【実施例】
【0097】
以下は、本開示の方法および組成物の例示である。上記に提供される一般的な説明を鑑みると、種々の他の実施形態を実施しうることが理解される。
【0098】
〔実施例1:JX-594ワクシニアウイルスの安定性およびウイルスの複製の評価〕
経動脈化学塞栓術(TACE)に使用される他の試薬との組み合わせにおける、JX-594腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの安定性を、in vitroで評価した。JX-594は、Wyeth株ワクシニアウイルスに由来する、複製可能な組換えワクシニアウイルスである。JX-594は、ヒトGM−CSF遺伝子および大腸菌βガラクトシダーゼ遺伝子(それぞれ、合成初期/後期プロモーターおよびp7.5プロモーターの制御下にある)を、当該ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子中に挿入して作出された。そのため、TK遺伝子は不活性化されている。TK遺伝子が不活性化されているため、ワクシニアウイルスの毒性は低減され、腫瘍に特異的な複製が増強されている。
【0099】
<方法>
表1にまとめられる処置群に従って、JX-594ワクシニアウイルスを、リピオドール、アドリアマイシンおよび/またはゼルフォームと混合した。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の「群」欄に記載の混合物を、細胞(HuH-7細胞株)へ添加する前に、表に記載の時間インキュベートした。ウイルス接種材料を調製するため、スクロースクッションで精製したJX-594を、最大出力で30秒間激しくボルテックスした。2.5%仔ウシ血清を含むDMEM(感染培地)で、所定量のJX-594懸濁液を希釈した。アドリアマイシン粉末(ドキソルビシン塩酸塩、SIGMA-ALDRICH, 登録商標)、リピオドール(登録商標, Guerbet)およびゼルフォーム(Alicon, 登録商標, Hangzhou Alicon Pharm SCI&TEC Co., Ltd)を同じ感染培地に溶解させて、アドリアマイシン、リピオドールおよびゼルフォームのストック溶液を調製した。第2群、第3群、第5群および第6群では、アドリアマイシン、リピオドールおよび/またはゼルフォームと共にJX-594を混合し、感染前に室温で10分間インキュベートした。第4群および第6群では、室温で1時間、リピオドールおよびアドリアマイシンと共に細胞を前処理した。その後、24ウェル組織培養プレートの各ウェルに接種材料混合物を200μL加え、ウイルスを吸着させるために、加湿CO
2インキュベーター中にて37℃で2時間インキュベートした。
【0102】
1または100の感染多重度(MOI)で、細胞を感染させた。ウイルスの吸着から2時間後、2.5%仔ウシ血清を含むDMEM 500μLで2回、細胞を洗浄した。加湿CO
2インキュベーター中で、37℃にて24時間または48時間、上記プレートをインキュベートした。ウイルス培養に使用する試薬を、それぞれの濃度および購入元と併せて表2にまとめる。HuH-7細胞は、JCRB細胞バンク(Japanese Collection of Research Bioresources, Osaka, Japan)から購入し、完全増殖培地(10%仔ウシ血清を含むDMEM)で培養した。加湿CO
2インキュベーター中で、37℃にて上記細胞をインキュベートした。
【0103】
感染から24時間後および48時間後、細胞培養上清を回収し、ウイルス産生量(pfu/ml)を測定した。感染細胞は、1mLシリンジのゴム製プランジャーを用いて擦り取ることにより回収した。凍結融解を3サイクル行うことによって、回収した細胞懸濁液を溶解させた。感染性のウイルス粒子の量を測定するために、溶解させた細胞回収物を用いて、プラークアッセイを行った。プラークアッセイのために、U-2 OS細胞を増殖させ、6ウェル組織培養プレートに播種した。ウイルス滴定を行う前の16〜20時間、加湿CO
2インキュベーター中で、37℃にて上記プレートをインキュベートした。感染前に、HuH-7細胞を無血清DMEM培地で溶解させ、希釈系列を調製した。完全増殖培地を吸引した後、無血清DMEM培地 900μLを各ウェルに加え、接種材料の希釈系列100μLを加えた。ウイルスを吸着させるために、加湿CO
2インキュベーター中で37℃にて2時間、プレートをインキュベートした。2時間後、接種材料と、1.5%カルボキシメチルセルロースを含むDMEM(2%仔ウシ血清および1%ペニシリン−ストレプトマイシン添加)3mLとを交換した。観察できるプラークが形成されるまで、加湿CO
2インキュベーター中で37℃にて3日間(72±6時間)、プレートを再度インキュベートした。3日間のインキュベーション期間の終わりに、上層を吸引し、1mLの0.1%クリスタルバイオレット溶液で1時間、U-2 OS細胞を染色した。クリスタルバイオレットを除去した後、プラークの数を数え、それぞれの溶解物の抗体価を算出した。プラークアッセイに使用した試薬を表3にまとめる。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
<結果>
感染前に、ゼルフォームと共にJX-594をインキュベートした場合は、24時間後および48時間後における細胞のウイルス産生量が増加した(
図1A〜D)。逆に、リピオドールおよび/またはアドリアマイシンと共にインキュベートした場合は、ゼルフォームの有無にかかわらず、24時間後におけるウイルス産生量が減少した(
図1AおよびB)。2%リピオドールのみ、またはアドリアマイシンおよびゼルフォームの組み合わせと共にインキュベートした場合は、48時間後における1MOIのウイルス産生量は減少した。一方、アドリアマイシンのみと共にインキュベートした場合は、1MOIおよび100MOIのウイルス産生量が減少した(
図1CおよびD)。驚くべきことにこれらの結果は、ゼルフォームが、in vitroにおいて3倍近くJX-594ウイルスの複製を増加させることを示している。逆に、アドリアマイシンおよびリピオドールは、in vitroにおけるJX-594ウイルスの複製を減少させる。先行研究により、塞栓物質を添加しても、基底放出する小型のウイルス(VSVなど)のウイルス産生量には影響がないことが示されている。このことは、塞栓物質と共に培養したときと、塞栓物質なしで培養したときで、ウイルス増殖曲線が類似していること示されている(Altomonte et al. (2008) Hepatology 48:1864-1873)。したがって、基本の塞栓物質は、大型の腫瘍溶解性ウイルスおよび/または頂端放出する腫瘍溶解性ウイルス(ワクシニアウイルスなど)と適合性を有しており、また驚くべきことに、ウイルス産生量を増大させる。理論には拘束されないが、ウイルス産生量の増大により、本開示の塞栓術を施す方法が、大型の腫瘍溶解性ウイルスおよび頂端面から出芽するウイルス(ワクシニアウイルスなど)にさえも効果的である理由が説明されうる。
【0107】
〔実施例2:血清中のJX-594ウイルス検出〕
ゼルフォームで調合したJX-594によって塞栓術を施されたウサギの、術後の末梢血中におけるウイルスの存在を評価した。
【0108】
<方法>
VX2腫瘍を移植していない3匹の正常なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)に、ゼルフォームで調合したJX-594を用いて塞栓術を施した。塞栓術療法は、蛍光透視ガイド下で行った。血管造影は通常通り、経耳法で行った。詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレを挿入して、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定した。
【0109】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを後太腿に筋肉注射した。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せた。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要であった。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛した。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒した。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入した。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞いだ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定した。
