(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るセンターユニット、工作機械及びプログラムを円筒研削盤に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、円筒研削盤1は、ベッド10と、主軸センター21を有する主軸センターユニット20と、心押センター35を有する心押センターユニット30と、直進テーブル40と、砥石61を保持する砥石台60と、を備える。
【0015】
ベッド10の上面には、直進テーブル40がZ方向、すなわち
図1の左右方向に沿ってスライド可能に設置されている。主軸センターユニット20及び心押センターユニット30は、直進テーブル40の上面に、Z方向に沿って互いに対向するように配置されている。主軸センターユニット20は直進テーブル40の一端側、すなわち
図1の左端側に位置する。心押センターユニット30は直進テーブル40の他端側、すなわち
図1の右端側に位置する。
【0016】
円筒研削盤1は、ベッド10に対して直進テーブル40をZ方向に沿う送り方向Sに移動させるテーブル並進駆動部(図示しない)を備える。このテーブル並進駆動部は、例えばモータ(図示しない)及びボールねじ(図示しない)により構成される。このテーブル並進駆動部により、直進テーブル40は、主軸センターユニット20及び心押センターユニット30とともに送り方向Sに移動する。
【0017】
図1に示すように、工具である砥石61は略円板状に形成されている。砥石台60は、砥石61の中心を貫く回転軸61oを中心に砥石61を回転可能に支持する。砥石台60は、回転軸61oを中心に砥石61を回転させる砥石回転駆動部60aと、砥石台60をX方向、すなわち
図1の上下方向に移動させる砥石並進駆動部60bと、を備える。砥石回転駆動部60aは、例えばモータ(図示しない)により構成される。砥石並進駆動部60bは、例えばモータ(図示しない)及びボールねじ(図示しない)により構成される。砥石61は、並進駆動部60bにより、主軸センターユニット20と心押センターユニット30との間に保持されるワークWに対して近接及び接触することができる。回転中の砥石61の外周面がワークWの外周面に接触することでワークWは研削される。この状態で、上記テーブル並進駆動部(図示しない)によって直進テーブル40をZ方向に沿う送り方向Sに移動させることでワークWの全域が研削される。
【0018】
図1に示すように、主軸センターユニット20は、直進テーブル40の上面に位置する主軸台22と、ワークWの左端部を支持する主軸センター21と、を備える。主軸台22は略直方体に形成されている。主軸センター21は先細りする円錐状に形成されている。さらに、主軸センターユニット20は、何れも図示しない主軸センター21により支持されたワークWを把持する把持部と、その把持部をワークWとともに回転させる回転部と、を備える。
【0019】
図3に示すように、心押センターユニット30は、直進テーブル40の上面に位置する心押台31と、ワークWの右端部を支持する心押センター35と、心押センター35をZ方向に移動させる心押センター移動部32と、位置センサ38a,38bと、を備える。
【0020】
心押台31は、心押センター35を内部に収容する円筒状に形成される筒部31aを備える。心押センター35の先端(ワークWを支持する端部)及び後端は筒部31aから外部に露出している。
【0021】
図3に示すように、心押センター35は、ワーク支持部35aと、プッシャ35bと、付勢バネ35cと、センター受け部35eと、を備える。
ワーク支持部35aは、先端が円錐状をなす略円柱状に形成される。ワーク支持部35aの先端によりワークWの右端部が支持される。
センター受け部35eは、Z方向に延びる円筒状をなし、その内部にワーク支持部35aの後端側を保持する。
プッシャ35bは、Z方向に延びる円筒状をなし、センター受け部35eの後端側に連結されている。
付勢バネ35cは、プッシャ35bの外周に位置するコイルバネであって、心押センター35をその先端側に付勢する。この付勢バネ35cにより心押センター35の先端はワークWの右端側に押されることで、ワークWは心押センター35と主軸センター21との間で安定的に保持される。
【0022】
また、
図5に示すように、心押センター35はラック35dを備える。ラック35dは、Z方向に並ぶ複数の歯(図示しない)が形成され、後述する第3平歯車33cに噛み合う。
【0023】
図4、
図5及び
