(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態における電池システム1000のブロック構成図である。電池システム1000は、電池400、計測部200、電池制御装置100、出力部300を備え、電池400が蓄積している電荷を出力部300より電力として供給するシステムである。電池システム1000が電力を供給する対象としては、例えば電気自動車やハイブリッド自動車、電車などが考えられる。
【0010】
電池400は、例えばリチウムイオン2次電池などの充電可能な電池である。その他、ニッケル水素電池、鉛電池、電気2重層キャパシタなどの電力貯蔵機能を有するデバイスに対しても、本実施形態を適用することができる。電池400は、単電池セルであっても良いし、単電池セルを複数組み合わせたモジュール構造でも良い。
【0011】
計測部200は、電池400の物理特性、例えば電池400の両端電圧V、電池400に流れる電流(電池電流)I、電池400の電池温度Tなどを計測する機能部であり、各値を計測するセンサ、必要な電気回路などによって構成されている。
【0012】
出力部300は、電池制御装置100の出力を外部装置(例えば、電気自動車が備える車両制御装置などの上位装置)に対して出力する機能部である。
【0013】
電池制御装置100は、電池400の動作を制御する装置であり、電池状態推定装置110と記憶部120とを備える。なお、後述するように電池状態の推定には電池400の内部抵抗Rも必要であるが、本実施形態では、電池状態推定装置110において、その他の計測パラメータを用いて算出する。
【0014】
電池状態推定装置110は、計測部200により計測された電池400の両端電圧V、電池400に流れる電池電流I、及び電池400の電池温度Tに基づいて、記憶部120に格納されている電池400の特性情報を参照して、電池400のSOCを算出する。SOCの算出手法の詳細については後述する。
【0015】
記憶部120は、電池400の内部抵抗R、分極電圧Vpなどの予め知ることができる電池400の特性情報を電池400に応じて記憶している。さらに、記憶部120は、電池400の内部抵抗Rと電池温度Tとの関係を示す抵抗テーブル、電池400の開回路電圧OCVとSOCとの関係を示すSOCテーブル等を記憶している。
【0016】
電池制御装置100および電池状態推定装置110は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成することができる。また、その機能を実装したソフトウェアを、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。後者の場合は、当該ソフトウェアは例えば記憶部120に格納される。
【0017】
記憶部120は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、磁気ディスクなどの記憶装置を用いて構成される。記憶部120は、電池状態推定装置110の外部に設けてもよいし、電池状態推定装置110の内部に備えるメモリ装置として実現してもよい。記憶部120は、取り外し可能にしてもよい。取り外し可能にした場合、記憶部120を取り替えることによって、特性情報とソフトウェアを簡単に変更することができる。また、記憶部120を複数有し、特性情報とソフトウェアを取り替え可能な記憶部120に分散させて格納することにより、特性情報とソフトウェアを小単位毎に更新することができる。
【0018】
図2は、電池状態推定装置110の詳細を示す機能ブロック図である。電池状態推定装置110は、SOCv演算部111、SOCi演算部112、重み係数演算部114を備え、電池400の充電状態を推定した結果である充電状態SOCwを出力する。その他の演算器については後述する。
【0019】
SOCv演算部111は、計測部200が計測した電池400の両端電圧Vを用いて、電池400のSOCを算出する。以下ではこれをSOCvと称する。SOCi演算部112は、計測部200が計測した電池400の電池電流Iを積算することにより、電池400のSOCを算出する。以下ではこれをSOCiと称する。SOCvとSOCiの算出方法については後述する。
【0020】
重み係数演算部114は、電池電流Iと電池温度Tに基づいて、SOCvとSOCiを重み付け加算するための重み係数Wを算出する。重み係数Wの算出方法については後述する。
【0021】