【0110】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入した。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得た。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択した。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影した。
【0111】
1×10
8PFUのPexa-Vec(SillaJen, Busan, Korea)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Alicon, China)の混合物を調製した。バイアルの半量のゼルフォームを、5mLの造影媒体および5mLの生理食塩水に溶解させ、その混合物を1mLのPexa-Vecに混合した。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施した。マイクロカテーテルで血管を選択した後、調製したPexa-Vecおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5mLを用いて塞栓術を施した。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、穿刺部位を手で圧迫した。
【0112】
所定の時刻に、末梢血試料を採取した。血液試料は耳の血管から採取し、3,000rpmで5分間遠心して、血清を分離させた。製造者の使用説明書(Blood and Body Fluid Spin Protocol)に従い、QIAamp DNA Blood Mini Kitを用いて、血清200μL中のDNAを抽出した。要約すると、20μLのプロテアーゼを1.5mLマイクロ遠心チューブに入れ、200μLの血清を加えた。200μLの溶解バッファAL(QIAGEN, Cat#19075)を加え、上記チューブを56℃で10分間インキュベートした。200μLの無水エタノールを上記試料に加え、混合物をQIAampスピンカラムに移した。上記試料を1分間6,000×gで遠心した後すぐに、付属の洗浄バッファAW1(QIAGEN, Cat#19081)およびAW2(QIAGEN, Cat#19072)でカラムを2度洗浄した。200μLの溶出バッファAE(QIAGEN, Cat#10977)中に、DNAを溶出させた。7300 Real Time PCR System(Applied Biosystems, model: PRI SM7300)を用いて、ワクシニアDNAポリメラーゼ遺伝子(E9L)に関するqPCR解析を行った。qPCR条件を表4に示す。平均ウイルス量を測定した。検出限界は5であった。
【0113】
【表4】
【0114】
<結果>
血清中におけるウイルス検出値(コピー数で表される)は全て、検出限界以下であった(表5)。表5において、NDは検出されなかった値(値=0)を表し、<LODは検出限界以下であった値を示している。これらの結果は、塞栓術療法によって送達されたウイルスは、腫瘍のみに局在し、腫瘍から他の組織または血流へと流出しないことを示している。逆に、先行研究の実証するところによれば、腫瘍内への直接注入後には、JX-594ウイルスは血流内で検出されうる。また、VSVウイルスを用いた先行研究が実証するところによれば、VSVは、ウイルス塞栓術から1日後に血流中で検出されうる。このことは、塞栓物質では小型のウイルスを充分に保持することができず、それゆえ、腫瘍外の組織へ到達できることを示している(Shinozaki et al. (2004) Mol Therapy 9:368-376)。
【0115】
塞栓術療法によって送達されるJX-594ウイルスが、体循環において検出されないことは、極めて驚くべきことである。腫瘍中へのJX-594の直接注入または小型のウイルス(VSVなど)を用いた塞栓術療法よりも、JX-594塞栓術の安全性が向上していることを、これらの結果は示している。JX-594は安全であると一般に考えられている。しかし、他の腫瘍溶解性ウイルスは、体内の他の正常組織を傷害または殺傷しうる。ウイルス塞栓術によって送達されるJX-594ウイルスは、腫瘍外へと輸送されることができず、それゆえ、正常組織を傷害または殺傷することができない。それゆえ、JX-594ウイルス塞栓術療法は、腫瘍への直接注入および小型のウイルス(VSVなど)を用いた塞栓術療法の両方に対する、より安全な代替策である。理論には拘束されないが、上述のように、小型のウイルス(VSVなど)は塞栓物質によって適切に保持されえない。
【0116】
【表5】
【0117】
〔実施例3:Pexa-Vecおよびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
JX-594腫瘍溶解性ワクシニアウイルス(PexaVec)を用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価した。
【0118】
<方法>
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いた。
【0119】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持した。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射した。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植した。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用した。
【0120】
PexaVec塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行った(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅した(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入した。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得た(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0121】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定した。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出した:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0122】
[Pexa-Vec経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施した。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定した。
【0123】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射した。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せた。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要であった。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛した。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒した。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入した。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞いだ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定した。
【0124】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入した。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得た。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択した。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影した。
