(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6827474
(24)【登録日】2021年1月21日
(45)【発行日】2021年2月10日
(54)【発明の名称】2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを含有する安定な固形医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20210128BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20210128BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20210128BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20210128BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20210128BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20210128BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20210128BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20210128BHJP
【FI】
A61K31/122
A61K47/12
A61K47/36
A61K47/42
A61K9/48
A61P3/00
A61P27/02
A61P31/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-540857(P2018-540857)
(86)(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公表番号】特表2019-504846(P2019-504846A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2017052805
(87)【国際公開番号】WO2017137468
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2020年2月5日
(31)【優先権主張番号】UB2016A000650
(32)【優先日】2016年2月11日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518272751
【氏名又は名称】ディフアルマ エス.エー.
【氏名又は名称原語表記】DIPHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンティ,キアーラ
(72)【発明者】
【氏名】ジアミラーリ,サルバトーレ アゴスティーノ
(72)【発明者】
【氏名】マッカーリ,ジュゼッペ
【審査官】
小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】
特表平06−508628(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/181292(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/101794(WO,A1)
【文献】
特表2012−508186(JP,A)
【文献】
特表2016−532657(JP,A)
【文献】
特表2014−534197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬有効成分として2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン、並びにα化でんぷん及びステアリン酸を含有する、安定な固形医薬製剤。
【請求項2】
ステアリン酸の量が、成分の全体量の0.5〜5%w/wである、請求項1に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項3】
ステアリン酸の量が、前記成分の全体量の1%w/w±10%である、請求項2に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項4】
2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの化学的完全性が、25℃で3か月貯蔵したのち、少なくとも95%であり、好ましくは25℃で3か月貯蔵したのち、少なくとも97%であり、さらに好ましくは25℃で3か月貯蔵したのち、少なくとも98%であり、さらに好ましくは25℃で3か月貯蔵したのち、少なくとも99%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項5】
主な不純物の量が、40℃/75%RHで3か月貯蔵したのち、0.20%を超えない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項6】
2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの量が、典型的に2mg、5mg、10mg、または20mgであって、ゼラチンカプセルの形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項7】
前記ゼラチンカプセルが、ハードゼラチンカプセルである、請求項6に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項8】
