特許第6827471号(P6827471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6827471粉末の噴射および溶融による積層造形(3Dプリント)のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827471
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】粉末の噴射および溶融による積層造形(3Dプリント)のための装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20210128BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210128BHJP
   B29C 64/141 20170101ALI20210128BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20210128BHJP
【FI】
   B29C64/209
   B33Y30/00
   B29C64/141
   B29C64/268
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-534786(P2018-534786)
(86)(22)【出願日】2016年12月31日
(65)【公表番号】特表2019-500247(P2019-500247A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2016082950
(87)【国際公開番号】WO2017114964
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年9月10日
(31)【優先権主張番号】1502753
(32)【優先日】2015年12月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510320092
【氏名又は名称】エコール・サントラル・ドゥ・ナント
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】アスコエト ジャン−イヴ
(72)【発明者】
【氏名】カラバン ジル
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−196164(JP,A)
【文献】 特開2012−125772(JP,A)
【文献】 特表平06−507679(JP,A)
【文献】 特表平06−503040(JP,A)
【文献】 特表平10−501463(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0298258(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B23K 26/00−26/70
B05B 1/00− 3/18
B05B 7/00− 9/08
C23C 4/00− 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細の間隙の流れに沿った粉末の噴射および溶融による積層造形のためのノズルが、
−外部錐体(210)と、
−内部錐体と
−および、中間錐体とからなり、
粉末が、外部錐体(210)の内側面と中間錐体の外側面との間の細環状空間内に噴射され、外部錐体は、内部先細穴(221)を有すると、前記先細穴と同軸のセンタリング装置(231)と、を有する第一部分(211)を有しており、第二部分(212)は、第一部分とともに、取り外し可能な手段(213)により錐体の軸に沿って組み立てられて、前記センタリング装置の中心となり、外部錐体の第二部分(212)は、第一部分を損傷しない定められた力の元で壊れ、または変形し得る可融性を有する部分からなることによって特徴付けられる、粉末の噴射および溶融による積層造形のためのノズル。
【請求項2】
外部錐体の第一部分(211)および第二部分(212)は、異なる材質によって形成されることを特徴とする請求項1記載のノズル。
【請求項3】
外部錐体の第二部分(212)の内部先細穴(222)は、第一部分(211)の先細穴(221)のものとは異なるテーパーからなることを特徴とする請求項1記載のノズル。
【請求項4】
第二部分の可融性部分の破裂を検出する手段を有することを特徴とする請求項1記載のノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の噴射および溶融(fusion)による積層造形(3Dプリント additive manufacturing)装置に関する。本発明は、より詳細には、“Construction Laser Additive Directe”の頭文字である所謂CLAD(登録商標)メソッドの実装のための、レーザーによる金属粉末の噴射および溶融のためのノズルに関する。CLAD(登録商標)メソッドは、沈着(堆積、蒸着 deposition)による積層造形(3Dプリント)の方法であり、沈着材料(堆積、蒸着)からなる粉末の噴射および溶融を用いており、前記沈着材料(堆積、蒸着)の溶融は、前記粉末の沈着(堆積、蒸着)点においてレーザーによって正確に実行される。