(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1:二酸化塩素水溶液>
本発明のある実施形態である二酸化塩素水溶液は、二酸化塩素と、pKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩と、亜塩素酸塩と、を含み、pHが4.0以上7.5以下である。本実施形態の二酸化塩素水溶液は、二酸化塩素と、pH調整剤としてpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩と、亜塩素酸塩と、を含み、pHが4.0以上7.5以下に調整されているため、pH調整剤としてリン
酸またはその塩を用いることなく二酸化塩素の濃度が安定に維持される。ここで、リン酸のpKaは2.1であるため、実施形態1の二酸化塩素水溶液には、リン酸およびその塩はいずれも含まれていない。
【0017】
(二酸化塩素)
二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)は、二酸化塩素水溶液中に溶存している溶存二酸化塩素として存在する。室温(たとえば25℃)大気中においては、二酸化塩素水溶液中の溶存二酸化塩素は、その一部がガスとして水溶液外(大気中)に放出されることにより減少するが、後述のようにpH平衡により亜塩素酸塩中の亜塩素酸イオン(ClO
2-)から補充される。
【0018】
二酸化塩素水溶液は、上記溶存二酸化塩素および上記ガスとして水溶液外に放出される二酸化塩素により、花粉、塵、皮屑、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、屋内外および食品の脱臭、防カビおよび防腐などの作用効果を発揮する。
【0019】
二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素の濃度は、特に制限はないが、二酸化塩素による上記作用効果を高くする観点から、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、二酸化塩素の濃度を安定に維持する観点から、好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは400ppm以下である。ここで、二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)の濃度は、190〜200mlのイオン交換水にヨウ化カリウム0.5gとpH7の緩衝水溶液1mlとを添加し、次に、1〜10mlの二酸化塩素水溶液を添加して、直ちに0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、滴定量Amlから、以下の式(1)
(ClO
2[ppm])=A×0.1×67450/(二酸化塩素水溶液の質量[g]) ・・・(1)
により算出する。なお、上記のpH7の緩衝水溶液は、リン酸一水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)4.57gおよびリン酸二水素一カリウム(KH
2PO
4)9.228gをイオン交換水に溶解させ全量を1000mlとしたものを使用する。
【0020】
(pKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩)
二酸化塩素水溶液に含まれるpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩(K塩)は、pH調整剤として二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素の濃度を安定に維持する観点から、多塩基酸のカリウム塩、たとえばクエン酸(pK
a1が2.90、pK
a2が4.35、pK
a3が5.69)のカリウム塩であるクエン酸カリウム、リンゴ酸(pK
a1が3.23、pK
a2が4.77)のカリウム塩であるリンゴ酸カリウム、コハク酸(pK
a1が3.99、pK
a2が5.20)のカリウム塩であるコハク酸カリウムなどが好ましく、クエン酸カリウムがより好ましい。ここで、クエン酸カリウムには、クエン酸一カリウム(クエン酸モノカリウム)、クエン酸二カリウム(クエン酸ジカリウム)、およびクエン酸三カリウム(クエン酸トリカリウム)の3種類があり、これらの中でクエン酸二カリウムおよびクエン酸三カリウムがさらに好ましい。また、カリウム塩は、無水塩であってもよく、有水塩であってもよい。
【0021】
pH調整剤として、一般的には、入手し易い観点から、弱酸のナトリウム塩(Na塩)が用いられる。発明者らは、当初、二酸化塩素と、亜塩素酸塩と、pH調整剤としてpKaが2.5以上の弱酸のナトリウム塩であるクエン酸ナトリウムを含む二酸化塩素水溶液を作製したが、当該二酸化塩素水溶液中の二酸化塩素の濃度を安定に維持することが困難である。
