(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化材の酸化及び還元によって発電を行う固体酸化物形のセルスタックと、酸化材を前記セルスタックに送給するための酸化材供給手段と、前記改質器に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段と、前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材供給手段を作動制御するための制御手段と、を備え、前記セルスタックの流出側の燃焼域にて、前記セルスタックの燃料極側から流出される改質燃料ガスが前記セルスタックの酸素極側から流出される酸化材により燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記制御手段は、前記セルスタックの発電出力が電力負荷に追従して変動するように前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材供給手段を制御するように構成され、更に、前記燃焼域における燃焼の失火を検知するための失火検知手段が設けられており、
前記セルスタックの発電出力上昇時に前記失火検知手段が前記燃焼域での失火を検知すると、前記制御手段は、前記セルスタックの発電出力の速度上限値を低下させるように前記燃料ガス供給手段及び前記酸化材供給手段を制御することを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
前記制御手段は、前記セルスタックの発電出力の速度上限値を切り替える出力上昇速度切替手段を含み、前記出力上昇速度切替手段は、通常運転時には前記セルスタックの発電出力の上昇を第1速度上限値に設定し、前記セルスタックの発電出力上昇時に前記失火検知手段が前記燃焼域の失火を検知すると前記セルスタックの上昇を前記第1速度上限値よりも小さい第2速度上限値に設定することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記制御手段は、前記失火検知手段が前記燃焼域の失火を検知した回数をカウントするカウンタ手段を含み、前記出力上昇速度切替手段は、所定設定時間内に前記カウンタ手段のカウント値が第1設定回数以上になると前記第1速度上限値から前記第2速度上限値に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記出力上昇速度切替手段は、前記所定設定時間経過時における前記カウンタ手段のカウント値が前記第1設定回数よりも少ない第2設定回数以下になると前記第2速度上限値から前記第1速度上限値に切り替えることを特徴とする請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記制御手段は、前記失火検知手段が前記燃焼域の失火を検知した回数をカウントするカウンタ手段と、所定設定時間を計時するタイマ手段とを含み、前記出力上昇速度切替手段は、前記タイマ手段が前記所定設定時間を計時したときの前記カウンタ手段のカウント値が第1設定回数以上であると前記第1速度上限値から前記第2速度上限値に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
前記出力上昇速度切替手段は、前記タイマ手段が前記所定設定時間を計時したときの前記カウンタ手段のカウント値が前記第1設定回数よりも少ない第2設定回数以下であると前記第2速度上限値から前記第1速度上限値に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。まず、
図1〜
図3を参照して、第1実施形態の固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。
【0022】
図1において、図示の固体酸化物形燃料電池システム2は、燃料ガス(例えば、天然ガス、都市ガスなど)を改質するための改質器4と、改質器4にて水蒸気改質された燃料ガス(「改質燃料ガス」とも称する)及び酸化材としての空気の酸化及び還元によって発電を行うセルスタック6とを備えている。
【0023】
