【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 平成29年10月23日 公開場所 厚生労働省ホームページ 平成29年11月6日付 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会開催案内 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000181560.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 平成29年11月7日 公開場所 mix onlineホームページ https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/59155/Default.aspx
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フマル酸エメダスチンの経口製剤であるダレンカプセル(商品名)は、投与後にエメダスチンの血中濃度が上昇し、アレルギー症状の治療に有効であるものの、薬理効果の持続時間が非常に短いという問題があった。一方、特許文献1〜3では、ラット、ウサギ又はヘビの皮を用いて経皮吸収性のデータを示しているのみであり、実際にヒトに対して、フマル酸エメダスチン含有貼付剤を適用した場合の結果は存在しなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ヒトにおいて、エメダスチンによる副作用の発現が抑制され、アレルギー症状を治療又は緩和する医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フマル酸エメダスチンをヒトに投与して得られた本発明者らの知見に基づくものであり、以下の[1]〜[46]を提供する。
[1]支持体上に粘着剤層を備え、前記粘着剤層がフマル酸エメダスチンを含有する、アレルギー症状を治療又は緩和するための貼付剤であって、ヒトに対して、16〜26時間にわたってフマル酸エメダスチンを経皮投与するように用いられ、前記フマル酸エメダスチンの含有量が、前記ヒトの体重1kgあたり0.06〜0.20mgである貼付剤。
[2]上記アレルギー症状が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹である、[1]に記載の貼付剤。
[3]上記エメダスチンの最高血中濃度C
maxが0.3〜4ng/mLであり、かつ、最高血中濃度到達時間T
maxが8〜32時間となるように投与されるように用いられる、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[4]上記貼付剤の透湿度が1〜200g/m
2・24hrである、[1]〜[3]のいずれかに記載の貼付剤。
[5]上記ヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付される、[1]〜[4]のいずれかに記載の貼付剤。
[6]上記貼付剤の皮膚に接する面の面積が、8〜24cm
2である、[1]〜[5]のいずれかに記載の貼付剤。
[7]上記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の貼付剤。
[8]複数の貼付剤のセットであって、[1]〜[7]のいずれかに記載の貼付剤を16〜26時間に一度貼り替えるようにして、7日間以上にわたって継続的に経皮投与されるように用いられる、貼付剤のセット。
[9]支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、上記粘着剤層が4〜12mgのフマル酸エメダスチンを含有する、ヒトのアレルギー症状を治療又は緩和するための貼付剤。
[10]上記ヒトに対して、16〜26時間にわたって貼付するように用いられる、[9]に記載の貼付剤。
[11]上記アレルギー症状が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹である、[9]又は[10]に記載の貼付剤。
[12]上記エメダスチンの最高血中濃度C
maxが0.3〜4ng/mLであり、かつ、最高血中濃度到達時間T
maxが8〜32時間となるように貼付される、[9]〜[11]のいずれかに記載の貼付剤。
[13]上記貼付剤の透湿度が1〜200g/m
2・24hrである、[9]〜[12]のいずれかに記載の貼付剤。
[14]上記ヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付される、[9]〜[13]のいずれかに記載の貼付剤。
[15]上記貼付剤の皮膚に接する面の面積が、8〜24cm
2である、[9]〜[14]のいずれかに記載の貼付剤。
[16]上記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を更に含有する、[9]〜[15]のいずれかに記載の貼付剤。
[17]上記スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含有量が、10〜60mgである、[9]〜[16]のいずれかに記載の貼付剤。
[18]複数の貼付剤のセットであって、[9]〜[17]のいずれかに記載の貼付剤を16〜26時間に一度貼り替え、7日間以上にわたって継続的に経皮投与されるように用いられる、貼付剤のセット。
[19]ヒトに対して、16〜26時間にわたって経皮投与するように用いられる、フマル酸エメダスチンを含有する、アレルギー症状の治療剤。
[20]上記経皮投与が、上記ヒトの体重1kgあたり0.06〜0.20mgのフマル酸エメダスチンを含有する粘着剤層を備える貼付剤により行われる、[19]に記載の治療剤。
[21]上記ヒトが、アレルギー症状を呈する患者である、[19]又は[20]に記載の治療剤。
[22]上記アレルギー症状が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹である、[21]に記載の治療剤。