4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼの阻害が、結果として前記患者の健康を改善する、疾病の治療において使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項9】
治療するべき前記疾病は、眼皮膚/眼球白子、微生物感染、下肢静止不能症候群、アルカプトン尿症、及び遺伝性チロシン血症タイプ1からなる群から選択される、請求項8に記載の安定な固形医薬製剤。
【請求項10】
治療するべき前記疾病は、遺伝性チロシン血症タイプ1である、請求項9に記載の安定な固形医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解しやすく、特に温度誘導された化合物、及び少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤を含む、高度に安定な薬剤投与形態に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ニチシノンまたはNTBCとしても知られる、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)阻害剤2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを考える。
【発明の概要】
【0003】
NTBCは、Orfadin(登録商標)というブランド名で、Swedish Orphan Biovitrum International ABより市販されている薬剤で、成人及び小児患者における遺伝性チロシン血症タイプ1(HT−1)の影響を緩和するために使用される。これはFDA及びEMAにより、2002年1月及び2005年2月にそれぞれ認可されたものである。
【0004】
HT−1病は、チロシン異化経路フマリルアセト酢酸ヒドラーゼの最終酵素の欠損による。NTBCは、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)の競合的阻害剤で、フマリルアセト酢酸ヒドラーゼに先行する酵素である。HT−1を有する患者において、チロシンの通常異化を阻害することによって、NTBCは、毒性のある中間体、マレイルアセト酢酸及びフマリルアセト酢酸の蓄積を防ぐ。これら中間体は、HT−1を有する患者において、5−アミノレブリン酸の蓄積につながるポルフィリン合成経路を阻害している前者、毒性のある代謝物質、スクシニルアセトン及びスクシニルアセト酢酸に転換される。
【0005】
さらなる疾病の治療におけるNTBCの有用性も、記述されている。包括的でないリストを、本明細書の以降に報告する。
【0006】
WO2011106655は、眼皮膚/眼球白子を患う対象において、チロシン血漿濃度増加のための方法を報告する。この方法は、1日約0.1mg/kg〜約10mg/kgの範囲内のNTBCを含む、医薬的に許容可能な組成物を対象に投与することを含む。
【0007】
US8354451B2は、治療的に有効量のNTBCを対象に投与する手段によって、真菌または細菌による微生物感染と闘う新しい方法を報告する。
【0008】
WO2010054273は、下肢静止不能症候群(RLS)の治療及び/または予防のためのNTBC含有組成物及び方法を開示する。
【0009】
EP1853241B1は、神経変性疾患、とりわけパーキンソン病の治療におけるNTBCの使用を主張する。
【0010】
Introne W.J.らは、アルカプトン尿症の治療におけるニチシノンの有用性を開示した(Introne W.J.ら、Molec.Genet.Metab.、2011、103、4、307)。実際の製剤(すなわち、Orfadin(登録商標)カプセル)の問題のひとつは、その化学的安定性であることはよく知られている。実際に、たとえOrfadin(登録商標)が2℃〜8℃の範囲の温度で、冷蔵庫に貯蔵されなければならないとしても、その有効期間は18か月だけである。開封後の使用安定性は、25℃を超えない温度で2か月間しかなく、その後は廃棄しなければならない。このような貯蔵条件は、費用の点からも、また患者のための物流の点からも、薬の流通系統に影響があることは明らかであろう。したがって、物流供給系統の見地と、患者コンプライアンスの見地の両方から、より安定な製剤が至急必要である。
【0011】
HPPD作用の製品が関係する(例えば、HT−1)疾病の治療におけるOrfadin(登録商標)の有用性は、EP0591275B1に明白に記載されている。NTBCの合成も、本特許に記載されている。本明細書に記載された適切な医薬製剤の中で、出願者は、錠剤、甘味入り錠剤、ハードまたはソフトカプセル、水性または油性懸濁剤、乳剤、分散性散剤または顆粒剤、シロップ剤またはエリキシル剤などの、様々な従来の組成物を挙げた。非経口製剤(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、または血管内投薬のための無菌の水性または油性溶液)、または坐薬のような直腸製剤も開示される。EP0591275B1は、製剤の具体例を3つ報告し、そのうち2つは錠剤で、1つはカプセル形態であった。後者の投薬形態は、2%の有効成分、0.3%の潤滑剤(すなわち、ステアリン酸マグネシウム)、残りは希釈剤として存在するラクトース欧州薬局方を含有した。これらのカプセルは、次いでインビボ研究に使用された。
【0012】
