(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された出没機構では、ピニオンを、軸筒内において回転部分となるラックよりも軸筒の後端側に大きく突出するように配置し、かつピニオンを軸筒の後端側に移動させる空間を確保しなければならない。このため、軸筒の軸線方向の寸法が長くなり、コンパクト性に欠けるという問題があった。
そこで、本発明はコンパクト化が可能となる、新たな出没機構を備えた日用品出没装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、軸筒と、前記軸筒内に収容された日用品と、前記軸筒の先端口から前記日用品を出没させる出没機構と、を備えた日用品出没装置であって、前記出没機構は、前記軸筒に対して、当該軸筒の軸線に垂直な中心線回りに、第1回転位置と第2回転位置との間で回転可能に設けられた操作部と、前記操作部に対して前記中心線から偏心した第1軸線回りに一端部が回転可能に連結され、かつ前記日用品に対して前記第1軸線と平行な第2軸線回りに他端部が回転可能に連結されたロッド部と、を備え、前記第1軸線の前記中心線に対する偏心位置は、前記操作部を前記第1回転位置まで一方向に回転させたときに前記ロッド部を介して前記日用品が前記軸筒内に没入した没入状態となり、前記操作部を前記第2回転位置まで他方向に回転させたときに前記ロッド部を介して前記日用品が前記軸筒の先端口から突出した突出状態となるように設定されている、日用品出没装置である。
【0007】
本発明によれば、操作部を第1回転位置まで一方向に回転させることで、ロッド部を介して日用品が軸筒の先端口から突出した突出状態となり、操作部を第2回転位置まで他方向に回転させることで、ロッド部を介して日用品が軸筒内に没入した没入状態となる。そして、操作部の回転操作中に、ロッド部の一端部は操作部に連結された状態で軸筒内を移動するため、ロッド部の一端部が、回転部分となる操作部よりも軸筒の後端側に大きく突出することはなく、かつ操作部よりも後端側にロッド部が移動する空間も確保する必要はない。このため、従来のラック及びピニオンを用いる場合に比べて、軸筒を軸線方向にコンパクトに構成することができる。
【0008】
(2)前記日用品出没装置において、前記操作部は、円形に形成されており、前記操作部の外周面が、前記軸筒の後端部において、少なくとも前記第1回転位置から前記第2回転位置までの回転角度範囲にわたって露出しているのが好ましい。
この場合、円形に形成された操作部の外周面は、第1回転位置から第2回転位置までの回転角度範囲にわたって露出しているので、操作部の回転操作を容易に行うことができる。
【0009】
(3)前記日用品出没装置において、前記ロッド部は、前記第1回転位置において前記操作部に当接して当該操作部の前記一方向への回転を規制し、かつ前記第2回転位置において前記操作部に当接して当該操作部の前記他方向への回転を規制する規制部材として機能するのが好ましい。
この場合、前記規制部材を別途設ける必要がないので、部品点数が少なくなり、構造の簡素化を図ることができる。
【0010】
(4)前記日用品出没装置において、前記出没機構は、前記ロッド部を前記軸筒の後端部側へ付勢する付勢部をさらに備え、前記第1軸線は、前記第2回転位置において、前記第2軸線と前記中心線とを結ぶ仮想直線よりも前記他方向側に位置しているのが好ましい。
この場合、操作部が第2回転位置にあるとき、付勢部の付勢力により、ロッド部が軸筒の後端部側へ押圧されることで、操作部は他方向にのみ回転するように付勢される。しかし、第2回転位置ではロッド部が操作部に当接することで、操作部の他方向への回転は規制されている。したがって、操作部が第2回転位置にあるとき、突出状態にある日用品に対して、軸筒内に没入する方向へ移動させるような外力が作用しても、操作部を第2回転位置に保持することができるので、日用品が軸筒内に没入するのを防止することができる。
【0011】
(5)前記日用品出没装置において、前記ロッド部は、前記操作部に対して前記第1軸線回りに回転可能に連結されている第1ロッド部と、前記日用品に対して前記第2軸線回りに回転可能に連結されている第2ロッド部と、を有し、前記第1ロッド部が、前記第2ロッド部に対して前記中心線方向の一方側にオフセットして配置されているのが好ましい。
