(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂封止工程と前記レーザ光照射工程との間に、又は、前記レーザ光照射工程と前記メッキ工程との間に、前記樹脂材における前記リードフレームの前記溝部とは反対側の表面にレーザマーキングを行なう工程をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】準備工程において準備されるリードフレームと、複数の半導体チップとを示す平面図である。
【
図2】
図1中のII−II線に沿った矢視断面図であり、溝部が形成されたリードフレーム(ダイパッド)上に半導体チップがボンディングされた状態を示している。
【
図3】樹脂封止工程が行なわれた状態を示す断面図である。
【
図4】レーザ光照射工程を行なう前に保護フィルムが除去された状態を示す断面図である。
【
図5】レーザ光照射工程を行なっている様子を示す断面図である。
【
図6】メッキ工程が行なわれた後の様子を示す断面図である。
【
図7】切断工程を行なっている様子を示す断面図である。
【
図8】実施の形態の製造方法によって得られた半導体装置を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態の製造方法によって得られた半導体装置が実装されている様子を示す断面図である。
【
図10】(A)〜(E)は、比較例1における半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図11】比較例1における半導体装置の製造方法によって得られた半導体装置が実装されている様子を示す断面図である。
【
図12】(A)〜(F)は、比較例2における半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。以下の説明において同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態の半導体装置の製造方法は、準備工程、樹脂封止工程、レーザ光照射工程、メッキ工程、および切断工程を含む。以下順に説明する。
【0010】
(準備工程)
図1は、準備工程において準備されるリードフレーム1と、複数の半導体チップ6とを示す平面図である。リードフレーム1は、銅などの金属からなる。リードフレーム1は、行列状に配列された複数のダイパッド2と、各ダイパッド2の周囲(四方)に配置された複数のリード3と、各ダイパッド2の四方に配置された複数のリード3を取り囲むタイバー4と、を含む。
図1には、各ダイパッド2上に半導体チップ6が配置されている状態が示されている。
【0011】
タイバー4は、リードフレーム1において格子状に形成されている。リードフレーム1には、タイバー4に沿って延びる溝部5が予め形成されている。溝部5は、リードフレーム1における半導体チップ6が搭載される側とは反対側の表面に形成されており(
図2参照)、溝部5の延在方向に対して直交する方向において溝幅W1を有している。溝幅W1は、例えば0.40mm〜0.50mmである。溝部5は、リードフレーム1を貫通するものではなく、例えば、リードフレーム1の厚みの半分の溝深さを有し、リードフレーム1をエッチング(ウェットエッチング)することにより形成可能である。なお、溝部5の溝幅W1及び溝深さは、後工程で変形等の不具合が生じない程度の強度を確保すること、後工程で良好な外観検査が行えること、完成品である半導体装置の良好な実装強度などを考慮して、設定すればよい。
【0012】
図2は、
図1中のII−II線に沿った矢視断面図であり、溝部5が形成されたリードフレーム1(ダイパッド2)上に半導体チップ6がボンディングされた状態を示している。
図2に示すように、各半導体チップ6に設けられた複数の電極はボンディングワイヤ7を介してリード3(
図1)に電気的に接続される。なお便宜上、
図1にはボンディングワイヤ7を図示していない。
【0013】
(樹脂封止工程)
図3は、樹脂封止工程が行なわれた状態を示す断面図である。樹脂封止工程においては、半導体チップ6がボンディングされた状態で、リードフレーム1及び半導体チップ6を樹脂材9により封止する。