[23]上記エメダスチンの最高血中濃度C
maxが0.3〜4ng/mLであり、かつ、最高血中濃度到達時間T
maxが8〜32時間である、[19]〜[22]のいずれかに記載の治療剤。
[24]上記貼付剤の透湿度が1〜200g/m
2・24hrである、[19]〜[23]のいずれかに記載の治療剤。
[25]上記ヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部の皮膚に貼付される、[19]〜[24]のいずれかに記載の治療剤。
[26]上記貼付剤の皮膚に接する面の面積が、8〜24cm
2である、[19]〜[25]のいずれかに記載の治療剤。
[27]上記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を更に含有する、[19]〜[26]のいずれかに記載の治療剤。
[28]16〜26時間に一度の間隔で上記貼付剤を貼り替え、7日間以上にわたって継続的に経皮投与されるように用いられる、[23]〜[27]のいずれかに記載の治療剤。
[29]支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が0.06〜0.20mg/kg体重のフマル酸エメダスチンを含有する貼付剤を、ヒトに対して、16〜26時間にわたって貼付することを含む、アレルギー症状を治療又は緩和する方法。
[30]上記ヒトが、アレルギー症状を呈する患者である、[29]に記載の方法。
[31]上記アレルギー症状が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹である、[29]又は[30]に記載の方法。
[32]エメダスチンの最高血中濃度C
maxが0.3〜4ng/mLであり、かつ、最高血中濃度到達時間T
maxが8〜32時間となるように貼付する、[29]〜[31]のいずれかに記載の方法。
[33]上記貼付剤の透湿度が1〜200g/m
2・24hrである、[29]〜[32]のいずれかに記載の方法。
[34]上記貼付剤をヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付する、[29]〜[33]のいずれかに記載の方法。
[35]上記貼付剤の皮膚に接する面の面積が、8〜24cm
2である、[29]〜[34]のいずれかに記載の方法。
[36]上記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を含有する、[29]〜[35]のいずれかに記載の方法。
[37]16〜26時間に一度の間隔で上記貼付剤を貼り替え、7日間以上にわたって継続的に経皮投与する、[29]〜[36]のいずれかに記載の方法。
[38]支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が0.06〜0.20mg/kg体重のフマル酸エメダスチンを含有する貼付剤を、ヒトに対して、16〜26時間にわたって貼付して、アレルギー症状を治療又は緩和するために用いられるフマル酸エメダスチン。
[39]上記ヒトが、アレルギー症状を呈する患者である、[38]に記載のフマル酸エメダスチン。
[40]上記アレルギー症状が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹である、[38]又は[39]に記載のフマル酸エメダスチン。
[41]上記エメダスチンの最高血中濃度C
maxが0.3〜4ng/mLであり、かつ、最高血中濃度到達時間T
maxが8〜32時間となるように貼付する、[38]〜[40]のいずれかに記載のフマル酸エメダスチン。
[42]上記貼付剤の透湿度が1〜200g/m
2・24hrである、[38]〜[41]のいずれかに記載のフマル酸エメダスチン。
[43]上記貼付剤をヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付する、[38]〜[42]のいずれかに記載のフマル酸エメダスチン。
[44]上記貼付剤の皮膚に接する面の面積が、8〜24cm
2である、[38]〜[43]のいずれかに記載のフマル酸エメダスチン。
[45]上記粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を含有する、[38]〜[44]のいずれかに記載のフマル酸エメダスチン。
[46]16〜26時間に一度の間隔で上記貼付剤を貼り替え、7日間以上にわたって継続的に経皮投与する、[38]〜[45]のいずれかに記載のフマル酸エメダスチン。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒトにおいて、エメダスチンによる副作用の発現が抑制され、アレルギー症状を治療又は緩和する医薬を提供することができる。
【0009】
本発明によれば、特許文献1〜4に記載の貼付剤におけるエメダスチンの含有量と比較して、より低用量でのフマル酸エメダスチンの経皮投与が、アレルギー症状の治療又は緩和に有効であり、エメダスチンの副作用を抑制することができる。また、本発明は、優れた経皮吸収性及び徐放性を示すことにより、エメダスチンの薬理作用を長時間維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第一実施形態は、支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層がフマル酸エメダスチンを含有する、アレルギー症状を治療又は緩和するための貼付剤であって、ヒトに対して、16〜26時間にわたってフマル酸エメダスチンを経皮投与するように用いられ、上記フマル酸エメダスチンの含有量が上記ヒトの体重1kgあたり0.06〜0.20mgである貼付剤である。
【0011】