乗算器MP1は、SOCvと重み係数Wを乗算してW×SOCvを求める。減算器DFは、(1−W)を求める。乗算器MP2は、SOCiと(1−W)を乗算して(1−W)×SOCiを求める。加算器ADは、これらを足し合わせてSOCwを求める。すなわち、SOCwは次式(1)によって表される。
SOCw=W×SOCv+(1−W)×SOCi ・・・(1)
【0022】
[SOCv演算部111の動作]
次に、SOCv演算部111の動作について説明する。
図3は、電池400の等価回路図である。電池400は、インピーダンスZとキャパシタンス成分Cの並列接続対、内部抵抗R、開回路電圧OCVの直列接続によって表すことができる。電池400に電池電流Iを印加すると、電池400の端子間電圧である閉回路電圧CCVは次式(2)で表される。式(2)において、Vpは分極電圧であり、インピーダンスZとキャパシタンス成分Cの並列接続対の両端電圧に相当する。
CCV=OCV+I・R+Vp ・・・(2)
【0023】
SOCvの算出には開回路電圧OCVが用いられるが、電池400が充放電している間は直接測定することができない。そこで、SOCv演算部111は、次式(3)のように閉回路電圧CCVからIRドロップと分極電圧Vpを差し引くことにより、開回路電圧OCVを求める。
OCV=CCV−I・R−Vp ・・・(3)
【0024】
内部抵抗Rと分極電圧Vpは、記憶部120に予め電池400の特性情報として格納されている。内部抵抗Rと分極電圧Vpは、電池400の充電状態や電池温度Tなどに応じて異なるので、これらの組合せ毎に個別の値が記憶部120に格納されている。本実施形態では、内部抵抗Rと電池温度Tとの対応関係を定義する特性情報が抵抗テーブルとして格納されている。
図2に示すように、SOCv演算部111は、電池温度Tに基づいて、抵抗テーブルから内部抵抗Rを取得し、IRドロップを求める。
する。
【0025】
図4は、電池400の開回路電圧OCVとSOCとの関係を示す図である。この対応関係は電池400の特性によって定まるものであり、記憶部120には、その対応関係を定義するデータがSOCテーブルとして予め格納されている。SOCv演算部111は、上述の式(3)を用いて開回路電圧OCVを算出し、これをキーにしてSOCテーブルを参照することにより、電池400のSOCvを算出する。
【0026】
[SOCi演算部112の動作]
次いで、SOCi演算部112の動作について説明する。SOCi演算部112は、電池400が充放電する電池電流Iを次式(4)にしたがって積算することにより、電池400のSOCiを求める。式(4)において、Qmaxは電池400の満充電容量であり、予め記憶部120に格納されている。SOColdは、前回の演算周期において式(1)により算出されたSOCwの値である。
SOCi=SOCold+100×∫I/Qmax ・・・(4)
【0027】
[重み係数演算部114の動作]
図5は、電池400の内部抵抗Rと電池温度Tとの関係を示す図である。一般的に、電池400は、
図5に示すように低SOC状態では内部抵抗Rが高く、低温状態のときに内部抵抗Rの値が大きい。したがって、そのような場合には、内部抵抗Rの誤差の影響を受け易いSOCvではなくSOCiを用いることが望ましいと考えられる。また、電池電流Iの絶対値が小さいときは電流センサの僅かな計測誤差によって影響を受けるので、SOCiではなくSOCvを用いることが望ましいと考えられる。
【0028】
以上に基づき、一般に、重み係数演算部114は、電池電流Iの絶対値が小さいときはSOCvを主に用いてSOCwを算出し、電池電流Iの絶対値が大きいときはSOCiを主に用いてSOCwを算出するように、重み係数Wを設定する。同様に、内部抵抗Rが小さいときはSOCvを主に用いてSOCwを算出し、内部抵抗Rが大きいときはSOCiを主に用いてSOCwを算出するように、重み係数Wを設定する。
【0029】
本実施形態では、電池電流Iの大きさに応じてSOCvの比重とSOCiの比重が自動的に選択されるように、重み係数演算部114は式(5)に基づいて重み係数Wを算出する。
W=1/{(1+|I|×R×G2)×G1} ・・・(5)
【0030】
ここで、補正係数G1は、本実施形態及び以下の実施形態では、1以上の値であり、且つ、例えば100など所定値以下の値に設定する。補正係数G2は、0以上の値に設定する。補正係数G1、G2は、電池400の特性に応じた値を予め記憶部120に記憶している。なお、本実施形態及び以下の実施形態では補正係数G1の値は1として説明するが、例えば100など所定値以下の値であればよい。補正係数G1を所定値以下の値することにより、補正係数G2による設定をより有効にすることができる。
【0031】
