に、セルスタック6の発電出力ライン(図示せず)には、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ56が設けられ、セルスタック6の発電電力はこのインバータ56にて交流電力に変換された後に電力負荷(図示せず)に送給される。このインバータ56に関連して、セルスタック6の発電出力を検知するための発電出力検知手段58が設けられ、この発電出力検知手段56からの検知信号もコントローラ52に送給される。
【0052】
このコントローラ52は、制御手段60、温度差演算手段62、燃料利用率設定手段64、空気利用率設定手段66(酸化材利用率設定手段として機能する)、流量誤差判定手段68、タイマ手段70及びメモリ手段72を含んでいる。制御手段60は、燃料ガスブロア16、空気ブロア26(酸化材ガスブロア)、水ポンプ42及びインバータ56を所要の通りに作動制御する。また、温度差演算手段62は、後述する第1燃料利用率でもって運転するときの第1温度状態と第2燃料利用率でもって運転するときの第2温度状態の温度差を演算する。燃料利用率設定手段64は後述する如く燃料利用率を設定し、空気利用率設定手段66(酸化材利用率設定手段として機能する)は後述する如く空気利用率(酸化材利用率)を設定し、流量誤差判定手段68は後述する如くして燃料ガス流量計測手段54に検知誤差ありとの判定をする。
【0053】
また、タイマ手段70は、後述する利用率値優先運転が安定するまでの第1設定時間(例えば、10〜30分程度に設定される)及び利用率上昇運転が安定するまでの第2設定時間(例えば、1〜3時間程度に設定される)などを計時する。更に、メモリ手段72には、セルスタック6の発電出力と燃料利用率(「Uf」とも表現する)との関係を示す発電出力−Ufマップ、セルスタック6の発電出力と空気利用率(「Ua」とも表現する)との関係を示す発電出力−Uaマップ、第1設定時間、第2設定時間、利用率上昇運転で設定される第2燃料利用率及び燃料ガス流量計測手段54に検知誤差ありとの判定をしたときに設定される第3燃料利用率などが登録されている。
【0054】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、次の通りにして燃料ガス流量計測手段17の流量誤差のチェックが行われる。主として
図2及び
図4を参照して、この流量誤差のチェックは、セルスタック6の発電出力が安定した運転状態に行われる。セルスタック6の発電出力が定格出力(例えば、700W)になると、ステップS1からステップS2に進み、燃料利用率(Uf)及び空気利用率(Ua)を一定にした利用率値優先運転が行われる。即ち、発電出力検知手段58の検知出力が定格出力になると、燃料利用率設定手段64は、メモリ手段72に登録された発電出力−Ufマップに基づき定格出力に対応する燃料利用率、即ち第1燃料利用率(例えば、78%)に設定し、空気利用率設定手段66は、メモリ手段72に登録された発電出力−Uaマップに基づき定格出力に対応する空気利用率、即ち第1空気利用率(例えば、38%)を設定し、第1燃料利用率及び第1空気利用率を一定に保持した利用率値優先運転が行われ、このような利用率値優先運転では、制御手段60は、第1燃料利用率となるように燃料ガスブロア16を制御するとともに、第1空気利用率となるように空気ブロア26を制御する。
【0055】
この利用率値優先運転が第1設定時間(例えば、10分間)継続すると、ステップSS3からステップS4に進み、温度検知手段54はセルスタック6の温度を検知し、この検知信号がコントローラ52に送給され、その検知温度(T1)がメモリ手段72に記憶される。
【0056】
このように利用率値優先運転におけるセルスタック6の温度状態を検知した後、燃料利用率設定手段64は、第1燃料利用率よりも高い第2燃料利用率(例えば、80%)を設定し(ステップS5)、この上昇した第2燃料利用率による利用率上昇運転を行う。尚、この利用率上昇運転においては、空気利用率は利用率値優先運転における第1空気利用率(例えば、38%)に設定され、制御手段60は、第2燃料利用率となるように燃料ガスブロア16を制御するとともに、第1空気利用率となるように空気ブロア26を制御する。
【0057】
そして、このような利用率上昇運転が第2所定時間(例えば、2時間)継続して行われ、この運転状態が安定すると、ステップS5からステップS6を経てステップS7に進み、温度検知手段54はセルスタック6の温度を検知し、この検知温度(T2)がメモリ手段72に記憶される。