支持体としては、粘着剤層を支持するのに適したものであれば特に限定はされず、伸縮性又は非伸縮性のものを用いることができる。支持体の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル(PAN)などのフィルム、シート、これらの積層体、多孔体、発泡体、布及び不織布、並びにこれらのラミネート品などが使用できる。また、好ましい支持体の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンである。好ましい支持体の具体例としては、Scotchpak(登録商標、スリーエム社) 9723、9732等のScotchpakシリーズが挙げられる。
【0012】
支持体は、その粘着剤層と接する面に、サンドマット処理を施してもよい。支持体にサンドマット処理を施すことにより、投錨性がより向上する。サンドマット処理の方法としては、当業者に周知の方法により行うことができる。
【0013】
本実施形態に係る貼付剤は、粘着剤層にフマル酸エメダスチンを含有する。
【0014】
エメダスチンは、1−(2−エトキシエチル)−2−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−1H−ベンゾイミダゾールとも呼ばれ、その分子量は302.41である。フマル酸エメダスチンは、下記化学式(1)で表されるエメダスチン2フマル酸塩である。
【化1】
【0015】
フマル酸エメダスチンの含有量は、ヒトに対して、16〜26時間にわたって0.06〜0.20mg/kg体重のフマル酸エメダスチンを経皮投与可能な量であればよい。フマル酸エメダスチンの含有量は、例えば、4〜12mgであることが好ましく、6〜12mgであることがより好ましく、4mg又は8mgであることがより好ましい。4mg以上のフマル酸エメダスチンを含有する貼付剤をヒトの皮膚に適用することにより、貼付剤を適用している間にわたって、エメダスチンの血中濃度を有効血中濃度より高い値で維持しやすくなり、充分なアレルギー症状の治療又は緩和効果を持続させやすくなる。また、12mg以下のフマル酸エメダスチンを含有する貼付剤をヒトの皮膚に適用することにより、眠気等の副作用の発現をより抑制することができる。
【0016】
本明細書において、「0.06〜0.20mg/kg体重のフマル酸エメダスチン」とは、投与対象であるヒトが成人(成人の体重を60kgと仮定する。)である場合には、フマル酸エメダスチンの量は4〜12mgであり、投与対象であるヒトが小児(小児の体重を15kgと仮定する。)である場合には、フマル酸エメダスチンの量は1〜3mgであることを意味する。すなわち、本実施形態に係る貼付剤には、支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、粘着剤層がフマル酸エメダスチンを含有し、フマル酸エメダスチンの含有量が4〜12mgである、ヒトのアレルギー症状を治療又は緩和するための貼付剤という側面もある。
【0017】
フマル酸エメダスチンの含有量は、粘着剤層の全質量を基準として1〜7質量%、2〜7質量%、又は、3〜7質量%であってもよい。
【0018】
粘着剤層は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を更に含有してもよい。スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含有量は、10〜60mgであることが好ましく、10〜50mgであることがより好ましい。
【0019】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として10〜95質量%、10〜80質量%、又は、10〜60質量%であってもよい。
【0020】
粘着剤層は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体以外のゴム系粘着剤、粘着付与樹脂、可塑剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、充填剤、香料等のその他の成分を更に含有してもよい。
【0021】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体以外の他のゴム系粘着剤は、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリシロキサン等が挙げられる。これらのゴム系粘着剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましいゴム系粘着剤としては、SIS及びPIBが挙げられる。ゴム系粘着剤の具体例としては、オパノールB12、B15、B50、B80、B100、B120、B150、B220(商品名、BASF社製)、JSRブチル065、268、365(商品名、JSR社製)、ビスタネックスLM−MS、MH、H、MML−80、100、120、140(商品名、エクソン・ケミカル社製)、HYCAR(商品名、グッドリッチ社製)、SIBSTAR T102(商品名、カネカ社製)等が挙げられる。
【0022】
上記他のゴム系粘着剤の含有量は、粘着剤層全体の質量に対して、10〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
【0023】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル及びロジンのペンタエリストールエステルなどのロジン誘導体、アルコンP100(商品名、荒川化学工業)などの脂環族飽和炭化水素樹脂、クイントンB170(商品名、日本ゼオン)などの脂肪族系炭化水素樹脂、クリアロンP−125(商品名、ヤスハラケミカル)などのテルペン樹脂、マレイン酸レジンなどが挙げられる。これらの中でも、特に水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂及びテルペン樹脂が好ましい。これら粘着付与樹脂は1種単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。粘着付与樹脂を含むことにより、粘着剤層の接着性を向上させ、他の物性を安定に維持することができる。
【0024】
粘着付与樹脂の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0025】