【0125】
1×10
8PFUのPexa-Vec(SillaJen, Busan, Korea)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製した。バイアルの半量のゼルフォームを、5ccの造影媒体および5ccの生理食塩水に溶解させ、その混合物を1ccのPexa-Vecと共に混合した。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施した。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したPexa-Vecおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5ccを用いて塞栓術を施した。対照動物には、Trisバッファ、Pexa-Vecまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施した。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、穿刺部位を手で圧迫した。4つの処置群の組成および投与計画を表6にまとめる。
【0126】
【表6】
【0127】
<動物の観察>
表7に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察した。実験スケジュールの模式図を、
図2Aに示す。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行った。−1日目、3日目および9日目に採血した。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収した(
図2B)。
【0128】
【表7】
【0129】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化した。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行った。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。一部の動物については、ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行った。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得た。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得た。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させた。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出した。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理した。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋した。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行った。
【0130】
<結果>
造影したVX2腫瘍塊(増殖可能な病変部を有する)が、JX-594塞栓術療法施術前のCTスキャンにおいて観察された(
図3A)。組織染色した組織において、増殖可能なVX2組織(
図3A中の明部)が、正常な肝実質に囲まれている。VX2組織は、何も処置をしなくとも、40〜50%がネクローシスした。このことは、VX2腫瘍塊の自発的ネクローシスを示している。左肝動脈を介してJX-594ゼルフォーム混合物を注入する前の血管造影像中に、上記腫瘍塊は観察された(
図3C、黒丸)。
【0131】
しかし、JX-594ゼルフォーム混合物を動脈注入した後には、CT像および組織像の両方において、完全な腫瘍ネクローシスが観察された(
図3Bおよび
図3D)。JX-594塞栓術療法の施術後に観察された高度にネクローシスが進行している腫瘍組織は、ピンク色の染色が存在せず、明確に染色された核も存在しないことによって、組織像中で特定される(
図3D)。これらの結果は、JX-594塞栓術療法を一回施すことによって、腫瘍が完全に死滅することを示している。とりわけ、組織像によると、JX-594塞栓術療法施術後の腫瘍の外側に、正常で無傷の肝組織が認められる。これは、パネルの左側(
図3D)および
図3Eの全体における、濃いピンク色の染色および明確に染色された核によって特定される。これは、JX-594塞栓術療法の結果、腫瘍と正常組織との境界であっても、正常な肝組織には損傷を受けなかったことを示している。腫瘍と正常な実質との境界部分においては、最低限の炎症しか観察されていない(
図3D)。これらの結果は、JX-594塞栓術療法の強い特異性によって(ウイルスはもっぱら腫瘍を標的としている)、正常な肝組織を傷つけることなく、効果的に腫瘍をネクローシスさせられることを強調している。したがって、本開示の塞栓術を施す方法は、腫瘍を減量させるための安全かつ有効な方法であることが示される。
【0132】
理論には拘束されないが、ゼルフォーム塞栓物質は、大型のウイルスまたは極性細胞の頂端から放出されるウイルスを(ワクシニアウイルスなど)、塞栓術療法の間、適切な場所に留めるのに効果的であると考えられる。このように、腫瘍の界面において局在化が保持されることにより、今度は、腫瘍組織への送達が強化され、腫瘍組織を標的とする感染も強化される。逆に、小型のウイルスは(VSVなど)、塞栓物質を通過して拡散し、腫瘍から分散することができる。そのため、標的への送達が弱められ、腫瘍組織への感染が減少する。理論には拘束されないが、上述のように、ゼルフォームを用いて調合した場合に標的組織においてウイルスの局在化が強まることにより、本開示の塞栓術を施す方法が単に有効であるだけでなく、大型の腫瘍溶解性ウイルスおよび頂端面から出芽するウイルス(ワクシニアウイルスなど)を用いているにも関わらず、驚くことに効果的である理由が説明されうる。
【0133】
加えて、上記の結果により、本開示の塞栓術を施す方法の大いなる有効性が強調される(単回の処置によって、完全に腫瘍をネクローシスさせる)。一方、従来使用されている経動脈化学塞栓術を施す方法は、腫瘍を効果的に死滅させるために、繰り返し処置が必要とされている。
【0134】
〔実施例4:ウサギにおける経カテーテル動脈ウイルス塞栓術施術後の、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの有効性およびPK調節〕
腫瘍溶解性ウイルス治療および塞栓術と対比した経カテーテル動脈ウイルス塞栓術(TAVE)の有効性を、ウサギ腫瘍モデルにて評価する。注入したウイルスの薬物動態(PK)は、末梢血試料中のウイルス粒子数を測定することで検討する。
【0135】
<方法>
それぞれ体重が2.5〜3kgの、メスのニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究で用いる。RompunとZoletilとの2:3混合物 2.5〜3.0mLを、後太腿に筋肉注射することにより麻酔を行う。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍組織(0.1mL)を肝内側左葉の被膜下実質に移植する。そして、腫瘍が直径15〜30mmになるまで、14〜23日間インキュベートする。スクロースクッションにて精製したワクシニアウイルス株vvDD-CDSRを、本研究では用いる。ゼルフォーム粒子(SCION, Alicon, Hangzhou, China、大きさ150〜350μm)を用いて、実施例3に記載の方法に従い、塞栓術を施す。320mg/mL イオジキサノール(VISIPAQUE, GE Healthcare, Cork, Ireland)100mLを、造影剤として塞栓術中に用いる。処置群、投与量および研究計画を表8および
図4に示す。腫瘍溶解性ウイルス(OV)のみ、経動脈塞栓術(TAE)のみ、および経動脈ウイルス塞栓術(TAVE)の、3種類の処置群がある。1日目および処置直前、処置後30分、4時間、1日、7日、14日、28日および56日に採血する。
【0136】
【表8】
【0137】
採取した血液試料について、全血球算定(CBC)および生化学アッセイを行う(表9)。血液試料中のウイルス粒子を、定量PCR(Q−PCR)によって定量する。300μLの血漿を用いて、塞栓術の施術前および処置後28日に抗体測定を行う。CTスキャンを用いて、塞栓術療法の術前術後における腫瘍の大きさを測定する。試験中、表10に従って動物の観察を行う。
【0138】