【0058】
このように利用率値優先運転におけるセルスタック6の温度状態と利用率上昇運転におけるセルスタック6の温度状態の検知が行われると、ステップS8において、温度差演算手段62は、これら温度状態の温度差、即ち利用率優先運転における検知温度(T1)と利用率値上昇運転における検知温度(T2)との温度差(ΔT)を演算する(ΔT=T1−T2)。利用率値優先運転から利用率上昇運転に切り替えると、空気利用率については第1空気利用率(例えば、38%)に維持した状態において、燃料利用率については第1燃料利用率(例えば、78%)から第2燃料利用率(例えば、80%)に上昇するので、セルスタック6で発電に寄与する燃料ガスの消費量が多くなり、従って、セルスタック6の下流側の燃焼空間28で燃料される燃料ガスが少なくなり、セルスタック6の温度は幾分低下するようになる(例えば、743℃程度から740℃程度に低下する)。
【0059】
ここで、燃料ガス流量計測手段17の検知誤差について説明すると、一般的に、このような固体酸化物形燃料電池システム2に用いられる燃料ガス流量計測手段17には検知誤差があり、例えば±3%の許容範囲のものが採用されている。この燃料ガス流量計測手段17に検知誤差がない場合、燃料ガス流量計測手段17の計測値が燃料ガスの実際の供給流量となり、この場合におけるセルスタック6の発電出力と燃料利用率との関係は、
図3に実線Aで示すようになり、この実線で示す燃料利用率となるように燃料ガスブロア16が制御される。
【0060】
ところが、燃料ガス流量計測手段17が実際の供給流量値よりも少ない値を示して、例えば−3%の検知誤差がある場合、実際にはこの計測値よりも+3%多くの燃料ガスが供給されるプラス側の制御誤差が生じるようになり、従って、この場合の実際の燃料利用率は、設定された燃料利用率(即ち、実線Aで示す燃料利用率)よりも低く、セルスタック6の発電出力と燃料利用率との関係は、
図3に破線Bで示すようになる。一方、燃料ガス流量計測手段17が実際の供給流量値よりも多い値を示して、例えば+3%の検知誤差がある場合、実際にはこの計測値よりも−3%少ない燃料ガスが供給されるマイナス側の制御誤差を生じるようになり、この場合の実際の燃料利用率は、設定された燃料利用率(即ち、実線Aで示す燃料利用率)よりも高く、セルスタック6の発電出力と燃料利用率との関係は、
図3に一点鎖線Cで示すようになる。
【0061】
この燃料ガス流量計測手段17の検知誤差は、利用率値優先運転における第1検知温度(T1)と利用率上昇運転における第2検知温度(T2)との演算温度差(ΔT)にも現れ、この第1の実施形態では、かかる検知温度(T1,T2)の演算温度差(ΔT)に着目して燃料ガス流量計測手段17の検知誤差をチェックしている。即ち、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差がない場合、セルスタック6の温度低下幅は、上述したように、例えば約3℃程度となる。一方、燃料ガス流量計測手段17の検知誤差によりプラス側の制御誤差(換言すると、増量側の誤差)が存在する場合、この検知温度の演算温度差(ΔT)(即ち、温度低下幅)は、検知誤差がない場合に比して小さくなる。
【0062】
更に説明すると、利用率値優先運転から利用率上昇運転(例えば、燃料利用率を2.0ポイント上昇させる運転)に切り換える過程で、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差、特にマイナス側への誤差が拡大していると、燃料ガスがより多く流れるために温度の低下幅は想定よりも小さくなり、計測値においてマイナス側に例えば2%の検知誤差が新たに発生し、この検知温度の演算温度差(ΔT)(即ち、温度低下幅)は、例えば0.8℃程度となり、検知誤差がない場合の温度低下幅の約3℃よりも小さくなる。
【0063】
このようなことから、検知温度の演算温度差(ΔT)を演算した後は、ステップS9においてこの検知温度の演算温度差(ΔT)(温度低下幅)が基準温度差よりも小さいかが判断される。基準温度差としては、例えば、検知誤差がない場合における温度低下幅の例えば3.1℃程度に設定される。即ち、流量誤差判定手段68は、検知温度の演算温度差(ΔT)とこの基準温度差(例えば、3,1℃)とを対比し、この演算温度差(ΔT)が基準温度差よりも小さいときには燃料ガス流量計測手段17の計測値と実際の燃料ガスの流量との間にプラス側の乖離があり、このような場合、流量誤差判定手段68は、燃料ガス流量計測手段17にプラス側の制御誤差ありと判定する(ステップS10)。