【0022】
pH調整剤として、pKaが2.5以上の弱酸のナトリウム塩(Na塩)に替えて、pKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩(K塩)を用いることにより、なぜ二酸化塩素水溶液中の二酸化塩素の濃度を安定に維持することが出来るのかについては、詳細は不明であるが、大気中の二酸化炭素が溶解することにより生成する炭酸を含む水溶液中においてもナトリウム塩が重炭酸塩を形成するのに対しカリウム塩は重炭酸塩を形成しないこと、ナトリウムに比べてカリウムが水に濡れやすくよりよく水和されて水溶液中でより安定に存在すること、などにより二酸化塩素水溶液のpHを所定の領域(具体的にはpHが4.0以上7.5以下の領域)により安定して維持できるためと考えられる。本発明者らは、pH調整剤として、pKaが2.5以上の弱酸のナトリウム塩に替えて、pKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩を用いることにより、二酸化塩素水溶液中の二酸化塩素の濃度を極めて安定して維持できるという当業者といえども予測していない顕著な効果を見出すことにより、本発明を完成させた。
【0023】
二酸化塩素水溶液に含まれるpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩は、水溶液中で解離してpKaが2.5以上の弱酸イオンとカリウム(K)イオンとを生成する。二酸化塩素水溶液中でイオンとして存在するカリウムの濃度は、特に制限はないが、pH緩衝効果により二酸化塩素の濃度を安定して維持する観点から、好ましくは10ppm以上であり、より好ましくは100ppm以上であり、さらに好ましくは200ppm以上であり、特に好ましくは500ppm以上であり、pH緩衝効果の向上が抑制される観点から、好ましくは10質量%(100000ppm)以下であり、より好ましくは1質量%(10000ppm)以下であり、さらに好ましくは5000ppm以下であり、特に好ましくは2500ppm以下である。ここで、二酸化塩素水溶液中に含まれるカリウムの濃度は、蛍光X線分析、原子吸光分析などにより測定する。
【0024】
(亜塩素酸塩)
二酸化塩素水溶液に含まれる亜塩素酸塩は、水溶液中でpH平衡により二酸化塩素を補充することができる亜塩素酸イオン(ClO
2-)を解離できるものであれば特に制限はなく、亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)、亜塩素酸カリウム(KClO
2)、亜塩素酸リチウム(LiClO
2)などの水素を除く第1族元素(アルカリ金属元素)の亜塩素酸塩、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO
2)
2)、亜塩素酸ストロンチウム(Sr(ClO
2)
2)、亜塩素酸バリウム(Ba(ClO
2)
2)、亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO
2)
2)などの第2族元素の亜塩素酸塩などが挙げられる。これらの中で、解離度が大きい観点から、水素を除く第1族元素(アルカリ金属元素)の亜塩素酸塩が好ましく、さらに、水和されやすい観点から亜塩素酸カリウムがより好ましいが、水素を除く第1族元素(アルカリ金属元素)の亜塩素酸塩の中で亜塩素酸ナトリウムが特に入手し易く使用上も問題がない。
【0025】
二酸化塩素水溶液に含まれる亜塩素酸塩は、水溶液中で解離して亜塩素酸イオン(ClO
2-)と対イオンとを生成する。かかる亜塩素酸イオンの濃度は、特に制限はないが、pH平衡により亜塩素酸イオンから二酸化塩素を補充して二酸化塩素の濃度を安定して維持する観点から、好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは500ppm以上であり、さらに好ましくは2000ppm以上であり、亜塩素酸塩の余剰を抑制する観点から、好ましくは10質量%(100000ppm)以下であり、より好ましくは2.5質量%(25000ppm)以下であり、さらに好ましくは1質量%(10000ppm)以下である。ここで、二酸化塩素水溶液に含まれる亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度は、上記の二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)の濃度を測定するために滴定を行った水溶液に、2〜3mlの2.5N塩酸水溶液を加えて、暗所にて5分間静置した後、再び、0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、滴定量Bmlから、以下の式(2)
