(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827382
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】移動式の煙検知装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/103 20060101AFI20210128BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20210128BHJP
G01N 21/53 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
G08B17/103 B
G08B17/00 C
G01N21/53 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-138870(P2017-138870)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-21020(P2019-21020A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 義裕
【審査官】
大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−069626(JP,A)
【文献】
特開2007−280326(JP,A)
【文献】
特開2002−074534(JP,A)
【文献】
特開平10−222775(JP,A)
【文献】
特開昭62−157997(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0066525(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0220886(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104183080(CN,A)
【文献】
特開2013−134541(JP,A)
【文献】
特開2017−107311(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/140199(WO,A1)
【文献】
特開2010−127661(JP,A)
【文献】
特開2005−235954(JP,A)
【文献】
特開平10−104023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動しながら吸引した空気中に含まれる煙の検知が可能な移動式の煙検知装置において、
煙の検知感度を低く変更する場合と高く変更する場合のどちらの場合にも操作される1つの操作部と、前記操作部が操作されたときの検知感度と検知される煙の濃度に対応して、検知感度をどのように変更するのかを判断する判断部とを備えることを特徴とする移動式の煙検知装置。
【請求項2】
前記判断部は、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以上である場合には検知感度を低く変更するように判断し、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以下である場合には検知感度を高く変更するように判断することを特徴とする請求項1に記載の移動式の煙検知装置。
【請求項3】
前記判断部は、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度範囲内にある場合には感度を変更しないように判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式の煙検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動しながら吸引した空気中に含まれる煙の検知が可能な移動式の煙検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災をその予兆段階から検知するためのものとして、防護領域の空気をサンプリング管を介して吸引し、その空気中に含まれる煙を検知する吸引式煙検知装置が用いられている。
【0003】
吸引式の煙検知装置は、一般的には、防護領域の天井、壁、床下等に固定のものとして設けられており、防護領域の空気を吸引するためのサンプリング管を備え、そのサンプリング管を介して吸引した空気中に含まれる煙を光学的に検知することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種の吸引式の煙検知装置は、吸引式ではない煙感知器や煙検知装置に比べて煙をより高感度で検知することができ、例えば、多数の情報機器のある施設(コンピュータ室、サーバ室、インターネットデータセンター等)やクリーンルーム等の空調設備による常時循環気流の存在する施設に設置されている。そして、火災を極めて初期の予兆段階から捉えて対処できるようにするために、煙が肉眼では確認できないような段階のものであっても、それを検知することができる程の高感度の設定で設置されている。