Cycle Pharmaceuticals LTDの名前で出願されたWO2015101794は、NTBCの錠剤製剤を報告し、この製剤はOrfadin(登録商標)のカプセル製剤に関して、より大きな安定性を与えると主張している。出願者はまた、熱安定性問題において存在する、現在入手可能な市販品の主な欠点のひとつにも言及しており、特に、6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キサンテン−1,9−ジオンまたはオキソテトラヒドロキサントンという名の望まない環化生成物が形成されることによる。出願者はさらに、潤滑剤ステアリン酸マグネシウム(Orfadin(登録商標)のカプセル製剤には存在しない)を、NTBCの不安定性を加速させる要因として特定した。出願はさらに、製剤中にはいかなる金属イオンまたはいかなるでんぷんも使用しないよう示唆した。特に、出願者は、でんぷんが望まない環化不純物オキソテトラヒドロキサントンの形成を促進すると開示した。本特許出願はまた、錠剤製剤が好ましい製剤であるとも示唆した。潤滑剤としては、20〜22個の炭素原子を含有する脂肪酸が好ましく、より好ましくは、その組成物の脂肪が、グリセロールジベヘネート(例えば、Compritol(登録商標)888)から成るということである。ラクトースに関するこの成分は、望まない環化生成物の形成を防ぎつつ、製剤の安定性を高めることもできると示唆した。
【0013】
Swedish Orphan Biovitrum International ABの名前で出願されたWO2012177214は、安定剤としてクエン酸緩衝剤を含有するニチシノンの経口液体懸濁液を開示する。
【0014】
Biotie Therapies Inc.の名前で出願され、今は放棄されたWO2013181292は、長期の貯蔵にも安定すると主張されたニチシノンの医薬製剤を開示した。仮定の安定剤の長いリストの中で、出願者は、クエン酸、ピルビン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸、シス−アコニット酸、イソクエン酸、及びα−ケトグルタル酸からなる群から選択される特に好ましい有機酸として、ジカルボキシル酸及びトリカルボキシル酸を示唆する。様々な成分の均一分布を可能にするために、湿式造粒から得られる錠剤製剤の安定研究は、加速された条件の下、実施されてきた。出願者は、クエン酸の存在が、製剤の安定化を可能にすると示唆した。
【0015】
しかし今日まで、数々の努力にもかかわらず、NTBC製剤は、患者にとって必要な安定性及び/またはコンプライアンス基準を完全には満たしていない。したがって、長期に安定な製剤の医薬的必要性は満たされていない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、有効成分として2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン、並びに1つの安定剤及び少なくとも1つの賦形剤を含む、高安定で、耐久的にも安定な医薬組成物に関する。
【0017】
理論的に如何様にも結びつけられる意図はないが、製剤の改善された安定性は、ステアリン酸の存在によるものと思われる。ステアリン酸を安定剤としてニチシノンを製剤化することが、室温で長期間でも医薬組成物に驚くべき高安定性を与えることが、今わかった。
【0018】
好ましい実施形態では、そのような製剤は、賦形剤としてα化でんぷんもしくはラクトース、またはその混合物を含む。
【0019】
より好ましい実施形態では、そのような製剤は、ハードゼラチンカプセルの形態である。
【0020】
製剤において、潤滑剤としてのステアリン酸の有用性は長く知られてはいたが、ニチシノンの安定剤としてのその使用は、これまで言及も示唆もされてこなかった。さらに、先行技術で示唆されたものとは反対に、医薬組成物内にステアリン酸も存在していたならば、希釈剤としてのでんぷんは、ニチシノンの完全性に適合しない。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態では、α化でんぷんを希釈剤に使用し、ステアリン酸を安定剤として使用する。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態では、ラクトースを希釈剤として使用し、ステアリン酸を安定剤として使用する。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ラクトースとα化でんぷんとの混合物を希釈剤として使用し、ステアリン酸を安定剤として使用する。このような製剤において、α化でんぷん/ラクトースの比率は、好ましくは5/95〜95/5の範囲にわたる。
【0024】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、それぞれの成分の重量比の割合は次のように、2〜5%、93〜97%、及び0.5〜5%であり、このような割合はそれぞれ、ニチシノン、希釈剤(すなわちα化でんぷんまたはラクトース)、及びステアリン酸に関する。
【0025】
本発明のより好ましい実施形態では、ステアリン酸は、1%w/w±10%まで濃縮して存在する。
【0026】
本発明のさらなるより好ましい実施形態では、それぞれの成分の重量比の割合は次のように、3.57%、95.34%、及び1.09%であり、このような割合はそれぞれ、ニチシノン、希釈剤(すなわちα化でんぷんまたはラクトース)、及びステアリン酸に関する。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明の医薬製剤対象が、有効成分ニチシノンの量に関して、4つの異なる強度になり得、その強度は、2mg、5mg、10mg、及び20mgである。
【0028】