可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルなどの石油系オイル;スクワラン;スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油などの植物系オイル;シリコンオイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル;ポリブテン及び液状イソプレンゴムなどの液状ゴム;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル及びセバシン酸ジイソプロピルなどの液状脂肪酸エステル類;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトンなどが例示できる。可塑剤としては、これらの中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル及びラウリン酸ヘキシルが好ましく、特に、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル及び流動パラフィンが好ましい。これらの可塑剤は2種以上混合して使用してもよい。
【0026】
可塑剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。
【0027】
経皮吸収促進剤は、従来、皮膚での経皮吸収促進作用を有することが知られている化合物であればよい。経皮吸収促進剤としては、例えば、有機酸及びその塩(例えば、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸(以下、「脂肪酸」ともいう。)及びその塩、ケイ皮酸及びその塩)、有機酸エステル(例えば、脂肪酸エステル、ケイ皮酸エステル)、有機酸アミド(例えば、脂肪酸アミド)、脂肪アルコール、多価アルコール、エーテル(例えば、脂肪エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)などが挙げられる。これらの吸収促進剤は、不飽和結合を有していてもよく、環状、直鎖状又は分枝状の化学構造であってもよい。また、経皮吸収促進剤は、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、及び植物油(例えば、オリーブ油)であってもよい。これらの経皮吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
かかる有機酸としては、脂肪族(モノ、ジ又はトリ)カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、クエン酸(無水クエン酸を含む)、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、脂肪酸、乳酸、マレイン酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等)、芳香族カルボン酸(例えば、フタル酸、サリチル酸、安息香酸、アセチルサリチル酸等)、ケイ皮酸、アルカンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸)、アルキルスルホン酸誘導体(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)、コール酸誘導体(例えば、デヒドロコール酸等)が挙げられる。これらの有機酸は、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩であってもよい。中でも、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸又はこれらの塩が好ましく、酢酸、酢酸ナトリウム又はクエン酸が特に好ましい。
【0029】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸が挙げられる。
【0030】
有機酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸メチル、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチルが挙げられる。脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であってもよい。脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエー卜、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20(商品名)、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、Span20、Span40、Span60、Span80、Span120(商品名)、Tween20、Tween21、Tween40、Tween60、Tween80(商品名)、NIKKOL HCO−60(商品名、日光ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
【0031】
有機酸アミドとしては、例えば、脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド)、ヘキサヒドロ−1−ドデシル−2H−アゼピン−2−オン(Azoneともいう。)及びその誘導体、ピロチオデカンが挙げられる。
【0032】
脂肪アルコールとは、炭素原子数6〜20の脂肪族アルコールを意味する。脂肪アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコールが挙げられる。
【0033】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0034】