【0005】
しかしながら、そのような高感度の設定で設置されていることにより、火災を予兆段階から捉えることができ、いち早く対処することが可能にはなるものの、検知した煙が肉眼では確認できない段階のものであると、その発生位置を肉眼では特定することができない。
【0006】
そこで、特許出願人は先に、煙の発生位置を特定することができる移動式の煙検知装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。この移動式の煙検知装置は、可搬とした吸引式の煙検知装置本体と、その本体に対して移動可能に接続したサンプリング管とを備えており、煙濃度を確認しながら、煙検知装置本体やサンプリング管を移動させることにより、肉眼では確認できない段階の煙であっても、その発生位置を探索することができるようになっている。
【0007】
なお、吸引式の煙検知装置は、情報機器の冷却用に設置されている空調設備の冷媒ガスの漏れ等の検知にも使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3648307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、吸引式の煙検知装置は、検知される煙の濃度(例えば、減光率煙濃度(%/m))レベルを表示するバーグラフ等の表示部を備えており、操作者は、その表示部から煙の濃度レベルを直感的に認識することができるようになっている。
【0010】
しかしながら、表示部の表示レンジは、予め設定した検知感度に対応するため、移動しながら煙の発生位置を探索する際、煙の発生位置から離れていても、検知される煙の濃度が高過ぎて、バーグラフ等の表示部が全て点灯し、表示レンジの最高レベルを超えてしまうことがある。また、逆に、検知される煙の濃度が低過ぎて、バーグラフ等が全て消灯し、表示レンジの最低レベルを下回ってしまうこともあり、移動している方向が煙の発生位置に近寄っているのか、遠ざかっているのか、分からなくなってしまうこともある。
【0011】
そこで、煙の発生位置の探索中でも操作可能な位置に検知感度を変更する操作部を設け、予め設定した検知感度に対し、検知される煙の濃度が高過ぎたり低過ぎたりした際に、検知感度を適宜変更することができるようにすることが考えられるが、検知感度を変更する操作部として、低くするものと高くするものとを別々に設けた場合、その選択を誤ることによる誤操作が生じ易くなるという問題がある。また、操作部の選択以前にそもそも、検知感度を低くするべきなのか、高くするべきなのかを誤認することがあり、その誤認による誤操作も生じ得るという問題がある。
【0012】
この発明は、上記の事情に鑑み、煙の検知感度を適切に変更することができる移動式の煙検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、移動しながら吸引した空気中に含まれる煙の検知が可能な移動式の煙検知装置において、煙の検知感度を低く変更する場合と高く変更する場合のどちらの場合にも操作される1つの操作部と、前記操作部が操作されたときの検知感度と検知される煙の濃度に対応して、検知感度をどのように変更するのかを判断する判断部とを備えることを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0014】
また、この発明は、前記判断部は、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以上である場合には検知感度を低く変更するように判断し、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以下である場合には検知感度を高く変更するように判断することを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【0015】
また、この発明は、前記判断部は、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度範囲内にある場合には感度を変更しないように判断することを特徴とする移動式の煙検知装置である。
【発明の効果】
【0016】
この発明においては、1つの操作部を操作することにより、煙の検知感度を低く変更することもできるし、高く変更することもできる。また、その際、判断部により、煙の検知感度をどのように変更するのかを適切に判断させることができる。これにより、煙の検知感度を変更する操作をする際に、操作部の選択を誤ったり、煙の検知感度をどのように変更するべきかを誤認したりすることによる誤操作が生じるのを防ぐことができる。
【0017】
したがって、この発明によれば、煙の検知感度を適切に変更することができる移動式の煙検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の煙検知装置の実施形態の一例を示し、サンプリング管と保持部であるストラップとが接続された状態における装置全体の上面図である。
【