【表9】
【0139】
【表10】
【0140】
〔実施例5:vvDD-CDSRウイルスおよびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
vvDD-CDSR腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた経カテーテル塞栓術療法におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価する。
【0141】
<方法>
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いる。
【0142】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持する。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射する。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植する。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用する。
【0143】
vvDD-CDSR塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行う(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅する(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入する。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得る(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0144】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定する。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出する:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0145】
[vvDD-CDSR経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施す。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定する。
【0146】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射する。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せる。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要である。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛する。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒する。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入する。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞ぐ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定する。
【0147】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入する。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得る。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択する。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影する。
【0148】
1×10
8PFUのvvDD-CDSR(Ottawa Hospital Research Institute;OHRI)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製する。バイアル1本分のゼルフォームを、10mLの生理食塩水に20mLのシリンジを用いて溶解させ、上記シリンジの末端を三方コックの一端に挿入する。10mLの造影媒体を別の10mLシリンジに調製し、三方コックの他端に挿入する。プランジャーを押し込むことにより、ゼルフォームおよび食塩水の混合物と、造影媒体とを緩やかに混合する。ゼルフォーム−食塩水−造影媒体混合物 0.3mLを1mLシリンジで採取し、さらに1ccのウイルスを混合する。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施す。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したウイルスおよびゼルフォーム粒子の混合物0.4mLを用いて塞栓術を施す。対照動物には、Trisバッファ、ウイルスまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施す。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、上記穿刺部位を手で圧迫する。4つの処置群の組成および投与計画を表11にまとめる。
【0149】
【表11】
【0150】
<動物の観察>
表12に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察する。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行う。−1日目、3日目および9日目に採血する。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収する。
【0151】
【表12】
【0152】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化する。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行う。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行う。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得る。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得る。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させる。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出す。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理する。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋する。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行う。
【0153】
〔実施例6:SJ-102ウイルスおよびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
SJ-102腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた経カテーテル塞栓術療法におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価する。
【0154】
<方法>
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いる。
【0155】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持する。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射する。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植する。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用する。
【0156】