セルスタック6は、複数の燃料電池セル(図示せず)を積層して構成され、各燃料電池セルは酸素イオンを伝導する固体電解質と、固体電解質の一方側に設けられた燃料極と、固体電解質の他方側に設けられた酸素極とを備えており、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0024】
セルスタック6の燃料極側8の導入側は、改質燃料ガス送給ライン10を介して改質器4に接続され、この改質器4は、燃料ガス供給ライン12を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源14(例えば、埋設管や燃料ガスタンクなど)に接続されている。燃料ガス供給ライン12には、燃料ガスを供給するための燃料ガスブロア16が配設され、この燃料ガスブロア16の回転数が増大(又は減少)すると、燃料ガス供給ライン12を通して供給される燃料ガスの供給流量が増大(又は減少)する。燃料ガス供給源14、燃料ガス供給ライン12及び燃料ガスブロア16は、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給手段を構成する。
【0025】
また、セルスタック6の酸素極側18の導入側は、空気送給ライン20を介して空気を予熱するための空気予熱器22に接続され、この空気予熱器22は、空気供給ライン24を介して空気ブロア26に接続されている。この空気ブロア26の回転数が上がる(又は下がる)と、空気供給ライン24を通して供給される空気の供給量が増大(又は減少)する。空気供給ライン24及び空気ブロア26は、酸化材としての空気を供給するための酸化材供給手段を構成する。
【0026】
セルスタック6の燃料極側8及び酸素極側18の流出側には燃焼域28が設けられ、燃料極側8から流出された改質燃料ガス(「反応燃料ガス」とも称する)と酸素極側18から流出された空気とがそれぞれこの燃焼域28に送給されて燃焼される。この燃焼域28は燃焼排気ガスライン30を介して空気予熱器22に接続され、この空気予熱器22には燃焼排気ガス流出ライン32が接続されている。この燃焼域28には、セルスタック6を起動するための点火ヒータ手段34が設けられ、起動時この点火ヒータ手段34によって改質燃料ガスの点火燃焼が行われる。
【0027】
この実施形態では、セルスタック6、改質器4及び空気余熱器22が電池ハウジング25内に収容されている。電池ハウジング25の内面には断熱材(図示せず)が配設され、この電池ハウジング25が高温状態に保たれる高温空間27を規定し、セルスタック6、改質器4及び空気余熱器22は、この高温空間27に収容されて高温状態に保たれる。
【0028】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、燃焼域28からの燃焼排気ガスに含まれる水蒸気を凝縮して回収するための凝縮回収手段36と、この燃焼排気ガスの熱を温水として貯湯するための貯湯装置38とを備えている。図示の凝縮回収手段36は、燃焼排気ガスに含まれる水蒸気を凝縮させるための熱交換器40と、凝縮された水に含まれた不純物を除去するための不純物除去手段42と、不純物が除去された凝縮水を貯める水回収タンク44とを備えている。熱交換器40は燃焼排気ガス流出ライン32に配設され、この熱交換器40には、凝縮水回収ライン48を介して不純物除去手段42及び水回収タンク44が接続されているとともに、燃焼排気ガスを外部に排出するための排気ガス排出ライン46が接続されている。
【0029】
この水回収タンク44に関連して水送給手段50が設けられている。水送給手段50は、水回収タンク44に回収した凝縮水を改質器4に送給するための水供給ライン52を備え、この水供給ライン52に水ポンプ54が配設され、水ポンプ54は、水回収タンク44内の凝縮水を改質用の水として水供給ライン52を通して改質器4に送給する。
【0030】
また、図示の貯湯装置38は、貯湯するための貯湯タンク56を備え、この貯湯タンク56は循環流路58を介して熱交換器40に接続されている。循環流路58には循環ポンプ60が設けられ、この循環ポンプ60は貯湯タンク56の底部の水を循環流路58を通してその上端部に循環させる。また、貯湯タンク56の底部には水供給流路62が接続され、この水供給流路62を通して水(例えば、水道水)が補給される。更に、貯湯タンク56の上端部には出湯ライン64が接続され、貯湯タンク56内に貯められた温水は、この出湯ライン64を通して出湯される。