図2】同上を示し、収納ケースに収納した状態の煙検知装置本体の上面図である。
【
図3】防護空間の一例である電算機室内において、この発明の煙検知装置により煙の発生位置を探索する際の様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の煙検知装置の実施形態について、煙検知装置本体が空気を吸引するためのサンプリング管と共に可搬であり、移動しながら煙の検知が可能な移動式の煙検知装置に適用する場合を例として、
図1乃至
図3に基づいて説明する。
【0020】
まず、煙検知装置1全体の基本構成について、
図1を参照しつつ説明する。
【0021】
煙検知装置1は、
図1に示したように、先端側に空気を吸引するためのサンプリング孔4aを有すると共に、基端側に把持部4bを有するサンプリング管4と、サンプリング管4の基端側が可撓管3を介して接続され、サンプリング管4を介して吸引した空気中に含まれる煙を検知する吸引式の煙検知装置本体5と、煙検知装置本体5を収納する収納ケース7と、煙検知装置本体5を収納した状態の収納ケース7を操作者の身体に袈裟懸けに保持するためのストラップ8とを備えている。なお、電源(例えば、リチウムイオン二次電池等)は、煙検知装置本体5に内蔵されている。
【0022】
この煙検知装置1は、前記の通り移動式であり、操作者がストラップ8により煙検知装置本体5等が収納される収納ケース7を保持すると共に、サンプリング管4を把持し、その状態で煙検知装置1全体を移動させたり、サンプリング管4自体を移動させたりしながら、煙の検知をすることができるものであり、それにより煙の発生位置を探索することができるものである。
【0023】
なお、本実施形態の場合、サンプリング管4を、先端側を任意の方向に可動とするフレキシブル部4cを有するものとしており、また、可撓管3を、軟質の樹脂製のものとしている。これにより、サンプリング管4は、先端側が任意の方向に向くように変形させたり、全体を煙検知装置本体5に対して自由に移動させたりすることができるようになっている。
【0024】
次に、煙検知装置本体5の詳細について、
図2を参照しつつ説明する。
【0025】
煙検知装置本体5は、吸引式のものであり、図示は省略するが、その筐体内部に、煙を光学的に検知するための煙検出ユニットと、空気をサンプリング管4を介して煙検出ユニット内の検煙部を通過させるためのファンとを備えており、吸引した空気が検煙部を通過する際に、その空気中に煙が含まれていると、それを光学的に検知するものである。なお、煙検知装置本体5において、煙検出ユニットは煙を光学的に検知するための受光素子と発光素子とを有しているが、その発光素子の光源としてレーザを用いることにより、非常に高い感度で煙を検知することが可能である。
【0026】
また、煙検知装置本体5は、
図2に示したように、その筐体本体の上面に各種表示部が設けられる動作表示部5aを備えている。動作表示部5aは、各種表示部により煙検知装置本体5の各種動作状態を表示する。なお、収納ケース7には、動作表示部5aに対応する位置に窓部7aが設けられており、動作表示部5aは、煙検知装置本体5が収納ケース7に収納されている状態でも、その窓部7aを介して動作表示部5aの各種表示部を視認できるようになっている。
【0027】
動作表示部5aには、表示部の1つとして、煙検出ユニットにより検知される煙の濃度レベルを表示するレベル表示部(表示部の一例)5bが設けられている。レベル表示部5bは、操作者に濃度レベルを直観的に認識させることができるように、バーグラフ(LEDレベルメータ)により濃度レベルを段階表示(点灯)する。煙検出ユニットにおける煙の検知レンジ自体は、非常に低い(薄い)煙濃度から高い(濃い)煙濃度までの広いレンジを有しているが、レベル表示部5bが表示する煙の濃度レベルの表示レンジは、適宜設定可能な検知感度に対応する。すなわち、レベル表示部5bは、各検知感度に対応する表示レンジで煙の濃度レベルを表示し、検知感度が高いほど、より低い濃度の範囲内で煙の濃度レベルを表示する一方、検知感度が低いほど、より高い濃度の範囲内で煙の濃度レベルを表示する。
【0028】
レベル表示部5bは、図示の例の場合、バーグラフとして10段階表示のものを用いており、各検知感度に対応する表示レンジで煙の濃度レベルを10段階表示する。具体的には、例えば、検知感度が「高」、「中」、「低」の3段階あるとして、検知感度が「高」のときのバーグラフ1段あたりの煙濃度が0.02%/mであり、検知感度が「中」のときのバーグラフ1段あたりの煙濃度が0.05%/mであり、検知感度が「低」のときのバーグラフ1段あたりの煙濃度が0.2%/mであれば、バーグラフは、検知感度が「高」のときには、0.02〜0.2%/mの表示レンジで煙の濃度レベルを10段階表示し、検知感度が「中」のときには、0.05〜0.5%/mの表示レンジで煙の濃度レベルを10段階表示し、検知感度が「低」のときには、0.2〜2.0%/mの表示レンジで煙の濃度レベルを10段階表示する。このとき各検知感度の表示レンジの最高値以上を検知したとき、煙検知としてアラームを鳴動する。
【0029】