【0064】
流量誤差判定手段68がかく判定すると、燃料利用率設定手段64は燃料利用率として第3燃料利用率(例えば、82%)を設定する(ステップS11)ことで、システムの発電効率をより高めることができる。尚、この検知温度の演算温度差(ΔT)が基準温度以上であると、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差が存在しないか、或いは存在していてもマイナス側の制御誤差(換言すると、不足側の誤差)であるために、燃料利用率はそのまま維持される。
【0065】
この第1の実施形態では、燃料ガス流量計測手段17にプラス側の制御誤差が存在していると第3燃料利用率(例えば、82%)に上昇させているが、燃料利用率の上昇程度については、燃料ガス流量計測手段17のプラス側の検知誤差に応じて、次のように構成するようにしてもよい。即ち、コントローラ52に上昇利用率を演算するための上昇利用率演算手段(図示せず)を含め、この上昇率演算手段により第2燃料利用率から上昇させる上昇利用率を演算するようにしてもよい。
【0066】
上昇利用率演算手段は、利用率値優先運転におけるセルスタック6の温度(温度検知手段54の第1検知温度(T1))及び上昇利用率運転におけるセルスタック6の温度(温度検知手段54の第2検知温度(T2))の演算温度差(ΔT)と基準温度差との温度差、即ち比較温度差(ΔTH)を演算し、この比較温度差(ΔTS)の値に基づいて上昇利用率を演算する。この比較温度差(ΔTS)が大きい(又は小さい)と、燃料ガス流量計測手段17の計測値と実際の燃料ガスの流量との間に大きな(又は小さな)乖離があり、従って、上昇利用率演算手段により演算される上昇利用率の値も大きく(又は小さく)なる。
【0067】
この上昇利用率演算手段による上昇利用率は、例えば、式(2)、
上昇利用率=α×比較温度差(ΔTS)
を用いて演算することができる。ここで、αは係数であって、この係数αは、実験的に導き出される値である。このように上昇利用率を演算し、第2燃料利用率にこの上昇利用率を加算して第3燃料利用率を算出することによって、燃料ガス流量計測手段54の測定誤差の程度を考慮して上昇すべき燃料利用率、即ち第3燃料利用率を設定することができる。
【0068】
例えば、利用率値優先運転における温度検知手段54の第1検知温度(T1)と上昇利用率運転における温度検知手段54の第2検知温度(T2)との演算温度差(ΔT)は、燃料ガス流量計測手段54に検知誤差に変化がないときには例えば3.1℃となり、基準温度差(例えば、3.1℃)と一致し、比較温度差(ΔTH)はゼロとなる。一方、この演算温度差(ΔT)が上述したように例えば0.8℃であると、比較温度差(ΔTH)は、2.3℃となり、上昇利用率演算手段は、上記式(2)を用い、係数(例えば、0.65)にこの比較温度差(ΔTH)の2.3を積算し、この積算結果の1.5ポイントを第2燃料利用率(例えば、80%)に加算した81.5%が第3燃料利用率として設定される。
【0069】
次いで、
図5及び
図6を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態では、利用率値優先運転におけるセルスタック6の第1温度状態と上昇利用率運転におけるセルスタック6の第2温度状態における温度差を利用して燃料ガス流量計測手段の測定誤差の判定を行っているが、この第2の実施形態では、利用率値優先運転を行った後に温度優先運転を行い、この温度優先運転における空気利用率を利用して燃料ガス流量計測手段の測定誤差の判定を行っている。尚、以下の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一のものには同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図5及び
図6において、この第2の実施形態では、コントローラ52Aは、燃料利用率設定手段64、空気利用率設定手段64、流量誤差判定手段68A、タイマ手段70A及びメモリ手段72Aに加えて空気利用率演算手段76(酸化材利用率演算手段として機能する)を備え、燃料利用率設定手段64は、上述したように燃料利用率を設定し、また空気利用率設定手段66は、上述したように空気利用率を設定し、空気利用率演算手段76は空気の流量に基づいて空気利用率(第2空気利用率)を演算し、流量誤差判定手段68Aは、後述する如くして燃料ガス流量計測手段17の検知誤差の有無を判定する。また、タイマ手段70Aは、定格運転状態が安定するまでの第1設定時間(例えば、10〜30分程度に設定される)及び温度優先運転が安定するまでの第2設定時間(例えば、1〜3時間程度に設定される)を計時する。更に、メモリ手段72Aには、セルスタック6(