この場合、例えば、第1ロッド部を操作部に連結する部材が、第1ロッド部よりも前記中心線方向の他方側に突出する場合には、前記中心線方向の一方側に第1ロッド部をオフセットさせることで、日用品出没装置全体を前記中心線方向にコンパクトに構成することができる。
【0012】
(6)前記日用品出没装置において、前記第1ロッド部は、当該第1ロッド部を前記第1軸線方向に貫通するピンを介して前記操作部に回転可能に連結されており、前記ピンの軸方向両端部が前記操作部に支持されているのが好ましい。
この場合、第1ロッド部を操作部に連結しているピンは、その軸方向両端部が操作部によって支持された両持ち構造となるので、ピンの軸方向一端部を操作部に支持する片持ち構造とする場合に比べて、第1ロッド部を操作部に対して安定した状態で回転可能に連結することができる。その結果、日用品出没装置の長寿命化を図ることができる。
【0013】
(7)前記日用品出没装置において、前記操作部は、前記軸筒に対して転がり軸受を介して回転可能に支持されているのが好ましい。
この場合、操作部を軸筒に対してスムーズに回転操作することができる。
【0014】
(8)前記日用品出没装置は、前記軸筒に対して、少なくとも一部の外面が前記軸筒の外周面と面一になる格納位置と、前記外面が前記軸筒の外周面よりも突出した突出位置との間で、前記中心線方向に移動可能に設けられたクリップをさらに備えるのが好ましい。
この場合、クリップの少なくとも一部を軸筒に格納することができるので、日用品出没装置全体をさらに前記中心線方向にコンパクトに構成することができる。
【0015】
(9)前記日用品出没装置は、前記軸筒内に設けられ、前記クリップを前記突出位置側へ付勢する弾性部材をさらに備えるのが好ましい。
この場合、弾性部材の付勢力によりクリップを突出位置で保持することができる。
【0016】
(10)前記日用品出没装置において、前記ロッド部は、前記操作部に対して前記第1軸線回りに回転可能に連結されている第1ロッド部と、前記日用品に対して前記第2軸線回りに回転可能に連結されている第2ロッド部と、を有し、前記第1ロッド部が、前記第2ロッド部に対して前記中心線方向の一方側にオフセットして配置されており、前記弾性部材は、前記第1ロッド部に対応する位置において前記中心線方向の他方側に配置されているのが好ましい。
この場合、第1ロッド部を前記中心線方向の一方側にオフセットさせることで、軸筒内において第1ロッド部の前記中心線方向の他方側に形成される空間を広くすることができる。その結果、前記空間に配置することができる弾性部材の種類が増えるので、弾性部材の種類を選択する際の自由度を高めることができる。
【0017】
(11)前記日用品出没装置は、前記クリップを前記格納位置でロックするロック機構をさらに備えるのが好ましい。
この場合、ロック機構によりクリップが格納位置から突出位置に移動するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、日用品出没装置をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る日用品出没装置の斜視図である。また、
図2は、その日用品出没装置の断面図である。
図1及び
図2において、本実施形態の日用品出没装置1は、軸筒2と、軸筒2内に収容されたボールペンやシャープペンシル等の筆記体(日用品)3と、軸筒2の先端口から筆記体3を出没させる出没機構4と、軸筒2の後端部に取り付けられたクリップ9と、を備えている。
【0021】
なお、
図2では、説明の便宜上、クリップ9の図示を省略している(後述する
図3も同様)。また、本明細書においては、
図1に示すX方向を先後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向として説明する。
【0022】
[軸筒]
軸筒2は、筒本体部21と、筒本体部21の先端側に取り付けられた筒先部22と、を備えている。筒本体部21は、例えば正方形状の筒体からなり、筆記時に把持し易いように、四隅の角部がR面取り形状に形成されている。筒本体部21の上壁21aには、後述うするクリップ本体95の平坦部95b1を筒本体部21内に格納するために、平坦部95b1の外形に沿った形状の切欠溝24が、中央部から後端部にかけて形成されている(