本発明の医薬製剤は、疾患の治療のために、その4−ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ阻害特性に起因する薬剤として有用であり、そのような阻害が、結果として患者の健康を改善することになる。特に、HT−1、または眼皮膚/眼球白子、または真菌または細菌による微生物感染、または下肢静止不能症候群、または神経変性疾患、とりわけパーキンソン病を患う患者を、治療することができる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、医薬製剤は、HT−1を患う患者を治療するためである。
【0030】
一般に、本発明の医薬製剤は、「治療有効量」で投与される。実際に投与される医薬製剤の量は、治療するべき状態、患者が現在摂取しているその他の潜在的薬剤、年齢、性別、体重、及びそれぞれの患者の反応、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況を鑑みて、一般に医師によって決定される。
【0031】
一般に、有効用量は、1日当たり0.5 mg/kg〜2 mg/kgであり、好ましくは、1日当たり1 mg/kg 〜 1.5 mg/kgである。このような1日の用量は、2つの等しい用量で分けてもよく、毎日ほぼ同じ時間に1日2回摂取してもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、1日の用量は2つの等しい用量に分けられる。
【0033】
用量調整は、尿スクシニルアセトン及びα−フェトプロテインを監視したレベル、ならびに肝機能検査値に従ってなされる。
【0034】
HT−1患者は、チロシン及びフェニルアラニンを制限された食餌療法中である一方で、本発明の医薬製剤で治療中であることが理解されよう。
【0035】
表現「%w/w」は、医薬製剤内に重量比ベース(すなわち、1g/100gが1%w/wに相当)で存在する物質の割合を指す。
【0036】
表現「ほぼ同じ時間」は、通常の投与時間の前後±30分を意味する。
【0037】
表現「高安定」及び/または「耐久的にも安定」は、25℃及び60%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの有効成分の化学的完全性が、少なくとも95%であることを意味する。
【0038】
1つの実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの該化学的完全性は、少なくとも96%である。
【0039】
別の実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの該化学的完全性は、少なくとも97%である。
【0040】
好ましい実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの該化学的完全性は、少なくとも98%である。
【0041】
さらなる好ましい実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの該化学的完全性は、少なくとも99%である。
【0042】
本発明の別の実施形態は、25℃及び60%RHで3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性を熟考する。
【0043】
該実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも95%である。
【0044】
好ましい実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも96%である。
【0045】
別の好ましい実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも97%である。
【0046】
さらなる好ましい実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも98%である。
【0047】
さらなるより好ましい実施形態では、25℃及び60%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも99%である。
【0048】
本発明の別の実施形態は、40℃及び75%RHで1か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性を熟考する。
【0049】
該実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも95%である。好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも96%である。
【0050】
別の好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも97%である。
【0051】
さらなる好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも98%である。
【0052】
さらなるより好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を1か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも99%である。
【0053】
本発明の別の実施形態は、40℃及び75%RHで3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性を熟考する。
【0054】
該実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも95%である。好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも96%である。
【0055】