図1参照)の発電出力と燃料利用率との関係を示す発電出力−Ufマップ、セルスタック6の発電出力と空気利用率との関係を示す発電出力−Uaマップ、第1設定時間、第2設定時間、温度優先運転で設定されるセルスタックの目標温度(例えば、750℃程度に設定される)、この温度優先運転において設定される第2燃料利用率(例えば、80%)、燃料ガス流量計測手段54に検知誤差ありとの判定基準となる基準空気利用率(基準酸化材利用率)及び検知誤差をしたときに設定される第3燃料利用率(例えば、82%)などが登録されている。この第2の実施形態におけるその他の構成(固体酸化物形燃料電池システムの基本的構成を含むその他の構成)は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0071】
第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムでは、次の通りにして燃料ガス流量計測手段17の流量誤差のチェックが行われる。この流量誤差のチェックは、セルスタック6の発電出力が安定した運転状態に行われる。セルスタック6の発電出力が定格出力(例えば、700W)になると、ステップS21からステップS2に進み、燃料利用率(Uf)を第1燃料利用率(例えば、78%)に、また空気利用率(Ua)を第1空気利用率(例えば、38%)に維持した利用率値優先運転が行われ、この利用率値優先運転が第1設定時間(例えば、10分間)継続すると、ステップSS23からステップS24に進み、温度優先運転が行われる。尚、ステップS21からステップS23までの実行内容は、上述したステップS1からステップS4までの実行内容と同様である。
【0072】
ステップS24においては、制御手段60は、セルスタック6の温度が目標温度(例えば、750℃)となるように制御する温度優先運転に切り替え、この目標温度となるように空気ブロア26を制御する。また、燃料利用率設定手段64は、第1燃料利用率(例えば、78%)よりも高い第2燃料利用率(例えば、80%)を設定し、制御手段60は、この第2燃料利用率となるように燃料ガスブロア16を制御する。
【0073】
そして、このような温度優先運転が第2所定時間(例えば、2時間)継続して行われ、この運転状態が安定すると、ステップS25からステップS26に進み、このときの空気流量が計測され、空気利用率演算手段76は、この計測された空気流量に基づいて第2空気利用率を演算し、この第2空気利用率がメモリ手段72Aに記憶される。尚、温度優先運転においては、セルスタック6は定格運転状態にあるので、空気流量から空気利用率を演算することができる。
【0074】
このように温度優先運転における空気流量に基づいて第2空気利用率が演算されると、ステップS27において、この第2空気利用率が基準空気利用率より小さいかが判断される。利用率値優先運転から温度優先運転に切り替えると、燃料利用率については第2燃料利用率に上昇するので、セルスタック6で発電に寄与する燃料ガスの消費量が多くなり、従って、セルスタック6の下流側の燃焼空間で燃料される燃料ガスが少なくなってセルスタック6の温度は低下傾向になるが、温度優先運転を行っているために、セルスタック6の温度低下を抑えるように空気(酸化材ガス)の供給流量が少なくなる。
【0075】
このとき、燃料ガス流量計測手段17の検知誤差は、温度優先運転における第2空気利用率にも現れ、この第2の実施形態では、かかる第2空気利用率に着目して燃料ガス流量計測手段17の検知誤差をチェックしている。即ち、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差がない場合、燃料利用率を第1燃料利用率から第2燃料利用率に上昇させ、セルスタック6の温度が目標温度となるように制御すると、第2空気利用率は例えば46%程度となる。一方、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差、特にプラス側の誤差が存在する場合、この第2空気利用率は、検知誤差がない場合に比して小さくなる。
【0076】
