【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例の中で行ったエアバッグ用織物の特性および性能評価の方法を以下に示す。
【0046】
<糸の総繊度>
JIS L 1013 8.3.1 B法に準じて測定した。
【0047】
<糸のフィラメント数>
JIS L 1013 8.4に準じて測定した。
【0048】
<単繊維繊度>
前記総繊度を、前記フィラメント数で除することで得た。
【0049】
<織物の織密度>
JIS L 1096 8.6.1 A法に準じて測定した。
【0050】
<織物の引張強度>
JIS L 1096 8.14.1 A法に準じて測定した。
【0051】
<織物の通気量>
得られた織物の20kPa差圧下における通気量を、
図1に示される生布通気量測定機(京都精工製 流量計6:コスモ計器製DF2810P、層流管5:コスモ計器製LF2−100L、圧力計8:コスモ計器製DP−330BA)を用いて測定した。
図1に示すように、得られた織物を20cm×20cmで裁断したものをサンプル1とし、加圧装置4と接続された内径50mmの円筒状の第1クランプ3aにリング状の留め具2で固定し、層流管5と接続された内径50mmの円筒状の第2クランプ3bとの間に挟んだ。その後、第1クランプ3a側より加圧装置4によって加圧し、圧力計8の表示が20kPaとなる様に圧力調整弁7を操作した。前記の状態においてサンプルを通過する通気量を層流管5に接続された流量計6によって検出し、20kPa差圧下における通気量とした。
【0052】
<特定伸び率間の伸長に必要な応力>
JIS L 1096 8.14.1 A法に準じた伸び率の測定結果から、縦軸を基布巾当りの応力(N/cm)、横軸を伸び率(%)としたグラフを作成し、このグラフより伸び率が1.0%となる時、伸び率が3.0%となる時、伸び率が5.0%となる時の応力を読み取り、伸び率が3.0%となる時の応力と伸び率が1.0%となる時の応力の差、および、伸び率が5.0%となる時の応力と伸び率が3.0%となる時の応力の差をそれぞれ求め、前者を1.0%伸長状態から3.0%伸長状態まで追加で伸張させる際に必要な応力、後者を3.0%伸長状態から5.0%伸長状態まで追加で伸張させる際に必要な応力、とした。
【0053】
<エアバッグ展開試験>
通常出力(60Lタンク試験においてピーク圧力200kPa)、および、2倍出力(60Lタンク試験においてピーク圧力400kPa)のインフレーターを使用し、展開試験を行った。後述の方法にて作製したエアバッグにインフレーターを挿入し、評価用の台座にボルトで固定した後、インフレーター位置で重なるように左右、及び上下から折り畳み、テープ(NICHIBAN 布粘着テープ No.121)で固定した。この状態でインフレーターに点火し、バッグを展開させた。インフレーターは、通常出力試験用としてダイセル社製EH5−200型、2倍出力試験用としてダイセル社製FL−400型をそれぞれ使用した。
【0054】
評価は、展開時の内圧と試験後のバッグの状態観察により行った。通常出力のインフレーターを使用した展開試験における二次ピークの最大内圧が25kPa未満を1、25kPa以上30kPa未満を2、30kPa以上を3とした。また、2倍出力のインフレーターを使用した展開試験後のエアバッグに破れなどの異常がある場合A、異常が認められない場合をBとした。
【0055】
<展開試験用エアバッグの作製方法>
展開試験用エアバッグの作製方法を
図2〜5を用いて以下に説明する。準備した織物から、直径が670mmである円形の第1本体基布9および第2本体基布10を裁断した。
図2に示すように、第1本体基布9には、中央部に直径67mmのインフレーター取付け口11、および、前記取付け口11の中心から上方向に125mm、左右方向に115mmの位置を中心とした直径30mmの排気口12を2箇所(左右一対)に設けた。さらに、第1本体基布9には、前記取付け口の中心から上下方向に34mm、左右方向に34mmの位置を中心とした直径5.5mmのボルト固定用穴13を設けた。なお、第2本体基布10は、乗員側を向く基布であり、取付孔、排気口及びボルト固定用穴は設けられていない。
【0056】
また、補強布として、470dtex72fのナイロン66繊維を用いて作製した織密度53本/2.54cmであるノンコート基布と、織密度46本/2.54cmの基布にシリコーン樹脂を45g/m
2を塗布して得られたコート基布とを準備した。インフレーター取付け口の補強布として、外径210mm、内径67mmの環状布14aを前記ノンコート基布から3枚、同一形状の環状布14bを前記コート基布から1枚裁断した。
【0057】
環状布14a、14bには全て、第1本体基布9のボルト固定用穴13と対応する位置に、直径5.5mmのボルト固定用穴を設けた。そして、3枚の環状布14aを、インフレーター取付け口を設けた第1本体基布9に、第1本体基布9の織糸方向に対して補強布の織糸方向が45度回転するように、かつ、ボルト固定用穴の位置が一致するように重ね合わせた。ここで、
図2に示すAが第1本体基布9の織糸方向であり、Bが環状布の織糸方向である。そして、取付け口11を中心として、直径126mm(縫製部15a)、直径188mm(縫製部15b)の位置で円形に縫製した。さらに、その上から同一形状の環状布14bを環状布14aと同様に重ね合わせ、直径75mm(縫製部15c)の位置で4枚の環状布14a、14bを本体基布に円形に縫い合わせた。縫合後の本体基布9を
図3に示す。なお、環状布の本体基布への縫い付けには、ナイロン66ミシン糸を使用し上糸を1400dtex、下糸を940dtexとして、3.5針/cmの運針数で本縫いにより行った。
【0058】
次に、両本体基布9、10は、第1本体基布9の環状布を縫い付けた面が外側になるように、かつ、本体基布10の織糸方向に対して本体基布9の織糸方向が45度回転するように重ねた(
図4)。ここで、
図4に示すAが第1本体基布9の織糸方向であり、Cが第2本体基布10の織糸方向である。そして、重ね合わせた第1及び第2本体基布の外周部を縫い目線間2.4mm、縫い代を20mmとして二重環縫い2列にて縫合(縫製部15d)した。縫合した状態を
図5に示す。縫合後に取付け口11からバッグを引き出して内外を反転させ、内径φ630mmの円形エアバッグを得た。外周部縫製の縫い糸は、上記本縫いと同じ縫い糸を用いた。
【0059】
[実施例1]
経糸、緯糸にいずれも総繊度400dtex、フィラメント数136、単繊維繊度2.9dtexのナイロン66糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経および緯いずれも55本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。得られた織物は、引張強度が経774N/cm、緯639N/cm、通気量が0.36L/cm
2・min、1.0%伸長状態から3.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で15N/cm、3.0%伸長状態から5.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で16N/cmであった。得られた織物より上記の方法でエアバッグを作製した。そして、このエアバッグの展開試験の結果は、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧が26kPaであり、2倍出力のインフレーターを使用した試験においてバッグに破れ等の異常は見られなかった。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0060】