モノテルペン系化合物としては、例えば、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオロール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフルが挙げられる。
【0035】
オレイルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノオレエー卜、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル又はピロチオデカンがより好ましい。脂肪酸が好ましく、オレイン酸が特に好ましい。
【0036】
経皮吸収促進剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0〜20質量%であることが好ましく、0〜10質量%であることがより好ましい。
【0037】
安定化剤は、酸化防止剤(トコフェロール誘導体、アスコルビン酸誘導体、エリソルビン酸誘導体、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等)、紫外線吸収剤(イミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、クマリン酸誘導体、カンファー誘導体等)などを挙げることができる。
【0038】
安定化剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0〜5質量%であることが好ましく、0〜2質量%であることがより好ましい。
【0039】
充填剤は、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン等)、金属塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等)、ケイ酸化合物(カオリン、タルク、ベントナイト、アエロジル、含水シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)などを挙げることができる。
【0040】
充填剤の含有量は、粘着剤層の全質量を基準として、0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましい。
【0041】
粘着剤層は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0042】
本明細書において、「アレルギー症状」とは、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹を意味する。また、「アレルギー症状の治療又は緩和」並びにこれに類似の表現は、上記アレルギー症状の自覚症状(例えば、くしゃみ、鼻汁、鼻閉)が認められなくなること、又は、自覚症状を認める頻度が低下することを意味する。
【0043】
本実施形態に係る貼付剤は、ヒトに対して、16〜26時間、好ましくは20〜26時間、より好ましくは22〜26時間にわたって貼付するように用いられる。本実施形態に係る貼付剤をヒトに貼付すると、貼付から8〜32時間後にエメダスチンの血中濃度はその最高値C
maxに達し、さらに約10時間、同程度の血中濃度が維持される。また、エメダスチンの最高血中濃度C
maxは、0.3〜4ng/mLであることが好ましい。血中濃度が0.3ng/mL以上であると、エメダスチンによるアレルギー症状の治療又は緩和効果をより充分に確保できる。血中濃度が4ng/mL以下であると、エメダスチンによる眠気等の副作用が発現しにくくなる。本実施形態に係る貼付剤を16〜26時間にわたって貼付することにより、エメダスチンの副作用の発現を抑制しつつ、アレルギー症状の治療又は緩和効果を発揮するのに適した血中濃度をより長時間かつ安定的に維持させることができる。
【0044】
貼付する部位は、通常、貼付剤の使用実態で想定される部位であれば、特に限定されない。貼付する部位としては、ヒトの胸部、上腕部、背部、腰部又は腹部が好ましく、ヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部であることがより好ましい。胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付剤を貼付することにより、エメダスチンの血中濃度がより高いレベルで維持されやすくなる。
【0045】
また、貼付剤の皮膚に接する面の面積は、8〜24cm
2であってもよく、8〜16cm
2であってもよい。上記面積が8cm
2以上であると、粘着剤層に含有されるフマル酸エメダスチンがより効率よく経皮吸収される傾向があり、より充分なアレルギー症状の治療又は緩和効果を発揮しやすくなり、その持続時間も長くなる傾向がある。上記面積が24cm
2以下であると、エメダスチンの血中濃度の上昇に伴う眠気等の副作用の発現をより抑制できる。すなわち、貼付面積が上記範囲であると、エメダスチンの血中濃度を有効血中濃度と同程度のレベルで、より長時間にわたって維持することができ、かつアレルギー症状の治療又は緩和効果をより効率的に発揮し得るようになる。
【0046】
貼付剤の透湿度は、1〜200g/m
2・24hr、1〜150g/m
2・24hr、1〜100g/m
2・24hr、1〜50g/m
2・24hr、1〜20g/m
2・24hr、又は、1〜10g/m
2・24hrであることが好ましい。透湿度は、貼付剤の粘着剤層及び/又は支持体を通じて、水分が透過する程度を示す物性である。透湿度が上記範囲であると、皮膚から蒸散される水分を適度に遮断すること(閉塞状態)によって、当該皮膚の角質層を湿潤させ、エメダスチンの経皮吸収性をより向上させやすくなる(ODT効果:Occlusive Dressing Technique)。透湿度が1g/m
2・24hrより低いと、貼付剤を長時間貼付した際に、皮膚から蒸散した水分が貼付剤と皮膚の間に溜まるために、蒸れを生じやすくなり、皮膚刺激を生じる場合がある。また、貼付剤と皮膚の間に溜まった水分は、貼付剤の粘着力を低下させる場合がある。さらに、透湿度が200g/m
2・24hrより高いと、充分なODT効果が得られない場合がある。