【0031】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、更に、燃焼排気ガス流出ライン32を通して流れる燃焼排気ガスに含まれる未燃焼ガスを燃焼させるために、熱交換器40よりも上流側に燃焼触媒部位66が設けられ、かかる燃焼触媒部位66の内面(即ち、燃焼排気ガス流出ライン32を規定する内面に燃焼触媒(図示せず)が設けられ、かかる燃焼触媒の触媒作用により未燃焼ガスが燃焼される。
【0032】
この固体酸化物形燃料電池システム2の稼動運転は、次のようにして行われる。燃料ガス供給源14からの燃料ガスが燃料ガス供給ライン12を通して改質器4に供給されると共に、水回収タンク44に回収された水(凝縮水)が水供給ライン52を通して改質器4に供給される。改質器4においては、燃料ガスが水(水蒸気)により水蒸気改質され、水蒸気改質された改質燃料ガスが改質燃料ガス送給ライン10を通してセルスタック6の燃料極側8に送給される。また、空気ブロア26からの空気は、空気供給ライン24を通して空気予熱器22に供給され、この空気予熱器22において燃焼排気ガスとの間で熱交換されて加温された後に、空気送給ライン20を通してセルスタック6の酸素極側18に送給される。
【0033】
セルスタック6の燃料極側8は改質燃料ガスを酸化し、またその酸素極側18は空気中の酸素を還元し、燃料極側8の酸化及び酸素極側18の還元による電気化学反応により発電が行われる。燃料極側8からの反応燃料ガス及び酸素極側18からの空気は燃焼域28に流れ、空気中の酸素を利用して反応燃料ガス(余剰燃料ガスを含んでいる)が燃焼され、この燃焼熱によりセルスタック6、改質器4及び空気予熱器22が加熱される。
【0034】
燃焼域28からの燃焼排気ガスは燃焼排気ガスライン30を通して空気予熱器22に送給され、この空気予熱器22において空気ブロア26からの空気との熱交換に利用されて燃焼排気ガス流出ライン32を通して熱交換器40に送給され、その燃焼触媒部位66を流れる際に燃焼触媒(図示せず)により燃焼排気ガス中の未燃焼ガスが燃焼された後に熱交換器40に流れる。
【0035】
熱交換器40においては、貯湯タンク56から循環ライン58を通して流れる水と燃焼排気ガス流出ライン32を流れる燃焼排気ガスとの間で熱交換が行われ、熱交換により加温された水(温水)は、循環ライン58を通して貯湯タンク56の上部に貯められる。また、この熱交換により燃焼排気ガスの温度が露点まで低下されることによって、燃焼排気ガスに含まれる水分が凝縮され、凝縮された水は、凝縮水回収ライン48を通して不純物除去手段42へ送られ、不純物除去手段42によって不純物が除去された後に水回収タンク44に貯められる。一方、凝縮回収後の燃焼排気ガスは、排気ガス排出ライン46を通して外部に排出される。
【0036】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、燃焼域28での燃焼の失火を抑えるために、次のように構成されている。
図1とともに
図2を参照して、この実施形態では、燃焼域28の燃焼の失火を検知するための失火検知手段が設けられ、この失火検知手段が温度検知手段72から構成され、かかる温度検知手段72が燃焼触媒部位66に配設される。燃焼域28での燃焼状態が正常であると、燃焼排気ガス中に未燃焼ガスがほとんど含まれておらず、従って、燃焼触媒部位66において未燃焼ガスが燃焼することがほとんどなく、温度検知手段72の検知温度は低くなる。これに対して、燃焼域28での燃焼の失火が生じると、燃焼排気ガス中に未燃焼ガスが含まれ、従って、燃焼排気ガス中の未燃焼ガスが燃焼触媒部位66における燃焼触媒により燃焼され、温度検知手段72の検知温度は高くなり、このように温度検知手段72の検知温度に基づいて燃焼域28での失火の発生を検知することができる。
【0037】