SJ-102塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行う(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅する(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入する。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得る(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0157】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定する。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出する:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0158】
[SJ-102経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施す。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定する。
【0159】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射する。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せる。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要である。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛する。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒する。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入する。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞ぐ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定する。
【0160】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入する。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得る。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択する。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影する。
【0161】
1×10
8PFUのSJ-102(Wyeth株(ATCC)から作出)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製する。バイアルの半量のゼルフォームを5ccの造影媒体および5ccの生理食塩水に溶解させ、この混合物を1ccのウイルスと共に混合する。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施す。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したウイルスおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5ccを用いて塞栓術を施す。対照動物には、Trisバッファ、ウイルスまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施す。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、上記穿刺部位を手で圧迫する。4つの処置群の組成および投与計画を表13にまとめる。
【0162】
【表13】
【0163】
<動物の観察>
表14に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察する。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行う。−1日目、3日目および9日目に採血する。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収する。
【0164】
【表14】
【0165】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化する。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行う。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行う。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得る。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得る。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させる。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出す。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理する。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋する。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行う。
【0166】
〔実施例7:SJ-103ウイルスおよびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
SJ-103腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた経カテーテル塞栓術療法におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価する。
【0167】
<方法>
[SJ-103ウイルス]
SJ-103弱毒化ワクシニアウイルスは、Western Reserveワクシニア(ATCC VR-1354 培養組織馴化)に対して、当該ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子中に2つの選択マーカー遺伝子を挿入することにより設計された。そのため、TK遺伝子は不活性化されている。gpt選択遺伝子(イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ酵素の阻害剤に対する抵抗性を与える)は、初期/後期ウイルスプロモーターp7.5の制御下に配置した。GFP蛍光マーカー遺伝子は、合成初期/後期プロモーターの制御下に配置した。TKを分断した結果、SJ-103ウイルスは、癌細胞を選択的に標的とする。
【0168】
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いる。
【0169】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持する。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射する。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植する。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用する。
【0170】
SJ-103塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行う(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅する(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入する。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得る(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0171】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定する。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出する:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0172】