【0047】
本実施形態に係る貼付剤は、粘着剤層を被覆して保護するための剥離フィルムをさらに備えていてもよい。
【0048】
剥離フィルムの材質は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)などのフィルム、紙などを用いることが可能であり、粘着剤層に当接する面をシリコーン、テフロン(登録商標)等をコーティングして離型処理を施したものが好ましく、特にシリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。
【0049】
粘着剤層の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、30〜140μmであることがさらに好ましい。粘着剤層が上記範囲であると、衣服の着脱時等に脱落しにくくなる。
【0050】
本実施形態の貼付剤は、使用時まで包装袋内に保存されることが好ましい。例えば、1つの包装袋内に、1〜7枚の貼付剤が封入される。包装袋は、多層構造であることが好ましく、特に最内層の材質はポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィン、又は、エチレン−ビニルアルコール共重合体であることが好ましい。最内層の材質が上記のものであると、エメダスチンの吸着を生じにくい。特に好ましい最内層の材質は、ヒートシール可能なPETフィルムである。
【0051】
本実施形態に係る貼付剤は、ヒトに対して、16〜26時間にわたって貼付するように用いられる。従来、フマル酸エメダスチン含有貼付剤の検討の中で、ヒトに投与した実験結果を示したものはなく、ラットやウサギを用いた動物モデルにおける経皮吸収性のデータのみで議論されていた。本発明によれば、エメダスチンによる副作用の発現を抑制でき、長時間にわたってエメダスチンの薬理作用を発揮することができる。
【0052】
本実施形態に係る貼付剤をヒトに貼付すると、貼付から8〜32時間後(Tmax)にエメダスチンの血中濃度は最高値C
maxに達し、さらに約10時間、同程度の血中濃度が維持される。また、エメダスチンの最高血中濃度C
maxは、0.3〜4ng/mLである。血中濃度が0.3ng/mL以上であると、エメダスチンによるアレルギー症状の治療又は緩和効果をより充分に確保できる。血中濃度が4ng/mL以下であると、エメダスチンによる眠気等の副作用が発現しにくくなる。本実施形態に係る貼付剤を16〜26時間にわたって貼付することにより、エメダスチンによる副作用の発現を抑制しつつ、アレルギー症状の治療又は緩和効果を発揮するのに適した血中濃度をより長時間かつ安定的に維持させることができる。
【0053】
また、本実施形態の貼付剤を複数組み合わせて貼付剤のセットにしてもよい。このようなセットは、具体的には、上述の貼付剤を7枚以上組み合わせたセットである。貼付剤1枚につき16〜26時間にわたって貼付した後、別の貼付剤に貼り替えるようにして使用される。当該貼付剤のセットにより、フマル酸エメダスチンの血中濃度が高いレベルで定常状態に到達しやすくなる。さらに、当該貼付剤のセットによれば、7日間以上、10日間以上、又は14日間以上にわたって毎日貼り替えることにより、睡眠中のアレルギー症状又は慢性的なアレルギー症状の治療又は緩和により効果的である。
【0054】
本実施形態に係る貼付剤には、ヒトに対して、16〜26時間にわたって経皮投与するように用いられる、フマル酸エメダスチンを含有するアレルギー症状の治療剤という側面もある。また、本実施形態には、支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が0.06〜0.20mg/kg体重のフマル酸エメダスチンを含有する貼付剤を、ヒトに対して、16〜26時間にわたって貼付することを含む、アレルギー症状を治療又は緩和する方法という側面もある。さらに、本実施形態には、支持体上に粘着剤層を備え、上記粘着剤層が0.06〜0.20mg/kg体重のフマル酸エメダスチンを含有する貼付剤を、ヒトに対して、16〜26時間にわたって貼付して、アレルギー症状を治療又は緩和するために用いられるフマル酸エメダスチンという側面もある。これらの側面における好ましい態様は、上述のとおりである。
【0055】
本発明の第二実施形態は、ヒトに対して、フマル酸エメダスチン4〜12mgを16〜26時間かけて経皮投与するように用いられる、フマル酸エメダスチンである。
【0056】
本実施形態に係るフマル酸エメダスチンは、ヒトに対して、フマル酸エメダスチン4〜12mgを16〜26時間かけて経皮投与するように用いられる。ヒトは、アレルギー症状を呈する患者、又は、アレルギー症状を呈することが疑われるヒトであることが好ましい。アレルギー症状としては、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症又は痒疹であることが好ましい。
【0057】
経皮投与は、当業界において経皮投与用製剤として知られる製剤による投与であれば、特に制限はない。経皮投与の方法としては、例えば、貼付剤、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、ローション等が挙げられる。
【0058】
経皮投与は、エメダスチンの最高血中濃度C
maxが0.3〜4ng/mLであり、かつ、最高血中濃度到達時間Tmaxが8〜32時間であるように投与されることが好ましい。
【0059】
好ましい経皮投与用の製剤は、フマル酸エメダスチン4〜12mgを含有する粘着剤層を備える貼付剤である。粘着剤層は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体を更に含有することが好ましい。粘着剤層がスチレン−イソプレン−スチレン共重合体を更に含有すると、エメダスチンの最高血中濃度C
max及び最高血中濃度到達時間T
maxを上記範囲内に調整しやすくなる。
【0060】