この固体酸化物形燃料電池システム2は、更に、システムを制御するためのコントローラ74を備え、温度検知手段72からの検知信号は、このコントローラ74に送給される。コントローラ74は、例えば、マイクロプロセッサなどから構成され、制御手段76、失火判定手段78、失火回復運転切換手段80、出力上昇速度切替手段82、タイマ手段84及びメモリ手段86を含んでいる。制御手段76は、燃料ガスブロア16、空気ブロア26及び水ポンプ54を作動制御し、失火判定手段78は、温度検知手段72(失火検知手段)の検知信号に基づいて燃焼域28にて燃焼の失火が生じていないかを判定し、失火回復運転切換手段80は、失火判定手段76が失火発生と判定したときにこの失火状態から燃焼状態(失火のない状態)に回復するように運転を切り替える。この運転の切替えにおいては、例えば、制御手段76は燃料ガスブロア14の回転数が一時的に上昇するように制御し、このように制御することにより、燃料ガスの供給量が一時的に増大してセルスタック6の燃料極側8から燃焼域28に流出する改質燃料ガス(未反応の燃料ガス)が増え、この燃焼域28での失火状態が解消される。
【0038】
尚、このように燃料ガスの供給量を一時的に増大することに代えて、セルスタック6の発電出力を一時的に低下させ、セルスタック6における燃料ガスの発電での消費量を一時的に少なくして失火状態を解消するようにしてもよく、或いは点火ヒータ34を一時的に作動させて失火状態を解消するようにしてもよい。
【0039】
また、出力上昇速度切替手段82は、セルスタック6の発電出力の出力上昇速度の速度上限値を後述する如く切り替える。この燃料電池システム2の稼働運転では、制御手段76は、電力負荷(図示せず)の変動に追従してセルスタック6の発電出力が変動するように燃料ガスブロア16、空気ブロア26及び水ポンプ54を制御し、電力負荷が急激に上昇してもセルスタック6の発電出力の上昇速度が所定速度上限値を超えないように設定されている。
【0040】
この実施形態では、セルスタック6の発電出力上昇時における上昇速度の速度上限値が第1速度上限値、例えば200W/分程度に設定され、また燃焼域28にて燃焼の失火が発生したときにはこの上昇速度が遅くなるように、上昇速度の上限値が第2速度上限値、例えば100W/分程度となるように設定されている。
【0041】
また、タイマ手段84は計時を行い、この実施形態においては、失火状態が発生してセルスタック6の発電出力の上昇速度が第2速度上限値に切り替えられた後に第1速度上限値に復帰させる際の所定設定時間(例えば、24時間程度に設定される)を計時する。更に、メモリ手段86には、この所定設定時間及び発電出力の上昇速度の上限値(第1速度上限値及び第2速度上限値)が登録されている。
【0042】
この固体酸化物形燃料電池システム2の制御系による制御は、例えば、
図3に示すフローチャートの流れに従って行われる。主として
図2及び
図3を参照して、この固体酸化物形燃料電池システム2の稼働運転中は、燃料ガスブロア16、空気ブロア26及び水ポンプ54が所要の通りに制御されて上述した発電運転が行われ、この発電運転中にセルスタック6の発電出力が上昇すると、ステップS1からステップS2に進み、燃焼域28での燃焼の失火の検知が行われる。即ち、温度検知手段72(温度センサ)は、燃焼排気ガス流出ライン32の燃焼触媒部位66の温度を検知し、失火判定手段78は、この温度検知手段72からの検知温度に基づき、この検知温度が上昇したときに失火が生じたと判定する。
【0043】
燃焼域28での燃焼が失火状態となると、ステップS2からステップS3に進み、失火回復運転切替手段80は通常運転から失火回復運転に切り替え、上述した失火回復運転が一時的に行われる。更に、セルスタック6の発電出力の上昇速度の切替えが行われる(ステップS4)。失火判定手段78の失火判定に基づき出力上昇速度切替手段82は上昇速度を第1速度上限値(例えば、200W/分)から第2速度上限値(例えば、100W/分)に切り替え、これにより、電力負荷の負荷変動に対応してセルスタック6の発電出力が急激に上昇する際における発電電力の上昇速度が緩やかになる。その結果、燃料ガスの一時的な供給不良などがほとんどなくなり、これにより、燃焼域28での燃焼の失火の発生が抑えられ、セルスタック6及び改質器4を所望の高温状態に維持することができる。
【0044】
このように発電出力の上昇速度の切替えが行われると、タイマ手段84が作動して計時を開始し(ステップS5)、このタイマ手段84の作動中に燃焼域28での燃焼に失火が生じると、ステップS6からステップS7に進み、この失火状態を解消するために失火回復運転が一時的に行われ、タイマ手段84がリセットされた(ステップS8)後にステップS5に戻る。
【0045】