(ClO
2-[ppm])=(B/4−A)×0.1×67450/(二酸化塩素水溶液の質量[g]) ・・・(2)
により算出する。
【0026】
(二酸化塩素水溶液のpH)
二酸化塩素水溶液は、pH調整剤であるpKaが2.5以上のカリウム塩のpH緩衝作用により、pHが4.0以上7.5以下である。二酸化塩素水溶液のpHは、二酸化塩素の濃度を安定して維持する観点から、4.0以上であり、好ましくは5.0以上であり、より好ましくは5.5以上であり、二酸化塩素による上記作用効果を高くする観点から、7.5以下であり、好ましくは7.0未満であり、より好ましくは6.5以下である。
【0027】
<実施形態2:二酸化塩素水溶液の製造方法>
図1を参照して、本発明の別の実施形態である二酸化塩素水溶液の製造方法は、二酸化塩素を含む第1の水溶液を準備する第1工程S1と、第1の水溶液とpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩を含む第2の水溶液とを混合することにより、pHが4.0以上7.5以下である中間水溶液を調製する第2工程S2と、中間水溶液と亜塩素酸塩を含む第3の水溶液とを混合することにより、あるいは、中間水溶液と第3の水溶液とを混合した後さらに第2の水溶液を添加することにより、pHが4.0以上7.5以下である二酸化塩素水溶液を調製する第3工程S3と、を含む。本実施形態の二酸化塩素水溶液の製造方法は、pHを所定の領域(具体的にはpHが4.0以上7.5以下の領域)に保持した状態で、二酸化塩素を含む第1の水溶液と、第1の水溶液とpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩を含む第2の水溶液と、亜塩素酸塩を含む第3の水溶液と、を順次混合することにより、二酸化塩素の濃度が安定に維持されるpHが4.0以上7.5以下である安定化二酸化塩素を効率よく製造することができる。
【0028】
(第1工程)
第1工程S1において、二酸化塩素を含む第1の水溶液を準備する。二酸化塩素を含む第1の水溶液は、溶存二酸化塩素を含む水溶液について従来公知の製造方法によって製造できる。たとえば、亜塩素酸塩(たとえば亜塩素酸ナトリウム)を含む水溶液と酸(たとえば塩酸)を含む水溶液を従来公知の方法で混合することにより、亜塩素酸塩と酸とを反応させることにより、二酸化塩素(具体的には溶存二酸化塩素)を含む水溶液を調製できる。
【0029】
第1の水溶液に含まれる二酸化塩素の濃度は、特に制限はないが、二酸化塩素の濃度を安定して維持する観点から、好ましくは500ppm以上であり、より好ましくは1000ppm以上であり、さらに好ましくは2000ppm以上であり、また、二酸化塩素の濃度を安定して維持する観点から、好ましくは5質量%(50000ppm)以下であり、より好ましくは2質量%(20000ppm)以下であり、さらに好ましくは1質量%(10000ppm)以下である。ここで、第1の水溶液に含まれる二酸化塩素の濃度は、上述の二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素の濃度を測定する方法と同様の方法により測定する。また、第1の水溶液のpHは、製造工程中のpH調整を容易にする観点から、4.0以上7.5以下であることが好ましい。なお、第1から第3の水溶液および中間水溶液のpHを測定する方法は、特に制限はなく、pHメータによる測定などの従来公知の方法を採用できる。
【0030】
(第2工程)
第2工程S2において、第1の水溶液とpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩を含む第2の水溶液とを混合することにより、pHが4.0以上7.5以下である中間水溶液を調製する。第1の水溶液と第2の水溶液とを混合する方法は、特に制限はなく、公知の混合方法を採用できる。
【0031】
第2の水溶液に含まれるpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩は、水溶液中で解離してpKaが2.5以上の弱酸イオンとカリウム(K)イオンとを生成する。第2の水溶液中でイオンとして存在するカリウムの濃度は、特に制限はないが、pH緩衝作用を高く維持する観点から、好ましくは0.1質量%(1000ppm)以上であり、より好ましくは1質量%(10000ppm)であり、さらに好ましくは2質量%(20000ppm)以上であり、pH緩衝効果の向上が抑制される観点から、好ましくは30質量%(300000ppm)以下であり、より好ましくは20質量%(200000ppm)以下であり、さらに好ましくは10質量%(100000ppm)以下である。