粘着剤層は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体以外のゴム系粘着剤、粘着付与樹脂、可塑剤、経皮吸収促進剤、安定化剤、充填剤、香料等のその他の成分を更に含有してもよい。これらの成分として、第一実施形態において記載した成分を使用できる。
【0061】
貼付する部位は、ヒトの胸部、上腕部、背部、腰部又は腹部が好ましく、ヒトの胸部、上腕部、背部又は腹部であることがより好ましい。胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付剤を貼付することにより、エメダスチンの血中濃度がより高いレベルで維持されやすくなる。
【0062】
また、貼付剤の皮膚に接する面の面積は、8〜24cm
2であってもよく、8〜16cm
2であってもよい。上記面積が8cm
2以上であると、粘着剤層に含有されるフマル酸エメダスチンがより効率よく経皮吸収される傾向があり、より充分なアレルギー症状の治療又は緩和効果を発揮しやすくなり、その持続時間も長くなる傾向がある。上記面積が24cm
2以下であると、エメダスチンの血中濃度の上昇に伴う眠気等の副作用の発現をより抑制できる。すなわち、貼付面積が上記範囲であると、エメダスチンの血中濃度を有効血中濃度と同程度のレベルで、より長時間にわたって維持することができ、かつアレルギー症状の治療又は緩和効果をより効率的に発揮し得るようになる。
【0063】
貼付剤の透湿度は、1〜200g/m
2・24hr、1〜150g/m
2・24hr、1〜100g/m
2・24hr、1〜50g/m
2・24hr、1〜20g/m
2・24hr、又は、1〜10g/m
2・24hrであることが好ましい。透湿度が上記範囲であると、皮膚から蒸散される水分を遮断し、閉塞状態にすることによって、当該皮膚の角質層を湿潤させ、エメダスチンの経皮吸収性をより向上させやすくなる(ODT効果)。透湿度が低いと、貼付剤を長時間貼付した際に、皮膚から蒸散した水分が貼付剤と皮膚の間に溜まるために、蒸れを生じやすくなり、皮膚刺激を生じる場合がある。また、貼付剤と皮膚の間に溜まった水分は、貼付剤の粘着力を低下させる場合がある。
【0064】
本実施形態に係る貼付剤は、例えば、以下の方法により製造することができる。
1)フマル酸エメダスチン、任意に、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体及びその他の成分を秤り取り、必要に応じて加温及び溶媒添加を行い、混合して、均一な粘着剤組成物を得る。
2)得られた粘着剤組成物を、剥離ライナーの離型面に一定の厚さで塗布し、必要に応じて乾燥して溶媒成分を除去し、粘着剤層を形成する。
3)粘着剤層の上に支持体を積層する。
4)所定の形状(例えば、短辺が3〜14cmかつ長辺が5〜20cmの矩形、又は直径が1〜8cmの円形)に裁断する。
【実施例】
【0065】
以下に、本発明の貼付剤について、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。実施例及び比較例に関して、特記しない限り、粘着剤層の厚さが100μmになるように調製した。
【0066】
試験例1:単回投与
表1の記載にしたがい、実施例1及び2、比較例1及び2の貼付剤を調製した。なお、表1中の数値は、特記しない限り、質量(単位:mg)を意味する。
【表1】
【0067】
得られた貼付剤を、それぞれ健康な成人男性12名の胸部に貼付し、貼付の直前、貼付してから4、8、12、16、20、24、26、28、32、36、48、72時間後に、それぞれ採血を行い、各時点でのエメダスチンの血中濃度を測定した。得られた血中濃度の数値を基に、各貼付剤について、エメダスチンの最高血中濃度C
max及び最高血中濃度到達時間T
maxを算出した。また、縦軸に血中濃度、横軸に時間をプロットしたグラフを作成し、時間−血中濃度曲線の曲線下面積AUC
0−∞を算出した。さらに、各貼付剤を貼付していた間、眠気を感じた人の割合を算出した。
【0068】
また、同様にして、貼付剤に代えてフマル酸エメダスチン含有経口製剤「ダレンカプセル」(商品名)を健康な成人男性12名に経口投与し、血中濃度を測定した。
【0069】
結果を表2に示した。表2中、比較例3は、ダレンカプセルを経口投与した結果である。比較例1は、C
max及びAUC
0−∞の値が比較例3よりも低く、エメダスチンの薬理作用を充分に発揮しなかった。また、比較例2は、エメダスチンの血中濃度が高く、傾眠の症状(エメダスチンによる副作用)が発現した。実施例1及び2の貼付剤は、傾眠の症状を発現することなく、およそ20時間かけて最高血中濃度に到達した。一方、比較例3のカプセルは、投与後4時間で最高血中濃度に到達し、傾眠の症状も発現した。
【表2】
【0070】
試験例2:反復投与
表3の記載にしたがい、実施例3及び4の貼付剤を調製した。なお、表3中の数値は、特記しない限り、質量(単位:mg)を意味する。また、フマル酸エメダスチンを含まない以外は、実施例3及び4と同一の組成の、比較例4及び5の貼付剤をそれぞれ調製した。
【表3】
【0071】
得られた実施例3及び4、比較例4及び5の貼付剤を、それぞれ季節性アレルギー性鼻炎患者96名の胸部に貼付し、24時間毎に新たな貼付剤に貼り替え、この作業を15日目まで繰り返した。貼付剤を貼り替える時に、それぞれ採血を行い、各時点でのエメダスチンの血中濃度を測定した。得られた血中濃度の数値を基に、各貼付剤の反復投与により定常状態に達した際の最高血中濃度の値(ピーク値)と最低血中濃度の値(トラフ値)を算出した。また、縦軸に血中濃度、横軸に時間をプロットしたグラフを作成し、時間−血中濃度曲線の曲線下面積AUC
0−∞を算出した。
【0072】
各貼付剤に関して、得られたピーク値をトラフ値で除した数値(ピーク/トラフ比)を表4に示した。7回目に投与したときのピーク/トラフ比は1.2であり、定常状態における血中濃度の変動幅は小さかった。フマル酸エメダスチンを経口投与した場合には、投与後4時間でC
maxに到達し、すぐに血中濃度が低下することを考慮すると、1日に2回フマル酸エメダスチンを経口投与したとしても、血中濃度の変動幅は、本発明の貼付剤よりも大きい。すなわち、本発明の貼付剤によれば、経口製剤よりも、エメダスチンによる副作用の発現を抑制でき、かつ充分な薬理作用を期待することができる。