図6に示すように、心押センター移動部32は、サーボモータ32aと、ウォーム32bと、ウォームホイール32cと、第1〜第3平歯車33a〜33cと、を備える。
【0024】
図4に示すように、第1平歯車33aの中心には、Z方向に延びるサーボモータ32aの出力軸32a1が固定されている。第1平歯車33aは第2平歯車33bと噛み合っている。第2平歯車33bの中心にはウォーム32bが連結されている。ウォーム32bはZ方向に延びるとともに、
図5に示すように、ウォームホイール32cに噛み合っている。ウォームホイール32cはY方向に延び、ウォームホイール32cの下端には第3平歯車33cが連結されている。第3平歯車33cは、心押センター35のラック35dに噛み合っている。
【0025】
心押センター移動部32の動作について以下に説明する。
図4に示すように、サーボモータ32aは出力軸32a1を通じてその出力軸32a1を中心に第1平歯車33aを回転させる。この第1平歯車33aの回転は第2平歯車33bに伝達される。これにより、ウォーム32bは第2平歯車33bとともに軸回転し、
図5に示すように、ウォーム32bの回転はウォームホイール32cに伝達される。そして、ウォームホイール32cが第3平歯車33cとともに軸回転することで第3平歯車33cの回転はラック35dを介して心押センター35に直線運動として伝達される。これにより、心押センター35はZ方向に沿って移動する。
【0026】
図3に示すように、位置センサ38a,38bはZ方向に沿って配列されている。各位置センサ38a,38bは、プッシャ35bの後端に固定されたドグ39の接近を検出し、その検出結果を制御部70に出力する。制御部70は、位置センサ38a,38bの検出結果に基づき心押センター35の位置を認識する。
【0027】
図2に示すように、円筒研削盤1は、制御部70と、操作部80と、ディスプレイ90と、各種駆動部100と、を備える。各種駆動部100は、制御部70の制御のもとに駆動されるものであって、例えば、上述した心押センター移動部32、砥石回転駆動部60a及び砥石並進駆動部60b、図示しないテーブル並進駆動部等を備える。
【0028】
操作部80は、オペレータにより操作されると、操作された旨を示す操作信号を制御部70に出力する。操作部80は、
図8(a)に示すように、例えば、テンキー81と、選択スイッチ82と、表示灯84が内蔵される決定スイッチ83と、センター前進スイッチ85と、を備える。
【0029】
テンキー81は、例えば、オペレータがNCプログラムを作成する際に押し操作される。NCプログラムは、ワークWを加工するために主軸センター21、心押センター35、直進テーブル40及び砥石台60の移動、砥石61の回転及び停止などを順番に指令する加工シーケンスである。NCプログラムは、心押センター35の前進を指令するMコードを含む。
【0030】
選択スイッチ82、決定スイッチ83及びセンター前進スイッチ85は、それぞれ押し操作可能なプッシュスイッチから構成される。
【0031】
選択スイッチ82は、ワーク番号を選択するためのスイッチである。ワーク番号は、ワークWの種類に対応づけられた番号であり、例えば、10進2桁の数字からなる。選択スイッチ82は、
図8(b)に示すように、それぞれ隣接して位置する1桁目スイッチ82a及び2桁目スイッチ82bを備える。1桁目スイッチ82aは2桁目スイッチ82bの右側に位置している。
【0032】
1桁目スイッチ82aは、1回押し操作される毎にワーク番号の1桁目が1ずつ増加していき、1桁目が「9」のときに1回押し操作されると「0」に戻る。これと同様に、2桁目スイッチ82bは、1回押し操作される毎にワーク番号の2桁目が1ずつ増加していき、1桁目が「9」のときに1回押し操作されると「0」に戻る。選択スイッチ82により選択されているワーク番号は、制御部70による制御のもと、ディスプレイ90に表示される。
【0033】
決定スイッチ83は、選択スイッチ82により選択されたワーク番号を決定するためのスイッチである。決定スイッチ83は、本例では、選択スイッチ82の右方に位置する。
【0034】
表示灯84は、通知手段に相当し、LED(Light Emitting Diode)、白熱灯等の発光素子からなり、決定スイッチ83に内蔵される。表示灯84は、制御部70による制御のもと、NCプログラムと前進距離との整合がとられたことによりNCプログラムが安全に実行可能となったときに点灯する。これにより、オペレータにNCプログラムが安全に実行可能となったことが通知される。
