(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827392
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】ルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20210128BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R13/02 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-178699(P2017-178699)
(22)【出願日】2017年9月19日
(65)【公開番号】特開2019-51884(P2019-51884A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 敬
(72)【発明者】
【氏名】古澤 克仁
(72)【発明者】
【氏名】新美 浩一
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−097821(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102006061776(DE,A1)
【文献】
特開2009−051328(JP,A)
【文献】
特開2015−131517(JP,A)
【文献】
実開昭62−194158(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02,13/08,22/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造であって、
前記ルーフサイドインナーガーニッシュの車室外側に窓が配されており、
前記ルーフサイドインナーガーニッシュは、前記窓を取り囲みつつ車室内面を構成する本体部と、前記本体部から前記窓に向けて傾斜する傾斜部と、を少なくとも備え、
前記窓の下端近傍には機能部品が配され、
前記傾斜部は、少なくとも前記窓の下方に位置する部分が、前記窓に向けて下方に傾斜する構成とされ、当該部分が前記本体部と別体で前記本体部に対して着脱可能な状態で配されていることを特徴とするルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造。
【請求項2】
前記機能部品は、シートベルト巻取装置とされ、
前記窓の下端近傍には、シートベルトが引き出される開口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両後部座席の側方に配される車両内装材であるルーフサイドインナーガーニッシュが備える窓構造として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載された構造では、リアピラーガーニッシュ(ルーフサイドインナーガーニッシュ)の略中央部に窓部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−131517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ルーフサイドインナーガーニッシュの下方にシートベルト巻取装置や各種センサー等の機能部品が配され、これら機能部品が窓部における下端近傍に位置することがある。この場合、窓面積をできる限り下方まで大きく設けようとすると、ルーフサイドインナーガーニッシュにおける下端(窓部の下方部分)は、これら機能部品を避けるべく車室内側にかけて上向き(アンダーカット処理を要する形状)となり、ルーフサイドインナーガーニッシュ成形時に型開きが困難となり、製造効率が低下してしまう。そこで、ルーフサイドインナーガーニッシュを例えば窓の上下前後において4分割構成とする対策も可能ではあるが、部品点数が増えるためコストがかかるだけでなく、部品同士の境界線が増え見栄えが劣る、部品同士の建てつけが複雑になる、など別の課題が生じてしまう。一方、ルーフサイドインナーガーニッシュを一部品で構成しようとすると、型開きの構造上、必然的に窓面積を小さくせざるを得ない。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、窓面積を大きくしつつ意匠性に優れたルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造は、ルーフサイドインナーガーニッシュの車室外側に窓が配されており、前記ルーフサイドインナーガーニッシュは、前記窓を取り囲みつつ車室内面を構成する本体部と、前記本体部から前記窓に向けて傾斜する傾斜部と、を少なくとも備え、前記窓の下端近傍には機能部品が配され、前記傾斜部は、少なくとも前記窓の下方に位置する部分が、前記窓に向けて下方に傾斜する構成とされ、当該部分が前記本体部と別体で前記本体部に対して着脱可能な状態で配されていることを特徴とする。
【0007】