式(5)によれば、G2を0〜1未満に設定すると、例えばG2=0、G1=1にしたときは、W=1となり、式(1)よりSOCw=SOCvとなり、電流の大きさによらずにSOCvの比重が高いSOCとなる。
また、式(5)によれば、1を超える値にG2を設定すると、例えばG2=2、G1=1にしたときは、電流の大きさに応じてSOCvの比重とSOCiの比重が自動的に選択されるようになる。以下に、電流の大きさが小さい場合と大きい場合について説明する。
【0032】
(a)<電流が小さい場合>
電流の大きさが小さい場合、たとえば電流=1A、内部抵抗=2mΩのとき、式(5)より重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+1×2×2)×1}=1/5
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/5)×SOCv+(4/5)×SOCi
【0033】
このSOCwの式から分かるように、SOCvは1/5反映され、後述の電流が大きい場合と比較して、SOCvの比重が大きい。この場合、仮にそれ以前の状態でSOCiの比重が大きくなっていて、式(4)に基づく電流積算誤差によりSOC誤差が蓄積していたとしても、電流が小さい場合はSOCvの比重が大きくなる。このため式(3)をキーにして求めたSOCvによって、SOC誤差を解消できる。すなわち、SOCvによって、SOCが校正される。
【0034】
また、このとき電流が小さいため、SOCv自体の誤差も少ない。その理由は以下のとおりである。SOCvは次の式(6)のように(CCV−I×R)の関数fで表される。
SOCv=f(CCV−I×R) ・・・(6)
そのため、電池電流Iが非常に小さい状態ではI×Rが小さくなり、内部抵抗Rの誤差の影響を受けにくくなり、SOCv自体の誤差も少なくなる。なお、電池の内部抵抗Rは、特に低温では大きい値をとるため、温度センサなどの誤差があると、大きな誤差要因となる。
【0035】
(b) <電流が大きい場合>
電流の大きさが大きい場合、たとえば電流=100A、内部抵抗=2mΩのとき、式(5)より重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+100×2×2)×1}=1/401
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/401)×SOCv+(400/401)×SOCi
【0036】
このSOCwの式から分かるように、SOCvは1/401しか反映されず、電流が小さい場合と比較して、SOCiの比重が大きい。この場合、SOCvの影響をほとんど受けないため、SOCwは略SOCiの結果が反映される。SOCiは式(4)で表され、SOCiが電圧や内部抵抗Rの影響を受けないため、SOCwは非常に安定した値を示す。
【0037】
以上のように、1を超える値にG2を設定すると、電流の大きさに応じて、SOCvの比重とSOCiの比重が自動的に切り替わる。電流の大きさが小さい場合は、SOCvの比重が大きくなり、誤差の少ないSOCvがSOCwに反映される。電流の大きさが大きい場合は、SOCiの比重が大きくなり、電圧や内部抵抗Rの影響を受けないSOCiがSOCwに反映される。仮に電流センサの誤差による積算誤差がある場合であっても、ハイブリッド車両や電気自動車においては、電流の大きさは小および大がある頻度で交互に発生するため、電流が大きい場合のみが連続することはなく、積算誤差は、電流が小さくなった時点で解消される。よって、本実施形態を用いると、電流の大きさに応じて、SOCvによる誤差の校正とSOCiによる安定性を自動的に選択しながら精度の高いSOCwを得ることができる。
【0038】
−第2の実施形態−
第2の実施形態において、第1の実施形態で説明した、
図1の電池システムのブロック構成図、
図2の電池状態推定装置の詳細を示す機能ブロック図、
図3の電池の等価回路を示す図、
図4のOCVとSOCとの関係を示す図、
図5の電池の内部抵抗と電池温度との関係を示す図は同様であるのでその説明を省略する。
【0039】
図6は、第2の実施形態における補正係数G2のテーブル130を示す図である。このテーブル130に示す補正係数G2は一例であり、記憶部120に記憶される。このテーブル130では、電池温度Tが−10℃以上、かつ10℃以下で、電池電流Iの絶対値が20A以上の範囲131の補正係数G2を、5〜100の値に、その他の範囲は補正係数G2を1の値に設定している。重み係数演算部114は、検出された電池電流Iと電池温度Tとに基づいて記憶部120内のテーブル130を参照して補正係数G2を読み出し、式(5)に基づいて重み係数Wを算出する。