[SJ-103経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施す。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定する。
【0173】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射する。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せる。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要である。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛する。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒する。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入する。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞ぐ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定する。
【0174】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入する。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得る。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択する。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影する。
【0175】
1×10
8PFUのSJ-103(WR株(ATCC)から作出)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製する。バイアルの半量のゼルフォームを5ccの造影媒体および5ccの生理食塩水に溶解させ、この混合物を1ccのウイルスと共に混合する。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施す。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したウイルスおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5ccを用いて塞栓術を施す。対照動物には、Trisバッファ、ウイルスまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施す。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、上記穿刺部位を手で圧迫する。4つの処置群の組成および投与計画を表15にまとめる。
【0176】
【表15】
【0177】
<動物の観察>
表16に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察する。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行う。−1日目、3日目および9日目に採血する。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収する。
【0178】
【表16】
【0179】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化する。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行う。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行う。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得る。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得る。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させる。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出す。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理する。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋する。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行う。
【0180】
〔実施例8:WR-TK(-)ウイルスおよびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
WR-TK(-)腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた経カテーテル塞栓術療法におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価する。
【0181】
<方法>
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いる。
【0182】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持する。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射する。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植する。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用する。
【0183】
WR-TK(-)塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行う(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅する(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入する。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得る(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0184】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定する。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出する:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0185】
[WR-TK(-)経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施す。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定する。
【0186】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射する。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せる。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要である。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛する。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒する。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入する。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞ぐ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定する。
【0187】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入する。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得る。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択する。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影する。