ここで、第2の水溶液中に含まれるカリウムの濃度は、蛍光X線分析、原子吸光分析などにより測定する。また、第2の水溶液のpHは、製造工程中のpH調整を容易にする観点から、4.0以上7.5以下であることが好ましい。ここで、pKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩は、実施形態1で述べたように、クエン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、コハク酸カリウムなどが好ましく、クエン酸カリウムがより好ましい。かかるクエン酸カリウムには、クエン酸一カリウム(クエン酸モノカリウム)、クエン酸二カリウム(クエン酸ジカリウム)、およびクエン酸三カリウム(クエン酸トリカリウム)の3種類があり、これらの中でクエン酸二カリウムおよびクエン酸三カリウムがさらに好ましい。
【0032】
(第3工程)
第3工程S3において、中間水溶液と亜塩素酸塩を含む第3の水溶液とを混合することにより、あるいは、中間水溶液と第3の水溶液とを混合した後さらに第2の水溶液を添加することにより、pHが4.0以上7.5以下である二酸化塩素水溶液を調製する。
中間水溶液と第3の水溶液とを混合する方法は、特に制限はなく、公知の混合方法を採用できる。また、上記の混合液にさらに第2の水溶液を添加する方法は、特に制限はなく、公知の添加方法を採用できる。
【0033】
第3の水溶液に含まれる亜塩素酸塩は、水溶液中で解離して亜塩素酸イオン(ClO
2-)と対イオンを生成する。かかる亜塩素酸イオンの濃度は、特に制限はないが、pH平衡により亜塩素酸イオンから二酸化塩素を補充して二酸化塩素の濃度を安定に維持する観点から、好ましくは250ppm以上であり、より好ましくは1000ppm以上であり、さらに好ましくは3000ppm以上であり、亜塩素酸塩の余剰を抑制する観点から、好ましくは20質量%(200000ppm)以下であり、より好ましくは15質量%(150000ppm)以下であり、さらに好ましくは10質量%(100000ppm)以下である。ここで、第3の水溶液に含まれる亜塩素酸イオンの濃度は、上述の二酸化塩素水溶液に含まれる亜塩素酸イオンの濃度を測定する方法と同様の方法により測定する。また、第3の水溶液のpHは、製造工程中のpH調整を容易にする観点から、4.0以上7.5以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態の二酸化塩素水溶液の製造方法において、pHが4.0以上7.5以下である二酸化塩素水溶液を安定して効率よく調製する観点から、中間水溶液のpHは4.0以上7.5以下である。詳しくは、製造時においても二酸化塩素濃度の増加を抑制してを安定に維持する観点から、4.0以上であり、好ましくは5.0以上であり、より好ましくは5.5以上である。また、製造時においても二酸化塩素濃度の減少を抑制してを安定に維持する観点から、7.5以下であり、好ましくは7.0未満であり、より好ましくは6.5以下である。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
1.二酸化塩素水溶液の作製
図1を参照して、まず、第1工程S1として、加圧条件(1MPa)下で、16質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液(80ml/min)と10質量%の塩酸水溶液(77ml/min)とを反応させることにより得られる二酸化塩素水溶液にイオン交換水を加えることにより、二酸化塩素を4995ppmの濃度で含む高濃度二酸化塩素水溶液を調製した。かかる高濃度二酸化塩素水溶液5092gをイオン交換水90735gに静かに流入することにより希釈して、二酸化塩素を265ppmの濃度で含む第1の水溶液95827gを調製した。次いで、第2工程S2として、上記第1の水溶液とpH調整剤としてクエン酸三カリウムを12.6質量%(126000ppm)の濃度で含む第2の水溶液2405gとを、プロペラ撹拌により静かに混合して、pHが6.10である中間水溶液98232gを調製した。ここで、第2の水溶液は、イオン交換水3000gにクエン酸三カリウム・一水和物432gを均一に溶解させることにより得たものであった。次いで、第3工程S3として、上記中間水溶液と亜塩素酸ナトリウムを25質量%(250000ppm)の濃度で含む第3の水溶液2910gとをプロペラ撹拌により静かに混合することにより、pHが6.06である二酸化塩素水溶液101142gを作製した。なお、上記中間水溶液に上記第3の水溶液を混合した後の二酸化塩素水溶液のpHが所定の範囲(具体的にはpHが4.0以上7.5以下、好ましくは5.0以上7.0未満、より好ましくは5.5以上6.5以下)とならない場合は、さらに上記第2の水溶液を適量添加することにより二酸化塩素水溶液のpHを所定の範囲(具体的にはpHが4.0以上7.5以下、好ましくは5.0以上7.0未満、より好ましくは5.5以上6.5以下)とする。