【0040】
電池400が、弱低温領域(例えば、−10℃以上、かつ10℃以下)で、且つ内部抵抗が小さい(例えば、負極が黒鉛系の電池)ものでは、電流が大きい場合でも重み係数Wが十分に小さくならず、そのためSOCiの比重が大きくならずSOCの精度が悪化する。そのために、本実施形態では、電池温度Tが所定値以上、所定値以下、かつ電池電流Iの絶対値が所定値以上の場合は、SOCiの比重が大きくなるように補正係数G2を設定する。
【0041】
電池400が、弱低温領域(例えば、−10℃以上、かつ10℃以下)で、且つ内部抵抗が小さい電池(例えば、負極が黒鉛系の電池)で、電池電流が大きい場合を説明する。例えば、電池電流Iが30A、電池温度が0℃の場合、テーブル130より補正係数G2の値50を読み出す。ここで内部抵抗=1mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+30×1×50)×1}=1/1501
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/1501)×SOCv+(1500/1501)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、SOCvは1/1501しか反映されず、SOCiの比重が大きい。したがって、SOCiによって、SOCの精度が向上する。
【0042】
ここで、本実施形態との比較の為に、G2=1とした場合を説明する。電池電流Iが30A、電池温度が0℃の場合に、G2=1とする。また、内部抵抗=1mΩ、G1=1とする。この場合は、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+30×1×1)×1}=1/31
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/31)×SOCv+(30/31)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、本実施形態と比較して、SOCvは1/31が反映され、少しずつSOCvによる校正が発生するため、SOCiの比重が大きくならずSOCの精度が悪化する。
【0043】
電池400が、弱低温領域(例えば、−10℃以上、かつ10℃以下)で、且つ内部抵抗が小さい電池(例えば、負極が黒鉛系の電池)で、電流が小さい場合を説明する。例えば、電池電流Iが10Aで、電池温度Tが0℃ の場合は、テーブル130より補正係数G2の値1を読み出す。ここで内部抵抗=1mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+10×1×1)×1}=1/11
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/11)×SOCv+(10/11)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、SOCvによる校正が発生する。このように、テーブル130の電流が小さい領域ではG2=1とすることで、補正係数G2の影響を受けない従来どおりの動作によって、SOCvによる校正を期待できる。
【0044】
本実施形態によれば、弱低温領域、かつ内部抵抗が小さい電池であっても、電池電流が大きい場合には重み係数Wが十分に小さくなり、SOCiの比重が大きくなってSOCの精度が向上する。電流が小さい場合は、従来どおりの動作によって、SOCvによる校正を期待できる。
【0045】
−第3の実施形態−
第3の実施形態において、第1の実施形態で説明した、
図1の電池システムのブロック構成図、
図2の電池状態推定装置の詳細を示す機能ブロック図、
図3の電池の等価回路を示す図、
図4のOCVとSOCとの関係を示す図、
図5の電池の内部抵抗と電池温度との関係を示す図は同様であるのでその説明を省略する。
【0046】
図7は、第3の実施形態における補正係数G2のテーブル140を示す図である。このテーブル140に示す補正係数G2は一例であり、記憶部120に記憶される。このテーブル140では、電池温度Tに依らず、電池電流Iの絶対値が10A以内の範囲141の補正係数G2を、0の値に、その他の範囲は補正係数G2を1の値に設定している。重み係数演算部114は、検出された電池電流Iと電池温度Tとに基づいて記憶部120内のテーブル140を参照して補正係数G2を読み出し、式(5)に基づいて重み係数Wを算出する。