更に説明すると、利用率値優先運転から温度優先運転に切り換えた際に燃料ガス流量計測手段17に検知誤差、特にプラス側の誤差が存在していると、燃料ガスがより多く流れるために温度の低下幅は小さくなり、従って、このときに絞る空気量も少なくてよく、第2空気利用率は測定誤差のない場合に比して小さく、例えば、燃料ガス流量計測手段17においてプラス側に例えば2%の検知誤差が存在していると、この第2空気利用率は41.5%程度となる。
【0077】
このようなことから、温度優先運転において空気流量が計測された後は、ステップS27において第2空気利用率が基準空気利用率よりも小さいかが判断される。基準空気利用率としては、例えば、検知誤差がない場合における第2空気利用率の例えば46%程度に設定される。
【0078】
この場合、流量誤差判定手段68Aは、第2空気利用率とこの基準空気利用率(例えば、46%)とを対比し、この第2空気利用率が基準空気利用率よりも小さいときには燃料ガス流量計測手段17の計測値と実際の燃料ガスの流量との間にプラス側の乖離があり、このような場合、流量誤差判定手段68Aは、燃料ガス流量計測手段17にプラス側の誤差ありと判定する(ステップS28)。
【0079】
流量誤差判定手段68Aがかく判定すると、燃料利用率設定手段64は燃料利用率として第3燃料利用率(例えば、82%)を設定し(ステップS29)、このように燃料ガス流量計測手段17のプラス側の測定誤差により燃料利用率を第3燃料利用率に上昇させることにより、燃料供給不足などが生じることなく発電効率をより高めることができる。尚、この第2空気利用率が基準空気利用率以上であると、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差が存在しないか、或いは存在していてもマイナス側の検知誤差(換言すると、不足側の誤差)であるために、燃料利用率はそのまま維持される。
【0080】
この第2の実施形態では、燃料ガス流量計測手段17にプラス側の測定誤差が存在していると第3燃料利用率(例えば、82%)に上昇させているが、燃料利用率の上昇程度については、第1の実施形態と同様に、燃料ガス流量計測手段17のプラス側の測定誤差に応じて、上昇利用率を演算して第3燃料利用率を設定するようにしてもよい。
【0081】
この場合においても、コントローラ52Aに上昇利用率演算手段(図示せず)を含め、この上昇利用率演算手段は、温度優先運転における第2空気利用率と基準空気利用率との空気利用率差(酸化材利用率差)、即ち比較空気利用率差(比較酸化材利用率差)を演算し、この比較空気利用率差の値に基づいて上昇利用率を演算する。この比較空気利用率差が大きい(又は小さい)と、燃料ガス流量計測手段17の計測値と実際の燃料ガスの流量との間に大きな(又は小さな)乖離があり、従って、上昇利用率演算手段により演算される上昇利用率の値も大きく(又は小さく)なる。
【0082】
この場合、上昇利用率演算手段による上昇利用率は、例えば、式(3)、
上昇利用率=α×比較空気利用率差
を用いて演算することができる。ここで、αは係数であって、この係数αは、実験的に導き出される値である。
【0083】
例えば、基準空気利用率が46%であるときに、この第2空気利用率が例えば41.5%であると、第2空気利用率と基準空気利用率との比較空気利用率差は、4.5となり、上昇利用率演算手段は、上記式(3)を用い、係数(例えば、0.35)にこの比較空気利用率差の4.5を積算して例えば1.6ポイントを算出し、第3燃料利用率として第2燃料利用率(例えば、80%)にこの上昇利用率(例えば、1.6%)を加算した81.6%が設定される。
【0084】
次いで、
図7及び
図8を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態について説明する。上述の第2の実施形態では、利用率値優先運転を行った後に温度優先運転を行い、この温度優先運転における空気利用率を利用して燃料ガス流量計測手段の測定誤差の判定を行っているが、この第3の実施形態では、利用率値優先運転を行った後に温度優先運転を行い、この温度優先運転において燃料利用率を上昇させる前後の空気利用率差を利用して燃料ガス流量計測手段の測定誤差の判定を行っている。
【0085】
図7及び