この発電出力の上昇速度の切替えの後に、所定設定時間(例えば、24時間)継続して失火状態の発生がないと、ステップS6からステップS9を経てステップS10に移り、燃焼域28での燃焼状態が安定していて失火が発生していないとして、セルスタック6の発電出力の上昇速度が元の通常状態に切り替えられる。即ち、タイマ手段84が所定設定時間を計時すると、このタイマ手段84からの信号に基づいて出力上昇速度切替手段82は上昇速度を第2速度上限値から第1速度上限値に切り替え、これにより、セルスタック6の発電出力の上昇速度の上昇上限値が大きくなり、その上昇速度が急になるように設定される。その結果、セルスタック6の発電出力は、電力負荷の負荷変動により追従して上昇し、セルスタック6の発電電力を電力負荷でより多く消費されるようになる。尚、このように上昇速度の上限値を切り替えた後に、ステップS11に進み、タイマ手段84がリセットされた後にステップS1に戻る。
【0046】
次いで、
図4〜
図6を参照して、固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態においては、セルスタックの発電出力の上昇速度の速度上限値が3段階に切替え可能に構成されている。尚、この上昇速度の速度上限値を4段階以上に切替え可能に構成することもできる。
【0047】
図4において、この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムにおいては、失火検知手段としての温度検知手段72Aは、セルスタック6の流出側の燃焼域28(
図1参照)に配設される。燃焼域28の燃焼状態が正常であると、この燃焼域28は高い温度状態に保たれるが、この燃焼状態の一部が失火すると、燃焼域8の温度状態が下がるようになり、このような温度状態の変化を温度検知手段72Aで検知することにより、燃焼域28での失火を検知することができる。
【0048】
また、セルスタック6(
図1参照)の発電出力の上昇速度の速度上限値が3段階に切替え可能に構成されていることに関連して、コントローラ74Aは、次のように構成されている。この形態では、コントローラ74Aは、制御手段76、失火判定手段78A、失火回復運転切替手段80、出力上昇速度切替手段82、タイマ手段84及びメモリ手段86Aに加えて、出力上昇判定手段88及びカウンタ手段90を含んでいる。即ち、出力上昇判定手段88は、セルスタックの発電出力が上昇状態であるかを判定し、この発電電力が上昇状態のときに燃料域で失火が発生したかが検知される。また、カウンタ手段90は、温度検知手段72Aの検知温度に基づいて失火判定手段78Aが失火判定をした回数をカウントする。
【0049】
タイマ手段84は、失火発生の回数をカウントする所定設定時間(例えば、24時間程度に設定される)を計時し、またメモリ手段86Aには、この所定設定時間が登録されるとともに、発電出力の上昇速度の3段階の速度上限値(
図5参照)、即ち第1速度上限値(例えば、200W/分)、第2速度上限値(例えば、100W/分)及び第3速度上限値(例えば50W/分)と、発電出力の上昇速度を切り替える2つの設定回数値、即ち発電速度上限値を1段階下げる際の基準となる第1設定回数値(例えば、3〜5回程度に設定される)及び発電速度上限値を1段階上げる際の基準となる第2設定回数値(例えば、0〜1回程度に設定される)とが登録される。この第2の実施形態におけるその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
【0050】
ここで、セルスタックの発電出力と速度上昇値との関係を示すと、例えば、この上昇速度が第1速度上限値(例えば、200W/分)のときには、セルスタックの発電出力の上昇は、
図5に実線A示すようになり、その発電出力は急激に上昇するようになる。また、この上昇速度が第2速度上限値(例えば、100W/分)のときには、セルスタックの発電出力の上昇は、
図5に破線Bで示すようになり、その発電出力は、第1速度上限値のときよりも緩やかに上昇するようになる。更に、この上昇速度が第3速度上限値(例えば、50W/分)のときには、セルスタックの発電出力の上昇は、
図5に一点鎖線Cで示すようになり、その発電出力は、第2速度上限値のときよりも更に緩やかに上昇するようになり、このように発電出力上昇の速度上限値を後述する如く切り替えることによって、燃焼域における燃焼の失火を抑えることができる。
【0051】
この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムの制御系による制御は、例えば、