図3も参照)。
【0023】
また、筒本体部21には、後述するクリップ基体91のガイド部93,94等を収容するために、切欠溝24の後端部側に隣接する位置であって、かつ後述する第1ロッド部61の下方側に、収容室25が形成されている。収容室25は、上壁21aを切り取って、筒本体部21の右壁21b、左壁21c及び下壁21dによって区画形成されており、平面視で略矩形状に形成されている。
【0024】
さらに、筒本体部21の下壁21dには、収容室25の後端部側に隣接する位置に、回転ノブ5(後述)が取り付けられる取付部26が形成されている。取付部26は、筒本体部21の下壁21d以外の壁を切り取って形成されたものであり、取付部26の後端面26aは、円弧形状に形成されている。
【0025】
筒先部22は、後端部から先端部に向かって先細り形状に形成されており、先端部には筆記体3の先端部を出没させる先端口22aが形成されている。筒先部22の後端部には、例えば正方形状のフランジ部22bが一体に形成されており、このフランジ部22bの四隅は、ボルト23により筒本体部21に着脱可能に固定されている。これにより、各ボルト23を緩めて筒本体部21から筒先部22を取り外すことで、軸筒2内の筆記体3を新しいものと交換することができる。
【0026】
筆記体3は、軸筒2内において当該軸筒2の軸線Oと同心上に配置されている。筆記体3の先端部は、例えば圧縮コイルスプリングからなる弾性部材7に挿入されており、この弾性部材7の付勢力により、筆記体3は筒先部22に対して常に没入方向(後方向)に付勢されている。本実施形態の弾性部材7は、後述するロッド部6を軸筒2の後端部側へ付勢する付勢部として機能する。なお、筆記体3は、公知のものであるので、詳細な構造等の説明は省略する。
【0027】
[出没機構]
図3は、
図2のA矢視図である。
図2及び
図3において、出没機構4は、回転ノブ(操作部)5、ロッド部6、及び前記弾性部材7などを備えている。回転ノブ5は、例えば円形に形成されており、筒本体部21の後端部に対して軸線Oに垂直な中心線C回りに回転可能に取り付けられている。具体的には、筒本体部21の取付部26には上下方向に貫通する貫通孔26bが形成されており、この貫通孔26bを下方から貫通したボルト10の軸部10aが、回転ノブ5の下面の中心部に形成された有底のねじ穴5aに螺合されている。
【0028】
ボルト10の軸部10aは、上下一対の転がり軸受11を介して取付部26に対して回転可能に取り付けられている。これにより、回転ノブ5は、ボルト10と共に取付部26に対して回転可能に支持されている。なお、ボルト10は、転がり軸受11によって回転可能に支持されているが、滑り軸受等の他の軸受によって回転可能に支持してもよい。また、ボルト10は、必ずしも軸受によって支持される必要はない。
【0029】
回転ノブ5の軸方向(上下方向)の途中部には、窪み部5bが径方向に切り欠いて形成されている。この窪み部5bは、
図3の平面視において回転ノブ5の半分以上を切り欠いて形成されており、回転ノブ5の外周面5eにおいて180°以上開口するように形成されている。窪み部5bの底面5cは、平面視において直線状に形成されており、窪み部5bの上下方向の幅寸法は、後述する第1ロッド部61の板厚よりも若干大きい寸法に設定されている。
【0030】
ロッド部6は、回転ノブ5と筆記体3とを連結するものであり、筒本体部21内に配置されている。ロッド部6は、回転ノブ5に対して第1軸線P1回りに回転可能に連結されている第1ロッド部61と、筆記体3に対して第2軸線P2回りに回転可能に連結されている第2ロッド部62と、を有する。第1軸線P1及び第2軸線P2は、中心線Cと平行とされている。第1及び第2ロッド部61,62は、平面視において先後方向に真っすぐ延びて形成された直方体形状の平板部材からなる。
【0031】