煙検知装置本体5は、図示は省略するが、その筐体内部にレベル表示部5bであるバーグラフの表示を制御する制御部を備えている。制御部は、煙検出ユニットから出力される煙の濃度信号に基づき、検知される煙の濃度レベルを各検知感度に対応する表示レンジで段階表示するようにバーグラフの表示を制御する。
【0030】
ここで、制御部は、バーグラフ1段あたりの煙濃度の設定・変更を制御して、バーグラフの表示レンジの設定・変更を制御する。バーグラフの表示レンジは、煙の検知感度に対応する。つまり、制御部は、煙の検知感度「高」「中」「低」(煙検知の値)を設定し、これを10段階に等分することで、バーグラフ1段あたりの煙濃度を設定して、バーグラフの表示レンジを制御する。例えば、前記の例の場合、制御部は、検知感度を「高」、「中」、「低」として、それぞれの最高値を0.2%/m、0.5%/m、2.0%/mに設定し、それぞれ10段階に等分することで、それぞれのバーグラフ1段あたりの煙濃度を0.02%/m、0.05%/m、0.2%/mに設定して、それぞれのバーグラフの表示レンジを0.02〜0.2%/m、0.05〜0.5%/m、0.2〜2.0%/mに制御する。
【0031】
そして、煙検知装置本体5は、各種操作部を備えているが、検知感度を変更する際に、低く変更する場合と高く変更する場合のどちらの場合にも操作される1つの操作部として、本実施形態においては、
図2に示したように、筐体上面の動作表示部5aのレベル表示部5b近傍の位置に、押圧操作されることにより操作部に煙の検知感度を変更させる感度調節スイッチ(平型ボタン)5cが設けられている。
【0032】
さらに、煙検知装置本体5は、前記の感度調節スイッチ5cが押圧されたときに、煙の検知感度をどのように変更するのかを判断する判断部を備えている。本実施形態において、判断部は、制御部中に設けられており、制御部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、煙の検知感度をどのように変更するのかを判断部により判断した上で、その変更を制御する。
【0033】
なお、動作表示部5aには、本実施形態の場合、
図2に示したように、各種表示部として、電源オンを表示する電源表示部5d、警報を2段階で表示する警報表示部5e、障害発生を表示する障害表示部5f等も設けられている。
【0034】
煙検知装置1は、煙検知装置本体5において、検知感度を変更する際に、低く変更する場合と高く変更する場合のどちらの場合にも同様に操作される1つの感度調節スイッチ5cと、その感度調節スイッチ5cが押圧されたときに、煙の検知感度をどのように変更するのかを判断する判断部を備えていることにより、操作をする人が検知感度を変更したいと感じたときに、1つの感度調節スイッチ5cを操作することにより、判断部により、煙の検知感度をどのように変更するのかを適切に判断したうえで変更させることができる。これにより、煙の検知感度を変更する操作をする際に、操作部の選択を誤ったり、煙の検知感度をどのように変更するべきかを誤認したりすることによる誤操作が生じるのを防ぐことができる。
【0035】
煙検知装置1について、さらに詳細に説明する。
【0036】
煙検知装置本体5において、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以上である場合には検知感度を低く変更するように判断し、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以下である場合には検知感度を高く変更するように判断する。
【0037】
具体的には、例えば、前記の例において、検知感度を低く変更するように判断する場合の所定の煙濃度をバーグラフにおける8段目(判断時点の検知感度に対応する表示レンジのバーグラフにおける8段目)に対応する濃度以上に設定し、検知感度を高く変更するように判断する場合の所定の煙濃度をバーグラフの3段目(判断時点の検知感度に対応する表示レンジのバーグラフにおける3段目)に対応する濃度以下に設定する。すなわち、検知感度を「高」から「中」に低く変更するように判断する場合の所定の煙濃度は0.16%/m以上に設定すると共に、検知感度を「中」から「低」に低く変更するように判断する場合の所定の煙濃度は0.4%/m以上に設定し、一方、検知感度を「低」から「中」に高く変更するように判断する場合の所定の煙濃度は0.6%/m以下に設定すると共に、検知感度を「中」から「高」に高く変更するように判断する場合の所定の煙濃度は0.15%/m以下に設定する。
【0038】