【0036】
2.二酸化塩素水溶液における二酸化塩素および亜塩素酸イオンの濃度ならびにpHの経時変化
上記で得られた二酸化塩素水溶液300gを、容量300mlのネジキャップ付のプロピレン製容器に入れて、ネジキャップに2.5Nのトルク圧を掛けて密封した。当該密封容器を20℃の恒温槽内または50℃の恒温槽内に静置したときのそれぞれの当該容器内の二酸化塩素水溶液中の二酸化塩素(ClO
2)および亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度の経時変化を調べた。二酸化塩素水溶液中の二酸化塩素の濃度を以下のようにして測定した。
【0037】
二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)の濃度は、190〜200mlのイオン交換水にヨウ化カリウム0.5gとpH7の緩衝水溶液1mlとを添加し、次に、1〜10mlの二酸化塩素水溶液を添加して、直ちに0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、滴定量Amlから、以下の式(1)
(ClO
2[ppm])=A×0.1×67450/(二酸化塩素水溶液の質量[g]) ・・・(1)
により算出した。なお、上記のpH7の緩衝水溶液は、リン酸一水素二ナトリウム(Na
2HPO
4)4.57gおよびリン酸二水素一カリウム(KH
2PO
4)9.228gをイオン交換水に溶解させ全量を1000mlとしたものを使用した。
【0038】
二酸化塩素水溶液に含まれる亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度は、上記の二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)の濃度を測定するために滴定を行った水溶液に、2〜3mlの2.5N塩酸水溶液を加えて、暗所にて5分間静置した後、再び、0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、滴定量Bmlから、以下の式(2)
(ClO
2-[ppm])=(B/4−A)×0.1×67450/(二酸化塩素水溶液の質量[g]) ・・・(2)
により算出した。
【0039】
上記の式(1)および式(2)において、滴定に用いた二酸化塩素水溶液の質量を算出するために、当該二酸化塩素水溶液の比重を以下のようにして測定した。すなわち、メスシリンダーで当該二酸化塩素水溶液100mlを計量し、その質量を測定し、測定した質量を計量した体積で除することにより比重を算出した。算出された比重は1.02であった。また、二酸化塩素水溶液のpHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製PH/ORP METER D−72)により測定した。また、初期の二酸化塩素水溶液に含まれるカリウムの濃度は、蛍光X線分析および原子吸光分析により測定したところ、1100ppmであり、第2の水溶液のカリウムの濃度から二酸化塩素水溶液のカリウムの濃度を計算した計算値1082ppmとよく一致していた。
【0040】
20℃の恒温槽内または50℃の恒温槽内に静置したときのそれぞれの上記当該容器内の二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)および亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度、ならびに二酸化塩素水溶液のpHの経時変化を表1にまとめた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1を参照して、二酸化塩素と、pH調整剤としてのpKaが2.5以上の弱酸のカリウム塩(たとえばクエン酸カリウム)と、亜塩素酸塩と、を含み、pHが4.0以上7.5以下である二酸化塩素水溶液は、雰囲気温度20℃および50℃のいずれの静置条件下においても、二酸化塩素(ClO
2)の濃度は、その経時変化が小さく、安定に維持されていた。また、上記通常雰囲気および温多湿雰囲気の静置条件下においても、pHの低下がみられなかった。さらに、雰囲気温度50℃の静置条件下においては、亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度が低下しており、亜塩素酸塩中の亜塩素酸イオンにより二酸化塩素が補充されたものと解釈した。
【0043】
(比較例1)
1.二酸化塩素水溶液の作製