図6に示すフローチャートの流れに従って行われる。主として
図4及び
図6を参照して、この固体酸化物形燃料電池システムの稼働運転中は、燃料ガスブロア16、空気ブロア26及び水ポンプ54が所要の通りに制御されて発電運転が行われ、この発電運転中に燃焼域の失火発生状況を検知するためにタイマ手段84が作動される(ステップS21)。そして、このタイマ手段84の作動中にセルスタックの発電出力が上昇すると、出力上昇判定手段88がセルスタックの出力上昇の判定を行い(ステップS22)、この出力上昇の判定によりステップS23に進み、セルスタックの流出側の燃焼域における失火の検知が行われる。即ち、温度検知手段72A(温度センサ)は、セルスタックの流出側の燃焼域の温度を検知し、失火判定手段78Aは、この温度検知手段72Aからの検知温度に基づき、この検知温度が低下したときに失火が生じたと判定する。
【0052】
この燃焼域での燃焼が失火状態となると、ステップS23からステップS24に進み、失火回復運転切替手段80は通常運転から失火回復運転に切り替え、上述した失火回復運転が一時的に行われる。更に、カウンタ手段90は、失火状態が発生したとしてカウント値を1つ加算する(ステップS25)。このような失火状態の検知及び失火回数のカウントは、所定設定時間(例えば、24時間)にわって行われる。
【0053】
タイマ手段84が所定設定時間を計時すると、ステップS26からステップS27に進み、タイマ手段84がリセットされる。そして、カウンタ手段90のカウント値が第1設定回数(例えば、3回)以上である場合、ステップS28からステップS29に進み、速度上限値が最も緩やかな最低状態でないときには、出力上昇速度切替手段82は上昇速度の上限値を1段階下げる(ステップS30)。即ち、この出力上昇速度切替手段82は、第1速度上限値(又は第2速度上限値)が設定されているときには第2速度上限値(又は第3速度上限値)に切り替え、このように切り替えることにより、セルスタックの発電出力の上昇が緩やかになり、燃焼域での燃焼の失火を抑えることができる。尚、このように上昇速度の上限値を1段階下げた後、また上昇速度の上限値が最低状態である(更に下げることができないために)ときにはステップS21に戻り、上述した失火状態の検知が繰り返し遂行される。
【0054】
また、カウンタ手段90のカウント値が第1設定回数値(例えば、3回)より小さいときには、ステップS28からステップS31に移り、このカウント値が第2設定回数値(例えば、1回)以下であると、ステップS31からステップS32に進み、速度上限値が最も急な最高状態でないときには、出力上昇速度切替手段82は上昇速度の上限値を1段階上げる(ステップS33)。即ち、この出力上昇速度切替手段82は、第2速度上限値(又は第3速度上限値)が設定されているときには第1速度上限値(又は第2速度上限値)に切り替え、このように切り替えることにより、セルスタックの発電出力の上昇が急になり、セルスタックの発電電力を電力負荷の負荷変動により追従させて出力させることができる。尚、このように上昇速度の上限値を1段階上げた後、また上昇速度の上限値が最高状態である(更に上げることができないために)ときにはステップS21に戻り、上述した失火状態の検知が繰り返し遂行される。
【0055】
次に、
図7〜
図8を参照して、固体酸化物形燃料電池システムの制御系の変形形態について説明する。この変形形態においては、セルスタックの発電出力の上昇速度の速度上限値のパターンに修正が施されているとともに、タイマ手段が所定設定時間を計時する前の段階においても、カウンタ手段のカウント値が第1設定回数値に達すると上昇速度の速度上限値が1段階下がるように切り替えられる。
【0056】
図7を参照して、セルスタックの発電出力の上昇速度の速度上限値のパターンについて説明すると、発電出力の上昇速度の最も大きい速度上限値、即ち第1速度上限値は、発電出力との関係で
図7に実線Dで示す通りのパターンであり、セルスタックの発電出力の全範囲において一定の第1上限値(例えば、200W/分)に設定される。また、第1速度上限値よりも緩やかな速度上限値、即ち第2速度上限値は、発電出力との関係で