この場合、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度が「高」であり、かつ検知される煙の濃度が0.16%/m以上であれば、検知感度を「中」に低く変更するように判断する。制御部は、その判断に基づいて、検知感度を「中」に低く変更するように制御する。すなわち、レベル表示部5bの表示レンジを0.05〜0.5%/mの濃度範囲に変更するように制御する。また、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度が「中」であり、かつ検知される煙の濃度が0.4%/m以上であれば、検知感度を「低」に低く変更するように判断する。制御部は、その判断に基づいて、検知感度を「低」に低く変更するように制御する。すなわち、レベル表示部5bの表示レンジを0.2〜2.0%/mの濃度範囲に変更するように制御する。一方、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度「低」であり、かつ検知される煙濃度が0.6%以下であれば、検知感度を「中」に高く変更するように判断する。制御部は、その判断に基づいて検知感度を「中」に高く変更するように制御する。すなわち、レベル表示部5bの表示レンジを0.05〜0.5%/mの濃度範囲に変更するように制御する。また、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度「中」であり、かつ検知される煙濃度が0.15%以下であれば、検知感度を「高」に高く変更するように判断する。制御部は、その判断に基づいて検知感度を「高」に高く変更するように制御する。すなわち、レベル表示部5bの表示レンジを0.02〜0.2%/mの濃度範囲に変更するように制御する。
【0039】
さらに、煙検知装置本体5において、判断部は、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度範囲内にある場合には検知感度を変更しないように判断する。すなわち、判断時点の検知感度を維持するように判断する。
【0040】
具体的には、例えば、前記の例において、検知感度を維持するように判断する所定の濃度範囲をバーグラフの4段目から7段目(判断時点の検知感度に対応する表示レンジのバーグラフにおける4段目から7段目)に対応する濃度範囲に設定する。すなわち、検知感度「高」を維持するように判断する場合の濃度範囲は0.08〜0.14%/mに設定し、検知感度を「中」に維持するように判断する場合の濃度範囲は0.2〜0.35%/mに設定し、検知感度「低」を維持するように判断する場合の濃度範囲は0.8〜1.4%/mに設定する。
【0041】
この場合、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度が「高」であり、かつ検知される煙の濃度が0.08〜0.14%/mの範囲内にあれば、その時点の検知感度である「高」を維持するように判断する。制御部は、その判断に基づいて、感度調節スイッチ5cが押圧操作されていても、その時点の検知感度である「高」を維持するように制御する。また、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度が「中」であり、かつ検知される煙の濃度が0.2〜0.35%/mの範囲内にあれば、その時点の検知感度である「中」を維持するように判断する。制御部は、その判断に基づいて、感度調節スイッチ5cが押圧操作されていても、その時点の検知感度である「中」を維持するように制御する。さらに、判断部は、感度調節スイッチ5cが押圧操作されたときに、検知感度が「低」であり、かつ検知される煙の濃度が0.8〜1.4%/mの範囲内にあれば、その時点の検知感度である「低」を維持するように判断する。制御部は、その判断に基づいて、感度調節スイッチ5cが押圧操作されていても、その時点の検知感度である「低」を維持するように制御する。
【0042】
次に、煙検知装置1により煙の発生位置を探索する際の具体的な態様の一例について、
図3を参照しつつ説明する。
【0043】
煙検知装置1は、移動式のものであるが、例えば、固定式の煙検知装置が設けられている防護空間において、固定式の煙検知装置が煙の発生を検知した後に、その煙の発生位置を探索するのに用いることができるものであり、具体的には、例えば、
図3に示したように、固定式の煙検知装置10が設けられている電算機室Rにおいて、固定式の煙検知装置10が煙の発生を検知した後に、その煙の発生位置を探索するのに用いることができるものである。なお、電算機室R内には、空調機13による常時循環気流が存在する(矢印参照)。
【0044】
ここで、固定式の煙検知装置10について、簡単に説明する。
図3に示したように、固定式の煙検知装置10は、空調機13により循環される電算機室R内の空気を吸引するサンプリング管12と、サンプリング管12を介して吸引した空気中の煙を検知する吸引式の煙検知装置本体11とを備えており、それらが電算機室Rに常時固定のものとして設けられている。なお、煙検知装置本体11の機器構成等は、移動式の煙検知装置1における煙検知装置本体5のものと同様とすることができる。
【0045】
そして、電算機室R内において、いずれかのラック14内の電算機等から煙が発生すると、まずは固定式の煙検知装置10が煙を検知する。検知した煙が肉眼では確認できない段階のものであると、煙の発生位置として特定することができるのは固定式の煙検知装置10の防護範囲内までであるが、移動式の煙検知装置1を使用して煙の発生位置を探索することにより、その発生位置をより狭い範囲で特定することができる。
【0046】
操作者は、具体的には、移動式の煙検知装置1を使用して煙の発生位置を探索する際、