第2ロッド部62は、軸筒2の軸線Oと同心上に配置されており、第2ロッド部62の先端部は、ピン12及び筒状の連結部材13を介して筆記体3の後端部に回転可能に連結されている。具体的には、筆記体3の後端部には、連結部材13の先端部が着脱可能に外嵌されており、連結部材13の後端部には、第2ロッド部62の先端部をその板厚方向に貫通したピン12の両端部が固定されている。これにより、第2ロッド部62の先端部は、筆記体3側に固定されたピン12に対して、その軸線である第2軸線P2回りに回転可能に連結されている。
【0032】
第1ロッド部61は、第2ロッド部62に対して上側にオフセットして配置されており、第1ロッド部61の先端部は、第2ロッド部62の後端部に一体に連結されている。このように第1ロッド部61をオフセットすることで、第1ロッド部61の途中部の下方に形成される前記収容室25を上下方向に広く形成することができる。
【0033】
第1ロッド部61の後端部は、回転ノブ5の窪み部5bに挿入された状態で、ピン14を介して回転ノブ5に回転可能に連結されている。具体的には、回転ノブ5には、平面視において中心線Cから偏心した位置で、ピン孔5dが窪み部5bを通過するように上下方向に貫通して形成されている。このピン孔5dには、第1ロッド部61の後端部を窪み部5bに挿入した状態で、当該後端部を板厚方向に貫通したピン14の両端部が固定されている。
【0034】
これにより、第1ロッド部61の後端部は、回転ノブ5に固定されたピン14に対して、その軸線である第1軸線P1回りに回転可能に連結されている。なお、ピン14は、その両端部が回転ノブ5に支持された両持ち構造であるが、一端部のみが回転ノブ5に支持された片持ち構造でもよい。
【0035】
第1ロッド部61の後端部は、回転ノブ5が
図2に示す回転位置(第1回転位置)にあるとき、窪み部5bの底面5cに当接して回転ノブ5の一方向(
図3の反時計回り方向、以下同様)への回転を規制する規制部材として機能する。
【0036】
また、第1ロッド部61の後端部は、回転ノブ5が第1回転位置から他方向(
図3の時計回り方向、以下同様)に回転して
図4に示す回転位置(第2回転位置)となったときに、窪み部5bの底面5cに再び当接して回転ノブ5の他方向への回転を規制する規制部材として機能する。したがって、回転ノブ5は、第1回転位置から第2回転位置までの回転角度範囲(本実施形態では約180°)で一方向及び他方向に回転するようになっている。
【0037】
なお、第1ロッド部61は、回転ノブ5の一方向及び他方向への回転を規制する規制部材として機能しているが、回転ノブ5の一方向及び他方向への回転を規制する専用の規制部材を別途設けてもよい。また、第1ロッド部61は、回転ノブ5の一方向又は他方向への回転のみを規制する規制部材として機能してもよい。この場合、回転ノブ5で規制することができない他方向又は一方向への回転を専用の規制部材で規制してもよい。
【0038】
図1に示すように、回転ノブ5の外周面5eの一部は、クリップ9の後端面92bにより覆われている。また、回転ノブ5の外周面5eの他部は、筒本体部21の取付部26における円弧形状の後端面26aと面一に形成されており、筒本体部21及びクリップ9に覆われることなく露出している。したがって、
図3に示すように、本実施形態では、回転ノブ5の外周面5eは、クリップ9の後端面を除く角度範囲θ(約240°)にわたって、つまり前記回転角度範囲(180°)を超えて、露出している。なお、回転ノブ5の外周面5eは、少なくとも前記回転角度範囲にわたって露出しているのが好ましいが、前記回転角度範囲未満で露出していてもよい。
【0039】
ロッド部6と回転ノブ5との連結点である第1軸線P1は、回転ノブ5が第1回転位置にあるとき、中心線Cよりも後側に位置する(
図3参照)。また、第1軸線P1は、回転ノブ5が第2回転位置にあるとき、中心線Cよりも先側に位置する(
図4参照)。
【0040】
これにより、回転ノブ5を第1回転位置から第2回転位置まで他方向に回転させると、第1軸線P1が先方向に移動するので、これに伴ってロッド部6及び筆記体3が先方向に移動することで、筆記体3の先端部が、筒先部22の先端口22aから突出した突出状態となる。
一方、回転ノブ5を第2回転位置から第1回転位置まで一方向に回転させると、第1軸線P1が後方向に移動するので、これに伴ってロッド部6及び筆記体3が後方向に移動することで、筆記体3の先端部が筒先部22内に没入した没入状態となる。