図8において、この第3の実施形態では、コントローラ52Bは、燃料利用率設定手段64、空気利用率設定手段66、流量誤差判定手段68B、空気利用率演算手段76、タイマ手段70B及びメモリ手段72Bに加えて空気利用率差演算手段84(酸化材利用率差演算手段として機能する)を備えている。燃料利用率設定手段64は、上述したと同様にして燃料利用率を設定し、また空気利用率設定手段66は、上述するように空気利用率を設定し、空気利用率演算手段76は、上述したように空気利用率を演算する。また、空気利用率差演算手段84は、後述するようにして第2空気利用率と第3空気利用率との利用率差、即ち演算空気利用率差(演算酸化材利用率差)を演算し、流量誤差判定手段68Bは、この演算空気利用率差に基づいて燃料ガス流量計測手段17の検知誤差の有無を後述する如く判定する。
【0086】
更に、タイマ手段70Bは、定格運転状態が安定するまでの第1設定時間(例えば、10〜30分程度に設定される)及び第1及び第2温度優先運転が安定するまでの第2設定時間(例えば、1〜3時間程度に設定される)を計時する。更に、メモリ手段72Bには、セルスタック6の発電出力と燃料利用率との関係を示す発電出力−Ufマップ、セルスタック6の発電出力と空気利用率との関係を示すマップ、第1設定時間、第2設定時間、第1及び第2温度優先運転で設定されるセルスタック6の目標温度、この第2温度優先運転において設定される第2燃料利用率、燃料ガス流量計測手段54に検知誤差ありとの判定基準となる基準空気利用率及び検知誤差と判定したときに設定される第3燃料利用率などが登録されている。この第3の実施形態におけるその他の構成(固体酸化物形燃料電池システムの基本的構成を含むその他の構成)は、上述の第2の実施形態と同様である。
【0087】
第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムでは、次の通りにして燃料ガス流量計測手段17の流量誤差のチェックが行われる。この流量誤差のチェックは、上述したと同様に、セルスタック6の発電出力が安定した運転状態に行われる。セルスタック6の発電出力が定格出力(例えば、700W)になると、ステップS31からステップS32に進み、燃料利用率(Uf)を第1燃料利用率(例えば、78%)に、また空気利用率(Ua)を第1空気利用率(例えば、38%)に維持した利用率値優先運転が行われ、この利用率値優先運転が第1設定時間(例えば、10分間)継続すると、ステップS33からステップS34に進み、第1温度優先運転が行われる。尚、ステップS31からステップS33までの実行内容は、上述したステップS21からステップS23までの実行内容と同様である。
【0088】
ステップS34においては、制御手段60は、セルスタック6の温度が目標温度(例えば、750℃)となるように制御する温度優先運転に切り替え、この目標温度となるように空気ブロア26を制御する。このとき、燃料利用率設定手段64は、第1燃料利用率(例えば、78%)を設定し、制御手段60は、この第1燃料利用率となるように燃料ガスブロア16を制御する。
【0089】
そして、このような第1温度優先運転が第2所定時間(例えば、2時間)継続して行われ、この運転状態が安定すると、ステップS35からステップS36に進み、このときの空気流量が計測され、空気利用率演算手段76は、この計測された空気流量に基づいて第2空気利用率を演算し(ステップS38)、この第2空気利用率がメモリ手段72Bに記憶される。
【0090】
このように第1温度優先運転における空気流量に基づいて第2空気利用率が演算されると、ステップS38に進み、コントローラ52Bは第2温度優先運転を設定する。この第2温度優先運転においては、燃料利用率設定手段64は、第1燃料利用率(例えば、78%)よりも高い第2燃料利用率(例えば、80%)を設定し,制御手段60はこの第2燃料利用率となるように燃料ガスブロア16を制御するとともに、セルスタック6の温度(温度検知手段54の検知温度)が目標温度となるように空気ブロア26を制御する。
【0091】
そして、このような第2温度優先運転が第2所定時間(例えば、2時間)継続して行われ、この運転状態が安定すると、ステップS39からステップS40に進み、このときの空気流量が計測され、空気利用率演算手段76は、この計測された空気流量に基づいて第3空気利用率を演算し(ステップS41)、この第3空気利用率がメモリ手段72Bに記憶される。尚、この第2温度優先運転が行われる時間は、第2所定時間と異なる第3所定時間(例えば、1時間)行うようにしてもよい。
【0092】
このように第2温度優先運転における第3空気利用率が演算されると、空気利用率差演算手段84は、第1温度優先運転における第2空気利用率と第2温度優先運転における第3空気利用率との空気利用率差を演算し、この演算空気利用率差に基づいて燃料ガス流量計測手段17の検知誤差の有無の判定が行われる。