実施例1と同様にして、二酸化塩素を濃度が4995ppmの濃度で含む高濃度二酸化塩素水溶液5092gを調製し、イオン交換水90735gに静かに流入することにより希釈して、二酸化塩素を195ppmの濃度で含みpHが6.03の二酸化塩素水溶液95827gを作製した。
【0044】
2.二酸化塩素水溶液における二酸化塩素および亜塩素酸イオンの濃度ならびにpHの経時変化
上記で得られた二酸化塩素水溶液について、実施例1と同様にして、二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)および亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度、ならびに二酸化塩素水溶液のpHの経時変化を測定し、表2にまとめた。
【0045】
【表2】
【0046】
表2を参照して、pH調整剤を含まない二酸化塩素水溶液は、雰囲気温度20℃および50℃のいずれの静置条件下においても、二酸化塩素(ClO
2)の濃度は大きく低下し、pHの低下がみられた。また、二酸化塩素の解離により生じた亜塩素酸イオンの濃度に経時変化はなかった。
【0047】
(比較例2)
1.二酸化塩素水溶液の作製
まず、第1工程として、加圧条件(1MPa)下で、16質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液(80ml/min)と10質量%の塩酸水溶液(77ml/min)とを反応させることにより得られる二酸化塩素水溶液にイオン交換水を加えることにより、二酸化塩素を4995ppmの濃度で含む高濃度二酸化塩素水溶液を調製した。かかる高濃度二酸化塩素水溶液432gをイオン交換水9040gに静かに流入することにより希釈して、二酸化塩素を228ppmの濃度で含む第1の水溶液9472gを調製した。次いで、第2工程として、上記第1の水溶液とpH調整剤としてクエン酸三ナトリウムを12.6質量%(126000ppm)の濃度で含む第2の水溶液261gとを、プロペラ撹拌により静かに混合して、pHが6.10である中間水溶液9733gを調製した。ここで、第2の水溶液は、イオン交換水750gにクエン酸三ナトリウム・二水和物108gを均一に溶解させることにより得たものであった。次いで、第3工程として、上記中間水溶液と亜塩素酸ナトリウムを25質量%(250000ppm)の濃度で含む第3の水溶液288gとをプロペラ撹拌により静かに混合することにより、pHが6.10である二酸化塩素水溶液10021gを作製した。なお、上記中間水溶液に上記第3の水溶液を混合した後の二酸化塩素水溶液のpHが所定の範囲(具体的にはpHが4.0以上7.5以下、好ましくは5.0以上7.0未満、より好ましくは5.5以上6.5以下)とならない場合は、さらに上記第2の水溶液を適量添加することにより二酸化塩素水溶液のpHを所定の範囲(具体的にはpHが4.0以上7.5以下、好ましくは5.0以上7.0未満、より好ましくは5.5以上6.5以下)とする。
【0048】
2.二酸化塩素水溶液における二酸化塩素および亜塩素酸イオンの濃度ならびにpHの経時変化
上記で得られた二酸化塩素水溶液について、実施例1と同様にして、二酸化塩素水溶液に含まれる二酸化塩素(ClO
2)および亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度、ならびに二酸化塩素水溶液のpH経時変化を測定し、表3にまとめた。
【0049】
【表3】
【0050】
表3を参照して、二酸化塩素と、pH調整剤としてのpHが2.5以上の弱酸のナトリウム塩(たとえばクエン酸ナトリウム)と、亜塩素酸塩とを含み、pHが4.0以上7.5以下である二酸化塩素水溶液は、雰囲気温度20℃および50℃のいずれの静置条件下においても、二酸化塩素(ClO
2)の濃度は、その経時変化が比較例1に比べ
て小さくなったが実施例1に比べて大きくなって、安定に維持されなかった。なお、雰囲気温度20℃および50℃のいずれの静置条件下においても、pHの低下がみられなかった。また、雰囲気温度50℃の静置条件下においては、亜塩素酸イオン(ClO
2-)の濃度が低下しており、亜塩素酸塩中の亜塩素酸イオンにより二酸化塩素が補充されたものと解釈した。
【0051】
比較例2と実施例1との対比から明らかなように、pH調整剤としてのp
Kaが2.5以上の弱酸のナトリウム塩(たとえばクエン酸三ナトリウム)を用いた二酸化塩素水溶液においては二酸化塩素(ClO
2)の濃度は不安定であったが、
pH調整剤としてのp
Kaが2.5以上の弱酸のカリウム塩(たとえばクエン酸三カリウム)を用いた二酸化塩素水溶液においては二酸化塩素(ClO
2)の濃度は安定に維持されていた。
【0052】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。