図2および
図3に示すように、樹脂封止工程の前に、リードフレーム1の溝部5側に保護フィルム8(例えばポリイミド樹脂テープ)を貼り付けて、保護フィルム8を貼り付けた上で樹脂封止を行なうとよい。
【0014】
半導体装置の製造方法は、樹脂封止工程と次述するレーザ光照射工程との間に、樹脂材9におけるリードフレーム1の溝部5とは反対側の表面9a(
図3)に、レーザ光L1を照射することによるレーザマーキングを行なう工程をさらに含んでいてもよい。パルスレーザを用いて、走査光学系により走査することにより、型番やシリアルNoなどの任意の情報を印字可能である。
【0015】
図4に示すように、次述するレーザ光照射工程を行なう前に保護フィルム8がリードフレーム1から剥がされる。保護フィルム8の除去により、リードフレーム1の溝部5内に形成されている樹脂材9(9b)が露出する。なお、保護フィルム8は、
図3を参照しながら説明したレーザマーキングを行なう工程の前に、リードフレーム1から剥がしてもよい。
【0016】
(レーザ光照射工程)
図5に示すように、レーザ光照射工程においては、溝部5内の樹脂材9にレーザ光L2を照射して溝部5内の樹脂材9(9b)を除去する。レーザ光L2としては、パルスレーザとして、レーザ光発振装置にYAGレーザやYVO4レーザ又はこれらから発せられたレーザ光を第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)材料により波長変換するグリーンレーザを利用可能である。また、走査光学系により走査することにより、レーザ光L2の照射領域を変化させることができる。
【0017】
樹脂材9の材質や樹脂材9(9b)のサイズ(溝部5の溝幅W1等)に応じて、樹脂材9(9b)を効率よく除去できるように、レーザ光L2の波長、出力、レーザ径、照射時間などが最適化される。レーザ光L2の発振装置としては、レーザマーキング(
図3)にて用いたものと同じものを利用してもよい。
【0018】
(メッキ工程)
図6に示すように、溝部5内の樹脂材9(9b)を除去した後に、リードフレーム1にメッキ処理を行なう。リードフレーム1のダイパッド2、リードフレーム1のタイバー4の表面、および溝部5の表面にメッキ層10が形成される。ここで、メッキ層10の材料としては、実装に用いられるはんだ材料に応じて、はんだ濡れ性が良好な材料を選定することができる。例えば、Sn(錫)系のはんだを用いる場合には、錫(Sn)、錫−銅合金(Sn−Cu)、錫−銀合金(Sn−Ag)、錫−ビスマス(Sn−Bi)などを用いることができ、リードフレーム1側の下地にNiを用いた積層体のメッキ層10とすることもできる。
【0019】
メッキ工程においては、リードフレーム1に所定の洗浄処理を行なってからメッキ処理を行なうとよい。メッキ工程の前処理のリードフレーム1の表面処理として、洗浄処理に加え、酸化膜の除去、表面活性化などのための処理を行なってもよい。溝部5内の樹脂材9(9b)はレーザ光の照射を受けて改質(例えば炭化)していることがあり、溝部5内に多少の樹脂材9(9b)が残存した場合であっても、改質した樹脂材9(9b)はメッキ処理を行なう前の洗浄処理等の表面処理によって溝部5内から除去できる。
【0020】
図3を参照しながら説明したレーザマーキングを行なう工程は、樹脂封止工程とレーザ光照射工程との間に行なうことに代えてまたは加えて、上述のレーザ光照射工程と当該メッキ工程との間に行なってもよい。
【0021】
(切断工程)
図7に示すように、メッキ処理が行なわれたリードフレーム1を溝部5に沿って切断する。この切断工程では、幅W2を有するブレード12を用いてリードフレーム1および樹脂材9の全厚さ部分を切断する。幅W2は、溝部5の溝幅W1(
図1,
図2)よりも小さい値である。
【0022】
この切断工程ではレーザ光を用いてリードフレーム1を切断してもよい。レーザ光の発振装置としては、レーザマーキング(
図3)にて用いたものと同じものを利用してもよいし、レーザ光照射工程において樹脂材9(9b)の除去に用いたものと同じものを利用してもよい。レーザ光の発振装置としては、レーザマーキング(