【0093】
第1温度優先運転から第2温度優先運転に切り替えると、燃料利用率については第2燃料利用率に上昇するので、セルスタック6で発電に寄与する燃料ガスの消費量が多くなり、従って、セルスタック6の下流側の燃焼空間で燃料される燃料ガスが少なくなってセルスタック6の温度は低下傾向になるが、温度優先運転を行っているために、セルスタック6の温度低下を抑えるように空気(酸化材ガス)の供給流量が少なくなる。
【0094】
このとき、燃料ガス流量計測手段17の検知誤差は、第1及び第2温度優先運転における空気利用率差にも現れ、この第3の実施形態では、かかる空気利用率差(演算空気利用率差)に着目して燃料ガス流量計測手段17の検知誤差をチェックしている。即ち、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差がない場合、第1温度優先運転における第2空気利用率は例えば40%程度となり、また燃料利用率を第2燃料利用率に上昇させた第2温度優先運転における第3空気利用率は例えば46%程度となり、空気利用率差(演算空気利用率差)は例えば6ポイントとなる。一方、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差、特にプラス側の誤差が存在する場合、この空気利用率差は、検知誤差がない場合に比して小さく、6ポイントよりも小さくなる。
【0095】
更に説明すると、第1温度優先運転から第2温度優先運転に切り換えた際に燃料ガス流量計測手段17に検知誤差、特にプラス側の誤差が存在していると、燃料ガスがより多く流れるために温度の低下幅は小さくなり、従って、このときに絞る空気量も少なくてよく、空気利用率差は測定誤差のない場合に比して小さく、例えば、燃料ガス流量計測手段17においてプラス側に例えば2%の検知誤差が存在していると、この第3空気利用率は41.5%程度となる。
【0096】
このようなことから、第2空気利用率と第3空気利用率との空気利用率差が演算された後は、ステップS43においてこの空気利用率差(演算空気利用率差)が基準空気利用率差よりも小さいかが判断される。基準空気利用率としては、例えば、検知誤差がない場合における空気利用率差の例えば6ポイント程度に設定される。
【0097】
この場合、流量誤差判定手段68Bは、この空気利用率差(演算空気利用率差)と基準空気利用率差(例えば、6ポイント)とを対比し、この空気利用率差が基準空気利用率差よりも小さいときには燃料ガス流量計測手段17の計測値と実際の燃料ガスの流量との間にプラス側の乖離があり、このような場合、流量誤差判定手段68Bは、燃料ガス流量計測手段17にプラス側の誤差ありと判定する(ステップS44)。
【0098】
流量誤差判定手段68Bがかく判定すると、燃料利用率設定手段64は燃料利用率として第3燃料利用率(例えば、82%)を設定し(ステップS45)、このように燃料ガス流量計測手段17のプラス側の測定誤差により燃料利用率を第3燃料利用率に上昇させることにより、燃料供給不足などが生じることなく発電効率をより高めることができる。尚、この空気利用率差が基準空気利用率差以上であると、燃料ガス流量計測手段17に検知誤差が存在しないか、或いは存在していてもマイナス側の検知誤差(換言すると、不足側の誤差)であるために、燃料利用率はそのまま維持される。
【0099】
この第3の実施形態においても、第2の実施形態と略同様に、燃料ガス流量計測手段17のプラス側の測定誤差に応じて、上昇利用率を演算して第3燃料利用率を設定するようにしてもよく、この場合においても、コントローラ52Bに上昇利用率演算手段(図示せず)を含めることができる。
【0100】
この上昇利用率演算手段は、第1及び第2温度優先運転における空気利用率差(演算空気利用率差)と基準空気利用率差との空気利用率差、即ち比較空気利用率差(比較酸化材利用率差)を演算し、この比較空気利用率差の値に基づいて上昇利用率を演算するようにすることができる。
【0101】
この場合、上昇利用率演算手段による上昇利用率は、例えば、式(4)、
上昇利用率=α×比較空気利用率差
を用いて演算することができる。ここで、αは係数であって、この係数αは、実験的に導き出される値である。
【0102】