【0047】
電池特性として内部抵抗が大きい電池400では、式(5)に示すように、電流が小さい場合でも重み係数Wが十分に大きくならず、SOCvの比重が大きくならないためにSOCの校正頻度が少ない。このため電流センサの誤差によってSOCiの電流積算誤差が蓄積している場合に、校正頻度が少ないことによってSOCの精度が悪化する。そのために、本実施形態では、電池電流Iの絶対値が所定値以下の場合は、SOCvの比重が大きくなるように補正係数G2を設定する。
【0048】
内部抵抗が大きい電池400で、電池電流が小さい場合を説明する。例えば、電池電流Iが10A、電池温度が25℃ の場合、テーブル140より補正係数G2の値0を読み出す。ここで内部抵抗=10mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+10×10×0)×1}=1
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=1×SOCv+0×SOCi=SOCv
このSOCwの式から分かるように、電池電流Iの絶対値が所定値以下の場合は、SOCvの比重が大きくなる。
【0049】
ここで、本実施形態との比較の為に、G2=1とした場合を説明する。電池電流Iが10A、電池温度が25℃ の場合、G2=1とする。また、内部抵抗=10mΩ、G1=1とする。この場合は、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+10×10×1)×1}=1/101
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/101)×SOCv+(100/101)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、本実施形態と比較して、SOCvの校正頻度が少なく、SOCiの比重が大きく、SOCの精度が悪化する。
【0050】
内部抵抗が大きい電池400で、電池電流が大きい場合を説明する。例えば、電池電流Iが50A、電池温度が25℃ の場合、テーブル140より補正係数G2の値1を読み出す。ここで内部抵抗=10mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+50×10×1)×1}=1/501
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/501)×SOCv+(500/501)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、電池電流Iの絶対値が所定値以上の場合は、SOCiの比重が大きくなる。このように、電池電流Iが大きい補正係数G2のテーブル140の値を1にすることで、補正係数G2の影響を受けない従来どおりの動作によって、SOCiの比重を大きくして精度の高いSOCを得ることができる。
【0051】
このように、電池特性として内部抵抗が大きい電池であっても、その電池特性に合わせて、電池電流Iの絶対値が所定の値以下である場合は、SOCvの比重が大きくなるようにテーブル140を設定することで、SOCの校正頻度を向上させることができる。
【0052】
−第4の実施形態−
第4の実施形態において、第1の実施形態で説明した、
図1の電池システムのブロック構成図、
図2の電池状態推定装置の詳細を示す機能ブロック図、
図3の電池の等価回路を示す図、
図4のOCVとSOCとの関係を示す図、
図5の電池の内部抵抗と電池温度との関係を示す図は同様であるのでその説明を省略する。
【0053】
図8は、第4の実施形態における補正係数G2のテーブル150を示す図である。このテーブル150に示す補正係数G2は一例であり、記憶部120に記憶される。このテーブル150では、電池温度Tが0℃以下で、電池電流Iの絶対値が10A以上の範囲151の補正係数G2を、50〜100の値に、その他の範囲は補正係数G2を1の値に設定している。重み係数演算部114は、検出された電池電流Iと電池温度Tとに基づいて記憶部120内のテーブル150を参照して補正係数G2を読み出し、式(5)に基づいて重み係数Wを算出する。
【0054】