別の好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも97%である。
【0056】
さらなる好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも98%である。
【0057】
さらなるより好ましい実施形態では、40℃及び75%RHで薬剤剤形を3か月貯蔵したのちの薬剤剤形の化学的完全性は、少なくとも99%である。
【0058】
ストレスのかかった貯蔵条件下で、3つの不純物が検出され、4−(トリフルオロメチル)サリチル酸、6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キサンテン−1,9−ジオン、及び1,3−シクロヘキサンジオンであると化学的にみなされた。これらはさらに、Imp−1、Imp−2、及びImp−3として、言及される。このような不純物は、WO2015101794内に以前に報告されている。
【0059】
40℃及び75%RHで6か月などの短期間試験することは、25℃(すなわち室温)で、より長い期間(15〜18か月)安定性を示すと考えられる、と提示される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1A】
図1Aは、加速された安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例1〜3からのImp−2の量である。
【
図1B】
図1Bは、加速された安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例4〜9からのImp−2の量である。
【
図2A】
図2Aは、加速された安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例1〜3からの総不純物の量である。
【
図2B】
図2Bは、加速された安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例4〜9からの総不純物の量である。
【
図3A】
図3Aは、長期の安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例1〜3からのImp−2の量である。
【
図3B】
図3Bは、長期の安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例4〜9からのImp−2の量である。
【
図4A】
図4Aは、長期の安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例1〜3からの総不純物の量である。
【
図4B】
図4Bは、長期の安定性条件の中で、3か月間にわたる実施可能例4〜9からの総不純物の量である。
【実施例】
【0061】
表1に開示されるとおり、9つの医薬製剤は、実施可能例1〜9で報告されるとおりに試験された。
【0062】
【表1】
使用された材料
【0063】
活性医薬成分
EP0805791B1に記載される手順に従って、ニチシノンが得られた。その化学的純度(すなわち、99.95%)を、235nmの波長検出で、HPLCの手段により、評価した。
【0064】
希釈剤
α化でんぷん:(Starch 1500(登録商標);Colorcon、 Eighenmann & Veronelli)ラクトース一水和物^(Lactopress(登録商標)噴霧乾燥;DFE Pharma)無水リン酸水素カルシウム(DLCAFOS(登録商標)、Budenheim)
【0065】
潤滑剤
ステアリン酸(ステアリン酸50、Carlo Erba)ステアリン酸マグネシウム(vegetal grade、 Ligamed MF−3−V、 Peter Greven Nederland)
【0066】
実施可能例
医薬製剤
例証した実現可能性医薬製剤を得るための一般的な手順を、本明細書の以下に記載する。
【0067】
ニチシノン(2.5mg)及び希釈剤(269.75mg)を、Turbula(登録商標)内で、23rpmで3分間混合した。潤滑剤(2.75mg)を次いで加え、同じ混合速度(すなわち、23rpm)で、もう1分混合を続けた。潤滑剤を加えない場合は、希釈剤の量は272.5mgに調整し、混合ステップの長さは4分に調整した。
【0068】
次いで、ハードゼラチンカプセルサイズ2を、半自動Zuma OSZ/150充填機の手段によって、2.5mgのニチシノン、1%w/wの潤滑剤(もし存在すれば)、残りは希釈剤材料を含有する、275mgの混合物で充填した。
【0069】
貯蔵条件
カプセルは、以下に報告するとおり、3つの異なる環境条件(すなわち、温度及び相対湿度(RH))で貯蔵した。
・条件1(冷蔵した安定性試験)
5℃/
・条件2(長期安定性試験)
25℃/60%RH
・条件3(加速された安定性試験)
40℃/75%RH
【0070】
以下に報告するとおり、様々な時点での医薬製剤の不純物特性を十分に評価するための適切な分析方法が開発された。
【0071】
実施可能例の医薬製剤は、適切な成分を選択して、本明細書の上記に報告した一般的な手順を用いて得られた。実現可能性試験の間、不純物の総量が検討され、結果を
図1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A及び4Bに表す。
【0072】
分析方法
溶解相(DP):CH
3CN/H
2O:1/1
カラム:Sunfire C18 5μm、250x4.6mm
流量:1ml/分
注入量:10μl
波長検出:235nm
カラム温度:35℃
不純物1及び2(すなわちImp−1及びImp−2)の溶出条件
溶出剤A:CH
3CN
溶出剤B:CH
3CO
2NH
4 0.02M
勾配−1:
【0073】
【表2】
実施時間:35mn、実施後:11分