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術に関し、この方法に係る実施例を図式的に示したものである。粉末の噴射および溶融のためのノズル(100)は、それ自身同心円でもある先細環状空間(tapered annular spaces)で壁間を区切られた3つの同心錐体からなる。レーザー(150)は、前記錐体の軸を中心とする穴(ボア bore)を通って内部錐体(inner cone)(130)を通過(貫通 passes through)する。該レーザーは、製造される製品(item)(190)上の材料(material)の沈着(堆積、蒸着)(192)が行われる点(point)(191)に集中する。粉末(Powder)(160)は、外部錐体(outer cone)(110)の内側面と中間錐体(intermediate cone)(120)の外側面との間の先細環状空間内に噴霧され、一方で、ガスが、前記中間錐体(120)の内側面と内部錐体(130)の外側面との間の先細環状空間に吹き込まれる。相互に関連する錐体(110、120、130)のセンタリング(centring)、およびパラメータの調整は、粉末が円錐の間隙における流れに従って円錐噴射され、そこでは、頂点が、理想的には、レーザー(150)の焦点(focal point)(191)と混同(confounded)されるという結果をもたらす。材料沈着(堆積 material deposition)点(191)と外部錐体(110)の先端との間隔(distance)(193)は、一般的には約5mmである。この小さい間隔は、特に、5つの軸の移動(置換 displacement)を実行する軌道(trajectories)に従って積層造形(3Dプリント)の操作が行われているときに、錐体(cone)と、製品(item)または機器のテーブルや締め具のような製造環境の構成要素との間の衝突(collision)のリスクを増加する。特定の環境(状態)においては、また、蓄積された粉末の堆積が、外部錐体(110)と中間錐体(120)との間の環状空間(annular space)の出口(outlet)に形成された状態でも同様に、粉末の流れの形状の変更(修正)となり、劣化した沈着(堆積)状態の原因となる。これらの状態では、外部錐体(110)の交換を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術によるこれらの修理作業(運用)は、それらが、この部品の末端のみが劣化しているにも拘らず、銅などそれ自身がしばしば高価な材質で作られる高価な部品である外部錐体の全体の交換が必要となるため、費用が掛かる。更に、その作業(運用)は、比較的長く掛かり、装置の停止、および、その期間全体を通して技能技術者を占拠する原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来技術の不利な点を克服することを目指しており、先細の間隙の流れに沿った粉末の噴射および溶融による積層造形のためのノズルに関するこの目的で、以下の構成からなる:
−外部錐体(outer cone)と、
−内部錐体(inner cone)と
−および、中間錐体(intermediate cone)とからなり、
粉末が、外部錐体の内側面と中間錐体の外側面との間の細環状空間内に噴射され、外部錐体は、前記錐体の軸に沿って取り外し可能な手段により組み立てられる2つの部分を有する。
【0005】
それゆえに、第一の錐体の第二部分は置き換えることができ、後者(latter)が劣化した時には容易に交換することができる。
【0006】
本発明は、有利なことには、実施例および以下開示される変形(例)に従って実装され、それらは、個々に、またはあらゆる技術的な展開可能な組合せに従って考察される。
【0007】
有利な実施例によれば、外部錐体は、内部先細穴(inner tapered bore)を有すると、前記先細穴と同軸の外部センタリング装置(outer centring device)と、を有し、外部錐体の第二部分(second portion)が前記センタリング装置の中心となっている。この実施例は、前記錐体の第一部分(first portion)との関係で、他のあらゆる調整を要求せずに、外部錐体の第二部分の完全なセンタリングを提供する。
【0008】
本発明に係るノズルの実施例によれば、外部錐体の第一および第二部分は、異なる材質によって形成される。すなわち、その材質は、これら2つの部分の主な機能に対応するために最適化されている。
【0009】
詳細な実施例によれば、外部錐体の第二部分の内部先細穴は、第一部分の先細穴のものとは異なるテーパー(conicity)からなる。この実施例は、ノズルの末端との関係で、流れの形状および、とりわけ流れの焦点距離を変更することを可能にする。
【0010】
有利なことには、外部錐体の第二部分は、定められた力の下では壊れ、または変形し得る可融性を有する部分(fusible portion)からなる。それゆえに、製造された製品との衝突が起きた場合に、製品が損傷しないように力が決定される。あるいは、可融性部分は、中間錐体を損傷するそれらの変形の前に壊れるように設計される。