図3に示したように、煙検知装置本体5を収納した収納ケース7をストラップ8により身体に保持すると共に、サンプリング管4を把持し、その状態で煙を検知しながら、レベル表示部5bにより煙の濃度レベルが高くなる方へと、煙検知装置1全体やサンプリング管4全体を移動させたり、サンプリング管4のサンプリング孔4aのある先端側をフレキシブル部4cにより移動させたりして、近づいていくことができる。
【0047】
この際、 煙の発生位置に近づく過程で、予め設定した検知感度に対応するレベル表示部5bの表示レンジに対し、検知される煙の濃度が高過ぎたり低過ぎたりすることがある。しかしながら、操作者は、1つの感度調節スイッチ5cを同様に操作するだけで、判断部が煙の検知感度を低く変更するか、高く変更するかを、適切に判断するので、煙の検知感度を変更する操作をする際に、操作部の選択を誤ったり、煙の検知感度をどのように変更するべきかを誤認したりすることによる誤操作が生じるのを防ぐことができる。なお、移動式の煙検知装置1における探索開始時の検知感度(予め設定される検知感度)は「中」とすることができ、その「中」の検知感度は固定式の煙検知装置10の検知感度よりも低いものとすることができる。それにより煙の発生位置を狭い範囲で特定することができる。
【0048】
以上、この発明の実施形態の一例について説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、前記の実施形態においては、検知感度を低く変更するように判断する場合の所定の煙濃度をバーグラフの8段目に対応する煙濃度以上とし、検知感度を高く変更するように判断する場合の所定の煙濃度をバーグラフの3段目に対応する煙濃度以下とすることを例示したが、その設定は適宜変更できるようにしてもよい。例えば、前者の所定の煙濃度については、8段目よりも高いレベル(9段目等)に対応する煙濃度以上としてもよいし、逆に8段目よりも低いレベル(7段目等)に対応する煙濃度以上としてもよい。また、後者の所定の煙濃度については、3段目よりも低いレベル(2段目等)に対応する煙濃度以下としてもよいし、逆に3段目よりも高いレベル(4段目等)に対応する煙濃度以下としてもよい。なお、バーグラフとして段数のより多いものや少ないものを用いる場合は、それに応じて設定を適宜変更してもよいことはもちろんである。
【0050】
さらに、前記の実施形態においては、判断部について、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度範囲内にある場合には検知感度を維持する判断もするものを例示したが、その判断はしないものとしてもよい。すなわち、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以上である場合には検知感度を低く変更するように判断し、検知される煙の濃度が検知感度に対応して設定される所定の濃度以下である場合には検知感度を高く変更するように判断するだけのものとしてもよい。
【0051】
また、検知される煙濃度が、検知感度を維持する所定の濃度範囲(前記の実施形態においては、バーグラフの4段目から7段目に対応する濃度範囲)と、検知感度を低く或いは高く変更するように判断する所定の煙濃度との間(バーグラフの3段目と4段目との間或いは7段目と8段目との間)を行ったり来たりする状態にある際に、検知感度を維持する所定の濃度範囲の最大値(バーグラフの7段目に対応する濃度)及び最小値(バーグラフの4段目に対応する濃度)に対応する濃度レベルにあるときに感度調節スイッチ5cが押圧操作された場合には、それを受け入れて検知感度を低く或いは高く変更する判断・制御の処理がされるようにしてもよい。
【0052】
また、検知感度を光や音で表示するようにしてもよい。光により表示する場合、例えば、表示灯(電源表示部5dを使用してもよい)を検知感度「高」で早い点滅、検知感度「中」で点灯、検知感度「低」で遅い点滅させる等により表示するようにしてもよい。音により表示する場合、例えば、検知感度「高」で間隔の短い断続音、検知感度「中」で無音、検知感度「低」で間隔の長い断続音を発生させる等により表示するようにしてもよい。
【0053】
なお、前記実施の形態では、移動式の煙検知装置を例に挙げて本発明を説明したが、煙以外の火災に基づく物理量を検知して火災を検知する移動式の火災検知装置、例えばガスセンサを利用した移動式の火災検知装置(ガス検知装置)にも本発明を適用することができる。また、火災検知に限定されず、防護領域内のその他の異常を検知する移動式の異常検知装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:煙検知装置(移動式) 3:可撓管 4:サンプリング管
4a:サンプリング孔 4b:把持部 4c:フレキシブル部
5:煙検知装置本体 5a:動作表示部 5b:レベル表示部
5c:感度調節スイッチ 5d:電源表示部 5e:警報表示部
5f:障害表示部 7:収納ケース 7a:窓部 8:ストラップ
10:煙検知装置(固定式) 11:煙検知装置本体
12:サンプリング管 13:空調機 14:ラック
R:電算機室