例えば、基準空気利用率差が6ポイントであるときに、この演算空気利用率差が1.5ポイントであると、この基準空気利用率差と演算空気利用率差との比較空気利用率差は4.5ポイントとなり、上昇利用率演算手段は、上記式(4)を用い、係数(例えば、0.35)にこの比較空気利用率差の4.5を積算して例えば1.6ポイントを算出し、第3燃料利用率として第2燃料利用率(例えば、80%)にこの上昇利用率(例えば、1.6%)を加算した81.6%が設定される。
【0103】
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の修正乃至変更が可能である。
【0104】
本願発明の効果を確認するために、次の通りのシミュレーションを行った。まず、第1の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御系によるシミュレーションを行い、このシミュレーションにおいて定格出力700Wのセルスタックを用いたシステムを想定した。利用率値優先運転において第1燃料利用率を78%、第1空気利用率を38%に設定し、燃料ガス流量計測手段の測定誤差として、測定誤差なし、プラス側2%この測定誤差あり、プラス側3%の測定誤差ありについてシミュレーションを行った。
【0105】
このシミュレーション結果は、表1に示す通りであった。表1に示す結果から理解されるように、第1燃料利用率(78%)から第2燃料利用率(80%)に上昇させたときには、セルスタックの温度は低下するが、その低下傾向は測定誤差が大ききほど小さくなった(尚、測定誤差プラス3%の場合、温度差は上昇している)。そして、このプラス側の測定誤差の大きさに応じて第3燃料利用率を設定し、プラス側2%の測定誤差の場合に第3燃料利用率を81.6%に、またプラス側3%の測定誤差の場合に第3燃料利用率を82.4%に設定して発電運転したときの発電効率を演算したところいずれも53.5%であり、第1燃料利用率で運転したときよりも1.1ポイント改善されることがわかった。
【0106】
【表1】
次いで、第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御系によるシミュレーションを、上述したと同様の条件で行った。利用率値優先運転において第1燃料利用率を78%、第1空気利用率を38%に設定し、温度優先運転において第2燃料利用率を80%に設定し、燃料ガス流量計測手段の測定誤差として、測定誤差なし、プラス側2%この測定誤差ありについてシミュレーションを行った。
【0107】
このシミュレーション結果は、表2に示す通りであった。表2に示す結果から理解されるように、利用率値優先運転から温度優先運転に切り替えたときには、空気利用率は上昇するが、プラス側2%の測定誤差の場合には41.5%までしか上昇せず、この上昇に基づき第3燃料利用率を82%に設定して発電運転したときの発電効率を演算したところ53.8%であり、第1燃料利用率で運転したときよりも1.4ポイント改善されることがわかった。
【0108】
【表2】
次に、第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御系によるシミュレーションを、上述したと同様の条件で行った。利用率値優先運転において第1燃料利用率を78%、第1空気利用率を38%に設定し、その後利用率値優先運転から第1温度優先運転に切り替え、この第1温度優先運転において第1燃料利用率を78%に設定し、その後、第1温度優先運転から第2温度優先運転に切り替え、第2燃料利用率を80%に設定し、測定誤差なし、プラス側2%この測定誤差ありについてシミュレーションを行った。
【0109】
このシミュレーション結果は、表3に示す通りであった。表3に示す結果から理解されるように、第1温度優先運転から第2温度優先運転に切り替えたときには、空気利用率は上昇し、測定誤差がない場合には第3空気利用率は46%まで上昇するが、プラス側2%の測定誤差の場合には41.5%までしか上昇せず、このとき第3燃料利用率を82.4%に設定して発電運転したときの発電効率を演算したところ53.8%であり、第1燃料利用率で運転したときよりも1.4ポイント改善されることがわかった。
【0110】
【表3】
比較のために、従来の条件のシミュレーションも行った。燃料ガス流量測定手段の測定誤差なしの場合は、燃料利用率を78%及び80%に設定し、この測定誤差プラス側2%の場合は、燃料利用率を80%に設定し、またその測定誤差がプラス側3%の場合には、燃料利用率を80%に設定して行った。
【0111】
このシミュレーション結果は、表4に示す通りであり、測定誤差がプラス側にあるときには、測定誤差なしの場合に比して発電効率が低いことがわかった。