不純物3(すなわち、Imp−3)の溶出条件
溶出剤C:CH
3CN
溶出剤D:H
3PO
4 0.1%
勾配−2:
【0074】
【表3】
実施時間:25分、実施後:1分
【0075】
溶解方法
試験溶液
分析する50mgの製剤化されたニチシノンを、50mlのメスフラスコ内の2mlのCH3CNに溶解する。該溶液を、次いで必要とされる量のDPを追加することにより、50mlに調整する。
【0076】
基準溶液A
10mgのニチシノン(標準試料)及びそれぞれ15mgのImp−1及びImp−2を、100mlのメスフラスコ内の2mlのCH
3CN内に溶解する。該溶液を、次いで必要とされる量のDPを追加することにより、100mlに調整する。こうして得られた1mlの溶液を、次いで99mlのDPで100mlまで希釈する。
【0077】
基準溶液は、0.10%のニチシノン及び、0.15%のそれぞれの不純物を含有する。
【0078】
基準溶液B
15mgのImp−3を、100mlのメスフラスコ内で100mlまでDPで溶解する。こうして得られた1mlの溶液を、次いで99mlのDPで100mlまで希釈する。
【0079】
基準溶液は、0.15%のImp−3を含有する。
【0080】
二塩基性リン酸カルシウムを希釈剤(すなわち、実施可能例1〜3)として含有する製剤は、40℃/75%RHで、または25℃/60%RHでも、たとえより低い範囲内でも、1か月後でさえ、環化した不純物の形成を急速に許容するため、結果として不安定であった。これを、
図1A及び3Aそれぞれに、強調している。二塩基性リン酸カルシウム含有製剤は、潤滑剤が存在しない場合、環化分解生成物を形成しにくく、オキソテトラヒドロキサントン(すなわち、
図1A)の形成に関して、ステアリン酸はむしろマイナス効果を示していることに注目するのは興味深い。貯蔵条件中に、形成される任意の不純物を探すとき、実施可能例1〜3のいずれの製剤も適切でないことは明らかである。というのも、40℃/75%RH(すなわち、
図2A)で、3か月後には、約40〜50%の不純物が形成される一方で、25℃/60%RH(
図4A)で、3か月後には、10%を超えるニチシノンが分解される。
【0081】
ラクトース(すなわち、実施可能例4〜6)を含有する製剤は、ステアリン酸も含むとき、結果としてきわめて安定する。ステアリン酸マグネシウムは、加速された及び長期の安定性試験(すなわち、それぞれ
図1B及び3B)の両方において、オキソテトラヒドロキサントンの形成を考えるとき、悪影響を有した。この傾向は、どのような条件が用いられても(すなわち、
図2B及び4B)、貯蔵中に形成されるすべての不純物を考えるときにも、観察することができる。驚くべきことに、ステアリン酸の存在は、ニチシノン/ラクトース製剤(表1B、2B、3B、及び4Bにおける実施可能例6対実施可能例4及び5)の安定性を大幅に改善した。
【0082】
α化する前のでんぷん(すなわち、実施可能例7〜9)を含有する製剤は、ステアリン酸も含むとき、結果としてきわめて安定し、オキソテトラヒドロキサントンの形成は非常に限定される。実際、驚くべきことに、オキソテトラヒドロキサントンの量は、加速された安定性実験において(
図1Bの実施可能例6対実施可能例5)、11倍以上も低減した。その他の不純物のレベルも、加速された安定性条件(すなわち、40℃/75%RHで3か月後に0.34%)においてさえも、きわめて低いレベルにとどまった。
【0083】
実施可能例6及び9の有望な製剤から始めて、さらなる改善された安定性特性を伴う製剤を特定するための追加実験が行われた。実施可能例9から得られた、実施例1〜3に例示する化学組成物は、きわめて高い安定性特性を示した。
実施例1〜3
【0084】
【表4】
【0085】
混合
大型バッチのために、ニチシノンを、希釈剤の総量の25%とともに低密度ポリエチレン(LDPE)バッグに入れ、1分間、10rpmで混合して、「プレミックス1」を得る。その後、希釈剤の総量の別の25%を「プレミックス1」に加え、以前と同じ条件で再び混合して、「プレミックス2」を得る。後者を次いで、希釈剤の総量の残り50%とともに双円錐ミキサー内に移し、次いでステアリン酸を加える。混合物全体を、次いで10分±2分、混合する。
【0086】
カプセル充填
カプセルサイズ2(10mg強度のカプセルに対して。2及び5mg強度のカプセルに対してはサイズ3)が、自動IN−CAP充填機(Bonapace)を用いて、充填された。
【0087】
溶解試験
このような試験が、脱イオン水内にKH
2PO
4及びNaOHを溶かして作成された、pH6.8の緩衝溶液900mlを含有する容器内で実施された。
【0088】
安定性
10mg強度のカプセル(すなわち、実施例1)の安定性が、様々な時点での医薬製剤の不純物特性を十分に評価するために分析された。使用された分析方法は、以下に報告する。
【0089】
分析方法
溶解相(DP):CH
3CN/MeOH:65/35
カラム:Phenomenex Synergi 4μm(商標)Hydro−RP 80A 100x4.6mm
流量:1.5ml/分
注入量:10μl
波長検出:255nm及び310nm
カラム温度:30℃
溶出剤A:CH
3CN
溶出剤B:pH3のアセテート緩衝溶液
勾配:
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
【表8】
【0094】
表2〜4に報告された結果から、当業者には理解されるとおり、このような製剤は、貯蔵条件と関係なく、長期間非常に安定している。さらに、通常の不純物、6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キサンテン−1,9−ジオン(すなわち、Imp−2)は、0.05%未満である。