【0035】
センター前進スイッチ85は、心押センター35を前進させるためのスイッチである。心押センター35の前進距離は、後述するように、
図9のデータテーブルを参照して読み出される。
【0036】
図2に示すように、制御部70は、円筒研削盤1全体、例えば、各種駆動部100及びディスプレイ90等を制御するものであり、例えば、コンピューターにより構成される。詳しくは、制御部70は、処理部71と、記憶部72と、を備える。処理部71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等から構成されている。また、記憶部72は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成されている。
【0037】
記憶部72のROMは、処理部71が実行する処理に関する処理プログラム等を記憶する。記憶部72のRAMは、処理部71が処理プログラムを実行するのに必要な作業データ、例えば、操作部80の操作を通じて作成されたNCプログラム、ワークWの種類毎の心押センター35の前進位置を示すデータテーブル(
図9参照)、NCプログラム番号が対応づけられたNCプログラムを示すデータテーブル(
図10参照)等を記憶する。処理部71は、ROMに記憶されたプログラム、RAMに記憶された複数のNCプログラムのうち選択したNCプログラムに基づいて各処理を実行する。
【0038】
複数のNCプログラムはワークWの種類に合わせて異なる内容に設定されている。
図10に示すように、各NCプログラムにはNCプログラム番号が対応づけられたうえで記憶部72に記憶されている。例えば、NCプログラム番号「01」には第1のNCプログラムが対応づけられ、NCプログラム番号「02」には第2のNCプログラムが対応づけられ、NCプログラム番号「03」には第3のNCプログラムが対応づけられている。
【0039】
第1のNCプログラムは、
図7(a)に示す第1のワークW1を加工するためのプログラムであり、第2のNCプログラムは、
図7(b)に示す第2のワークW2を加工するためのプログラムであり、第3のNCプログラムは、
図7(c)に示す第3のワークW3を加工するためのプログラムである。
【0040】
NCプログラム番号は、
図9に示すワーク番号と関連づけられている。例えば、NCプログラム番号「01」の第1のNCプログラムが実行される際には、ワーク番号「01」の前進距離が好適である。
【0041】
また、
図2に示すように、制御部70は、処理部71を介して、選択スイッチ82により選択されたワーク番号をディスプレイ90に表示する。これにより、オペレータは、選択中のワーク番号を視認することができる。
【0042】
次に、
図11のフローチャートを参照しつつ、制御部70(処理部71)により実行される処理手順について説明する。なお、当該フローチャートの開始時には、制御部70により、表示灯84が消灯されており、心押センター35が初期位置に設定される。この初期位置は、何れの種類のワークWであっても心押センター35がワークWに接触しない位置である。
【0043】
制御部70は、選択スイッチ82の操作により選択されたワーク番号を認識し(S101)、決定スイッチ83の操作の有無を判別する(S102)。制御部70は、決定スイッチ83の操作がない旨判別すると(S102:NO)、上記ステップS101の処理に戻り、再度、選択スイッチ82の操作により選択されたワーク番号を認識する。制御部70は、決定スイッチ83の操作がある旨判別すると(S102:YES)、選択されたワーク番号と同一のNCプログラム番号のNCプログラムを読み出す(S103)。例えば、
図10のデータテーブルを参照しつつ、選択されたワーク番号が「01」の場合には第1のNCプログラムが読み出され、選択されたワーク番号が「02」の場合には第2のNCプログラムが読み出され、選択されたワーク番号が「03」の場合には第3のNCプログラムが読み出される。
【0044】
そして、制御部70は、選択されたワーク番号と読み出すNCプログラム番号とが一致するのを待って(S104:NO)、選択されたワーク番号と読み出すNCプログラム番号とが一致した旨判別すると(S104:YES)、選択されたワーク番号に対応する前進距離を読み出す(S105)。例えば、
図9のデータテーブルを参照しつつ、ワーク番号が「01」の場合には前進距離として30000.0μmが読み出され、ワーク番号が「02」の場合には前進距離として50000.0μmが読み出される。