【0188】
1×10
8PFUのWR-TK(-)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製する。バイアルの半量のゼルフォームを5ccの造影媒体および5ccの生理食塩水に溶解させ、この混合物を1ccのウイルスと共に混合する。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施す。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したウイルスおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5ccを用いて塞栓術を施す。対照動物には、Trisバッファ、ウイルスまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施す。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、上記穿刺部位を手で圧迫する。4つの処置群の組成および投与計画を表17にまとめる。
【0189】
【表17】
【0190】
<動物の観察>
表18に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察する。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行う。−1日目、3日目および9日目に採血する。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収する。
【0191】
【表18】
【0192】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化する。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行う。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行う。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得る。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得る。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させる。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出す。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理する。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋する。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行う。
【0193】
〔実施例9:vvDDウイルスおよびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
vvDD腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを用いた経カテーテル塞栓術療法におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価する。
【0194】
<方法>
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いる。
【0195】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持する。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射する。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植する。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用する。
【0196】
vvDD塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行う(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅する(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入する。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得る(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0197】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定する。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出する:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0198】
[vvDD経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施す。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定する。
【0199】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射する。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せる。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要である。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛する。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒する。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入する。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞ぐ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定する。
【0200】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入する。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得る。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択する。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影する。
【0201】
1×10
8PFUのvvDD(OHRI)および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製する。バイアルの半量のゼルフォームを5ccの造影媒体および5ccの生理食塩水に溶解させ、この混合物を1ccのウイルスと共に混合する。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施す。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したウイルスおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5ccを用いて塞栓術を施す。対照動物には、Trisバッファ、ウイルスまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施す。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、上記穿刺部位を手で圧迫する。4つの処置群の組成および投与計画を表19にまとめる。
【0202】
【表19】
【0203】
<動物の観察>
表20に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察する。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行う。−1日目、3日目および9日目に採血する。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収する。