【0041】
したがって、第1軸線P1の中心線Cに対する偏心位置は、回転ノブ5を第1回転位置まで一方向に回転させたときにロッド部6を介して筆記体3の先端部が前記突出状態となり、回転ノブ5を第2回転位置まで他方向に回転させたときにロッド部6を介して筆記体3の先端部が前記没入状態となるように設定されている。
【0042】
図4に示すように、回転ノブ5が第2回転位置にあるとき、第1軸線P1は、第2軸線P2と中心線Cとを結ぶ仮想直線(本実施形態では軸線O)よりも他方向側(右側)に位置している。これにより、回転ノブ5が第2回転位置にあるとき、弾性部材7(
図2参照)の付勢力が、筆記体3を介してロッド部6を後側に移動させるように作用することで、回転ノブ5は他方向にのみ回転するように付勢されている。
【0043】
しかし、回転ノブ5は、前述のように第2回転位置において第1ロッド部61に当接して他方向への回転が規制されている。したがって、回転ノブ5が第2回転位置にあるとき、突出状態にある筆記体3に対して筒先部22内に没入する方向へ移動させるような外力が作用しても、回転ノブ5を第2回転位置に保持することができる。
【0044】
[クリップ]
図5は、クリップ9の使用状態を示す日用品出没装置1の斜視図である。
図1及び
図5において、クリップ9は、日用品出没装置1を携帯するときに、例えば衣服の胸ポケットなどに挟持させるものである。クリップ9は、筒本体部21に対して、筒本体部21内に格納された格納位置(
図1参照)と、筒本体部21の上方に突出した突出位置(
図5参照)との間で、上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0045】
図6は、クリップ9の側面図である。また、
図7は、クリップ9を裏側から見た平面図である。
図6及び
図7において、クリップ9は、クリップ基体91と、このクリップ基体91に対して上下方向に回動可能に設けられたクリップ本体95と、を備えている。クリップ基体91は、蓋部92と、蓋部92の下面から下方に突出する左右一対のガイド部93,94とを有している。
【0046】
蓋部92は、例えば平板部材からなり、
図1に示すように、格納位置において、筒本体部21の収容室25の上部開口を覆うものである。また、格納位置において、蓋部92の外面92a(上面及び左右両側面)は、筒本体部21の外周面(上壁21a、右壁21b及び左壁21cの各外面)と面一になるように形成されている。
図1及び
図7に示すように、蓋部92の後端面92bは、回転ノブ5の外周面5eに沿うように凹円弧形状に形成されている。これにより、蓋部92(後述するブラケット92cを除く)は、格納位置において、筒本体部21に格納された状態となる。
【0047】
図6及び
図7において、ガイド部93,94は、筒本体部21の収容室25の上方から、第1ロッド部61を跨いだ状態で、収容室25内に上下移動可能に収容されている(
図3も参照)。ガイド部93,94の各外面93a,94aは、収容室25を形成する右壁21bおよび左壁21cの各内面によって案内されながら上下移動するようになっている。
【0048】
収容室25内には、両ガイド部93,94の下方に、圧縮コイルスプリングからなる弾性部材96が収容されている。各ガイド部93,94の下面には、弾性部材96の上端部が係合される係合溝93b,94bが形成されている。係合溝93b,94bは、平面視で弾性部材96の外形に沿って円弧形状に形成されている。これにより、各ガイド部93,94は、弾性部材96の付勢力により、常に上方に押圧されている。すなわち、クリップ9は、弾性部材96の付勢力により、常に突出位置側に付勢されている。
【0049】
一方のガイド部94の外面には、上下方向に延びる有底の長穴94cが形成されている。
図8は、クリップ9が突出位置にある状態の日用品出没装置1の後端部を示す側面図である。なお、
図8では、弾性部材96の図示を省略している(
図9も同様)。ガイド部94の長穴94cには、筒本体部21の右壁21b)に外側から螺合して貫通したボルト15の軸部15aが挿入されている。このボルト15によって、ガイド部94は、右壁21bに対して長穴94cの上下方向の長さ範囲内で上下移動可能に支持されている。