なお、ワーク番号が「00」の場合には、本例では、前進距離は初期位置である0μmが読み出される。すなわち、当該フローチャートの開始時には、ワーク番号「00」に対応する前進距離が読み出されている。
【0045】
そして、制御部70は、前進距離を読み出した後、表示灯84を点灯し(S106)、読み出したNCプログラムの実行を許可する(S107)。表示灯84の点灯により、NCプログラムと前進距離との整合がとられたこと、すなわちNCプログラムが安全に実行可能となったことが示される。言い換えると、表示灯84が非点灯状態にあるときにはNCプログラムの実行は禁止される。以上で、当該フローチャートに係る処理が終了となる。
なお、上記ステップS103〜S106の処理の順番は上記に限らず適宜変更可能であり、上記ステップS103〜S106のうち少なくとも何れかが同時に実行されてもよい。
【0046】
制御部70は、表示灯84が点灯した状態においてNCプログラムと前進距離との整合がとれなくなった場合には表示灯84を消灯する。この整合がとれなくなった場合とは、例えば、選択スイッチ82が操作されてワーク番号が変更されたとき、又はテンキー81の操作により別のNCプログラムが読み出されたときである。この表示灯84の消灯により、NCプログラムが安全に実行できないことをオペレータに通知できる。
【0047】
次に、NCプログラムの実行方法について簡単に説明する。
制御部70は、上記ステップS107においてNCプログラムの実行が許可された状態で、自動又はオペレータによる操作に基づき、上記ステップS103において読み出されたNCプログラムを開始する。そして、制御部70は、NCプログラムの実行中において、NCプログラムの一指令として心押センター35の前進を指令するMコード(例えばM15)を実行する際、予め上記ステップS105において読み出した前進位置だけ心押センター35を前進させる。これにより、ワークWが主軸センター21及び心押センター35間に保持される。制御部70は、引き続きNCプログラムに従って円筒研削盤1の各種駆動部100を駆動させることでワークWを研削する。
【0048】
一方、NCプログラムを実行しない場合であっても、センター前進スイッチ85の操作により心押センター35が前進される。詳しくは、制御部70は、表示灯84が点灯した状態(S106)において、センター前進スイッチ85が操作されたとき、予め上記ステップS105において読み出した前進位置だけ心押センター35を前進させる。また、制御部70は、表示灯84が点灯しない状態にあっては、センター前進スイッチ85が操作されても、心押センター35を前進させない。
【0049】
次に、
図7(a)〜(c)及び
図8を参照しつつ、ワークWの種類を第1〜第3のワークW1〜W3に交換した場合の円筒研削盤1の操作方法について説明する。なお、第1のワークWは最も長く、第2のワークWは第1のワークW1よりも短く、第3のワークW3は第2のワークW2よりも短い。
【0050】
オペレータは、第1のワークW1を主軸センター21及び心押センター35間に設置する。この際、オペレータは、第1のワークW1をその下側から支持する治具を利用してもよい。そして、オペレータは、選択スイッチ82の操作を通じて第1のワークW1のワーク番号(例えば、「01」)を選択したうえで決定スイッチ83の操作を通じて決定する。これにより、制御部70において、このワーク番号に対応した前進距離L1が読み出され、このワーク番号と同一のNCプログラム番号(例えば、「01」)のNCプログラム(例えば第1のNCプログラム)が読み出され、表示灯84が点灯する。この読み出されたNCプログラムが実行されることで、第1のワークW1を加工するにあたって、前進距離L1だけ心押センター35が前進させられ、第1のワークW1が主軸センター21及び心押センター35間に保持される。
【0051】
また、第2のワークW2が加工される場合には、上記同様の手順により、ワーク番号(例えば、「02」)が選択及び決定されることで、NCプログラム(例えば第2のNCプログラム)が読み出された後に実行される。これにより、前進距離L1よりも大きい前進距離L2だけ心押センター35が前進させられ、第2のワークW2が主軸センター21及び心押センター35間に保持される。
また、第3のワークW3が加工される場合には、上記同様の手順により、ワーク番号(例えば、「03」)が選択及び決定されることで、NCプログラム(例えば第3のNCプログラム)が読み出された後に実行される。これにより、前進距離L2よりも大きい前進距離L3だけ心押センター35が前進させられ、第3のワークW3が主軸センター21及び心押センター35間に保持される。