【0204】
【表20】
【0205】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化する。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行う。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行う。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得る。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得る。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させる。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出す。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理する。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋する。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行う。
【0206】
〔実施例10:HSV−1およびゼルフォームを用いた経カテーテル動脈ウイルス塞栓術〕
HSV−1を用いた経カテーテル塞栓術療法におけるゼルフォームの影響を、ウサギVX2肝臓腫瘍モデルにおいて評価する。
【0207】
<方法>
[動物の準備]
それぞれ体重が2.5〜3kgの、4匹の健康なニュージーランド白ウサギ(Biogenomics, Seoul, Korea; Samtako, Oh San, South Korea)をこの研究では用いる。
【0208】
キャリアウサギの後肢に継続的に移植することによって、VX2腫瘍系統を維持する。麻酔のため、キシラジン(Rompun; Bayer Korea, Seoul, Korea)とチレタミン/ゾラゼパム(Zoletil; Virbac, Carros, France)との2:3混合物を2.5〜3mL、後太腿に筋肉注射する。腹部を正中切開して、細かく刻んだVX2腫瘍(2〜3mm
3)0.1mLを、肝内側左葉の被膜下実質に移植する。腫瘍移植から14日後、腫瘍が直径15〜30mmとなった時点で、動物を実験に使用する。
【0209】
HSV−1塞栓術療法の1日前、動物を腹臥位または側臥位にして、コンピュータ断層撮影(CT)を行う(Somatom definition AS; Siemens Medical Systems, Erlangen, Germany)。非造影CTを行い、肝臓全体を網羅する(コリメーション:1.5mm、ピッチ:1.5、再構築間隔:1mm)。造影CTのために、耳介静脈を介して、13mLの造影剤を0.5mL/秒の速度で注入する。ボーラストラッキング法によって、5秒間隔および16秒間隔で、肝動脈相スキャン像および門静脈相スキャン像を得る(Yoon et al., (2003) Radiology 229:126-31)。
【0210】
CTスキャンに際して、腫瘍の場所および大きさを測定する。腫瘍の体積(V)を、以下の式に従って算出する:V=L×S
2/2(Lは腫瘍の最長径であり、Sは腫瘍の最短径である)(Okada et al., (1995) Br J Cancer 71:518-524; Watanabe et al., (1994) Oncology 52:76-81.31)。
【0211】
[HSV−1経カテーテル動脈ウイルス塞栓術]
肝臓にVX2腫瘍を移植してから2週間後に、蛍光透視ガイド下で塞栓術療法を施す。通例に則り、血管造影は経耳法で行い、詳細な方法は以下の通りである(Chang et al., (2011) J Vasc Interv Radiol 22:1181-1187)。右左の中央耳介動脈にカニューレ挿入し、肝動脈血管造影を行うためにどちら側が好ましいかを決定する。
【0212】
麻酔のため、キシラジンとチレタミン/ゾラゼパムとの2:3混合物1.5mLを、後太腿に筋肉注射する。麻酔の後、ウサギを背臥位にして、蛍光透視台に載せる。耳介を介して動脈に達するための剃毛は、不要である。穿刺部位の短い毛を、電気バリカンで剃毛する。ウサギの両耳を殺菌用アルコールで消毒する。ウサギの片耳の皮膚を貫通させて中央耳介動脈を穿刺し、18ゲージアンジオカス(Angiocath)の針を逆行方向に挿入する。アンジオカス(Angiocath)の針のプラスチックシースを前進させた後、内部の細い針を取り除き、三方コックのキャップでプラスチックシースのハブを塞ぐ。絆創膏を貼付して、上記プラスチックシースを固定する。
【0213】
プラスチックシースのハブに改良型回転キャップを取り付けた後、画像下治療技師が、2.0Fマイクロカテーテル(Progreat, Terumo, Tokyo, Japan)および0.016インチガイドワイヤ(Meister, Asahi intec, Aichi, Co, Ltd, Japan)を中央耳介動脈に導入する。約1mLの造影剤を注入し、頭蓋外頸動脈から胸部大動脈へのロードマップを得る。下行胸大動脈内で上記ガイドワイヤを注意深く前進させ、その後、上記ガイドワイヤを操作することにより、適当な肝動脈を選択する。上記適当な肝動脈にマイクロカテーテルの先端を設置した後、造影剤を手動で注入して肝動脈を造影する。
【0214】
1×10
8PFUのHSV−1および150μm〜350μmのゼルフォーム粒子(Caligel, Alicon, China)の混合物を調製する。バイアルの半量のゼルフォームを5ccの造影媒体および5ccの生理食塩水に溶解させ、この混合物を1ccのウイルスと共に混合する。腫瘍を栄養する血管が閉塞するまで、塞栓術を施す。マイクロカテーテルでVX2腫瘍を選択した後、調製したウイルスおよびゼルフォーム粒子の混合物1.5ccを用いて塞栓術を施す。対照動物には、Trisバッファ、ウイルスまたはゼルフォームのみを用いて塞栓術を施す。マイクロカテーテルおよびプラスチックシースを中央耳介動脈から取り除いた後、上記穿刺部位を手で圧迫する。4つの処置群の組成および投与計画を表21にまとめる。
【0215】
【表21】
【0216】
<動物の観察>
表26に基づいて、生存、腫瘍の大きさ、体重および外観について、動物を観察する。塞栓術の直前(0日目)および7日目にCTスキャンを行う。−1日目、3日目および9日目に採血する。9日目(腫瘍移植から32日後)に動物を致死させ、分析のために組織を回収する。
【0217】
【表22】
【0218】
[組織イメージング]
処置動物および対照動物から回収した肝組織を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、腫瘍を可視化する。以下のパラメータの下、128セクションCTユニット(Somatom Definition AS Plus; Siemens Healthcare)を用いてCTスキャンを行う。管電圧:120kVp、実効管電流:90mA、視野:146mm、再構築厚さ:2mm(2mm間隔)。ベースライン、および血清処置開始から23日後に、CTスキャンを行う。CTプロトコルには以下が含まれている:(i)造影剤を用いない像の取得、ならびに(ii)耳の静脈を介して、2mL/秒で非イオン性ヨード造影剤8〜9mLを静脈内ボーラス注入した(イオヘキソール(Omnipaque; GE Healthcare AS)1mL当たり300mgのヨウ素、2mL/kg、2.4〜2.7gのヨウ素)後の、一連の動脈相像、静脈相像および遅延位相像の順次取得。下行大動脈を100ハンスフィールド単位で造影してから10秒後、ボーラストラッキング法で測定しながら動脈相像を得る。動脈相が終了してから10秒後に静脈相像を得て、静脈相が終了してから70秒後に遅延型相像を得る。組織試料を得るため、CO
2を吸入させることによりVX2移植ウサギを安楽死させる。続いて、腹部を外科的に切開して、肝組織全体を取り出す。当該組織を、10%ホルマリン溶液で2日間処理する。VX2塊を横断するように、肝臓全体を注意深く切断した後、組織をパラフィンに包埋する。通常通りH&E染色した後、100〜200倍の光学顕微鏡下で組織観察を行う。この実施例が実証する所によると、腫瘍溶解性HSV−1ウイルス(特に限定されないが、ICP34.5遺伝子およびICP47遺伝子を不活性化し、ヒトGM−CSF遺伝子を導入することによって改変された、HIV−1のJS-1株など)は、本願の塞栓術を施す方法による肝臓癌の処置に利用しうる(例えば、肝臓に転移した黒色腫など)。