【0050】
以上より、ガイド部93,94が弾性部材96(
図6参照)の付勢力により筒本体部21に対して上方に押圧されることで、ガイド部94の長穴94cの下端部がボルト15の軸部15aに当接しており、これによってクリップ9は突出位置に保持されている。なお、クリップ9の突出位置において、蓋部92の外面92aは、筒本体部21の外周面(上壁21aの外面)よりも上方に突出した状態となる。
【0051】
一方、ガイド部93,94を弾性部材96の付勢力に抗して下方に押し込むと、
図9に示すように、ガイド部94の長穴94cの上端部がボルト15の軸部15aに当接することで、クリップ9が格納位置よりも下方へ移動することが規制される。そして、クリップ9は、この格納位置において後述するロック機構40によりロックされる。
【0052】
図6及び
図7において、蓋部92の上面の先部側には、ブラケット92cが一体に形成されており、このブラケット92cには、クリップ本体95の後端部が左右方向に延びるピン97を介して回動可能に取り付けられている。これにより、クリップ本体95は、クリップ基体91に対してピン97の軸線である第3軸線P3回りに回動可能に取り付けられている。
【0053】
クリップ本体95は、第3軸線P3よりも後端部側に形成された押付部95aと、第3軸線P3よりも先端側に形成された挟持部95bと、を有している。押付部95aと蓋部92との間には、圧縮コイルスプリングからなる弾性部材98が取り付けられており、この弾性部材98の付勢力により、クリップ本体95をクリップ基体91に対して
図6の時計回りに方向に付勢している。
【0054】
押付部95aの下面は、押付部95aを上方から押し付けたときに、蓋部92の上面に当接する第1当接面95cとされている。これにより、第1当接面95cは、クリップ本体95が
図6の二点鎖線で示す上方回動位置よりも
図6の反時計回り方向に回動するのを規制している。
挟持部95bの後端部には、蓋部92の先端面に当接する第2当接面95dが形成されている。これにより、第2当接面95dは、挟持部95bが
図6の実線で示す下方回動位置よりも
図6の時計回り方向に回動するのを規制している。
【0055】
挟持部95bは、その先端部側から順に、上面(外面)が平面状に形成された平坦部95b1と、上面(外面)が平坦部95b1の上面よりも上方に突出して形成された湾曲部95b2と、を有している。
図1に示すように、クリップ9を格納位置まで下方移動させ、かつクリップ本体95の挟持部95bが下方回動位置にあるとき、挟持部95bは、平坦部95b1が切欠溝24内に格納されるとともに、平坦部95b1の上面が筒本体部21の外周面(上壁21aの外面)と面一になるように形成されている。したがって、
図5に示すように、挟持部95bが下方回動位置にある状態で、クリップ9を突出位置まで上方移動させると、挟持部95b全体が、筒本体部21の外周面よりも上方に突出した状態となる。
【0056】
以上より、
図9に示すように、クリップ9の格納位置において、クリップ本体95の押付部95aを押し付けることで、クリップ本体95の挟持部95bの先端部は、筒本体部21から上方に突出した上方回動位置(
図9の二点鎖線で示す位置)となる。この状態で挟持部95bと筒本体部21との隙間に、胸ポケットの生地を挿入して、押付部95aの押し付けを解除すると、挟持部95bが弾性部材98の付勢力により下方回動位置側に回動することで、挟持部95bと筒本体部21との間で胸ポケットの生地を挟持することができる。これにより、出没装置1を胸ポケットに挟持することができる。
【0057】
また、例えば胸ポケットの生地が厚い場合には、
図8に示すように、挟持部95bが下方回動位置にある状態で、クリップ9を突出位置まで上方移動させ、挟持部95bと筒本体部21との間に隙間が形成する。この状態で挟持部95bと筒本体部21との隙間に、当該隙間よりも厚い胸ポケットの生地を挿入すると、その生地によって挟持部95bが弾性部材98の付勢力に抗して上方回動位置側に回動することで、挟持部95bと筒本体部21との間で胸ポケットの生地を挟持することができる。これにより、胸ポケットの生地が厚い場合であっても、出没装置1を胸ポケットに挟持することができる。