【0011】
有利なことには、本発明のノズルは、外部錐体の可融性部分の破裂を検出する手段を有する。すなわち、深刻な衝突が起きた場合に、製造された製品の品質が回復できないほどに低下しないように、錐体の破裂が検知され、積層造形(3Dプリント)が中断される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、本発明は、その好ましい実施例に沿って、以下に開示されるものであり、それら実施例によって何らの限定をするものではなく、以下の図1および図2において参照されるものである:
【0013】
図1図1は、従来技術に関し、断面透視図によるCLADメソッドを用いた3つの錐体を示す;
【0014】
図2】そして、図2は、図1と同じ部分の正面図であって、本発明に係る噴射ノズルの外部錐体そのものの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本発明に係るノズルの外部錐体(210)の実施例であり、2つの部分(211、212)を有する。この実施例によれば、外部錐体(210)の第一部分(211)は、積層造形(3Dプリント)工法の間に噴射される粉末の摩耗作用に耐え得るスチールからなる。この第一部分は、リング状(輪)に形成されており、第一の(最初の)テーパーによる先細穴(221)を有し、末端がセンタリング部分(231)からなる。この実施例によれば、前記部分(231)は、シリンダ状の雄部からなる。あるいは、このセンタリング部分(231)は、前記第一部分(211)の端部にシリンダ状または先細のカウンタボア(座ぐり)を有する。第一の錐体の第二部分(212)は、第一部分のセンタリング部分(231)と協調することを可能にするセンタリング部分(232)を有する。第二部分は、先細穴(222)を有し、この実施例によれば、延伸する第一部分の先細穴(221)と同じテーパーである。2つの部分(211、212)のセンタリングのための手段(231、232)は、2つの先細穴の同軸性(coaxiality)を提供する。別の実施例(図示せず)によれば、2つの孔(221、222)のテーパーは、例えば、ノズルの出口(outlet)における流れの形状およびその焦点(focal point)を変更(修正)するように、大きく異なっている。
【0016】
この実施例によれば、外部錐体の第二部分(212)は、ビームが直接または反射によって前記第二部分の壁面に当たり得る場合において、レーザーに対する感度を制限するため、銅製からなる。実施例によれば、この第二部分の厚さは、製造された製品または装置の一部に対する錐体のこの部分(212)の衝突の場合、対向・対立する部分が損傷しないで前記部分(212)が変形するように、選択される。
【0017】
図示しない他の実施例によれば、本発明の錐体の第二部分(212)の全部または一部が、例えば、セラミック(陶磁器製)のような砕けやすい材質から構成される。この実施例では、該当する場合(実現するとすれば where applicable)、この第二部分は、噴射された金属粉末の通過に起因する摩耗に良く耐えること、および、他方で、定められた力のもとで壊れることを許容している。すなわち、それ自体が過度に変形することにより、衝突時に前記第二部分(212)が中間錐体を損傷することを予防している。有利なことには、手段(図示せず)が、可融性部分の破裂を検出することにより、衝突時に機器を停止することを可能にしている。これらの手段は、例えば、変形ゲージ(deformation gauge)によって形成され、錐体の第二部分(212)の可融性部分、または可融性部分と前記第二部分の残り(部分)との間に固定装備される。これらの手段は、前記第二部分に予め設置され、製造機器のスピンドル(軸 spindle)上のコネクターに対する電気接続(electrical connection)手段を有する。
【0018】
この実施例によれば、外部錐体(210)の第二部分(212)は、前記錐体の第一部分(211)のシリンダ状のねじ部(cylindrical threaded portion)にかみ合わされるナット(213)によって、前記錐体の第一部分(211)に固定される。この実施例によれば、ねじ部は、この第一部分の雄状のセンタリング装置(部分)(231)の直径より大きい直径からなる。別の方法として、錐体の第二部分(212)は、第一部分の末端において複数のねじ(ボルト)によって固定される。更に別の方法として、錐体の第二部分は、第一部分に、例えば、2つの部分(211、212)のセンタリングと締め付けの両方を相互に提供する先細ねじ部(tapered threading)によってねじ留めされる。
【0019】
上述の説明および実施例は、本発明が目標とする目的を達成することを示しており、特に、ノズルの外部錐体における2つの分離可能な部分の構造から利益が得られ、衝突した場合のノズルの交換および修理にかかるコストを削減するだけでなく、粉末の噴射による積層造形(3Dプリント)の工法・方法の実施や安全性において、追加の利益を提供する。

図1
図2