以上のように、ワークWの種類、特に長さに応じた心押センター35の前進が実現される。
【0052】
なお、心押センターユニット30は、上述した各構成に加えて、後述する制御部70のうち、心押センターユニット30(正確にはサーボモータ32a)を制御する機能と、ワーク番号とNCプログラム番号とが一致したとき後述する表示灯84を点灯させる機能と、を有する。
【0053】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
(1)心押センターユニット30は、ワークWの端部を支持する心押センター35と、ワークWに対して心押センター35を前進又は後退させる心押センター移動部32と、ワークWの端部を支持するために必要となる前進距離をワークWの種類毎に記憶する記憶部72と、ワークWの種類を選択したうえで決定するために操作される操作部80と、操作部80によりワークWの種類が決定された際、ワークWの種類に応じた前進距離を予め記憶部72から読み出し、加工シーケンス(NCプログラム)の一指令又はオペレータによるセンター前進スイッチ85の操作に従って心押センター35を前進させる際には、予め読み出された前進距離だけ心押センター移動部32を介して心押センター35を前進させる制御部70と、を備える。
この構成によれば、加工シーケンスの一指令等に従って心押センター35を前進させる前に、予めワークWの種類に応じた前進距離が読み出される。このため、加工シーケンス等において前進距離を読み出す時間が短縮される。よって、ワークWを異なる種類に交換する際に要する段取り時間を短縮でき、ワークWの製造効率を向上させることができる。
また、既存の円筒研削盤において心押センターユニット30を交換するだけで、上述したような作用及び効果を奏することができる。よって、比較的に安価で心押センターユニット30を備えた円筒研削盤1を構成することができる。
【0055】
(2)操作部80は、ワークWの種類を選択するために操作される選択スイッチ82と、選択スイッチ82により選択されたワークWの種類を決定するために操作される決定スイッチ83と、を備える。
この構成によれば、簡単な操作により、ワークWの種類が選択及び決定される。
【0056】
(3)記憶部72は、ワークWの種類に応じた複数のNCプログラム(例えば第1〜第3のNCプログラム)を記憶する。制御部70は、操作部80により決定されたワークWの種類に応じたNCプログラムを記憶部72から読み出したとき、言い換えると、ワークWの種類とNCプログラムとの整合がとれたときに、NCプログラムが実行可能となったことを示すように表示灯84を点灯させる。
この構成によれば、表示灯84が点灯していなければ、決定されたワークWの種類と読み出したNCプログラムとの整合がとれていないとして、NCプログラムを実行することができないようにインターロックがかけられている。よって、例えば操作ミスにより心押センター35がワークWに衝突することを抑制することができ、より安全性を高めることができる。
【0057】
(4)円筒研削盤1は、ワークWの一端を支持する心押センターユニット30が有する心押センター35と、ワークWの他端を支持する主軸センター21と、心押センター35及び主軸センター21の間に支持されるワークWを加工する砥石台60に保持される砥石61と、を備える。
この構成によれば、円筒研削盤1において、ワークWを異なる種類に交換する際に要する段取り時間を短縮できる。
【0058】
(5)プログラムは、コンピューターである制御部70を、ワークWの端部を支持する心押センター35をワークWに対して前進又は後退させる心押センター移動部32を制御するセンター移動手段、ワークWの端部を支持するために必要となる前進距離をワークWの種類毎に記憶する記憶手段(記憶部72)、ワークWの種類が決定された際、ワークWの種類に応じた前進距離を予め記憶手段を通じて読み出し、NCプログラムに従って心押センター35を前進させる際には、予め読み出された前進距離だけセンター移動手段を介して心押センター35を前進させる制御手段(処理部71)、として機能させる。
この構成によれば、このプログラムを円筒研削盤1の制御部70において実行することで、ワークWを異なる種類に交換する際に要する段取り時間を短縮できる。