【0058】
[ロック機構]
図8及び
図9において、日用品出没装置1は、クリップ9を格納位置でロックするロック機構40をさらに備えている。ロック機構40は、係合凸部41と、係合凹部42と、弾性部材43と、操作爪44と、を備えている。係合凸部41は、筒本体部21内において、取付部26の外周部に対して先後方向に移動可能に取り付けられている。係合凸部41の先端部は、先方向に移動することで収容室25内に飛び出した状態となり(
図2も参照)、後方向に移動することで収容室25から退避した状態となる。
【0059】
弾性部材43は、取付部26内に配置されており、その付勢力により、係合凸部41を常に先方向に付勢している。つまり、弾性部材43は、その付勢力により、係合凸部41を常に収容室25内に飛び出すように付勢している。
【0060】
係合凹部42は、クリップ9のガイド部94の後面に形成されており、クリップ9が格納位置まで下方移動したときに、係合凸部41が係合凹部42に係合するようになっている。ガイド部94の後面には、係合凹部42の下方にテーパ面94dが形成されている。テーパ面94dは、下端から上端へ向かうに従って徐々に後方向に突出するように傾斜している。
【0061】
操作爪44は、係合凸部41と一体に形成されており、筒本体部21の右壁21bよりも外側に突出している(
図3参照)。操作爪44を後方向に移動させると、係合凸部41が弾性部材43の付勢力に抗して後方向に移動するようになっている。
【0062】
以上より、
図8に示す状態から、クリップ9を弾性部材96(
図6参照)の付勢力に抗して下方に押し込むと、ガイド部93,94が下方に移動することで、ガイド部94のテーパ面94dの下端が、収容室25内に飛び出している係合凸部41に当接する。そして、さらにクリップ9を下方に押し込むと、係合凸部41は、テーパ面94dによって徐々に後方向に押圧されることで、弾性部材43の付勢力に抗して徐々に後方向へ移動する。
【0063】
そして、
図9に示すように、クリップ9を格納位置まで押し込むと、テーパ面94dが係合凸部41の下方まで移動し、係合凸部41は、テーパ面94dとの当接が解除されることで、弾性部材43の付勢力により先方向に移動し、係合凹部42に係合した状態となる。これにより、係合凸部41は、弾性部材43の付勢力により係合凹部42に係合した状態で保持されるので、ガイド部94の上方移動が規制され、クリップ9は格納位置でロックされる。
【0064】
図9に示す状態から、クリップ9を突出位置へ移動させる場合には、操作爪44を後方向へ移動させ、係合凸部41を弾性部材43の付勢力に抗して後方向に移動させる。これにより、ガイド部94の係合凹部42は、係合凸部41との係合が解除されるため、
図8に示すように、ガイド部93,94は、弾性部材96の付勢力により上方移動し、クリップ9は弾性部材96の付勢力により突出位置に保持される。
【0065】
[作用効果]
以上、本実施形態の日用品出没装置1によれば、回転ノブ5を第1回転位置まで一方向に回転させることで、ロッド部6を介して筆記体3が軸筒2の先端口22aから突出した突出状態となり、回転ノブ5を第2回転位置まで他方向に回転させることで、ロッド部6を介して筆記体3が軸筒2内に没入した没入状態となる。そして、回転ノブ5の回転操作中に、ロッド部6の一端部は回転ノブ5に連結された状態で軸筒2内を移動するため、ロッド部6の一端部が、回転部分となる回転ノブ5よりも軸筒2の後端側に大きく突出することはなく、かつ回転ノブ5よりも後端側にロッド部6が移動する空間も確保する必要はない。このため、従来のラック及びピニオンを用いる場合に比べて、軸筒2を軸線O方向にコンパクトに構成することができる。
【0066】
また、円形に形成された回転ノブ5の外周面5eは、第1回転位置から第2回転位置までの回転角度範囲にわたって露出しているので、回転ノブ5の回転操作を容易に行うことができる。
また、ロッド部6は、第1回転位置において回転ノブ5に当接して当該回転ノブ5の一方向への回転を規制し、かつ第2回転位置において回転ノブ5に当接して当該回転ノブ5の他方向への回転を規制する規制部材として機能する。これにより、規制部材を別途設ける必要がないので、部品点数が少なくなり、構造の簡素化を図ることができる。