【表4】
【0073】
各貼付剤に関して、AUC
0−∞の平均値を表5に示す。比較例4はフマル酸エメダスチンを含有しない貼付剤であるから、比較例4を貼付した場合のAUC
0−∞を算出していない。投与回数が増えるにつれて、AUCは徐々に増加し、約7回目で定常状態となることがわかった。すなわち、新たに吸収されるエメダスチン量と代謝又は排泄されるエメダスチン量が平衡状態になったといえる。定常状態に達することにより、貼付してから26時間後においても、エメダスチンの血中濃度を高いレベルで維持しやすくなる。
【表5】
【0074】
試験例3:反復投与
得られた実施例2〜4及び比較例4の貼付剤を、それぞれ季節性アレルギー性鼻炎患者96名の胸部に貼付し、24時間毎に新たな貼付剤に貼り替え、この作業を15日目まで繰り返した。15日目に、各患者のアレルギー症状として、くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉の3つの評価項目について、各患者が自身の主観に基づき、以下の評価基準にしたがいスコア化し、そのスコアを投与前のスコアと比較し、その変化量を算出した。
<アレルギー症状の評価基準>
0:症状なし
1:軽度
2:やや重度
3:重度
4:非常に重度
【0075】
得られたスコアの変化量の最小二乗平均値を算出し、表6に示した。実施例2〜4の貼付剤を用いてフマル酸エメダスチンを14日間経皮投与した患者は、アレルギー性鼻炎が顕著に改善した。また、フマル酸エメダスチンを含有しない比較例4を貼付した場合のスコアの変化量と比べても、顕著にスコアが低下していた。
【表6】
【0076】
さらに、剥離後の各貼付剤を回収し、その粘着剤層に含有されるフマル酸エメダスチンの量を高速液体クロマトグラフィー法(検出波長:280nm)によって測定した。結果を表7に示した。実施例2〜4の貼付剤のいずれの場合も、フマル酸エメダスチンの放出率は約65%であった。
【表7】
【0077】
試験例4:反復投与
実施例3及び4、比較例4及び5の貼付剤を、季節性アレルギー性鼻炎患者1276名の胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付し、表8に示す評価基準に基づき、15日目に、各患者のアレルギー症状の鼻閉症状スコアを比較した。
【表8】
【0078】
結果を表9に示した。被験者の人数を増やしても、試験例3と同様の結果が得られた。
【表9】
【0079】
試験例5:アレルギー症状の評価
得られた実施例3及び4の貼付剤を、それぞれ季節性アレルギー性鼻炎患者247名の胸部、上腕部、背部又は腹部に貼付し、24時間毎に新たな貼付剤に貼り替え、この作業を12週間(84日間)、場合により52週間(364日間)繰り返した。繰り返し投与の翌日に、各患者のアレルギー症状(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉)について、試験例4と同様の方法で鼻閉症状スコアを記録した。そのスコアの平均値を、各患者の投与前のスコアと比較し、その変化量を算出した。
【0080】
結果を表10に示した。実施例3及び4を貼付した群は、いずれも貼付してから遅くとも1週間後には、上記アレルギー症状のスコアの合計が低下し、52週間後まで低下したスコアを維持した。
【表10】
【0081】
試験例6:貼付部位の検討
健康成人20名を5群に分け、各群の健康成人の胸部、上腕部、背部、腰部及び腹部のうちのいずれか一つの部位に、実施例4の貼付剤を貼付した。貼付の直前、貼付してから4、8、12、16、20、24、26、28、32、36、48、72時間後に採血を行い、エメダスチンの血中濃度を測定した。また、採血後、一定の時間(休薬時間)を経過した後、胸部、上腕部、背部、腰部及び腹部のうちの別の部位に貼付し、同様にエメダスチンの血中濃度を測定した。これを合計5回繰り返して、同一の被験者につき5つの部位で試験を実施した。
【0082】
貼付部位にしたがい、血中濃度のデータを分類し、得られた血中濃度の値から最高値を最高血中濃度C
maxとして記録し、表11に示した。試験を実施した5つの部位のうち、貼付剤を背部に貼付すると、エメダスチンの吸収率が最も高く、貼付剤を腰部に貼付すると、エメダスチンの吸収率(単位:ng/mL)が最も低かった。
【表11】
【0083】
試験例7:透湿度の検討
実施例4の貼付剤について、JIS Z−0280:1976(カップ法)に記載の方法にしたがい、透湿度を測定した。試験を3回実施し、その平均値を算出した。
【0084】
実施例4の貼付剤の透湿度は、6.15〜6.68g/m
2・24hrであり、その平均値は6.45g/m
2・24hrであった。
【0085】
試験例8:支持体の検討
実施例4と同じ粘着剤層に、支持体としてポリエステルフィルム又は編布を用いて、実施例5及び6の貼付剤(貼付面積:3.0cm
2)を調製した。
【0086】
実施例5及び6の貼付剤について、透湿度試験及び皮膚透過試験を実施した。透湿度試験は、試験例7と同様に実施した。皮膚透過試験は、以下のように実施した。
ヘアレスマウス背部皮膚を剥離し、真皮側をレセプター層側に向け、32℃の温水を外周部に循環させたフロースルーセルに装着した。角質層側に実施例5又は6の貼付剤を貼付し、2.0mL/時間の速さで、貼付時から24時間後までの4時間ごとにサンプリングを行った。本試験では、レセプター層としてリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を使用した。レセプター層中のエメダスチンの濃度を経時的に測定し、貼付時から24時間後までの間のエメダスチン(フリー体として)の累積皮膚透過量(μg/cm
2)を算出した。
【0087】
結果を表12に示した。実施例5及び6の貼付剤は、マウス皮膚を用いた試験において、エメダスチンの皮膚透過性が優れていた。とりわけ、実施例5の貼付剤は、エメダスチンの皮膚透過量がより高い値であった。
【表12】