電池によっては、電池温度が低く電池電流が小さい場合において、電池電圧が式(3)の関係性から大きく外れる事象が発生するものがある。このような電池に対して、式(5)に相当する従来の式(補正係数G2を含まない式)によれば、電池電流が小さいために重み係数WによってSOCvの比重が大きくなるが、前述したように式(3)の関係性から外れているため、SOCvの誤差が大きくなり、これが最終的なSOCとなるのでSOCの誤差が大きくなってしまう。そのために、本実施形態では、電池温度Tが所定値以下、かつ電池電流Iの絶対値が所定値以下の場合は、SOCiの比重が大きくなるに補正係数G2を設定する。
【0055】
図8に示す補正係数G2のテーブル150を参照して説明する。電池電流Iが小さい場合、例えば、電池電流Iが 10A、電池温度Tが−10℃ の場合、テーブル150より補正係数G2の値50を読み出す。ここで内部抵抗=3mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+10×3×50)×1}=1/1501
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/1501)×SOCv+(1500/1501)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、SOCvは1/1501ずつしか反映されず校正頻度が少なく、SOCiの比重が大きい。
【0056】
ここで、本実施形態との比較の為に、G2=1とした場合を説明する。電池電流Iが10A、電池温度Tが−10℃ で、G2=1とする。ここで内部抵抗=3mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+10×3×1)×1}=1/31
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/31)×SOCv+(30/31)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、SOCvは、1/31ずつ反映され、少しずつSOCvによる校正が発生するため、SOCiの比重が大きいとはいえない。
【0057】
一方、本実施形態において、電池電流Iが大きい場合、例えば、電池電流Iが20A、電池温度が−10℃ の場合、テーブル150より補正係数G2の値1を読み出す。ここで内部抵抗=3mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+20×3×1)×1}=1/61
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=(1/61)×SOCv+(60/61)×SOCi
このSOCwの式から分かるように、電池電流Iが小さい場合に比較して、SOCvは1/61ずつ反映されて校正頻度が多くなり、SOCiの比重が小さい。
【0058】
また、本実施形態において、例えば、電池電流Iが0A、電池温度が−10℃ の場合、テーブル150より補正係数G2の値100を読み出す。ここで内部抵抗=3mΩ、G1=1のとき、式(5)に基づいて重み係数Wを算出すると以下のようになる。
W=1/{(1+0×3×100)×1}=1
したがって、SOCwは式(1)より以下のようになる。
SOCw=1×SOCv+0×SOCi
このSOCwの式から分かるように、SOCvが反映される状態となる。電池電流Iが0Aのときは、式(3)から、OCV=CCV‐Vpとなり、電流の影響をほとんど受けずに電圧からSOCを演算することが可能であり、SOCvの誤差は小さい。したがって、SOCvをSOCに反映しても精度が悪化する懸念が少ないため、校正によるSOC精度が向上する。
【0059】
本実施形態によれば、電池温度が低く電池電流が小さい場合において電池電圧が式(3)の関係性から大きく外れる事象が発生するような特性を有する電池であっても、電池温度Tが所定値以下であり、かつ電池電流Iの絶対値が所定の電流以下である場合は、SOCiの比重が多くなるようにテーブル150を設定する。これにより、SOCの精度を向上させることができる。さらに、電池電流が0AのときはSOCvの比重が多くなるため、校正頻度も確保することができる。
【0060】
−各実施形態のまとめ−
図9は第1〜第4の実施形態のまとめを示す図である。各実施形態について、電池電流Iの絶対値の大きさ、内部抵抗Rの大きさ、電池温度Tの範囲に応じて、設定する補正係数G2の値を示す。その結果、SOCvの比重を大きくしたり、SOCiの比重を大きくしたりすることができ、比重が大きくなる箇所に○印を示す。このように、電池電流Iの絶対値の大きさ、内部抵抗Rの大きさ、電池温度Tの範囲などの電池400の特性に応じて、補正係数G2の値を設定することにより、適宜、SOCv若しくはSOCiの比重を大きくすることができる。
【0061】