また、既存の円筒研削盤1の制御部70に当該プログラムを実行させることで、上記作用及び効果を奏することができる。
【0059】
(6)心押センター移動部32は、サーボモータ32aと、ウォーム32bと、ウォームホイール32cと、第1〜第3平歯車33a〜33cと、を備える。この構成によれば、停電等により円筒研削盤1の電源がオフした場合であっても、心押センター35におけるワークWを保持する力が保たれ易い。
【0060】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0061】
上記実施形態においては、選択スイッチ82はプッシュスイッチから構成されていたが、これに限らず、ロータリースイッチから構成されてもよい。
【0062】
上記実施形態においては、決定スイッチ83には表示灯84が内蔵されていたが、表示灯84は決定スイッチ83と別の位置に設けられていてもよい。また、表示灯84は省略されてもよい。
【0063】
選択スイッチ82、決定スイッチ83及びセンター前進スイッチ85は機械的なスイッチであったが、ディスプレイ90に表示される仮想的なスイッチであってもよい。この場合、円筒研削盤1は、オペレータによるディスプレイ90へのタッチ操作の有無及び位置を検出するタッチパネルを備える。そして、ディスプレイ90には、選択スイッチ82、決定スイッチ83及びセンター前進スイッチ85に対応するボタンを表示させる。制御部70は、表示されるボタンの領域がタッチ操作されたことを持って選択スイッチ82、決定スイッチ83及びセンター前進スイッチ85の何れかが操作された場合と同様に機能する。
【0064】
上記実施形態においては、工作機械として心押センターユニット30を備える円筒研削盤1が採用されていたが、心押センターユニット30を備える工作機械であればよく、例えば、心押センターユニット30を備える旋盤又は転造盤等であってもよい。また、本発明の対象は工作機械に限らず、心押センターユニット30であってもよい。
【0065】
さらに、本発明の対象は円筒研削盤1の機能を実現するためのプログラム(NCプログラムとは異なる処理プログラム)であってもよい。この場合、当該プログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、HDD(Hard Disk Drive)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよいし、ネットワークを介してコンピューターにダウンロードされてもよい。
【0066】
上記実施形態においては、制御部70は、予め読み出した前進位置だけ心押センター35を前進させていたが、前進に限らず、NCプログラムの一指令として心押センター35の後退を指令するMコードを実行する際、予め読み出した前進距離と同一の距離だけ心押センター35を後退させてもよい。
【0067】
上記実施形態においては、心押センター移動部32は、ウォーム32b及びウォームホイール32c等を備えていたが、心押センター35を前進又は後退させることができればこの構成に限らず、例えば、ボールねじ等を備える構成であってもよい。
【0068】
上記実施形態においては、ワークWを保持するため、主軸センター21を固定し、心押センター35のみを移動させていたが、主軸センター21及び心押センター35の両方を移動させてもよい。この場合、例えば、制御部70は、
図9のデータテーブルを通じて読み出した前進距離の半分だけ心押センター35を前進させ、かつ前進距離の半分だけ主軸センター21を前進(ワークWに近づく方向に移動)させてもよい。この場合、主軸センター21の移動距離と心押センター35の移動距離との比は1:1であるが、比はこれに限らない。また、心押センター35を固定し、主軸センター21のみを移動させてもよい。この場合、例えば、制御部70は、
図9のデータテーブルを通じて読み出した前進距離だけ主軸センター21を前進させる。
【0069】
上記実施形態においては、表示灯84は、その点灯によりオペレータにNCプログラムが実行可能となったことを通知する通知手段であったが、通知手段はこれに限らず、ディスプレイ90への表示、音声等であってもよい。
【0070】
上記実施形態においては、操作部80の操作を通じてワークWの種類が選択及び決定されていたが、これに限らず、円筒研削盤1はワークWの重さ及び形状を検出する各種センサを備え、制御部70は、この各種センサの検出結果に基づきワークWの種類を決定してもよい。この場合には、選択スイッチ82及び決定スイッチ83を省略してもよい。