図3)にて用いたものと、レーザ光照射工程において樹脂材9(9b)の除去に用いたものと、この切断工程で用いるものとを共通化して、1台の装置でこれらの各工程を行なうようにすることも可能である。ただし、リードフレーム1の材料に応じて、リードフレーム1が吸収しやすい波長のレーザ光を用いることが好ましい。
【0023】
切断工程の実施により、複数の半導体装置11が得られる。
図8に示すように、半導体装置11は、平面視した場合に製品の外部に電気的接続用のリードが突出していないQFNタイプのノンリード型の製品である。
【0024】
図9に示すように、半導体装置11においては、各リード3の側部(片部)に段差が形成されており、リード3の側面3aにおいてはメッキ層10が形成されておらず元の金属が露出している。半導体装置11は例えば、樹脂材9の側を上にリード3の側を下にして、プリント基板に実装される。プリント基板には、リード3に対応する位置にランド13が形成されており、はんだ14を介してリード3とランド13とが接続される。
【0025】
(作用及び効果)
冒頭で述べたとおり、特許文献1に開示された半導体装置の製造方法では、リードの表面をメッキ膜によって被覆した後に、樹脂封止が行なわれる。封止に用いられている樹脂材のうち、メッキ膜に接している部分にレーザ光を照射して樹脂材を部分的に除去することにより、リードの表面を被覆しているメッキ膜を外部に露出させている。当該製造方法では、メッキ膜に接している樹脂材をレーザ光照射にて除去する際にメッキ膜に損傷などが発生しやすく、メッキ膜としての機能、ひいては半導体装置としての品質が低下する可能性がある。なお特許文献1に記載の発明では、請求項7及び8等の記載から、リードフレームにレーザ光照射を行う前にリードフレームの表面がメッキ膜により被覆されていることが必須であることは明らかであり、メッキ膜が被覆されない状態でレーザ照射を行なうような改変は特許文献1からは得られない。
【0026】
これに対して実施の形態の製造方法では、溝部5内の樹脂材9にレーザ光L2を照射して溝部5内の樹脂材9を除去し、溝部5内の樹脂材9を除去した後にリードフレーム1にメッキ処理を行なう。メッキ層10は、レーザ光L2の照射に起因した損傷を受けることがない。したがって実施の形態の製造方法では、上記従来手法に比べてメッキ層10ひいては半導体装置11としての高い品質を得ることが可能である。
【0027】
レーザ光L2の発振装置としては、レーザマーキング(
図3)にて用いたものと同じものを利用してもよい。溝部5内の樹脂材9を除去するために、既存ないし現有のレーザマーキング装置を用いることにより、新規に設備を導入しなくても済むなど、設備投資に要するコストの低減を図ることが可能となる。実施の形態の製造方法から得られるその他の作用及び効果について、以下の比較例1,2と対比しながらさらに説明する。
【0028】
(比較例1)
図10(A)〜
図10(E)は、比較例1における半導体装置の製造方法を示している。
図10(A)〜
図10(C)は、実施の形態における
図2〜
図4にそれぞれ対応している。
【0029】
図10(A)に示すように、リードフレーム21のタイバー24には予め溝部23が形成されている。溝部23の溝幅は、実施の形態における溝幅W1よりも狭く設定される。リードフレーム21の表面に、保護フィルム22が貼り付けられる。この状態で樹脂封止が行なわれ、
図10(B)に示すように樹脂材25が形成される。その後、
図10(C)に示すように保護フィルム22がリードフレーム21から剥がされる。
【0030】
図10(D)に示すように、メッキ層26が形成される。その後、
図10(E)に示すように、ブレード27を用いてリードフレーム21および樹脂材25の全厚さ部分を切断する。ブレード27の幅は、溝部23の溝幅よりも大きい値である。以上の工程により、
図11に示す半導体装置28が得られる。
図11は、実施の形態における
図9に対応している。
【0031】