ルーフサイドインナーガーニッシュにおける窓周辺は、通常、車室外側に配される窓に対して、車室外側から車室内側に広がる傾斜構成を採用することが多い。一方で、窓を大型化して視界を広げることも望まれるが、窓近傍に配される機能部品等との関係上、上述した傾斜構成を単純に採用することも難しい場合がある。例えば、本願発明のように窓の下端近傍に機能部品を配した場合には、当該窓の下方に位置するルーフサイドインナーガーニッシュの傾斜部は、機能部品を避けて窓に向けて下方に傾斜する構成(本体部に対してアンダーカット形状となる構成)を取らざるを得ないことがある。このような構成の場合、ルーフサイドインナーガーニッシュの成形時には型開きが困難となり、製造効率が低下する問題も生じ得る。
【0008】
そのような背景において、本願発明では、傾斜部のうち少なくとも窓の下方に位置する部分を本体部とは別体とし、本体部に対して着脱可能な状態で配したことから、当該部分とそれ以外の部分とを別工程で製造することが可能なため、型開きの問題も解消しつつ、窓を大型化することも可能となり、機能部品の設置も実現できる構造を提供することが可能となる。つまり、窓と、当該窓周辺に配される機能部品との位置関係に関わらず、車室内からの視界を大きく確保できるものとなる。
【0009】
また、ルーフサイドインナーガーニッシュ本体部に対して別部材一点を組み付けるだけの構造とされるため、例えばルーフサイドインナーガーニッシュを4分割構成とする場合に比べて、部品点数及び部品同士の見切りの数も減るため、意匠性に優れたものとなる。また、ルーフサイドインナーガーニッシュの傾斜部の一部を着脱可能な構成としているため、当該部分の裏側を収納スペースとして利用することも可能となる。
【0010】
上記ルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造において、前記機能部品は、シートベルト巻取装置とされ、前記窓の下端近傍には、シートベルトが引き出される開口が設けられているものとすることができる。シートベルトの機能上、シートベルトが引き出される開口は乗員の肩口に設ける必要があり、シートベルトの巻取構造を考えると、シートベルト巻取装置も当該開口と略水平位置に設けることが望ましい。この場合、乗員の肩口、つまりルーフサイドインナーガーニッシュが備える窓の下端近傍は構造上の制約を受けることとなるが、本願発明に係るルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造によれば、ルーフサイドインナーガーニッシュのうち、窓の下方に位置する部分を別体で構成することにより、ルーフサイドインナーガーニッシュ(本体部)の成形時においてアンダーカット処理を必要とせず好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、窓面積を大きくしつつ意匠性に優れたルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造を備える車両の車室内を示す斜視図
【
図2】ルーフサイドインナーガーニッシュとシートベルト開口との位置関係を示す図
【
図3】ルーフサイドインナーガーニッシュとシートベルト巻取装置との位置関係を示す断面図(
図2におけるA−A線断面図)
【
図4】ルーフサイドインナーガーニッシュ本体部に対する第2傾斜部の取付態様を示す図
【
図5】ルーフサイドインナーガーニッシュを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜6を参照しながら詳細に説明する。図中、Fとは車両前方を、Rとは車両後方を、INとは車室内側方向を、OUTとは車室外側方向を、それぞれ意味する。また、以下の説明において、上下前後内外とは、各部材が車室内に配された状態における方向をそれぞれ示すものとする。
図1は、本願発明に係るルーフサイドインナーガーニッシュの窓構造を備える車両の車室内を示す斜視図である。後部シート11に着座する乗員の頭部後方であって後部ドア12の後方に、車両の内装を施すルーフサイドインナーガーニッシュ350が配されている。後部シート11における車室外側寄りであって乗員の肩口付近からはシートベルト14が引き出されている。より具体的には、
図2に示すように、シートベルト14は、シートサイドトリム15とデッキサイドトリム16との隙間によって構成されるシートベルト開口17から車両前方方向に引き出されている。このシートベルト開口17、及びシートベルト14が巻き取られるシートベルト巻取装置18(本願の「機能部品」に相当)は、
図3の側面図及び
図6の断面図に示すように、ルーフサイドインナーガーニッシュ350に配される窓40の下端49近傍に設けられている。つまり、シートベルト開口17、シートベルト巻取装置18、窓40の下端49は、車両上下方向において略同等の高さに配されている。シートベルトの機能上、これらシートベルト開口17、及びシートベルト巻取装置18(特にシートベルト開口17)はこのエリアに設けられることが好ましい。
【0014】
続いて、ルーフサイドインナーガーニッシュ350の構成について説明する。
図2,
図6に示すように、ルーフサイドインナーガーニッシュ350の車室外側には窓40が配されており、ルーフサイドインナーガーニッシュ350は、当該窓40を取り囲みつつ車室内面を構成する本体部30と、本体部30から窓40に向けて傾斜する傾斜部33と、を少なくとも備えて構成されている(
図3参照)。本体部30は、側面視略矩形状をなし(