[実施例2]
経糸、緯糸にいずれも総繊度470dtex、フィラメント数136、単繊維繊度3.5dtexのナイロン66糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経および緯いずれも53本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。得られた織物は、引張強度が経766N/cm、緯798N/cm、通気量が0.39L/cm
2・min、1.0%伸長状態から3.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で17N/cm、3.0%伸長状態から5.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で17N/cmであった。得られた織物より上記の方法でエアバッグを作製した。そして、このエアバッグの展開試験の結果は、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧が29kPaであり、2倍出力のインフレーターを使用した試験においてバッグに破れ等の異常は見られなかった。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0061】
[実施例3]
経糸、緯糸にいずれも総繊度470dtex、フィラメント数144、単繊維繊度3.3dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経62本/2.54cm、緯59本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。得られた織物は、引張強度が経755N/cm、緯705N/cm、通気量が0.69L/cm
2・min、1.0%伸長状態から3.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で37N/cm、3.0%伸長状態から5.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で31N/cmであった。得られた織物より上記の方法でエアバッグを作製した。そして、このエアバッグの展開試験の結果は、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧が32kPaであり、2倍出力のインフレーターを使用した試験においてバッグに破れ等の異常は見られなかった。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4]
経糸、緯糸にいずれも総繊度560dtex、フィラメント数96、単繊維繊度5.8dtexのポリエチレンテレフタレート糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経および緯いずれも52本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。得られた織物は、引張強度が経784N/cm、緯757N/cm、通気量が0.68L/cm
2・min、1.0%伸長状態から3.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で42N/cm、3.0%伸長状態から5.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で43N/cmであった。得られた織物より上記の方法でエアバッグを作製した。そして、このエアバッグの展開試験の結果は、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧が34kPaであり、2倍出力のインフレーターを使用した試験においてバッグに破れ等の異常は見られなかった。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
経糸、緯糸にいずれも総繊度280dtex、フィラメント数36、単繊維繊度7.8dtexのナイロン66糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経および緯いずれも68本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。そして、このエアバッグ用織物から上記の方法でエアバックを作製した。得られた織物は、総繊度が低いため、引張強度が経578N/cm、緯567N/cmと低いと考えられる。また、織密度が経および緯いずれも高いため、総繊度が低いにもかかわらず、通気性は0.83L/cm
2・minであった。そのため、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧は27kPaであったが、2倍出力のインフレーターを使用した試験においては、強度不足によりバッグが破れてしまった。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
経糸、緯糸にいずれも総繊度700dtex、フィラメント数108、単繊維繊度6.5dtexのナイロン66糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経および緯いずれも42本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。そして、このエアバッグ用織物から上記の方法でエアバックを作製した。得られた織物は、単繊維繊度及び総繊度が高いため、糸1本当たりのモジュラスが高くなり、織物の厚み方向に隙間ができてしまったと考えられる。そのため、通気量が1.63L/cm
2・minと高く、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧が22kPaと低かった。但し、単繊維繊度及び総繊度が高いため、展開試験では問題はなかった。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0065】
[比較例3]
経糸、緯糸にいずれも総繊度350dtex、フィラメント数108、単繊維繊度3.2dtexのナイロン66糸を用いて平織物を作成し、精練、セットを行い、織密度が経63本/2.54cm、緯61本/2.54cmであるエアバッグ用織物を得た。そして、このエアバッグ用織物から上記の方法でエアバックを作製した。得られた織物は、総繊度が低く、また単繊維繊度も比較的低いため、1.0%伸長状態から3.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で12N/cm、3.0%伸長状態から5.0%伸長状態まで追加で伸長させる際に必要な応力が経緯平均で13N/cmと低かった。また、通常出力のインフレーターを使用した試験における二次ピークの最大内圧が22kPaと低く、2倍出力のインフレーターを使用した試験においては、展開時に拡大した糸間に高温ガスが通過したことが影響と考えられる、溶融による糸間拡大が見られた。織物特性および展開試験結果を表1に示す。
【0066】
【表1】