【0067】
また、ロッド部6の一端部の第1軸線P1は、第2回転位置において、ロッド部6の他端部の第2軸線P2と中心線Cとを結ぶ仮想直線よりも他方向側に位置している。このため、回転ノブ5が第2回転位置にあるとき、弾性部材7の付勢力により、ロッド部6が軸筒2の後端部側へ押圧されることで、回転ノブ5は他方向にのみ回転するように付勢される。しかし、第2回転位置ではロッド部6が回転ノブ5に当接することで、回転ノブ5の他方向への回転は規制されている。したがって、回転ノブ5が第2回転位置にあるとき、筆記体3の先端部を没入方向へ移動させるような外力が作用しても、弾性部材7の付勢力と第1ロッド部61とにより、回転ノブ5は第2回転位置に保持される。これにより、筆記体3の先端部を紙面等に押し付けて筆記する際に、筆記体3の先端部が筒先部22内に没入するのを防止することができる。
【0068】
また、第1ロッド部61は第2ロッド部62に対して上側にオフセットして配置されているので、第1ロッド部61を回転ノブ5に連結するピン14を、第1ロッド部61よりも下側に突出させて両持ち構造とする場合であっても、日用品出没装置1全体を上下方向にコンパクトに構成することができる。
【0069】
また、第1ロッド部61を回転ノブ5に連結しているピン14は、その軸方向両端部が回転ノブ5によって支持された両持ち構造であるため、ピン14の軸方向一端部を回転ノブ5に支持する片持ち構造とする場合に比べて、第1ロッド部61を回転ノブ5に対して安定した状態で回転可能に連結することができる。その結果、日用品出没装置1の長寿命化を図ることができる。
【0070】
また、回転ノブ5は、軸筒2に対して転がり軸受11を介して回転可能に支持されているので、回転ノブ5を軸筒2に対してスムーズに回転操作することができる。
また、クリップ9は、軸筒2に対して、一部(蓋部92(ブラケット92cを除く)及び平坦部95b1)の外面が軸筒2の外周面と面一になる格納位置と、前記一部の外面が軸筒2の外周面よりも突出した突出位置との間で、上下方向に移動可能に設けられている。この場合、クリップ9の前記一部を軸筒2に格納することができるので、日用品出没装置1全体をさらに上下方向にコンパクトに構成することができる。
【0071】
また、クリップ9は、弾性部材96により突出位置側へ付勢されるので、クリップ9を突出位置で保持することができる。
また、弾性部材96は、第1ロッド部61に対応する位置において、第1ロッド部61のオフセット方向(上側)と反対側(下側)に配置されているので、以下の作用効果を奏する。すなわち、第1ロッド部61を上側にオフセットさせることで、軸筒2内において第1ロッド部61の下側に形成される収容室25を広くすることができる。その結果、収容室25に配置することができる弾性部材96の種類が増えるので、弾性部材96の種類を選択する際の自由度を高めることができる。
【0072】
また、クリップ9は、ロック機構40により格納位置でロックされるので、クリップ9が格納位置から突出位置に移動するのを防止することができる。
【0073】
[その他]
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の日用品出没装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、本発明の日用品出没装置は、日用品として筆記体を用いているが、消しゴム、ペンライト、ナイフ等の他の日用品にも適用することができる。
【0074】
また、操作部は、円形に限定されるものではなく、任意の形状に形成されていればよい。また、筆記体を没入方向に付勢する弾性部材が、ロッド部を軸筒の後端部側へ付勢する付勢部として機能しているが、専用の付勢部を設けてもよい。また、出没機構は、必ずしも付勢部を備える必要はない。
【0075】
また、ロッド部の途中部は、中心線方向(上下方向)にオフセットされているが、必ずしもオフセットする必要はない。また、クリップは、軸筒に対して格納位置と突出位置との間で移動可能に設けられているが、軸筒に対して突出位置で固定されていてもよい。また、日用品出没装置は、必ずしもクリップを備える必要はない。