図4,
図5参照)、その側面視内方かつ車両前方寄りには窓40を配するための窓開口36が設けられている。傾斜部33は、第1傾斜部34と、第2傾斜部50とで構成されている。
図3,
図6に示すように、第1傾斜部34は、車室外側から車室内側に、つまり窓40(窓開口36)から本体部30にかけて側面視外方に広がる傾斜面とされている。この第1傾斜部34は、本体部30と連続で一体的に形成されている。
【0015】
一方、第2傾斜部50は、
図3に示すように、少なくとも窓40の下方に位置する部分であって、窓40(窓開口36)に向けて下方に傾斜する傾斜面を有し、本体部30や第1傾斜部34とは別体で本体部30に対して着脱可能な状態で配されている(
図4,
図5参照)。つまり、第2傾斜部50のうち窓40の下端49近傍においては、その車室内側端51の方が、車室外側端52よりも上方となる傾斜構成とされている(
図6参照)。
図4に示すように、第2傾斜部50の外縁には係止部55が複数設けられており、これら係止部55を、本体部30に設けられた被係止部35にそれぞれ係止させることで本体部30に対して取り付けられ、複合体としてルーフサイドインナーガーニッシュ350を構成している(
図5参照)。なお、第2傾斜部50は、窓40における下端49を上方から覆うような構成、すなわち蓋体として構成されている(
図6参照)。
【0016】
このように、車室外側から車室内側にかけて側面視外方に広がる形状の第1傾斜部34と、車室内側から車室外側にかけて下降する第2傾斜部50とは、傾斜角度が相反する。このため、第1傾斜部34と第2傾斜部50の境界Kが意匠上綺麗に連なるように傾斜部33を設けるためには、第2傾斜部50に一定の前後幅を持たせ、窓40の下端49付近から第1傾斜部34との境界Kにかけて徐々に傾斜角度を変化させる必要がある。つまり、第2傾斜部50の傾斜角(車室外側端52側が車室内側端51に比して下方に傾斜)が、車両前後方向における両端50T,50Tに向かうほど緩やかになり、境界K付近では車室外側から車室内側にかけて側面視外方に広がる形状とされている(
図3参照)。一方、第1傾斜部34側も、境界K付近に向かうほど第2傾斜部50における両端50T,50Tと連なる傾斜面となるよう、窓40に対する傾斜角が徐々に大きくなる構成とされている。
【0017】
<作用・効果>
以上、本願発明に係るルーフサイドインナーガーニッシュ350の窓構造の一実施形態を説明した。
ルーフサイドインナーガーニッシュにおける窓周辺は、通常、車室外側に配される窓に対して、車室外側から車室内側に広がる傾斜構成を採用することが多い。一方で、窓を大型化して視界を広げることも望まれるが、窓近傍に配される機能部品等との関係上、上述した傾斜構成を単純に採用することも難しい場合がある。例えば、本願発明のように窓40の下端49近傍に機能部品18を配した場合には、当該窓40の下方に位置するルーフサイドインナーガーニッシュ350の傾斜部50(33)は、機能部品18を避けて窓40に向けて下方に傾斜する構成(本体部30に対してアンダーカット形状となる構成)を取らざるを得ないことがある。このような構成の場合、ルーフサイドインナーガーニッシュ350の成形時には型開きが困難となり、製造効率が低下する問題も生じ得る。
【0018】
そのような背景において、本願発明では、傾斜部33のうち少なくとも窓の下方に位置する部分50を本体部30とは別体とし、本体部30に対して着脱可能な状態で配したことから、当該部分50とそれ以外の部分30とを別工程で製造することが可能なため、型開きの問題も解消しつつ、窓40を大型化することも可能となり、機能部品18の設置も実現できる構造を提供することが可能となる。つまり、窓40と、当該窓40周辺に配される機能部品18との位置関係に関わらず、車室内からの視界を大きく確保できるものとなる。
【0019】
また、ルーフサイドインナーガーニッシュ本体部30に対して別部材である第2傾斜部50一点を組み付けるだけの構造とされるため、例えばルーフサイドインナーガーニッシュ350を4分割構成とする場合に比べて、部品点数及び部品同士の見切りの数も減るため、意匠性に優れたものとなる。また、ルーフサイドインナーガーニッシュ350の傾斜部33の一部50を着脱可能な構成としているため、当該部分50の裏側を収納スペースとして利用することも可能となる。
【0020】
また、シートベルトの機能上、シートベルト14が引き出される開口17は乗員の肩口に設ける必要があり、シートベルト14の巻取構造を考えると、シートベルト巻取装置18も当該開口17と略水平位置に設けることが望ましい。この場合、乗員の肩口、つまりルーフサイドインナーガーニッシュ350の窓40の下端49近傍は構造上の制約を受けることとなるが、本願発明に係るルーフサイドインナーガーニッシュ350の窓構造によれば、ルーフサイドインナーガーニッシュ350のうち、窓40の下方に位置する部分50を別体で構成することにより、ルーフサイドインナーガーニッシュ(本体部30)の成形時においてアンダーカット処理を必要とせず好適である。
【符号の説明】
【0021】
18…機能部品、30…本体部、33…傾斜部、40…窓、49…窓の下端、50…第2傾斜部(傾斜部33のうち窓40の下方に位置する部分)、350…ルーフサイドインナーガーニッシュ