図7に破線で示す通りのパターンであり、最低発電出力から例えば500Wの範囲においては第1上限値(例えば、200W/分)が設定され、例えば500Wから定格出力(例えば、700W)までは第2上限値(例えば、100W/分)が設定される。更に、第2速度上限値よりも緩やかな最も低い上限値、即ち第3速度上限値は、発電出力との関係で
図7に一点鎖線Fで示す通りのパターンであり、セルスタックの発電出力の全範囲において一定の第3上限値(例えば、50W/分)に設定される。
【0057】
これらの3つのパターンの第1〜第3速度上限値の切替えも、上述の第2の実施形態の制御系と同様の構成の制御系により行うことができ、その制御内容が幾分相違しているのみであり、
図4に示す制御系の構成を参照しながらその制御内容を説明する。主として
図4及び
図8を参照して、この固体酸化物形燃料電池システムの稼働運転中は、燃料ガスブロア16、空気ブロア26及び水ポンプ54が所要の通りに制御されて発電運転が行われ、この発電運転中に燃焼域の失火発生状況を検知するためにタイマ手段84が作動される(
図1参照)(ステップS41)。そして、このタイマ手段84の作動中にセルスタックの発電出力が上昇すると、ステップS42からステップS43に進み、セルスタックの流出側の燃焼域における失火の検知が行われる。即ち、上述したと同様に、温度検知手段72A(温度センサ)は、セルスタックの流出側の燃焼域の温度を検知し、失火判定手段78Aは、この温度検知手段72Aからの検知温度に基づき、この検知温度が低下したときに失火が生じたと判定する。
【0058】
この燃焼域での燃焼が失火状態となると、ステップS43からステップS44に進み、失火回復運転切替手段80は通常運転から失火回復運転に切り替え、上述した失火回復運転が一時的に行われる。更に、カウンタ手段90は、失火状態が発生したとしてカウント値を1つ加算する(ステップS45)。
【0059】
そして、このカウンタ手段90のカウント値が第1設定回数値(例えば、3回)に達したかが判断され、第1設定回数値に達すると、ステップS46からステップS47に進み、セルスタックの発電出力の上昇速度の速度上昇値が最低上昇値、即ち第3速度上限値であるときには、この速度上昇値の切替えができないためにそのまま維持してステップS48に進み、タイマ手段84がリセットされた後にステップS41戻る。また、この速度上限値が最低上昇値(第3速度上限値)でないときには、ステップS47からステップS49に移り、出力上昇速度切替手段82は上昇速度の上限値を1段階下げる。即ち、この出力上昇速度切替手段82は、第1速度上限値(又は第2速度上限値)が設定されているときには第2速度上限値(又は第3速度上限値)に切り替え、このように切り替えることにより、セルスタックの発電出力の上昇が緩やかになり、その後、ステップS48に移ってタイマ手段84がリセットされ他の値にステップS41に戻る。
【0060】
また、カウンタ手段90のカウント値が第1設定回数値に達することなくタイマ手段84が所定設定時間(例えば、24時間)を計時すると、ステップS46からステップS50を経てステップS51に移り、タイマ手段84がりセットされる。このときには、カウンタ手段90のカウント値が第2設定回数値(例えば、1回)以下であるか否かの判断が行われ、このカウント値が第2設定回数値を超えていると、発電出力の上層速度の速度上限値が現状のまま維持するとしてステップS52からステップS41に戻る。
【0061】
また、カウンタ手段90のカウント値が第2設定回数値以下であると、ステップS52からステップS53に進み、速度上限値が最も急な最高状態でないときには、出力上昇速度切替手段82は上昇速度の上限値を1段階上げる(ステップS54)。即ち、この出力上昇速度切替手段82は、第2速度上限値(又は第3速度上限値)が設定されているときには第1速度上限値(又は第2速度上限値)に切り替え、このように切り替えることにより、セルスタックの発電出力の上昇が急になる。尚、このように上昇速度の上限値を1段階上げた後、また上昇速度の上限値が最高状態である(更に上げることができないために)ときにはステップS21に戻り、上述した失火状態の検知が繰り返し遂行される。
【0062】
例えば、この実施形態においては、第2速度上限値について発電出力の上昇速度の速度上限値のパターンを変えているが、第1及び第3速度上限値についてもこの上昇速度の速度上限パターンを変えるようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。