以上説明した第1〜第4の実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電池制御装置100は、電池400の両端電圧を用いて電池400の充電状態を算出するSOCv演算部111と、電池400に流れる電流Iを積算して電池400の充電状態を算出するSOCi演算部112と、電流Iの大きさの絶対値と、電池の内部抵抗Rと、第1の係数G1と、第2の係数G2とを備えた計算式に基づいて重み係数Wを算出する重み係数演算部114と、SOCv演算部111が算出した電池400の充電状態とSOCi演算部112が算出した電池400の充電状態を重み係数Wを用いて重み付け加算するSOCw演算部MP1、MP2、DF、ADと、を備え、計算式の第1の係数G1は、計算式の全体に係り、第2の係数G2は、計算式内の電流Iの大きさの絶対値に係る。これにより、SOCを高い精度で算出するための重み付けの設定が容易になる。
【0062】
(2)電池制御装置100において、計算式は以下の式であり、重み係数演算部114は、計算式に基づいて重み係数Wを算出する。これにより、SOCを高い精度で算出するための重み付けの設定が容易になる。
W=1/{(1+|I|×R×G2)×G1}
【0063】
(3)電池制御装置100において、SOCw演算部MP1、MP2、DF、ADは、SOCv演算部111が算出した電池400の充電状態SOCvと、SOCi演算部112が算出した電池400の充電状態SOCiと、重み係数演算部114が算出した重み係数Wとを用いて以下の式に基づいて重み付け加算する。これにより、SOCを高い精度で算出するための重み付けの設定が容易になる。
SOCw=W×SOCv+(1−W)×SOCi
【0064】
(4)電池制御装置100において、重み係数演算部114は、電池400の温度Tが低温側で第1所定値以上かつ高温側で第2所定値以下の範囲であり、かつ電池400に流れる電流Iの絶対値が所定の電流以上である場合は、第2の係数G2を1より大きな値に設定し、SOCw演算部MP1、MP2、DF、ADは、温度Tが低温側で第1所定値以上かつ高温側で第2所定値以下の範囲であり、かつ電池400に流れる電流Iの絶対値が所定の電流以上である場合は、SOCi演算部112が算出した電池の充電状態の比重を大きくする。これにより、弱低温領域、かつ内部抵抗が小さい電池であっても、電池電流が大きい場合には重み係数Wが十分に小さくなり、SOCiの比重が大きくなってSOCの精度が向上する。
【0065】
(5)電池制御装置100において、重み係数演算部114は、電池400に流れる電流Iの絶対値が所定の電流以下である場合は、第2の係数G2を0の値に設定し、SOCw演算部MP1、MP2、DF、ADは、電池400に流れる電流Iの絶対値が所定の電流以下である場合は、SOCv演算部111が算出した電池400の充電状態の比重を大きくする。これにより、電池特性として内部抵抗が大きい電池であっても、その電池特性に合わせて、電池電流Iの絶対値が所定の値以下である場合は、SOCvの比重が大きくなるようにテーブル140を設定することで、SOCの校正頻度を向上させることができる。
【0066】
(6)電池制御装置100において、重み係数演算部114は、電池400の温度Tが所定の温度以下であり、かつ電池400に流れる電流Iの絶対値が所定の電流以下である場合は、第2の係数G2を1より大きな値に設定し、SOCw演算部MP1、MP2、DF、ADは、電池400の温度Tが所定の温度以下であり、かつ電池400に流れる電流Iの絶対値が所定の電流以下である場合は、SOCi演算部112が算出した電池400の充電状態の比重を大きくする。これにより、これにより、SOCの精度を向上させることができる。
【0067】
(7)電池制御装置100において、重み係数演算部114は、第1の係数G1を、所定値以下の値に設定する。これにより、第2の係数G2による設定をより有効にすることができる。
【0068】
(変形例)
本発明は、以上説明した第1〜第4の実施形態を次のように変形して実施することができる。
(1)重み係数演算部114は、式(5)に基づいて重み係数Wを算出する例で説明した。しかし、次式(5’)に基づいて重み係数Wを算出してもよい。ここで、K1=1/G1である。すなわち、係数K1、G1は、ともに計算式の全体に係る係数である。
W=K1×1/(1+|I|×R×G2) ・・・(5’)
【0069】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と変形例を組み合わせた構成としてもよい。