半導体装置28においては、メッキ層26の形成後、ブレード27によってリードフレーム21(タイバー24)の全厚さ部分が切断されるという、いわゆるフルカットが実施されるため、切断面の全体がタイバー24(リード)の側面23aにおいて露出する。プリント基板などへの実装後にも、露出された金属がそのまま露出されることとなる。
【0032】
比較例1の場合には、
図9に示す実施の形態の場合に比べて、リードのうちのはんだ14に接触する面積が小さい。したがって比較例1(
図11)の場合の実装強度は、実施の形態の場合に比べて小さくなりやすい。これは、外観検査時の検出力の低下の原因にもなり、外観検査の困難性に繋がり得る。
【0033】
(比較例2)
図12(A)〜
図12(F)は、比較例2における半導体装置の製造方法を示している。
図12(A)〜
図12(C)は、比較例1における
図10(A)〜
図10(C)とそれぞれ同一である。
【0034】
図12(D)に示すように、比較例2においてはブレード29aを用いたいわゆるハーフカットが実施される。ブレード29aによって、溝部23が存在していた位置に、溝部23よりも大きな溝部23b(
図12(E)を参照)が形成される。この溝部23bは、溝部23よりも幅広であり、タイバー24の厚みの約半分の深さを有する。
【0035】
その後、
図12(E)に示すようにメッキ層26が形成される。
図12(F)に示すように、ブレード29bを用いてリードフレーム21および樹脂材25の全厚さ部分を切断する。ブレード27の幅は、溝部23bの溝幅よりも小さい値である。以上の工程によれば、比較例1の場合とは異なり、リードの側面における金属の露出を小さくすることができ、実装強度および外観検査の容易性も得られる。
【0036】
しかしながら、比較例2の場合には、2種類のブレード29a,29bを使用するため、製造費用の増加に繋がりやすい。ブレード29a,29bを用いた2段階の切断が行なわれるため、カットバリ除去のための工数や、メッキ工程でのエッチング処理工数の増加が懸念される。ダイシング装置の生産能力の減少も懸念される。
【0037】
また比較例2の場合には、ブレード29aによるハーフカットを実施する際に、カット深さのバラつきの管理をする必要がある。カット深さが過剰であるとリードフレーム21が分断されてしまい電気メッキ処理を行なうことができなくなり、カット深さが不足していると、メッキ層26がリードの側面26aに適切に形成されにくくなる。
【0038】
比較例2の場合には、ブレード29a,29bの相対的なカット位置の誤差等にも十分に配慮する必要がある。例えば、ブレード29aにより、設定値よりも
図12(D)における紙面左側の位置にてハーフカットが行なわれ、ブレード29bにより、設定値よりも
図12(F)における紙面右側の位置にてハーフカットが行なわれたとする。この場合には、リードの側面26aに形成されたメッキ層26がブレード29bによるダイシングの際に削り取られてしまう可能性が生じる。
【0039】
上述の実施の形態の製造方法によればこれらの懸念がない。すなわち、ハーフカットを実施する代わりに、溝部5をタイバー4に予め形成しておく。この溝部5は、例えばハーフカットによって形成される溝部23bに相当するサイズを有する。溝部5内に形成された樹脂材9(9b)はレーザ光の照射により除去される。その後、メッキ層10が形成されるため、レーザ光の照射によるメッキ層10の損傷も生じない。メッキ処理後は、比較例2と同様な手法によりブレード12(
図7)を用いて個片化が行なわれる。
【0040】
リード3において露出面積の小さい側面3aを形成するために、ブレード29aを用いたハーフカットを行なわないため、加工精度の高い側面3aひいてはリード3を確保できる。ブレード29aを用いたハーフカットを行なわないため、ハーフカットによるカット深さの影響を受けずに済むため、精度の高い均一なリード3(側面3a)を有する半導体装置11を製品全体において得られることができる。ブレード12による最終的なフルカット時においても、ハーフカットによるカット位置の影響を受けないため、個片化での歩留まりを比較例2の場合に比べて改善可能である。
【0041】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。